説明

電池

【課題】集電体上に塗布された活物質層の始終端部や切断端部、集電体の端部、集電リードの端部等の角張った部分がセパレータを貫通することによって生じる内部短絡の発生を抑制することにある。
【解決手段】帯状の集電体5、9の表面に活物質層6、10を塗布して形成した正極板4と負極板8とをセパレータ2を介して巻回または積層して構成した電極群13と電解液とを電池ケース14に封入してなる電池において、セパレータ2の少なくとも活物質層6、10の塗布始終端部6a、10aまたは集電体5、9の端部に対応する部位を、圧壊に対して強度のある物性改質部2aとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池およびリチウム電池に代表される電池において、安全性に優れるよう改良したセパレータを収納した電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極板にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極板にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって、高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、さらなるリチウムイオン二次電池の高容量化が望まれている。これらのリチウムイオン二次電池において、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板とが内部短絡しないことが極めて重要である。
【0003】
しかし、正極板および負極板の活物質層となる合剤塗料を集電体へ塗布したときの活物質層の始/終端部、および塗膜を形成した正極板および負極板を所望の短冊状の幅へスリットしたときに生ずる塗膜の切断端部、正極集電体および負極集電体の切断端部、正極リードおよび負極リードの端部等の角張った部分および切断バリがセパレータを貫通し、短絡するおそれがある。
【0004】
従来、この対策として一般的には、図9に示すように、電極板28の活物質層26の成形されていない集電体25の露出部を設け、その集電体25にリード27を接続した後に、リード27と電極板28とを絶縁性フィルム23で被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
また、図10に示すように、電極板は集電体25が露出する露出部を備えているとともに、活物質層26の端部の近傍から露出部に亘って絶縁フィルム23が貼着されていて、絶縁フィルム23の端部の厚みが薄くなるようにした方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−103971号公報
【特許文献2】特開平7−320770号公報
【特許文献3】特開2005−235414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1または2に示される従来技術では、厚みのある絶縁性フィルムを活物質層へ貼り付けることによって、絶縁性フィルム23の下に位置する活物質層26は絶縁性フィルム23により一体化され固定されるため、巻回時および充放電時の電極板28の伸び縮みが規制される。その結果、絶縁性フィルム23の端部において、絶縁性フィルム23に固定されている活物質層26と固定されていない活物質層26への間に割れを生じ、集電体25へのリチウム析出が懸念される。かつ、破断した活物質層26の断面が膨張収縮時、または巻回時にセパレータ(図示せず)を突き破り内部短絡を引き起こすことも懸念される。
【0008】
また、絶縁性フィルム23により一部の活物質層26が強く固定されていることによって、電極群を巻回する場合に、集電体25の内側の表面に絶縁性フィルム23を固着された活物質層26は、曲率に応じた変形をすることができない。その結果、アルミニウム箔や銅箔により構成される集電体25へ引張応力が集中し、集電体25が切断されるという課題も有している。
【0009】
さらに、電極板28を所望の短冊状の幅へスリットしたときに生ずる活物質層26の切断端部全面に、絶縁性フィルム23を貼付することにより短絡防止を行うことは困難である。
【0010】
さらに詳しくは、上述した特許文献1、2においては、端部の活物質層26へ貼付された絶縁性フィルム23により活物質層26は割れを生じ、かつ、巻回時に集電体25が切れやすいという課題を有している。
【0011】
一方、上述した特許文献3においては、集電体25の切れ抑制のために、絶縁性フィルム23を絶縁性フィルム23の端部および活物質層26の端部において厚みを小さくすることで発生率を抑制することはできるが、課題の根本が解決されておらず、集電体25の切断が発生してしまう可能性が大きい。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたもので、セパレータの正極板、負極板および集電構成体などの角張った部分に対応する部分を圧壊に対して強度のある物性改質部としたことで、セパレータの圧壊強度を向上させ、内部短絡を抑止することができ、安全性に優れた電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の一側面における電池は、帯状の集電体の表面に活物質層を塗布して形成した正極板と負極板とをセパレータを介して巻回または積層して構成した電極群と電解液とを電池ケースに封入してなる電池において、セパレータの少なくとも活物質層の塗布始終端部または集電体の端部に対応する部位を、圧壊に対して強度のある物性改質部としたことを特徴とする。
【0014】
このような構成により、内部短絡など特定箇所において発生し易い欠陥に対し、その発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の他の側面において、上記セパレータの物性改質部は、セパレータの上記所定部位に、熱プレスまたは放電処理を施したものであることが好ましい。これにより、内部短絡の発生し易い特定箇所に対し、欠陥の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明の他の側面において、上記セパレータの物性改質部は、セパレータの上記所定部位に、樹脂材を充填、貼付、積層、または結合したものであることが好ましい。これにより、セパレータの物質改質部の圧壊強度をより増加させることができる。
【0017】
本発明の他の側面において、上記セパレータの物性改質部をセパレータの内部に設けることが好ましい。これにより、セパレータの表層の孔を塞ぎ、表層の孔から亀裂の伸展を抑制することができる。
【0018】
本発明の他の側面において、上記セパレータの物性改質部をセパレータ表面に設けることが好ましい。これにより、電極群の巻回時に活物質層が曲率に応じた変形をすることを阻害せず、集電体に引張応力が集中するのを緩和し集電体が切断することを抑制することができる。
【0019】
本発明の他の側面において、上記帯状の集電体は、表面に活物質層が形成されたシート状の集電体を切断して形成されたものであり、セパレータの活物質層の切断端部に対応する部位に、セパレータの物性改質部がさらに設けられていることが好ましい。これにより、物質改質部以外の場所では電池の充放電に伴うイオンの動きに影響を及ぼさない構造にすることができる。
【0020】
本発明の他の側面において、上記集電体の活物質層が形成されていない部位に、集電用リードが接続されており、セパレータの集電用リードの端部に対応する部位に、セパレータの物性改質部がさらに設けられていることが好ましい。これにより、内部短絡など特定箇所において発生し易い欠陥に対し、その発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセパレータを用いた電池によると、セパレータの少なくとも活物質層の塗布始終端部または集電体の端部に対応する部位を、圧壊に対して強度のある物性改質部としたことによって、内部短絡を抑制することができ、これにより安全性に優れた電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータを巻回して製作する電極群を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータの物性改質部を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータの両面に物性改質部を設けたセパレータの図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータの両面に物性改質部を設けたセパレータの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータの片面に物性改質部を設けたセパレータの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータの片面に物性改質部を設けたセパレータの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池用セパレータの表面SEM写真で、(a)は物質改質処理をしていない表面のSEM写真、(b)は物質改質処理をした表面のSEM写真である。
【図8】本発明の一実施形態に係わる非水系二次電池を示す一部切欠斜視図である。
【図9】従来の電極板を示す斜視図である。
【図10】従来の電極板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0024】
本発明の電池としては、図1に示すように、正極活物質層6を成形していない正極集電体5へ正極リード(集電用リード)7を接続した正極板4および負極活物質層10を成形していない負極集電体9へ負極リード(集電用リード)11を接続した負極板8を、図2に示すように、特定の箇所の空隙を減少させた物性改質部2aをもつセパレータ2を介して巻回して構成し巻止めテープ12で固定した電極群13を電解液と共に図8に示すように電池ケース14へ収納して電池を構成する。
【0025】
さらに電池の構成を詳しく説明すると、例えば図1に示したように、複合リチウム酸化物を正極活物質とする正極板4とリチウムを保持しうる材料を負極活物質とする負極板8とをセパレータ2を介して渦巻状に巻回して電極群13が構成されている。図8に示すように、この電極群13を有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板17と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口して構成する。
【0026】
次に、セパレータ2の物性改質部2a、正極板4および負極板8の構成を詳しく説明する。セパレータ2については、非水電解質二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いるのが一般的でありまた態様として好ましい。このセパレータ2の厚みは特に限定されないが、10〜25μmとすれば良い。
【0027】
セパレータ2の物性改質部2aについては、セパレータ2の対応する部分として、図1に示すように正極活物質層6の塗布始終端部6aおよび負極活物質層10の塗布始終端部10a、正極活物質層6の切断端部6bおよび負極活物質層10の切断端部10b、正極リード7および負極リード11の端部、正極集電体5および負極集電体9の端部の対応する部分へ物性改質を施し、空隙度を小さくし、硬度を増加させ、圧壊強度を増加させた物性改質部2aを得る。
【0028】
正極板4と負極板8が広く対向し、電池反応する部分である物性改質部2a以外の非物性改質部は、空隙率の低減による圧壊強度の改善のような物性改質を施しておらず、電池の充放電に伴うイオンの動きに影響を与えない。
【0029】
局所的な物性値の変更の一例として、圧壊強度の増加方法は、例えば、図2のようにセパレータ2に対し、熱プレスによりセパレータ2の樹脂表面を溶融し加圧することで、図3に断面を示すように、多孔質のセパレータ2の表層の孔を塞ぐことで、圧壊試験時および異物の刺さった時の表層の孔から亀裂の伸展を抑制し、圧壊強度を増加させることができる。また、図4に示すようにセパレータ2の全断面に渡って物性改質処理を行っても支障がない。
【0030】
さらに、セパレータ2自体を溶融させるのでなく、セパレータ2に親和性のよい樹脂を充填および結合することによって、図3(a)、(b)に示すような物性改質部2aを設け、圧壊強度の増加を図ることも可能である。ここで、図3(a)は断面図、図3(b)は平面図である。
【0031】
また、セパレータ2自体を溶融および充填させるのでなく、セパレータ2に親和性のよい樹脂を貼付または結合することによって、図4に示すような物性改質部2aを設け、圧壊強度の増加を図ることもできる。ここで、「貼付」とは、結着剤を介して貼り合わせることをいい、「結合」とは、材料同士を機械的・化学的融合させることをいう。
【0032】
さらに、図5,図6に示すように、物性改質部2aを片面のみに作成することで所望の箇所の所望の面の圧壊強度を増加させることができる。
【0033】
また、セパレータ2の表面に粘着性樹脂を充填することによって、セパレータ2の物性改質部2aを設けてもよい。これにより、物性改質部2aを、空隙の少ない(若しくは空隙のない)、耐電圧性、及び圧壊強度の強い部位にするとともに、その部位に粘着性を持たすことによって、極板の端部等の鋭利な部分に対応する部位に、物性改質部2aを安定して配設することができる。その結果、セパレータを突き破って内部短絡が生じるのを、より効果的に防止することができる。図7(a)は、物性改質処理を行っていない部位のセパレータの表面SEM写真、図7(b)は、物性改質処理を行った部位のセパレータの表面SEM写真を示す。図7(b)に示すように、物質改質部2aにおける空隙は少なくなっている。
【0034】
正極板4については特に限定されないが、正極集電体5として厚みが5μm〜30μmを有するアルミニウムやアルミニウム合金またはニッケルやニッケル合金製の金属箔を用いることができる。この正極集電体5の上に塗布する正極合剤塗料としては、正極活物質、導電材、結着材とを分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて正極合剤塗料を作製する。
【0035】
まず、正極活物質、導電材、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、集電体への塗布に最適な粘度に調整して混練を行うことで正極合剤塗料を作製する。
【0036】
正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0037】
このときの導電材の種類としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いても良い。
【0038】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。
【0039】
さらに、ダイコータを用いて上述したように作製した正極合剤塗料をアルミニウム箔よりなる正極集電体5上に塗布し、次いで乾燥した後にプレスにて所定厚みまで圧縮することで正極活物質層6を成形した正極板4が得られる。
【0040】
一方、負極板8についても特に限定されないが、負極集電体9として厚みが5μm〜25μmを有する銅または銅合金製の金属箔を用いることができる。この負極集電体9の上に塗布する負極合剤塗料としては、負極活物質、結着材、必要に応じて導電材、増粘剤を分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて負極合剤塗料を作製する。
【0041】
まず、負極活物質、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、集電体への塗布に最適な粘度に調整して混練を行うことで負極合剤塗料を作製する。
【0042】
負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合剤料、および各種合金組成材料を用いることができる。
【0043】
このときの負極用結着材としては、PVdFおよびその変性体をはじめ各種バインダーを用いることができるが、リチウムイオン受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体に、カルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等を併用することや少量添加するのがより好ましいといえる。
【0044】
さらに、ダイコータを用いて上述したように作製した負極合剤塗料を銅箔によりなる負極集電体9上に塗布し、次いで乾燥した後にプレスにて所定厚みまで圧縮することで負極活物質層10を成形した負極板8が得られる。
【0045】
非水電解液については、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正負極板上に良好な皮膜を形成させることや過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることも好ましい。
【0046】
そして、正極板4と負極板8とをセパレータ2を介し、図1のように巻回して構成した電極群13を、図8に示すように、有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板17と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後に電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口することにより非水系二次電池を製作する。
【実施例】
【0047】
以下、具体的な実施例についてさらに詳しく説明する。
【0048】
(実施例1)
厚みが20μmでセパレータ2の正極活物質層6の塗布始終端部6aおよび負極活物質層10の塗布始終端部10a、正極活物質層6の切断端部10bおよび負極活物質層10の切断端部10b、正極リード7および負極リード11の端部、正極集電体5および負極集電体9の端部の対応する部位のおよそ5mmの幅の領域に対し、10mmの距離からプラズマ照射装置を用いて、電圧LOW設定にて0.5秒間のプラズマ照射を実施し、物性改質部2aを成形されたセパレータ2を実施例1のセパレータ2とした。
【0049】
さらに、正極板4と負極板8とを実施例1のセパレータ2を介し図1のように巻回して構成した電極群13を、図8に示すように有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板17と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後に電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口することにより作製した非水系二次電池を実施例1の非水系二次電池とした。
【0050】
(実施例2)
厚みが20μmでセパレータ2の正極活物質層6の塗布始終端部6aおよび負極活物質層10の塗布始終端部10a、正極活物質層6の切断端部6bおよび負極活物質層10の切断端部10b、正極リード7および負極リード11の端部、正極集電体5および負極集電体9の端部の対応する部位のおよそ5mmの幅の領域に対し、金属製のヒータと金属板で1Nの荷重で挟み、ヒータの設定を150℃とし、10分間、熱プレスを行って物性改質部2aを成形したセパレータ2を実施例2のセパレータ2とした。
【0051】
さらに、正極板4と負極板8とを実施例2のセパレータ2を介し図1のように巻回して構成した電極群13を、図8に示すように有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板16と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後に電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口することにより作製した非水系二次電池を実施例2の非水系二次電池とした。
【0052】
(実施例3)
厚みが20μmでセパレータ2の正極活物質層6の塗布始終端部6aおよび負極活物質層10の塗布始終端部10a、正極活物質層6の切断端部6bおよび負極活物質層10の切断端部10b、正極リード7および負極リード11の端部、正極集電体5および負極集電体9の端部の対応する部位のおよそ5mmの幅の領域に対し、10mmの距離からプラズマ放電処理装置において、電圧LOW設定にて0.5秒間のプラズマ放電を照射した後、金属製のヒータと金属板で1Nの荷重で挟み、ヒータの設定を150℃とし、10分間、熱プレス処理を行って物性改質部2aを成形したセパレータ2を実施例3のセパレータ2とした。
【0053】
さらに、正極板4と負極板8とを実施例3のセパレータ2を介し図1のように巻回して構成した電極群13を、図8に示すように有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板16と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後に電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口することにより作製した非水系二次電池を実施例3の非水系二次電池とした。
【0054】
(実施例4)
厚みが20μmでセパレータ2の正極活物質層6の塗布始終端部6aおよび負極活物質層10の塗布始終端部10a、正極活物質層6の切断端部6bおよび負極活物質層10の切断端部10b、正極リード7および負極リード11の端部、正極集電体5および負極集電体9の端部の対応する部位のおよそ5mmの幅の領域に対し、溶融したセパレータと同種の樹脂を塗布し、金属板に挟み厚みを規正した状態で冷却して物性改質部2aを成形したセパレータ2を実施例4のセパレータ2とした。
【0055】
さらに、正極板4と負極板8とを実施例3のセパレータ2を介し図1のように巻回して構成した電極群13を、図8に示すように有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板17と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後に電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口することにより作製した非水系二次電池を実施例4の非水系二次電池とした。
【0056】
(比較例1)
厚みが20μmで物性改質部を形成しないセパレータ2を比較例1のセパレータ2とした。
さらに、正極板4と負極板8とを比較例1のセパレータ2を介し図1のように巻回して構成した電極群13を図8に示したように有底円筒形の電池ケース14の内部に絶縁板17と共に収容し、電極群13の下部より導出した負極リード11を電池ケース14の底部に接続し、次いで電極群13の上部より導出した正極リード7を封口板15に接続し、電池ケース14に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後に電池ケース14の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し電池ケース14の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口することにより作製した非水系二次電池を比較例1の非水系二次電池とした。
【0057】
上記の条件で製作した物性改質部2aを圧壊強度試験によって比較した結果を(表1)に示す。
圧壊強度試験は、セパレータ2を直径が12mmのワッシャで固定し、固定されたセパレータ2に、ピンを100mm/分の速度で突刺し、その際の最大荷重(N)を圧壊強度として求めた。ピンの形状は、ピンの直径が1mm、先端が0.5Rとした。
【0058】
また、リーク発生率の評価は、各実施例や比較例のセパレータ2を介して正極板4と負極板8を巻回して製作した電極群13を各100個ずつ正極リード7および負極リード11を介して800Vの電圧を印加し、電流が0.1mA以上流れた電極群13をリーク発生品として数え、母数100で除した値をリーク発生率(%)とした。さらに、電池容量の評価は、実施例1から実施例3、および比較例のセパレータ2を用いて製作した非水系二次電池の放電容量を比較例100として、実施例1から実施例3を比較した。
【0059】
【表1】

【0060】
(表1)より明らかなように比較例1のセパレータ2に対し、実施例1のセパレータ2においては、プラズマ放電処理によりセパレータ2の表面にポリオレフィン系高分子より大きな極性モーメントの官能基(例えば、酸素の2重結合やヒドロキシル基)が付加することによりセパレータ2の圧壊強度が増加する効果、およびプラズマ放電時に発生する熱によりセパレータ2の空隙の表面が溶着し空隙率が減少したことにより、セパレータ2の裂け難さの向上が圧壊強度が増加した効果の2点の要因と考えられる。
【0061】
一方で、実施例2のセパレータ2においては図2のように熱プレス処理によりセパレータ2中の空隙が潰れることで、圧壊時の物性改質されたセパレータ2が裂け難くなっており、電極群13中でも裂け難く内部短絡の抑制効果が期待できる。
また、プラズマ放電処理と共に熱プレス処理を施した実施例3のセパレータ2においては実施例2のセパレータ2で行った熱プレスの効果が物性値に与える影響が大きく、プラズマ放電処理の影響は圧壊強度を微増させる程度にとどまり、空隙率は実施例2の場合と同等な値となる。
【0062】
さらに、実施例4の充填処理を施したセパレータ2は、実施例1〜3に比べ空隙へ樹脂を充填していることで、セパレータ2の体積自体が増加しており、硬度の増加、圧壊強度の増加へ繋がっている。
また、各実施例のセパレータ2を用いた電極群13のリーク発生率は、圧壊強度の低い比較例に対して、実施例1では改善し、実施例2,3においてはリーク発生が起こらなかった。
また、各実施例のセパレータ2を用いた非水系二次電池の容量確認においては比較例に対し、実施例1から実施例4において電池容量の低下は見られなかった。
【0063】
本実施例は、リチウムイオン二次電池についで述べたがアルカリ蓄電池およびリチウム電池などのセパレータ2を介し正極板4と負極板8の間でイオンの授受を行う他の電池においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る非水系二次電池は、リチウムイオン二次電池やアルカリ蓄電池およびリチウム電池などの携帯用電子機器の電源に有用である。
【符号の説明】
【0065】
2 セパレータ
2a 物性改質部
4 正極板
5 正極集電体
6 正極活物質層
6a 塗布始終端部
6b 切断端部
7 正極リード
8 負極板
9 負極集電体
10 負極活物質層
10a 塗布始終端部
10b 切断端部
11 負極リード
12 巻き止めテープ
13 電極群
14 電池ケース
15 封口板
16 封口ガスケット
17 絶縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電体の表面に活物質層を塗布して形成した正極板と負極板とをセパレータを介して巻回または積層して構成した電極群と電解液とを電池ケースに封入してなる電池において、
前記セパレータの少なくとも前記活物質層の塗布始終端部または前記集電体の端部に対応する部位を、圧壊に対して強度のある物性改質部としたことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記セパレータの物性改質部は、前記セパレータの前記所定の部位に、熱プレスまたは放電処理を施したものであることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記セパレータの物性改質部は、前記セパレータの前記所定の部位に、樹脂材を充填、貼付または結合したものであることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記セパレータの物性改質部をセパレータの内部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記セパレータの物性改質部をセパレータ表面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記帯状の集電体は、表面に前記活物質層が形成されたシート状の集電体を切断して形成されたものであり、
前記セパレータの前記活物質層の切断端部に対応する部位に、前記セパレータの物性改質部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記集電体の前記活物質層が形成されていない部位に、集電用リードが接続されており、
前記セパレータの前記集電用リードの端部に対応する部位に、前記セパレータの物性改質部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−3685(P2010−3685A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122363(P2009−122363)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】