説明

電気自動車

【課題】本発明は、パワーユニットが搭載されている側からの衝突時であっても、パワーユニットが搭載されていない側からの衝突時であっても、バッテリユニットの損傷が抑えられる電気自動車を提供する。
【解決手段】本発明の電気自動車は、バッテリユニット側ブラケット23の、パワーユニット16に弾性支持されるパワーユニット取付用ブッシュ24と、車体に弾性支持される車体取付用ブッシュ26との間に、車両前後方向一端側の衝突時または車両前後方向他端側の衝突時に所定以上の衝撃荷重が加わると破断するバッテリユニット側ブラケット脆弱部48を設けると共に、車体の一端部から衝撃荷重が入力されたときだけ、パワーユニット取付用ブッシュのたわみを抑制するたわみ抑制手段51を設けて、バッテリユニット側ブラケット脆弱部が、車両前後方向一端側の衝突時の車体の一端部から入力される衝撃荷重が、車両前後方向他端側の衝突時の車体の他端部から入力される衝撃荷重より小さい衝撃荷重で破断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットとバッテリユニットとが搭載された電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、信頼性の向上、コストの低減、開発期間の短縮のために、内燃エンジンを搭載する車両の車体を活用して、電動モータなどで構成されたパワーユニットや電力源となるバッテリユニットを搭載する場合がある。具体的には、特許文献1に示されるように車体の前後方向の端部に形成したエンジンルームをそのままパワーユニットルームとして用いてパワーユニットを搭載したり、車体の中央に形成されている客室の床下にバッテリユニットを搭載したりすることが行われている。
【0003】
通常、電気自動車のパワーユニットは、特許文献1のようにパワーユニットの各部から突き出たブラケット、同ブラケットの先端に設けた弾性支持用の車体取付用ブッシュを介して、パワーユニットルームの各部に弾性支持させる構造を用いて、車体に搭載させることが行われている。
パワーユニットを構成する電動モータは、内燃エンジンとは異なり、作動時には高い周波数の振動を発生する。そのため、パワーユニットのバッテリユニット側の端部を支持するバッテリユニット側ブラケットには、パワーユニット取付用ブッシュを介して、パワーユニットを支持するという、パワーユニット取付用ブッシュと車体取付用ブッシュとを併用した2重防振構造を採用して、パワーユニットの高い周波数の振動が車体へ伝達されるのを防いでいる。
【0004】
ところで、電気自動車は、上記したように車体の中央と端部とにおいて、機器を搭載するスペースが確保されやすいために、構造上、パワーユニットとバッテリユニットとは、互い隣接した位置関係で搭載されるというレイアウトが強いられやすい。特に電気自動車の航続距離は、搭載されるバッテリの電気的容量に依存する割合が大きく、極力大きなバッテリを搭載したいという要求があるため、隣接したパワーユニットとバッテリユニットとの隙間を大きくとることが困難である。
【0005】
そのため、電気自動車は、パワーユニットとバッテリユニットとの間の隙間が限られる。そこで、バッテリユニット側ブラケットには、パワーユニットのバッテリユニット側の端部を経て車幅方向に延びるアーム部材を用いて、同アーム部材の両端部を車体取付用ブッシュを介して車体に弾性支持し、同部材の中間部の両側をパワーユニット取付用ブッシュを介してパワーユニットに弾性支持するという、車体前後方向の占有が少なくてすむ構造が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電気自動車は、パワーユニットが搭載されている側(一端側)からの衝突時、車体の一端部に衝突荷重が入力されると、慣性により、パワーユニットは残り、車体だけがバッテリユニットへ向って強制変位させられるという挙動が生じる。
このとき、バッテリユニット側ブラケットには、車体とパワーユニットの相対変位がもたらす応力が、中央の支持スパンの大きいパワーユニット取付用ブッシュ間の部分に集中する。このため、同部分からバッテリユニット側ブラケットが破断して、パワーユニットをバッテリユニットへ変位させる作用を抑える。
【0008】
ところが、破断したバッテリユニット側ブラケットは、パワーユニットと支持された状態が続いている。
このため、破断したブラケット部分の破断部は、破断した後も、車幅方向中央に残る。特にパワーユニットとバッテリユニットとの間の距離(隙間)は小さいため、破断したブラケット部分は、そのまま、車体の強制変位により、バッテリユニットへ向う。
【0009】
このため、破断したブラケット部分の鋭利な破断部がバッテリユニットの端部にぶつかり、バッテリユニットに損傷を与える問題がある。しかも、このとき車体取付用ブッシュは、パワーユニットからの荷重が加わって、自由に動けなくなっているので、逃げることができず、そのままバッテリユニットの端部にぶつかり、バッテリユニットに損傷を与える問題もある。
【0010】
このような場合、自動車の分野では、バッテリユニット側ブラケットに脆弱部を形成して、特定の場所からバッテリユニット側ブラケットを破断させる。
しかし、電気自動車では、単に脆弱部を形成するだけでは、バッテリユニットの損傷を防ぐことにはならない。
これは、電気自動車のパワーユニットが搭載されていない側(他端側)からの衝突時の挙動が、先に述べたパワーユニットが搭載されている側(一端側)からの衝突時とは異なるからである。
【0011】
すなわち、電気自動車は、パワーユニットが搭載されている側(一端側)の衝突時とは異なり、パワーユニットが搭載されていない側(他端側)からの衝突時、車体の他端部に衝突荷重が入力されると、慣性により、パワーユニットがバッテリユニットに向かって強制変位させられるという挙動が生じる。
このとき、バッテリユニット側ブラケットには、パワーユニットが搭載されている側(一端側)からの衝突時とは異なり、できるだけ破断を抑えて、パワーユニットがバッテリユニットへ接近するのを抑えることが求められる。
【0012】
ところが、単に脆弱部を形成するだけでは、逆にパワーユニットが搭載されていない側(他端側)からの衝突時も、バッテリユニット側ブラケットは破断しやすくなる。このため、逆にパワーユニットが搭載されていない側からの衝突時において、パワーユニットがバッテリユニットに衝突しやすく、バッテリバッテリユニットに損傷を与えやすくなってしまう。
【0013】
そこで、本発明の目的は、パワーユニットが搭載されている側からの衝突時であっても、パワーユニットが搭載されていない側からの衝突時であっても、バッテリユニットの損傷が抑えられる電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、車両を駆動する機器で構成されるパワーユニットと、パワーユニットを車両前後方向一端側に搭載する車体と、パワーユニットと隣接して車体の前後方向中央側に搭載された、車両の電力源となるバッテリユニットと、パワーユニットを車体に取り付けるための複数のブラケットとを備え、複数のブラケットは、それぞれ車体取付用ブッシュを有し、車体取付用ブッシュを介して車体に弾性支持され、複数のブラケットは、パワーユニットのバッテリユニット側の端部を支持するバッテリユニット側ブラケットを含み、バッテリユニット側ブラケットは、パワーユニット取付用ブッシュを有し、パワーユニット取付用ブッシュを介してパワーユニットに弾性支持され、パワーユニット取付用ブッシュと車体取付用ブッシュとの間に、車両前後方向一端側の衝突時または車両前後方向他端側の衝突時に所定以上の衝撃荷重が加わると破断するバッテリユニット側ブラケット脆弱部を有すると共に、車体の一端部から衝撃荷重が入力されたときだけ、パワーユニット取付用ブッシュのたわみを抑制するたわみ抑制手段を有して、バッテリユニット側ブラケット脆弱部は、車両前後方向一端側の衝突時の車体の一端部から入力される衝撃荷重が、車両前後方向他端側の衝突時の車体の他端部から入力される衝撃荷重より小さい衝撃荷重で破断するように形成した。
【0015】
請求項2に記載の発明は、たわみ抑制手段が、車体の他端部から衝撃荷重が入力されたときは、パワーユニット取付用ブッシュのたわみを許し、車体の一端部から衝撃荷重が入力されたときは、パワーユニットとバッテリユニット側ブラケット間を剛体同士で突き合わせるたわみ制限部材で構成されることとした。
請求項3に記載の発明は、バッテリユニットの端部と向き合うバッテリユニット側ブラケットの車体取付用ブッシュ近傍の下側は、バッテリユニット側へ突き出る突出部を有していることとした。
【0016】
請求項4に記載の発明は、バッテリユニット側ブラケットの車体取付用ブッシュの下側部分が、隣接するバッテリユニットの上面とラップするように設けられることとした。
請求項5に記載の発明は、バッテリユニット側ブラケットが車幅方向に延び、バッテリユニット側ブラケット脆弱部が、バッテリユニット側ブラケットのパワーユニット側に向く側面に、上下方向に延びる凹部を形成してなることとした。
【0017】
請求項6に記載の発明は、ブラケットが、バッテリユニット側ブラケットの他に、バッテリユニットとは反対側の端部を支持する反対側ブラケットを有し、反対側ブラケットが、パワーユニットが取り付く取付点と車体取付用ブッシュとの間に反対側ブラケット脆弱部を有し、反対側ブラケット脆弱部が、車両前後方向一端側の衝突時のバッテリユニット側ブラケット脆弱部が破断するよりも早い段階で破断し、車両前後方向他端側の衝突時のバッテリユニット側ブラケット脆弱部が破断する衝撃荷重より大きい荷重で破断するように形成してあることとした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、バッテリユニット側ブラケット脆弱部の破断特性の違いから、パワーユニットが搭載されている側(一端側)からの衝突時、バッテリユニット側ブラケットは、速やかに、車体取付用ブッシュに、全長の短いブラケット部分を残しながら破断し、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくする。このとき、車体取付用ブッシュに残るブラケット部分は短く、さらには破断したブラケット部分は自由に動け、バッテリユニットから逃げやすくなるから、破断したブラケット部分の鋭利な破断部がバッテリユニットと衝突するのを防ぐ。しかも、車体取付用ブッシュも、自由に動けるから、車体取付用ブッシュがバッテリユニットと衝突することも防ぐ。
【0019】
特に、たわみ抑制手段を有していることにより、パワーユニットが搭載されている側(一端側)からの衝突時、バッテリユニット側ブラケットの破断を、パワーユニット取付用ブッシュの弾性に影響されずに、バッテリユニットに至るまでに終えることができる。
またパワーユニットが搭載されていない側(他端側)からの衝突時、バッテリユニット側ブラケットは、破断せず、パワーユニットがバッテリユニットへ変位するのを抑えて、パワーユニットがバッテリユニットと衝突するのを防ぐ。
【0020】
したがって、パワーユニットが搭載されている側からの衝突時であっても、パワーユニットが搭載されていない側からの衝突時であっても、バッテリユニットの損傷を抑えることができる。特に同効果は、破断特性を異ならせたバッテリユニット側ブラケット脆弱部をバッテリユニット側ブラケットに用いるだけでよく、バッテリユニットとパワーユニットとの隙間が大きくとれない電気自動車には有効である。
【0021】
請求項2の発明によれば、同構造が、たわみ制限部材を設けるだけの簡単な構造で実現できる。
請求項3,4の発明によれば、車体取付用ブッシュはバッテリユニットの上面に乗り上げやすくなる。
請求項5の発明によれば、バッテリユニット側ブラケットの側面に形成した溝形の凹部は、パワーユニットが搭載されている側からの衝突時には、破断が生じやすい、凹部の開口が拡げられる方向に曲げ応力が加わり、反対にパワーユニットが搭載されていない側からの衝突時には、破断が生じにくい、開口が狭められる方向に曲げ応力が加わるから、簡単な構造で、パワーユニットが搭載されている側からの衝突時と、パワーユニットが搭載されていない側からの衝突時とで求められる破断特性をもつバッテリユニット側ブラケット脆弱部を得ることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、バッテリユニット側ブラケット脆弱部と協同して、パワーユニットが搭載されている側(一端側)からの衝突時と、パワーユニットが搭載されていない側(他端側)からの衝突時との双方で、一層、パワーユニットをバッテリユニットに衝突させにくくすることができ、バッテリユニットの損傷を抑える効果を強化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車のパワーユニット、バッテリユニットが搭載された後部側を示す側断面図。
【図2】同パワーユニットが車体にマウントされた構造を示す斜視図。
【図3】同パワーユニットの各部を車体に支持する支持構造を示す平面図。
【図4】同支持構造を構成するリヤブラケットを示す分解斜視図。
【図5】パワーユニットのバッテリユニット側の端部を支持するブラケットを示す分解斜視図。
【図6】同ブラケットのパワーユニットが取り付く部分、脆弱部および車体取付用ブッシュを示す平面図。
【図7】同車体取付用ブッシュの位置を説明するための斜視図。
【図8】パワーユニットが搭載された側からの衝突時の衝撃荷重にてリヤブラケットが破断したときを示す斜視図。
【図9】同じくリヤブラケットが破断したときを示す平面図。
【図10】同じくリヤブラケットが破断したときを、周辺の機器や部材と共に示す側面図。
【図11】同リヤブラケットの破断にしたがい、パワーユニットの姿勢が変化するのを示す側面図。
【図12】同リヤブラケットの後に破断したフロントブラケットを示す斜視図。
【図13】フロントブラケットの破断した脆弱部を示す平面図。
【図14】同破断後の車体取付用ブッシュに残るブラケット部分を示す斜視図。
【図15】同破断後の車体取付用ブッシュがバッテリユニットから逃げる挙動を説明する側面図。
【図16】同破断後のパワーユニットがバッテリユニットから逃げる挙動を説明する側面図。
【図17】パワーユニットが搭載されていない側からの衝突時、フロントブラケットが破断せず、パワーユニットの強制変位を抑える挙動を説明する側面図。
【図18】同フロントブラケットの脆弱部の挙動を説明する平面図。
【図19】パワーユニットが搭載されていない側からの衝突時、リヤブラケットが破断せず、パワーユニットの強制変位を抑える挙動を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図1〜図19に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は電気自動車の後側の側断面図を示していて、同図中1は車体である。車体1は、前後方向最後部に荷室2を有し、前後方向中央に客室3を有している。4は、車体1の下面に配設された一対のサイドフレーム(車体1の骨格をなす部材)を示している。
サイドフレーム4は、図2に示されるように車幅方向に並行に2本、所定の間隔で配置してあり、いずれも客室3の床の下面、この客室3の床より高い地点に形成されている荷室2の床の下面を通り、車両前後方向に延びている。図1中4aは、荷室2下を通る後部分を示している。そして、荷室2の床下に形成される車体最後部(車両前後方向一端側)の空間をパワーユニットルーム5としている。また客室3の床下のサイドフレーム4,4で囲まれた車体前後方向中央側の空間は、バッテリユニット収容室6にしてある。詳しくは、図1に示されるようにバッテリユニット収容室6は、客室3の後側に設置されたリヤシート8下から同じく前側に設置されたフロントシート9下まで連続したサイドフレーム4,4間の扁平な空間で形成してある。つまり、パワーユニットルーム5とバッテリユニット収容室6とは、車両前後方向で隣接したレイアウトとなる。
【0025】
このうちバッテリユニット収容室6内には、同空間を占めるようにバッテリユニット10が収められている。電気自動車の電力源となるバッテリユニット10は、箱形の収容容器11内に多数個のバッテリモジュール12を収容した箱形構造となっている。このバッテリユニット10の後側の端部がパワーユニットルーム5に臨んでいる。
パワーユニットルーム5内には、図2に示されるようにパワーユニット16が、パワーユニット16を制御するコントロールユニット27、これらマウントするマウントフレーム30と共に収容してある。
【0026】
同構造を説明すると、パワーユニット16は、図2に示されるように電動モータ17と減速機18とを車幅方向(横向き)で連結し、減速機18に差動装置19を連結させてなる。
このうち電動モータ17の車体後側へ突き出る支持プレート部17xには、図3および図4に示されるように、車体取付用ブッシュ20を先端に有するアーム状のリヤブラケット21(本願の反対側ブラケットに相当)が突設されている。具体的には、図3および図4に示されるように車体取付用ブッシュ20は、リヤブラケット21の先端に形成された円形の枠部20bと、同枠部20b内に圧入された筒形のブッシュ部材20aとを組み合わせて構成される。そして、リヤブラケット21の基端部をボルトナット22で支持プレート部17xに締結して、先端の車体取付用ブッシュ20を車体後側へ突出させている。
【0027】
また電動モータ17や減速機18の車体前側に向くケーシング部分には、車幅方向に延びるフロントブラケット23(本願のバッテリユニット側ブラケットに相当)が設けてある。具体的には、フロントブラケット23は、図2、図3および図5に示されるようにパワーユニット16のバッテリユニット側の端部となる、横置き電動モータ17および減速機18の側方を経て車幅方向に延びる一本のアーム部材が用いてある。このアーム部材の中間部の両側には、短筒状のパワーユニット取付用ブッシュ24がそれぞれ圧入されている。そして、アーム部材の中間部が、それぞれパワーユニット取付用ブッシュ24を介して、それぞれボルト25で、電動モータ17や減速機18のケーシング部分に形成してある支持座17aや支持座18aに弾性支持させてある。またアーム部材の電動モータ17端や減速機18端から張り出した両端部には、車体取付用ブッシュ26がそれぞれ設けてある。車体取付用ブッシュ26も、リヤブラケット21と同様、アーム部材の各先端に形成された円形の枠部26bと、同枠部26b内に圧入された筒形のブッシュ部材26aとを組み合わせた構造となっている。
【0028】
コントロールユニット27は、図2に示されるように電動モータ17の電源周波数を可変するインバータ装置28a及び該インバータ装置28aを車両の運転状態に応じて制御する制御装置28、DC/DCコンバータ29a及び充電装置29を車幅方向に並べて構成される。
マウントフレーム30は、車体1の一部をなす部材で、図2および図3に示されるように車体1の後側へ並行に延びる一対の側フレーム部31と該側フレーム部31の各後端部をつなぐ端フレーム部32とを有した略U形をなしている。このうち一対の側フレーム部31は、電動モータ17端や減速機18端を通過して車体1の前後方向に延び、端フレーム部32は、パワーユニット16の後方を通過して車幅方向に延びている。このマウントフレーム30が、図2および図3に示されるように側フレーム部31端に設けたフロント取付座34や端フレーム部32に設けたリヤ取付座35を介して、パワーユニットルーム5の骨格となる、各リヤ部分4a,4a(サイドフレーム)の下部やリヤ部分4a,4a間に形成されたクロスメンバ部36の下部などにボルトナット37で締結してある。
【0029】
この吊持したマウントフレーム30の上部、すなわち側フレーム31、端フレーム32上に、図1および図2に示されるようにインバータ装置28a及び該インバータ装置28aを車両の運転状態に応じて制御する制御装置28、DC/DCコンバータ29a及び充電装置29が搭載される。またマウントフレーム30の下部、すなわち側フレーム31、端フレーム32下に、パワーユニット16が吊持される。具体的には、パワーユニット16は、図2および図5に示されるようにフロントブラケット23の各車体取付用ブッシュ26が各側フレーム31に取着した一対のマウントブラケット39にボルトナット40で支持されること、図2および図4に示されるようにリヤブラケット21の車体取付用ブッシュ20が端フレーム部32の中央に取着したマウントブラケット41にボルトナット42で支持されることによって、マウントフレーム30に吊持させてある。
【0030】
つまり、パワーユニット16のバッテリユニット側の端部やその反対側の端部などパワーユニット16の各部は、車体取付用ブッシュ20,26やパワーユニット取付用ブッシュ24をもつ複数のブラケット21,23により、車体1に弾性支持される。さらに、パワーユニット取付用ブッシュ24を設けることで2重防振構造とし、電動モータ17から発する高い周波数の振動が車体1へ伝わるのを防いでいる(高振動吸収性)。
【0031】
フロントブラケット23には、車体1のパワーユニット16が搭載された側(車両前後方向一端側)の衝突時(本実施形態では後部衝突)と、それとは反対のパワーユニット16が搭載されていない側(車両前後方向他端側)の衝突時(本実施形態では前部衝突)との双方で、バッテリユニット17の損傷を抑えられるようにした工夫が施されている。
この工夫には、図2、図3および図5に示されるようにフロントブラケット23のパワーユニット取付用ブッシュ24と車体取付用ブッシュ26との間の各ブラケット部分23a(図2中の一点鎖線αの位置)に、パワーユニット16が搭載された側の衝突時と、パワーユニット16が搭載されていない側の衝突時とで、それぞれ違う破断特性をもつフロントブラケット脆弱部48(本願のバッテリユニット側ブラケット脆弱部に相当)を設ける技術が用いられている。
【0032】
これらフロントブラケット脆弱部48には、いずれも所定以上の衝撃荷重が加わると破断する通常の特性に加え、パワーユニット16が搭載された側(一端側)の衝突時に車体1の後部(一端側)から入力される衝撃荷重には破断しやすく、反対のパワーユニット16が搭載されていない側(他端側)の衝突時に車体1の前部(他端側)から入力される衝撃荷重には破断しにくくした構造が用いられている。具体的にはフロントブラケット脆弱部48には、図3〜図6に示されるようにブラケット部分23aのパワーユニット16に向く側面に、上下方向に延びる凹部、例えば溝形の凹部49を形成した構造が用いてある。
【0033】
このようにパワーユニット16側に開口する縦形の凹部49を形成すると、ブラケット部分23aには、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突時(後部衝突)のときは、その衝突で車体1が強制変位されるという挙動により、溝形の凹部49の開口を拡げるという破断が生じやすい方向から、曲げ応力が加わる。また反対のパワーユニット16が搭載されていない側からの衝突時(前部衝突)のときは、その衝突でパワーユニット16が強制変位されるという挙動により、溝形の凹部49の開口が狭まるという破断が生じにくい方向から、曲げ応力が加わる。この違いにより、車体1の後部から入力される衝撃荷重P1とし、車体1の前部から入力される衝撃荷重P2としたとき、パワーユニット16が搭載されている側の衝突時は、衝撃荷重P2より、格段に小さい衝撃荷重P1で、フロントブラケット23の破断が起きるようにすると共に、パワーユニット16が搭載されない側の衝突時は、大きな衝撃荷重P2でも、フロントブラケット23の破断が起きないようにしている。もちろん、凹部49は、こうした破断のコントロールが可能であれば、溝形以外の単なる窪みなどでもよい。
【0034】
この破断特性の違いにより、フロントブラケット23は、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突時(後部衝突)、車体取付用ブッシュ26に全長の短いブラケット部分23bを残して破断されるようにしている(3分割)。これで、パワーユニット16の支持から解放されたブラケット部分23aが、バッテリユニット10から避けるように逃げたり、同じく車体取付用ブッシュ26が、バッテリユニット10を乗り上げて逃げたりするという挙動が得られるようにしている。またパワーユニット16が搭載されていない側からの衝突時(前部衝突)は、フロントブラケット23の破断をできるだけ抑えて、パワーユニット16をバッテリユニット10へ変位させにくくする挙動が得られるようにしている。
【0035】
このときパワーユニット取付用ブッシュ24のたわみは、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突時(後部衝突)、フロントブラケット23の破断を妨げる。これを改善するために、図2、図3、図5および図6に示されるようにフロントブラケット23には、パワーユニット取付用ブッシュ24のたわみを抑えるたわみ抑制部50(本願のたわみ抑制手段に相当)が設けてある。同たわみ抑制部50は、図5および図6に示されるようにフロントブラケット23をパワーユニット16に支持するボルト25のバッテリユニット10側へ突き出た頭部とパワーユニット取付用ブッシュ24の端部との間に、パワーユニット取付用ブッシュ24より大きな外径の円形のワッシャ51(剛体からなる;本願のたわみ制限部材に相当)を組み付けて構成される。
【0036】
このワッシャ51は、図6中の実線に示されるように、通常時には、フロントブラケット23から離れた状態に保たれ、図13に示されるように車体後部(パワーユニット16が搭載されている側)から衝撃荷重P1が入力され、パワーユニット取付用ブッシュ24がたわむと、ワッシャ51の外周端部とフロントブラケット23の側部とが突き当たるようにしてある。また車体前部(パワーユニット16が搭載されていない側)からの衝撃荷重P2に対しては、そのままたわみが生ずるようにしてある。これで、パワーユニット16が搭載されている側(一端側)からの衝突時の衝撃荷重が入力されたときだけ、パワーユニット16とフロントブラケット23間を剛体同士で突き合わせて、パワーユニット取付用ブッシュ24のたわみを制限させ、凹部49に衝撃荷重P1が集中されるようにしてある。このたわみ制限により、フロントブラケット23がバッテリユニット10へ至るまでの間で、フロントブラケット23の破断が行われるようにコントロールしている。
【0037】
またワッシャ51をフロントブラケット23のバッテリユニット10側の面に設けることで、後突時にはパワーユニット取付用ブッシュ24の弾性を阻害し、前突時にはパワーユニット取付用ブッシュ24の弾性を阻害しない構造にしてあり、フロントブラケット23の後突時や前突時といった各モードでの破断コントロールが好適になされるようにしている。
【0038】
一方、図7に示されるように車体取付用ブッシュ26の位置は、車体取付用ブッシュ26をバッテリユニット10に乗り上げやすくするために、できるだけ矢印Hの如く側フレーム部31(マウントフレーム)寄り、すなわちサイドフレーム4寄りに位置決めてある。これで、車体取付用ブッシュ26の端部、具体的には軸心位置から下側部分とバッテリユニット10の上面から下側部分とがラップするL部分を所定値以下、具体的にはできる限り小さな寸法に抑えて、車体取付用ブッシュ26を、バッテリユニット10の上面に乗り上げやすくしている。
【0039】
加えて、車体取付用ブッシュ26をバッテリユニット10に乗り上げやすくするために、図2、図5、図6および図7に示されるように車体取付用ブッシュ26近傍の下側には、スロープ部53が設けてある。具体的にはスロープ部53は、図7に示されるようにブッシュ部材26aを収める枠部26bのバッテリユニット10の端部と向き合う端面部分のうち、バッテリユニット10の端部とラップする枠部26bの下側半分に、バッテリユニット10側へ突き出る突出部54を形成した構造が用いてある。この円弧形に突き出た突出部54により、車体取付用ブッシュ26がバッテリユニット10と当たるときは、先に突出部54がバッテリユニット10と当接して、車体取付用ブッシュ26や枠部26bを、よりスムーズに前傾させる。これで、車体取付用ブッシュ26や枠部26bがバッテリユニット10を乗り上げやすくしている。
【0040】
他方、図2、図3および図4に示されるようにリヤブラケット21(本願の反対側ブラケットに相当)には、パワーユニット16が取り付く取付点S(図3だけ図示)と車体取付用ブッシュ20間に、リヤブラケット脆弱部56(本願の反対側ブラケット脆弱部に相当)が設けられている。このリヤブラケット脆弱部56には、図3に示されるようにリヤブラケット21の中間部を斜めに折り曲げたオフセット部57を形成して、パワーユニット16が取り付く取付点Sと車体取付用ブッシュ20との間をオフセットさせた構造が用いてある。このオフセット部57により、リヤブラケット21には、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突に対しては、車体1の強制変位により、オフセット部57に大きな曲げモーメントが生じさせて、容易に破断が行われ、パワーユニット16が搭載されていない側からの衝突に対しては、パワーユニット16の強制変位により、オフセット部57を伸張方向に変形させて、なかなか破断に至らせない、といった破断特性を与えている。つまり、リヤブラケット21も、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突時に対しては破断しやすく、パワーユニット16が搭載されていない側からの衝突時に対しては破断しにくいという破断特性が確保してある。なお、図3中Fはそのオフセット部57のオフセット量を示している。
【0041】
またリヤブラケット21には、求められる破断特性や必要な剛性強度を確保するために、図4に示されるように枠形のフレーム21aから構成し、同フレーム21aの中間を車幅方向に対してオフセットさせ、各種リブ58を追加して、パワーユニット16が取り付く取付点Sと車体取付用ブッシュ20が有る地点の剛性強度を高く、中間のオフセットした部分の剛性強度を弱くするという、剛性強度が変更しやすい構造が用いてある。
【0042】
このリヤブラケット21の構造、オフセット部57の設定などにより、リヤブラケット脆弱部56には、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突に対してはフロントブラケット脆弱部48の破断よりも早い段階で破断し、パワーユニット16が搭載されていない側の衝突に対してはフロントブラケット脆弱部40の衝撃荷重より大きな荷重で破断、すなわち破断しにくくするという破断特性を与えている。なお、図1、図10、図11および図17中59は、図示しないシャフトを介して差動装置19に接続されている後輪を示している。
【0043】
こうしたフロントブラケット脆弱部48やリヤブラケット脆弱部56により、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突やパワーユニット16が搭載されていない側の衝突に対して、バッテリユニット10が損傷されにくくしている。
すなわち、図8ないし図19を参照して電気自動車の衝突時の挙動を説明する。
今、例えば停止している電気自動車の後端部に対し、同電気自動車の後方から他の車両が衝突したとする(パワーユニット16が搭載されている側からの衝突:後突)。
【0044】
この後突時、電気自動車は、図1中の矢印に示されるようにパワーユニット16が搭載されている側(一端部)から所定以上の衝撃荷重P1が入力される。衝撃荷重P1は、衝突箇所に近いリヤ側のマウントブラケット41やサイドフレーム4の後端へ入力される。
ここで、リヤブラケット21やフロントブラケット23には、脆弱部として、凹部49やオフセット部57がある。このとき、オフセット部57は、車体1の後部から入力される衝撃荷重に対しては最も破断しやすい設定となっている。
【0045】
そのため、図8〜図10に示されるようにリヤブラケット21のオフセット部57は、入力される衝撃荷重P1で生ずる曲げモーメントM(図9に図示)によって破断する。これにより、最初、リヤブラケット21の先端側が、車体1から離脱する挙動が生じる。
これにより、パワーユニット16は、車体後側の支持を失い、車体前側の支持だけとなる。すると、パワーユニット16の後側が、図11に示されるように前側を支点に下がる(パワーユニット取付用ブッシュ24、車体取付用ブッシュ26aによって支持される)。これで、パワーユニット16は、後側が低くなる斜めの姿勢となる。
【0046】
サイドフレーム4およびマウントフレーム30は、入力された衝撃荷重P1で、図10中の矢印に示されるように、慣性によりパワーユニット16を残しながら、前方へ強制的に変位させられる。すると、フロントブラケット23の各部には、サイドフレーム4と共に強制変位させられる車体取付用ブッシュ26と、残ろうとするパワーユニット16との挙動から、曲げ応力が生ずる。
【0047】
このとき、図6に示されるようにパワーユニット取付用ブッシュ24と車体取付用ブッシュ26との間のブラケット部分23aには、破断位置を特定する脆弱部である凹部49が形成されている。しかも、凹部49は、このときに生ずる曲げモーメントに対し破断しやすい向きに形成されている。
このため、サイドフレーム4(マウントフレーム30)の強制変位で、フロントブラケット23が変位してワッシャ51と突き当たり、パワーユニット取付用ブッシュ24のたわみが制限され、衝撃荷重P1が凹部49に効率よく伝達され、図13に示されるように凹部49は、破断が生じやすい開口を拡げる方向へ変形する。すると、ブラケット部分23aは、同部分から破断を起こす。これにより、図12に示されるようにフロントブラケット23は、速やかに中間部分と左右両側とに3分割される。
【0048】
この分割により、パワーユニット16は車体1から離脱する。また図14に示されるように強制変位している車体1側には、車体取付用ブッシュ26と、破断したブラケット部23bとが残る。
このとき、図14に示されるように車体取付用ブッシュ26に残っているブラケット部23bは、全長が短く、パワーユニット16の支持から解放されて自由に動ける状態となっているから、例えば図14中の二点鎖線で示されるようにバッテリユニット10の上面を乗り上げたりするなど、バッテリユニット10との衝突を避ける挙動が生じる。
【0049】
これにより、破断したブラケット部分23がバッテリユニット10へ向っても、ブラケット部分23bの先端の鋭利な破断部23cは、バッテリユニット10と衝突せずにすむ。
車体取付用ブッシュ26自身も、パワーユニット16の支持から解放されて、自由に動ける状態となっているから、バッテリユニット10の上面を乗り上げる。この挙動が図15(a)〜(c)に示されている。
【0050】
車体取付用ブッシュ26の乗り上げる挙動を説明する。図15(a)に示されるように自由に動ける状態になった車体取付用ブッシュ26が、サイドフレーム4の強制変位により、バッテリユニット10の端部へ接近すると、図15(b)に示されるように枠部26bの下側部分(ボルト挿通位置から下側)に有る突出部54が、バッテリユニット10の端部の上段部分に当たる。すると、車体取付用ブッシュ26は、バッテリユニット10で押されて傾く(前傾)。
【0051】
これにより、車体取付用ブッシュ26は、バッテリユニット10の端部から上面へ引きずられる。この引きずりにより、図15(c)に示されるように車体取付用ブッシュ26は、傾きながらバッテリユニット10の上面を滑るように乗り上げ、バッテリユニット10との衝突を避ける。
一方、車体1から離脱したパワーユニット16は、図16(a)に示されるようにバッテリユニット側(前側)が高く、その反対側(後側側)が低いという、バッテリユニット10を乗り上げやすい後傾姿勢のまま、バッテリユニット10へ向い、バッテリユニット10との衝突を避ける。
【0052】
すなわち、図16(a)のようにパワーユニット16は、傾いた下面部が、バッテリユニット10の端部上段に当たる。すると、パワーユニット16には、上側へ向う挙動が与えられる。これにより、図16(b)に示されるようにパワーユニット16は、バッテリユニット10を乗り上げるように変位して、バッテリユニット10との衝突を避ける。
これにより、パワーユニット16が搭載されている側の衝突時は、破断部23c、車体取付用ブッシュ26およびパワーユニット16とバッテリユニット10との衝突が抑えられる。
【0053】
また、上記とは反対に、例えば走行中の電気自動車の前部が、前方の物体に衝突したときにも(パワーユニット16が搭載されていない側からの衝突:前突)、凹部49やオフセット部57により、パワーユニット16とバッテリユニット10との衝突が抑えられる。
この前突時の挙動を説明する。このときには電気自動車は、図17中の矢印に示されるようにパワーユニット16が搭載されていない側(他端部)から所定以上の衝撃荷重P2が入力される。
【0054】
すると、パワーユニット16は、同図中の矢印に示されるように、慣性により、バッテリユニット10に向って強制変位させられる。
ここで、リヤブラケット21やフロントブラケット23には、脆弱部として、凹部49やオフセット部57があるが、凹部49は、車体1の前部から入力される衝撃荷重に対し
破断しにくい向きが設定してあり、オフセット部57は、同凹部49よりも、さらに破断しにくい引っ張り方向での破断が設定してある。
【0055】
そのため、図18に示されるようにパワーユニット16の強制変位で、パワーユニット16がフロントブラケット23と突き当たり、衝撃荷重P2が凹部49に加わっても、同図に示されるように凹部49は、破断が生じにくい開口を狭める方向へ変形するだけで破断しない。またオフセット部57は、図19に示されるように引っ張られて真っ直ぐになる方向に変形するだけで破断しない。この挙動により、パワーユニット16がバッテリユニット10へ変位するのが抑えられる。
【0056】
この前突時(衝突加重P2がかかった際)には、上記後突時(衝突加重P1がかかった際)おいて、パワーユニット取付用ブッシュ24の変位を阻害したワッシャ51は、パワーユニット取付用ブッシュ24の変位を阻害しないため、同ブッシュ51により、パワーユニット16からフロントブラケット23にかかる荷重が抑えられる。荷重がフロントブラケット23に伝わるのも遅らせられる。
【0057】
なお、過度に大きい衝撃荷重P2が入力されるときは、フロントブラケット23が凹部49で破断し、その後にリヤブラケット21のオフセット部57が破断して、できるだけパワーユニット16がバッテリユニット10へ向うのを抑える。
これにより、パワーユニット16が搭載されていない側の衝突時は、パワーユニット16とバッテリユニット10とが衝突せずにすむ。
【0058】
したがって、電気自動車は、フロントブラケット脆弱部48の破断特性の違いにより、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突時(後突時)でも、パワーユニット16が搭載されていない側からの衝突時(前突時)でも、それぞれ挙動を考慮して、バッテリユニット10の損傷を抑えることができる。特にバッテリユニット10とパワーユニット16との隙間が大きくとれない電気自動車には有効である。
【0059】
しかも、破断部23cや車体取付用ブッシュ26の逃げに重要なフロントブラケット脆弱部48は、フロントブラケット23のパワーユニット側の側面に凹部49を形成するだけで、求められる破断特性が得られるので、簡単である。
そのうえ、パワーユニットが搭載されている側からの衝突時は、ワッシャ51によりパワーユニット取付用ブッシュ24のたわみを制限したので、パワーユニット取付用ブッシュ24の弾性に影響されずに、フロントブラケット23を、バッテリユニット10に到達するまでに破断させることができる。しかも、たわみ制限には、ワッシャ51を用いるだけなので、簡単な構造である。
【0060】
さらに、ワッシャ51は、フロントブラケット23のバッテリユニット側の面に設けてあるので、前突時には、パワーユニット取付用ブッシュ24の弾性によりフロントブラケット23に荷重がかかるのを遅らせることを阻害しない。
また車体取付用ブッシュ26には、バッテリユニット10の上面から下側部分とラップする部分をできる限り抑える構造を採用したことで、パワーユニット16が搭載されている側からの衝突時、容易に車体取付用ブッシュ26をバッテリユニット10の上面に乗り上げさせることができる。しかも、車体取付用ブッシュ26の下側には、バッテリユニット10へ突き出る突出部54が形成してあるから、これによっても、容易に車体取付用ブッシュ26をバッテリユニット10の上面に乗り上げさせることができる。
【0061】
加えて、リヤブラケット21には、フロントブラケット23の凹部49以上に破断特性を異ならせたオフセット部57(リヤブラケット脆弱部56)を形成したことにより、凹部49(フロントブラケット脆弱部48)と協同して、パワーユニット16が搭載される側の衝突時は、パワーユニット16をバッテリユニット10から十分に逃がせる挙動を与え、パワーユニット16が搭載されない側の衝突時は、パワーユニット16を、一層、バッテリユニット10に衝突しにくくするという挙動を与えるので、更なる、バッテリユニット10の損傷を防ぐ効果が発揮できる。
【0062】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。例えば一実施形態では、車体の後端側にパワーユニットを搭載し、車体の中央側にバッテリユニットを搭載した電気自動車の例を挙げたが、これに限らず、例えば車体の前端側にパワーユニットを搭載し、車体の中央側にバッテリユニットを搭載した電気自動車に本発明を適用してもよい。
【0063】
また、一実施形態において、バッテリユニットのパワーユニット搭載側に金属板等の補強部材を設けて、より安全性を強化してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 車体
10 バッテリユニット
16 パワーユニット
21 リヤブラケット(反対側ブラケット)
23 フロントブラケット(バッテリユニット側ブラケット)
24 パワーユニット取付用ブッシュ
26 車体取付用ブッシュ
48 フロントブラケット脆弱部(バッテリユニット側ブラケット脆弱部)
49 凹部
51 ワッシャ(たわみ抑制手段、たわみ制限部材)
54 突出部
56 リヤブラケット脆弱部(反対側ブラケット脆弱部)
57 オフセット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する機器で構成されるパワーユニットと、
前記パワーユニットを車両前後方向一端側に搭載する車体と、
前記パワーユニットと隣接して前記車体の前後方向中央側に搭載された、車両の電力源となるバッテリユニットと、
前記パワーユニットを車体に取り付けるための複数のブラケットと、
を備え、
前記複数のブラケットは、それぞれ車体取付用ブッシュを有し、前記車体取付用ブッシュを介して前記車体に弾性支持され、
前記複数のブラケットは、前記パワーユニットの前記バッテリユニット側の端部を支持するバッテリユニット側ブラケットを含み、
前記バッテリユニット側ブラケットは、パワーユニット取付用ブッシュを有し、前記パワーユニット取付用ブッシュを介して前記パワーユニットに弾性支持され、前記パワーユニット取付用ブッシュと前記車体取付用ブッシュとの間に、前記車両前後方向一端側の衝突時または車両前後方向他端側の衝突時に所定以上の衝撃荷重が加わると破断するバッテリユニット側ブラケット脆弱部を有すると共に、前記車体の一端部から衝撃荷重が入力されたときだけ、前記パワーユニット取付用ブッシュのたわみを抑制するたわみ抑制手段を有して、前記バッテリユニット側ブラケット脆弱部は、車両前後方向一端側の衝突時の前記車体の一端部から入力される衝撃荷重が、前記車両前後方向他端側の衝突時の前記車体の他端部から入力される衝撃荷重より小さい衝撃荷重で破断するように形成してある
ことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記たわみ抑制手段は、前記車体の他端部から衝撃荷重が入力されたときは、前記パワーユニット取付用ブッシュのたわみを許し、前記車体の一端部から衝撃荷重が入力されたときは、前記パワーユニットと前記バッテリユニット側ブラケット間を剛体同士で突き合わせるたわみ制限部材で構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記バッテリユニットの端部と向き合う前記バッテリユニット側ブラケットの前記車体取付用ブッシュ近傍の下側は、バッテリユニット側へ突き出る突出部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記バッテリユニット側ブラケットの車体取付用ブッシュの下側部分は、隣接する前記バッテリユニットの上面とラップするように設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電気自動車。
【請求項5】
前記バッテリユニット側ブラケットは、車幅方向に延び、
前記バッテリユニット側ブラケット脆弱部は、前記バッテリユニット側ブラケットの前記パワーユニット側に向く側面に、上下方向に延びる凹部を形成してなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の電気自動車。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記バッテリユニット側ブラケットの他に、前記バッテリユニットとは反対側の端部を支持する反対側ブラケットを有し、
前記反対側ブラケットは、前記パワーユニットが取り付く取付点と車体取付用ブッシュとの間に反対側ブラケット脆弱部を有し、
前記反対側ブラケット脆弱部は、前記車両前後方向一端側の衝突時の前記バッテリユニット側ブラケット脆弱部が破断するよりも早い段階で破断し、前記車両前後方向他端側の衝突時の前記バッテリユニット側ブラケット脆弱部が破断する衝撃荷重より大きい荷重で破断するように形成してある
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−232743(P2012−232743A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171385(P2012−171385)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2007−231544(P2007−231544)の分割
【原出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】