電気自動車のバッテリパック構造
【課題】ジャンクションボックスとバッテリコントローラのハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保すること。
【解決手段】バッテリパックケース1の内部空間に、バッテリモジュール2と、ジャンクションボックス5と、LBコントローラ6と、を搭載した。この電気自動車のバッテリパック構造において、バッテリパックケース1の内部空間にバッテリモジュール2を搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とした。ジャンクションボックス5とLBコントローラ6を、温調風通路のうち一つの直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置した。ジャンクションボックス5とLBコントローラ6を接続する弱電ハーネス96を、直線通路部38aに沿って配索した。
【解決手段】バッテリパックケース1の内部空間に、バッテリモジュール2と、ジャンクションボックス5と、LBコントローラ6と、を搭載した。この電気自動車のバッテリパック構造において、バッテリパックケース1の内部空間にバッテリモジュール2を搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とした。ジャンクションボックス5とLBコントローラ6を、温調風通路のうち一つの直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置した。ジャンクションボックス5とLBコントローラ6を接続する弱電ハーネス96を、直線通路部38aに沿って配索した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックケースの内部空間に、バッテリモジュールとジャンクションボックスとバッテリコントローラを搭載した電気自動車のバッテリパック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリパックは、バッテリパックケースの内部空間に、バッテリセルの集合体であるバッテリモジュールと、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックスと、バッテリ管理を行うバッテリコントローラと、を搭載している。このバッテリパックにおいて、バッテリモジュールとジャンクションボックスとバッテリコントローラを、強電線を束ねた強電ハーネスや弱電線を束ねた弱電ハーネスにより互いに接続した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/098271A1号公報(国際公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリパック構造にあっては、ケース内部空間を三つの分割矩形領域に区分し、三つの分割矩形領域のそれぞれにバッテリモジュールを搭載している。このとき三つのバッテリモジュールの対向側面によるT字状の隙間を、ジャンクションボックスの搭載スペースにすると共にハーネス配索経路としている。このため、互いに離れた位置に搭載されたジャンクションボックスとバッテリコントローラをハーネス接続する際、曲がった隙間経路に沿って曲げながらハーネスを配索する必要がある。この結果、ハーネス配索作業性が低いし、ハーネス耐久性を低下させてしまう、という問題があった。
【0005】
一方、バッテリパックケースの内部空間に複数のバッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間は、バッテリ温度を管理する温調風を流す温調風通路として利用される。このように、複数のバッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間を、温調風通路とハーネス配索経路として兼用すると、温調風が流れる隙間に、温調風の流れを乱すように曲がったハーネスが配索される。この結果、ハーネスが通路抵抗となって温調風のスムーズな流れを確保できない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ジャンクションボックスとバッテリコントローラのハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる電気自動車のバッテリパック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、バッテリパックケースの内部空間に、バッテリセルの集合体によるバッテリモジュールと、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックスと、バッテリ管理を行うバッテリコントローラと、を搭載したものを前提とする。
この電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間に前記バッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とした。
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを、前記温調風通路のうち一つの直線通路部に臨む離れた位置にそれぞれ配置した。
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを接続するハーネスを、前記直線通路部に沿って配索した。
【発明の効果】
【0008】
よって、ジャンクションボックスとバッテリコントローラは、バッテリパックケースの内部空間に形成された温調風通路のうち一つの直線通路部に臨む離れた位置にそれぞれ配置され、この直線通路部に沿って配索されたハーネスにより接続される。
したがって、ジャンクションボックスとバッテリコントローラをハーネス接続する際、一つの直線通路部に沿わせるだけの簡素化されたハーネス配索作業となる。このため、曲がった経路へのハーネス配索に比べ、ハーネス配索作業性が向上するし、ハーネス耐久性が向上する。
さらに、温調風通路のうち一つの直線通路部に配索されるハーネスは、直線通路部を流れる温調風の流れに沿うように真っ直ぐに延びるハーネスになる。このため、温調風の流れを乱すように曲がったハーネスが配索される場合に比べ、温調風通路の通路抵抗が低く抑えられ、温調風のスムーズな流れが確保される。
この結果、ジャンクションボックスとバッテリコントローラのハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略底面図である。
【図3】実施例1のバッテリパックBPを示す全体斜視図である。
【図4】実施例1のバッテリパックBPを示すバッテリケースアッパーカバーを外した斜視図である。
【図5】実施例1のバッテリパックBPの内部構成と温調風の流れを示すバッテリケースアッパーカバーを外した平面図である。
【図6】実施例1のバッテリパックBPの温調風ユニットの構成と温調風の流れを示す図5のA部拡大図である。
【図7】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。
【図8】実施例1のバッテリパックBP内における各パック構成要素のバスバー接続構成及びハーネス接続構成を示す回路図である。
【図9】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間における各パック構成要素のバスバー接続構成及びハーネス接続構成を示す平面図である。
【図10】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間における各パック構成要素のハーネス接続構成を示す図9の矢印B方向斜視図である。
【図11】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間における各パック構成要素のハーネス接続構成を示す図9の矢印C方向斜視図である。
【図12】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたLBコントローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成」、「バッテリ強電回路のバスバー接続構成」、「パック構成要素間のハーネス接続構成」に分けて説明する。
【0012】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び図2は、実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、図1及び図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0013】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、車体フロア100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。車体フロア100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられ、車両前方から車両後方までのフロア面凹凸を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0014】
前記バッテリパックBPは、図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0015】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0016】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0017】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0018】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3〜図6は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、図3〜図6に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0019】
実施例1のバッテリパックBPは、図3及び図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0020】
前記バッテリパックケース1は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11とバッテリパックアッパーカバー12の2部品によって構成される。
【0021】
前記バッテリパックロアフレーム11は、図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このバッテリパックロアフレーム11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このバッテリパックロアフレーム11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子12と弱電コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と車室内空調用に強電を供給する強電コネクタ端子15が取り付けられている。
【0022】
前記バッテリパックアッパーカバー12は、図3に示すように、バッテリパックロアフレーム11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このバッテリパックアッパーカバー12には、バッテリパックロアフレーム11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0023】
前記バッテリモジュール2は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造であり、各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0024】
前記第1バッテリモジュール21は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0025】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。
【0026】
前記温調風ユニット3は、図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの温調風通路に温調風(冷風、温風)を送風する。温調風ユニット3は、図6に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、温調風ダクト35と、を有して構成される。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子12を介して冷媒が導入される。
【0027】
前記SDスイッチ4は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0028】
前記ジャンクションボックス5は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。
【0029】
前記LBコントローラ6は、図4及び図5に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。
【0030】
[バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成]
図7は、実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。以下、図7に基づき、バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を説明する。
【0031】
実施例1のバッテリパックBPは、図7に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8の2つの車両前後方向領域に分けている。バッテリモジュール搭載領域7は、車両後方端から車両前方寄りの境界線Lまでのケース内部空間の大半の領域を占有する。電装品搭載領域8は、車両前方端から車両前方寄りの境界線Lまでのバッテリモジュール搭載領域7より狭い領域を占有する。
【0032】
前記バッテリモジュール搭載領域7は、T字通路(中央通路36と交差通路37)により第1分割矩形領域71と第2分割矩形領域72と第3分割矩形領域73の三つの分割矩形領域に区分される。第1分割矩形領域71には、一側面にLBコントローラ6を有する第1バッテリモジュール21が搭載される。第2分割矩形領域72には、第2バッテリモジュール22が搭載される。第3分割矩形領域73には、第3バッテリモジュール23が搭載される。
【0033】
前記電装品搭載領域8は、車幅方向に分けられた第1区分領域81と第2区分領域82と第3区分領域83の三つの区分領域に分けられる。第1区分領域81から第2区分領域82の下部にかけては、温調風ユニット3が搭載される。第2区分領域82の上部には、SDスイッチ4が搭載される。第3区分領域83には、ジャンクションボックス5が搭載される。
【0034】
前記バッテリパックBPの内部空間には、温調風ユニット3にて作り出された温調風の内部循環を確保するための温調風通路を、各バッテリモジュール21,22,23を分割矩形領域に搭載したときの隙間を利用して形成している。この温調風通路としては、温調風ユニット3から吹き出される温調風が最初に流れ出る中央通路36と、該中央通路36からの流れを車幅方向の両側に分ける交差通路37と、内部空間の外周に流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38と、を有する。中央通路36は、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の対向面に隙間を持たせることで形成される。交差通路37は、第1バッテリモジュール21と第2,第3バッテリモジュール22,23の対向面に隙間を持たせることで形成される。環状通路38は、バッテリパックロアフレーム11と各パック構成要素2,3,4,5,6との間に隙間余裕を持たせることで形成される。
【0035】
前記温調風通路としては、温調風が主に流れる通路である中央通路36と交差通路37と環状通路38以外に、ケース内部空間にパック構成要素2,3,4,5,6を搭載することにより形成される隙間や間隔や空間も含まれる。例えば、第1バッテリモジュール21については、構成要素であるバッテリセルの積み重ね隙間は、温調風の流れ方向と同じ方向となることで温調風通路になる。第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23については、4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、が温調風通路になる。電装品搭載領域8については、バッテリパックアッパーカバー12の内面と、温調風ユニット3及びジャンクションボックス5の構成部品と、の間に形成される空間が温調風通路になる。
【0036】
[バッテリ強電回路のバスバー接続構成]
図8及び図9は、実施例1のバッテリパック構造におけるバッテリ強電回路のバスバー接続構成を示す。以下、図8及び図9に基づきバッテリ強電回路のバスバー接続構成を説明する。
【0037】
実施例1のバッテリパックBPのバッテリ強電回路は、図8に示すように、図外の内部バスバーを備えた各バッテリモジュール21,22,23と、ジャンクションボックス5と、SDスイッチ4と、を互いに外部バスバー90を介して接続するというバスバー接続構成により形成される。なお、ジャンクションボックス5と充放電コネクタ端子14は、強電ハーネス91を介して接続される。
【0038】
前記バッテリ強電回路において、内部バスバーとは、各バッテリモジュール21,22,23を構成する複数のバッテリセルの端子に接続された導電プレートである。外部バスバー90とは、内部バスバーによる各端子間を、下記に述べるバッテリ強電回路を構成するように接続する導電プレートであり、第1外部バスバー90aと第2外部バスバー90bと第3外部バスバー90cを有する。第1外部バスバー90aは、図9に示すように、第1バッテリモジュール21の交差通路37に沿う側面位置に設けている。第2外部バスバー90b及び第3外部バスバー90cは、図9に示すように、第2バッテリモジュール22及び第3バッテリモジュール23の中央通路36に沿う両側面位置にそれぞれ設けている。
【0039】
前記バッテリ強電回路において、三分割された各バッテリモジュール21,22,23は、合計バッテリセル数(48枚)を二組みに分けた二分割バッテリセル数(24枚)による回路構成とする。そして、二分割バッテリセルに対して、ジャンクションボックス5とSDスイッチ4をそれぞれバスバー接続する。つまり、第1バッテリモジュール21(20枚)と第2バッテリモジュール22(2枚)と第2バッテリモジュール23(2枚)を合わせて1組(合計24枚)とする。そして、第2バッテリモジュール22(14枚−2枚=12枚)と第2バッテリモジュール23(14枚−2枚=12枚)を合わせて他の1組(合計24枚)とする。
【0040】
[パック構成要素間のハーネス接続構成]
図8〜図11は、実施例1のバッテリパック構造におけるパック構成要素間のハーネス接続構成を示す。以下、図8〜図11に基づきパック構成要素間のハーネス接続構成を説明する。
【0041】
実施例1のバッテリパックBPのパック構成要素間のハーネス接続構成としては、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成と、バッテリモジュール2とLBコントローラ6の強電ハーネス接続構成と、バッテリモジュール2とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成と、を備えている。
【0042】
・ジャンクションボックス5とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成
前記ジャンクションボックス5とLBコントローラ6は、図9に示すように、バッテリパックケース1の内部空間に形成した温調風通路のうち、環状通路38の一部であるケース一側辺に沿う直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置している。そして、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6とを接続する弱電ハーネス96(ハーネス)を、車両前後方向に延びる直線通路部38aに沿って配索している。
前記ジャンクションボックス5は、電装品搭載領域8内であって、直線通路部38aに臨む車幅方向端部位置に配置している。
前記LBコントローラ6は、複数のバッテリセルが車幅方向に縦積みされる第1バッテリモジュール21を搭載する第1分割矩形領域71内であって、直線通路部38aに臨む車幅方向端部位置に縦積み配置している。
【0043】
前記弱電ハーネス96は、図8に示すように、ジャンクションボックス5内の電流センサ53からのバッテリ電流検出信号線96aを束ねると共に、LBコントローラ6から外部の電子制御システムへの制御信号線96bを束ねたものである。バッテリ電流検出信号線96aは、充放電に伴い変化するバッテリ電流情報をLBコントローラ6に供給する。制御信号線96bは、LBコントローラ6により取得されたバッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を外部の電子制御システムへ送出する。なお、ジャンクションボックス5内のリレー回路は、外部の電子制御システムから制御信号線96bを介して送られるリレー回路のオン/オフ情報に基づき開閉動作する。
【0044】
・バッテリモジュール2とLBコントローラ6の強電ハーネス接続構成
前記バッテリモジュール2とLBコントローラ6は、図11に示すように、バッテリパックケース1の内部空間に形成した温調風通路のうち各バッテリモジュール21,22,23の一側面が共に露出する交差通路37に臨む位置にLBコントローラ6を配置している。そして、各外部バスバー90a,90b,90cとLBコントローラ6を接続する強電ハーネス97を、車幅方向に延びる交差通路37に沿って配索している。
【0045】
前記強電ハーネス97は、第1バッテリ電圧検出線97a、第2バッテリ電圧検出線97b及び第3バッテリ電圧検出線97cを束ねたものである。第1バッテリ電圧検出線97aは、第1外部バスバー90aのうちLBコントローラ6に近い側の端部位置に接続される。第2バッテリ電圧検出線97b及び第3バッテリ電圧検出線97cは、第2外部バスバー90b及び第3外部バスバー90cのうち交差通路37に近い側の2つの端部位置に接続される。
【0046】
前記強電ハーネス97は、図10に示すように、交差通路37を介して対向するバッテリモジュール21,22,23の三つの側面うち、第2,第3バッテリモジュール22,23の上面から上方に突出する第1バッテリモジュール21の上部側面部分に沿って配索している。
【0047】
前記強電ハーネス97の各バッテリ電圧検出線97a,97b,97cは、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリ電圧値をLBコントローラ6に供給する。LBコントローラ6は、供給されたバッテリ電圧値によりバッテリ電圧情報を取得するばかりでなく、バッテリ電圧値とバッテリ容量の関係特性に基づき、バッテリ容量情報を取得する。ちなみに、リチウムイオンバッテリの場合、バッテリ電圧値とバッテリ容量がリニアに対応する関係にある。
【0048】
・バッテリモジュール2とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成
前記バッテリモジュール2とLBコントローラ6は、図7に示すように、バッテリパックケース1の内部空間のうち、バッテリモジュール搭載領域7に配置している。そして、各バッテリモジュール21,22,23にそれぞれ設けた熱電対温度センサの測温接点24と、LBコントローラ6を接続する弱電ハーネス98を、ケース空間内の経路により配索している。弱電ハーネス98の配索経路は、車両前後方向に延びる環状通路38の両直線通路部38a,38bの沿った経路と、第2,第3バッテリモジュール22,23の車幅方向段差面に沿った経路を用いている。
【0049】
前記測温接点24は、図10及び図11に示すように、各バッテリモジュール21,22,23の環状通路38に露出する外周側面に設けられる。例えば、第1バッテリモジュール21の外周側面に対して2接点、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の外周側面に対してそれぞれ4接点というように複数設ける。なお、熱電対温度センサの場合、測温接点24以外に導線により基準電圧が印加される基準接点(冷接点)を有する。
【0050】
前記弱電ハーネス98は、図8に示すように、複数の測温接点24からの温度検出信号線を束ねたものであり、各バッテリモジュール21,22,23の温度検出信号をLBコントローラ6に供給する。LBコントローラ6は、供給された温度検出信号によりバッテリ温度情報を取得する。
【0051】
次に、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPの内部温度管理作用」、「パック構成要素間のハーネス接続作用」、「ジャンクションボックスとLBコントローラ間のハーネス接続作用」に分けて説明する。
【0052】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0053】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0054】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0055】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0056】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0057】
[バッテリパックBPの内部温度管理作用]
バッテリは温度依存度が高く、バッテリ温度が高いか低いかによりバッテリ性能に差が出る。このため、高いバッテリ性能を維持するには、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を管理することが必要である。以下、図5及び図6に基づき、これを反映するバッテリパックBPの内部温度管理作用を説明する。
【0058】
まず、温調用コントローラ52により行われるバッテリパックBPの温調制御作用を述べる。例えば、バッテリ充放電負荷の継続や高い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第1設定温度より高くなると、冷媒を温調風ユニット3のエバポレータ33に導入し、送風ファン32を回す。これにより、エバポレータ33を通過する風から熱が奪われて冷風が作り出される。この冷風を第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23が搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を低下させる。
【0059】
これに対し、例えば、冷風循環や低い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第2設定温度より低くなると、温調風ユニットのPTCヒータに通電し、送風ファンを回す。これにより、PTCヒータを通過する風に熱が与えられて温風が作り出される。この温風を、第1バッテリモジュールと第2バッテリモジュールと第3バッテリモジュールが搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を上昇させる。
【0060】
このように、バッテリパックBPの温調制御を行うことで、バッテリパックBPの内部温度を、高いバッテリ性能が得られる第1設定温度〜第2設定温度の範囲に維持することができる。このとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風を循環させることが重要である。
その理由は、バッテリパックBPの内部温度制御が、ケース内部空間に搭載されている第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の温度を、高性能が発揮されるバッテリ温度域に維持することを目的とすることによる。以下、温調風のケース内部空間循環作用を述べる。
【0061】
温調風ユニット3の吹き出し口から吹き出される温調風(冷風、温風)は、図5の矢印Dに示すように、まず中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる。そして、中央通路36に交差する交差通路37により、図5の矢印E,Eに示すように、中央通路36からの流れが車幅方向の両側に分けられる。即ち、中央通路36と交差通路37によるT字通路を、温調風を流す幹線通路としている。そして、T字通路を流れる温調風は、流れの途中で多方向に分岐し、下記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23と熱交換する。
【0062】
第1バッテリモジュール21の熱交換は、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、図5の矢印Fに示すセル積み重ね隙間を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、の間で主に行われる。
第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の熱交換は、図5の矢印Dに示す中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。これに加えて、図5の矢印G,Gに示す4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。さらに、図5の矢印H,Hに示す5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。
【0063】
上記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との熱交換を終えた風は、内部空間の外周に形成された環状通路38に流れ込む。環状通路38に流れ込んできた熱交換後の風は、図5の矢印I,Iに示すように、第1バッテリモジュール21に沿う車両後方側通路部にて車幅方向の両側に分けられる。そして、2つの分けられた熱交換後の風は、図5の矢印J,Jに示すように、車両両側通路部をそれぞれ車両後方から車両前方に向かって流れ、車両前方側通路部にて合流し、温調風ユニット3の吸入側に戻される。
【0064】
次に、ユニット吸入側に戻された熱交換後の風から温調風ユニット3にて冷風または温風を作り出す作用を説明する。ユニット吸入側に戻された熱交換後の風は、図6の矢印に示すように、ユニットケース31内のエバポレータ33と送風ファン32を経過し、次いで、温調風ダクト35に設けられたPTCヒータ34を経過し、ダクト吹き出し口から中央通路36に吹き出される。このとき、エバポレータ33に冷媒を導入し、PTCヒータ34の通電を停止し、送風ファン32を回すと、熱交換後の風からエバポレータ33により熱が奪われて冷風が作り出される。一方、エバポレータ33への冷媒導入を停止し、PTCヒータ34を通電し、送風ファン32を回すと、PTCヒータ34を通過する熱交換後の風にPTCヒータ34から熱が与えられて温風が作り出される。
【0065】
上記のように、実施例1では、ケース内部空間に中央通路36と交差通路37と環状通路38を形成し、二系統から合流した熱交換後の風を吸い込み、作り出した温調風を中央通路36に吹き出す位置に温調風ユニット3を配置する構成を採用した。
この構成により、バッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により制御するとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風が循環する。
このように、バッテリパックBPの温調制御において、制御精度や制御応答性が高まるため、バッテリパックBPの内部温度変動範囲を狭い範囲に抑えることができる。言い換えると、バッテリパックBPの内部温度を、意図する高いバッテリ性能を発揮する最適温度域に維持することができる。
【0066】
[パック構成要素間のハーネス接続作用]
バッテリパックBPは、ケース内部空間に搭載されているパック構成要素を互いにハーネス接続するが、できる限りハーネス接続作業を簡素化する必要がある。以下、これを反映するパック構成要素間のハーネス接続作用を説明する。
まず、LBコントローラ6は、図12に示すように、4つの強電コネクタ端子61,62,63,64と2つの弱電コネクタ端子65,66を備えている。これらのコネクタ端子61,62,63,64,65,66には、弱電ハーネス96と強電ハーネス97と弱電ハーネス98が接続される。
【0067】
前記弱電ハーネス96によるハーネス接続作用を説明する。弱電ハーネス96を、図9に示すように、弱電ハーネス96を環状通路38の直線通路部38aに沿って配索し、弱電ハーネス96を固定具により複数箇所にて止める。そして、弱電ハーネス96の両端部に設けたコネクタの一方を、ジャンクションボックス5側のコネクタに接続する。弱電ハーネス96の両端部に設けたコネクタの他方を、図10に示すように、弱電コネクタ端子66に差し込む。これにより、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6が、弱電ハーネス96を介して接続される。
【0068】
前記強電ハーネス97によるハーネス接続作用を説明する。強電ハーネス97を、図9に示すように、強電ハーネス97を交差通路37に沿って配索し、強電ハーネス97を固定具により複数箇所にて止める。そして、強電ハーネス97の両端部に設けたコネクタの一方を、各電圧検出線97a,97b,97cの端部に設けたコネクタに接続する。強電ハーネス97の両端部に設けたコネクタの他方を、図10に示すように、4つの強電コネクタ端子61,62,63,64に差し込む。これにより、各バッテリモジュール21,22,23とLBコントローラ6が、強電ハーネス97を介して接続される。
【0069】
前記弱電ハーネス98によるハーネス接続作用を説明する。弱電ハーネス98を、図9に示すように、弱電ハーネス98を車両前後方向に延びる環状通路38の両直線通路部38a,38bと、第2,第3バッテリモジュール22,23の車幅方向段差面と、に沿って配索する。そして、弱電ハーネス98を固定具により複数箇所にて止め、弱電ハーネス98の両端部に設けたコネクタの一方を、各温度検出信号線の端部に設けたコネクタに接続する。弱電ハーネス98の両端部に設けたコネクタの他方を、図10に示すように、弱電コネクタ端子65に差し込む。これにより、各バッテリモジュール21,22,23とLBコントローラ6が、弱電ハーネス98を介して接続される。
【0070】
このように、弱電ハーネス96と強電ハーネス97と弱電ハーネス98の接続作業は、いずれもハーネス配索・ハーネス止め・コネクタ接続によりなされるが、これらの作業のうち、特に、ハーネス配索が簡素化される。つまり、弱電ハーネス96は、環状通路38の直線通路部38aに沿って短いハーネスを直線に配索するだけである。強電ハーネス97は、交差通路37に沿って短いハーネスを直線的に配索するだけである。弱電ハーネス98は、各バッテリモジュール21,22,23の外周面に沿って平面視でH字状に配索するだけである。即ち、各ハーネスをコーナーや溝等に沿って複雑に屈曲させながら配索する必要がなく、曲がった経路へのハーネス配索に比べ、ハーネス配索作業性が向上するし、ハーネス耐久性が向上する。
【0071】
[ジャンクションボックスとLBコントローラ間のハーネス接続作用]
ケース内部空間で行われるハーネス接続において、ハーネス配索作業の簡素化に加え、温調風通路に配索されたハーネスが温調風の流れを阻害する要因にならないようにすることが必要である。以下、これを反映するジャンクションボックスとLBコントローラ間のハーネス接続作用を説明する。
【0072】
実施例1では、温調風通路のうち一つの直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置されたジャンクションボックス5とLBコントローラ6が、一つの直線通路部38aに沿って配索された弱電ハーネス96により接続される構成を採用した(図9)。
この構成により、温調風通路のうち環状通路38の一つの直線通路部38aに配索される弱電ハーネス96は、図9に示すように、直線通路部38aを流れる温調風の流れに沿うように真っ直ぐに延びるハーネスになる。このため、温調風の流れを乱すように曲がったハーネスが配索される場合に比べ、温調風通路の通路抵抗が低く抑えられ、温調風のスムーズな流れが確保される。
このため、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6のハーネス接続において、上記のように、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる。
【0073】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部空間を、車両前後方向に分割してバッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8を形成し、ジャンクションボックス5を、電装品搭載領域8内に配置する構成を採用した(図7)。
【0074】
例えば、ジャンクションボックスを、バッテリモジュール搭載領域であって、車幅方向に並んでいる2つのバッテリモジュールの対向する間隔の位置(実施例1の中央通路36に相当する位置)に配置したものを比較例とする。この比較例の場合、バッテリパックケース幅が予め決まっているとすると、2つのバッテリモジュールの車幅方向搭載幅は、ジャンクションボックスの占有幅を除いた幅となり、バッテリ搭載スペースが狭くなる。これに対し、バッテリモジュール搭載領域7から区分された電装品搭載領域8内にジャンクションボックス5を配置したことで、ジャンクションボックス5がバッテリモジュール2の車幅方向搭載幅を狭くする要因とはならず、バッテリ搭載スペースが確保される。
【0075】
例えば、バッテリモジュール搭載領域であって、車幅方向に並んでいる2つのバッテリモジュールの対向する間隔を温調風通路にしたものを比較例とする。この比較例の場合、ジャンクションボックスが温調風通路に配置されることで、ジャンクションボックスが温調風の流れる通路断面積を狭くする。これに対し、バッテリモジュール搭載領域7から区分された電装品搭載領域8内にジャンクションボックス5を配置した、言い換えると、ジャンクションボックス5を温調風通路から外れる配置とした。このため、ジャンクションボックス5が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、バッテリモジュール搭載領域7を流れる温調風の流量が確保される。
【0076】
実施例1では、バッテリモジュール搭載領域7を、複数のバッテリモジュール21,22,23を搭載する複数の分割矩形領域71,72,73に区分した。そして、LBコントローラ6を、複数の分割矩形領域71,72,73のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされる第1バッテリモジュール21を搭載する第1分割矩形領域71内に縦積み配置する構成を採用した(図9)。
【0077】
例えば、バッテリモジュール搭載領域を、複数のバッテリモジュールのみを搭載する複数の分割矩形領域に分け、LBコントローラを複数の分割矩形領域から外れた領域に配置したものを比較例とする。この比較例の場合、分割矩形領域が温調風通路を確保するように分けられるものである以上、分割矩形領域から外れた領域に配置したLBコントローラは、温調風通路を狭くする要因になる。これに対し、LBコントローラ6を、第1バッテリモジュール21を搭載する第1分割矩形領域71内に配置したことで、LBコントローラ6が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、ケース内部空間内を流れる温調風の流量が確保される。
【0078】
例えば、LBコントローラを複数の分割矩形領域内であるが、平積みにより配置したものを比較例とする。この比較例の場合、平積みされたLBコントローラの占有面積が広くなり、その分、バッテリ搭載スペースが狭くなる。これに対し、LBコントローラ6をバッテリセルと共に縦積み配置したことで、LBコントローラ6による占有面積が狭く抑えられ、LBコントローラ6をバッテリモジュール搭載領域7に搭載しながらも、最大限のバッテリ搭載スペースが確保される。
【0079】
実施例1では、温調風通路を、複数のバッテリモジュール21,22,23と熱交換した後、ケース内部空間の外周に流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38を有する通路とした。そして、直線通路部38aを、環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とする構成を採用した(図9)。
【0080】
上記温調風のケース内部空間循環作用を述べたように、中央通路36と交差通路37によるT字通路を、温調風を流す幹線通路としている。したがって、弱電ハーネス96を中央通路36や交差通路37に配索した場合と、弱電ハーネス96を環状通路38に配索した場合を比べると、中央通路36や交差通路37に配索した場合の方がケース内部空間循環効率の低下幅が大きくなる。これに対し、環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路を、弱電ハーネス96を配索する直線通路部38aとしているため、ケース内部空間循環効率の低下が小さく抑えられる。
【0081】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0082】
(1) バッテリパックケース1の内部空間に、バッテリセルの集合体によるバッテリモジュール2と、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックス5と、バッテリ管理を行うバッテリコントローラ(LBコントローラ6)と、を搭載した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケース1の内部空間に前記バッテリモジュール2を搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とし、
前記ジャンクションボックス5と前記バッテリコントローラ(LBコントローラ6)を、前記温調風通路のうち一つの直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置し、
前記ジャンクションボックス5と前記バッテリコントローラ(LBコントローラ6)を接続するハーネス(弱電ハーネス96)を、前記直線通路部38aに沿って配索した。
このため、ジャンクションボックス5とバッテリコントローラ(LBコントローラ6)のハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる。
【0083】
(2) 前記バッテリパックケース1の内部空間を、車両前後方向に分割してバッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8を形成し、
前記ジャンクションボックス5を、前記電装品搭載領域8内に配置した。
このため、(1)の効果に加え、ジャンクションボックス5がバッテリモジュール2の車幅方向搭載幅を狭くする要因とはならず、バッテリ搭載スペースを確保することができると共に、ジャンクションボックス5が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、バッテリモジュール搭載領域7を流れる温調風の流量を確保することができる。
【0084】
(3) 前記バッテリモジュール搭載領域7を、複数のバッテリモジュール21,22,23を搭載する複数の分割矩形領域71,72,73に区分し、
前記バッテリコントローラ(LBコントローラ6)を、前記複数の分割矩形領域71,72,73のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされるバッテリモジュール(第1バッテリモジュール21)を搭載する分割矩形領域(第1分割矩形領域7)内に縦積み配置した。
このため、(2)の効果に加え、バッテリコントローラ(LBコントローラ6)が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、ケース内部空間内を流れる温調風の流量を確保することができると共に、バッテリコントローラ(LBコントローラ6)をバッテリモジュール搭載領域7に搭載しながらも、最大限のバッテリ搭載スペースを確保することができる。
【0085】
(4) 前記温調風通路を、前記複数のバッテリモジュール21,22,23と熱交換した後、ケース内部空間の外周に流れ込んできた温調風を戻す環状通路38を有する通路とし、
前記直線通路部38aを、前記環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とした。
このため、(3)の効果に加え、熱交換前の温調風を流す幹線通路にハーネス(弱電ハーネス96)を配索する場合に比べ、ケース内部空間循環効率の低下を小さく抑えることができる。
【0086】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0087】
実施例1では、バッテリモジュール2として、三分割によるバッテリモジュール21,22,23を三分割矩形領域71,72,73にそれぞれ搭載する例を示した。しかし、バッテリモジュールとしては、1つのモジュールの例であっても良いし、二分割によるバッテリモジュールの例であっても良いし、四分割以上の分割によるバッテリモジュールの例であっても良い。さらに、多分割の場合、分割手法も実施例1のように、T字通路により分割する手法に限られることなく、様々な分割手法による例としても良い。
【0088】
実施例1では、ケース内部空間を、バッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8に車両前後方向に分割し、電装品搭載領域8にジャンクションボックス5を配置する例を示した。しかし、バッテリモジュール搭載領域と電装品搭載領域を分割することなく、ジャンクションボックスをLBコントローラから離れた位置に配置する例であっても良い。
【0089】
実施例1では、LBコントローラ6を、複数の分割矩形領域71,72,73のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされる第1バッテリモジュール71を搭載する第1分割矩形領域71内に縦積み配置する例を示した。しかし、バッテリモジュール搭載領域と電装品搭載領域を分割することなく、LBコントローラをジャンクションボックスから離れた位置に配置する例であっても良い。
【0090】
実施例1では、直線通路部38aを、熱交換後の温調風を戻す環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とする例を示した。しかし、ハーネスを配索する直線通路部は、熱交換後の温調風を戻す環状通路の一部通路には限られないし、温調風通路を構成する直線状の通路部であれば、車幅方向の通路であっても車両前後方向の通路であっても良い。
【0091】
実施例1では、本発明のバッテリパック構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、バッテリモジュールとジャンクションボックスとバッテリコントローラを搭載したバッテリパックを備えた電気自動車であれば適用できる。
【符号の説明】
【0092】
BP バッテリパック
1 バッテリパックケース
2 バッテリモジュール
21 第1バッテリモジュール
22 第2バッテリモジュール
23 第3バッテリモジュール
3 温調風ユニット
36 中央通路
37 交差通路
38 環状通路
38a 直線通路部
4 SDスイッチ
5 ジャンクションボックス
6 LBコントローラ(バッテリコントローラ)
7 バッテリモジュール搭載領域
71 第1分割矩形領域
72 第2分割矩形領域
73 第3分割矩形領域
8 電装品搭載領域
96 弱電ハーネス(ハーネス)
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックケースの内部空間に、バッテリモジュールとジャンクションボックスとバッテリコントローラを搭載した電気自動車のバッテリパック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリパックは、バッテリパックケースの内部空間に、バッテリセルの集合体であるバッテリモジュールと、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックスと、バッテリ管理を行うバッテリコントローラと、を搭載している。このバッテリパックにおいて、バッテリモジュールとジャンクションボックスとバッテリコントローラを、強電線を束ねた強電ハーネスや弱電線を束ねた弱電ハーネスにより互いに接続した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/098271A1号公報(国際公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリパック構造にあっては、ケース内部空間を三つの分割矩形領域に区分し、三つの分割矩形領域のそれぞれにバッテリモジュールを搭載している。このとき三つのバッテリモジュールの対向側面によるT字状の隙間を、ジャンクションボックスの搭載スペースにすると共にハーネス配索経路としている。このため、互いに離れた位置に搭載されたジャンクションボックスとバッテリコントローラをハーネス接続する際、曲がった隙間経路に沿って曲げながらハーネスを配索する必要がある。この結果、ハーネス配索作業性が低いし、ハーネス耐久性を低下させてしまう、という問題があった。
【0005】
一方、バッテリパックケースの内部空間に複数のバッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間は、バッテリ温度を管理する温調風を流す温調風通路として利用される。このように、複数のバッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間を、温調風通路とハーネス配索経路として兼用すると、温調風が流れる隙間に、温調風の流れを乱すように曲がったハーネスが配索される。この結果、ハーネスが通路抵抗となって温調風のスムーズな流れを確保できない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ジャンクションボックスとバッテリコントローラのハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる電気自動車のバッテリパック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、バッテリパックケースの内部空間に、バッテリセルの集合体によるバッテリモジュールと、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックスと、バッテリ管理を行うバッテリコントローラと、を搭載したものを前提とする。
この電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間に前記バッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とした。
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを、前記温調風通路のうち一つの直線通路部に臨む離れた位置にそれぞれ配置した。
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを接続するハーネスを、前記直線通路部に沿って配索した。
【発明の効果】
【0008】
よって、ジャンクションボックスとバッテリコントローラは、バッテリパックケースの内部空間に形成された温調風通路のうち一つの直線通路部に臨む離れた位置にそれぞれ配置され、この直線通路部に沿って配索されたハーネスにより接続される。
したがって、ジャンクションボックスとバッテリコントローラをハーネス接続する際、一つの直線通路部に沿わせるだけの簡素化されたハーネス配索作業となる。このため、曲がった経路へのハーネス配索に比べ、ハーネス配索作業性が向上するし、ハーネス耐久性が向上する。
さらに、温調風通路のうち一つの直線通路部に配索されるハーネスは、直線通路部を流れる温調風の流れに沿うように真っ直ぐに延びるハーネスになる。このため、温調風の流れを乱すように曲がったハーネスが配索される場合に比べ、温調風通路の通路抵抗が低く抑えられ、温調風のスムーズな流れが確保される。
この結果、ジャンクションボックスとバッテリコントローラのハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略底面図である。
【図3】実施例1のバッテリパックBPを示す全体斜視図である。
【図4】実施例1のバッテリパックBPを示すバッテリケースアッパーカバーを外した斜視図である。
【図5】実施例1のバッテリパックBPの内部構成と温調風の流れを示すバッテリケースアッパーカバーを外した平面図である。
【図6】実施例1のバッテリパックBPの温調風ユニットの構成と温調風の流れを示す図5のA部拡大図である。
【図7】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。
【図8】実施例1のバッテリパックBP内における各パック構成要素のバスバー接続構成及びハーネス接続構成を示す回路図である。
【図9】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間における各パック構成要素のバスバー接続構成及びハーネス接続構成を示す平面図である。
【図10】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間における各パック構成要素のハーネス接続構成を示す図9の矢印B方向斜視図である。
【図11】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間における各パック構成要素のハーネス接続構成を示す図9の矢印C方向斜視図である。
【図12】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたLBコントローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成」、「バッテリ強電回路のバスバー接続構成」、「パック構成要素間のハーネス接続構成」に分けて説明する。
【0012】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び図2は、実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、図1及び図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0013】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、車体フロア100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。車体フロア100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられ、車両前方から車両後方までのフロア面凹凸を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0014】
前記バッテリパックBPは、図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0015】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0016】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0017】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0018】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3〜図6は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、図3〜図6に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0019】
実施例1のバッテリパックBPは、図3及び図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0020】
前記バッテリパックケース1は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11とバッテリパックアッパーカバー12の2部品によって構成される。
【0021】
前記バッテリパックロアフレーム11は、図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このバッテリパックロアフレーム11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このバッテリパックロアフレーム11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子12と弱電コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と車室内空調用に強電を供給する強電コネクタ端子15が取り付けられている。
【0022】
前記バッテリパックアッパーカバー12は、図3に示すように、バッテリパックロアフレーム11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このバッテリパックアッパーカバー12には、バッテリパックロアフレーム11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0023】
前記バッテリモジュール2は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造であり、各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0024】
前記第1バッテリモジュール21は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0025】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。
【0026】
前記温調風ユニット3は、図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの温調風通路に温調風(冷風、温風)を送風する。温調風ユニット3は、図6に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、温調風ダクト35と、を有して構成される。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子12を介して冷媒が導入される。
【0027】
前記SDスイッチ4は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0028】
前記ジャンクションボックス5は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。
【0029】
前記LBコントローラ6は、図4及び図5に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。
【0030】
[バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成]
図7は、実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。以下、図7に基づき、バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を説明する。
【0031】
実施例1のバッテリパックBPは、図7に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8の2つの車両前後方向領域に分けている。バッテリモジュール搭載領域7は、車両後方端から車両前方寄りの境界線Lまでのケース内部空間の大半の領域を占有する。電装品搭載領域8は、車両前方端から車両前方寄りの境界線Lまでのバッテリモジュール搭載領域7より狭い領域を占有する。
【0032】
前記バッテリモジュール搭載領域7は、T字通路(中央通路36と交差通路37)により第1分割矩形領域71と第2分割矩形領域72と第3分割矩形領域73の三つの分割矩形領域に区分される。第1分割矩形領域71には、一側面にLBコントローラ6を有する第1バッテリモジュール21が搭載される。第2分割矩形領域72には、第2バッテリモジュール22が搭載される。第3分割矩形領域73には、第3バッテリモジュール23が搭載される。
【0033】
前記電装品搭載領域8は、車幅方向に分けられた第1区分領域81と第2区分領域82と第3区分領域83の三つの区分領域に分けられる。第1区分領域81から第2区分領域82の下部にかけては、温調風ユニット3が搭載される。第2区分領域82の上部には、SDスイッチ4が搭載される。第3区分領域83には、ジャンクションボックス5が搭載される。
【0034】
前記バッテリパックBPの内部空間には、温調風ユニット3にて作り出された温調風の内部循環を確保するための温調風通路を、各バッテリモジュール21,22,23を分割矩形領域に搭載したときの隙間を利用して形成している。この温調風通路としては、温調風ユニット3から吹き出される温調風が最初に流れ出る中央通路36と、該中央通路36からの流れを車幅方向の両側に分ける交差通路37と、内部空間の外周に流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38と、を有する。中央通路36は、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の対向面に隙間を持たせることで形成される。交差通路37は、第1バッテリモジュール21と第2,第3バッテリモジュール22,23の対向面に隙間を持たせることで形成される。環状通路38は、バッテリパックロアフレーム11と各パック構成要素2,3,4,5,6との間に隙間余裕を持たせることで形成される。
【0035】
前記温調風通路としては、温調風が主に流れる通路である中央通路36と交差通路37と環状通路38以外に、ケース内部空間にパック構成要素2,3,4,5,6を搭載することにより形成される隙間や間隔や空間も含まれる。例えば、第1バッテリモジュール21については、構成要素であるバッテリセルの積み重ね隙間は、温調風の流れ方向と同じ方向となることで温調風通路になる。第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23については、4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、が温調風通路になる。電装品搭載領域8については、バッテリパックアッパーカバー12の内面と、温調風ユニット3及びジャンクションボックス5の構成部品と、の間に形成される空間が温調風通路になる。
【0036】
[バッテリ強電回路のバスバー接続構成]
図8及び図9は、実施例1のバッテリパック構造におけるバッテリ強電回路のバスバー接続構成を示す。以下、図8及び図9に基づきバッテリ強電回路のバスバー接続構成を説明する。
【0037】
実施例1のバッテリパックBPのバッテリ強電回路は、図8に示すように、図外の内部バスバーを備えた各バッテリモジュール21,22,23と、ジャンクションボックス5と、SDスイッチ4と、を互いに外部バスバー90を介して接続するというバスバー接続構成により形成される。なお、ジャンクションボックス5と充放電コネクタ端子14は、強電ハーネス91を介して接続される。
【0038】
前記バッテリ強電回路において、内部バスバーとは、各バッテリモジュール21,22,23を構成する複数のバッテリセルの端子に接続された導電プレートである。外部バスバー90とは、内部バスバーによる各端子間を、下記に述べるバッテリ強電回路を構成するように接続する導電プレートであり、第1外部バスバー90aと第2外部バスバー90bと第3外部バスバー90cを有する。第1外部バスバー90aは、図9に示すように、第1バッテリモジュール21の交差通路37に沿う側面位置に設けている。第2外部バスバー90b及び第3外部バスバー90cは、図9に示すように、第2バッテリモジュール22及び第3バッテリモジュール23の中央通路36に沿う両側面位置にそれぞれ設けている。
【0039】
前記バッテリ強電回路において、三分割された各バッテリモジュール21,22,23は、合計バッテリセル数(48枚)を二組みに分けた二分割バッテリセル数(24枚)による回路構成とする。そして、二分割バッテリセルに対して、ジャンクションボックス5とSDスイッチ4をそれぞれバスバー接続する。つまり、第1バッテリモジュール21(20枚)と第2バッテリモジュール22(2枚)と第2バッテリモジュール23(2枚)を合わせて1組(合計24枚)とする。そして、第2バッテリモジュール22(14枚−2枚=12枚)と第2バッテリモジュール23(14枚−2枚=12枚)を合わせて他の1組(合計24枚)とする。
【0040】
[パック構成要素間のハーネス接続構成]
図8〜図11は、実施例1のバッテリパック構造におけるパック構成要素間のハーネス接続構成を示す。以下、図8〜図11に基づきパック構成要素間のハーネス接続構成を説明する。
【0041】
実施例1のバッテリパックBPのパック構成要素間のハーネス接続構成としては、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成と、バッテリモジュール2とLBコントローラ6の強電ハーネス接続構成と、バッテリモジュール2とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成と、を備えている。
【0042】
・ジャンクションボックス5とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成
前記ジャンクションボックス5とLBコントローラ6は、図9に示すように、バッテリパックケース1の内部空間に形成した温調風通路のうち、環状通路38の一部であるケース一側辺に沿う直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置している。そして、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6とを接続する弱電ハーネス96(ハーネス)を、車両前後方向に延びる直線通路部38aに沿って配索している。
前記ジャンクションボックス5は、電装品搭載領域8内であって、直線通路部38aに臨む車幅方向端部位置に配置している。
前記LBコントローラ6は、複数のバッテリセルが車幅方向に縦積みされる第1バッテリモジュール21を搭載する第1分割矩形領域71内であって、直線通路部38aに臨む車幅方向端部位置に縦積み配置している。
【0043】
前記弱電ハーネス96は、図8に示すように、ジャンクションボックス5内の電流センサ53からのバッテリ電流検出信号線96aを束ねると共に、LBコントローラ6から外部の電子制御システムへの制御信号線96bを束ねたものである。バッテリ電流検出信号線96aは、充放電に伴い変化するバッテリ電流情報をLBコントローラ6に供給する。制御信号線96bは、LBコントローラ6により取得されたバッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を外部の電子制御システムへ送出する。なお、ジャンクションボックス5内のリレー回路は、外部の電子制御システムから制御信号線96bを介して送られるリレー回路のオン/オフ情報に基づき開閉動作する。
【0044】
・バッテリモジュール2とLBコントローラ6の強電ハーネス接続構成
前記バッテリモジュール2とLBコントローラ6は、図11に示すように、バッテリパックケース1の内部空間に形成した温調風通路のうち各バッテリモジュール21,22,23の一側面が共に露出する交差通路37に臨む位置にLBコントローラ6を配置している。そして、各外部バスバー90a,90b,90cとLBコントローラ6を接続する強電ハーネス97を、車幅方向に延びる交差通路37に沿って配索している。
【0045】
前記強電ハーネス97は、第1バッテリ電圧検出線97a、第2バッテリ電圧検出線97b及び第3バッテリ電圧検出線97cを束ねたものである。第1バッテリ電圧検出線97aは、第1外部バスバー90aのうちLBコントローラ6に近い側の端部位置に接続される。第2バッテリ電圧検出線97b及び第3バッテリ電圧検出線97cは、第2外部バスバー90b及び第3外部バスバー90cのうち交差通路37に近い側の2つの端部位置に接続される。
【0046】
前記強電ハーネス97は、図10に示すように、交差通路37を介して対向するバッテリモジュール21,22,23の三つの側面うち、第2,第3バッテリモジュール22,23の上面から上方に突出する第1バッテリモジュール21の上部側面部分に沿って配索している。
【0047】
前記強電ハーネス97の各バッテリ電圧検出線97a,97b,97cは、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリ電圧値をLBコントローラ6に供給する。LBコントローラ6は、供給されたバッテリ電圧値によりバッテリ電圧情報を取得するばかりでなく、バッテリ電圧値とバッテリ容量の関係特性に基づき、バッテリ容量情報を取得する。ちなみに、リチウムイオンバッテリの場合、バッテリ電圧値とバッテリ容量がリニアに対応する関係にある。
【0048】
・バッテリモジュール2とLBコントローラ6の弱電ハーネス接続構成
前記バッテリモジュール2とLBコントローラ6は、図7に示すように、バッテリパックケース1の内部空間のうち、バッテリモジュール搭載領域7に配置している。そして、各バッテリモジュール21,22,23にそれぞれ設けた熱電対温度センサの測温接点24と、LBコントローラ6を接続する弱電ハーネス98を、ケース空間内の経路により配索している。弱電ハーネス98の配索経路は、車両前後方向に延びる環状通路38の両直線通路部38a,38bの沿った経路と、第2,第3バッテリモジュール22,23の車幅方向段差面に沿った経路を用いている。
【0049】
前記測温接点24は、図10及び図11に示すように、各バッテリモジュール21,22,23の環状通路38に露出する外周側面に設けられる。例えば、第1バッテリモジュール21の外周側面に対して2接点、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の外周側面に対してそれぞれ4接点というように複数設ける。なお、熱電対温度センサの場合、測温接点24以外に導線により基準電圧が印加される基準接点(冷接点)を有する。
【0050】
前記弱電ハーネス98は、図8に示すように、複数の測温接点24からの温度検出信号線を束ねたものであり、各バッテリモジュール21,22,23の温度検出信号をLBコントローラ6に供給する。LBコントローラ6は、供給された温度検出信号によりバッテリ温度情報を取得する。
【0051】
次に、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPの内部温度管理作用」、「パック構成要素間のハーネス接続作用」、「ジャンクションボックスとLBコントローラ間のハーネス接続作用」に分けて説明する。
【0052】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0053】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0054】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0055】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0056】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0057】
[バッテリパックBPの内部温度管理作用]
バッテリは温度依存度が高く、バッテリ温度が高いか低いかによりバッテリ性能に差が出る。このため、高いバッテリ性能を維持するには、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を管理することが必要である。以下、図5及び図6に基づき、これを反映するバッテリパックBPの内部温度管理作用を説明する。
【0058】
まず、温調用コントローラ52により行われるバッテリパックBPの温調制御作用を述べる。例えば、バッテリ充放電負荷の継続や高い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第1設定温度より高くなると、冷媒を温調風ユニット3のエバポレータ33に導入し、送風ファン32を回す。これにより、エバポレータ33を通過する風から熱が奪われて冷風が作り出される。この冷風を第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23が搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を低下させる。
【0059】
これに対し、例えば、冷風循環や低い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第2設定温度より低くなると、温調風ユニットのPTCヒータに通電し、送風ファンを回す。これにより、PTCヒータを通過する風に熱が与えられて温風が作り出される。この温風を、第1バッテリモジュールと第2バッテリモジュールと第3バッテリモジュールが搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を上昇させる。
【0060】
このように、バッテリパックBPの温調制御を行うことで、バッテリパックBPの内部温度を、高いバッテリ性能が得られる第1設定温度〜第2設定温度の範囲に維持することができる。このとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風を循環させることが重要である。
その理由は、バッテリパックBPの内部温度制御が、ケース内部空間に搭載されている第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の温度を、高性能が発揮されるバッテリ温度域に維持することを目的とすることによる。以下、温調風のケース内部空間循環作用を述べる。
【0061】
温調風ユニット3の吹き出し口から吹き出される温調風(冷風、温風)は、図5の矢印Dに示すように、まず中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる。そして、中央通路36に交差する交差通路37により、図5の矢印E,Eに示すように、中央通路36からの流れが車幅方向の両側に分けられる。即ち、中央通路36と交差通路37によるT字通路を、温調風を流す幹線通路としている。そして、T字通路を流れる温調風は、流れの途中で多方向に分岐し、下記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23と熱交換する。
【0062】
第1バッテリモジュール21の熱交換は、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、図5の矢印Fに示すセル積み重ね隙間を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、の間で主に行われる。
第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の熱交換は、図5の矢印Dに示す中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。これに加えて、図5の矢印G,Gに示す4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。さらに、図5の矢印H,Hに示す5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。
【0063】
上記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との熱交換を終えた風は、内部空間の外周に形成された環状通路38に流れ込む。環状通路38に流れ込んできた熱交換後の風は、図5の矢印I,Iに示すように、第1バッテリモジュール21に沿う車両後方側通路部にて車幅方向の両側に分けられる。そして、2つの分けられた熱交換後の風は、図5の矢印J,Jに示すように、車両両側通路部をそれぞれ車両後方から車両前方に向かって流れ、車両前方側通路部にて合流し、温調風ユニット3の吸入側に戻される。
【0064】
次に、ユニット吸入側に戻された熱交換後の風から温調風ユニット3にて冷風または温風を作り出す作用を説明する。ユニット吸入側に戻された熱交換後の風は、図6の矢印に示すように、ユニットケース31内のエバポレータ33と送風ファン32を経過し、次いで、温調風ダクト35に設けられたPTCヒータ34を経過し、ダクト吹き出し口から中央通路36に吹き出される。このとき、エバポレータ33に冷媒を導入し、PTCヒータ34の通電を停止し、送風ファン32を回すと、熱交換後の風からエバポレータ33により熱が奪われて冷風が作り出される。一方、エバポレータ33への冷媒導入を停止し、PTCヒータ34を通電し、送風ファン32を回すと、PTCヒータ34を通過する熱交換後の風にPTCヒータ34から熱が与えられて温風が作り出される。
【0065】
上記のように、実施例1では、ケース内部空間に中央通路36と交差通路37と環状通路38を形成し、二系統から合流した熱交換後の風を吸い込み、作り出した温調風を中央通路36に吹き出す位置に温調風ユニット3を配置する構成を採用した。
この構成により、バッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により制御するとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風が循環する。
このように、バッテリパックBPの温調制御において、制御精度や制御応答性が高まるため、バッテリパックBPの内部温度変動範囲を狭い範囲に抑えることができる。言い換えると、バッテリパックBPの内部温度を、意図する高いバッテリ性能を発揮する最適温度域に維持することができる。
【0066】
[パック構成要素間のハーネス接続作用]
バッテリパックBPは、ケース内部空間に搭載されているパック構成要素を互いにハーネス接続するが、できる限りハーネス接続作業を簡素化する必要がある。以下、これを反映するパック構成要素間のハーネス接続作用を説明する。
まず、LBコントローラ6は、図12に示すように、4つの強電コネクタ端子61,62,63,64と2つの弱電コネクタ端子65,66を備えている。これらのコネクタ端子61,62,63,64,65,66には、弱電ハーネス96と強電ハーネス97と弱電ハーネス98が接続される。
【0067】
前記弱電ハーネス96によるハーネス接続作用を説明する。弱電ハーネス96を、図9に示すように、弱電ハーネス96を環状通路38の直線通路部38aに沿って配索し、弱電ハーネス96を固定具により複数箇所にて止める。そして、弱電ハーネス96の両端部に設けたコネクタの一方を、ジャンクションボックス5側のコネクタに接続する。弱電ハーネス96の両端部に設けたコネクタの他方を、図10に示すように、弱電コネクタ端子66に差し込む。これにより、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6が、弱電ハーネス96を介して接続される。
【0068】
前記強電ハーネス97によるハーネス接続作用を説明する。強電ハーネス97を、図9に示すように、強電ハーネス97を交差通路37に沿って配索し、強電ハーネス97を固定具により複数箇所にて止める。そして、強電ハーネス97の両端部に設けたコネクタの一方を、各電圧検出線97a,97b,97cの端部に設けたコネクタに接続する。強電ハーネス97の両端部に設けたコネクタの他方を、図10に示すように、4つの強電コネクタ端子61,62,63,64に差し込む。これにより、各バッテリモジュール21,22,23とLBコントローラ6が、強電ハーネス97を介して接続される。
【0069】
前記弱電ハーネス98によるハーネス接続作用を説明する。弱電ハーネス98を、図9に示すように、弱電ハーネス98を車両前後方向に延びる環状通路38の両直線通路部38a,38bと、第2,第3バッテリモジュール22,23の車幅方向段差面と、に沿って配索する。そして、弱電ハーネス98を固定具により複数箇所にて止め、弱電ハーネス98の両端部に設けたコネクタの一方を、各温度検出信号線の端部に設けたコネクタに接続する。弱電ハーネス98の両端部に設けたコネクタの他方を、図10に示すように、弱電コネクタ端子65に差し込む。これにより、各バッテリモジュール21,22,23とLBコントローラ6が、弱電ハーネス98を介して接続される。
【0070】
このように、弱電ハーネス96と強電ハーネス97と弱電ハーネス98の接続作業は、いずれもハーネス配索・ハーネス止め・コネクタ接続によりなされるが、これらの作業のうち、特に、ハーネス配索が簡素化される。つまり、弱電ハーネス96は、環状通路38の直線通路部38aに沿って短いハーネスを直線に配索するだけである。強電ハーネス97は、交差通路37に沿って短いハーネスを直線的に配索するだけである。弱電ハーネス98は、各バッテリモジュール21,22,23の外周面に沿って平面視でH字状に配索するだけである。即ち、各ハーネスをコーナーや溝等に沿って複雑に屈曲させながら配索する必要がなく、曲がった経路へのハーネス配索に比べ、ハーネス配索作業性が向上するし、ハーネス耐久性が向上する。
【0071】
[ジャンクションボックスとLBコントローラ間のハーネス接続作用]
ケース内部空間で行われるハーネス接続において、ハーネス配索作業の簡素化に加え、温調風通路に配索されたハーネスが温調風の流れを阻害する要因にならないようにすることが必要である。以下、これを反映するジャンクションボックスとLBコントローラ間のハーネス接続作用を説明する。
【0072】
実施例1では、温調風通路のうち一つの直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置されたジャンクションボックス5とLBコントローラ6が、一つの直線通路部38aに沿って配索された弱電ハーネス96により接続される構成を採用した(図9)。
この構成により、温調風通路のうち環状通路38の一つの直線通路部38aに配索される弱電ハーネス96は、図9に示すように、直線通路部38aを流れる温調風の流れに沿うように真っ直ぐに延びるハーネスになる。このため、温調風の流れを乱すように曲がったハーネスが配索される場合に比べ、温調風通路の通路抵抗が低く抑えられ、温調風のスムーズな流れが確保される。
このため、ジャンクションボックス5とLBコントローラ6のハーネス接続において、上記のように、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる。
【0073】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部空間を、車両前後方向に分割してバッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8を形成し、ジャンクションボックス5を、電装品搭載領域8内に配置する構成を採用した(図7)。
【0074】
例えば、ジャンクションボックスを、バッテリモジュール搭載領域であって、車幅方向に並んでいる2つのバッテリモジュールの対向する間隔の位置(実施例1の中央通路36に相当する位置)に配置したものを比較例とする。この比較例の場合、バッテリパックケース幅が予め決まっているとすると、2つのバッテリモジュールの車幅方向搭載幅は、ジャンクションボックスの占有幅を除いた幅となり、バッテリ搭載スペースが狭くなる。これに対し、バッテリモジュール搭載領域7から区分された電装品搭載領域8内にジャンクションボックス5を配置したことで、ジャンクションボックス5がバッテリモジュール2の車幅方向搭載幅を狭くする要因とはならず、バッテリ搭載スペースが確保される。
【0075】
例えば、バッテリモジュール搭載領域であって、車幅方向に並んでいる2つのバッテリモジュールの対向する間隔を温調風通路にしたものを比較例とする。この比較例の場合、ジャンクションボックスが温調風通路に配置されることで、ジャンクションボックスが温調風の流れる通路断面積を狭くする。これに対し、バッテリモジュール搭載領域7から区分された電装品搭載領域8内にジャンクションボックス5を配置した、言い換えると、ジャンクションボックス5を温調風通路から外れる配置とした。このため、ジャンクションボックス5が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、バッテリモジュール搭載領域7を流れる温調風の流量が確保される。
【0076】
実施例1では、バッテリモジュール搭載領域7を、複数のバッテリモジュール21,22,23を搭載する複数の分割矩形領域71,72,73に区分した。そして、LBコントローラ6を、複数の分割矩形領域71,72,73のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされる第1バッテリモジュール21を搭載する第1分割矩形領域71内に縦積み配置する構成を採用した(図9)。
【0077】
例えば、バッテリモジュール搭載領域を、複数のバッテリモジュールのみを搭載する複数の分割矩形領域に分け、LBコントローラを複数の分割矩形領域から外れた領域に配置したものを比較例とする。この比較例の場合、分割矩形領域が温調風通路を確保するように分けられるものである以上、分割矩形領域から外れた領域に配置したLBコントローラは、温調風通路を狭くする要因になる。これに対し、LBコントローラ6を、第1バッテリモジュール21を搭載する第1分割矩形領域71内に配置したことで、LBコントローラ6が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、ケース内部空間内を流れる温調風の流量が確保される。
【0078】
例えば、LBコントローラを複数の分割矩形領域内であるが、平積みにより配置したものを比較例とする。この比較例の場合、平積みされたLBコントローラの占有面積が広くなり、その分、バッテリ搭載スペースが狭くなる。これに対し、LBコントローラ6をバッテリセルと共に縦積み配置したことで、LBコントローラ6による占有面積が狭く抑えられ、LBコントローラ6をバッテリモジュール搭載領域7に搭載しながらも、最大限のバッテリ搭載スペースが確保される。
【0079】
実施例1では、温調風通路を、複数のバッテリモジュール21,22,23と熱交換した後、ケース内部空間の外周に流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38を有する通路とした。そして、直線通路部38aを、環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とする構成を採用した(図9)。
【0080】
上記温調風のケース内部空間循環作用を述べたように、中央通路36と交差通路37によるT字通路を、温調風を流す幹線通路としている。したがって、弱電ハーネス96を中央通路36や交差通路37に配索した場合と、弱電ハーネス96を環状通路38に配索した場合を比べると、中央通路36や交差通路37に配索した場合の方がケース内部空間循環効率の低下幅が大きくなる。これに対し、環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路を、弱電ハーネス96を配索する直線通路部38aとしているため、ケース内部空間循環効率の低下が小さく抑えられる。
【0081】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0082】
(1) バッテリパックケース1の内部空間に、バッテリセルの集合体によるバッテリモジュール2と、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックス5と、バッテリ管理を行うバッテリコントローラ(LBコントローラ6)と、を搭載した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケース1の内部空間に前記バッテリモジュール2を搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とし、
前記ジャンクションボックス5と前記バッテリコントローラ(LBコントローラ6)を、前記温調風通路のうち一つの直線通路部38aに臨む離れた位置にそれぞれ配置し、
前記ジャンクションボックス5と前記バッテリコントローラ(LBコントローラ6)を接続するハーネス(弱電ハーネス96)を、前記直線通路部38aに沿って配索した。
このため、ジャンクションボックス5とバッテリコントローラ(LBコントローラ6)のハーネス接続において、ハーネス配索作業性やハーネス耐久性を向上させながら、温調風のスムーズな流れを確保することができる。
【0083】
(2) 前記バッテリパックケース1の内部空間を、車両前後方向に分割してバッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8を形成し、
前記ジャンクションボックス5を、前記電装品搭載領域8内に配置した。
このため、(1)の効果に加え、ジャンクションボックス5がバッテリモジュール2の車幅方向搭載幅を狭くする要因とはならず、バッテリ搭載スペースを確保することができると共に、ジャンクションボックス5が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、バッテリモジュール搭載領域7を流れる温調風の流量を確保することができる。
【0084】
(3) 前記バッテリモジュール搭載領域7を、複数のバッテリモジュール21,22,23を搭載する複数の分割矩形領域71,72,73に区分し、
前記バッテリコントローラ(LBコントローラ6)を、前記複数の分割矩形領域71,72,73のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされるバッテリモジュール(第1バッテリモジュール21)を搭載する分割矩形領域(第1分割矩形領域7)内に縦積み配置した。
このため、(2)の効果に加え、バッテリコントローラ(LBコントローラ6)が温調風の流れる通路断面積を狭くする要因とならず、ケース内部空間内を流れる温調風の流量を確保することができると共に、バッテリコントローラ(LBコントローラ6)をバッテリモジュール搭載領域7に搭載しながらも、最大限のバッテリ搭載スペースを確保することができる。
【0085】
(4) 前記温調風通路を、前記複数のバッテリモジュール21,22,23と熱交換した後、ケース内部空間の外周に流れ込んできた温調風を戻す環状通路38を有する通路とし、
前記直線通路部38aを、前記環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とした。
このため、(3)の効果に加え、熱交換前の温調風を流す幹線通路にハーネス(弱電ハーネス96)を配索する場合に比べ、ケース内部空間循環効率の低下を小さく抑えることができる。
【0086】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0087】
実施例1では、バッテリモジュール2として、三分割によるバッテリモジュール21,22,23を三分割矩形領域71,72,73にそれぞれ搭載する例を示した。しかし、バッテリモジュールとしては、1つのモジュールの例であっても良いし、二分割によるバッテリモジュールの例であっても良いし、四分割以上の分割によるバッテリモジュールの例であっても良い。さらに、多分割の場合、分割手法も実施例1のように、T字通路により分割する手法に限られることなく、様々な分割手法による例としても良い。
【0088】
実施例1では、ケース内部空間を、バッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8に車両前後方向に分割し、電装品搭載領域8にジャンクションボックス5を配置する例を示した。しかし、バッテリモジュール搭載領域と電装品搭載領域を分割することなく、ジャンクションボックスをLBコントローラから離れた位置に配置する例であっても良い。
【0089】
実施例1では、LBコントローラ6を、複数の分割矩形領域71,72,73のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされる第1バッテリモジュール71を搭載する第1分割矩形領域71内に縦積み配置する例を示した。しかし、バッテリモジュール搭載領域と電装品搭載領域を分割することなく、LBコントローラをジャンクションボックスから離れた位置に配置する例であっても良い。
【0090】
実施例1では、直線通路部38aを、熱交換後の温調風を戻す環状通路38の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とする例を示した。しかし、ハーネスを配索する直線通路部は、熱交換後の温調風を戻す環状通路の一部通路には限られないし、温調風通路を構成する直線状の通路部であれば、車幅方向の通路であっても車両前後方向の通路であっても良い。
【0091】
実施例1では、本発明のバッテリパック構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、バッテリモジュールとジャンクションボックスとバッテリコントローラを搭載したバッテリパックを備えた電気自動車であれば適用できる。
【符号の説明】
【0092】
BP バッテリパック
1 バッテリパックケース
2 バッテリモジュール
21 第1バッテリモジュール
22 第2バッテリモジュール
23 第3バッテリモジュール
3 温調風ユニット
36 中央通路
37 交差通路
38 環状通路
38a 直線通路部
4 SDスイッチ
5 ジャンクションボックス
6 LBコントローラ(バッテリコントローラ)
7 バッテリモジュール搭載領域
71 第1分割矩形領域
72 第2分割矩形領域
73 第3分割矩形領域
8 電装品搭載領域
96 弱電ハーネス(ハーネス)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリパックケースの内部空間に、バッテリセルの集合体によるバッテリモジュールと、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックスと、バッテリ管理を行うバッテリコントローラと、を搭載した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間に前記バッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とし、
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを、前記温調風通路のうち一つの直線通路部に臨む離れた位置にそれぞれ配置し、
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを接続するハーネスを、前記直線通路部に沿って配索した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間を、車両前後方向に分割してバッテリモジュール搭載領域と電装品搭載領域を形成し、
前記ジャンクションボックスを、前記電装品搭載領域内に配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項3】
請求項2に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリモジュール搭載領域を、複数のバッテリモジュールを搭載する複数の分割矩形領域に区分し、
前記バッテリコントローラを、前記複数の分割矩形領域のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされるバッテリモジュールを搭載する分割矩形領域内に縦積み配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項4】
請求項3に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記温調風通路を、前記複数のバッテリモジュールと熱交換した後、ケース内部空間の外周に流れ込んできた温調風を戻す環状通路を有する通路とし、
前記直線通路部を、前記環状通路の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とした
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項1】
バッテリパックケースの内部空間に、バッテリセルの集合体によるバッテリモジュールと、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を行うジャンクションボックスと、バッテリ管理を行うバッテリコントローラと、を搭載した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間に前記バッテリモジュールを搭載したときに確保される隙間を、温調風が流れる温調風通路とし、
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを、前記温調風通路のうち一つの直線通路部に臨む離れた位置にそれぞれ配置し、
前記ジャンクションボックスと前記バッテリコントローラを接続するハーネスを、前記直線通路部に沿って配索した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間を、車両前後方向に分割してバッテリモジュール搭載領域と電装品搭載領域を形成し、
前記ジャンクションボックスを、前記電装品搭載領域内に配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項3】
請求項2に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリモジュール搭載領域を、複数のバッテリモジュールを搭載する複数の分割矩形領域に区分し、
前記バッテリコントローラを、前記複数の分割矩形領域のうち、バッテリセルが車幅方向に縦積みされるバッテリモジュールを搭載する分割矩形領域内に縦積み配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項4】
請求項3に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記温調風通路を、前記複数のバッテリモジュールと熱交換した後、ケース内部空間の外周に流れ込んできた温調風を戻す環状通路を有する通路とし、
前記直線通路部を、前記環状通路の一部として車幅方向両側辺のうちケース一側辺に形成された通路とした
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−243449(P2012−243449A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110194(P2011−110194)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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