説明

電池及び電池の製造方法

【課題】箔状部材で発電要素を構成する場合に、発電要素の電気配線における接触不良の発生を可及的に抑制する。
【解決手段】芯材11周りで箔状正極板等を巻回した発電要素3が備えられた電池において、芯材11は、扁平面の法線方向視で端縁が互いに略平行となる一対の端部を有する扁平形状に形成され、芯材11における前記一対の端部の夫々に備えられた導電体部分4a,6aが、夫々、電池筐体BCの外方側に配置された電極端子5,7と電気的に接続され、導電体部分4a,6aのうちの一方に、箔状正極板の長手方向端部に配置されている正極側の未塗工部が接合され、導電体部分4a,6aのうちの他方に、箔状負極板の長手方向端部に配置されている負極側の未塗工部が接合され、箔状正極板、箔状負極板及びセパレータが、一対の前記導電体部4a,6a分間に架け渡される向きで、一対の前記導電体部分4a,6a周りに巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夫々活物質を塗布した長尺の箔状正極板及び箔状負極板を、セパレータを挟んだ状態で、芯材周りで巻回した状態の発電要素が備えられた電池、及び、その電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電池は、例えば下記特許文献1にも記載のように、夫々活物質を塗布した長尺の箔状正極板及び箔状負極板を、セパレータを挟んだ状態で巻回軸芯周りに巻回した、いわゆる巻回型の発電要素を備えた電池である。
かかる電池は、活物質を塗布した箔状正極板及び箔状負極板を電池筐体内に高密度で配置できるため、単位体積当たりの電池容量を大きくできるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−285900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成では、箔状正極板等を巻回して発電要素を作製した後に、その発電要素と他の配線用部材とを接続する際の作業性に難がある。
巻回型の発電要素から電気配線を引き出すための構成としては、長尺の箔状正極板等の幅方向端部に、活物質を塗布していない未塗工部を形成して、その未塗工部を束ねる形で、溶接技術等により他の配線用部材と接合するという手法が良く知られているが、箔状の未塗工部を束ねて配線用部材と接合するという作業は、接合する両者の位置合わせ作業が容易ではなく、接合が不十分で接触不良が発生してしまう場合もあった。
このような接合不良を回避するには、箔状正極板等を巻回して発電要素を作製する前に、予め箔状正極板等の長手方向端部と他の配線用部材とを接合しておき、電気配線を既に完了した状態で、正極側の配線用部材と負極側の配線用部材とに掛け渡す状態で箔状正極板等を巻回して発電要素を作製するという手法も考えられる。
ところが、単に正極側の配線用部材と負極側の配線用部材とに掛け渡す状態で箔状正極板等を巻回する構成とすると、箔状正極板等を巻回する際に配線用部材に作用する圧力によって、正極側の配線用部材と負極側の配線用部材とが変位あるいは変形してしまうことになり、これに起因して、発電要素と配線用部材との間で接触不良が発生する場合もあり得る。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、箔状部材で発電要素を構成する場合に、発電要素の電気配線における接触不良の発生を可及的に抑制する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の第1の発明は、夫々活物質を塗布した長尺の箔状正極板及び箔状負極板を、セパレータを挟んだ状態で、芯材周りで巻回した状態の発電要素が備えられた電池において、前記芯材は、扁平面の法線方向視で端縁が互いに略平行となる一対の端部を有する扁平形状に形成され、前記芯材における前記一対の端部の夫々に導電体部分が備えられ、
一対の前記導電体部分が、夫々、電池筐体の外方側に配置された電極端子と電気的に接続され、前記導電体部分のうちの一方に、前記箔状正極板の長手方向端部に配置されている、活物質を塗布していない正極側の未塗工部が接合され、前記導電体部分のうちの他方に、前記箔状負極板の長手方向端部に配置されている、活物質を塗布していない負極側の未塗工部が接合され、前記箔状正極板、前記箔状負極板及び前記セパレータが、一対の前記導電体部分間に架け渡される向きで、一対の前記導電体部分周りに巻回されている。
【0006】
すなわち、箔状正極板及び箔状負極板の長手方向端部の未塗工部を芯材に備えられる導電体部分に接合し、且つ、一対の導電体部分間に架け渡す向きで箔状正極板等を巻回するという構成上、箔状正極板及び箔状負極板の先端側を的確に導電体部分と接合した後に、箔状正極板等を巻回するという製造工程になる。
箔状正極板等の巻回の後に、箔状正極板及び箔状負極板の未塗工部を溶接等により電気配線する構成では、箔状正極板等を巻回した状態では未塗工部の取り扱いが容易ではないため、溶接等の接合作業のために、巻回後の箔状正極板等の未塗工部と配線の相手方との位置合わせする作業が行い辛く、接合作業時に位置ずれが発生して、接触不良が発生する場合もある。これに対して、上記のように、箔状正極板等の巻回作業の前に、箔状正極板等の先端側の未塗工部を予め芯材の導電体部分に対して接合作業を行える構成では、箔状正極板等の取り扱い自由度が高く、接合するもの同士の位置合わせも極めて容易であり、接触不良が発生しにくいものとなる。
しかも、一対の導電体部分は芯材に形成されており、一対の導電体部分間に架け渡す向きで箔状正極板等を巻回しても、一対の導電体部分の変位あるいは変形は可及的に抑制され、一対の導電体部分の変位あるいは変形による導電体部分と箔状正極板等との接触不良も抑制することができる。
【0007】
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記発電要素と前記電極端子とを電気的に接続すると共に、前記発電要素を支持する集電体が、前記芯材における前記導電体部分と、金属材料にて一体形成されている。
すなわち、発電要素を構成する箔状正極板等との電気配線のための要素部分と、電池筐体に備えられる電極端子との電気配線のための要素部分とを単一部材として形成する。
【0008】
又、本出願の第3の発明は、上記第2の発明の構成に加えて、前記電池筐体は、扁平な略直方体形状に形成され、且つ、前記電池筐体の扁平面と直交する1側面を開放面とする有底矩形筒状に形成された缶体と、前記缶体の前記開放面側の端部に固定される略平板状の蓋体とによって構成され、前記集電体は、正極側及び負極側の夫々において、それの一端側が、前記蓋体に固定され、他端側が、前記蓋体の平坦面の法線方向に延びて、前記芯材における前記導電体部分となるように構成されている。
【0009】
すなわち、電池筐体を構成する蓋体と、その蓋体の平坦面から法線方向に延びる集電体と、その集電体の一部でもある芯材の導電体部分と、芯材とで、矩形枠状の構造部材を形成し、その構造部材に箔状正極板等を巻回する構成としているので、発電要素を強固に支持することができる。
【0010】
又、本出願の第4の発明は、夫々活物質を塗布した長尺の箔状正極板及び箔状負極板を、セパレータを挟んだ状態で、芯材周りで巻回した状態の発電要素が備えられた電池の製造方法において、扁平面の法線方向視で端縁が互いに略平行となる一対の端部を有する扁平形状に形成され、且つ、前記一対の端部の夫々に、電池筐体の外方側に配置された電極端子と電気的に接続される導電体部分が備えられた前記芯材において、前記導電体部分のうちの一方に、前記箔状正極板の長手方向端部における活物質を塗布していない未塗工部を接合すると共に、前記導電体部分のうちの他方に、前記箔状負極板の長手方向端部における活物質を塗布していない未塗工部を接合し、前記箔状正極板、前記箔状負極板及び前記セパレータを、一対の前記導電体部分間に架け渡される向きで、一対の前記導電体部分周りに巻回する。
【0011】
すなわち、箔状正極板等の巻回の後に、箔状正極板及び箔状負極板の未塗工部を溶接等により電気配線する構成では、箔状正極板等を巻回した状態では未塗工部の取り扱いが容易ではないため、溶接等の接合作業のために、巻回後の箔状正極板等の未塗工部と配線の相手方との位置合わせする作業が行い辛く、接合作業時に位置ずれが発生して、接触不良が発生する場合もある。これに対して、上記のように、箔状正極板等の巻回作業の前に、箔状正極板等の先端側の未塗工部を予め芯材の導電体部分に対して接合作業を行う構成では、箔状正極板等の取り扱い自由度が高く、接合するもの同士の位置合わせも極めて容易であり、接触不良が発生しにくいものとなる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、箔状正極板等の未塗工部と芯材の導電体部分との接合作業を、簡単な位置合わせで精度良く行えると共に、一対の導電体部分間に架け渡す向きで箔状正極板等を巻回しても、芯材自身の支持によって一対の導電体部分の変位あるいは変形が可及的に抑制されるので、箔状部材で発電要素を構成する場合に、発電要素の電気配線における接触不良の発生を可及的に抑制することができる。
又、上記第2の発明によれば、発電要素を構成する箔状正極板等との電気配線のための要素部分と、電池筐体に備えられる電極端子との電気配線のための要素部分とを単一部材で構成することで、部品点数の低減による装置コストの削減を図れると共に、集電体にて発電要素をより強固に支持できる。
又、上記第3の発明によれば、矩形枠状の構造部材で発電要素を支持する構成とすることで、発電要素を一層強固に支持することができる。
又、上記第4の発明によれば、箔状正極板等の未塗工部と芯材の導電体部分との接合作業を、簡単な位置合わせで精度良く行えるので、接合不良を可及的に低減できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電池の外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態にかかる電池の内部構成を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態にかかる要部断面図
【図4】本発明の実施の形態にかかる電池の製造工程を説明する図
【図5】本発明の実施の形態にかかる電池の製造工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電池及び電池の製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、電池として二次電池の1例である非水電解液二次電池(より具体的にはリチウムイオン電池)を例示して説明する。
【0015】
〔非水電解液二次電池RBの構成〕
図1及び図2の斜視図に示すように、本実施の形態の非水電解液二次電池RBは、有底筒状の缶体1の開放面側の端部に、略平板状に形成された蓋体2を被せて、缶体1の開放面側の端部と蓋体2の端部とを溶接により接合して構成した、扁平な略直方体形状の電池筐体BC(以下において、単に「筐体BC」と称する)を有している。
蓋体2は、図2に示すように、短冊状の長方形の金属板の端縁部を全周に亘って直角に折り上げた形状に加工形成し、全体としては浅い皿状に形成されている。
この蓋体2の筐体BC外方側となる面に正極の電極端子である端子ボルト5と負極の電極端子である端子ボルト7とが取り付けられる。
缶体1は、扁平な略直方体形状を有し、筐体BCの扁平面(すなわち、缶体1の扁平面)と直交する1側面を開放面とする有底矩形筒状に形成している。
缶体1は金属板にて形成し、その材料は、本実施の形態では、アルミニウムを使用している。尚、図2は、完成した二次電池RB(図1に示すもの)から缶体1を除いて筐体BC内部の構成を図示している。
【0016】
筐体BCの内部には、図2において2点鎖線で概略的な位置を示す発電要素3と集電体4,6が電解液に浸される状態で収納配置されている。
集電体4,6は、発電要素3と端子ボルト5,7とを電気的に接続するための部材であり、又、発電要素3を支持する支持構造物である。
集電体4と集電体6とは何れも導電体であり、金属板にて形成されている。
正極側の集電体4と負極側の集電体6とでは、同一形状のものが対称に配置される関係となっているが、両者で材質が異なる。正極側の集電体4はアルミニウムにて形成され、負極側の集電体6は銅にて形成されている。
【0017】
集電体4,6の形状は、端子ボルト5,7の取付面である蓋体2の平坦面に沿って伸びる形状の部分と、蓋体2の長手方向端部付近で下方へ90度屈曲して蓋体2の平坦面の法線方向に伸びる部分とが連なる略L字状の屈曲形状を有している。その集電体4,6の一端側の、蓋体2の平坦面に沿う部分で端子ボルト5,7と接続され、集電体4,6の他端側の、蓋体2の平坦面の法線方向に延びる部分で発電要素3と接合されて、発電要素を支持している。
集電体4,6における発電要素3の支持部分は、U字状断面をなすように金属板を屈曲加工して接合部4a,6aを形成しており、更に、接合部4a,6aのうちの上下方向中央部分において、U字状断面の片側半分を切り欠いた形状の切り欠き部COを形成している。このような切り欠き部COを形成するのは、詳しくは後述するが、発電要素3との溶接のためであり、その溶接位置との関係で、正極側と負極側とでは、切り欠き部COの形成位置が表裏逆側となっている。従って、図2においては、集電体4側の切り欠き部COは図面上に現れていない。
本実施の形態では、集電体4,6全体のうち、この接合部4a,6aが大部分を占める構成となっている。尚、後述のように、接合部4a,6aは、発電要素3において箔状正極板等を巻回する際の芯材の一部にもなっており、発電要素3の一部を構成する部材でもある。
【0018】
図2に示すように、一対の接合部4a,6a間には、剛性を有する電気的絶縁材料にて形成される絶縁板21が架け渡されている。
絶縁板21は、板面の法線方向視で矩形形状に形成され、それの長手方向の両端部において、夫々上部、下部の2箇所から出っ張る状態で薄肉部21a(後述の図3参照。図3では、上方側の薄肉部21aのみを図示)が形成されている。その上下一対の薄肉部21aが、集電体4,6における上記切り欠き部COの上下両側に位置してU字状断面を有する接合部4a,6aの縦壁間の隙間に入り込み、接合部4a,6aが絶縁板21の端部を挟み込む形となっている。絶縁板21における薄肉部21a以外の部分の表裏両面は、上記切り欠き部COを除く接合部4a,6aの縦壁外面側と面一となっている。
絶縁板21は、例えば樹脂やセラミックス等にて形成すれば良い。
【0019】
発電要素3は、長尺帯状で且つ箔状に形成された正極板と長尺帯状で且つ箔状に形成された負極板とからなる一対の電極板の夫々に活物質を塗布し、同じく長尺帯状のセパレータを挟んで積層状態で巻回した、いわゆる巻回型の発電要素として構成されている。
本実施の形態の発電要素3は、詳しくは後述するが、扁平形状の芯材11周りで箔状正極板等を巻回して、巻回物も扁平形状とすることで、扁平形状の筐体BCに適合させている。
芯材11は、本実施の形態では、集電体4,6の接合部4a,6aと、接合部4a,6a間に架け渡された絶縁板21とによって構成されている。すなわち、集電体4,6は箔状正極板等を巻回する際の芯材としても兼用される構成としている。
従って、いずれも剛性を有する部材である接合部4a,6aと絶縁板21とによって構成される芯材11は、全体としても剛性を有するものであり、又、芯材11全体が扁平形状となっている。
集電体4,6の接合部4a,6aは、芯材11において、扁平面の法線方向視において端縁が互いに略平行となる一対の端部を為しており、その一対の端部の夫々に導電体部分が備えられる関係となっている。換言すると、集電体4,6は、芯材11における一対の導電体部分(接合部4a,6a)と、金属材料にて一体形成されている。
この一対の導電体部分、すなわち、一対の接合部4a,6aのうち、一方の接合部4aに箔状正極板が電気的に接続され、他方の接合部6aに箔状負極板が電気的に接続される。
発電要素3における箔状正極板,箔状負極板及びセパレータの巻回の向きは、箔状正極板等が一対の接合部4a,6a間に架け渡される向きであり、一対の接合部4a,6aをまとめて1つの巻芯として、一対の接合部4a,6a周りに箔状正極板等を巻回している。従って、箔状正極板等の巻回軸芯は、接合部4a,6aの長手方向に沿う方向、すなわち、縦方向を向いている。
【0020】
金属製(具体的には、アルミニウム製)の蓋体2に取り付けられている正極側の端子ボルト5は正極側の集電体4に電気的に接続され、負極側の端子ボルト7は負極側の集電体6に電気的に接続されており、箔状正極板等が電気的に接続される前記一対の導電体部分である一対の接合部4a,6aが、夫々、電池筐体BCの外方側に配置された端子ボルト5,7と電気的に接続されることになる。これらの接続によって、発電要素3と端子ボルト5,7とが電気的に接続される。
端子ボルト5の蓋体2への取付構造及び端子ボルト5と集電体4との接続構造と、端子ボルト7の蓋体2への取付構造及び端子ボルト7と集電体6との接続構造とは、同一構成のものが対称に配置されたものであり、以下において、正極側の構成によって代表させて説明する。
【0021】
端子ボルト5には、図3の断面図に示すように、それの頭部側に、集電体4を蓋体2に固定するための導電性を有するリベット部材5aが一体成形されている。そのリベット部材5aの部分が蓋体2に形成された電極取付孔8を貫通する状態で配置されている。
端子ボルト5及び集電体4の蓋体2への取付固定は、蓋体2を挟む状態で配置される一対のガスケット9,10を端子ボルト5の頭部と集電体4とで挟んで、リベット部材5aの筐体BC内方側端部をかしめることで行い、この取付固定によって、リベット部材5aと集電体4とが発電要素3と端子ボルト5との間の通電経路を形成し、発電要素3と端子ボルト5とを電気的に接続する。
負極側の集電体6の取り付け構造も同様の構成となっており、従って、集電体4,6は、正極側及び負極側の夫々において、それの一端側が、蓋体2に固定され、他端側が、蓋体2の平坦面の法線方向に延びて、芯材11における前記導電体部分(接合部4a,6a)となっている。
【0022】
〔二次電池RBの製造工程〕
次に、二次電池RBの製造工程について概略的に説明する。
先ず、発電要素3の芯材11を組み立てる。
上述のように、本実施形態の芯材11は集電体4,6を兼用する構成であり、金属板を曲げ加工することによって、集電体4,6の形成と芯材11の形成とを同時に行う。
すなわち、接合部4a,6a等を展開した形状に切断した金属板に端子ボルト5,7の頭部(リベット部材)を挿通するための貫通孔を形成し、更に、その金属板をL字状に曲げて、蓋体2に沿う部分と蓋体2の平坦面の法線方向に延びる部分とを形成すると共に、蓋体2の平坦面の法線方向に延びる部分において、集電体4,6を蓋体2に組み付けた際に端部が反対側の集電体6,4の存在側を向く方向でU字状断面となるように屈曲形成し、接合部4a,6aを形成する。上記切り欠き部COとなる部分の形状も、曲げ加工の前に予め形成しておく。
この接合部4a,6aを形成する曲げ加工の際に、上記切り欠き部COの上下両側の位置で、絶縁板21の長手方向端部に形成されている上下一対の上記薄肉部21aを挟み込む。もちろん、接合部4a,6aを形成する曲げ加工の後に絶縁板21を嵌入するようにしても良いし、インサート成型技術によって、接合部4a,6aを形成した集電体4,6を配置した金型中に樹脂を流して絶縁板21を形成するようにしても良い。
【0023】
一方、上記のように集電体4,6と絶縁板21とを一体化したものを組み付ける対象である蓋体2の方は、短冊状の金属板に、上記の電極取付孔8を正負両極に対応して一対に形成し、プレス加工にて図2に示す形状に形成する。すなわち、金属板の端部を直角に立ち上げて立ち上げ部2aを形成する。
上記の形状に形成した蓋体2の電極取付孔8に、夫々ガスケット9を挟み込んだ状態で端子ボルト5,7の頭部(リベット部材)を嵌入し、その頭部側からガスケット10と上記のように組み立てた集電体4,6とを差し込んで、リベット部材をかしめて固定する。
【0024】
次に、発電要素3を組み立てる。
発電要素3は、上述のように、長尺帯状の箔状正極板及び箔状負極板に正極活物質及び負極活物質を夫々塗布し、乾燥処理等の後にセパレータを挟んで巻回したものである。
箔状正極板及び箔状負極板の幅方向の長さは、芯材11の一部でもある接合部4a,6aの縦方向の長さと略一致させている。
箔状正極板及び箔状負極板への活物質の塗布は、箔状正極板及び箔状負極板の夫々において、巻回始端部に設定幅(箔状正極板等の長手方向での幅)の領域を残して、活物質層を表裏両面に塗布形成し、上記領域を未塗工部とする。
【0025】
上記のように作製した箔状正極板等は、巻芯となる芯材11を構成する絶縁板21及び集電体4,6の接合部4a,6aの周りに巻回する。
この巻回工程を、箔状正極板12の巻き始めの状態を示す図4を参照して説明すると、先ず、絶縁板21の板面に沿わせて配置したセパレータ13の先端を、切り欠き部COの形成側と反対側の面における正極側の接合部4aと絶縁板21との境界部分に位置合わせして、その先端部分を融着あるいは粘着テープ等によって貼り付けて絶縁板21の板面上に固定する。
次に、箔状正極板12をセパレータ13と同様の姿勢で配置して、箔状正極板12の長手方向端部に位置する未塗工部12aを、正極側の接合部4aの側面(切り欠き部COの形成側と反対側の側面)における、図4中で矢印Aにて指し示すX印の位置において超音波溶接にて接合する。
この溶接位置は、上下方向において、上記切り欠き部COの存在位置であり、片側を切り欠いた集電体4と未塗工部12aとを挟み込む形で、効率良く超音波エネルギーを印加することができる。
【0026】
芯材11と箔状正極板12等との接続状態を底面視で概略的に示す図5に示すように、負極側においても、セパレータ13及び箔状負極板14の先端部を芯材11に固定する。
正極側における箔状正極板12等の取り付け姿勢と負極側における箔状負極板14等の取り付け姿勢とは、底面視での芯材11の中心に対して点対象となっており、セパレータ13の先端を、切り欠き部COの形成側と反対側の面における負極側の接合部6aと絶縁板21との境界部分に位置合わせして、その先端部分を融着あるいは粘着テープ等によって貼り付けて絶縁板21の板面上に固定し、箔状負極板14の長手方向先端部に位置する未塗工部14aを、負極側の接合部6aの側面(切り欠き部COの形成側と反対側の側面)に超音波溶接にて接合する。
上記のようにして、箔状正極板12等の巻回始端側を芯材11に固定すると、その箔状正極板12等を、一対の接合部4a,6aを1つの巻芯として、その巻芯周りに、底面視において時計回り方向で巻回する。
箔状正極板12等の巻回の長さは、セパレータ13の長さが箔状正極板12及び箔状負極板14の長さよりも長く、最外周にはセパレータ13が位置するように巻回している。
【0027】
上記のようにして組み上げた蓋体2側の組品を収納する缶体1は、例えば深絞り加工等によって、金属板(アルミニウム板)で構成される有底矩形筒状体とする。
この缶体1の開口面から、発電要素3等を組み付けた蓋体2側の組品を挿入し、缶体1の開放面側の端部と蓋体2の端部とを嵌合させる。この際、蓋体2の立ち上げ部2aの上端位置と缶体1の開放面の端縁とが横並びとなるように位置調整する。
このように缶体1に蓋体2を嵌入した状態で、蓋体2の立ち上げ部2aの上端と、缶体1の開放面側の端縁とを、全周に亘って溶接する。
缶体1と蓋体2とを溶接して、筐体BCの組み立てが完了すると、図示を省略する注液口から電解液を筐体BC内に注入し、初期充電(予備充電)やエージング等を行って、二次電池RBとして完成する。
【0028】
〔上記構成による二次電池RBの評価〕
次に、上記のようにして製造した二次電池RBが、発電要素3における箔状正極板12及び箔状負極板14の未塗工部12a,14aと集電体4,6との溶接部分における接触不良の発生率の観点で、どの程度有効であるかを検証した実験結果について説明する。
実験は、本発明を適用した二次電池と比較のために作製した電池とで、夫々電池の内部抵抗を測定し、測定した内部抵抗と標準の内部抵抗との差が設定値を超えているか否かを調べて比較した。
実験に使用した二次電池RBは、本発明を適用した二次電池RBとして、上記の製造工程によって、電池容量を25Ahとしたものを製作して使用した。尚、電池の寸法は、150mm(幅)×25mm(厚さ)×120mm(高さ)としている。
比較のために作製した電池は、本発明を適用した上記構成の二次電池RBから芯材11を除いた構成の電池であり、それ以外は、製造工程も含めて同一の構成とした。
比較用の電池をこの構成とすることで、芯材11の存在が、箔状正極板12等の巻回時における接触不良の発生をどの程度抑制できるかを評価できる。
本発明を適用した二次電池RBと比較のための二次電池とで、夫々100個のサンプルを作製して、各サンプルの内部抵抗を測定し、その測定値が、標準の内部抵抗の値である2mΩから1mΩ以上高くなっているもののサンプル数を調べた。
その結果、比較のために製作した二次電池では、電池の内部抵抗が標準の内部抵抗の値よりも1mΩ以上高くなっているものは、100個中15個であったのに対して、本発明を適用した二次電池RBでは、標準の内部抵抗の値よりも1mΩ以上高くなっているものは皆無であった。
【0029】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記実施の形態では、芯材11における一対の導電体部分である接合部4a,6aの構成として、金属板を曲げ加工して形成する場合を例示しているが、単純な短冊状の板材にて構成する等、具体的な形状は適宜に変更可能である。
(2)上記実施の形態では、芯材11を構成する一対の接合部4a,6aと絶縁板21とを蓋体2に組み付けてから芯材11に箔状正極板等を巻回する場合を例示しているが、集電体4,6の接合部4a,6aと絶縁板21とを組み付けて芯材11を構成した時点で、芯材11周りに箔状正極板等を巻回して発電要素3とし、その後に集電体4,6を蓋体2に組み付ける等しても良く、蓋体2側の組品の組み付け順序は適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 缶体
2 蓋体
3 発電要素
4,6 集電体
4a,6a 導電体部分
5,7 電極端子
11 芯材
BC 電池筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々活物質を塗布した長尺の箔状正極板及び箔状負極板を、セパレータを挟んだ状態で、芯材周りで巻回した状態の発電要素が備えられた電池であって、
前記芯材は、扁平面の法線方向視で端縁が互いに略平行となる一対の端部を有する扁平形状に形成され、
前記芯材における前記一対の端部の夫々に導電体部分が備えられ、
一対の前記導電体部分が、夫々、電池筐体の外方側に配置された電極端子と電気的に接続され、
前記導電体部分のうちの一方に、前記箔状正極板の長手方向端部に配置されている、活物質を塗布していない正極側の未塗工部が接合され、前記導電体部分のうちの他方に、前記箔状負極板の長手方向端部に配置されている、活物質を塗布していない負極側の未塗工部が接合され、
前記箔状正極板、前記箔状負極板及び前記セパレータが、一対の前記導電体部分間に架け渡される向きで、一対の前記導電体部分周りに巻回されている電池。
【請求項2】
前記発電要素と前記電極端子とを電気的に接続すると共に、前記発電要素を支持する集電体が、前記芯材における前記導電体部分と、金属材料にて一体形成されている請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記電池筐体は、扁平な略直方体形状に形成され、且つ、前記電池筐体の扁平面と直交する1側面を開放面とする有底矩形筒状に形成された缶体と、前記缶体の前記開放面側の端部に固定される略平板状の蓋体とによって構成され、
前記集電体は、正極側及び負極側の夫々において、それの一端側が、前記蓋体に固定され、他端側が、前記蓋体の平坦面の法線方向に延びて、前記芯材における前記導電体部分となるように構成されている請求項2記載の電池。
【請求項4】
夫々活物質を塗布した長尺の箔状正極板及び箔状負極板を、セパレータを挟んだ状態で、芯材周りで巻回した状態の発電要素が備えられた電池の製造方法であって、
扁平面の法線方向視で端縁が互いに略平行となる一対の端部を有する扁平形状に形成され、且つ、前記一対の端部の夫々に、電池筐体の外方側に配置された電極端子と電気的に接続される導電体部分が備えられた前記芯材において、
前記導電体部分のうちの一方に、前記箔状正極板の長手方向端部における活物質を塗布していない未塗工部を接合すると共に、前記導電体部分のうちの他方に、前記箔状負極板の長手方向端部における活物質を塗布していない未塗工部を接合し、
前記箔状正極板、前記箔状負極板及び前記セパレータを、一対の前記導電体部分間に架け渡される向きで、一対の前記導電体部分周りに巻回する電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−248351(P2012−248351A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117706(P2011−117706)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】