説明

電池パック

【課題】電池パックの安全性を向上する。
【解決手段】組電池14への充放電経路11にヒューズ24,25およびFET12,13が直列に介在され、通常の過充電、過電圧、過電流、過温度などは、先ず制御IC18によって異常判定が行われて、前記FET12,13をOFFすることで復帰可能に保護動作が行われ、その保護動作が失効したときに、二重保護IC23がFET27をONして発熱抵抗26に通電を行い、前記ヒューズ24,25を溶断することで前記復帰不能な保護動作を行うようにした電池パック1において、ヒューズ24,25と並列にダイオード51を放電時に順方向となるように設け、ヒューズ24,25が溶断しても負荷機器2での電力消費を可能にして、組電池14の蓄積電荷を放出させる。したがって、特に過充電に対する保護動作で使用不能となった場合に顕著に、安全性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの安全対策に関し、特に二次電池への充放電の経路に保護手段が直列に介在され、重度の異常が発生したときには前記保護手段を遮断することで復帰不能に保護動作が行われる電池パックに好適に実施されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような保護動作が行われる典型的な従来技術は、特許文献1や特許文献2で提案されている。その従来技術によれば、二次電池への充放電の経路に、PTC素子と温度ヒューズとが直列に介在され、短絡などによる温度上昇に対して、先ずPTC素子が電流を制限して復帰可能に保護動作を行い、それでも電流を制限しきれない場合は前記温度ヒューズが溶断して復帰不能に保護動作を行うようになっている。特許文献2では、前記温度ヒューズがPTC素子と並列に設けられた発熱抵抗によって溶断される。
【特許文献1】特開2003−51304号公報
【特許文献1】特開2003−7285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術では、二重の保護動作によって復帰不能となった後も、特に過充電の後には、二次電池に蓄積された電荷がそのまま放置されることになり、安全上好ましくない。
【0004】
本発明の目的は、安全性を向上することができる電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電池パックは、二次電池と、前記二次電池への充放電の経路を遮断することで、以降の使用が不能となる保護動作を実現する保護手段と、前記保護手段の保護動作に連動して、前記二次電池の電荷を放出させる放電手段とを含むことを特徴とする。
【0006】
上記の構成によれば、二次電池への充放電の経路に直列にヒューズなどの保護手段が介在されており、過充電などの異常に対して、安全のために該保護手段を遮断することで、以降の使用が不能となる復帰不能な保護動作を実行する電池パックにおいて、放電手段を設け、前記保護手段が動作する(される)と、それに連動して、前記放電手段が二次電池の電荷を放出させる。前記ヒューズなどの保護手段は、過温度などで自律的に遮断するものであってもよく、或いは、異常の検出手段に、その検出結果によって制御手段が発熱抵抗を加熱するなどして、他の手段によって遮断されるものであってもよい。
【0007】
したがって、特に二次電池に満充電近い電荷が蓄積されている過充電に対する保護動作で使用不能となった場合に顕著に、安全性を向上することができる。
【0008】
また、本発明の電池パックは、前記二次電池への充放電の経路に直列に介在され、充放電を制御する制御素子と、前記二次電池の端子電圧、充放電電流および温度の内、少なくとも1つを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果を予め定める第1の閾値と比較し、異常と判定されると前記制御素子を遮断することで復帰可能に保護動作を行う第1の制御手段と、前記検出手段の検出結果を前記第1の閾値より高い予め定める第2の閾値と比較し、異常と判定されると前記保護手段を遮断することで前記以降の使用が不能となる保護動作を行う第2の制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、通常の過充電、過電圧、過電流、過温度などは、先ず第1の制御手段によって異常判定が行われて、充放電を制御する制御素子が遮断されることで復帰可能に保護動作が行われ、その保護動作が失効したときに、第2の制御手段がより大きな閾値で異常判定を行い、前記保護手段を遮断することで前記復帰不能な保護動作が行われる。
【0010】
したがって、前記の安全性を確保しつつも、二重の保護動作によって、いきなり使用不能にはならないので、利便性を向上することができる。
【0011】
さらにまた、本発明の電池パックでは、前記保護手段は、前記二次電池への充放電の経路に介在されるヒューズであり、前記放電手段は、前記ヒューズと並列に接続され、放電時に順方向バイアスとなるダイオードであることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、前記の保護動作によってヒューズが溶断する(される)と、そのヒューズと並列に設けられているダイオードによって、充電はできないものの、放電は可能である。
【0013】
したがって、負荷機器での電力消費による二次電池の電荷の放出が可能になる。
【0014】
また、本発明の電池パックでは、前記保護手段は、前記ヒューズに、前記ヒューズを溶断することができる発熱抵抗と、前記二次電池の端子間に前記発熱抵抗と直列に接続されるスイッチとをさらに備え、前記第2の制御手段は、異常と判定すると、前記スイッチを導通するとともに、負荷機器へ所定の電力消費を要求することを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、前記のように負荷機器での電力消費による二次電池の電荷の放出を行うにあたって、異常を検出して保護動作を行う第2の制御手段が、ヒューズを溶断する保護動作とともに、通信によって負荷機器へ、該電池パックが過熱しない程度で、所定の期間に前記二次電池の蓄積電荷を放出できる適度な電力消費を要求する。
【0016】
したがって、適切な状態を維持しながら、前記のような負荷機器での電力消費による二次電池の電荷の放出が可能になる。
【0017】
さらにまた、本発明の電池パックでは、前記保護手段は、前記二次電池への充放電の経路に介在されるヒューズと、前記ヒューズを溶断することができる発熱抵抗と、前記二次電池の端子間に前記発熱抵抗と直列に接続され、異常と判定されると前記第2の制御手段によって導通されるスイッチとを備えて構成され、前記放電手段は、前記二次電池の端子間に前記スイッチと直列に接続され、微弱な短絡電流を通過させる短絡抵抗であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、検出手段の検出結果から、異常と判定すると、第2の制御手段がスイッチを導通して発熱抵抗に通電を行い、これによってヒューズが溶断するとともに、前記スイッチと直列に設けられている短絡抵抗によって、二次電池の端子間は緩やかに(ソフト)短絡され、過熱しない程度の微弱な短絡電流が流れる。
【0019】
したがって、短絡抵抗での電力消費による二次電池の電荷の放出が可能になる。
【0020】
また、本発明の電池パックは、前記ヒューズと、発熱抵抗と、短絡抵抗とが、一体にパッケージされていることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、ヒューズと発熱抵抗との構造(位置関係や接触状態等、ヒューズが溶断するのに要する発熱抵抗の発熱量)を一定にして、安定した動作を実現するとともに、短絡抵抗を含めて、端子の共用化で外部へ露出するのは3端子となり、電池パックの組立てを簡略化することができる。
【0022】
さらにまた、本発明の電池パックでは、前記放電手段は前記第2の制御手段に接続される負荷抵抗から成り、前記第2の制御手段から前記保護手段への制御出力を、前記負荷抵抗にも与えることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、第2の制御手段に関連して、前記保護手段への制御出力が共通に与えられる負荷抵抗を設けて前記放電手段とし、第2の制御手段で異常が判定され、前記の二重保護動作が行われると、その負荷抵抗へも通電されるので、その電力消費で二次電池の蓄積電荷の放電を行わせる。
【0024】
したがって、前記の二次電池の蓄積電荷の放電を行うことができる。
【0025】
また、本発明の電池パックでは、前記放電手段は前記第1の制御手段から成り、前記第2の制御手段は、前記保護手段を遮断するとともに、第1の制御手段を動作させ続けることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、第1の制御手段は、前記の復帰可能な保護動作を行うと、異常状態が解消するまで、或る程度の動作を休止しているのに対して、第2の制御手段で異常が判定されると、前記の二重保護動作を行うとともに、第1の制御手段を動作させ続けることで、その電力消費で二次電池の蓄積電荷の放電を行わせる。
【0027】
したがって、特別な放電手段を別途設けることなく、僅かずつ電力を消費させ、二次電池の蓄積電荷の放電を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電池パックは、以上のように、二次電池への充放電の経路に直列にヒューズなどの保護手段が介在されており、過充電などの異常に対して、安全のために該保護手段を遮断することで、以降の使用が不能となる復帰不能な保護動作を実行する電池パックにおいて、放電手段を設け、前記保護手段が動作する(される)と、それに連動して、前記放電手段が二次電池の電荷を放出させる。
【0029】
それゆえ、特に二次電池に満充電近い電荷が蓄積されている過充電に対する保護動作で使用不能となった場合に顕著に、安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の第1の形態に係る電子機器システムの電気的構成を示すブロック図である。この電子機器システムは、電池パック1を内蔵する負荷機器2に、前記負荷機器2に給電を行うとともに、電池パック1を充電する充電器3を備えて構成される。電池パック1は、負荷機器2とは別体で設けられていてもよい。電池パック1、負荷機器2および充電器3は、給電を行う直流ハイ側の端子T11,T21,T31と、通信信号の端子T12,T22,T32と、給電および通信信号のためのGND端子T13,T23,T33とによって相互に接続される。
【0031】
前記電池パック1内で、前記の端子T11から延びる直流ハイ側の電源ラインである充放電経路11には、ヒューズ24,25が介在されるとともに、過充電保護用と過放電保護用とで相互に導電形式が異なるFET12,13が介在されており、その充放電経路11が組電池14のハイ側端子に接続される。前記組電池14のロー側端子は、直流ロー側の電源ラインである充放電経路15を介して前記GND端子T13に接続され、この充放電経路15には、充電電流および放電電流を電圧値に変換する電流検出抵抗16が介在されている。
【0032】
前記組電池14は、1または複数の二次電池のセルが適宜直並列に接続されて成る。前記組電池14の温度は温度センサ17によって検出され、第1の制御手段である制御IC18内のアナログ/デジタル変換器19に入力される。
【0033】
また、前記各セルの端子電圧は、後述するようにして、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)29によって選択的に取出され、前記制御IC18内のアナログ/デジタル変換器19に入力される。そのセルの選択は、前記制御IC18内の制御部21が、通信部20を介して行う。さらにまた、前記電流検出抵抗16によって検出された電流値も、前記ASIC29によって取出され、前記制御IC18内のアナログ/デジタル変換器19に入力される。
【0034】
前記制御部21は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路などを備えて成り、前記アナログ/デジタル変換器19を介する各入力値に応答して、充電器3に対して、出力を要求する充電電流の電圧値および電流値を演算し、通信部22から端子T12,T32;T13,T33を介して充電器3へ送信する。また、前記制御部21は、前記アナログ/デジタル変換器19を介する各入力値から、組電池14の残量を演算し、端子T12,T22;T13,T23を介して負荷機器2へ送信する。さらにまた、前記制御部21は、前記アナログ/デジタル変換器19を介する各入力値から、端子T11,T13間の短絡や充電器3からの異常電流などの電池パック1の外部における異常が検出されると、また前記温度センサ17によって組電池14の異常な温度上昇が検出されると、前記FET12,13を遮断するなどの保護動作を行う。
【0035】
一方、前記組電池14の各セルの端子電圧はまた、第2の制御手段である二重保護IC23に取込まれ、検出結果が、前記制御部21における異常判定の閾値以上に設定されるこの二重保護IC23での閾値以上となると、FET27をONする。前記FET27は、充放電経路11に直列に介在された前記ヒューズ24,25に関して設けられており、前記ヒューズ24,25の接続点は、発熱抵抗26およびこのFET27を介して接地されている。したがって、前記二重保護IC23がFET27をONすることで、発熱抵抗26が発生した熱で前記ヒューズ24,25が溶断する。これによって、前記制御IC18の異常などで過充電などに対応できない深刻な異常時には、前記ヒューズ24,25が溶断されることで、二重の保護動作が実現されるようになっている。
【0036】
たとえば、前記制御部21が目標とする充電終了電圧は、セル当り4.2Vであり、FET12,13をOFFする通常の充放電時における過電圧の閾値電圧は、セル当り4.3Vであり、二重保護IC23がヒューズ24,25を溶断する閾値電圧は、たとえばセル当り4.4Vである。したがって、通常使用時の過充電程度では復旧可能であり、異常時の過電圧では、電池パック1は再使用不能となって安全性の向上が図られるようになっている。こうして、二重の保護動作によって、いきなり使用不能にはならないようにして、安全性を確保しつつも、利便性を向上することができるようになっている。
【0037】
一方、充電器3では、前記の要求を制御IC30の通信部32で受信し、充電制御部31が充電電流供給回路33を制御して、前記の電圧値および電流値で、充電電流を供給させる。充電電流供給回路33は、AC−DCコンバータやDC−DCコンバータなどから成り、入力電圧を、前記充電制御部31で指示された電圧値および電流値に変換して、端子T31,T11;T33,T13を介して、充放電経路11,15へ供給する。負荷機器2では、制御IC35の制御部36が負荷回路37を制御するとともに、前記残量などを通信部38で受信し、動作可能時間の演算などを適宜行っている。
【0038】
図2は、前記電池パック1内の構成をさらに詳しく説明するブロック図である。この図2の例では、前記組電池14は、4つのセルE1〜E4から構成されており、前記端子T11からハイ側の充放電経路11には端子T4が接続され、前記端子T13からロー側の充放電経路15にはGND端子T0が接続される。前記端子T0−T4間には、前記4つのセルE1〜E4が直列に接続されており、各セルE1〜E4は相互に並列に接続される複数のセルから構成されていてもよい。そして、各セルE1〜E4の接続点が、中間タップとなる端子T1〜T3に接続されている。
【0039】
一方、各端子T0〜T4には、図3で示すように接続ラインL0〜L4が接続されており、前記ASIC29と二重保護IC23とにおいては、前記GND端子T0を除き、端子T1〜T4における電圧Vin1〜Vin4が、互いの電圧検出に影響を与えないように、入力抵抗R11〜R14と入力抵抗R21〜R24とをそれぞれ介して、端子T30〜T34;T40〜T44から取込まれる。そして、各端子T30〜T34;T40〜T44間には、必要に応じて、ノイズ除去用のコンデンサC11〜C14;C21〜C24が設けられることもある。これらのコンデンサC11〜C14;C21〜C24は、各端子T30〜T34;T40〜T44間ではなく、各端子T31〜T34;T41〜T44とGNDとの間に設けられてもよい。
【0040】
前記温度センサ17は、サーミスタなどから成り、一端が予め定める電圧V0でバイアスされ、他端が制御IC18によってON/OFF駆動されるスイッチ28から前記電流検出抵抗16を介して前記ロー側の充放電経路15に接続され、そのスイッチ28との接続点の電圧が、前記制御IC18のアナログ/デジタル変換器19に取込まれる。
【0041】
図3は、前記ASIC29の一構成例を示すブロック図である。前記各端子T30〜T34は、入力切換え部41を介して、電圧測定を行うための前記制御IC18のアナログ/デジタル変換器19に選択的に接続される。前記入力切換え部41は、スイッチS0L;S1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S4H;STL,STHを備えて構成される。
【0042】
前記スイッチS0L;S1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S4Hは、一端側が前記各端子T30〜T34に接続され、他端側が前記アナログ/デジタル変換器19のハイ側入力端19Hまたはロー側入力端19Lに接続される。前記スイッチSTL,STHは、一端側が前記電流検出抵抗16の各端子に接続され、他端側が前記アナログ/デジタル変換器19のハイ側入力端19Hとロー側入力端19Lとにそれぞれ接続される。前記スイッチS0L;S1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S4H;STL,STHは、セル選択部42によって選択的にON/OFF駆動される。
【0043】
したがって、たとえばスイッチSTL,STHをONし、スイッチS0L;S1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S4HをOFFすることで、アナログ/デジタル変換器19は、電流検出抵抗16の端子間電圧、したがって各セルE1〜E4の充放電の電流を検出することができる。また、たとえばスイッチS0L,S4HをONし、スイッチS1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S5L,S5HをOFFすることで、アナログ/デジタル変換器19は、組電池14の全体に掛かる充電または放電電圧を検出することができる。
【0044】
前記スイッチS0L;S1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S4H;STL,STHの切換え信号は、制御IC18側の制御部21内の切換え制御部211によって発生され、前記通信部20からASIC29側の通信部43を介して、前記セル選択部42に与えられる。そして、アナログ/デジタル変換器19で得られた検出結果から、前記制御部21内の充放電制御部210は前記のように充電器3へ充電電圧および電流の要求を行い、また組電池14の残量演算を行い、異常検出部212は異常を検出し、保護動作を行う。
【0045】
前記二重保護IC23は、各入力端子T40〜T44間の電圧Vin1〜Vin4を、それぞれ比較器A1〜A4において基準電圧源B1〜B4からの基準電圧Vref21〜Vref24と比較し、予め定める過充電の閾値電圧、たとえば前記4.4V以上となると、ハイレベルを出力して前記FET27をONする。これに対して、前記制御IC18の異常検出部212における過充電判定の閾値電圧Vref11〜Vref14は、たとえば前記4.3Vである。
【0046】
上述のように構成される電子機器システムにおいて、注目すべきは、本実施の形態では、電池パック1において、前記二重保護IC23が以降の使用が不能となる復帰不能な保護動作を実行すると、それに連動して、前記組電池14の電荷を放出させるダイオード51が設けられていることである。放電手段である前記ダイオード51は、前記ハイ側の放電経路11において、保護手段である前記ヒューズ24,25と並列に接続され、かつ放電時に順方向バイアスとなるように設けられている。したがって、前記二重保護IC23が前記FET27をONし、発熱抵抗26を発熱させて前記ヒューズ24,25を溶断すると、充電はできないものの、放電は可能であり、負荷機器2での電力消費による組電池14の電荷の放出が可能になる。
【0047】
このように構成することで、特に組電池14に満充電近い電荷が蓄積されている過充電に対する保護動作で使用不能となった場合に顕著に、安全性を向上することができる。好ましくは、図1において破線で示すように、前記二重保護IC23による保護動作を制御部21内の充放電制御部210に入力し、二重保護動作が行われたときに該充放電制御部210が、通信部22,38を介して、負荷機器2の制御部36に所定の電力消費を要求する信号を出力するように構成される。これによって、電池パック1が過熱しない程度で(ダイオード51の発熱を抑えつつ)、所定の期間に前記組電池14の蓄積電荷を放出できる適度な電力が負荷回路37で消費される。こうして、適切な状態を維持しながら、負荷機器2での電力消費による組電池14の電荷の放出が可能になる。
【0048】
なお、前記ヒューズ24,25は、二重保護IC23の制御によって溶断されるのではなく、自身の有する抵抗成分に過大な電流が流れることによる発熱によって、自発的に溶断するような構成であってもよく、しかしながら二重保護IC23の制御によることで、溶断する電圧の精度を高めることができる。前記二重保護IC23も、前記制御IC18のように、電圧Vin1〜Vin4をアナログ/デジタル変換した後に、デジタル値で過充電判定を行うようにしてもよい。また、前記ダイオード51に代えて、前記二重保護IC23によって、前記FET27と共にONされるFETなどの制御端子を有するスイッチ素子が用いられてもよい。
【0049】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の第2の形態に係る電子機器システムの電気的構成を示すブロック図である。この電子機器システムは、前述の図1〜図3で示す電子機器システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、電池パック1aにおいて、前記放電手段として、前記FET27と直列に接続される短絡抵抗52が用いられることである。短絡抵抗52は、該電池パック1aが過熱しない程度の微弱な短絡電流を通過させることができる抵抗値に制御設定されている。
【0050】
このように構成することで、前記二重保護IC23がFET27をONして保護動作を行うと、抵抗値の関係から、先ず発熱抵抗26に所定の電流が流れてヒューズ24,25が溶断し、それによって前記短絡抵抗52に電流が流れるようになり、組電池14の端子間T0−T4間は緩やかに(ソフト)短絡され、過熱しない程度の微弱な短絡電流が流れる。このように構成してもまた、組電池14の電荷の放出が可能になる。
【0051】
また注目すべきは、本実施の形態では、前記ヒューズ24,25と、発熱抵抗26と、短絡抵抗52とが、ヒューズモジュール53として一体にパッケージされていることである。したがって、ヒューズ24,25と発熱抵抗26との構造、すなわち位置関係や接触状態等、ヒューズ24,25が溶断するのに要する発熱抵抗26の発熱量を一定にして、安定した動作を実現することができるとともに、短絡抵抗52を含めて、端子の共用化で外部へ露出するのは3端子となり、電池パック1aの組立てを簡略化することができる。
【0052】
[実施の形態3]
図5は、本発明の実施の第3の形態に係る電池パック1bの電気的構成を示すブロック図である。この電池パック1bは、前述の電池パック1,1aに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。また、負荷機器2および充電器3は、前述の図1や図4と同様に構成され、図示を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、前記放電手段としての負荷抵抗54が、二重保護IC23b内に設けられることである。具体的には、前記比較器A1〜A4の出力端とGNDの入力端子T40との間に前記負荷抵抗54が設けられ、前記比較器A1〜A4の少なくとも1つで過充電と判定されると、該比較器A1〜A4はハイレベルを出力して前記FET27をONするとともに、前記負荷抵抗54に通電を行うことになる。このように構成してもまた、組電池14の電荷の放出が可能になる。
【0053】
[実施の形態4]
図6は、本発明の実施の第4の形態に係る電子機器システムの電気的構成を示すブロック図である。この電子機器システムは、前述の図1〜図3で示す電子機器システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、二重保護IC23からFET27への出力が制御IC18cの制御部21cにも入力されており、通常、制御IC18cは、FET12,13をOFFする前記の復帰可能な保護動作を行うと、異常状態が解消するまで、或る程度の動作を休止しているのに対して、二重保護IC23がFET27をONする二重保護動作を行うと、制御部21cの前記充放電制御部210が、残量演算を繰返し行ったり、アナログ/デジタル変換器19を高速で動作させるなどして、組電池14の電力を消費させることである。このように構成してもまた、組電池14の電荷の放出が可能になる。
【0054】
ここで、特許第3685723号公報には、温度ヒューズおよび放電回路が電池の外部に設けられ、放電回路をマニュアルの遠隔操作によって動作させた後に温度ヒューズを交換することで、充放電経路のリセット時間を短縮できることが記載されている。しかしながら、この先行技術は汎用性のない業務用の大型電池に関するもので、本発明のように汎用性の電池パック1,1a,1b,1cの場合、着脱を可能にしたり、使用される機器2と一体化させたりする必要があり、外部に前記温度ヒューズおよび放電回路を設けることはできず、しかも温度ヒューズを溶断して使用不能にした場合、それに連動して自動的に放電させる必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、過充電などの異常に対して、二重保護ICによって、以降の使用が不能となる復帰不能な保護動作が実行される電池パックにおいて、その保護動作が行われると、それに連動して二次電池の蓄積電荷を自動的に放電させ、安全性を向上できるので、二次電池の電池パックに実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る電子機器システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】電池パック内の構成をさらに詳しく説明するブロック図である。
【図3】セル電圧検出を行うASICの一構成例および制御ICにおいてそれに係わる部分の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の第2の形態に係る電子機器システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の第3の形態に係る電池パックの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の第4の形態に係る電子機器システムの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1a,1b,1c 電池パック
2 負荷機器
3 充電器
11,15 充電放経路
12,13,27 FET
14 組電池
16 電流検出抵抗
17 温度センサ
18,18c,30,35 制御IC
19 アナログ/デジタル変換器
20,22,32,38,43 通信部
21,21c 制御部
210 充放電制御部
211 切換え制御部
212 異常検出部
23,23b 二重保護IC
24,25 ヒューズ
26 発熱抵抗
27 スイッチ
29 ASIC
31 充電制御部
33 充電電流供給回路
41 入力切換え部
42 セル選択部
51 ダイオード
52 短絡抵抗
53 ヒューズモジュール
54 負荷抵抗
C11〜C14;C21〜C24 入力容量
E1〜E4 セル
L0〜L4 接続ライン
R11〜R14;R21〜R24 入力抵抗
S0L;S1L,S1H;S2L,S2H;S3L,S3H;S4H スイッチ
STL,STH スイッチ
T0〜T4 端子
T11,T21,T31;T12,T22,T32;T13,T23,T33 端子
T30〜T34;T40〜T44 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池への充放電の経路を遮断することで、以降の使用が不能となる保護動作を実現する保護手段と、
前記保護手段の保護動作に連動して、前記二次電池の電荷を放出させる放電手段とを含むことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記二次電池への充放電の経路に直列に介在され、充放電を制御する制御素子と、
前記二次電池の端子電圧、充放電電流および温度の内、少なくとも1つを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果を予め定める第1の閾値と比較し、異常と判定されると前記制御素子を遮断することで復帰可能に保護動作を行う第1の制御手段と、
前記検出手段の検出結果を前記第1の閾値より高い予め定める第2の閾値と比較し、異常と判定されると前記保護手段を遮断することで前記以降の使用が不能となる保護動作を行う第2の制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記保護手段は、前記二次電池への充放電の経路に介在されるヒューズであり、
前記放電手段は、前記ヒューズと並列に接続され、放電時に順方向バイアスとなるダイオードであることを特徴とする請求項2記載の電池パック。
【請求項4】
前記保護手段は、前記ヒューズに、
前記ヒューズを溶断することができる発熱抵抗と、
前記二次電池の端子間に前記発熱抵抗と直列に接続されるスイッチとをさらに備え、
前記第2の制御手段は、異常と判定すると、前記スイッチを導通するとともに、負荷機器へ所定の電力消費を要求することを特徴とする請求項3記載の電池パック。
【請求項5】
前記保護手段は、
前記二次電池への充放電の経路に介在されるヒューズと、
前記ヒューズを溶断することができる発熱抵抗と、
前記二次電池の端子間に前記発熱抵抗と直列に接続され、異常と判定されると前記第2の制御手段によって導通されるスイッチとを備えて構成され、
前記放電手段は、前記二次電池の端子間に前記スイッチと直列に接続され、微弱な短絡電流を通過させる短絡抵抗であることを特徴とする請求項2記載の電池パック。
【請求項6】
前記ヒューズと、発熱抵抗と、短絡抵抗とが、一体にパッケージされていることを特徴とする請求項5記載の電池パック。
【請求項7】
前記放電手段は前記第2の制御手段に接続される負荷抵抗から成り、
前記第2の制御手段から前記保護手段への制御出力を、前記負荷抵抗にも与えることを特徴とする請求項2記載の電池パック。
【請求項8】
前記放電手段は前記第1の制御手段から成り、
前記第2の制御手段は、前記保護手段を遮断するとともに、第1の制御手段を動作させ続けることを特徴とする請求項2記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−245400(P2008−245400A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81126(P2007−81126)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】