説明

電気空圧式切換装置

本発明は、手動のギヤシフト時に運転者をアシストするサーボアシスト装置を有する車両変速機の電気空圧式切換装置に関する。本発明においては、バルブ(18、18’)が、シフト軸(9)の位置ないしシフトゲートに依存して、減圧バルブ(19)を介して、サーボ圧を減少ないし適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部分に記載の、運転者を手動シフト時にアシストするサーボアシスト装置(パワーアシスト装置)を有する、自動車における変速機の電気空圧式切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
その変速機は、運転者によって手動でハンドシフトレバーでシフトできるメインギヤ(主変速装置)と、弁を介して空圧式に切換えできるスプリットギヤ(動力分配装置:a splitter gear box)と、弁を介して空圧式に切換えできるレンジグループギヤ(走行レンジ選択装置:a range gear box)と、を有する変速機であり、あるいは、スプリットギヤもレンジグループギヤもない例えば6速段変速機のような変速機である。
【0003】
大型商用車のトランスミッション(変速機)は、メインギヤ部と、スプリットギヤ(GV)と、レンジグループギヤ(GP)と、に分割されている。とりわけ商用車における最近のギヤ(変速機)は、空圧に支援される切換装置を有しており、当該装置はスプリットギヤ内及びレンジグループギヤ内で空圧シフトを行う一方、メインギヤ部内のシフト(切換)は運転者によって手動で行われ、その際に作用する力が空圧により支援され得る。
【0004】
近年の自動車トランスミッションの制御及び保護用に、電気部品及び電子部品が益々多用されている。これらの部品は、他の目的と並んで、特にはシフトするギヤに対して車速が速すぎるといったような他の条件に基づいて、許容されないようなトランスミッションのシフトの阻止に役立っている。
【0005】
DE19839854A1から、パワーアシスト装置(サーボアシスト装置)が運転者のシフト力を支援するという切換装置が知られている。この場合、支援する圧縮空気の供給(量)が低減されるべきで、例えば車両のクラッチが操作されるときに限り供給が許容されるべきである。そのために、当該低減を可能にする追加バルブが必要である。
【0006】
許容されないシフトに対する保護措置を備えた電気空圧式切換装置は、DE10029497A1から知られている。自動車トランスミッション用のこの電気空圧式切換装置は、バルブを介して空圧でシフトできるスプリットギヤと、バルブを介して空圧でシフトできるレンジグループギヤと、を備えている。そのシフトは、運転者がシフトレバーで手動によりプリセレクトすることができる。その際、許容されないギヤ比への手動によるシフトを機械的に阻止するためのロック装置が設けられている。さらに、自動車トランスミッションの許容されないギヤ比への空圧によるシフトを阻止するためのロック装置及び電子制御装置が設けられている。この場合、スプリットギヤのバルブとレンジグループギヤのバルブとは、電磁作動の空圧バルブであり、これらは共通のハウジングの中に配置されている。それらのプリセレクトは、制御装置と結合しているハンドシフトレバーにある電気スイッチによって行われる。
【0007】
前者のロック装置は、この場合、レーン(ゲート)ロックシリンダで構成される。これは、運転者がレンジグループギヤ内で適切なギヤをプリセレクトするのを忘れた時に誤って許容されないギヤ段へ切り替えることから運転者を守るために、レンジグループギヤの低速ギヤ段において、当該ギヤの所定の出力回転数以上で、ある特定のシフトレーン(シフトゲート)から別のある特定のシフトレーンへシフトすることを防ぐ。後者のロック装置は、グループロック(Gruppensperre)であり、これは、レンジグループギヤの同期化もメインギヤ部の同期化も保護するために、所定の車両速度以上で、レンジグループギヤの低速ギヤへのシフトを阻止する。
【0008】
DE10217482A1は、電気空圧式切換装置を説明している。それは、たいした追加費用もなしに、支援する圧縮空気の供給を決定することができる。
【0009】
自動車変速機用のこの種の電気空圧式切換装置は、運転者によって手動によりシフトレバーでシフトされるメインギヤと、バルブを介して電気空圧式にシフトされるスプリットギヤと、レンジグループギヤと、を有している。
【0010】
スプリットギヤのシフトは、運転手が手動でシフトレバーのスイッチを使ってプリセレクトできる。センサまたはスイッチが、運転者による車両クラッチのマニュアル操作を検知して、その信号を電子制御装置に送信する。これにより、当該電子制御装置がバルブを開く。
【0011】
このとき、同バルブは、クラッチのどの操作でも、または、クラッチの分離点(解除点)に達したときはいつでも、エアをシャトルバルブにそしてパワーアシスト装置(サーボアシスト装置)に与える、という追加機能を担う。その結果、クラッチが解除されている状態に限り、手動でのシフト操作の力を支援するサーボパワーの供給が認められる。その切換装置の場合も、シフト誤操作を防止するために、ゲートロックシリンダおよびグループロック(補助ロック)が設けられている。DE10217482A1の開示内容は、全面的に、本明細書の対象物である。
【発明の開示】
【0012】
本発明の課題は、運転者を手動シフト時にアシストするサーボアシスト装置を有する自動車変速機の電気空圧式切換装置を、サーボ圧がシフトゲートに依存して調整可能であるというように形成することにある。
【0013】
本課題の解決は、特許請求の範囲の請求項1に記載された特徴によって実現される。有利な実施の形態が、下位の請求項で示されている。
【0014】
即ち、本発明によれば、シフト軸(シフトシャフト)の位置に依存して、減圧弁を介して、サーボ圧を減少ないし適合する弁が設けられる。
【0015】
第1の実施の形態において、機械式ゲートロック付きのグループギヤ(補助変速装置)の場合、シフト誤操作時に弁を介して圧力で付勢されるピストンが、爪(klinke)を介して、シフト軸を付勢する。これによって、シフト軸がその瞬間のシフトゲート(シフトレーン)に保たれるか、あるいは、変速機における許可シフト条件が得られるまで或る許可シフトゲートに移動される。ピストンロッドはゲートロックシリンダの底を貫通して突出しているように、設計されている。
【0016】
このようにして、制御圧を減圧弁のピストンに供給する(切り換える)弁が制御され、これによって、サーボアシスト装置において、空気が完全にしゃ断されるまでの種々の圧力レベルが実現できる。爪およびゲートロックシリンダのピストンロッドを介して、シフト軸の位置およびこれによってシフトゲートが認識できるので、その圧力レベルはシフト軸の位置ないしシフトゲートに依存して決定され得る。
【0017】
シフトゲートの認識を弁に転送するために、補助的な部品は必要とされない。これによって、一方では、構造空間が減少され、他方では、製造費が低減され得る。
【0018】
ゲートロックなしの変速機の場合、例えば6速段変速機の場合、弁タペットがシフト軸の位置に依存して移動できるように、弁をシフト軸に直接配置することが提案される。これは例えば、弁がシフト軸において半径方向に配置され、シフト軸の軸方向位置に依存してシフト軸の傾斜面によって作動される、ということによって行われ得る。また、弁をシフト軸の位置に依存して直接制御できるように、弁を軸方向においてシフト軸の前に配置することも可能である。
【0019】
以下、有利な実施の形態が示されている図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1および図2には、本発明によるゲートロック付き切換装置が示され、1はシフトレバーであり、そのシフトパターン(操作図)は「重ねH形」に相当している。シフトレバー1に、スプリットギヤ(動力分配装置)をプリセレクト(予選択)するための第1スイッチ20と、レンジグループギヤ(走行レンジ選択装置)用の第2スイッチ21と、が付属されている。上述のシフトパターンのシフトの場合、前進段において、シフトレバー1の両端位置にそれぞれ、レンジグループギヤの伝達比ステップだけ異なる二つの変速段が割り当てられている。スイッチ位置「低速(L)」において、1速段〜4速段および後進段が切り換えられる。スイッチ位置「高速(H)」において、5速段〜8速段が切り換えられる。メインギヤ(主変速装置)部の中立位置は、シフトゲートにおける伝達比間の中央に存在している。
【0021】
運転者は、シフトレバー1の第1スイッチ20によってレンジグループギヤの切換えを実施しなければならない。その切換えは、メインギヤ部において手動で中立位置が投入されるや否や行われる。
【0022】
スプリットギヤは、第2スイッチ21によって予選択され、クラッチの作動によって切り換えられる。クラッチぺダル2が、GV(動力分配装置)始動弁3と協働する。この始動弁3は、配管内に挿入接続される。その配管は、一方では、サーボアシスト装置4、および、GV(動力分配装置)シリンダ6を制御するためのGV(動力分配装置)切換弁5、に接続され、他方では、空気タンク7に接続されている。なお、8は電子制御装置、9はシフト軸、10はゲートロックシリンダ、11は主しゃ断弁、12はクラッチ、13は圧力スイッチ、14はGP(走行レンジ選択装置)切換弁、15はGP(走行レンジ選択装置)シリンダ、16はGP(走行レンジ選択装置)始動弁、17はゲートロック弁、である。スプリットギヤ(動力分配装置)GVにおける切換えは常に可能であり、シフトレバー1に在るスイッチ20の位置だけで決定される。
【0023】
グループギヤ(補助変速装置)の切換に関連して生じ得るメインギヤ部におけるシフト誤操作を回避するために、機械式ゲートロック10が利用される。シフト誤操作時にゲートロック弁17を介して圧力で付勢されるピストンが、シフト軸9に爪で係合する。これによって、シフト軸は、その瞬間のシフトゲートに保持されるか、あるいは、変速機における許可シフト条件が得られるまで或るシフトゲートに移動される。これによって、爪およびゲートロックシリンダ10のピストンロッドを介して、シフト軸9の位置、従ってシフトゲート、例えばシフトゲート1/2(5/6)、3/4(7/8)および後進段、が認識できる。いま、ピストンロッドがゲートロックシリンダ10の底を貫通して突出しているので、それによって弁18、18′が操作され得る。その弁18、18′は、制御圧を減圧弁19のピストンに作用させ、これにより、サーボアシスト装置4内において、サーボ空気しゃ断までの種々の圧力レベルが実現され得る。これによって例えば、シフトゲート1/2においては全圧を、シフトゲート3/4においては3ポート2位置切換弁18(図1)によって減少された圧力を、および、例えば5ポート3位置切換弁18′(図2)を利用する場合の後進段用のシフトゲートにおいては前記圧力を、完全にしゃ断することが、可能となる。それぞれ、弁の設計に応じて、種々のサーボ圧力レベル数が得られる。
【0024】
図3には、ゲートロックが利用されない場合について、5ポート3位置切換弁18′による例えば3つのシフトゲート1/2、3/4、5/6又はシフトゲート後進段Rにおけるシフトゲート依存のサーボ圧に対する方式が概略的に示されている。完全を尽くす目的で、クラッチぺダル2の作動時に操作される弁3も示されている。
【0025】
この場合、弁18′は、その弁タペットがシフト軸の位置に依存して移動できるというように、シフト軸9に直接配置されている。これは、弁18′がシフト軸9における半径方向に配置され、シフト軸の傾斜面によってその軸方向位置に依存して作動される、ということによって行われ得る。
【0026】
スプリットギヤ(動力分配装置)およびレンジグループギヤ(走行レンジ選択装置)の空圧式シフトに対する図1および図2に示されたシリンダ6およびシリンダ15は、車両において、同時に利用される必要はない。原理的には、スプリットギヤの空圧式切換えあるいはレンジグループギヤの空圧式切換えのいずれかが存在すれば十分であり、あるいは、グループギヤ(補助変速装置)が空圧式に切り換えられることなく1つの空圧式サーボアシスト装置が存在するだけで十分である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に基づく切換装置の第1の実施の形態の概略図。
【図2】本発明に基づく切換装置の第2の実施の形態の概略図。
【図3】本発明に基づく切換装置の第3の実施の形態の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動シフト時に運転者をアシストするサーボアシスト装置(4)を備えた自動車変速機の電気空圧式切換装置において、
シフト軸(9)の位置ないしシフトゲート(シフトレーン)に依存して、減圧弁(19)を介して、サーボ圧を減少ないし適合する弁(18、18′)が設けられている
ことを特徴とする電気空圧式切換装置。
【請求項2】
弁(18、18′)は、3/2(3ポート2位置)切換弁(18)、あるいは、5/3(5ポート3位置)切換弁(18′)として形成され、それぞれ弁設計(Ventilausfuehrung)に応じて種々のサーボ圧レベル数が得られるようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気空圧式切換装置。
【請求項3】
機械式ゲートロックシリンダ(10)付きの変速機の場合、当該ゲートロックシリンダ(10)は、シフト誤操作時に弁(17)を介して圧力で付勢されて変速機のシフト軸(9)に作用するピストンを有しており、
これによって、シフト軸(9)が、その瞬間のシフトゲートに保たれるか、あるいは、変速機における許可シフト条件が得られるまで或るシフトゲートに移動されるようになっており、
そのピストンロッドは、当該ピストンロッドがゲートロックシリンダの底を貫通して突出するように形成され、当該底から突出するピストンロッドが、減圧弁(19)に制御圧を供給する弁(18、18′)に作用する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気空圧式切換装置。
【請求項4】
ゲートロック(レーンロック)なしの変速機の場合、弁(18、18′)は、弁タペット(Ventilstoessel)がシフト軸(9)の位置に依存して移動できるように、シフト軸(9)に直接配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気空圧式切換装置。
【請求項5】
弁(18、18′)は、シフト軸(9)における半径方向に配置され、シフト軸(9)の軸方向位置に依存して、シフト軸(9)の傾斜面によって作動される
ことを特徴とする請求項4に記載の電気空圧式切換装置。
【請求項6】
弁(18、18′)は、当該弁(18、18′)がシフト軸(9)の位置に依存して直接制御可能であるように、軸方向においてシフト軸(9)の前に配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電気空圧式切換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503558(P2007−503558A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524253(P2006−524253)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008563
【国際公開番号】WO2005/022007
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】