説明

電池ユニット

【課題】電池の寸法等がばらついたとしても、電池の同一面に設けられた電極端子および安全弁を、電極端子形成面に直交する方向における所定位置に配設することが可能な電池ユニットを提供すること。
【解決手段】保持シート80が単電池14を反電極端子形成面側から電極端子形成面側に向かって付勢する付勢力が、パッキン31が単電池14を電極端子形成面側から反電極端子形成面側に向かって付勢する付勢力よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装ケースの同一端面に電極端子と安全弁とを有する電池を備える電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記特許文献1に開示された電池ユニットであるバッテリパックがある。このバッテリパックでは、筐体の底面と複数のバッテリの反電極側の端部との間にゴム製の絶縁性シートを介装している。各バッテリの電極側の端部には一対の電極だけが突出するようにゴム製のキャップが装着され、キャップを抑え板で押さえ込んで、バッテリが筐体内に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−49808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のバッテリパックでは、それぞれのバッテリが反電極側の絶縁性シートと電極側のキャップとを介して筐体に対して位置決めされている。そのため、バッテリの寸法ばらつき、絶縁性シートおよびキャップの寸法ばらつき等により、電極の突出方向(電極形成面に直交する方向)における電極位置がばらつき易いという問題がある。電極の位置がばらつくと、電極へのバスバー等の接続部に過剰な応力が加わるという不具合を発生する場合がある。
【0005】
また、上記特許文献1のバッテリパックでは開示されていないが、バッテリの電極形成面に異常時ガス排出用の安全弁が設けられている場合には、バッテリの寸法ばらつき、絶縁性シートおよびキャップの寸法ばらつき等により、安全弁の位置もばらつき易いという問題がある。安全弁の位置がばらつくと、排気系統を構成する部品との間のシールが難しく、安全弁開弁時にガスや電解液等が排気系統から漏れるという不具合を発生する場合がある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、電池の寸法等がばらついたとしても、電池の同一面に設けられた電極端子および安全弁を、電極端子形成面に直交する方向における所定位置に配設することが可能な電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
外装ケースの一端面に設けられた正極端子(10b〜14b)および負極端子(10a〜14a)からなる電極端子を有する電池(10〜14)と、
電極端子が形成された外装ケースの一端面に設けられ、電池内部の圧力が異常な圧力になるときに破断して開弁するする安全弁(10c〜14c)と、
外装ケースの一端面のうち電極端子および安全弁の配設位置を除く端面が当接する電池位置決め用の基準壁部(8d)を有し、内部に電池を収容するケース体(7、8)と、
安全弁に対応した流体導入口(61a)と、流体導入口を挟んで安全弁に対向する内壁面とを有し、流体導入口を介して内部の流体通路に安全弁が露出するように設けられるダクト部(6)と、
外装ケースの他端面とケース体との間に設けられ、電池を他端面側から一端面側に向かって付勢する弾性部材(80)と、
弾性体からなり、安全弁および流体導入口を取り囲むように設けられ、外装ケースの一端面とダクト部との間で圧縮されて、外装ケースとダクト部との間を気密シールするシール部材(30、31)と、を備え、
弾性部材が電池を他端面側から一端面側に向かって付勢する付勢力が、シール部材が電池を一端面側から他端面側に向かって付勢する付勢力よりも大きいことを特徴としている。
【0008】
これによると、弾性部材が電池を他端面側から一端面側に向かって付勢する付勢力が、シール部材が電池を一端面側から他端面側に向かって付勢する付勢力よりも大きい。そのため、電池の外装ケースの一端面のうち電極端子および安全弁の配設位置を除く端面は、ケース体の電池位置決め用の基準壁部に確実に当接する。したがって、電池の寸法等がばらついたとしても、電池の同一面に設けられた電極端子および安全弁を、電極端子形成面に直交する方向にける所定位置に配設することが可能である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、電池が複数並設され、ダクト部には複数の電池の安全弁に対応して複数の流体導入口が形成されており、並設された複数の電池の電極端子間を接続するバスバー(21〜24)を備えることを特徴としている。
【0010】
これによると、複数の電池を組み合わせた組電池を備える電池ユニットにおいて、複数の電池の電極端子および安全弁を、電極端子形成面に直交する方向にける所定位置にそれぞれ配設することが可能である。したがって、電極端子へのバスバーの接続部に過剰な応力が加わることを抑制できるとともに、複数の電池とダクト部との間をシール部材で確実にシールすることができる。
【0011】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における組電池および制御基板の概略構成を示す正面図である。
【図2】第1の実施形態の電池ユニットである電池パックの主要部を構成する組電池、制御基板および排煙用ダクトの概略構成を示す正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】第1の実施形態の組電池および排煙用ダクトの配置を説明するための斜視図である。
【図5】第1の実施形態の組電池および排煙用ダクトの配置を説明するための平面図である。
【図6】第1の実施形態の組電池および排煙用ダクトの構成を説明するための分解斜視図である。
【図7】第1の実施形態の組電池の構成を説明するための分解斜視図である。
【図8】第1の実施形態の組電池、制御基板および排煙用ダクトを備える電池パックについてカバーを外した状態の平面図である。
【図9】第1の実施形態のカバーを装着した電池パックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における組電池および制御基板の概略構成を示す正面図であり、図2は、電池ユニットである電池パックの主要部を構成する組電池、制御基板および排煙用ダクトの概略構成を示す正面図である。また、図3は、図2のIII−III線断面図である。また、図4は、組電池および排煙用ダクトの配置を説明するための斜視図であり、図5は、組電池および排煙用ダクトの配置を説明するための平面図である。
【0015】
また、図6は、組電池および排煙用ダクトの構成を説明するための分解斜視図であり、図7は、組電池の構成を説明するための分解斜視図である。また、図8は、組電池、制御基板および排煙用ダクトを備える電池パックについてカバーを外した状態の平面図であり、図9は、カバーを装着した電池パックの斜視図である。
【0016】
図9に示す電池パックは、例えばイグニッションスイッチがオン状態であっても車両が走行状態から停止した際にはエンジンを停止するアイドルストップ機能を備えるアイドルストップ車両に搭載される。電池パック内の組電池は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池をバスバー等で複数個直列接続して構成され、鉛蓄電池の補助電池として使用されるものである。電池パックは、例えば車室内の前席シート下等に配設される。
【0017】
電池パックは、例えば内燃機関と電池に充電された電力によって駆動されるモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車、モータを走行駆動源とする電気自動車等に用いるものであってよい。電池パックの組電池を構成する二次電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン電池、有機ラジカル電池であり、ケース内に収納された状態で自動車の座席下、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の空間などに配置することができる。
【0018】
本実施形態の組電池1を構成する複数個の単電池は、例えばアルミ缶等の外殻を構成する外装ケースを有し、直方体状の外装ケースの一端面から突出する正極端子及び負極端子からなる電極端子をそれぞれ有する。組電池1は、当該複数個の単電池を直列に結線するように電極端子間を接続する複数個のバスバーを備える。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、組電池1は、一例として5個の単電池10、11、12、13、14で構成されている。
【0020】
5個の単電池10〜14のそれぞれは、電池ケース7内の所定の位置に収納されることで、一体となって組電池1を構成している。組電池1を構成する5個の単電池10〜14は、直方体状の外装ケースの厚み方向Xに単電池を積層してなる第1の積層電池群2と第2の積層電池群3を複数形成する。第1の積層電池群2は、単電池10、単電池13及び単電池14を所定の間隔を設けて厚み方向Xに積層して構成されている。第2の積層電池群3は、単電池11及び単電池12を所定の間隔を設けて厚み方向Xに積層して構成されている。
【0021】
単電池10の負極端子10aは、バスバー20に通電接続されており、さらにバスバー20が螺子止め等で車両側に接続されることにより、車両のグランドに接続される。バスバー20の端部は、第1の積層電池群2下部から側方に延びており、すなわち、組電池1Cの下部側面から横方向に延びる形状である。単電池10の正極端子10bは、バスバー21によって単電池11の負極端子11aに接続されている。単電池11の正極端子11bは、バスバー22によって単電池12の負極端子12aに接続されている。単電池12の正極端子12bは、バスバー23によって単電池13の負極端子13aに接続されている。
【0022】
単電池13の正極端子13bは、バスバー24によって単電池14の負極端子14aに接続されている。単電池14の正極端子14bは、バスバー25に通電接続されており、さらにバスバー25が螺子止め、はんだ付け等でパワー基板50に接続されることにより、パワー基板50に電気的に接続される。これにより、組電池1のすべての単電池10〜14は、図1の破線で示したとおり、正面視で電流が蛇行状に流れるように各バスバーを介して電気的に直列接続される。このようにバスバー20〜25は、隣接する電池端子間を、斜め方向に接続する構成ではなく、上下方向及び左右方向にのみ接続する構成となっている。
【0023】
各単電池における外装ケースには、安全弁が設けられている。各安全弁は、正極端子と負極端子の間に位置し、単電池の内部圧力が異常な圧力になるときに破断し開弁するように設定されている。各単電池において、電極端子および安全弁は外装ケースの同一面に設けられている。電極端子および安全弁が設けられた外装ケースの端面(電極端子形成面)が、本実施形態における外装ケースの一端面に相当する。また、電極端子および安全弁が設けられた外装ケースの端面とは反対側の端面(反電極端子形成面)が、本実施形態における外装ケースの他端面に相当する。
【0024】
安全弁は、例えば、単電池の外装ケースの端面に開口した孔に薄い金属膜を貼り付けて塞いで構成されている。この場合には、単電池の内部圧力が異常な圧力になったときに、当該金属膜が破断して外装ケースの孔が開放されて、単電池の内部のガス等が外装ケース外部に放出されることにより、セル内圧が低下し、単電池自身の破裂を防止することができる。図1に示すように、正面視で、安全弁10c、安全弁13c及び安全弁14cが厚み方向Xに並ぶように配置され、安全弁11c及び安全弁12cが厚み方向Xに並ぶように配置されている。
【0025】
図6及び図7に示すように、絶縁カバー8は、バスバー20〜25と単電池10〜14の外装ケースとを絶縁し、少なくとも安全弁10c〜14c及び電極端子を除く外装ケースの端面部分を覆うように設けられている。すなわち、絶縁カバー8には、外装ケースの端面を覆うように絶縁カバー8を装着したときに、各安全弁の対応する位置に安全弁よりも大きい開口部が形成されるとともに、各電極端子の対応する位置に電極端子よりも大きい開口部が形成されている。したがって、各安全弁及び各電極端子は、電池ケース7に収容されて一体となる組電池1に絶縁カバー8を装着した状態では、各開口部の内側にあって、絶縁カバー8に覆われることなく露出することになる。
【0026】
さらに、絶縁カバー8は、各バスバーを位置決めするための凹部を、組電池1が必要とするバスバーの個数分備えている。各バスバーには、単電池の電極端子を挿通する開口部が形成されている。絶縁カバー8の各凹部に対応する各バスバーを嵌めこむと、接続対象の電極端子が各バスバーの開口部に嵌まり、各単電池とバスバーとの位置関係が適正に決まることになる。絶縁カバー8の各凹部に所定の各バスバーを嵌めこむ位置決め工程により、各バスバー20の位置が規制されるので、バスバーと接続対象の電極端子との溶接や接着等の接合工程を迅速、かつ正確に行うことに貢献し、またバスバーが接触すべきでない部品に触れることを妨げて短絡等の不適切な接続や部品の損傷等を未然に防止することができる。
【0027】
本実施形態では、電池ケース7および絶縁カバー8からなる構成が、内部に電池である単電池10〜14を収容するケース体に相当する。図3および図7に示すように、各単電池10〜14のそれぞれの反電極端子形成面と電池ケース7との間には、弾性部材である保持シート80が圧縮されて介装されている。保持シート80は、例えば比較的耐熱性に優れたゴム材からなる平板状部材である。
【0028】
接続対象である複数個の電極端子を複数個のバスバーによって接続する工程を実施する場合には、まず、各単電池の反電極端子形成面と電池ケース7との間に保持シート80を介設しつつ、各単電池を電池ケース7の所定の位置に設置して収容する。次に、単電池10〜14が収容された電池ケース7に対して絶縁カバー8を装着する。このとき、電池ケース7及び絶縁カバー8の上部及び下部は、2個のクリップ33を用いて締結され、左右の側部は2個のクリップ32を用いて締結される。
【0029】
この状態では、例えば図3に示すように、圧縮された保持シート80の付勢力により、各単電池は反電極端子形成面から電極端子形成面へ向かう方向に押される。これにより、各単電池の外装ケースの電極端子形成面のうち電極端子および安全弁の配設位置を除く面部が、絶縁カバー8のうち単電池外装ケースの電極端子形成面に対向する壁部に押し付けられる。この電極端子形成面に対向する壁部は、各単電池の位置決め用の基準壁部8dである。なお、図3では、制御基板5の図示を省略するとともに、後述する排煙用ダクト6については、一部排煙用通路6aが延びる方向の断面を図示している。
【0030】
次に、電池ケース7及び単電池10〜14と一体に組み立てられた絶縁カバー8の6個の凹部に対して、それぞれ対応する所定のバスバーを嵌め込む。この状態で、各バスバーの開口部には、対応する所定の電極端子が挿通されている。さらに、例えばレーザー溶接、アーク溶接等の溶接、もしくは、接着により、各バスバーと各電極端子とを接合する。
【0031】
複数の積層電池群2、3のうち、第2の積層電池群3は、隣接する第1の積層電池群2よりも積層個数が少なく構成されている。第2の積層電池群3は、単電池11及び単電池12の2個分の積層高さであり、第1の積層電池群2は、単電池10、単電池13及び単電池14の3個分の積層高さである。このようにして、第2の積層電池群3と第1の積層電池群2は、積層個数の違いによる段差空間4を形成する。この場合、段差空間4は、単電池約1個分の厚み寸法に相当する段差をなしている。この段差空間4には、複数個の単電池10〜14の状態を検出するための制御基板5が配置されている。このため、制御基板5を含めた組電池1の厚み方向Xの高さを低く抑えることができる。また制御基板5の上端部は、隣接する第1の積層電池群2の厚み方向Xの上端部以下に収まるように設置されることが好ましい。なお、制御基板5は、単電池を収容する電池ケース7に立てられたボスに載置されて螺子止め固定されている。
【0032】
直列接続の一端をなす電極端子、すなわち本実施形態の場合、最も高電位となる単電池14の正極端子14bは、段差空間4に隣接する位置に設定されている。またパワー基板50は、端子台51に接続され、ワイヤハーネス52を介して制御基板5や車両に接続されている。このようにして、複数の積層電池群2、3を構成するすべての単電池10〜14は直列結線されている。
【0033】
組電池1は、内部の流体通路である排煙用通路6aにすべての安全弁10c〜14cを露出するように設けられる排煙用ダクト6を備えている。排煙用ダクト6は、本実施形態におけるダクト部に相当する。排煙用ダクト6は、耐熱性を有する材料で形成され、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、難燃剤を添加した各種樹脂等で形成される。
【0034】
排煙用ダクト6の有する耐熱性は、単電池の内部が異常な高圧状態になって、内部のガスや電解液等が安全弁の破断によって噴き出しても、ダクト部分が溶けないで破損しない耐熱能力を有することである。排煙用ダクト6を構成する樹脂は、200℃に1分以上耐えられる(流体通路の機能を維持する)耐熱性を有することが好ましい。これにより、ガスや電解液等により制御基板5やパワー基板50等がダメージを受けることを防止することができる。
【0035】
また、絶縁カバー8は、絶縁性を有し、例えばポリプロピレン(PP樹脂)、フィラーやタルクを含有するPP樹脂等の合成樹脂で形成されている。さらに、絶縁カバー8は、排煙用ダクト6と同様に耐熱性を有する樹脂で形成されていることが好ましい。
【0036】
排煙用ダクト6は、水平方向に延びる筒状体であり、絶縁カバー8に組み付けたときのすべての安全弁10c〜14cに対応する位置に安全弁よりも大きい開口部を備えている。当該開口部の周縁部は、絶縁カバー8に組み付けたときに、パッキン30、31を間に挟み込んで、安全弁10c〜14cの周囲の外装ケース表面に密着して接触する。
【0037】
当該開口部の周縁表面部とパッキン30及びパッキン31とは、排煙用ダクト6と外装ケースとの気密度の確保に寄与する。パッキン30、31は、例えば比較的耐熱性に優れたゴム材からなる。上述した開口部は、安全弁が開弁したときに、排煙用通路6a内にガス等を導入するための流体導入口に相当する導入口61a(図3参照)である。
【0038】
したがって、パッキン30、31は、弾性体からなり、安全弁および流体導入口を取り囲むように設けられ、単電池外装ケースの電極端子形成面と排煙用ダクトとの間で圧縮されて、外装ケースと排煙用ダクトとの間を気密シールするシール部材に相当する。
【0039】
さらに排煙用ダクト6には、排煙用通路6aと連通し、側部から外方に延びる内部通路を形成する導出ダクト部6bを備えている。導出ダクト部6bは、排煙用通路6aに噴出したガスを組電池1から離れた外部へ排出する機能を果たす。
【0040】
パッキン30、31を備える代わりに、排煙用ダクト6において安全弁10c〜14cの周縁部を押さえる部分にエラストマー等の軟性の高い樹脂を二色成形等により設けるようにしてもよい。
【0041】
排煙用ダクト6には、導電部材である複数の金属導体がインサート成形されている。金属端子の図示左方側の一端部は電圧検知用端子40となっている。電圧検知用端子40は、段差空間4に上方に突出するように延びており、図2に示すように、段差空間4に配置される制御基板5(具体的には電圧検出回路)に接続される。金属導体の他端部はバスバーに接続しており、電圧検知用端子40には、組電池1の所定の電位が伝達されるようになっている。
【0042】
排煙用ダクト6は、長手方向(横方向)の中央付近に位置する上端部及び下端部のそれぞれに、外方に向けて突出する凸部が形成された爪部6cを備えている。さらに、排煙用ダクト6は、長手方向(横方向)の一方側に位置する上端部及び下端部のそれぞれに、外方に向けて突出する凸部が形成された爪部6dを備えている。一方、絶縁カバー8には、2個の爪部6cのそれぞれが対応する位置に嵌合穴部を形成するコの字状の係合片8aが設けられ、2個の爪部6dのそれぞれが対応する位置に嵌合穴部を形成するコの字状の係合片8bが設けられている。
【0043】
排煙用ダクト6を絶縁カバー8に組み付けたときに、上下2個の各爪部6cが対応する係合片8aの内壁面に係合し、上下2個の各爪部6dが対応する係合片8bの内壁面に係合する。これにより、排煙用ダクト6の移動方向が規制されて、排煙用ダクト6が単電池外装ケースの電極端子形成面に押し付けられるようにパッキン30、31を圧縮し、安全弁10c〜14cの表面と排煙用通路6aとの気密確保を実現することができる。
【0044】
圧縮されたパッキン30、31は、復元力を付勢力として、各単電池を電極端子形成面から反電極端子形成面へ向かう方向に押圧する。ここで、パッキン30、31が各単電池を電極端子形成面から反電極端子形成面へ向かう方向に付勢する力は、保持シート80が各単電池を反電極端子形成面から電極端子形成面へ向かう方向に付勢する力よりも小さくなっている。したがって、パッキン30、31の付勢力により、各単電池の外装ケースの電極端子形成面が、絶縁カバー8の基準壁部8dから離れることはない。
【0045】
図8および図9に示すように、ベース9は、制御基板5が載置固定された組電池1、パワー基板50、端子台51等の電池パックを構成する主要部品が固定され、これらの部品を下方から支持している。ベース9は、例えば、絶縁性を有し、例えばポリプロピレン(PP)、強度向上のためのフィラーやタルク含有のPP等の合成樹脂で形成されている。ベース9は、車両側にボルト締め等により固定するための固定部と、組電池1等を上方から覆うカバー60を取り付けるための取付部とを備えている。このように主要部品が固定されるベース9にカバー60で蓋をしてパッキングすることにより、電池パックとして車両に搭載される。
【0046】
電池監視装置は、組電池1の状態を監視する電池ECUであり、制御基板5に搭載される。電池監視装置は、組電池1の状態に関する情報を検出するために、組電池1の所定の位置に設置された検出端子から延びる、金属導体を含む複数の検出線を介して、組電池1に接続されている。検出線は、例えば、組電池1の電圧、温度等の情報を電池監視装置に送信するための通信線である。検出端子は、組電池1の状態に関わる情報を検出する温度センサ、その他の各種センサ等を含む。
【0047】
電池パックは、複数個の単電池10〜14の充電、放電、電池温度監視等を行う電子部品を有する。例えば、電子部品は、DC/DCコンバータ、インバータ、パワー基板50に搭載されるパワー素子、制御基板5に搭載される各種電子部品、各種の電子式制御装置等である。電池パックには、例えば電圧、温度等の電池の状態を監視する各種センサからの検出結果が入力される電池監視装置と、電池監視装置と通信可能に構成されDC/DCコンバータの電力授受を制御する制御装置と、各機器を接続するワイヤハーネス等と、が含まれる。また、電池パックには、送風を提供して各単電池を冷却する送風装置を含むようにしてもよい。
【0048】
上述の構成の電池パックによれば、保持シート80が各単電池10〜14を反電極端子形成面側から電極端子形成面側に向かって付勢する付勢力が、パッキン30、31が各単電池10〜14を電極端子形成面側から反電極端子形成面側に向かって付勢する付勢力よりも大きくなっている。したがって、各単電池10〜14の外装ケースの電極端子形成面のうち電極端子および安全弁の配設位置を除く端面は、絶縁カバー8の基準壁部8dに確実に当接する。これにより、各単電池10〜14の寸法等がばらついたとしても、各単電池の同一面に設けられた電極端子および安全弁を、電極端子形成面に直交する方向にける所定位置に配設することができる。
【0049】
換言すれば、単電池の外装ケースが若干寸法精度の悪いものであったり、外装ケースに凸状の傷等があったとしても、これを用いて電池パックを構成することが可能である。
【0050】
各単電池10〜14の電極端子および安全弁を、電極端子形成面に直交する方向にける所定位置に配設することで、電極端子とバスバー20〜26との接続部に過剰な応力が加わることを抑制できるとともに、複数の単電池10〜14と排煙用ダクト6との間をパッキン30、31で確実にシールして、安全弁開弁時にガスや電解液等が漏れて制御基板5等の他部品に付着することを防止することができる。
【0051】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0052】
上記実施形態では、弾性部材である保持シート80はゴム製であったが、これに限定されるものではない。例えば、弾性部材は、スプリング等であってもかまわない。
【0053】
また、上記実施形態では、シール部材であるパッキン30、31はゴム製であったが、これに限定されるものではない。例えば、シール部材は、液状ガスケット材や接着剤等が硬化したものであってもかまわない。
【0054】
また、上記実施形態では、単電池を5つ組み合わせた組電池1を用いた電池パックについて説明したが、これに限定されるものではない。電池の数は5つ以外でもかまわず、電池は1つであってもかまわない。
【0055】
また、上記実施形態では、電池ケース7と絶縁カバー8との2つの部材でケース体を構成していた。すなわち、電極端子形成面側と反電極端子形成面側とに分割して形成した2つの部材を組み合わせてケース体としていたが、これに限定されるものではない。ケース体は3つ以上の部材を組み合わせて構成してもよく、ケース体を1つの部材で構成してもかまわない。
【0056】
また、上記実施形態では、各単電池10〜14は、一対の電極端子の間に安全弁を設けていたが、これに限定されるものではない。電池外装ケースの電極端子形成面に安全弁が形成されていれば、安全弁は正極端子と負極端子との間になくてもかまわない。
【0057】
また、上記実施形態では、単電池10〜14は蓄電池(二次電池)であったが、これに限定されるものではなく、一次電池であってもかまわない。
【符号の説明】
【0058】
1 組電池
6 排煙用ダクト(ダクト部)
6a 排煙用通路(流体通路)
7 電池ケース(ケース体の一部)
8 絶縁カバー(ケース体の一部)
8d 基準壁部
10〜14 単電池(電池)
10a〜14a 負極端子(電極端子)
10b〜14b 正極端子(電極端子)
10c〜14c 安全弁
20〜25 バスバー
30、31 パッキン(シール部材)
61a 導入口(流体導入口)
80 保持シート(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースの一端面に設けられた正極端子(10b〜14b)および負極端子(10a〜14a)からなる電極端子を有する電池(10〜14)と、
前記一端面に設けられ、前記電池内部の圧力が異常な圧力になるときに破断して開弁するする安全弁(10c〜14c)と、
前記一端面のうち前記電極端子および前記安全弁の配設位置を除く端面が当接する電池位置決め用の基準壁部(8d)を有し、内部に前記電池を収容するケース体(7、8)と、
前記安全弁に対応した流体導入口(61a)と、前記流体導入口を挟んで前記安全弁に対向する内壁面とを有し、前記流体導入口を介して内部の流体通路(6a)に前記安全弁が露出するように設けられるダクト部(6)と、
前記外装ケースの他端面と前記ケース体との間に設けられ、前記電池を前記他端面側から前記一端面側に向かって付勢する弾性部材(80)と、
弾性体からなり、前記安全弁および前記流体導入口を取り囲むように設けられ、前記一端面と前記ダクト部との間で圧縮されて、前記外装ケースと前記ダクト部との間を気密シールするシール部材(30、31)と、を備え、
前記弾性部材が前記電池を前記他端面側から前記一端面側に向かって付勢する付勢力が、前記シール部材が前記電池を前記一端面側から前記他端面側に向かって付勢する付勢力よりも大きいことを特徴とする電池ユニット。
【請求項2】
前記電池が複数並設され、
前記ダクト部には、前記複数の電池の前記安全弁に対応して複数の前記流体導入口が形成されており、
並設された前記複数の電池の前記電極端子間を接続するバスバー(21〜24)を備えることを特徴とする請求項1に記載の電池ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−110041(P2013−110041A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255636(P2011−255636)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】