説明

電池及び電池の製造方法

【目的】 集電板と発電要素との接続信頼性を確保しながらも、従来より低コスト化できる電池及びその製造方法を提供すること。
【構成】 密閉型電池100は、正極板121と負極板123とがセパレータ125を介して交互に積層された発電要素120と、負極板123のうち、負極リード部123rの端部123rtがそれぞれ接合してなる集電封口部材115とを備える。そして、密閉型電池100は、各々の負極リード部123rの端部123rtを、これらに対応する凹溝119mを有する集電封口部材115の凹溝119mに挿入し、集電封口部材115の凹溝119mをなす部分を溶融させて、負極リード部123rの端部123rtを集電封口部材115に接合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して積層された電池要素を有する電池及びその製造方法に関し、特に、一方の極性の極板のリード部がそれぞれ所定方向に延出し、その端部がそれぞれ集電板に接合した電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して積層された電池要素を有し、一方の極板(正極板または負極板)のリード部が所定方向に延出して、その端部がそれぞれ集電板(正極集電板または負極集電板)に接合された電池が知られている。例えば、特許文献1にその一例が開示されている。
特許文献1の電池では、集電板のうち極板側の面に、ロウ材の合金パウダーをバインダーでスラリー状としたものを所要量塗着し、リフローして、この極板側の面にロウ材を付けておく。そして、この集電板の極板側の面に一方の極板のリード部を圧接した状態で、外側から電子ビームを照射してロウ材を溶融させ、集電板と極板のリード部とをロウ材を介して接合することで、集電板と一方の極板とを接合している(特許文献1の図10,図11及びその説明箇所等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−93505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池では、集電板と一方の極性の極板との接続信頼性は十分に高い。しかしながら、一旦ロウ材を集電板へリフローするため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが高く、その結果、電池のコスト高を招いている。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、集電板と発電要素の極板との接続信頼性を確保しながらも、従来より低コスト化できる電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その解決手段は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出してなる発電要素と、前記一方の極性の極板のうち、前記リード部の端部がそれぞれ接合してなる集電板と、を備える電池であって、前記リード部の前記端部は、自身の周りに前記集電板をなす金属によるフィレットを形成した状態で、それぞれ前記集電板に接合されてなる電池である。
【0007】
本発明によれば、極板のリード部の端部が、自身の周りに集電板をなす金属によるフィレットを形成した状態で、それぞれ集電板に接合されている。このような電池では、フィレットにより極板(リード部)と集電板とが確実に接合しているので、これらの接続信頼性が高い。しかも、そのフィレットは、集電板をなす金属によって形成されているため、従来のようにロウ材を必要としない。このため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価な電池とすることができる。
【0008】
ここで、「発電要素」は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出しているものであれば、その形態等は特に限定されない。
また、本発明では、正極板及び負極板のうち、少なくとも一方の極性の極板について本発明が適用されていればよく、負極板についてのみでも、正極板についてのみでも、或いは、正極板及び負極板の双方について本発明を適用してもよい。
「集電板」は、リード部の端部がそれぞれ接合してなるものであればよく、その形態等は特に限定されない。
【0009】
なお、本発明の、リード部の端部が自身の周りに集電板をなす金属によるフィレットを形成した状態で集電板に接合された電池は、後述するように、凹溝を有する集電板を利用することにより形成できる。しかし、製造された電池において上記のようにフィレットが形成されていればよく、これ以外の方法によって製造されたものも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0010】
また、他の解決手段は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出してなる発電要素と、前記一方の極性の極板のうち、前記リード部の端部がそれぞれ接合してなる集電板と、を備える電池であって、各々の前記リード部の前記端部を、これらに対応する凹溝を有する前記集電板の前記凹溝に挿入し、前記集電板のうち前記凹溝をなす部分を溶融させて、前記リード部の前記端部と前記集電板とを接合してなる電池である。
【0011】
本発明の電池は、リード部の端部を、これらに対応する凹溝を有する集電板の凹溝に挿入し、集電板のうち凹溝をなす部分(凹溝の内壁部分)を溶融させて、リード部の端部と集電板とを接合したものである。このような電池は、リード部の端部が、自身の周りに集電板をなす金属によるフィレットを形成した状態で、それぞれ集電板に接合されている。従って、極板と集電板と接合強度が高く、接続信頼性が高い。しかも、従来のようにロウ材を使用していないため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価な電池とすることができる。
【0012】
更に、上記の電池であって、断面が略V字状をなし、この略V字状断面において、同一の深さにおける左右2本の接線がなす角の最小値が30度以上90度以下である前記凹溝を有する前記集電板に対し、前記リード部の前記端部を接合してなる電池とすると良い。
【0013】
凹溝が断面略V字状をなす場合、凹溝断面の角度が狭すぎると、製造時に極板のリード部の端部を凹溝内に深く挿入しにくくなるため、極板のリード部と集電板とを接合しにくい。一方、この凹溝断面の角度が広すぎると、製造時に集電板の凹溝をなす部分を溶融させたときに、その溶融した金属が極板のリード部の端部に十分に接触せず、フィレットが形成されにくいため、この場合も、極板のリード部と集電板とを接合しにくい。従って、凹溝断面の角度が狭すぎても広すぎても、極板と集電板との接続信頼性が低下するおそれがある。
これに対し、本発明では、断面略V字状をなす凹溝断面の角度を30度以上90度以下としている。このような凹溝の集電板を用いることで、極板のリード部の端部をより確実に凹溝内に挿入できると共に、集電板の凹溝をなす部分を溶融させたときにより確実に端部の周りにフィレットを形成できるため、極板のリード部と集電板とを確実に接合できるようになる。従って、一方の極性の極板と集電板との接続信頼性が高い電池とすることができる。
【0014】
なお、本発明における凹溝断面の角度とは、上記のように、同一の深さにおける左右2本の接線がなす角の最小値を言う。例えば、凹溝断面が完全なV字状である場合や、凹溝底部や凹溝開口部が曲線をなし凹溝中間部が直線状をなす場合は、その直線部分のなす角度が、凹溝断面の角度となる。一方、凹溝断面が全体に曲線状である場合には、その変曲点における左右2本の接線同士のなす角度が凹溝断面の角度となる。
【0015】
更に、上記のいずれかに記載の電池であって、深さが0.1mm以上である前記凹溝を有する前記集電板に対し、前記リード部の前記端部を接合してなる電池とすると良い。
【0016】
凹溝の深さが浅いと、極板のリード部の端部を凹溝に深く挿入できず、極板のリード部と集電板とを確実に接合させにくいため、これらの接続信頼性が低下するおそれがある。
これに対し、本発明では、凹溝の深さを0.1mm以上と深くしているので、極板のリード部の端部を十分深く凹溝内に挿入できるため、極板のリード部と集電板とをより確実に接合できるようになる。従って、一方の極性の極板と集電板との接続信頼性が高い電池とすることができる。
【0017】
更に、上記のいずれかに記載の電池であって、前記発電要素を収容する容器本体部材、及び、この容器本体部材を封口する封口部材を有する電池容器を備え、前記封口部材は、前記集電板を兼ねた集電封口部材である電池とすると良い。
【0018】
本発明によれば、電池容器の封口部材が集電板を兼用しているので、従来の密閉型電池に存在した一方の極性についての集電板を無くすことができる。その結果、発電要素の収容スペースを大きく確保できる。また、集電板と封口部材を兼用することで、一方の極性の極板と集電封口部材との間の電池導通路を短くし、そこでの電気抵抗を小さくできる。このため、電池の出力を向上させることができる。更に、集電板を無くした分だけ、電池を安価にできる。
【0019】
また、他の解決手段は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出してなる発電要素と、前記一方の極性の極板のうち、前記リード部の端部がそれぞれ接合してなる集電板と、を備える電池の製造方法であって、各々の前記リード部の前記端部に対応する凹溝を有する前記集電板に対し、前記リード部の前記端部を対応する前記凹溝にそれぞれ挿入する端部挿入工程と、前記リード部の前記端部を前記凹溝に挿入した状態で、前記集電板の外側から電子ビームまたはレーザを照射し、前記集電板のうち前記凹溝をなす部分を溶融させて、前記リード部の前記端部をそれぞれ前記集電板に接合する溶接工程と、を備える電池の製造方法である。
【0020】
本発明によれば、一方の極性の極板についてのリード部の端部を、これらに対応する凹溝を有する集電板の凹溝に挿入し、電子ビーム等を照射して集電板のうち凹溝をなす部分(凹溝の内壁部分)を溶融させ、一方の極性の極板のリード部を集電板に接合する。このような方法で電池を製造すれば、リード部の端部が、自身の周りに集電板をなす金属によるフィレットを形成した状態で、それぞれ集電板に接合される。従って、一方の極性の極板のリード部と集電板と接合強度が高く、これらの接続信頼性が高い電池を製造できる。更に、従来のようにロウ材を使用していないため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価に電池を製造できる。
【0021】
更に、上記の電池の製造方法であって、前記凹溝は、プレス加工により形成されてなる電池の製造方法とすると良い。
【0022】
本発明によれば、凹溝がプレス加工により形成された集電板を利用して電池を製造する。プレス加工により凹溝を形成した集電板は安価であるので、これを利用すれば安価な電池を製造できる。
【0023】
上記のいずれかに記載の電池の製造方法であって、前記凹溝は、断面が略V字状をなし、この略V字状断面において、同一の深さにおける左右2本の接線がなす角の最小値が、30度以上90度以下である電池の製造方法とすると良い。
【0024】
本発明によれば、断面略V字状をなす凹溝断面の角度が30度以上90度以下の集電板を利用して電池を製造する。凹溝断面の角度を30度以上とすることで、端部挿入工程において極板のリード部の端部を凹溝内に確実に挿入しやすくなるため、溶接工程において極板のリード部と集電板とをより確実に接合できる。また、凹溝断面の角度を90度以下とすることで、溶接工程において集電板の凹溝をなす部分を溶融させたときに、その溶融した金属が極板のリード部の端部に接触しやすく、端部の周りにフィレットを確実に形成できるため、極板のリード部と集電板とをより確実に接合できる。従って、一方の極性の極板と集電板との接続信頼性が高い電池を製造できる。
【0025】
更に、上記のいずれかに記載の電池の製造方法であって、前記凹溝は、深さが0.1mm以上である電池の製造方法とすると良い。
【0026】
本発明によれば、凹溝の深さが0.1mm以上の集電板を利用して電池を製造する。凹溝の深さを0.1mm以上と深くすることで、端部挿入工程において極板のリード部の端部を十分深く凹溝内に挿入できるため、溶接工程において極板のリード部と集電板とをより確実に接合できる。従って、一方の極性の極板と集電板との接続信頼性が高い電池を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態に係る密閉型電池(電池)100を第1側面部111c側から見た図を示す。また、図2に密閉型電池100を集電封口部材115の外側面115a側から見た図を示す。また、図3に密閉側電池100を第3側面部111e側から見た図を示す。また、図4に密閉型電池100を上面部111a側から見た図を示す。また、図5に密閉型電池100の断面図を示す。
【0028】
この密閉型電池100は、電気自動車やハイブリッドカーの電源として用いられる、例えばニッケル水素蓄電池やリチウムイオン電池などの二次電池であり、略直方体形状の角型電池である。密閉型電池100は、直方体形状をなす電池容器110と、電池容器110の内部に収容された発電要素120と、同じく電池容器110の内部に固設された正極集電板130と、電池容器110に固設された外部正極端子140等から構成され、容器内部には電解液が注入されている(図1〜図5参照)。
【0029】
このうち、発電要素120(図5参照)は、正極活物質層121sを有する複数の正極板121と、負極活物質層123sを有する複数の負極板123とが、セパレータ125を介して交互に積層されることにより構成されている。負極板123のうち、負極活物質層132sが形成されていない負極リード部123rは、いずれも所定方向(図5中、左側)に延出している。一方、正極板121のうち、正極活物質層121sが形成されていない正極リード部121rは、いずれも負極リード部123rとは反対方向(図5中、右側)に延出している。
【0030】
電池容器110は、導電材(ニッケルメッキ鋼板)からなる深い有底角筒状の容器本体部材111と、同じく導電材(ニッケルメッキ鋼板)からなり、容器本体部材111を封口する集電封口部材115とから構成されている。
なお、電池容器110のうち、集電板封口部材115は、集電板を兼ねているため導電材からなる必要があるが、それ以外の部分は、導電材で形成されていても絶縁材で形成されていてもよい。電池容器110に金属を利用する場合、電解液に対する耐性(耐アルカリ性)や強度、電気的安定性等を考慮して適宜選択すればよく、利用可能な金属としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、ニッケルメッキを施した炭素鋼、ニッケルを多く含むオーステナイト系ステンレスなどが挙げられる。また、電池容器110に樹脂を利用する場合も、電解液に対する耐性(耐アルカリ性)や強度などを考慮して適宜選択すればよく、例えば、利用可能な樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレンの共重合体、ABS樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、及び、これらのポリマーブレンドまたはポリマーアロイが挙げられる。
【0031】
容器本体部材111(図1〜図5参照)は、平板状で長方形状の上面部111aと、これに平行で上面部111aと同形状な下面部111bと、上面部111aの長辺と下面部111bの長辺とを結ぶ平板状の2つの側面部(第1側面部111c及び第2側面部111d)と、上面部111aの短辺と下面部111bの短辺とを結ぶ平板状の側面部(第3側面部111e)とからなる。上面部111aには、その略中央に貫通穴が形成され、安全弁113が固設されている。また、第3側面部111eには、縦方向に所定の間隔をあけて2つの貫通穴が形成され、後述する外部正極端子140がそれぞれ固設されている。
【0032】
集電封口部材115は、平板状をなし、負極集電板も兼ねている。なお、図6に単体状態の集電封口部材115を内側面115b側から見た図を示す。また、図7に図6のA−A断面の一部を示す。更に、図8に図7に相当する部分に負極板123の負極リード部123rを接合した状態を示す。
集電封口部材115には、その内側面115bから外側面115a側に突出する平面視矩形状の外側凸部117が、縦方向に所定の間隔をあけて4カ所に形成されている。また、集電封口部材115には、その外側面115a側から内側面115b側に突出する平面視長円形状の内側凸部119が、各々の外側凸部117の上側と下側にそれぞれ形成されている。
なお、容器本体部材111と集電封口部材115とは、容器本体部材111を集電封口部材115で蓋をした状態で、全周にわたってレーザ溶接することにより接合されている。
【0033】
前述した発電要素120のうち、負極板123の負極リード部123rは、いずれもこの集電封口部材115の内側面115bに電子ビーム溶接により直接接合されている(図5及び図8参照)。具体的には、負極リード部123rの端部123rtが、自身の周りに集電封口部材115をなす金属(鋼板成分)によるフィレット115fを形成した状態で、それぞれ集電封口部材115に接合されている。
【0034】
このように接合された負極板123と集電封口部材115とは、接合強度が高く、接続信頼性が高い。更に、従来のようにロウ材を使用していないため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価な密閉型電池100とすることができる。
また、本実施形態のように、負極板123の負極リード部123rを集電封口部材115に直接接合することで、集電封口部材115が負極集電板を兼用しているので、負極集電板を無くすことができる。その結果、発電要素120の収容スペースを大きく確保できる。また、この兼用により発電要素120(負極板123)と集電封口部材115との間の電池導通路を短くし、そこでの電気抵抗を小さくできる。このため、密閉型電池100の出力を向上させることができる。更に、負極集電板を無くした分だけ、密閉型電池100を小型で安価にできる。
【0035】
正極集電板130(図5参照)は、導電材(ニッケルメッキ鋼板)からなり、平板状をなす。正極集電板130には、内側面130b側(図5中、左側)に突出する幅方向(図5中、紙面に垂直な方向)に長い平面視長円形状の内側凸部131が8カ所に形成されている。
【0036】
前述した発電要素120のうち、正極板121の正極リード部121rは、いずれもこの正極集電板130の内側面130bに電子ビーム溶接により接合されている(図5参照)。具体的には、前述の負極リード部123rと同様(図8参照)、正極リード部121rの端部が、自身の周りに正極集電板130をなす金属によるフィレットを形成した状態で、それぞれ正極集電板130に接合されている。
このように接合された正極板121と正極集電板130も、負極板123と集電封口部材115と同様、接合強度が高く、接続信頼性が高い。更に、従来のようにロウ材を使用していないため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価な密閉型電池100とすることができる。
【0037】
外部正極端子140(図5参照)は、一端(図5中、左側)が閉じた中空筒状なす極柱部141と、極柱部141の他端(図5中、右側)から径方向外側に延出する鍔部143とからなる。極柱部141は、電池容器110(容器本体部材111)の貫通穴に、電池容器110と極柱部141との間に電気絶縁性を有するシール部材145を介挿した状態で、上記一端側が電池内部に位置し、上記他端側が電池外部に位置するように挿入されている。そして、極柱部141の上記一端側は、径方向外側(図5中、上下方向)に膨出して圧縮変形部141hを形成し、電池容器本体111の第3側面部111eの内側面との間に、上記シール部材145の一部を挟み込んでシール部材145を圧縮している。また、鍔部143も、電池容器本体111の第3側面部111eの外側面との間に、上記シール部材145の一部を挟み込んでシール部材145を圧縮している。
この外部正極端子140は、正極集電板130の外側面130a(図5中、右側)に圧縮変形部141hを当接した状態で、レーザ溶接により正極集電板130と接合している。
【0038】
以上で説明した密閉型電池100は次のようにして製造する。即ち、公知の手法により発電要素120を作成する。
また、集電封口部材115を作成する。本実施形態で利用する集電封口部材115は、図6に示したように、内側凸部119の頂面119nに、それぞれ図6中、上下方向に延びる凹溝119mが、負極板123と同じ数だけ形成されている。図7に示したように、凹溝119mは、断面が略V字状をなす。より詳細には、断面のうち、凹溝底部119mpは角が丸くなるように曲線をなし、また、凹溝開口部119mqは外側に向かって広がる曲線をなし、一方、凹溝中間部119mrは直線をなしている。そして、凹溝中間部119mrの直線部分において、そのなす角αが30度以上90度以下(本実施形態では45度)とされている。また、凹溝119mの深さDは0.1mm以上(本実施形態では0.3mm)とされている。このような凹溝119mはプレス加工によって形成する。
【0039】
また一方で、正極集電板130を作成する。この正極集電板130も、集電封口部材115の凹溝119mと同様に、内側凸部131の頂面に、それぞれ図5中、上下方向に延びる凹溝(図示しない)が、正極板121と同じ数だけ形成されている。これらの凹溝は、集電封口部材115の凹溝119mと同様の形態をなす(図6及び図7参照)。即ち、断面が略V字状であり、断面のうち、凹溝底部は角が丸くなるように曲線をなし、また、凹溝開口部は外側に向かって広がる曲線をなし、一方、凹溝中間部は直線をなしている。そして、凹溝中間部の直線部分において、そのなす角が30度以上90度以下(本実施形態では45度)とされている。また、凹溝の深さは0.1mm以上(本実施形態では0.3mm)とされている。このような凹溝もプレス加工によって形成する。
【0040】
次に、発電要素120の負極リード部123rの端部123rtを、集電封口部材115の内側凸部119のうち対応する凹溝119mにそれぞれ挿入する(端部挿入工程)。
その後、端部123rtを凹溝119mに挿入した状態で、集電封口部材115の外側面115a側から内側凸部119に向けて電子ビームを照射し、集電封口部材115のうち凹溝119mをなす部分(凹溝119の内壁部分115h)を一旦溶融させて、負極リード部123rの端部123rtをそれぞれ集電封口部材115に接合する(溶接工程)。このとき、端部123rtの周りには、封口集電板115をなす金属(鋼板成分)によるフィレット115fがそれぞれ形成され、負極リード部123rが集電封口部材115に強固に接合される。なお、電子ビームの代わりにレーザを照射して溶接工程を行うこともできる。
【0041】
このようにして接合された負極板123と集電封口部材115とは、接合強度が高く、接続信頼性が高い。更に、従来のようにロウ材を使用していないため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価に密閉型電池100を製造できる。
更に、本実施形態では、前述したように断面略V字状をなす凹溝119mの断面の角度を30度以上90度以下(具体的には45度)としているので、負極リード部123rの端部123rtをより確実に凹溝119m内に挿入できる。更にこれにより、集電封口部材115の凹溝119mをなす部分を溶融させて負極リード部123rの端部123rtと集電封口部材115とを確実に接合できる。また、凹溝119mの深さを0.1mm以上(具体的には0.3mm)としているので、負極リード部123rの端部123rtを十分に深く凹溝119m内に挿入できるため、負極リード部123rの端部123rtと集電封口部材115とをより確実に接合できる。従って、負極板123と集電封口部材115との接続信頼性を向上させることができる。
【0042】
次に、正極側についても、上記の負極側と同様に、端部挿入工程と溶接工程を行う。
即ち、まず、発電要素120の正極リード部121rの端部を正極集電板130の内側凸部131のうち対応する凹溝(図示しない)にそれぞれ挿入する(端部挿入工程)。
その後、正極リード部121rの端部を正極集電板130の凹溝に挿入した状態で、正極集電板130の外側面130a側から内側凸部131に向けて電子ビームを照射し、正極集電板130のうち凹溝をなす部分(凹溝の内壁部分)を一旦溶融させて、正極リード部121rの端部をそれぞれ正極集電板130に接合する(溶接工程)。このとき、正極リード部121rの端部の周りに正極集電板130をなす金属によるフィレットがそれぞれ形成され、正極リード部123rが正極集電板130に強固に接合される。なお、ここでも電子ビームの代わりにレーザを照射して溶接工程を行うこともできる。
【0043】
この正極側についても、正極板121と正極集電板130とは、接合強度が高く、接続信頼性が高い。更に、従来のようにロウ材を使用していないため、ロウ材自体のコストやロウ材のリフローに伴う製造コストが掛からず、安価に密閉型電池100を製造できる。
更に、前述したように断面略V字状をなす凹溝の断面の角度を30度以上90度以下(具体的には45度)としているので、正極リード部121rの端部をより確実に凹溝内に挿入できる。更にこれにより正極集電板130の凹溝をなす部分を溶融させて正極リード部121rの端部と正極集電板130とを確実に接合できる。また、凹溝の深さを0.1mm以上(具体的には0.3mm)としているので、正極リード部121rの端部を十分に深く凹溝内に挿入できるため、正極リード部123rの端部と正極集電板130とをより確実に接合できる。従って、正極板121と正極集電板130との接続信頼性を向上させることができる。
【0044】
またこれとは別に、容器本体部材111に外部正極端子140を固着する。即ち、容器本体部材111の貫通穴にシール部材145を装着すると共に、鍔部143と断面U字状の極柱部141を有する外部正極端子140の極柱部141を外側から挿入し、この極柱部141の筒内に流体圧をかけて、極柱部141の一端側を径方向外側に膨出させ、更に軸方向に圧縮変形させて圧縮変形部141hを形成しておく。
【0045】
次に、発電要素120と集電封口部材115と正極集電板130とからなる接合体のうち、正極集電板130及び発電要素120を、容器本体部材111内に挿入し、集電封口部材115で容器本体部材111に蓋をする。そして、外部からレーザを照射して、集電封口部材115と容器本体部材111とを接合し、容器本体部材111を封口する。
次に、外部正極端子140の外側からその極柱部141の凹みに向けてレーザを照射し、極柱部141の圧縮変形部141hと正極集電板130とを接合する。
その後、容器本体部材111の形成された貫通穴(注入口)から電解液を注入し、その注入口を閉鎖するように安全弁113を取り付ければ、上記密閉型電池100が完成する。
【0046】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、正極板121と正極集電板130との接合、及び、負極板123と集電封口部材115との接合に本発明を適用しているが、正極板121または負極板123のいずれか一方にのみ本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、封口部材115が負極集電板も兼ねているが、別途負極集電板を設け、その負極集電板に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態に係る密閉型電池を第1側面部側から平面図である。
【図2】実施形態に係る密閉型電池を集電封口部材の外側面側から見た平面図である。
【図3】実施形態に係る密閉型電池を第3側面部側から見た平面図である。
【図4】実施形態に係る密閉型電池を上面部側から見た平面図である。
【図5】実施形態に係る密閉型電池の断面図である。
【図6】実施形態に係る密閉型電池を構成する集電封口部材を内側面側から見た平面図である。
【図7】実施形態に係る密閉型電池を構成する集電封口部材のうち、図6のA−A断面を一部を示す断面図である。
【図8】実施形態に係る密閉型電池のうち、電池を構成した状態における図7に相当する部分の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
100 密閉型電池(電池)
110 電池容器
111 容器本体部材
115 集電封口部材
115f フィレット
119 (集電封口部材の)内側凸部
119m (内側凸部の)凹溝
121 正極板
121r 正極リード部
123 負極板
123r 負極リード部
123rt (負極リード部の)端部
125 セパレータ
130 正極集電板
131 (正極集電板の)内側凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出してなる発電要素と、
前記一方の極性の極板のうち、前記リード部の端部がそれぞれ接合してなる集電板と、
を備える電池であって、
前記リード部の前記端部は、自身の周りに前記集電板をなす金属によるフィレットを形成した状態で、それぞれ前記集電板に接合されてなる
電池。
【請求項2】
複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出してなる発電要素と、
前記一方の極性の極板のうち、前記リード部の端部がそれぞれ接合してなる集電板と、
を備える電池であって、
各々の前記リード部の前記端部を、これらに対応する凹溝を有する前記集電板の前記凹溝に挿入し、前記集電板のうち前記凹溝をなす部分を溶融させて、前記リード部の前記端部と前記集電板とを接合してなる
電池。
【請求項3】
請求項2に記載の電池であって、
断面が略V字状をなし、この略V字状断面において、同一の深さにおける左右2本の接線がなす角の最小値が30度以上90度以下である前記凹溝を有する前記集電板に対し、前記リード部の前記端部を接合してなる
電池。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の電池であって、
深さが0.1mm以上である前記凹溝を有する前記集電板に対し、前記リード部の前記端部を接合してなる
電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電池であって、
前記発電要素を収容する容器本体部材、及び、この容器本体部材を封口する封口部材を有する電池容器を備え、
前記封口部材は、前記集電板を兼ねた集電封口部材である
電池。
【請求項6】
複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層され、一方の極性の極板のリード部がいずれも所定方向に延出してなる発電要素と、
前記一方の極性の極板のうち、前記リード部の端部がそれぞれ接合してなる集電板と、
を備える電池の製造方法であって、
各々の前記リード部の前記端部に対応する凹溝を有する前記集電板に対し、前記リード部の前記端部を対応する前記凹溝にそれぞれ挿入する端部挿入工程と、
前記リード部の前記端部を前記凹溝に挿入した状態で、前記集電板の外側から電子ビームまたはレーザを照射し、前記集電板のうち前記凹溝をなす部分を溶融させて、前記リード部の前記端部をそれぞれ前記集電板に接合する溶接工程と、
を備える電池の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電池の製造方法であって、
前記凹溝は、プレス加工により形成されてなる
電池の製造方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の電池の製造方法であって、
前記凹溝は、断面が略V字状をなし、この略V字状断面において、同一の深さにおける左右2本の接線がなす角の最小値が、30度以上90度以下である
電池の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
前記凹溝は、深さが0.1mm以上である
電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−172780(P2006−172780A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360744(P2004−360744)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】