電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置
【課題】微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を判断する。
【解決手段】信号処理回路5は、紫外線センサ2の紫外線検出回数を検出回数データ用メモリ7に記憶し、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相を電圧位相データ用メモリ8に記憶する。情報処理装置6は、検出回数データ用メモリ7に記憶されている紫外線検出回数および電圧位相データ用メモリ8に記憶されている紫外線検出時電圧位相を一定時間ごとに取り込み、検出した紫外線から得られる所定時間内における各種の情報が所定の条件を満たすか否か基づいて放電発生の有無を判断する。
【解決手段】信号処理回路5は、紫外線センサ2の紫外線検出回数を検出回数データ用メモリ7に記憶し、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相を電圧位相データ用メモリ8に記憶する。情報処理装置6は、検出回数データ用メモリ7に記憶されている紫外線検出回数および電圧位相データ用メモリ8に記憶されている紫外線検出時電圧位相を一定時間ごとに取り込み、検出した紫外線から得られる所定時間内における各種の情報が所定の条件を満たすか否か基づいて放電発生の有無を判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより、絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器をはじめとする電気設備においては、経年あるいは環境により絶縁物に塩分や塵埃などの汚損物が付着し、このような汚損物が吸湿すると絶縁物表面の電気抵抗が低下して故障や事故を引き起こすことがある。絶縁物表面の電気抵抗が低下すると、設備表面では沿面放電が発生し、放電電流が流れると同時に電磁波、超音波、紫外線などが放射されることが知られている。そのため、従来、それら物理量を検出することで絶縁異常個所の存在有無を診断することが行なわれてきた。しかし、放電に伴って発生する上記物理量は極めて微弱であるため、ノイズを含む測定信号中から放電に伴う物理量のみを如何に正確に抽出するかが課題となってきた。
【0003】
図17(a)は、放電の発生時に接地線に流れる電流波形の例を示しており、図17(b)は、そのときの電気設備への印加交流電圧波形の例を示している。放電は、放電発生個所に加わる電圧があるしきい値を超えると発生し、しきい値を下回ると停止する。このため、印加交流電圧の1サイクルの期間に2度発生する特定のパターンを持つことが多い。また、放電はひとたび始まると一定時間継続することが多い。放電発生の有無は、そうした放電現象の有する特性に基づいて判断される。
【0004】
従来技術として特許文献1,2には、放電に伴う超音波を検出して判断する方法が開示されている。この方法は、超音波センサにより捉えた信号の中から放電特有の周波数成分を抽出して包絡線検波し、次に、その信号から印加交流電圧の2倍の周波数成分を抽出し、その成分の強弱により放電の有無を判断している。
【0005】
また、特許文献3には、部分放電の発生により接地線に流れる電流波形を数十サイクルにわたって測定し、そこからバックグラウンド・ノイズとの差が顕著な周波数成分を抽出して時系列で測定者に提示する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−305178号公報
【特許文献2】特開平09−127181号公報
【特許文献3】特開2004−101418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、超音波や接地線電流を検出する従来の方法では、沿面放電の強度が微弱な場合には、超音波や接地線電流中に含まれる放電音や放電電流の信号レベルが低いため、放電信号とノイズとの分離が難しく放電発生の有無の判定が困難となる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を判断できる電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項7記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置であって、紫外線の累積検出回数を測定し、所定時間内の累積検出回数の傾きが所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0009】
放電が発生していない場合における紫外線(すなわち外乱光による紫外線)の累積検出回数の傾きは時間の経過とともにほぼ一定であるのに対し、放電が発生している場合における紫外線の累積検出回数の傾きは変化する。請求項1および7記載の構成によれば、所定時間内の紫外線の累積検出回数の傾きに変化が生じ所定のしきい値を超えた場合に、放電が発生したと判断できる。
【0010】
放電の際に放射される紫外線は放電強度が弱くても検出可能であるが、同時に、外乱光などの放電以外の原因による紫外線も検出されてしまう。これに対して、請求項1および7記載の構成によれば、所定時間内の紫外線の累積検出回数の傾きが所定の条件を満たすか否かに基づいて絶縁異常個所の有無を判断するので、より正確な絶縁異常個所の有無の判断ができる。
【0011】
請求項2記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項8記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0012】
放電が発生している場合における所定時間内の紫外線検出回数は、放電が発生していない場合における所定時間内の紫外線検出回数(すなわち外乱光による紫外線の検出回数)よりも多くなる。請求項2および8記載の構成によれば、所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に、放電が発生したと判断できる。
【0013】
請求項3記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項9記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線を検出した時間間隔を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0014】
放電が発生していない場合における紫外線検出時間間隔(すなわち外乱光による紫外線の検出時間間隔)はばらつきが大きくデータが広範囲に分布するのに対し、放電が発生している場合における紫外線検出時間間隔はばらつきが小さくデータが特定の時間間隔に集中して分布する。請求項3および9記載の構成によれば、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に、放電が発生したと判断できる。
【0015】
請求項4記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項10記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0016】
放電が発生していない場合における紫外線検出時の印加電圧位相(すなわち外乱光による紫外線を検出した時の印加電圧位相)は0度〜360度にわたって均等に分布するのに対し、放電が発生している場合における紫外線検出時の印加電圧位相は特定の位相に集中する。請求項4および10記載の構成によれば、所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に、放電が発生したと判断できる。
【0017】
請求項5記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項11記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0018】
放電が発生している場合における紫外線検出時電圧位相が特定位相である回数は、放電が発生していない場合における紫外線検出時電圧位相(すなわち外乱光による紫外線を検出した時の電圧位相)が特定位相である回数よりも多くなる。請求項5および11記載の構成によれば、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に、放電が発生したと判断できる。
【0019】
請求項6記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項12記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線の検出回数と、紫外線を検出した時間間隔と、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相とを測定し、所定時間内の紫外線検出回数と、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔と、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数とを変量として算出したマハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより絶縁異常個所の有無を判断するところに特徴を有する。
【0020】
放電が発生している場合におけるマハラノビスの距離は比較的小さい値に分布するのに対し、放電が発生していない場合におけるマハラノビスの距離はそれよりも大きい値に分布する。請求項6および12記載の構成によれば、マハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより、放電の有無を判断できる。
【0021】
また、所定時間内の紫外線検出回数のみ、所定時間内の紫外線検出時間間隔のみ、あるいは所定時間内の紫外線検出時電圧位相の回数のみによる判定が困難な場合であっても、マハラノビスの距離に基づいて放電発生の有無を判定することができ、絶縁異常個所の存在の有無の判断精度が増大し、診断結果の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検出した紫外線から得られる所定時間内における各種の情報が所定の条件を満たすか否かに基づいて放電発生の有無を判断でき、微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。図1は、絶縁異常診断装置の構成をブロック図で示したものである。絶縁異常診断装置1は、稼働中の電気設備(変圧器)の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断(診断)するものであり、紫外線センサ2(紫外線検出手段に相当)および信号処理装置3(判断手段、測定手段、検出回数測定手段、時間間隔測定手段、電圧位相測定手段、マハラノビス距離算出手段に相当)を備えて構成されている。紫外線センサ2は、絶縁異常診断の対象である電気設備、例えば変圧器4の近傍に設置され、この変圧器4表面の絶縁異常個所において放電により発生する紫外線を検出する。紫外線センサ2は、紫外線を検出するとパルス状の電圧信号を出力する。
【0024】
信号処理装置3は、信号処理回路5とパーソナルコンピュータなどの情報処理装置6を備えて構成されている。信号処理回路5は、検出回数データ用メモリ7、電圧位相データ用メモリ8、図示しないCPUなどを備えて構成されており、この信号処理回路5には、紫外線センサ2が出力した電圧信号および変圧器4に印加されている電圧の位相信号(印加電圧位相信号)が入力されるようになっている。そして、信号処理回路5は、紫外線センサ2が出力した電圧信号の回数(パルス数)を紫外線検出回数データCiとして検出回数データ用メモリ7に記憶し、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相信号を紫外線検出時電圧位相データPiとして電圧位相データ用メモリ8に記憶する。
【0025】
情報処理装置6は、図示しないCPU,RAM,ROM,入出力インタフェース,それらを結ぶバス,電源装置,ハードディスク装置などを備えて構成されている。この情報処理装置6は、検出回数データ用メモリ7に記憶されている紫外線検出回数データCiおよび電圧位相データ用メモリ8に記憶されている紫外線検出時電圧位相データPiを、一定時間(後述する待機時間T1)ごとに取り込むようになっている。そして、情報処理装置6は、これら取り込んだ紫外線検出回数データCiおよび紫外線検出時電圧位相データPiを用いて、診断プログラムに従って変圧器4の絶縁異常個所の有無を診断する。
【0026】
次に、上記絶縁異常診断装置1において情報処理装置6により実行される絶縁異常診断方法について説明する。
図2は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1では、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得する。次に、ステップS2では、累積検出回数データCsに、ステップS1にて取得した紫外線検出回数データCiを加え、新たな累積検出回数データCsとする。情報処理装置6は、所定時間として傾き算出対象時間T2が経過しない間は(ステップS3:NO)、ステップS7に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S7:NO)、待機時間T1が経過すると(S7:YES)、ステップS1に戻る。
【0027】
上記したステップS3において、傾き算出対象時間T2が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS4に移行し、累積検出回数データCsに基づいて、傾き算出対象時間T2内の累積検出回数の傾きD(累積検出回数の増加)を算出する。ステップS5では、ステップS4にて算出した累積検出回数の傾きDと所定のしきい値Dthとを比較する。傾きDがしきい値Dthを超えた場合には(S5:YES)、情報処理装置6は、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS6の絶縁異常処理に進む。ステップS6では、例えばアラームを発したり、診断結果をファイルに記述するといった絶縁異常発生時の所定の処理をする。傾きDがしきい値Dth以下であれば(S5:NO)、ステップS7にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS1に戻る。
【0028】
図3(a)は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)における紫外線(すなわち外乱光による紫外線)の累積検出回数の例を示し、図3(b)は、微弱な沿面放電が発生している場合(放電時)における紫外線の累積検出回数の例を示す。この場合、上記ステップS7の待機時間T1を10秒、ステップS3の傾き算出対象時間T2を60分、全体の紫外線測定時間を120分とした。
【0029】
図3(a)では、測定開始から60分間の累積検出回数の傾きDは8回/時であり、60分から120分までの60分間の累積検出回数の傾きDは13回/時である。一方、図3(b)では、測定開始から60分間の累積検出回数の傾きDは13回/時であり、60分から120分までの60分間の累積検出回数の傾きDは63回/時に変化する。このように、外乱光による紫外線の累積検出回数の傾きDがほぼ一定であるのに対し、沿面放電が発生するとその傾きDが変化する。従って、しきい値Dthを例えば20回/時とすることにより、放電の有無を判定できる。
【0030】
以上説明したように本実施形態では、紫外線の累積検出回数を測定し、所定時間(傾き算出対象時間T2)内の累積検出回数の傾きDが所定のしきい値Dthを超えた場合に放電発生と判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図4および図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態および後述する第3ないし第6の実施形態において、絶縁異常診断装置の構成は図1に示したものと同様である。
【0032】
図4は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS21では、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得する。次に、ステップS22では、紫外線検出回数を保持する配列CNTに、ステップS21にて取得した紫外線検出回数データCiを格納する。情報処理装置6は、所定時間として検出回数和の算出対象時間T3が経過しない間は(ステップS23:NO)、ステップS27に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S27:NO)、待機時間T1が経過すると(S27:YES)、ステップS21に戻る。
【0033】
上記したステップS23において、検出回数和の算出対象時間T3が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS24に移行し、配列CNTの要素の和を紫外線検出回数CSとして算出する。ステップS25では、ステップS24にて算出した紫外線検出回数CSと予め定めてある所定のしきい値CSthとを比較する。紫外線検出回数CSがしきい値Cthを超えた場合には(S25:YES)、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS26の絶縁異常処理に進む。紫外線検出回数CSがしきい値Cth以下であれば(S25:NO)、ステップS27にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS21に戻る。
【0034】
図5は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)における10分間の紫外線検出回数CSの度数分布の例を示す。この場合、上記ステップS27の待機時間T1を10秒、ステップS23の検出回数和の算出対象時間T3を10分、全体の紫外線測定時間は120分とした。未放電時の紫外線検出回数CSは0〜9回に分布し、10回を超えることはない。一方、放電時の紫外線検出回数CSは0〜46回に分布し、10回以上の頻度が高い。これは、放電発生時には外乱光による紫外線の検出回数に放電光による紫外線の検出回数が加わるためである。このように、検出回数和の算出対象時間T3の紫外線検出回数は未放電時よりも放電時の方が多くなるので、しきい値CSthを10回とすることにより、放電の有無を判定できる。
【0035】
以上説明したように本実施形態では、所定時間(検出回数和の算出対象時間T3)内の紫外線検出回数CSが所定のしきい値CSthを超えた場合に放電発生と判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0036】
絶縁物表面の汚損や湿気の程度に依存する沿面放電の回数を、ノイズ環境の良くない稼動中の電気設備にて厳密に測定することは技術的に困難である。
本実施形態では、放電回数ではなく、放電回数と相関のある紫外線検出回数CSに基づいて絶縁異常個所の有無を判断している。すなわち、所定時間内の紫外線検出回数が所定の条件を満たすか否かに基づいて絶縁異常個所の有無を判断するので、実際の放電回数を測定できなくても、より正確に絶縁異常個所の有無を判断できる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図6ないし図8を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS31では、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得する。次に、ステップS32では、紫外線検出回数を保持する配列CNTに、ステップS31にて取得した紫外線検出回数データCiを格納する。情報処理装置6は、前回の尖り度Kの算出(ステップS35参照)から所定時間T4が経過しない間は(ステップS33:NO)、ステップS38に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S38:NO)、待機時間T1が経過すると(S38:YES)、ステップS31に戻る。
【0038】
上記したステップS33において、所定時間T4が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS34に移行し、配列CNTの要素を用いて紫外線検出時間間隔を算出し、この紫外線検出時間間隔を保持する配列INTを生成する。
【0039】
ここで、配列INTの生成方法について図7を参照しながら説明する。配列CNTに図7に示すようにデータが格納されている場合、CNT[j+0]、CNT[j+3]、CNT[j+8]にて紫外線を少なくとも1回検出している。そこで、これら紫外線を検出している配列CNTのうち隣り合うもの(この場合、CNT[j+0]とCNT[j+3]、CNT[j+3]とCNT[j+8])のインデックスの差を算出すると、
(j+3)−(j+0)=3
(j+8)−(j+3)=5
となる。配列CNTのインデックスは待機時間T1ごとに1増加するので、インデックスの差が3であればINT[0]に3T1を格納し、インデックスの差が5であればINT[1]に5T1を格納する。この手順をインデックス[j+0]から[j+T4/T1]まで繰り返す。
【0040】
ステップS35では、生成された配列INTの要素を用いて尖り度Kを算出する。この場合、尖り度Kは、配列INT(INT[0],INT[1],・・・,INT[n−1])の平均をm、標準偏差をσとして、次の(1)式により算出する。
【数1】
【0041】
尖り度Kはデータが平均の回りに集中している度合いを示す尺度であり、データが集中しているほど、その値は大きくなる。ステップS36では、算出した尖り度Kと所定のしきい値Kthとを比較する。尖り度Kがしきい値Kthを超えた場合には(S36:YES)、情報処理装置6は、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS37の絶縁異常処理に進む。尖り度Kがしきい値Kth以下であれば(S36:NO)、ステップS38にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS31に戻る。
【0042】
図8は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)における紫外線検出時間間隔の度数分布の例を示す。この場合、上記ステップS38の待機時間T1を10秒、ステップS33の所定時間T4を120分とした。放電が発生すると紫外線の検出時間間隔が短くなるので、放電時の紫外線検出時間間隔データは、未放電時に比べ短い時間間隔範囲(図8では左端側の範囲)に集中する。また、図8に示すデータに基づいて検出時間間隔データの尖り度Kを算出すると、放電時の尖り度Kは14.2となり、未放電時の尖り度Kは5.3となる。従って、しきい値Kthを10と設定することにより、放電の有無を判定できる。
【0043】
以上説明したように本実施形態では、紫外線を検出した時間間隔(配列INT)を測定し、所定時間T4内の紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に放電発生と判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0044】
上記第2の実施形態において説明したように、厳密な放電回数の測定は困難である。本実施形態では、放電回数ではなく、放電回数と相関のある紫外線検出時間間隔に基づいて絶縁異常個所の有無を判断している。すなわち、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が所定の条件を満たすか否かに基づいて絶縁異常個所の有無を判断するので、実際の放電回数を測定できなくても、より正確に絶縁異常個所の有無を判断できる。
なお、本実施形態では、データが集中する指標として尖り度Kを用いた例を示したが、例えば分散のようなデータのばらつきの程度を示す指標を用いてもよい。
【0045】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について図9および図10を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS41では、信号処理回路5から紫外線検出時電圧位相データPiを取得する。次に、ステップS42では、ステップS41にて取得した紫外線検出時電圧位相データPiを、検出時位相を保持する配列PHSに格納する。情報処理装置6は、前回の歪み度Sの算出(ステップS44参照)から所定時間T5が経過しない間は(ステップS43:NO)、ステップS47に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S47:NO)、待機時間T1が経過すると(S47:YES)、ステップS41に戻る。
【0046】
上記したステップS43において、所定時間T5が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS44に移行し、配列PHSの要素を用いて歪み度Sを算出する。この場合、歪み度Sは、配列PHS(PHS[0],PHS[1],・・・・,PHS[n−1])の平均をm、標準偏差をσとして、次の(2)式により算出する。
【数2】
【0047】
歪み度Sはデータが平均の回りに分布していない度合いを示す尺度であり、データが均等に分布しているほど、その値は小さくなる。ステップS45では、算出した歪み度Sと所定のしきい値Sthとを比較する。歪み度Sがしきい値Sthを超えた場合には(S45:YES)、情報処理装置6は、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS46の絶縁異常処理に進む。歪み度Sがしきい値Sth以下であれば(S45:NO)、ステップS47にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS41に戻る。
【0048】
図10(a)は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)における紫外線検出時電圧位相の度数分布の例を示し、図10(b)は、沿面放電が発生している場合(放電時)における紫外線検出時電圧位相の度数分布の例を示す。この場合、上記のステップS47の待機時間T1を10秒、ステップS43の所定時間T5を120分とした。一般に沿面放電は電気設備(変圧器4)の印加電圧がピーク付近となるときに発生することが知られており、紫外線検出時電圧位相は90度と270度付近に集中して分布する。一方、未放電時の紫外線検出時電圧位相(すなわち外乱光による紫外線を検出した時点の印加電圧位相)は、0度から360度にわたって均等に分布する。図10(a)に示すデータ(未放電時のデータ)に基づいて歪み度Sを算出すると0.04となり、図10(b)に示すデータ(放電時のデータ)に基づいて歪み度Sを算出すると0.46となる。従って、しきい値Sthを0.1とすることにより、放電の有無を判定できる。
【0049】
以上説明したように本実施形態では、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相を測定し、所定時間T5内の紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲(90度と270度付近)に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0050】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について図11および図12を参照しながら説明する。
図11は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS51では、信号処理回路5から紫外線検出時電圧位相データPiを取得する。次に、ステップS52では、ステップS51にて取得した紫外線検出時電圧位相データPiを検出時電圧位相を保持する配列PHSに格納する。情報処理装置6は、前回の特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPの算出(ステップS54参照)から所定時間T6が経過しない間は(ステップS53:NO)、ステップS57に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S57:NO)、待機時間T1が経過すると(S57:YES)、ステップS51に戻る。
【0051】
上記したステップS53において、前回の特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPの算出から所定時間T6が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS54に移行し、配列PHSの要素が電圧ピーク付近(すなわち90度あるいは270度付近)であるものの個数を特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとして算出(カウント)する。算出された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPは、所定時間T6内に印加電圧のピーク(振幅が最大となるときの位相)付近において紫外線を検出した回数(電圧ピーク付近における紫外線検出回数)を示す。ステップS55では、算出した特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPと所定のしきい値CPthとを比較する。特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPがしきい値CPthを超えた場合には(S55:YES)、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS56の絶縁異常処理に進む。特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPがしきい値CPth以下であれば(S55:NO)、絶縁異常個所が存在しないと判断して、ステップS57にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS51に戻る。
【0052】
図12は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)において、印加電圧ピーク付近における紫外線を検出した回数、すなわち特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPの度数分布の例を示す。この場合、待機時間T1を10秒、所定時間T5を10分とした。印加電圧ピーク付近における紫外線検出回数は、未放電時には4回以下に集中して分布し、放電時には5回以上にも分布する。従って、しきい値CPthを5回と設定することにより、放電の有無を判定できる。
【0053】
以上説明したように本実施形態では、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相を測定し、所定時間T6内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相(90度あるいは270度付近)の回数CPが所定のしきい値CPthを超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0054】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について図13ないし図16を参照しながら説明する。
図13は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS61にて、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得し、ステップS62にて、取得した紫外線検出回数データCiを紫外線検出回数を保持する配列CNTに格納する。次に、ステップS63にて、紫外線検出時電圧位相データPiを取得し、ステップS64にて、取得した紫外線検出時電圧位相データPiを紫外線検出時電圧位相を保持する配列PHSに格納する。情報処理装置6は、所定時間T7が経過しない間は(ステップS65:NO)、ステップS72に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S72:NO)、待機時間T1が経過すると(S72:YES)、ステップS61に戻る。
【0055】
上記したステップS65において、所定時間T7が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS66にて配列CNTの要素の和すなわち紫外線検出回数CSを算出する。ステップS67では、配列CNTから紫外線検出時間間隔を求め(図7参照)、その平均値IMを算出する。ステップS68では、配列PHSの中で要素が電圧ピーク付近であるものの個数、すなわち特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPをカウントして求める。ステップS69では、所定時間T7内の紫外線検出回数CSと所定時間T7内に測定された紫外線検出時間間隔の平均値IMと所定時間T7内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとからマハラノビスの距離MDを算出し、ステップS70に移行して、算出したマハラノビスの距離MDと所定のしきい値MDthとを比較する。マハラノビスの距離MDがしきい値MDthより小さければ(S70:YES)、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS71の絶縁異常処理に進む。マハラノビスの距離MDがしきい値MDth以上である場合には(S70:NO)、絶縁異常個所が存在しないと判断して、ステップS72にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS61に戻る。
【0056】
ここで、マハラノビスの距離について説明する。予想や診断のためのパターン認識に用いる品質工学の手法の一つであるMT法(マハラノビス・タグチ法)において、多変量で記述されるある状態を基準にして、この基準データ群にどれだけ似ているかを、変量間の相関も考慮して表す尺度をマハラノビスの距離という。本実施形態では、放電が発生している状態において、所定時間T7内の紫外線検出回数CSと所定時間T7内に測定された紫外線検出時間間隔の平均値IMと所定時間T7内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとを算出し、これらを変量としたデータの集合を基準データ群とする。
【0057】
基準データ群を用いてマハラノビスの距離を算出する手順について説明する。
図14は、所定時間T7内に算出(測定)された紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとをそれぞれ変量1、変量2、変量3とした場合の基準データ群を示している。ここで、準備したn個の基準データについて、変量1〜3の平均m1〜m3と標準偏差σ1〜σ3を算出する。
【0058】
続いて、n個の基準データの各要素yi1、yi2、yi3(i=1、2、…、n)について、平均m1〜m3と標準偏差σ1〜σ3を用いて以下の(3)式により正規化する。図15は、正規化された各要素Yi1、Yi2、Yi3(i=1、2、…、n)による基準データ群を示している。
【数3】
【0059】
図15に示す正規化された変量から相関係数を算出し、式(4)に示す相関係数行列Rを作成する。
【数4】
【0060】
ここでは変量が3個であるので、相関係数行列Rは3×3の行列となる。式(5)は、相関係数行列Rの要素rpq(=rqp)を導出するための式である。
【0061】
続いて、式(6)に示す相関係数行列Rの逆行列R−1を算出する。
【数5】
【0062】
式(7)は、相関係数行列Rの行列式|R|を示している。マハラノビスの距離MDは、変量数(ここでは3)と、ある正規化した紫外線検出回数CS、紫外線検出時間間隔の平均値IMおよび特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPのデータと、逆行列R−1を用いて以下の(8)式のように算出される。
【数6】
【0063】
算出されたマハラノビスの距離MDが小さいほど、基準データ群に近いことを意味し、放電が発生していると判定できる。
【0064】
図16は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)における基準データ群(紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CP)からマハラノビスの距離MDを算出した例である。この場合、待機時間T1を10秒、所定時間T7を10分とした。放電時のマハラノビスの距離MDは0付近に集中し、未放電時のマハラノビスの距離MDは5以上に分布する。従って、この例ではしきい値MDthを5とすることにより、マハラノビスの距離が5よりも小さい場合に放電あり、5以上の場合は放電なしと判定することができる。
【0065】
以上説明したように本実施形態では、紫外線の検出回数と、紫外線を検出した時間間隔と、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相とを測定し、所定時間内の紫外線検出回数CSと、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔の平均値IMと、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとを変量としてマハラノビスの距離MDを算出し、算出したマハラノビスの距離MDが所定のしきい値MDthよりも小さい場合に絶縁異常個所が存在すると判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、放電時の紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPを基準データとしたが、未放電時の紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPを基準データとしてもよい。この場合、算出されたマハラノビスの距離MDがしきい値MDth以上の場合に、放電が発生していると判定できる。
【0067】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張することができる。
待機時間T1ごとに取得する紫外線検出回数データCiや紫外線検出時電圧位相データPiをファイルに記憶(保管)しておき、測定時間終了後に、ファイルに記憶されたデータを用いて同様の絶縁異常診断を行うようにしてもよい。
【0068】
検出回数データ用メモリ7に累積検出回数データCsを記憶し、この累積検出回数データCsを用いて紫外線検出回数データCiを取得する構成としてもよい。
待機時間T1および所定時間T2〜T7は、適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の絶縁異常診断装置を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態の絶縁異常診断の制御内容を示すフローチャート
【図3】(a)は未放電時、(b)は放電時の累積検出回数の例を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図5】未放電時と放電時における10分間の紫外線検出回数の度数分布の例を示す図
【図6】本発明の第3の実施形態を示す図2相当図
【図7】配列INTの生成方法を説明するための図
【図8】未放電時と放電時における紫外線検出時間間隔の度数分布の例を示す図
【図9】本発明の第4の実施形態を示す図2相当図
【図10】(a)は未放電時、(b)は放電時の紫外線検出時電圧位相の度数分布の例を示す図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す図2相当図
【図12】未放電時と放電時において、印加電圧ピーク付近における紫外線を検出した回数の度数分布の例を示す図
【図13】本発明の第6の実施形態を示す図2相当図
【図14】正規化前の基準データ群を示す図
【図15】正規化後の基準データ群を示す図
【図16】未放電時と放電時における基準データ群から算出したマハラノビスの距離を示す図
【図17】従来技術の説明に用いるもので、(a)放電の発生時に接地線に流れる電流波形、(b)電気設備への印加交流電圧波形を示す図
【符号の説明】
【0070】
図面中、1は絶縁異常診断装置、2は紫外線センサ(紫外線検出手段)、3は信号処理装置(判断手段、測定手段、検出回数測定手段、時間間隔測定手段、電圧位相測定手段、マハラノビス距離算出手段)、4は変圧器(電気設備)、6は情報処理装置である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより、絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器をはじめとする電気設備においては、経年あるいは環境により絶縁物に塩分や塵埃などの汚損物が付着し、このような汚損物が吸湿すると絶縁物表面の電気抵抗が低下して故障や事故を引き起こすことがある。絶縁物表面の電気抵抗が低下すると、設備表面では沿面放電が発生し、放電電流が流れると同時に電磁波、超音波、紫外線などが放射されることが知られている。そのため、従来、それら物理量を検出することで絶縁異常個所の存在有無を診断することが行なわれてきた。しかし、放電に伴って発生する上記物理量は極めて微弱であるため、ノイズを含む測定信号中から放電に伴う物理量のみを如何に正確に抽出するかが課題となってきた。
【0003】
図17(a)は、放電の発生時に接地線に流れる電流波形の例を示しており、図17(b)は、そのときの電気設備への印加交流電圧波形の例を示している。放電は、放電発生個所に加わる電圧があるしきい値を超えると発生し、しきい値を下回ると停止する。このため、印加交流電圧の1サイクルの期間に2度発生する特定のパターンを持つことが多い。また、放電はひとたび始まると一定時間継続することが多い。放電発生の有無は、そうした放電現象の有する特性に基づいて判断される。
【0004】
従来技術として特許文献1,2には、放電に伴う超音波を検出して判断する方法が開示されている。この方法は、超音波センサにより捉えた信号の中から放電特有の周波数成分を抽出して包絡線検波し、次に、その信号から印加交流電圧の2倍の周波数成分を抽出し、その成分の強弱により放電の有無を判断している。
【0005】
また、特許文献3には、部分放電の発生により接地線に流れる電流波形を数十サイクルにわたって測定し、そこからバックグラウンド・ノイズとの差が顕著な周波数成分を抽出して時系列で測定者に提示する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−305178号公報
【特許文献2】特開平09−127181号公報
【特許文献3】特開2004−101418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、超音波や接地線電流を検出する従来の方法では、沿面放電の強度が微弱な場合には、超音波や接地線電流中に含まれる放電音や放電電流の信号レベルが低いため、放電信号とノイズとの分離が難しく放電発生の有無の判定が困難となる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を判断できる電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項7記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法および絶縁異常診断装置であって、紫外線の累積検出回数を測定し、所定時間内の累積検出回数の傾きが所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0009】
放電が発生していない場合における紫外線(すなわち外乱光による紫外線)の累積検出回数の傾きは時間の経過とともにほぼ一定であるのに対し、放電が発生している場合における紫外線の累積検出回数の傾きは変化する。請求項1および7記載の構成によれば、所定時間内の紫外線の累積検出回数の傾きに変化が生じ所定のしきい値を超えた場合に、放電が発生したと判断できる。
【0010】
放電の際に放射される紫外線は放電強度が弱くても検出可能であるが、同時に、外乱光などの放電以外の原因による紫外線も検出されてしまう。これに対して、請求項1および7記載の構成によれば、所定時間内の紫外線の累積検出回数の傾きが所定の条件を満たすか否かに基づいて絶縁異常個所の有無を判断するので、より正確な絶縁異常個所の有無の判断ができる。
【0011】
請求項2記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項8記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0012】
放電が発生している場合における所定時間内の紫外線検出回数は、放電が発生していない場合における所定時間内の紫外線検出回数(すなわち外乱光による紫外線の検出回数)よりも多くなる。請求項2および8記載の構成によれば、所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に、放電が発生したと判断できる。
【0013】
請求項3記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項9記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線を検出した時間間隔を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0014】
放電が発生していない場合における紫外線検出時間間隔(すなわち外乱光による紫外線の検出時間間隔)はばらつきが大きくデータが広範囲に分布するのに対し、放電が発生している場合における紫外線検出時間間隔はばらつきが小さくデータが特定の時間間隔に集中して分布する。請求項3および9記載の構成によれば、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に、放電が発生したと判断できる。
【0015】
請求項4記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項10記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0016】
放電が発生していない場合における紫外線検出時の印加電圧位相(すなわち外乱光による紫外線を検出した時の印加電圧位相)は0度〜360度にわたって均等に分布するのに対し、放電が発生している場合における紫外線検出時の印加電圧位相は特定の位相に集中する。請求項4および10記載の構成によれば、所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に、放電が発生したと判断できる。
【0017】
請求項5記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項11記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断するところに特徴を有する。
【0018】
放電が発生している場合における紫外線検出時電圧位相が特定位相である回数は、放電が発生していない場合における紫外線検出時電圧位相(すなわち外乱光による紫外線を検出した時の電圧位相)が特定位相である回数よりも多くなる。請求項5および11記載の構成によれば、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に、放電が発生したと判断できる。
【0019】
請求項6記載の電気設備の絶縁異常診断方法および請求項12記載の電気設備の絶縁異常診断装置は、紫外線の検出回数と、紫外線を検出した時間間隔と、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相とを測定し、所定時間内の紫外線検出回数と、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔と、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数とを変量として算出したマハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより絶縁異常個所の有無を判断するところに特徴を有する。
【0020】
放電が発生している場合におけるマハラノビスの距離は比較的小さい値に分布するのに対し、放電が発生していない場合におけるマハラノビスの距離はそれよりも大きい値に分布する。請求項6および12記載の構成によれば、マハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより、放電の有無を判断できる。
【0021】
また、所定時間内の紫外線検出回数のみ、所定時間内の紫外線検出時間間隔のみ、あるいは所定時間内の紫外線検出時電圧位相の回数のみによる判定が困難な場合であっても、マハラノビスの距離に基づいて放電発生の有無を判定することができ、絶縁異常個所の存在の有無の判断精度が増大し、診断結果の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検出した紫外線から得られる所定時間内における各種の情報が所定の条件を満たすか否かに基づいて放電発生の有無を判断でき、微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。図1は、絶縁異常診断装置の構成をブロック図で示したものである。絶縁異常診断装置1は、稼働中の電気設備(変圧器)の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断(診断)するものであり、紫外線センサ2(紫外線検出手段に相当)および信号処理装置3(判断手段、測定手段、検出回数測定手段、時間間隔測定手段、電圧位相測定手段、マハラノビス距離算出手段に相当)を備えて構成されている。紫外線センサ2は、絶縁異常診断の対象である電気設備、例えば変圧器4の近傍に設置され、この変圧器4表面の絶縁異常個所において放電により発生する紫外線を検出する。紫外線センサ2は、紫外線を検出するとパルス状の電圧信号を出力する。
【0024】
信号処理装置3は、信号処理回路5とパーソナルコンピュータなどの情報処理装置6を備えて構成されている。信号処理回路5は、検出回数データ用メモリ7、電圧位相データ用メモリ8、図示しないCPUなどを備えて構成されており、この信号処理回路5には、紫外線センサ2が出力した電圧信号および変圧器4に印加されている電圧の位相信号(印加電圧位相信号)が入力されるようになっている。そして、信号処理回路5は、紫外線センサ2が出力した電圧信号の回数(パルス数)を紫外線検出回数データCiとして検出回数データ用メモリ7に記憶し、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相信号を紫外線検出時電圧位相データPiとして電圧位相データ用メモリ8に記憶する。
【0025】
情報処理装置6は、図示しないCPU,RAM,ROM,入出力インタフェース,それらを結ぶバス,電源装置,ハードディスク装置などを備えて構成されている。この情報処理装置6は、検出回数データ用メモリ7に記憶されている紫外線検出回数データCiおよび電圧位相データ用メモリ8に記憶されている紫外線検出時電圧位相データPiを、一定時間(後述する待機時間T1)ごとに取り込むようになっている。そして、情報処理装置6は、これら取り込んだ紫外線検出回数データCiおよび紫外線検出時電圧位相データPiを用いて、診断プログラムに従って変圧器4の絶縁異常個所の有無を診断する。
【0026】
次に、上記絶縁異常診断装置1において情報処理装置6により実行される絶縁異常診断方法について説明する。
図2は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1では、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得する。次に、ステップS2では、累積検出回数データCsに、ステップS1にて取得した紫外線検出回数データCiを加え、新たな累積検出回数データCsとする。情報処理装置6は、所定時間として傾き算出対象時間T2が経過しない間は(ステップS3:NO)、ステップS7に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S7:NO)、待機時間T1が経過すると(S7:YES)、ステップS1に戻る。
【0027】
上記したステップS3において、傾き算出対象時間T2が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS4に移行し、累積検出回数データCsに基づいて、傾き算出対象時間T2内の累積検出回数の傾きD(累積検出回数の増加)を算出する。ステップS5では、ステップS4にて算出した累積検出回数の傾きDと所定のしきい値Dthとを比較する。傾きDがしきい値Dthを超えた場合には(S5:YES)、情報処理装置6は、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS6の絶縁異常処理に進む。ステップS6では、例えばアラームを発したり、診断結果をファイルに記述するといった絶縁異常発生時の所定の処理をする。傾きDがしきい値Dth以下であれば(S5:NO)、ステップS7にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS1に戻る。
【0028】
図3(a)は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)における紫外線(すなわち外乱光による紫外線)の累積検出回数の例を示し、図3(b)は、微弱な沿面放電が発生している場合(放電時)における紫外線の累積検出回数の例を示す。この場合、上記ステップS7の待機時間T1を10秒、ステップS3の傾き算出対象時間T2を60分、全体の紫外線測定時間を120分とした。
【0029】
図3(a)では、測定開始から60分間の累積検出回数の傾きDは8回/時であり、60分から120分までの60分間の累積検出回数の傾きDは13回/時である。一方、図3(b)では、測定開始から60分間の累積検出回数の傾きDは13回/時であり、60分から120分までの60分間の累積検出回数の傾きDは63回/時に変化する。このように、外乱光による紫外線の累積検出回数の傾きDがほぼ一定であるのに対し、沿面放電が発生するとその傾きDが変化する。従って、しきい値Dthを例えば20回/時とすることにより、放電の有無を判定できる。
【0030】
以上説明したように本実施形態では、紫外線の累積検出回数を測定し、所定時間(傾き算出対象時間T2)内の累積検出回数の傾きDが所定のしきい値Dthを超えた場合に放電発生と判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図4および図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態および後述する第3ないし第6の実施形態において、絶縁異常診断装置の構成は図1に示したものと同様である。
【0032】
図4は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS21では、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得する。次に、ステップS22では、紫外線検出回数を保持する配列CNTに、ステップS21にて取得した紫外線検出回数データCiを格納する。情報処理装置6は、所定時間として検出回数和の算出対象時間T3が経過しない間は(ステップS23:NO)、ステップS27に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S27:NO)、待機時間T1が経過すると(S27:YES)、ステップS21に戻る。
【0033】
上記したステップS23において、検出回数和の算出対象時間T3が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS24に移行し、配列CNTの要素の和を紫外線検出回数CSとして算出する。ステップS25では、ステップS24にて算出した紫外線検出回数CSと予め定めてある所定のしきい値CSthとを比較する。紫外線検出回数CSがしきい値Cthを超えた場合には(S25:YES)、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS26の絶縁異常処理に進む。紫外線検出回数CSがしきい値Cth以下であれば(S25:NO)、ステップS27にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS21に戻る。
【0034】
図5は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)における10分間の紫外線検出回数CSの度数分布の例を示す。この場合、上記ステップS27の待機時間T1を10秒、ステップS23の検出回数和の算出対象時間T3を10分、全体の紫外線測定時間は120分とした。未放電時の紫外線検出回数CSは0〜9回に分布し、10回を超えることはない。一方、放電時の紫外線検出回数CSは0〜46回に分布し、10回以上の頻度が高い。これは、放電発生時には外乱光による紫外線の検出回数に放電光による紫外線の検出回数が加わるためである。このように、検出回数和の算出対象時間T3の紫外線検出回数は未放電時よりも放電時の方が多くなるので、しきい値CSthを10回とすることにより、放電の有無を判定できる。
【0035】
以上説明したように本実施形態では、所定時間(検出回数和の算出対象時間T3)内の紫外線検出回数CSが所定のしきい値CSthを超えた場合に放電発生と判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0036】
絶縁物表面の汚損や湿気の程度に依存する沿面放電の回数を、ノイズ環境の良くない稼動中の電気設備にて厳密に測定することは技術的に困難である。
本実施形態では、放電回数ではなく、放電回数と相関のある紫外線検出回数CSに基づいて絶縁異常個所の有無を判断している。すなわち、所定時間内の紫外線検出回数が所定の条件を満たすか否かに基づいて絶縁異常個所の有無を判断するので、実際の放電回数を測定できなくても、より正確に絶縁異常個所の有無を判断できる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図6ないし図8を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS31では、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得する。次に、ステップS32では、紫外線検出回数を保持する配列CNTに、ステップS31にて取得した紫外線検出回数データCiを格納する。情報処理装置6は、前回の尖り度Kの算出(ステップS35参照)から所定時間T4が経過しない間は(ステップS33:NO)、ステップS38に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S38:NO)、待機時間T1が経過すると(S38:YES)、ステップS31に戻る。
【0038】
上記したステップS33において、所定時間T4が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS34に移行し、配列CNTの要素を用いて紫外線検出時間間隔を算出し、この紫外線検出時間間隔を保持する配列INTを生成する。
【0039】
ここで、配列INTの生成方法について図7を参照しながら説明する。配列CNTに図7に示すようにデータが格納されている場合、CNT[j+0]、CNT[j+3]、CNT[j+8]にて紫外線を少なくとも1回検出している。そこで、これら紫外線を検出している配列CNTのうち隣り合うもの(この場合、CNT[j+0]とCNT[j+3]、CNT[j+3]とCNT[j+8])のインデックスの差を算出すると、
(j+3)−(j+0)=3
(j+8)−(j+3)=5
となる。配列CNTのインデックスは待機時間T1ごとに1増加するので、インデックスの差が3であればINT[0]に3T1を格納し、インデックスの差が5であればINT[1]に5T1を格納する。この手順をインデックス[j+0]から[j+T4/T1]まで繰り返す。
【0040】
ステップS35では、生成された配列INTの要素を用いて尖り度Kを算出する。この場合、尖り度Kは、配列INT(INT[0],INT[1],・・・,INT[n−1])の平均をm、標準偏差をσとして、次の(1)式により算出する。
【数1】
【0041】
尖り度Kはデータが平均の回りに集中している度合いを示す尺度であり、データが集中しているほど、その値は大きくなる。ステップS36では、算出した尖り度Kと所定のしきい値Kthとを比較する。尖り度Kがしきい値Kthを超えた場合には(S36:YES)、情報処理装置6は、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS37の絶縁異常処理に進む。尖り度Kがしきい値Kth以下であれば(S36:NO)、ステップS38にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS31に戻る。
【0042】
図8は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)における紫外線検出時間間隔の度数分布の例を示す。この場合、上記ステップS38の待機時間T1を10秒、ステップS33の所定時間T4を120分とした。放電が発生すると紫外線の検出時間間隔が短くなるので、放電時の紫外線検出時間間隔データは、未放電時に比べ短い時間間隔範囲(図8では左端側の範囲)に集中する。また、図8に示すデータに基づいて検出時間間隔データの尖り度Kを算出すると、放電時の尖り度Kは14.2となり、未放電時の尖り度Kは5.3となる。従って、しきい値Kthを10と設定することにより、放電の有無を判定できる。
【0043】
以上説明したように本実施形態では、紫外線を検出した時間間隔(配列INT)を測定し、所定時間T4内の紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に放電発生と判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0044】
上記第2の実施形態において説明したように、厳密な放電回数の測定は困難である。本実施形態では、放電回数ではなく、放電回数と相関のある紫外線検出時間間隔に基づいて絶縁異常個所の有無を判断している。すなわち、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が所定の条件を満たすか否かに基づいて絶縁異常個所の有無を判断するので、実際の放電回数を測定できなくても、より正確に絶縁異常個所の有無を判断できる。
なお、本実施形態では、データが集中する指標として尖り度Kを用いた例を示したが、例えば分散のようなデータのばらつきの程度を示す指標を用いてもよい。
【0045】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について図9および図10を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS41では、信号処理回路5から紫外線検出時電圧位相データPiを取得する。次に、ステップS42では、ステップS41にて取得した紫外線検出時電圧位相データPiを、検出時位相を保持する配列PHSに格納する。情報処理装置6は、前回の歪み度Sの算出(ステップS44参照)から所定時間T5が経過しない間は(ステップS43:NO)、ステップS47に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S47:NO)、待機時間T1が経過すると(S47:YES)、ステップS41に戻る。
【0046】
上記したステップS43において、所定時間T5が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS44に移行し、配列PHSの要素を用いて歪み度Sを算出する。この場合、歪み度Sは、配列PHS(PHS[0],PHS[1],・・・・,PHS[n−1])の平均をm、標準偏差をσとして、次の(2)式により算出する。
【数2】
【0047】
歪み度Sはデータが平均の回りに分布していない度合いを示す尺度であり、データが均等に分布しているほど、その値は小さくなる。ステップS45では、算出した歪み度Sと所定のしきい値Sthとを比較する。歪み度Sがしきい値Sthを超えた場合には(S45:YES)、情報処理装置6は、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS46の絶縁異常処理に進む。歪み度Sがしきい値Sth以下であれば(S45:NO)、ステップS47にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS41に戻る。
【0048】
図10(a)は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)における紫外線検出時電圧位相の度数分布の例を示し、図10(b)は、沿面放電が発生している場合(放電時)における紫外線検出時電圧位相の度数分布の例を示す。この場合、上記のステップS47の待機時間T1を10秒、ステップS43の所定時間T5を120分とした。一般に沿面放電は電気設備(変圧器4)の印加電圧がピーク付近となるときに発生することが知られており、紫外線検出時電圧位相は90度と270度付近に集中して分布する。一方、未放電時の紫外線検出時電圧位相(すなわち外乱光による紫外線を検出した時点の印加電圧位相)は、0度から360度にわたって均等に分布する。図10(a)に示すデータ(未放電時のデータ)に基づいて歪み度Sを算出すると0.04となり、図10(b)に示すデータ(放電時のデータ)に基づいて歪み度Sを算出すると0.46となる。従って、しきい値Sthを0.1とすることにより、放電の有無を判定できる。
【0049】
以上説明したように本実施形態では、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相を測定し、所定時間T5内の紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲(90度と270度付近)に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0050】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について図11および図12を参照しながら説明する。
図11は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS51では、信号処理回路5から紫外線検出時電圧位相データPiを取得する。次に、ステップS52では、ステップS51にて取得した紫外線検出時電圧位相データPiを検出時電圧位相を保持する配列PHSに格納する。情報処理装置6は、前回の特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPの算出(ステップS54参照)から所定時間T6が経過しない間は(ステップS53:NO)、ステップS57に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S57:NO)、待機時間T1が経過すると(S57:YES)、ステップS51に戻る。
【0051】
上記したステップS53において、前回の特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPの算出から所定時間T6が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS54に移行し、配列PHSの要素が電圧ピーク付近(すなわち90度あるいは270度付近)であるものの個数を特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとして算出(カウント)する。算出された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPは、所定時間T6内に印加電圧のピーク(振幅が最大となるときの位相)付近において紫外線を検出した回数(電圧ピーク付近における紫外線検出回数)を示す。ステップS55では、算出した特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPと所定のしきい値CPthとを比較する。特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPがしきい値CPthを超えた場合には(S55:YES)、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS56の絶縁異常処理に進む。特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPがしきい値CPth以下であれば(S55:NO)、絶縁異常個所が存在しないと判断して、ステップS57にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS51に戻る。
【0052】
図12は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)において、印加電圧ピーク付近における紫外線を検出した回数、すなわち特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPの度数分布の例を示す。この場合、待機時間T1を10秒、所定時間T5を10分とした。印加電圧ピーク付近における紫外線検出回数は、未放電時には4回以下に集中して分布し、放電時には5回以上にも分布する。従って、しきい値CPthを5回と設定することにより、放電の有無を判定できる。
【0053】
以上説明したように本実施形態では、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相を測定し、所定時間T6内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相(90度あるいは270度付近)の回数CPが所定のしきい値CPthを超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0054】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について図13ないし図16を参照しながら説明する。
図13は、本実施形態における絶縁異常の診断手順を示すフローチャートである。まず、ステップS61にて、信号処理回路5から紫外線検出回数データCiを取得し、ステップS62にて、取得した紫外線検出回数データCiを紫外線検出回数を保持する配列CNTに格納する。次に、ステップS63にて、紫外線検出時電圧位相データPiを取得し、ステップS64にて、取得した紫外線検出時電圧位相データPiを紫外線検出時電圧位相を保持する配列PHSに格納する。情報処理装置6は、所定時間T7が経過しない間は(ステップS65:NO)、ステップS72に移行して、待機時間T1が経過するまで待機し(S72:NO)、待機時間T1が経過すると(S72:YES)、ステップS61に戻る。
【0055】
上記したステップS65において、所定時間T7が経過すると(YES)、情報処理装置6は、ステップS66にて配列CNTの要素の和すなわち紫外線検出回数CSを算出する。ステップS67では、配列CNTから紫外線検出時間間隔を求め(図7参照)、その平均値IMを算出する。ステップS68では、配列PHSの中で要素が電圧ピーク付近であるものの個数、すなわち特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPをカウントして求める。ステップS69では、所定時間T7内の紫外線検出回数CSと所定時間T7内に測定された紫外線検出時間間隔の平均値IMと所定時間T7内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとからマハラノビスの距離MDを算出し、ステップS70に移行して、算出したマハラノビスの距離MDと所定のしきい値MDthとを比較する。マハラノビスの距離MDがしきい値MDthより小さければ(S70:YES)、絶縁異常個所が存在すると判断しステップS71の絶縁異常処理に進む。マハラノビスの距離MDがしきい値MDth以上である場合には(S70:NO)、絶縁異常個所が存在しないと判断して、ステップS72にて待機時間T1が経過するまで待機した後、ステップS61に戻る。
【0056】
ここで、マハラノビスの距離について説明する。予想や診断のためのパターン認識に用いる品質工学の手法の一つであるMT法(マハラノビス・タグチ法)において、多変量で記述されるある状態を基準にして、この基準データ群にどれだけ似ているかを、変量間の相関も考慮して表す尺度をマハラノビスの距離という。本実施形態では、放電が発生している状態において、所定時間T7内の紫外線検出回数CSと所定時間T7内に測定された紫外線検出時間間隔の平均値IMと所定時間T7内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとを算出し、これらを変量としたデータの集合を基準データ群とする。
【0057】
基準データ群を用いてマハラノビスの距離を算出する手順について説明する。
図14は、所定時間T7内に算出(測定)された紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとをそれぞれ変量1、変量2、変量3とした場合の基準データ群を示している。ここで、準備したn個の基準データについて、変量1〜3の平均m1〜m3と標準偏差σ1〜σ3を算出する。
【0058】
続いて、n個の基準データの各要素yi1、yi2、yi3(i=1、2、…、n)について、平均m1〜m3と標準偏差σ1〜σ3を用いて以下の(3)式により正規化する。図15は、正規化された各要素Yi1、Yi2、Yi3(i=1、2、…、n)による基準データ群を示している。
【数3】
【0059】
図15に示す正規化された変量から相関係数を算出し、式(4)に示す相関係数行列Rを作成する。
【数4】
【0060】
ここでは変量が3個であるので、相関係数行列Rは3×3の行列となる。式(5)は、相関係数行列Rの要素rpq(=rqp)を導出するための式である。
【0061】
続いて、式(6)に示す相関係数行列Rの逆行列R−1を算出する。
【数5】
【0062】
式(7)は、相関係数行列Rの行列式|R|を示している。マハラノビスの距離MDは、変量数(ここでは3)と、ある正規化した紫外線検出回数CS、紫外線検出時間間隔の平均値IMおよび特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPのデータと、逆行列R−1を用いて以下の(8)式のように算出される。
【数6】
【0063】
算出されたマハラノビスの距離MDが小さいほど、基準データ群に近いことを意味し、放電が発生していると判定できる。
【0064】
図16は、変圧器4に沿面放電が発生していない場合(未放電時)と沿面放電が発生している場合(放電時)における基準データ群(紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CP)からマハラノビスの距離MDを算出した例である。この場合、待機時間T1を10秒、所定時間T7を10分とした。放電時のマハラノビスの距離MDは0付近に集中し、未放電時のマハラノビスの距離MDは5以上に分布する。従って、この例ではしきい値MDthを5とすることにより、マハラノビスの距離が5よりも小さい場合に放電あり、5以上の場合は放電なしと判定することができる。
【0065】
以上説明したように本実施形態では、紫外線の検出回数と、紫外線を検出した時間間隔と、紫外線を検出した時点の変圧器4の印加電圧位相とを測定し、所定時間内の紫外線検出回数CSと、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔の平均値IMと、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPとを変量としてマハラノビスの距離MDを算出し、算出したマハラノビスの距離MDが所定のしきい値MDthよりも小さい場合に絶縁異常個所が存在すると判定するので、外乱光と同程度の強度である微弱な放電であっても確実に沿面放電発生の有無を検出して絶縁異常個所の有無を高い信頼性で判断することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、放電時の紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPを基準データとしたが、未放電時の紫外線検出回数CSと紫外線検出時間間隔の平均値IMと特定の紫外線検出時電圧位相の回数CPを基準データとしてもよい。この場合、算出されたマハラノビスの距離MDがしきい値MDth以上の場合に、放電が発生していると判定できる。
【0067】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張することができる。
待機時間T1ごとに取得する紫外線検出回数データCiや紫外線検出時電圧位相データPiをファイルに記憶(保管)しておき、測定時間終了後に、ファイルに記憶されたデータを用いて同様の絶縁異常診断を行うようにしてもよい。
【0068】
検出回数データ用メモリ7に累積検出回数データCsを記憶し、この累積検出回数データCsを用いて紫外線検出回数データCiを取得する構成としてもよい。
待機時間T1および所定時間T2〜T7は、適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の絶縁異常診断装置を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態の絶縁異常診断の制御内容を示すフローチャート
【図3】(a)は未放電時、(b)は放電時の累積検出回数の例を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図5】未放電時と放電時における10分間の紫外線検出回数の度数分布の例を示す図
【図6】本発明の第3の実施形態を示す図2相当図
【図7】配列INTの生成方法を説明するための図
【図8】未放電時と放電時における紫外線検出時間間隔の度数分布の例を示す図
【図9】本発明の第4の実施形態を示す図2相当図
【図10】(a)は未放電時、(b)は放電時の紫外線検出時電圧位相の度数分布の例を示す図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す図2相当図
【図12】未放電時と放電時において、印加電圧ピーク付近における紫外線を検出した回数の度数分布の例を示す図
【図13】本発明の第6の実施形態を示す図2相当図
【図14】正規化前の基準データ群を示す図
【図15】正規化後の基準データ群を示す図
【図16】未放電時と放電時における基準データ群から算出したマハラノビスの距離を示す図
【図17】従来技術の説明に用いるもので、(a)放電の発生時に接地線に流れる電流波形、(b)電気設備への印加交流電圧波形を示す図
【符号の説明】
【0070】
図面中、1は絶縁異常診断装置、2は紫外線センサ(紫外線検出手段)、3は信号処理装置(判断手段、測定手段、検出回数測定手段、時間間隔測定手段、電圧位相測定手段、マハラノビス距離算出手段)、4は変圧器(電気設備)、6は情報処理装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線の累積検出回数を測定し、所定時間内の累積検出回数の傾きが所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項2】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項3】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線を検出した時間間隔を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項4】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項5】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項6】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線の検出回数と、紫外線を検出した時間間隔と、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相とを測定し、
所定時間内の紫外線検出回数と、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔と、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数とを変量として算出したマハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより絶縁異常個所の有無を判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項7】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段により検出された紫外線の累積検出回数を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内の前記累積検出回数の傾きが所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項8】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段により所定時間内に検出された紫外線の検出回数を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により測定された前記所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項9】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時間間隔を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項10】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項11】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項12】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段による紫外線の検出回数を測定する検出回数測定手段と、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時間間隔を測定する時間間隔測定手段と、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定する電圧位相測定手段と、
前記検出回数測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出回数と、前記時間間隔測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔と、前記電圧位相測定手段により所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数とを変量としてマハラノビスの距離を算出するマハラノビス距離算出手段とを備え、
前記判断手段は、前記マハラノビス距離算出手段により算出されたマハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより絶縁異常個所の有無を判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項1】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線の累積検出回数を測定し、所定時間内の累積検出回数の傾きが所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項2】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項3】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線を検出した時間間隔を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項4】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項5】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定し、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項6】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する電気設備の絶縁異常診断方法であって、
紫外線の検出回数と、紫外線を検出した時間間隔と、紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相とを測定し、
所定時間内の紫外線検出回数と、所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔と、所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数とを変量として算出したマハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより絶縁異常個所の有無を判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断方法。
【請求項7】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段により検出された紫外線の累積検出回数を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内の前記累積検出回数の傾きが所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項8】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段により所定時間内に検出された紫外線の検出回数を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により測定された前記所定時間内の紫外線検出回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項9】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時間間隔を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔が特定の間隔範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項10】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出時電圧位相が特定の位相範囲に集中して分布する場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項11】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定する測定手段を備え、
前記判断手段は、前記測定手段により所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数が所定のしきい値を超えた場合に絶縁異常個所が存在すると判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【請求項12】
稼働中の電気設備の表面で発生する沿面放電に伴って放射される紫外線を検出する紫外線検出手段と、前記紫外線検出手段によって紫外線を検出することにより絶縁異常個所の有無を判断する判断手段とを備えた電気設備の絶縁異常診断装置であって、
前記紫外線検出手段による紫外線の検出回数を測定する検出回数測定手段と、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時間間隔を測定する時間間隔測定手段と、
前記紫外線検出手段が紫外線を検出した時点の電気設備の印加電圧位相を測定する電圧位相測定手段と、
前記検出回数測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出回数と、前記時間間隔測定手段により所定時間内に測定された紫外線検出時間間隔と、前記電圧位相測定手段により所定時間内に測定された特定の紫外線検出時電圧位相の回数とを変量としてマハラノビスの距離を算出するマハラノビス距離算出手段とを備え、
前記判断手段は、前記マハラノビス距離算出手段により算出されたマハラノビスの距離を所定のしきい値と比較することにより絶縁異常個所の有無を判断することを特徴とする電気設備の絶縁異常診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−232725(P2008−232725A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70618(P2007−70618)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【Fターム(参考)】
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