説明

電気絶縁デバイス及びそれが設けられた電気的なデバイス

電気絶縁デバイスであって、チャンバ(5,18)と、このチャンバ(5,18)の内側で弾性的状態に凝固された鋳造ポリマーにより形成された電気的に絶縁性の要素(4)と、を有している。この電気的に絶縁性の要素(4)は、前記ポリマーの内の一つと比べて高い熱伝導率を有するセラミックの複数の粒子を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ、及び、このチャンバの内側で弾性的状態に凝固された鋳造ポリマーにより形成された電気的に絶縁性の要素を有する電気絶縁デバイスに係る。
【0002】
本発明はまた、本発明に基づく電気絶縁デバイスを有する、中または高電圧の伝達のための電気的なデバイスに係る。
【0003】
この文脈の中で、中または高電圧とは、約1kV以上の電圧を意味している。
【0004】
“弾性的”と言う言葉は、外部の影響を受けて形状の実質的な変化を受ける能力、そしてそれに続く、前記外部の影響の除去または消失により、恒久的に残る変形無しに、当初の形状に戻る能力を意味しても良い。この文脈の中で、留意すべきことは、好ましくは、前記ポリマーの弾性係数は、前記絶縁デバイス使用の間に電気的に絶縁性の要素が接触することがある隣接する要素の弾性係数より低く、好ましくは実質的により低いと言うことである。従って、電気的に絶縁性の要素は、その使用の間の隣接する要素の形状または体積の変化のために、好ましくは、前記隣接する要素の形状または体積にほとんど影響を与えること無く、弾性的に変形されように構成され、それによって、そのような形状及び体積の変化を可能にする。
【0005】
前記絶縁要素のポリマーは、“鋳造ポリマー”として規定される。それが意味するところは、それが、液体状態で前記チャンバの中に導入されたとき、前記チャンバを満たすことが可能であることを目的として、特に、前記チャンバが、複雑な幾何学的形状を有している場合に、または、前記チャンバが、複雑な形状を有していることがある要素を収容する場合に、前記絶縁デバイスが設けられた電気的なデバイスの後続する動作に際して、前記チャンバに対して、絶縁要素が連続的に接着しまたは連続的に接触した状態を保つと言うことである。
【0006】
好ましくは、本発明に基づく電気的なデバイスは、以下のグループから選択されるデバイスを有していても良い:サーキット・ブレーカ、絶縁スイッチギア、送電変圧器、計器用変圧器、サージアレスタ、ケーブル終端部、ポール・ヘッド、ブッシング、絶縁体、など。特に、そのような電気的なデバイスは、中または高電圧送電システムの一部を形成する。
【背景技術】
【0007】
一部の電気的なデバイスにおいて、例えば、サーキット・ブレーカ、絶縁スイッチギア、送電変圧器、計器用変圧器、サージアレスタ、ケーブル終端部、ポール・ヘッド、ブッシング、絶縁体などにおいて、電気的な絶縁手段として、油または電気的に絶縁性のガスで満たされた一つまたはそれ以上のボリューム(またはチャンバ)が設けられることがある。油は、効果的な電気絶縁体であり、且つ、そのようなデバイスの中の電圧伝送要素などのような、熱発生要素からの熱を伝えることができると言う優位性を有している。油は、液体状態で存在するので、対流により熱を伝えることが可能であると言う優位性を有している。しかしながら、油などの液体絶縁材の使用は、リークの問題をもたらすことがあり、その結果として、動作障害、更には、重大な故障引き起こすことがある。環境的な視点からも、油は望ましくない。
【0008】
また、絶縁媒体として、SFなどのような絶縁ガスを使用するとき、リークが発生するかもしれない。それは、その結果として、動作障害、更には、中電圧及び高電圧システムにおける電流の伝送のために重大な装置の故障をもたらすかもしれない。
【0009】
このため、先行技術の欠点を改善するために、近年の研究は、乾式絶縁の開発に焦点が絞られている。乾式絶縁においては、油またはガスが固体絶縁要素により置き換えられる。そのような固体絶縁要素は、ポリウレタンまたはシリコンベースのポリマーなどのような、ポリマーを有していても良く、特定の用途に依存して、泡、ゲル、更にはゴムとして、存在しても良い。ポリマーは、オペレーションの際に収容されることになるチャンバまたはボリュームの中に鋳造すること可能でなければならない。そのために、それ自身とそのような更なる要素との間に空気または他のガスのポケットを残すことなく、周囲を取り囲む要素と連続的に接触状態にあること、またはそれに接着することが可能でなければならない。
【0010】
しかしながら、そのような絶縁要素の形成のために使用される多くのポリマーの欠点は、それらの相対的に低い熱伝導率であり、特に、そのような固体絶縁要素は、油のような液体と異なり、対流により熱を伝えることができないと言う事実との組み合わせで考えた場合に、問題となる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、最初に規定されたような電気絶縁デバイス提供することにあり、本発明は、先行技術に対応するソリューションと比較して改善された熱伝導率を提供する。
【0012】
本発明の目的は、最初に規定された電気的な絶縁デバイスにより実現され、この電気的な絶縁デバイスの特徴は、前記要素が、前記ポリマーの内の一つより高い熱伝導率を有するセラミックの複数の粒子を有していることにある。
【0013】
ここで、“粒子”と言う用語は、そのような混合物の粘度に、鋳造が不適切になるような(例えば、絶縁要素と隣接する要素の間の不連続的な接触をもたらすことなど)影響を与えること無く、鋳造の前に前記ポリマーの中に容易に分散されることが可能であるような、サイズ及び形状のボディまたは要素を意味している。更に、それらの粒子は、ポリマーの凝固の間に沈殿することがなく、後者のマトリクスの中に細かく分散された状態でとどまるような種類のものでなければならない。従って、そのような粒子は、中空、固体、長く引き伸ばされた形状、球形、立方体、あるいは、特定の目的のための他の適切な形状であっても良い。
【0014】
そのような粒子は、その凝固の後で、周囲を取り囲むポリマー・マトリクスに連続的に接着し、且つ、それら自身とその周囲を取り囲むマトリクスとの間に空隙または空気ポケットを残すことがないような表面の性質及び形状を有していなければならない。原則として、そのような粒子は、前記絶縁要素の電気的な絶縁容量の低下に寄与しないような材料を含んでいなければならない。
【0015】
好ましい実施形態によれば、前記粒子は、前記要素の全体としての熱伝導率が、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも100%、増大するような量で存在する。
【0016】
好ましくは、前記セラミックは、前記ポリマーの熱伝導率と比べて実質的に高い、好ましくは、10000倍以上のオーダーで高い、熱伝導率を有している。高い熱伝導率は、絶縁要素の熱伝導率の特定の改善のために必要とされる粒子の量を減少させることになる。それによって、鋳造の前に前記粒子と混合されるポリマーの粘度が、前記粒子により余り影響を受けないことになり、そして、セラミックの値段がポリマーの値段より高いとすると、トータルの製造コストがより低くなることになる。
【0017】
前記粒子による粘度増大の影響を補償するために、シリコーン油などのような粘度減少剤が、前記ポリマーの硬化により前記電気的に絶縁性の要素を形成する混合物に、添加されても良い。そのような粘度減少剤は、前記粒子の分布を改善する場合もある、それによって、実際に前記要素の熱伝導率をも改善する。
【0018】
セラミック粒子は、小板の形状を有していても良く、且つ1〜100μmの平均直径を有していても良い。セラミック粒子は、それらの特定の形状とは独立して、しかし、好ましくは、前記小板のような形状であって、10〜700μmの範囲内の平均直径の凝集物を形成し、そして、多かれ少なかれ不規則な三次元形状を呈していても良い。なお、粒子サイズは、例えば“Malvern Mastersised”粒子サイズ分析器などのような光拡散技術により測定される。
【0019】
本発明の更なる実施形態によれば、セラミック粒子の体積比は、少なくとも5 vol%、好ましくは少なくとも7 vol%、そして最も好ましくは少なくとも9 vol%である。約5 vol%のセラミック粒子から、材料の妥当な高い熱伝導率が観察されている。熱伝導率は、その後、前記セラミック粒子の組成の増大ともに増大する。
【0020】
更なる実施形態によれば、セラミック粒子の体積比は、15 vol%より小さく、好ましくは13 vol%より小さく、そして最も好ましくは11 vol%より小さい。セラミックが11 vol%より多い場合には、粘度の増加に対する前記粒子の寄与が大きくなり過ぎて、それは、その製造の間、材料に対する明らかに負の効果を有することになる。それ故に、以上において規定されたような組成が好ましい。
【0021】
他の実施形態によれば、セラミック粒子は、複数の個別の凝集物を形成し、これらの凝集物の平均直径は、130μmより大きく、好ましくは200μmより大きく、そして最も好ましくは250μmより大きい。出願人により行われた試験により確認されたところによれば、セラミックの組成が約5 vol%より多い場合には、以上において規定された平均直径を備えた凝集物が、材料の熱伝導率の予期せぬ改善をもたらす。
【0022】
好ましくは、前記凝集物は、前記要素の中に均一に分散される。それによって、熱伝導率が劣る局所的領域の発生が防止される。凝集物(または、もし凝集物として凝集していない場合には粒子)は、絶縁要素を挟んで、熱伝導率が+/−3%よりも大きく変化しないように分散されなければならない。
【0023】
一つの実施形態によれば、前記粒子は、前記要素の中に、浸透性のネットワーク状組織(percolating network)を形成する。もし、前記粒子が、浸透性のネットワーク状組織を形成する場合、熱が、高い熱伝導率のそのような材料の、破壊されていない経路を通って移送されることが可能である。それによって、前記粒子の形状及び量が、前記粒子のそのような浸透性のネットワーク状組織を増大させるために十分である場合には、絶縁要素の全体としての熱伝導率がシャープに増大することになるであろう。
【0024】
好ましくは、前記セラミックは、主成分として窒化硼素を有している。窒化硼素、特に六方晶の窒化硼素の粒子は、本発明に基づく絶縁要素の熱伝導率を改善する目的に良く適合することが判明している。特に、鋳造の後にゲルを形成することになるシリコンベースのポリマーと混合された窒化硼素の粒子は、本発明の目的の実現のために好ましいことが判明している。
【0025】
好ましくは、前記ポリマーは、その凝固状態にゲルを形成する。
【0026】
好ましくは、前記ポリマーは、シリコンベースのポリマーである。しかしながら、他の材料、その場合には好ましくはポリウレタンが、考えられる。
【0027】
一つの実施形態によれば、前記ポリマーは、
(a) 架橋性のポリ有機シロキサン(polyorganosiloxane);及び、
(b) 有機シリコーン架橋剤(organosilicone crosslinker);
を有している。
【0028】
本発明の目的のために適切な、架橋性のポリ有機シロキサンの例は、次の式により与えられる
【化1】

ここで、Rは、18個までの炭素原子を有する一価の炭化水素グループ;
R’は、一価の炭化水素またはハイドロカルボノキシ(hydrocarbonoxy)グループ、水素原子、またはハイドロキシ・グループ;
xは、10から1500までの値の整数である。
【0029】
有機シリコン架橋剤の例は、シラン、低分子重量有機シリコン樹脂、及び短鎖有機シロキサンポリマーの中から選択されることが可能である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記絶縁要素は、その中に分散された圧縮性の粒子を有している。そのような粒子の目的は、全体の絶縁要素をある程度、圧縮性にすることにある。例えば、油が絶縁手段として使用され、膨張するボリュームが油の体積変化を受け入れるために使用されるシリューションとは異なり、本発明に基づく固体絶縁要素が収容されるチャンバの体積は、比較的一定でなければならず、その目的は、動作状態が変化する際に、前記チャンバの中で、固体要素が、重要な隣接する要素と間の接触状態を失わないと言うことを保障することにある。
【0031】
このようにして、圧縮性の粒子の目的は、その圧縮により、前記絶縁要素のポリマーの体積変化を補償することであっても良い。そのようなポリマーの体積変化は、温度の変化により引き起こされても良く、その熱膨張をもたらし、あるいは、導電体などのような、絶縁要素に隣接して前記チャンバの中に収容される要素のサイズまたは形状の変化により引き起こされても良い。
【0032】
好ましくは、前記圧縮性の粒子の各一つは、弾性的なシェルを有していて、この弾性的なシェルが、ガスが充填されたその内側のボリュームの周りを密閉状態で取り囲んでいる。シェルの材料は、絶縁要素の中の周囲を取り囲むポリマー・マトリクスの材料と適合していなければならず、少なくとも、それが、ポリマー・マトリクスの材料に接着し、且つ、後者の体積または形状の変化の結果として、それ自体と前記マトリクスとの間に空隙を生じさせることがないと言う点で、適合しなければならない。好ましくは、圧縮性の粒子は、20μmから500μm、好ましくは30μmから100μmの範囲の直径を有するマイクロスフェア(micro-spheres)を規定する。
【0033】
前記シェルは、有機ポリマー材料を有していても良く、それは、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリビニル・クロライド、ポリビニル・アセテート、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチル・メタクリレート、ポリビニル・アルコール、エチルセルローズ、ニトロセルローズ、ベンジルセルローズ、エポキシ樹脂、ハイドロキシプロピルメチルセルローズ・フタレート、ビニル・クロライドとビニル・アセテートの共重合体、ビニル・アセテートとセルローズ・アセトブチレートの共重合体、スチレンとマレイン酸の共重合体、アクリロニトリルとスチレンの共重合体、ビニリデン・クロライドとアクリロニトリルの共重合体などである。
【0034】
適切なマイクロスフェアの例は、“Pierce and Stephens Corp.”社により、デュアライト“Dualite”(TM)と言う商標の下で市販されているもの、及び、“Akzo Nobel”社により、エクスパンセル“Expancel”(TM)と言う商標の下で市販されているものである。
【0035】
好ましくは、前記圧縮性の粒子は、それらが、その通常動作状態の間に絶縁デバイスが曝されることになる最大温度まで、前記チャンバの内側での前記要素の前記ポリマーの熱膨張を、その圧縮により、十分に補償することが可能であるような量で、前記要素の中に存在する。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記圧縮性の粒子の量は、前記絶縁要素の材料の、少なくとも20 vol%、好ましくは少なくとも24 vol%である。それによって、絶縁要素の十分な圧縮が、周囲を取り囲む構造に対して前記要素により過剰な圧力が加えられること無しに、大半の用途に対して可能にされる。
【0037】
更なる実施形態によれば、前記圧縮性の粒子の量は、前記絶縁要素の材料の、30 vol%より少なく、好ましくは26 vol%より少ない。それによって、十分な空間が、上述のセラミックにより締められることになる絶縁要素の材料の中に残され、更なる添加物(好ましくはシリコーン油)により占められることになる。
【0038】
一つの実施形態によれば、前記絶縁デバイスはまた、前記チャンバの中にまたはそれに隣接して配置された電圧伝達要素を有していて、ここで、前記要素は、前記電圧伝達要素を少なくとも部分的に電気的に絶縁する。この電圧伝達要素は、典型的には、中または高電圧を伝達するための導電体であっても良い。典型的には、この電圧伝達要素は、更なる電気絶縁により覆われていても良く、この更なる電気絶縁は、従って、電圧伝達要素との直接接触から、本発明の絶縁要素を分離する。しかしながら、本発明の絶縁要素と電圧伝達要素の間に直接接触がある実施形態もまた、考えられる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、前記チャンバは、クローズド・チャンバであって、その体積の変化は、前記デバイスの通常動作状態下での温度変化のために、前記要素の前記ポリマーの体積の変化と比べて、より小さい。好ましくは、絶縁要素は、本発明の電気絶縁デバイスが設けられる電気的なデバイスの、全ての通常動作状態下で、前記チャンバを完全に満たす。上述の特徴のために、前記デバイスの絶縁容量を減少させるかも知れない空隙または空気ポケットが、動作状態の間にチャンバの中に形成されることがない、と言うことが保障される。
【0040】
一つの実施形態によれば、前記チャンバは、クローズド・チャンバであって、その体積は、前記デバイスの通常動作状態下でぼぼ一定である。そのような場合には、絶縁要素のポリマー・マトリクスの体積は、温度変化のために変化しても良く、それにより、その中に分散された圧縮性の粒子が、圧縮または膨張により、体積のそのような変化を補償する。しかしながら、もし、更なる要素が存在し、その体積が動作の間に変化し、且つこの更なる要素が、絶縁要素のポリマーのマトリクスの、温度により引き起こされる体積変化が無い状態で、チャンバの体積に影響を与える場合には、圧縮性の粒子は、絶縁要素がそれに対応して収縮または膨張することを保障することになる。
【0041】
本発明の目的は、中または高電圧の伝達のための最初に規定された電気的なデバイスにより実現される。この電気的なデバイスの特徴は、それが、本発明に基づく電気絶縁デバイスを有していることにある。
【0042】
一つの実施形態によれば、前記チャンバの内側で、この電気的なデバイスは、前記電気的に絶縁性の要素以外の一つまたはそれ以上の要素を有していて、その形状または体積は、前記デバイスの通常動作状態下で変化することになり、前記一つまたはそれ以上の要素は、前記電気的に絶縁性の要素の形状またはボリュームと接触状態にあり、それにより、それに対して影響を与える。
【0043】
一つの実施形態によれば、電気的に絶縁性の要素以外の前記一つまたはそれ以上の要素は、中または高電圧伝送要素を有している。
【0044】
一つの実施形態によれば、前記電気的なデバイスは、電気的なケーブル終端部を有していて、ここで、前記チャンバは、前記電気的なケーブル終端部のチャンバである。
【0045】
一つの実施形態によれば、前記電気的なデバイスは、電力変圧器を有していて、前記チャンバは、前記電力変圧器のチャンバである。
【0046】
一つの実施形態によれば、前記電気的なデバイスは、電力ブッシングを有していて、前記チャンバは、前記電力ブッシングのチャンバである。
【0047】
一つの実施形態によれば、前記電気的なデバイスは、電力ブレーカを有していて、前記チャンバは、前記電力ブレーカのチャンバである。
【0048】
本発明は本発明に基づく絶縁デバイスまたは電気的なデバイスを製造する方法を含んでいても良く、ここで、前記ポリマーは、前記チャンバに鋳造され、その中で凝固される。
【0049】
本発明の更なる特徴及び優位性については、以下の詳細な説明の中で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明に基づく電気的なデバイスの断面図である。
【図2】図2は、本発明に基づく電気的なデバイスの他の実施形態の断面図である。
【図3】図3は、本発明に基づく電気的に絶縁性の材料のサンプルにおける、熱伝導率対BNの体積比率に関する試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、本発明の好ましい実施形態が、例示の目的で、添付図面を参照しながら説明される。
【0052】
図1に示されているように、本発明の電気的なデバイスが、特に支持絶縁体を参照しながら、説明される。なお、そのような実施形態は、例示の手段として示されていて、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。
【0053】
図1に示されているように、絶縁体(一般的に参照符号100で示されている)は、絶縁複合材料(例えばグラス・ファイバー)で作られた絶縁チューブ1を有している。この絶縁チューブは、絶縁シェッド(insulating shed)2(例えばシリコーン・ゴムで作られている)で覆われている。このチューブ1の端部に、二つの金属製のフランジ3が固定されている。前記チューブ1及びフランジ3は、チャンバ5の境界を定め、または、その周りを取り囲んでいる。絶縁体が電圧下にあるとき、前記二つの金属製のフランジは、異なる電位を有している。異なる電圧を有する二つのフランジの間の電気絶縁を実現し、それにより、危険な電気的な放電を防止するために、管状のケース1の内側の自由な体積Vを規定するチャンバ5は、適切な絶縁性のフィラーで満たされている。
【0054】
好ましくは、本発明のこの実施形態において、前記絶縁性のフィラーは、有益にも、圧縮性のシリコンベースの組成で作られていて、それにより、電気的に絶縁性の要素4を形成している。特に、前記圧縮性のシリコンベースの組成は、適切なデバイス(図中には示されていない)により、液体状態で、且つ許容される最大体積と比べて大きい量で、チューブ1の内側に射出される。より正確には、満たされるべき自由な体積をVとすると、射出された圧縮性のシリコンベースの組成は、25℃の温度で、1,01から1,20Vの範囲の体積を有している。射出されるフィラーがその液体状態にあるので、そのフィラーは、全ての適切なボリュームを完全に飽和させ、射出されたシリコンベースの組成は、次いで、ゲル状態に硬化される。
【0055】
このフェーズで、フィラーの体積が、満たされるべき体積Vと比べて大きいので、シリコーン・フィラーの、チューブとの全ての接触表面に対する完全な接着が容易になる。良好な圧縮性能を考慮すると、これはまた、破断、亀裂発生、または壁面からの分離などを生ずること無く、デバイスが広い温度変動(例えば、−40℃から+70℃の範囲)に耐えるときに実現される。好ましくは、これは、既知の電気的なデバイスにより実現されるものと比べて、一般的に高いデバイスの絶縁強度レベルを可能にし、そしてまた、前記接触表面に沿う高い絶縁強度値を可能にする。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、絶縁性のフィラーは、圧縮性のマイクロスフェアで満たされたシリコンベースのポリマーを有している。このポリマーは、好ましくは、エクスパンセル“Expancel”(TM)と言う商標の下で市販されているものである。ポリマー及びマイクロスフェアは、ポリマーの硬化によりシリコーン・ゲルを形成する種類のものであって、例えば、“Wacker”社により製造され、コム・ゲル“Com Gel”と言う名称の下で市販されているものなどである。ポリマーの鋳造及び硬化に先立って、主として窒化硼素からなる粒子が、混合物の10 vol%の体積比まで添加されなければならない。ここで、この窒化硼素は、六方晶の窒化硼素を有していて、例えば、“Saint Gobain”社で製造されているものなどである。
【0057】
好ましくは、粘度低下剤もまた、混合物の中に含まれる。好ましい実施形態によれば、そのような粘度低下剤は、低粘度シリコーン油を含んでいても良い。好ましい実施形態において、それ故に、20 vol%の低粘度シリコーン油(TR−50(5OcSt))が混合物の中に含まれている。それによって、粘度が減少され、混合物の中でのBN粒子の分散が改善され、それによって、形成される要素の熱伝導率が改善される。液体混合物は、上述のように、チャンバまたはボリュームの中に導入され、その中で、それが硬化してフィラー、即ち、この出願の教えに基づく電気的に絶縁性の要素を形成する。
【0058】
前記ゲルは、好ましくは、幾つかの電気的なデバイスの中で絶縁フィラーとして使用されることが可能であり、そのようなデバイスは、例えば、サーキット・ブレーカ、絶縁スイッチギア、電力及び計器変圧器、サージアレスタ、ケーブル終端部、ポール・ヘッド、ブッシング、絶縁体、などである。
【0059】
図2は、本発明に基づくケーブル終端部装置の実施形態を示す。図2のケーブル終端部装置は、導電体11、内部電気絶縁12、外部の容器13、及び中間電気的に絶縁性の要素14を有している。外部の容器13の両端には、ボトム・フランジ15及びトップ・キャップ16が、それぞれ、設けられている。
【0060】
導電体11は、ロッドまたはチューブの形状である。好ましくは、それは、銅またはアルミニウムなどのような高い導電率の材料を有している。更に、導電体11は、ケーブルの一部を形成し、ここで、内部絶縁12は、典型的なケーブル絶縁であって、ポリマーなどのような固体の絶縁性材料で作られ、導電体11の外周に取り付けられている。
【0061】
導電体11により形成されたケーブル17は、内部絶縁12により取り囲まれ、ボトム・フランジ15により形成されたその端部を通って、ケーブル終端部装置の中に入る。ボトム・フランジ15、トップ・キャップ16、及び外部の容器13は、チャンバ18の境界を定めるハウジングを規定し、このチャンバを通って、ケーブル17の導電体11が伸びる。導電体11は、トップ・キャップ16を通って前記ハウジングから出る。トップ・キャップ16の外側で、導電体16は、内部電気絶縁により覆われていないで、周囲に自由に曝され、自由に伸び、あるいは、更なる電気的な装置(図示されていない)に接続される。
【0062】
図2に示された実施形態の外部の容器13は、ケーブル終端部装置の外周で電気的な表面のフラッシュ・オーバーを防止する目的ために設けられていて、それにより、外部の電気絶縁を規定している。この目的のために、外部の容器は、好ましくは、特有の波状の形を有している。それについては、この技術分野の中で、それ自体としては良く知られていて、且つ、適切な材料を有している。外部の容器13は、電気的に絶縁性の材料を有していても良く、それは、例えば、ポリマー、例えばシリコン、または陶器などである。導電体11/ケーブル17の軸方向の外部の容器13の長さは、そのブレークダウン強度に適合される。従って、外部の容器13の長さは、導電体の電圧の増大とともに増大しなければならない。
【0063】
中間電気絶縁媒体14が、本発明に基づく電気的に絶縁性の要素により形成され、上述のチャンバ18の内側に設けられ、後者を満たす。それによって、中間電気絶縁要素14がケーブル17と外部の容器13の間の空間の中に位置する。それは、電気絶縁体及び熱伝達媒体として振舞い、熱を導電体1から、径方向並びに軸方向に、前記ハウジングから外に運ぶ。それによって、それは、内部絶縁12の温度に対して決定的な効果を有することになり、そして、好ましくは、ポリマー材料を有している。
【0064】
この好ましい実施形態において、中間電気絶縁14は、この特許出願の教えに基づく固体または半固体の充填コンパウンドを有している。好ましくは、中間絶縁要素14は、図1を参照しながらフィラー4に対して説明されたやり方に対応するやり方でハウジングの中に導入されている。
【0065】
中間絶縁14の改善された熱伝導率が、ケーブル終端部の機能を大いに改善することが判明している。
【0066】
上記の説明から、本発明の電気的なデバイスが意図されたタスク及び目的を実現すると言うことが、このように明らかになった。その理由は、それが、既に知られている電気的なデバイスと比較して改善された性能を保障し、それと同時に、放電の発生を防止するからである。更に、この電気的なデバイスは、このように、体積を補償することまたは接着促進剤での表面処理を要求することなしに、広い動作温度範囲において使用されることが可能であると考えられる。
【0067】
ここで留意すべきことは、電気的なデバイスの内側に、ケーブル、機械的ロッド、電圧下での接続などのような、機能的要素が容易に挿入されることが可能であると言うこと、またそれに加えて、フィラーのリークの問題がなく、従って、リークの監視及び警報システムを省略することを可能にすると言うことである。
【0068】
図3に、本発明に基づく電気的に絶縁性の材料の異なるサンプルであって、ポリマーに異なる量のBNが添加され、且つBN凝集物サイズが異なるサンプルに対して得られた試験結果を示す。この試験から分かるように、平均直径280μmのBN凝集物が約5 vol%を超えるあたりから、材料の熱伝導率の顕著な且つ予期しない改善が認められる。130μmの平均直径を備えた凝集物は、約5 vol%のBNまで、280μmサンプルと同様な関係を示している。しかしながら、平均直径130μmのサンプルの熱伝導率は、約9または10 vol%のBNまで、BNの量にほぼ比例し続け、その後、より低い値の方に外れることが見出されている。これに対して、より大きい凝集物を備えたサンプルは、5 vol%を超えるBN組成に対して、より急峻なカーブで外れる。
【0069】
注目に値することはまた、個々のBN粒子の小板の平均サイズが、得られた熱伝導率に余り関係していないように見えることである。12μm及び30μmの平均直径が、それぞれ、130μmの凝集物の異なるサンプルのために使用されたが、熱伝導率の重大な相違は、観察されなかった。
【0070】
このようして見出された本発明が、特定の且つ好ましい実施形態を参照しながら説明されたが、本発明は、説明されたもののみに限定されることはなく、本発明のアイデアの範囲内にある変形形態及び変更形態を含んでいる。
【0071】
最後に全ての細部は、他の技術的に同等の要素により置き換えられても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁デバイスであって、
チャンバ(5,18)と、このチャンバ(5,18)の内側で弾性的状態に凝固された鋳造ポリマーにより形成された電気的に絶縁性の要素(4,14)と、を有し、
前記要素は、前記ポリマーの内の一つと比べて高い熱伝導率を有するセラミックの複数の粒子を有していること、
を特徴とする電気絶縁デバイス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の電気絶縁デバイス:
前記粒子は、前記要素の全体としての熱伝導率が、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも100%で増大するような量で存在する。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載の電気絶縁デバイス:
前記セラミック粒子の体積比は、少なくとも5 vol%、好ましくは少なくとも7 vol%、そして最も好ましくは少なくとも9 vol%である。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1から3の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記セラミック粒子の体積比は、15 vol%より小さく、好ましくは13 vol%より小さく、そして最も好ましくは11 vol%より小さい。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記セラミック粒子は、複数の個々の凝集物形成し、且つ、
これらの凝集物の平均直径は、130μmより大きく、好ましくは200μmより大きく、そして最も好ましくは250μmより大きい。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記凝集物は、前記要素の中に均一に分散される。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から6の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記セラミックは、主成分として窒化硼素を有している。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記ポリマーは、その凝固状態でゲルを形成する。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記ポリマーは、シリコンベースのポリマーである。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記ポリマーは、
(a)架橋性のポリ有機シロキサン、及び、
(b)有機シリコーン架橋剤、
を有している。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項1から10の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記要素は、その中に分散された圧縮性の粒子を有している。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項11に記載の電気絶縁デバイス:
前記圧縮性の粒子の各一つは、ガスが充填された内側のボリュームの周りを密閉状態で取り囲む弾性的なシェルを有している。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項11または12に記載の電気絶縁デバイス:
前記圧縮性の粒子は、絶縁デバイスがその通常動作状態の間に曝されることになる最大温度まで、それらが、その圧縮により、前記チャンバ(5,18)の内側の前記要素の前記ポリマーの熱膨張を十分に補償することが可能であるような量で、前記要素の中に存在する。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項11から13の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記圧縮性の粒子の量は、前記絶縁要素の材料の、少なくとも20 vol%、好ましくは少なくとも24 vol%である。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項11から14の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記圧縮性の粒子の量は、前記絶縁要素の材料の、30 vol%より少なく、好ましくは26 vol%より少ない。
【請求項16】
下記特徴を有する請求項1から15の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
当該電気デバイスはまた、前記チャンバ(5,18)の中にまたはそれに隣接して配置された電圧伝達要素(3,11)を有していて、
前記絶縁要素(4,14)は、前記電圧伝達要素(3,11)を少なくとも部分的に電気的に絶縁する。
【請求項17】
下記特徴を有する請求項1から16の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記チャンバ(5,18)は、クローズド・チャンバ(5,18)であって、その体積は、前記デバイスの通常動作状態の下での温度変化により、前記要素の前記ポリマーの体積の変化と比べて小さく変化する。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項1から17の何れか1項に記載の電気絶縁デバイス:
前記チャンバ(5,18)は、クローズド・チャンバであって、その体積は、前記デバイスの通常動作状態の下でほぼ一定である。
【請求項19】
中または高電圧の伝達のための電気的なデバイスであって、請求項1から18の何れか1項に記載の電気絶縁デバイスを有している電気的なデバイス。
【請求項20】
下記特徴を有する請求項19に記載の電気的なデバイス:
前記チャンバ(5,18)の内側で、前記電気的に絶縁性の要素(4,14)以外の一つまたはそれ以上の要素(3,11)を有し、
前記一つまたはそれ以上の要素(3,11)の形状または体積は、前記デバイスの通常動作状態下で変化し、
前記一つまたはそれ以上の要素(3,11)は、前記電気的に絶縁性の要素(4,14)と接触状態にあり、それによって、前記電気的に絶縁性の要素(4,14)の形状または体積に影響を与える。
【請求項21】
下記特徴を有する請求項20に記載の電気的なデバイス:
電気的に絶縁性の要素(4,14)以外の前記一つまたはそれ以上の要素(3,11)は、中または高電圧伝送要素(3,11)を有している。
【請求項22】
下記特徴を有する請求項19から21のいずれか1項に記載の電気的なデバイス:
電気的なケーブル終端部を有し、前記チャンバ(5,18)は、この電気的なケーブル終端部のチャンバである。
【請求項23】
下記特徴を有する請求項19から21のいずれか1項に記載の電気的なデバイス:
電力変圧器を有し、前記チャンバ(5,18)は、前記電力変圧器のチャンバである。
【請求項24】
下記特徴を有する請求項19から21のいずれか1項に記載の電気的なデバイス:
電力ブッシングを有し、前記チャンバ(5,18)は、前記電力ブッシングのチャンバである。
【請求項25】
下記特徴を有する請求項19から21のいずれか1項に記載の電気的なデバイス:
電力ブレーカを有し、前記チャンバ(5,18)は、前記電力ブレーカのチャンバである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−539668(P2010−539668A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525371(P2010−525371)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062632
【国際公開番号】WO2009/037358
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(594075499)アーベーベー・リサーチ・リミテッド (89)
【氏名又は名称原語表記】ABB RESEARCH LTD.
【Fターム(参考)】