説明

電気自動車

【課題】運転系統とは別系統の運動補助装置を車内に設け、その装置を操作することによって生じる運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することにより、電気自動車の走行・操作等に利用することである。
【解決手段】車輪を駆動する主蓄電池14が搭載された電気自動車において、乗員用の運動補助装置18a、18b、前記運動補助装置18a、18bによって作動される発電機と、その発電機によって得られた電力を蓄電する操作用蓄電池から成る発電・蓄電ユニット19を設けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗員の運動不足解消のための運動のエネルギーを電気エネルギーに変換し、車両の走行・操作系の装備品の駆動に利用するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
長時間自動車を運転する場合の運転者の運動不足解消のために、運転席の床面に足こぎペダル式のアクセル装置を装備した自動車が知られている(特許文献1)。このアクセル装置は、運転者がペダルをこぐ運動量に応じて自動車の駆動力を制御するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−7054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の足こぎペダル式のアクセル装置をこぐことによって発生する運動エネルギーは、スロットル弁の開閉エネルギー等に消費され、自動車の駆動源のエネルギーとして回収・利用することはできない。したがって、運転者の運動不足の解消には有益であっても、自動車の駆動源のエネルギーの補給には無益である。
【0005】
また、運転者の運動不足の解消には役立っても、他の乗員の運動不足の解消には役立たない。さらに、長距離の運転時にはかえって運転者に過負荷となり、また危険回避のための急加速などの対応が困難である等の問題がある。
【0006】
そこで、この発明は運転系統とは別系統の運動補助装置を車内に設け、その装置を操作することによって生じる運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することにより、電気自動車の走行・操作等に利用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、この発明は、車輪その他の車両各部を駆動する駆動源となる主蓄電池が搭載された電気自動車において、乗員用の運動補助装置、前記運動補助装置によって作動される発電機、前記発電機によって得られた電力を回収する回収用蓄電池を備え、前記運動補助装置が乗員の座席近傍に設置された構成を採用したものである。
【0008】
前記の電気自動車を運行している場合、乗員は必要に応じて運動補助具を操作して運動を行うことにより、運動不足を解消することができる。これと同時に、前記運動によって発電機が回転される。その回転によって発電された電力は回収用蓄電池に蓄電され、自動車の運行に必要な電力として利用される。
【0009】
前記の回収用蓄電池としては、車輪駆動モータ以外の車両の操作系の装備品(アクセル、ステアリング、ブレーキ、エアコン等)を駆動する操作用蓄電池を利用するのが一般的であるが、前記主蓄電池を回収用蓄電池として用い、回収電力を主蓄電池に蓄電するようにしてもよい。また、回収電力を主蓄電池と操作用蓄電池の両方に蓄電するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
乗員の座席近くに設置された運動補助装置を乗員が適宜操作することにより、自動車内の乗員の運動不足を解消することができる。運動補助装置によって作動される発電機を備えていることにより、乗員の運動エネルギーを電気ネルギーに変換することができ、その電気エネルギーを回収することにより、車両の走行・操作系の装備品の駆動等に利用することができる。
【0011】
運動エネルギーを電気エネルギーとして回収・蓄電することにより、例えば、燃料切れのような場合でも、最寄りの給電所まで走行可能となる。また、自己発電が可能であり、高効率であることから、航続距離を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態1の電気自動車の概略側面図である。
【図2】図2(a)は、運動補助具の斜視図、図2(b)はその正面図である。
【図3】図3は、他の運動補助具の斜視図である。
【図4】図4は、その他の運動補助具の斜視図である。
【図5】図5は、電気系統のブロック図である。
【図6】図6は、インホイールモータの側面図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、実施形態2の電気自動車の概略平面図である。
【図8】図8(a)から図8(c)は、実施形態3の電気自動車の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0014】
図1に示したように、実施形態1に係る電気自動車11は、それぞれインホイールモータ形式のモータ12を備えた4個の車輪13を有する4輪駆動自動車である。これらの車輪13その他の車両各部を駆動する駆動源となる主蓄電池14がボディ15の内部のシャーシ(図示省略)上に設置される。
【0015】
前部座席16及び後部座席17に座った乗員のつま先が届く範囲の床面上にそれぞれ床面設置型の運動補助装置18a及び発電・蓄電ユニット19が設置される。また、後部座席17の天井部には天井設置型等の運動補助装置18b及び発電・蓄電ユニット19が設けられる。
【0016】
ボディ15内部の適宜位置にコントローラ20(図5参照)が設けられる。また、全部の車輪13又は一部の車輪13に操作系ユニット30が設けられる。操作系ユニット30は、運転者の指令に基づき制御される車輪13の減加速、操舵、制動等の操作を行うアクセル、ステアリング、ブレーキ等の操作系の装備品を含む。
【0017】
前記の運動補助装置18a、18bは、乗員が着席した姿勢で操作できるものであり、運転操作とは無関係に乗員の運動不足解消の一手段として使用されるものである。床面設置型の運動補助装置18aは、図2(a)(b)に示したように、一対の足こぎ式回転ペダル21、前記ペダル21によって回転される回転軸22及び回転軸22を支持するケーシング23により構成される。左右のペダル21に左右の足を乗せ、足を回転させる足こぎ運動を行うと回転軸22が回転する。
【0018】
前記の一対の足こぎ式回転ペダル21、前記ペダル21によって回転される回転軸22によって運動操作入力部39が構成される。
【0019】
前記ケーシング23の内部に前記の発電・蓄電ユニット19が設けられる。この発電・蓄電ユニット19は、発電機25と操作用蓄電池26とから成り、発電機25のロータが前記回転軸22に固定され、運動操作入力部39の回転軸22の回転に伴って直流電力が発電される。発電機25の出力側は操作用蓄電池26と主蓄電池14に電気的に接続され(図5参照)、発電機25によって発電された電力を回収・蓄電する。
【0020】
操作用蓄電池26及び主蓄電池14はともに回収用蓄電池としての役目を担う。発電された電力を操作用蓄電池26にのみ回収・蓄電するようにしてもよい。この場合は、操作用蓄電池26のみが回収用蓄電池としての役目を果たす。
【0021】
なお、発電・蓄電ユニット19をケーシング23の外部に設け、その外部において回転軸22に発電機25のロータを固定するようにしてもよい。
【0022】
図3に示した床面設置型の他の運動補助装置18aは、足踏み式上下動ペダル27、その先端部にボール継手28を介して連結された上下方向の連接ロッド29、連接ロッド29の上端が回転自在に連結されたクランク31及びクランク31の回転軸32により構成される。回転軸32の一端部はケーシング33に挿通される。回転軸32の他端部には手動輪34が設けられる。ケーシング33の内部に発電・蓄電ユニット19が設けられることは前記の場合と同様である。
【0023】
前記の足踏み式上下動ペダル27、ボール継手28、連接ロッド29、クランク31及び回転軸32によって運動操作入力部39が構成される。
【0024】
前記ペダル27はその中間部が支軸27aによって揺動自在に支持されている。その上に両足又は片足を載せ、前後両端部を上下方向に揺動させることにより連接ロッド29を上下動させることができる。連接ロッド29の上下動によりクランク31、回転軸32が回転される。手動輪34は回転の当初において連接ロッド29とクランク31の位置関係が死点にある場合に、回転を付勢するために操作される。また、手動輪34は回転の途中においてクランク31が死点を円滑に通過させるフライホイールの作用も行う。
【0025】
図4に示した天井設置型の運動補助装置18bは、回転軸35に巻き付けた操作紐36、回転軸35を支持するケーシング37、ケーシング37の内部において前記回転軸35に付設された戻しばね38とから成る。操作紐36の下端に取手36aが設けられる。取手36aを引き下げると操作紐36が巻き戻され、回転軸35が回転される。最下端において取手36aの力を緩めると戻しばね38によって回転軸35が逆転され、操作紐36が巻き戻される。
【0026】
この場合も前記ケーシング37の内部に発電・蓄電ユニット19が設けられる。前記の回転軸35、操作紐36及び戻しばね38によって運動操作入力部39が構成される。
【0027】
図示の場合、運動補助装置18bを後部座席17の天井部分に設けるようにしているが、前部座席16又は全座席の天井部分に設けてもよい。
【0028】
図5は前記電気自動車の電力系統を示している。主蓄電池14の電力は主駆動系統40によって各車輪13のモータ12に供給され、また主操作系統41によって各操作系ユニット30に供給される。これらの電力供給の制御は、コントローラ20に搭載されたCPUを含むワイヤハーネス45、46により制御される。
【0029】
また、前記の各発電機25によって発電された回収電力を主蓄電池14に蓄電するために、発電機25と主蓄電池14の間に充電系統42が設けられる。
【0030】
発電機25ごとに設けられた操作用蓄電池26には、発電機25によって得られた回収電力の一部を蓄電し、その蓄電された電力を駆動系統43によって各モータ12に供給するようにしている。この場合は、回収された電力を、主蓄電池14と操作用蓄電池26に振り分けて蓄電するようにしているが、操作用蓄電池26にのみ回収・蓄電するようにしてもよい。
【0031】
前記操作用蓄電池26の電力は、操作系統44によって操作系ユニット30に供給される。操作系ユニット30の諸作用は、コントローラ20に搭載されたCPUを含むワイヤハーネス46により制御される。
【0032】
なお、図6は、前記インホイールモータ形式のモータ12の具体的形状を示している。このモータ12は、図示のように、モータ部48、減速部49及び車輪ハブ部50を備えたものである。
【0033】
実施形態1の電気自動車11は以上のようなものであり、通常の走行時は主蓄電池14からの電力が、主駆動系統40(図5参照)により各車輪13のモータ12へ、また主操作系統41により操作系ユニット30へそれぞれ供給される。
【0034】
乗員が運動不足解消のために、運動補助具18a、18bを操作すると、発電機25おいて発電が行われる。その電力は充電系統42を経て主蓄電池14に蓄電され、同時に操作用蓄電池26に蓄電される。操作用蓄電池26に蓄電された電力は、駆動系統43を経てモータ12に供給されるか、又は操作系統44を経て操作系ユニット30に供給される。
【0035】
このようにして、運動補助具18a、18bによって発生された運動エネルギーは無駄に消費されることなく、車両側に電気エネルギーとして回収され、その運行に利用される。
[実施形態2]
【0036】
前記の実施形態1の場合は、4輪自動車の全車輪13にインホイールモータ形式のモータ12を設けたものであったが、実施形態2の場合は、図7(a)(b)に示すように、車体設置型のモータ51を使用している。
【0037】
図7(a)の場合は、車輪13ごとにモータ51を設け、モータ51が減速機52、ドライブシャフト53及びハブ54を介して車輪13に連結されている。図7(b)の場合は、一対の前車輪、一対の後車輪ごとに1台ずつモータ51を設け、それぞれのモータ51がデファレンシャルギヤ55、各車輪13に対応したドライブシャフト53及びハブ54を介して各車輪13に連結されている。
【0038】
前記いずれの場合も、前記実施形態1に示した運動補助具18a又は18bを所要の座席に設けている。実施形態1の場合と同様に、主蓄電池14及び操作用蓄電池26を備え、これらの蓄電池14、26に回収・蓄電した電力を自動車の走行に利用するようにしている。
[実施形態3]
【0039】
実施形態3は、図8(a)から(c)に示したように、左右一対の前車輪13にモータ12、51を設け、後車輪13は従動輪となっている。図8(a)はホイールインモータ形式のモータ12、同(b)は車輪13ごとの車体搭載形式のモータ51、同(c)は一対の前車輪13について1台のモータ51設け、デファレンシャルギヤ55によって左右に振り分けるようにしている。その詳細は、前記実施形態2の場合と同様である。
【0040】
また、運動補助装置18a、18bを備え、主蓄電池14及び操作用蓄電池26に電力を回収・蓄電することは前記の場合と同様である。
【符号の説明】
【0041】
11 電気自動車
12 モータ
13 車輪
14 主蓄電池
15 ボディ
16 前部座席
17 後部座席
18a、18b 運動補助装置
19 発電・蓄電ユニット
20 コントローラ
21 足こぎ式回転ペダル
22 回転軸
23 ケーシング
25 発電機
26 操作用蓄電池
27 足踏み式上下動ペダル
27a 支軸
28 ボール継手
29 連接ロッド
30 操作系ユニット
31 クランク
32 回転軸
33 ケーシング
34 手動輪
35 回転軸
36 操作紐
36a 取手
37 ケーシング
38 戻しばね
39 運動操作入力部
40 主駆動系統
41 主操作系統
42 充電系統
43 駆動系統
44 操作系統
45 ワイヤハーネス
46 ワイヤハーネス
48 モータ部
49 減速部
50 車輪ハブ部
51 モータ
52 減速機
53 ドライブシャフト
54 ハブ
55 デファレンシャルギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪その他の車両各部を駆動する駆動源となる主蓄電池が搭載された電気自動車において、乗員用の運動補助装置、前記運動補助装置によって作動される発電機、前記発電機によって得られた電力を回収する回収用蓄電池を備え、前記運動補助装置が乗員の座席近傍に設置されたことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記運動補助装置が、回転操作入力部を有することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記回転操作入力部として、足こぎ式回転ペダルと、これによって回転される回転軸を備えたことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記回転操作入力部として、足踏み式上下動ペダルと、これによって回転されるクランク機構及びそのクランク機構によって回転される回転軸を備えたことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記回転操作入力部として、回転軸に巻き付けた操作紐と、前記回転軸に付設された巻き戻しばねを備えたことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記回収用蓄電池として、車両の操作系の装備品を駆動する操作用蓄電池又は前記主蓄電池のいずれか又は両方を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気自動車。
【請求項7】
前記主蓄電池を含む駆動系統と、操作用蓄電池を含む操作系統が別系統であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電気自動車。
【請求項8】
前記操作系統にアクセル、ステアリング、ブレーキ、エアコンが含まれることを特徴とする請求項7に記載の電気自動車。
【請求項9】
前記駆動用蓄電池によって駆動されるモータが、インホイールモータ形式であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電気自動車。
【請求項10】
前記駆動用蓄電池によって駆動されるモータが、車輪ごとに車体に設置され、前記モータが減速機、ドライブシャフト及びハブを介して当該車輪に連結されたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電気自動車。
【請求項11】
前記駆動用蓄電池によって駆動されるモータが、一対の車輪について1台ごと設置され、前記モータが減速機、デファレンシャルギヤ、各車輪に対応したドライブシャフト及び車輪ごとのハブを介して各車輪に連結されたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電気自動車。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−110076(P2012−110076A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254994(P2010−254994)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】