説明

電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムとそれを用いた電池の製造方法

【課題】電極/セパレータ間に十分な接着性を有する電池を製造するためにセパレータとして好適に用いることができる反応性ポリマーを担時させた多孔質フィルムとそのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いる電池の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有する第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれ多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第1及び第2の反応性ポリマーの層をこの順序で基材多孔質フィルムに担持させてなり、この際、第1の架橋性ポリマーには10〜50℃のガラス転移温度を有せしめ、第2の架橋性ポリマーには45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それ自体、架橋していると共に、それが有する反応性基によって更に架橋し得る第1及び第2の反応性ポリマーの層の積層体を接着剤層として基材多孔質フィルムに担持させてなる、電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムと、そのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、電極をセパレータに接着せしめた電池を製造する方法に関する。更に、本発明は、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等の小型の携帯電子機器のための電源として、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が広く用いられている。このようなリチウムイオン二次電池は、シート状の正、負電極と、例えば、ポリオレフィン樹脂多孔質フィルムとを積層し、又は捲回して、例えば、金属缶からなる電池容器に仕込んだ後、この電池容器に電解液を注入し、密封、封口するという工程を経て製造される。
【0003】
しかし、近年、上記のような小型の携帯電子機器の一層の小型化、軽量化への要望が非常に強く、そこで、リチウムイオン二次電池においても、更なる薄型化と軽量化が求められており、従来の金属缶容器に代えて、ラミネートフィルム型の電池容器も用いられるようになっている。
【0004】
このようなラミネートフィルム型の電池容器によれば、従来の金属缶容器に比べて、セパレータと電極の電気的接続を維持するための面圧を電極面に十分に加えることができないので、電池の充放電時の電極活性物質の膨張収縮によって、電極間距離が経時により部分的に大きくなり、電池の内部抵抗が増大して、電池特性が低下するほか、電池内部で抵抗のばらつきが生じることによっても、電池特性が低下するという間題が生じる。
【0005】
また、大面積のシート状電池を製造する場合には、電極間距離を一定に保つことができず、電池内部の抵抗のばらつきによって、電池特性が十分に得られないという問題もあった。
【0006】
そこで、従来、このような問題を解決するために、電解液相、電解液を含有する高分子ゲル層及び高分子固相との混合相からなる接着性樹脂層によって電極とセパレータを接合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とするバインダー樹脂溶液をセパレータに塗布した後、これに電極を重ね合わせ、乾燥して、電極積層体を形成し、この電極積層体を電池容器に仕込んだ後、電池容器に電解液を注入して、セパレータに電極を接着した電池を得ることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
更に、電解液を含浸させたセパレータと正、負の電極を多孔性の接着性樹脂層で接合して、密着させると共に、上記接着性樹脂層中の貫通孔に電解液を保持させて、セパレータに電極を接着した電池とすることも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかし、このような方法によれば、セパレータと電極との間に十分な接着力を得るためには、接着性樹脂層の厚さを厚くしなければならず、また、接着性樹脂に対する電解液量を多くできないので、得られる電池においては、内部抵抗が高くなり、サイクル特性や高レート放電特性が十分に得られない問題があった。
【0009】
更に、上述したような方法においては、例えば、接着剤樹脂をセパレータに熱転写して、セパレータに接着剤樹脂層を設ける場合に、接着剤樹脂の熱転写性がよくなく、セパレータによく付着しない問題や、また、接着剤樹脂層を設けたセパレータをロール状に巻き取った際に、ブロッキングが生じて、巻き戻しができなくなる問題等があった。
【特許文献1】特開平10−177865号公報
【特許文献2】特開平10−189054号公報
【特許文献3】特開平10−172606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、セパレータに電極を接着してなる電池の製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を接着剤層として基材多孔質フィルムに有せしめてなり、電池の製造において、セパレータとして好適に用いることができる反応性ポリマー担持多孔質フィルムに関し、更には、そのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いる電池の製造方法とそのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法に関する。
【0011】
詳しくは、本発明は、第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を接着剤層として基材多孔質フィルムに担持させてなり、電極/セパレータ間に十分な接着性を有し、内部抵抗が低く、高レート特性にすぐれた電池を製造するために好適に用いることができる、反応性ポリマー担持多孔質フィルムと、そのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いる電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
更に、本発明は、上述したような反応性ポリマーの層からなる積層体を接着剤層として基材多孔質フィルムに担持させてなり、重ね合わせても、また、長尺物として、これをロール状に巻いても、相互にブロッキングせず、また、そのようなロールから巻き戻し不良を起こさない、反応性ポリマー担持多孔質フィルムとそのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムの有利な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第1の反応性ポリマーの層と、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第2の反応性ポリマーの層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめてなることを特徴とする電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムが提供される。
【0014】
本発明において、第1の反応性ポリマーの層と第2の反応性ポリマーの層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめるとは、基材多孔質フィルムの上に第1の反応性ポリマーの層を有せしめ、この第1の反応性ポリマーの層に上に第2の反応性ポリマーの層を有せしめること、即ち、基材多孔質フィルムと第2の反応性ポリマーの層との間に第1の反応性ポリマーの層を基材多孔質フィルムに対面させて有せしめることをいう。
【0015】
また、本発明によれば、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を得、この電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を上記電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、カチオン重合させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、多孔質フィルムと電極を接着することを特徴とする電池の製造方法が提供される。
【0016】
このような電池の製造方法において、上記電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体は、好ましい態様によれば、反応性ポリマー担持多孔質フィルムに温度70〜100℃にて電極を熱圧着することによって得ることができる。
【0017】
更に、本発明によれば、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーと多官能イソシアネートからなる第1の架橋性ポリマー層と、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーと多官能イソシアネートからなる第2の架橋性ポリマー層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめ、上記第1及び第2の架橋性ポリマーを上記第2の反応性基によってそれぞれ多官能イソシアネートと反応させて架橋させ、かくして、基材多孔質フィルム上にそれぞれ第1及び第2の反応性ポリマーの層を形成させることを特徹とする前記反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法が提供される。
【0018】
本発明において、第1の架橋性ポリマー層と第2の架橋性ポリマー層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめるとは、基材多孔質フィルムの上に第1の架橋性ポリマー層を有せしめ、この第1の架橋性ポリマー層に上に第2の架橋性ポリマー層を有せしめること、即ち、基材多孔質フィルムと第2の架橋性ポリマーの層との間に第1の架橋性ポリマーの層を基材多孔質フィルムに対面させて有せしめることをいう。
【0019】
特に、本発明によれば、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法の好ましい態様として、第1の架橋性ポリマー層を、好ましくは、60〜100℃の温度に加熱して、基材多孔質フィルム上に熱転写し、次いで、第2の架橋性ポリマー層を上記第1の架橋性ポリマー層の上に熱転写して、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを製造する方法や、また、第2及び第1の架橋性ポリマー層を積層してなる積層体を形成し、上記第1の架橋性ポリマー層を基材多孔質フィルムに対面させて、上記積層体を、好ましくは、60〜100℃の温度に加熱し、基材多孔質フィルム上に熱転写して、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを製造する方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基と低いガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第1の反応性ポリマーの層と、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基と上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第2の反応性ポリマーの層をこの順序で基材多孔質フィルムに担持させてなるものである。
【0021】
特に、本発明によるこのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいては、反応性ポリマーを担持する基材多孔質フィルムとして、130〜132℃程度の融点を有し、所謂シャットダウン機能を有する多孔質ポリエチレン樹脂フィルムが好ましく用いられ、これを製造するに際しては、このような基材多孔質フィルム上に、例えば、2段熱転写法、即ち、第1の架橋性ポリマーと多官能イソシアネートからなる第1の架橋性ポリマー層を熱転写し、次いで、第2の架橋性ポリマーと多官能イソシアネートからなる第2の架橋性ポリマー層を上記第1の架橋性ポリマー層の上に熱転写する方法によって、基材多孔質フィルム上に第1及び第2の架橋性ポリマー層からなる積層体を成形し、次いで、第1及び第2の架橋性ポリマーをそれらがそれぞれ有する前記第2の反応性基によってそれぞれ多官能イソシアネートと反応させて架橋させ、かくして、基材多孔質フィルム上に第1及び第2の反応性ポリマーの層を形成させることによって得ることができる。
【0022】
ここに、本発明によれば、第1の架橋性ポリマーは、10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有し、第2の架橋性ポリマーは、45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する。
【0023】
従って、このような本発明による反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、その製造において、例えば、上記2段熱転写法に従って、ガラス転移温度の低い第1の架橋性ポリマー層を先ず、例えば、60〜100℃の温度にて基材多孔質フィルム上に熱転写することができ、ここに、このような温度での熱転写によれば、基材多孔質フィルムにその熱収縮を引き起こすような熱的に有害な影響を与えることがなく、次いで、ガラス転移温度の高い第2の架橋性ポリマー層を上記第1の架橋性ポリマー層の上に熱転写することによって、第1及び第2の架橋性ポリマー層からなる積層体を基材多孔質フィルム上に容易に確実に形成することができる。
【0024】
しかも、このようにして形成された第1及び第2の架橋性ポリマー層の積層体をそれぞれ第1及び第2の反応性ポリマーの層とし、これを接着剤層として、電池の製造に際して、電極をこの接着剤層に、例えば、70〜100℃の温度にて容易に熱圧着し、接着することができる。
【0025】
第2及び第1の架橋性ポリマー層を積層してなる積層体を形成し、上記第1の架橋性ポリマー層を基材多孔質フィルムに対面させて、この積層体を基材多孔質フィルム上に熱転写する1段熱転写法による場合も、上記2段熱転写法と同様の効果を達成することができる。
【0026】
このように、本発明によれば、反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体とし、これを電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を上記電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、反応性ポリマーの有するオキセタニル基及び/又はエポキシ基をカチオン重合させ、反応性ポリマーを更に架橋させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させることによって、多孔質フィルムと電極が強固に接着した電極/多孔質フィルム接合体を有する電池を得ることができる。
【0027】
ここに、本発明の反応性ポリマー担持多孔質フィルムによれば、反応性ポリマーがその第2の反応性基によって予め、架橋されているので、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を電解液中に浸漬した際に、反応性ポリマーが電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体から電解液中に溶出し、拡散することが抑制されると共に、反応性ポリマーが膨潤し、その結果、少量の反応性ポリマーを用いることによって、電極を多孔質フィルム(セパレータ)に接着することができ、更に、多孔質フィルムがイオン透過性にすぐれているので、セパレータとしてよく機能する。また、反応性ポリマーが電解液に過度に溶出、拡散して、電解液に有害な影響を与えることもない。
【0028】
かくして、本発明によれば、電極/セパレータ間に強固な接着を有する電極/セパレータ接合体を電池の製造過程においてその場で形成しつつ、内部抵抗が低く、高レート特性にすぐれた電池を容易に得ることができる。
【0029】
更に、本発明による反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、接着剤層の表面層がガラス転移温度の高い第2の架橋性ポリマーからの反応性ポリマーの層からなるので、これを重ね合わせても、相互にブロッキングせず、また、長尺物として製造した場合に、リリースフィルム(剥離性フィルム)をその間に介在させることなく、ロール状に巻き取っても、ブロッキングを起こすことがなく、かくして、巻き戻しができなくなる事態を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基と10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第1の反応性ポリマーの層と、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基と45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第2の反応性ポリマーの層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめてなるものであり、好ましくは、第1の架橋性ポリマーは10〜40℃の範囲のガラス転移温度を有し、第2の架橋性ポリマーは45〜70℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0031】
本発明において、基材多孔質フィルムは、膜厚3〜50μmの範囲のものが好ましく用いられる。多孔質フィルムの厚みが3μmよりも薄いときは、強度が不十分であって、電池においてセパレータとして用いるとき、電極が内部短絡を起こすおそれがある。他方、多孔質フィルムの厚みが50μmを越えるときは、そのような多孔質フィルムをセパレータとする電池は、電極間距離が大きすぎて、電池の内部抵抗が過大となる。
【0032】
また、基材多孔質フィルムは、平均孔径0.01〜5μmの範囲の細孔を有し、空孔率が20〜95%の範囲のものが好ましく用いられ、空孔率が30〜90%の範囲のものがより好ましく用いられ、空孔率が35〜85%の範囲のものが最も好ましく用いられる。基材多孔質フィルムの空孔率が余りに低いときは、その多孔質フィルムを電池のセパレータとして用いた場合に、イオン伝導経路が少なくなり、十分な電池特性を得ることかできない。他方、空孔率が余りに高いときは、電池のセパレータとして用いた場合に、強度が不十分であり、所要の強度を得るためには、基材多孔質フィルムとして厚いものを用いざるを得ず、そうすれば、電池の内部抵抗が高くなるので好ましくない。
【0033】
更に、基材多孔質フィルムは、1500秒/100cc以下、好ましくは、1000秒/100cc以下の通気度を有するものが好ましく用いられる。基材多孔質フィルムの通気度が高すぎるときは、その多孔質フィルムを電池のセパレータとして用いた場合、イオン伝導性が低く、十分な電池特性を得ることができない。また、基材多孔質フィルムの強度は、突刺し強度が1N以上であることが好ましい。基材多孔質フィルムの突刺し強度が1Nよりも小さいときは、そのような多孔質フィルムを電池のセパレータとして用いた場合、電極間に面圧がかかったときにフィルムが破断し、内部短絡を引き起こすおそれがあるからである。
【0034】
本発明によれば、基材多孔質フィルムは、特に、上述したような特性を有するポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムが好適であり、なかでも、加熱されたとき、樹脂が溶融して、細孔が閉塞する性質を有し、その結果、電池に所謂シャットダウン機能を有せしめることができるところから、ポリエチレン樹脂フィルム、例えば、融点130〜132℃程度の多孔質ポリエチレン樹脂フィルムが最も好ましく用いられる。但し、ポリエチレン樹脂には、エチレンのホモポリマーのみならず、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフインとエチレンとのコポリマーを含むものとする。
【0035】
本発明において、第1及び第2の架橋性ポリマーはいずれも、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基と共に、イソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有するポリマーをいう。上記オキセタニル基は、好ましくは、3−オキセタニル基であるので、以下においては、架橋性ポリマーや反応性ポリマーがオキセタニル基を有する場合は、3−オキセタニル基を有するものを代表例として説明する。
【0036】
このような第1及び第2の架橋性ポリマーはいずれも、好ましくは、3−オキセタニル基を有するラジカル重合性モノマーとエポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとから選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性モノマーとイソシアネート基に対して反応し得る反応性基を有するラジカル重合性モノマーとその他のラジカル重合性モノマーとのラジカル共重合体である。
【0037】
本発明による反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、上述したような基材多孔質フィルム上に第1の反応性ポリマーの層と第2の反応性ポリマーの層とをこの順序にて有し、上述したように、第1の反応性ポリマーの層は、10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなるポリマーの層であり、第2の反応性ポリマーの層は、45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなるポリマーの層であり、好ましくは、第1の架橋性ポリマーは10〜40℃の範囲のガラス転移温度を有し、第2の架橋性ポリマーは45〜70℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0038】
オキセタニル基やエポキシ基がカチオン重合することは、既に知られている。そこで、後述するように、このような反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/多孔質フィルム積層体とし、これをカチオン重合触媒を含む電解液、好ましくは、カチオン重合触媒を兼ねる電解質を含む電解液中に浸漬して、前記多孔質フィルム上の反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出、拡散させて、反応性ポリマーをそれが有するオキセタニル基やエポキシ基、即ち、第1の反応性基のカチオン重合によって更に架橋させ、多孔質フィルムと電極との界面の近傍で電解液をゲル化させることによって、電極と多孔質フィルムを接着させることができ、かくして、電極/多孔質フィルム接合体を備えた電池を得ることができる。
【0039】
本発明によれば、分子中に3−オキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基を有する架橋性ポリマーを得る際に、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーは、その合計量が全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲となるように用いられる。
【0040】
従って、反応性基として3−オキセタニル基のみを含有する架橋性ポリマーを得る場合であれば、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーは、全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲で用いられる。同様に、反応性基としてエポキシ基のみを含有する架橋性ポリマーを得る場合であれば、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーは、全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲で用いられる。
【0041】
また、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーを併用し、これらをその他のラジカル重合性モノマーと共重合させて、反応性基として3−オキセタニル基とエポキシ基とを共に有する架橋性ポリマーを得る場合にも、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーの合計量は全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲であり、更に、この場合には、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーのうち、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーは90重量%以下であるように用いられる。
【0042】
分子中に3−オキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する架橋性ポリマーを得る際に、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーの合計量が全モノマー量の5重量%よりも少ないときは、このような架橋性ポリマーから得られる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなる反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、上述したようにして、電池を製造すれば、電解液のゲル化に要する反応性ポリマー量の増大を招くので、得られる電池の性能が低下する。他方、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーの合計量が全モノマー量の50重量%よりも多いときは、上述したようにして、電池を製造する際に、電解液から形成されるゲルが電解液を十分に保持することができず、かくして、得られる電池において、内部抵抗が高くなり、サイクル特性や高レート放電特性が十分に得られなくなる。
【0043】
本発明によれば、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとして、好ましくは、一般式(I)
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2 は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される3−オキセタニル基含有(メタ)アクリレートが用いられる。
【0046】
このような3−オキセタニル基含有(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、3−(オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ヘキシル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いられ、又は2種以上が併用される。
【0047】
また、本発明によれば、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーとして、好ましくは、一般式(II)
【0048】
【化2】

【0049】
(式中、R3 は水素原子又はメチル基を示し、R4 は式(1)
【0050】
【化3】

【0051】
又は式(2)
【0052】
【化4】

【0053】
で表されるエポキシ基含有基を示す。)
で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートが用いられる。
【0054】
このようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いられ、又は2種以上が併用される。
【0055】
本発明に従って、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーと共重合させる前記その他のラジカル重合性モノマーは、好ましくは、一般式(III)
【0056】
【化5】

【0057】
(式中、R5 は水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素原子数2又は3のオキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基)を示し、R6 は炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数1〜6のフッ化アルキル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
で表される(メタ)アクリレートと一般式(IV)
【0058】
【化6】

【0059】
(式中、R7 はメチル基又はエチル基を示し、R8 は水素原子又はメチル基を示す。)
で表されるビニルエステルから選ばれる少なくとも1種である。
【0060】
上記一般式(III) で表される(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、メチル
(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これら以外にも、例えば、
【0061】
【化7】

【0062】
等を挙げることができる。式中、nは0〜3の整数である。
【0063】
また、上記一般式(IV)で表されるビニルエステルの具体例として、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができる。
【0064】
また、イソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基としては、イソシアネート基と反応し得る基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ウレタン基、尿素基等を挙げることができるが、なかでも、反応速度や導入の容易さ等の点からヒドロキシル基が好ましい。このようなヒドロキシル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、一般式(V)
【0065】
【化8】

【0066】
(式中、R9 は水素原子又はメチル基を示し、R10は炭素原子数2〜8のアルキレン基又は−CH2CH2−O−CO−CH2CH2CH2−を示す。)
で表されるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0067】
このようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0068】
また、ヒドロキシル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、一般式(VI)
【0069】
【化9】

【0070】
(式中、R11は水素原子又はメチル基を示し、R12エチレン基又はプロピレン基を示し、nは1〜6の整数を示す。)
で表されるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートも好ましく用いられる。
【0071】
このようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0072】
更に、上記以外にも、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/γ−ブチロラクトン開環付加物を挙げることができる。
【0073】
イソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有するラジカル重合性モノマーは、全モノマー量中、0.05〜10重量%の範囲で用いられ、好ましくは、0.1〜5重量%の範囲で用いられる。イソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有するラジカル重合性モノマーが全モノマー量中、10重量%を越えるときは、得られる架橋性ポリマーに多官能性イソシアネートを反応させて、架橋性ポリマーを架橋させたときに、架橋密度が大きく、生成する反応性ポリマーが緻密となって、電解液中で十分に膨潤し難くなり、結局、特性にすぐれた電池を得ることができない。反対に、イソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有するラジカル重合性モノマーが全モノマー量中、0.05重量%よりも少ないときは、架橋性ポリマーを架橋させてなる反応性ポリマーの電解液中への溶出、拡散が十分に抑制されず、多孔質フィルムと電極との間に十分な接着を得ることができず、同様に、特性にすぐれた電池を得ることができない。
【0074】
分子中に3−オキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基と共にイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有する架橋性ポリマーは、第1及び第2の架橋性ポリマーのいずれについても、好ましくは、3−オキセタニル基を有するラジカル重合性モノマーとエポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとから選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性モノマーとイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有するラジカル重合性モノマーとその他のラジカル重合性モノマーとをラジカル重合開始剤を用いてラジカル共重合させることによって、ラジカル共重合体として得ることができる。このラジカル共重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等、いずれの重合法によってもよいが、重合の容易さ、分子量の調整、後処理等の点から、溶液重合や懸濁重合によるのが好ましい。
【0075】
上記ラジカル重合開始剤は、特に、限定されるものではないが、例えば、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルN,N’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が用いられる。また、このラジカル共重合において、必要に応じて、メルカプタン等のような分子量調整剤を用いることができる。
【0076】
本発明において、架橋性ポリマーは、その重量平均分子量が10000以上であることが好ましい。架橋性ポリマーの重量平均分子量が10000よりも小さいときは、電解液をゲル化するために多量の架橋性ポリマーを必要とするので、得られる電池の特性を低下させる。他方、架橋性ポリマーの重量平均分子量の上限は、特に制限されるものではないが、電解液をゲルとして保持し得るように、300万程度であり、好ましくは、250万程度である。特に、本発明によれば、架橋性ポリマーは、重量平均分子量が10万から200万の範囲にあるのが好ましい。
【0077】
上述したような分子中に3−オキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する架橋性ポリマーは、特開2001−176555号公報や特開2002−110245号公報に記載されているように、既に、知られているものである。
【0078】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、上述したような第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれ多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第1及び第2の反応性ポリマーの層の積層体として、基材多孔質フィルムに有せしめたものである。
【0079】
本発明において、架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって架橋させるための多官能イソシアネートは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族、脂環族の多官能イソシアネート類等や、これらイソシアネートの多量化イソシアネート類が用いられるが、これらジイソシアネートにトリメチロールプロパンのようなポリオールを付加させてなるイソシアネートアダクト体も好ましく用いられる。
【0080】
本発明において、多孔質フィルムの第1及び第2の架橋性ポリマーの担持量は、それぞれ0.3〜1.7g/m2 の範囲であり、同様に、多孔質フィルムの第1及び第2の反応性ポリマーの担持量も、それぞれ0.3〜1.7g/m2 の範囲である。多孔質フィルムの第1又は第2の架橋性ポリマーの担持量や、また、多孔質フィルムの第1又は第2の反応性ポリマーの担持量が少なすぎるときは、得られる電池において、セパレータと電極との間に十分な接着を得ることができず、他方、多すぎるときは、得られる電池の特性に有害な影響が現われる。
【0081】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、上述したような第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれ上述したような多官能イソシアネートと反応させ、架橋させて、それぞれ第1及び第2の反応性ポリマーとし、これらの第1及び第2の反応性ポリマーをこの順序にて基材多孔質フィルムに担持させたものである。
【0082】
このように、第1及び第2の反応性ポリマーの層をこの順序にて基材多孔質フィルムに担持させて、第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を基材多孔質フィルム上に有せしめるには、特に、限定されるものではないが、例えば、架橋性ポリマーをアセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の適宜の溶剤に多官能イソシアネートと共に溶解させ、この溶液を基材多孔質フィルムにキャスティング、グラビア塗工、スプレー塗布等、適宜の手段にて塗布、含浸させた後、乾燥して、用いた溶剤を除去し、次いで、このようにして、架橋性ポリマーと多官能イソシアネートとを含むポリマー層を担持させた多孔質フィルムを適宜の温度に加熱して、上記架橋性ポリマーを上記多官能イソシアネートと反応させて、架橋性ポリマーを架橋させればよく、このようにして、第1及び第2の反応性ポリマーを基材多孔質フィルムにこの順序にて担持させることによって、本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得る。
【0083】
しかし、特に、本発明によれば、基材多孔質フィルム上に第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を形成するには、第1及び第2の架橋性ポリマー層を剥離紙、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の剥離性フィルム上に一旦、形成した後、これを基材多孔質フィルムに熱転写して、基材多孔質フィルム上に第1及び第2の架橋性ポリマー層からなる積層体を形成し、この後、この積層体を適宜の温度に加熱して、上記第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれそれが有する第2の反応性基を多官能イソシアネートと反応させて、それぞれ第1及び第2の反応性ポリマー層とするのが好ましい。
【0084】
このような熱転写によって、第1及び第2の架橋性ポリマー層を基材多孔質フィルム上に形成する場合、剥離性フィルム上にそれぞれ第1及び第2の架橋性ポリマー層を別々に形成し、これらをこの順序にて基材多孔質フィルムに熱転写する2段熱転写法、剥離性フィルム上に第2及び第1の架橋性ポリマー層をこの順序にて形成して、第2及び第1の架橋性ポリマー層からなる積層体を形成し、この積層体をその第1の架橋性ポリマー層が基材多孔質フィルムに対面するように基材多孔質フィルムに熱転写する1段熱転写法のいずれによってもよい。
【0085】
上記2段熱転写法によれば、第1の架橋性ポリマーを上述したような適宜の溶剤に多官能イソシアネートと共に溶解させ、この溶液を剥離性フィルム上に上述したように適宜の手段にて塗布した後、乾燥して、用いた溶剤を除去し、第1の架橋性ポリマー層を形成する。同様にして、第2の架橋性ポリマー層も他の剥離性フィルム上に形成する。次いで、上記第1及び第2の架橋性ポリマー層をこの順序にて基材多孔質フィルムに熱転写すれば、基材多孔質フィルム上に熱転写の際の熱によって第1及び第2の架橋性ポリマー層が相互に接着してなる積層体を形成することができる。このような第1及び第2の架橋性ポリマーの層はいずれも、多官能イソシアネートを有している。そこで、このような架橋性ポリマーの積層体を適宜の温度に加熱して、それぞれの架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって上記多官能イソシアネートと反応させ、架橋させれば、第1及び第2の架橋性ポリマー層はそれぞれ第1及び第2の反応性ポリマーの層を形成し、かくして、多孔質フィルム上に第1及び第2の反応性ポリマーの層をこの順序にて有する本発明による反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得ることができる。
【0086】
上記1段熱転写法によれば、先ず、第2の架橋性ポリマーを上述したような適宜の溶剤に多官能イソシアネートと共に溶解させ、この溶液を剥離性フィルム上に上述したように適宜の手段にて塗布した後、乾燥して、用いた溶剤を除去し、第2の架橋性ポリマー層を形成する。次いで、この第2の架橋性ポリマー層上に同様にして第1の架橋性ポリマー層を形成し、かくして、第2及び第1の架橋性ポリマーの積層体を形成する。次いで、この積層体を第1の架橋性ポリマー層が基材多孔質フィルムに対面するように基材多孔質フィルムに熱転写すれば、基材多孔質フィルム上に熱転写の際の熱によって第1及び第2の架橋性ポリマー層が相互に接着してなる第1及び第2の架橋性ポリマー層からなる積層体を形成することができる。このような第1及び第2の架橋性ポリマー層はいずれも、多官能イソシアネートを有している。そこで、このような架橋性ポリマーの積層体を適宜の温度に加熱して、それぞれの架橋性ポリマーをその第2の反応性基によって上記多官能イソシアネートと反応させ、架橋させれば、第1及び第2の架橋性ポリマー層はそれぞれ第1及び第2の反応性ポリマーの層を形成し、かくして、多孔質フィルム上に第1及び第2の反応性ポリマーの層をこの順序にて有する本発明による反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得ることができる。
【0087】
このような熱転写法による反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造において、本発明によれば、前述したように、特に、基材多孔質フィルムとして、多孔質ポリエチレン樹脂フィルムが好ましく用いられる。このような多孔質ポリエチレン樹脂フィルムは、通常、融点が130〜132℃程度であると共に、約105℃以上の温度では熱収縮するので、架橋性ポリマー層をこのような基材多孔質フィルムに熱転写する際の加熱温度は、通常、60〜100℃の範囲が好適である。従って、本発明においては、第1の架橋性ポリマー層を加熱温度100℃以下にて基材多孔質フィルムに熱転写することができるように、第1の架橋性ポリマーは、そのガラス転移温度が50℃以下であることが好ましい。しかし、基材多孔質フィルム上で第1の架橋性ポリマーが層としての形状を保持することができるように、そのガラス転移温度は、10℃以上であることが好ましい。
【0088】
本発明によれば、例えば、前記2段転写法においては、第1の架橋性ポリマー層の上に第2の架橋性ポリマー層を熱転写して、基材多孔質フィルム上に第1の架橋性ポリマー層と第2の架橋性ポリマー層をこの順序で積層してなる積層体を有せしめる。従って、第2の架橋性ポリマー層を第1の架橋性ポリマー層の上に熱転写する際の加熱温度は、基材多孔質フィルムに熱的に有害な影響を殆ど与えないが、しかし、第2の架橋性ポリマー層から形成される第2の反応性ポリマー層を表面層として有する反応性ポリマー担持多孔質フィルムに、例えば、70〜100℃の温度にて、電極を容易に熱圧着することができるように、第2の架橋性ポリマーは、そのガラス転移温度が80℃以下であることが好ましい。また、第2の架橋性ポリマーのガラス転移温度が80℃を超えるときは、得られる第2の反応性ポリマー層が割れやすくなり、延いては、得られる電池に有害な影響を及ぼすおそれがある。
【0089】
他方、得られる反応性ポリマー担持多孔質フィルムが表面層を形成する第2の反応性ポリマー層相互の間でブロッキングを起こさないように、或いは得られる反応性ポリマー担持多孔質フィルムが表面層の第2の反応性ポリマー層と他の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの背面(即ち、多孔質フィルム)との間でブロッキングを起こさないように、第2の架橋性ポリマーは、そのガラス転移温度が45℃以上であることが好ましい。
【0090】
また、本発明によれば、このようにして得られる反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、工業的な製造の観点からは、最終的には、長尺物として製造し、リリースフィルムなしにロール状に巻かれていることが好ましい。ここで、反応性ポリマーが第1の架橋性ポリマーからなるもののみであるときは、得られる反応性ポリマー担持多孔質フィルムをリリースフィルムなしにロール状に巻き取ったとき、多孔質フィルム上の反応性ポリマーの層が相互にブロッキングを起こして、巻き戻しができなくなる事態が生じる。
【0091】
本発明によれば、このようにして、第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれ架橋させてなる第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体は、1〜90%の範囲の不溶分率を有し、特に、3〜50%の範囲の不溶分率を有することが望ましい。ここに、上記不溶分率とは、第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を担持させた多孔質フィルムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(容量比1/1)混合溶媒に室温で攪拌下に2時間浸漬した後、更に、エチルメチルカーボネートに浸漬したときに多孔質フィルム上に残存する反応性ポリマーの割合をいう。
【0092】
このように、架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させて、1〜90%の範囲の不溶分率を有する反応性ポリマーを得るには、限定されるものではないが、通常、架橋性ポリマーの有する第2の反応性基1モル部に対して、多官能イソシアネートの有するイソシアネート基が0.01〜5モル部、好ましくは、0.05〜3モル部となるように用いて、前述したようにして、架橋性ポリマーの架橋反応を行わせることによって得ることができる。
【0093】
反応性ポリマーの不溶分率が5%よりも少ないときは、そのような反応性ポリマーを担持させた多孔質フィルムに電極を庄着して、電極/多孔質フィルム積層体とし、これを電解液に浸漬したとき、反応性ポリマーの多くが電解液中に溶出、拡散して、反応性ポリマーを更にカチオン重合させ、架橋させても、電極と多孔質フィルムとの間に有効な接着を得ることができない。他方、反応性ポリマーの不溶分率が90%よりも多いときは、電極/多孔質フィルム積層体とし、これを電解液に浸漬したとき、反応性ポリマーの膨潤性が低く、得られる電極/多孔質フィルム接合体を有する電池が高い内部抵抗を有することとなり、電池特性に好ましくない。特に、本発明によれば、反応性ポリマーの不溶分率は、好ましくは、3〜50%の範囲であり、最も好ましくは、5〜40%の範囲である。
【0094】
このように、本発明に従って、架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを反応させ、架橋させて、上記不溶分率を有せしめた反応性ポリマーは、電解液に浸漬されたときにも、電解液中への溶出、拡散が抑制される。従って、このような反応性ポリマーを多孔質フィルムに担持させ、これに電極を積層して、電極/多孔質フィルム積層体とし、これを電池容器内に仕込んだ後、この電池容器にカチオン重合触媒を含む電解質を含む電解液を注入すれば、多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記電極/多孔質フィルム積層体における反応性ポリマーの一部のみが電解液中で膨潤し、又は電解液中に溶出して、前述した3−オキセタニル基及び/又はエポキシ基によって、反応性ポリマーは、電解液中のカチオン重合触媒、好ましくは、カチオン重合触媒を兼ねる電解質によってカチオン重合し、更に、架橋し、電解液をゲル化して、電極を多孔質フィルムに密着性よく強固に接着し、かくして、電極/多孔質フィルム(即ち、得られる電池におけるセパレータ)接合体を得ることができる。
【0095】
即ち、本発明によれば、反応性ポリマーは、上記範囲の不溶分率を有し、従って、電解液中に浸漬されても、電解液中への溶出、拡散が防止され、又は低減されて、電極と多孔質フィルムとの接着に有効に用いられるので、比較的少量の反応性ポリマーの使用によって、電極と多孔質フィルムとを安定して、しかも、より強固に接着することができる。
【0096】
このように、本発明による反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、電池の製造に好適に用いることができる。以下に、このような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いる本発明による電池の製造方法について説明する。
【0097】
先ず、電極を上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムに熱圧着して、積層し、又は捲回して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を得る。上記熱圧着の際の温度は、第2の反応性ポリマーのための第2の架橋性ポリマーのガラス転移温度にもよるが、通常、70〜100℃の範囲である。次いで、この積層体を金属缶やラミネートフィルム等からなる電池容器内に仕込み、端子の溶接等が必要な場合にはこれを行った後、この電池容器内にカチオン重合触媒を溶解させた電解液を所定量注入し、電池容器を密封、封口して、反応性ポリマー担持多孔質フィルムに担持させた反応性ポリマーを少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にてその少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出、拡散させて、カチオン重合によって架橋させ、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、電極を多孔質フィルムと接着し、かくして、多孔質フィルムをセパレータとし、このセパレータに両電極が強固に接着された電池を得ることができる。
【0098】
本発明においては、反応性ポリマーは、その反応性基のカチオン重合による架橋によって、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて電解液をゲル化させて、電極と多孔質フィルムとを接着するように機能する。
【0099】
本発明によれば、このようにして、正極、負極のいずれについても、セパレータと電極との間に0.10N/cm以上の接着力を得ることができる。
【0100】
本発明において、反応性ポリマーは、その構造や多孔質フィルムヘの担持量、カチオン重合触媒の種類や量にもよるが、常温においてもカチオン重合させ、架橋させることもできるが、しかし、加熱することによって、カチオン重合を促進することができる。この場合、電池を構成する材料の耐熱性や生産性との兼ね合いにもよるが、通常、40〜100℃程度の温度で0.5〜24時間程度加熱すればよい。また、電極を多孔質フィルムに接着させるに足る量のポリマーを膨潤させ、又は溶出、拡散させるために、電池容器内に電解液を注入した後、常温で数時間程度、放置してもよい。
【0101】
本発明において、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体は、反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極が積層されておればよく、従って、電池の構造や形態に応じて電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体として、例えば、負極/多孔質フィルム/正極、負極/多孔質フィルム/正極/多孔質フィルム等が用いられる。
【0102】
上記電解液は、電解質塩を適宜の溶媒に溶解してなる溶液である。上記電解質塩としては、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等アルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、第三級又は第四級アンモニウム塩等をカチオン成分とし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸等の無機酸、カルボン酸、有機スルホン酸又はフッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とする塩を用いることができる。これらのなかでは、特に、アルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩が好ましく用いられる。
【0103】
このようなアルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩の具体例としては、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム等のテトラフルオロホウ酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のヘキサフルオロリン酸アルカリ金属、トリフルオロ酢酸リチウム等のトリフルオロ酢酸アルカリ金属、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のトリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属を挙げることができる。
【0104】
特に、本発明に従って、リチウムイオン二次電池を得る場合には、電解質塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム等が好適に用いられる。
【0105】
更に、本発明において用いる上記電解質塩のための溶媒としては、上記電解質塩を溶解するものであればどのようなものでも用いることができるが、非水系の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類や、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類や、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状エステル類を単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0106】
また、上記電解質塩は、用いる溶媒の種類や量に応じて適宜に決定されるが、通常、得られるゲル電解質において、1〜50重量%の濃度となる量が用いられる。
【0107】
本発明において、カチオン重合触媒としては、オニウム塩が好ましく用いられる。そのようなオニウム塩として、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、ヨードニウム塩等のカチオン成分と、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、過塩素酸塩等のアニオン成分とからなるオニウム塩を挙げることができる。
【0108】
しかし、本発明によれば、上述した電解質塩のなかでも、特に、テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムは、それ自体、カチオン重合触媒としても機能するので、電解質塩を兼ねるものとして好ましく用いられる。この場合、テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムは、いずれかを単独で用いてもよく、また、両方を併用してもよい。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、基材多孔質フィルムの物性と電池特性は以下のようにして評価した。
【0110】
(多孔質フィルムの厚み)
1/10000mmシックネスゲージによる測定と多孔質フィルムの断面の10000倍走査型電子頭微鏡写真に基づいて求めた。
【0111】
(多孔質フィルムの空孔率)
多孔質フィルムの単位面積S(cm2)当たりの重量W(g)、平均厚みt(cm)及
び多孔質フィルムを構成する樹脂の密度d(g/cm3)から下式にて算出した。
空孔率(%)=(1−(100W/S/t/d))×100
【0112】
(多孔質フィルムの通気度)
JIS P 8117に準拠して求めた。
【0113】
(多孔質フィルムの突き刺し強度)
カトーテック(株)製圧縮試験機KES−G5を用いて突き刺し試験を行った。測定により得られた荷重変位曲線から最大荷重を読みとり、突き刺し強度とした。針は直径1.0mm、先端の曲率半径0.5mmのものを用いて、2cm/秒の速度で行った。
【0114】
(反応性ポリマーの不溶分率)
既知の量Aの反応性ポリマーを担持させた反応性ポリマー担持多孔質フィルムを秤量して、その重量Bを測定した。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1容量比)の混合溶媒に室温で2時間浸漬した後、エチルメチルカーボネートに浸漬して、洗浄し、風乾した。この後、このように処理した反応性ポリマー担持多孔質フィルムを秤量して、その重量Cを測定した。反応性ポリマーの不溶分率は下式にて算出した。
不溶分率(%)=((A−(B−C))/A)×100
【0115】
(架橋性ポリマーのガラス転移温度)
示差走査熱量測定法(DSC)によって求めた。
【0116】
(電極シートとセパレータとの間の接着力)
得られたラミネートシール型電池について、充放電試験を行う前に分解し、正極シート/セパレータ/負極シート積層体を取り出して、この電極シート/セパレータの界面を端部から5mm剥がして、それら電極シートとセパレータの端部を相互に180゜方向に1mm/秒の速度で引っ張り、その際の荷重を測定し、この荷重を電極シート/セパレータ積層体の幅で除して、電極シートとセパレータとの間の接着力を求めた。
【0117】
参考例1
(電極シートの調製)
正極活物質であるコバルト酸リチウム(日本化学工業(株)製セルシードC−10)85重量部と導電助剤であるアセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)10重量部とバインダーであるフッ化ビニリデン樹脂(呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#1120)5重量部を混合し、これを固形分濃度15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリーとした。このスラリーを厚み20μmのアルミニウム箔(集電体)上に塗工して厚み200μmに塗布し、80℃で1時間、次いで、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧して、活物質層の厚みが100μmの正極シートを得た。
【0118】
また、負極活物質であるメソカーボンマイクロビーズ(大阪ガスケミカル(株)製MCMB6−28)80重量部と導電助剤であるアセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)10重量部とバインダーであるフッ化ビニリデン樹脂(呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#1120)10重量部を混合し、これを固形分濃度15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリーとした。このスラリーを厚み20μmの銅箔(集電体)上に塗工して厚み200μmに塗布し、80℃で1時間、次いで、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧して、活物質層の厚みが100μmの負極シートを得た。
【0119】
(参照電池の作製)
融点130℃、厚さ16μm、空孔率40%、通気度300秒/cc、突き刺し強度3.0N)のポリエチレン樹脂製の多孔質フィルム(セパレータ)を用意した。前記参考例1で得た負極シート、上記多孔質フィルム及び前記参考例1で得た正極シートをこの順序に積層し、これをアルミニウムラミネートパッケージに仕込んだ後、パッケージ内に1.0モル/L濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(重量比1/1)混合溶媒からなる電解液を注入し、次いで、パッケージを封口して、リチウムイオン二次電池を組み立てた。この電池について、0.1CmAのレートにて3回充放電を行った後、0.1CmAで充電し、この後、1CmAで放電して、1CmA放電容量Aを求めた。
【0120】
(実施例又は比較例による電池の放電特性)
以下の実施例又は比較例にて得られたラミネートシール型リチウムイオン二次電池について、0.1CmAのレートにて3回充放電を行った後、0.1CmAで充電し、この後、1CmAで放電して、1CmA放電容量Bを求め、上記参照電池の放電容量Aに対する放電容量Bの百分比(%)にて電池特性を評価した。
【0121】
製造例1
(架橋性ポリマーA(重量平均分子量4.21×105、3−オキセタニル基含有モノマ
ー成分25重量%、メチルメタクリレートモノマー成分40重量%、ブチルアクリレート成分34重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0122】
還流冷却管を取り付けた500mL容量の四つ口フラスコにメチルメタクリレート40.0g、ブチルアクリレート34.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート25.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素ガスを導入しながら、60分間攪拌混合した後、65℃に加熱して、ラジカル重合を8時間行った。この後、70℃に加熱して、ラジカル重合を更に2時間行った。この後、40℃まで冷却し、酢酸エチル200gを加え、全体が均一になるまで攪拌混合し、反応性ポリマーの酢酸エチル溶液(濃度25重量%)を得た。
【0123】
次に、このポリマー溶液100gを高速ミキサーで攪拌しながら、メタノール600mL中に投入して、ポリマーを沈殿させた。このポリマーを濾別し、メタノールにて数回洗浄した後、乾燥管に入れ、これに液体窒素を気化させた乾燥窒素ガス(露点温度−150℃以下)を流通させて乾燥させた後、更に、デシケータ中で6時間真空乾燥して、架橋性ポリマーを得た。このようにして得られた架橋性ポリマーは純白色の粉末であって、ガラス転移温度は33℃であった。また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は重量平均分子量4.21×105 であり、数平均分子量は1.20×105 であった。
【0124】
製造例2
(架橋性ポリマーB(重量平均分子量3.56×105、3−オキセタニル基含有モノマ
ー成分25重量%、メチルメタクリレートモノマー成分60重量%、ブチルアクリレート成分14重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0125】
メチルメタクリレート60.0g、ブチルアクリレート14.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート25.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例1と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は65℃であり、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は3.56×105 であり、数平均分子量は1.00×105 であった。
【0126】
製造例3
(架橋性ポリマーC(重量平均分子量3.93×105、エポキシ基含有モノマー成分5
重量%、3−オキセタニル基含有モノマー成分20重量%、メチルメタクリレートモノマー成分55重量%、ブチルアクリレート成分19.5重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分0.5重量%)の製造)
【0127】
メチルメタクリレート55.0g、ブチルアクリレート19.5g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート20.0g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート5.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート0.5g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例1と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は52℃であり、また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は3.93×105 であり、数平均分子量は1.10×105 であった。
【0128】
製造例4
(架橋性ポリマーD(重量平均分子量3.92×105、3−オキセタニル基含有モノマ
ー成分25重量%、メチルメタクリレートモノマー成分35重量%、ブチルアクリレート成分39重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0129】
メチルメタクリレート35.0g、ブチルアクリレート39.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート25.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例1と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は29℃であり、また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は重量平均分子量3.92×105 であり、数平均分子量は1.10×105 であった。
【0130】
製造例5
(架橋性ポリマーE(重量平均分子量3.85×105、3−オキセタニル基含有モノマ
ー成分25重量%、メチルメタクリレートモノマー成分50重量%、ブチルアクリレート成分24重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0131】
メチルメタクリレート50.0g、ブチルアクリレート24.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート25.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例1と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は47℃であり、また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は重量平均分子量3.85×105 であり、数平均分子量は1.20×105 であった。
【0132】
製造例6
(架橋性ポリマーF(重量平均分子量3.08×105、3−オキセタニル基含有モノマ
ー成分25重量%、メチルメタクリレートモノマー成分70重量%、ブチルアクリレート成分4重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0133】
メチルメタクリレート70.0g、ブチルアクリレート4.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート25.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例1と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は86℃であり、また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は重量平均分子量3.08×105 であり、数平均分子量は9.00×104 であった。
【0134】
製造例7
(架橋性ポリマーG(重量平均分子量3.23×105、3−オキセタニル基含有モノマ
ー成分25重量%、メチルメタクリレートモノマー成分64重量%、ブチルアクリレート成分10重量%、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0135】
メチルメタクリレート64.0g、ブチルアクリレート10.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート25.0g、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例1と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は72℃であり、また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は重量平均分子量3.23×105 であり、数平均分子量は9.60×104 であった。
【0136】
製造例8
(架橋性ポリマーH(重量平均分子量4.67×105、3−オキセタニル基含有モノマー成分24重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートモノマー成分1重量%、メチルメタクリレート成分40重量%、ブチルアクリレート成分34重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0137】
還流冷却管を取り付けた500mL容量の四つロフラスコにメチルメタクリレート40.0g、ブチルアクリレート34.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート24.0g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート1g、4−ヒドロキシブチルアクリレート1g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素ガスを導入しながら、60分間攪拌混合した後、65℃に加熱して、ラジカル重合を8時間行った。この後、40℃まで冷却し、酢酸エチル200gを加え、全体が均一になるまで攪拌混合し、反応性ポリマーの酢酸エチル溶液(濃度25重量%)を得た。
【0138】
次に、このポリマー溶液100gを高速ミキサーで攪拌しながら、メタノール600mL中に投入して、ポリマーを沈殿させた。このポリマーを濾別し、メタノールにて数回洗浄した後、乾燥管に入れ、これに液体窒素を気化させた乾燥窒素ガス(露点温度−150℃以下)を流通させて乾燥させた後、更に、デシケータ中で6時間真空乾燥して、架橋性ポリマーを得た。このようにして得られた架橋性ポリマーは純白色の粉末であって、ガラス転移温度は34℃であった。また、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は4.67×105であり、数平均分子量は1.25×105であった。
【0139】
製造例9
(架橋性ポリマーI(重量平均分子量3.74×105、3−オキセタニル基含有モノマー成分24重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートモノマー成分1重量%、メチルメタクリレート成分60重量%、ブチルアクリレート成分14重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレート成分1重量%)の製造)
【0140】
メチルメタクリレート60.0g、ブチルアクリレート14.0g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート24.0g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート1g、4−ヒドロキシブチルアクリレート1g、酢酸エチル100.0g及びN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを用いた以外は、製造例8と同様にして、架橋性ポリマーを純白色の粉末として得た。この架橋性ポリマーのガラス転移温度は64℃であリ、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は3.74×105であり、数平均分子量は1.12×105であった。
【0141】
実施例1
架橋性ポリマーA10gを酢酸エチル90gに加え、室温で攪拌して、均一な架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマー溶液に架橋剤として多官能イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダクト体、酢酸エチル溶液、固形分75%、日本ポリウレタン工業(株)製コロネートHL)の3%酢酸エチル溶液0.5gを加え、室温で攪拌して溶解させた。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能イソシアネートの有するイソシアネート基のモル数の比率は0.12であった。
【0142】
この架橋性ポリマーAと多官能イソシアネートとの混合溶液を剥離紙にワイヤーバー(#3)にて塗工した後、50℃で加熱して、酢酸エチルを揮散させ、かくして、片面当たりの塗布密度1.1g/m2 にて第1の架橋性ポリマー層を剥離紙上に担持させた。
【0143】
次に、架橋性ポリマーB10gを酢酸エチル90gに加え、室温で攪拌して、均一な架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマー溶液に架橋剤として多官能イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダクト体、酢酸エチル溶液、固形分75%、日本ポリウレタン工業(株)製コロネートHL)の3%酢酸エチル溶液0.5gを加え、室温で攪拌して溶解させた。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能イソシアネートの反応基のモル数の比率は0.12であった。
【0144】
この架橋性ポリマーBと多官能イソシアネートとの混合溶液を剥離紙にワイヤーバー(#3)にて塗工した後、50℃で加熱して、酢酸エチルを揮散させ、かくして、片面当たりの塗布密度1.1g/m2 にて第2の架橋性ポリマー層を剥離紙上に担持させた。
【0145】
基材ポリエチレン樹脂多孔質フィルム(融点130℃、膜厚16μm、空孔率40%、通気度300秒/100cc、突刺し強度3.0N)の両面に上記第1及び第2の架橋性ポリマー層をそれぞれ90℃の温度にてこの順序にて熱転写し、かくして、片面当たりの塗布密度2.2g/m2 にて第1及び第2の架橋性ポリマー層からなる積層体を担持させてなる架橋性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。次いで、この架橋性ポリマー担持多孔質フィルムを70℃の恒温器に96時間投入して、多孔質フィルムに担持させた上記第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれ多官能イソシアネートと反応させ、上記架橋性ポリマーをそれぞれ架橋させて、かくして、第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を担持させた多孔質フィルムを得た。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は31%であった。
【0146】
前記参考例1で得た負極シート、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルム及び前記参考例1で得た正極シートを80℃の温度でこの順序に熱圧着、積層して、セパレータ/電極積層体とし、これをアルミニウムラミネートパッケージ内にこのセパレータ/電極積層体を仕込み、1.0モル/L濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(重量比1/1)混合溶媒からなる電解液を注入した後、パッケージを封口した。この後、50℃で24時間加熱して、上記反応性ポリマーをカチオン重合させ、架橋させて、電極シートを多孔質フィルム(セパレータ)に接着させると共に、電解液を一部、ゲル化させて、ラミネートシール型電池を得た。
【0147】
この電池の1CmA放電容量は、参照電池の放電容量の92%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.22N/cm、負極では0.10N/cmであった。
【0148】
実施例2
実施例1において、架橋性ポリマーBに代えて、架橋性ポリマーCを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能イソシアネート基のモル数の比率は0.24であった。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は20%であった。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ラミネートシール型電池を得た。
【0149】
この電池の1CmA放電容量は、参照電池の放電容量の96%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.20N/cm、負極では0.10N/cmであった。
【0150】
実施例3
実施例1において、架橋性ポリマーAに代えて架橋性ポリマーDを用いると共に、架橋性ポリマーBに代えて架橋性ポリマーEを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能イソシアネート基のモル数の比率は0.24であった。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は35%であった。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ラミネートシール型電池を得た。
【0151】
この電池の1CmA放電容量は、参照電池の放電容量の91%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.24N/cm、負極では0.11N/cmであった。
【0152】
実施例4
実施例1において、架橋性ポリマーAに代えて架橋性ポリマーEを用いると共に、架橋性ポリマーBに代えて架橋性ポリマーGを用いると共に、第1及び第2の架橋性ポリマー層の熱転写温度を100℃とし、負極シートと正極シートの反応性ポリマー担持多孔質フィルムへの熱圧着温度を90℃とした以外は、実施例1と同様にして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能イソシアネート基のモル数の比率は0.24であった。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は38%であった。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ラミネートシール型電池を得た。
【0153】
この電池の1CmA放電容量は、参照電池の放電容量の92%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.23N/cm、負極では0.10N/cmであった。
【0154】
実施例5
架橋性ポリマーH8gを酢酸エチル92gに加え、室温で攪拌して、均一な架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマー溶液に架橋剤として多官能イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダクト体、酢酸エチル溶液、固形分75%、日本ポリウレタンエ業(株)製コロネートHL)の3%酢酸エチル溶液0.7gを加え、室温で攪拌して溶解させた。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能性イソシアネートの有するイソシアネート基のモル数の比率は0.17であった。
【0155】
この架橋性ポリマーHと多官能性イソシアネートとの混合溶液を剥離紙にワイヤーバー(#3)にて塗工した後、50℃で加熱して、酢酸エチルを揮散させ、かくして、片面当たりの塗布密度0.5g/m2にて第1の架橋性ポリマー層を剥離紙上に担持させた。
【0156】
次に、8gの架橋性ポリマーIを酢酸エチル92gに加え、室温で攪拌して、均一な架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマー溶液に架橋剤として、多官能イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシネナート/トリメチロールプロパンアダクト体、酢酸エチル溶液、固形分75%%、日本ポリウレタンエ業(株)製コロネートHL)の3%酢酸エチル溶液0.7gを加え、室温で攪拌して溶解させた。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能性イソシアネート基のモル数の比率は0.17であった。
【0157】
この架橋性ポリマーIと多官能性イソシアネートとの混合溶液を剥離紙にワイヤーバー(#3)にて塗工した後、50℃で加熱して、酢酸エチルを揮散させ、かくして、片面当たりの塗布密度0.5g/m2にて第2の架橋性ポリマー層を剥離紙上に担持させた。
【0158】
実施例1で用いたのと同じ基材ポリエチレン樹脂多孔質フィルムの両面に上記第1及び第2の架橋性ポリマー層をそれぞれ90℃の温度にてこの順序にて熱転写し、かくして、片面当たりの塗布密度1.0g/m2にて第1及び第2の架橋性ポリマー層からなる積層体を担持させてなる架橋性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。次いで、この架橋性ポリマー担持多孔質フィルムを70℃の恒温器に96時間投入して、多孔質フィルムに担持させた上記第1及び第2の架橋性ポリマーをそれぞれ多官能性イソシアネートと反応させ、上記架橋性ポリマーをそれぞれ架橋させて、かくして、第1及び第2の反応性ポリマーの層からなる積層体を担持させた多孔質フィルムを得た。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は35%であった。
【0159】
前記参考例1で得た負極シート、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルム及び前記参考例1で得た正極シートをこの順序に積層して、セパレータ/電極積層体とし、これをアルミニウムラミネートパッケージ内にこのセパレータ/電極積層体を仕込み、1.0モル/L濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(重量比1/1))混合溶媒からなる電解液を注入した後、パッケージを封口した。この後、50℃で24時間加熱して、上記反応性ポリマーをカチオン重合させ、架橋させて、電極シートを多孔質フィルム(セパレータ)に接着させると共に、電解液を一部、ゲル化させて、ラミネートシール型電池を得た。
【0160】
この電池の1CmA放電容量は、参照電池の放電容量の97%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.15N/cm、負極では0.10N/cmであった。
【0161】
比較例1
実施例3において、架橋性ポリマーEに代えて、架橋性ポリマーFを用いると共に、負極シートと正極シートの反応性ポリマー担持多孔質フィルムへの熱圧着温度を90℃とした以外は、実施例1と同様にして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。架橋性ポリマーの有する反応性基のモル数に対する多官能イソシアネートの有するイソシアネート基のモル数の比率は0.12であった。また、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は27%であった。
【0162】
次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、実施例3と同様にして、ラミネートシール型電池を作製した。この作製において、負極シート、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルム及び正極シートをこの順序に積層する際に、熱圧着によって、負極シートと正極シートとを上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムに十分に接着させることができなかった。この電池の1CmA放電容量は、参照電池の放電容量の90%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.08N/cm、負極では0.04N/cmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第1の反応性ポリマーの層と、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、架橋させてなる第2の反応性ポリマーの層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめてなることを特徴とする電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項2】
第1及び第2の架橋性ポリマーがそれぞれオキセタニル基を有するラジカル重合性モノマーとエポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとから選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性モノマーとイソシアネート基に対して反応し得る反応性基を有するラジカル重合性モノマーとその他のラジカル重合性モノマーとのラジカル共重合体である請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項3】
第1及び第2の架橋性ポリマーがそれぞれオキセタニル基を有するラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー5〜50重量%とイソシアネート基に対して反応し得る反応性基を有するラジカル重合性モノマー0.05〜10重量%とその他のラジカル重合性モノマー94.95〜40重量%とのラジカル共重合体である請求項1又は2に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項4】
第1及び第2の反応性ポリマーがそれぞれ不溶分率1〜90%を有するものである請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項5】
オキセタニル基を有するラジカル重合性モノマーが一般式(I)
【化1】

(式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2 は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される3−オキセタニル基含有(メタ)アクリレートである請求項2又は3に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項6】
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーが一般式(II)
【化2】

(式中、R3 は水素原子又はメチル基を示し、R4 は式(1)
【化3】

又は式(2)
【化4】

で表されるエポキシ基含有基を示す。)
で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートである請求項2又は3に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項7】
その他のラジカル重合性モノマーが一般式(III)
【化5】

(式中、R5 は水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素原子数2又は3のオキシアルキレン基を示し、R6 は炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数1〜6のフッ化アルキル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
で表される(メタ)アクリレートと一般式(IV)
【化6】

(式中、R7 はメチル基又はエチル基を示し、R8 は水素原子又はメチル基を示す。)
で表されるビニルエステルとから選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項2又は3に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項8】
基材多孔質フィルムが厚み3〜50μm、空孔率20〜95%のものである請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項9】
第1の架橋性ポリマーが10〜40℃の範囲のガラス転移温度を有し、第2の架橋性ポリマーが45〜70℃の範囲のガラス転移温度を有するものである請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項10】
基材多孔質フィルムが多孔質ポリエチレン樹脂フィルムである請求項1から9のいずれかに記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を得、この電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を上記電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、カチオン重合させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、多孔質フィルムと電極を接着することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項12】
反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を70〜100℃の温度で熱圧着して積層する請求項11に記載の電池の製造方法。
【請求項13】
カチオン重合触媒がオニウム塩である請求項11に記載の電池の製造方法。
【請求項14】
電解液がカチオン重合触媒を兼ねる電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム及びテトラフルオロホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項11に記載の電池の製造方法。
【請求項15】
分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、10〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する第1の架橋性ポリマーと多官能イソシアネートからなる第1の架橋性ポリマー層と、分子中にオキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種の第1の反応性基とイソシアネート基に対して反応し得る第2の反応性基を有すると共に、45〜80℃の範囲にあって、且つ、上記第1の架橋性ポリマーよりも高いガラス転移温度を有する第2の架橋性ポリマーと多官能イソシアネートからなる第2の架橋性ポリマー層とをこの順序で基材多孔質フィルムに有せしめ、上記第1及び第2の架橋性ポリマーを上記第2の反応性基によってそれぞれ多官能イソシアネートと反応させて架橋させ、かくして、基材多孔質フィルム上にそれぞれ第1及び第2の反応性ポリマーの層を形成させることを特徹とする請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法。
【請求項16】
第1の架橋性ポリマーが10〜40℃の範囲のガラス転移温度を有し、第2の架橋性ポリマーが45〜70℃の範囲のガラス転移温度を有するものである請求項15に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法。
【請求項17】
第1の架橋性ポリマー層を基材多孔質フィルム上に転写し、次いで、第2の架橋性ポリマー層を上記第1の架橋性ポリマー層の上に転写する請求項15又は16に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法。
【請求項18】
第1の架橋性ポリマー層を60〜100℃の温度に加熱して、基材多孔質フィルム上に熱転写する請求項17に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法。
【請求項19】
第2及び第1の架橋性ポリマー層を積層してなる積層体を形成し、上記第1の架橋性ポリマー層を基材多孔質フィルムに対面させて、上記積層体を基材多孔質フィルム上に転写する請求項15又は16に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法。
【請求項20】
積層体を60〜100℃の温度に加熱して、基材多孔質フィルム上に熱転写する請求項19に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−123254(P2007−123254A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258872(P2006−258872)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】