説明

電池

【課題】電池において集電体を貫通させるガスケットの嵌合部を結晶性樹脂により構成し、集電体との接合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことで、嵌合時の応力を緩和し、電池内のガスケットの割れを抑制し、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、長期間保存後の信頼性の向上と安全性の向上を目的とする。
【解決手段】電池ケース8内に正極材6とゲル状の負極材5とをセパレータ7を介在させて対向配置した発電部を収納し、電池ケース8の開口部に底板3と接合した集電体2が挿入された嵌合部1eを結晶性樹脂により構成し、その内部を結晶化した樹脂とし少なくとも上記集電体2との接合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したガスケット1の発電部側に防爆薄肉部1cを設けた封口体4で封口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池内容物を収納した電池ケースを結晶性樹脂を用いたガスケットで密閉した電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラあるいは携帯音楽プレーヤーなどの長時間駆動化に伴い搭載機器の部品や特に電源のひとつである電池の長寿命化が強く要望される傾向にある。
【0003】
従来の上記機器に利用される電池の一例としてアルカリマンガン乾電池では、同じ外形寸法で内容積を増やして電池容量を増やすためにはアルカリマンガン乾電池を構成する部品の小型化、特に樹脂で成形された絶縁機能と安全弁機構であるガスケットの薄型化が不可欠であった。
【0004】
それと、薄型形状でも機械的強度を備え、衝撃などの外的負荷によるガスケットの割れや、特に、集電体との嵌合部となる部位の割れなどを抑制できるガスケットの品質の向上が不可欠であった。
【0005】
図6は従来のアルカリマンガン乾電池の半断面正面図である。
【0006】
図6に示すように正極端子を兼ねる鉄製の電池ケース38の中には、二酸化マンガンと黒鉛とを主構成材料とし、短い円筒状に成形された正極材36が複数個挿入されている。この正極材36の内側には、底面に電池ケース38との接触を隔離するための絶縁キャップ30と円筒状に構成したセパレータ37を介して、ゲル状の負極材35が注入されている。負極材35中には集電体32が挿入されている。一般に、ガスケット31は、プラスチック又はゴム製であり、底板33、集電体32などと組合せて、電池ケース38の開口部を封口する構造をとっている。また、電池ケース38は外部との絶縁をかねた外装ラベル39で被覆されている。
【0007】
一般に、ガスケット31は、例えば溶融した熱可塑性樹脂を金型に送り込む射出成形法によって成形している。
【0008】
ガスケット31は、その底壁部31dで内部の圧力を受ける。このガスケット31の平板部31bの受圧側に環状の溝部31aを設けることにより、その底壁部31dを防爆薄肉部31cとしている。そして、ガスが発生し、内部の圧力が上昇した際に内部の圧力がある圧力に達するとこの溝部31aの底壁の防爆薄肉部31cに破断が生じ、電池内部のガスを排出する防爆機構として働くものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−135342号公報
【特許文献2】特許第3388761号公報
【特許文献3】特開2000−326365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に示される従来技術では、図6に示すように、ガスケット31を射出成形法で成形する際に、湯口となるゲート部で樹脂成形金型に冷却され結晶化することで、樹脂成形金型からガスケットを取り出す時にゲートカットによるゲート部の破断が生じ、上述する集電体を挿入する際に、挿入の応力により挿入部の割れが生じる。
【0011】
また、ランナーレスのホットランナーシステムを用いた成形においては、ゲート付近の溶融樹脂がゲートシール用のヒータにより加熱されて、結晶化が促進されて部分的に固化状態が異質なものとなるという課題があった。
【0012】
また、上述した特許文献2に示される従来技術では図7に示すようにネック部分62の結晶化度を高めるために部分的に断熱スリーブ64を装備し、成形時に異常な徐冷による冷却作用がネック部分62に発生するため、部分的な冷却ムラから結晶化状態のムラを引き起こし、ネック部分62とそれ以外の多層プリフォーム61との間で結晶化度の差をつけることで、上記ネック部分62とそれ以外の多層プリフォーム61との境界を起点に割れが生じやすいという課題があった。
【0013】
さらに、上述した特許文献3に示される従来技術では図8に示すようにゲート84はボス部82の端面中央部分に形成されており、これに対する内径ピン85は、樹脂の充填時には後退位置にある。したがって、これによるゲート84と内径ピン85との間隙から、圧入孔周囲の環状樹脂流入路86が形成されている。
【0014】
これにより、環状流入路86を通って流れ込む樹脂は、ゲート84と内径ピン85とがほぼ同径なので、内径ピン85の端面に当たることにより流入方向を曲げられている。このためボス部82の内側から外側へ向かう放射方向の樹脂流が生成され、ボス部外周をなすキャビティ壁面にぶつかる流れが形成される。さらに、充填完了と同時に内径ピン85が前進して環状樹脂流入路86を圧縮してゲートカットを行うことで、ゲート部87の圧縮によるひずみを起点に割れが生じやすいという課題があった。
【0015】
本発明は上記従来の課題を鑑みて成されたもので、ガスケットの割れを抑制し、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、長期間保存後の信頼性の向上を図ることのできる電池を供給することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような目的を達成するために本発明の電池は、少なくとも正極材と負極材とをセパレータを介して対向配置させ電解液を含浸させた発電部を電池ケースに収納し、この電池ケースの開口部をー端側が負極材中にはまり込む棒状の集電体の他端に接合した底板と絶縁体からなるガスケットにより構成される封口体で封口した電池において、集電体を貫通させるガスケットの嵌合部を結晶性樹脂により構成し、その内部を結晶化した樹脂とし、少なくとも上記集電体との接合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集電体との嵌合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことで、嵌合時の応力を緩和し、電池内のガスケットの割れを抑制し、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、長期間保存後の信頼性の向上と安全性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態における電池を示した半断面図
【図2】本発明の一実施の形態におけるガスケットの嵌合部の結晶化を示した主要部の断面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるガスケットの嵌合部の結晶化を示した主要部の断面図
【図4】比較におけるガスケットの嵌合部の結晶化を示した主要部の断面図
【図5】比較例におけるガスケットの嵌合部の結晶化を示した主要部の断面図
【図6】従来例における電池を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の発明では、少なくとも正極材と負極材とをセパレータを介して対向配置させ電解液を含浸させた発電部を電池ケースに収納し、この電池ケースの開口部をー端側が負極材中にはまり込む棒状の集電体の他端に接合した底板と絶縁体からなるガスケットにより構成される封口体で封口した電池において、集電体を貫通させるガスケットの嵌合部を結晶性樹脂により構成し、その内部を結晶化した樹脂とし、少なくとも上記集電体との接合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことにより、電池内のガスケットの割れを抑制し、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、長期間保存後の信頼性の向上できる。
【0020】
本発明の第2の発明では、ガスケットの嵌合部として、結晶化した樹脂の全周面に非晶質状態の樹脂層を形成して構成したことにより、嵌合時の衝撃や外的圧力の緩和を行い、内部ひずみなどを持たずに嵌合することが可能となり、ガスケットの割れを抑制し、安全性を向上することが可能である。
【0021】
本発明の第3の発明では、前記ガスケットの結晶化した樹脂は溶融樹脂を結晶化温度で徐冷することにより形成され、非晶質状態の樹脂層は溶融樹脂を結晶化温度で急令することにより形成されたことにより、成形条件に依存せずに冷却作用をコントロールすることが可能な金型構造のみで生産することができ、ガスケットの割れを抑制し安全性を向上することが可能となり、電池内容物の漏洩などを抑制することができる。
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
以下に示される一実施の形態については、本発明を説明するために掲げた電池としての代表的なアルカリマンガン乾電池の構造を示すものであって、本発明は電池の構造を下記のものに特定するものではない。
【0024】
まず、図1は本発明の一実施の形態におけるアルカリマンガン乾電池の半断面図である。
【0025】
図1に示すように、正極端子を兼ねる鉄製の電池ケース8の中には二酸化マンガンと黒鉛とを主構成材料とし、短い円筒状に成形された正極材6が複数個挿入されている。この正極材6の内側には、セパレータ7を介してゲル状の負極材5が注入されている。
【0026】
ゲル状の負極材5の中には集電体2が挿入されており、ゲル状の負極材5の底面には電池ケース8との絶縁を目的とした絶縁キャップ10が挿入されている。また、電池ケース8の絶縁被覆と商品の外装を目的として外装ラベル9が装着されている。
【0027】
一般に、ガスケット1はプラスチック又はゴム製であり、また、底板3と溶接接続された集電体2をガスケット1の軸中心に圧入して組みこんだものを封口体4と呼び、この封口体4で電池ケース8の開口部を封口することによってアルカリマンガン乾電池を構成している。一般に、ガスケット1は、例えば溶融した熱可塑性樹脂を金型に送り込む射出成形法によって成形している。
【0028】
ガスケット1は、底壁部1dにより内部の圧力を受ける。このガスケット1の平板部1bの受圧側に環状の溝部1aを設けることにより、その底壁部1dを防爆薄肉部1cとしている。そして、乾電池の過放電や乾電池を逆接続した時にガスが発生し、内部の圧力が上昇した際に内部の圧力が防爆薄肉部1cの変形を開始する圧力に達すると防爆薄肉部1cが外方に膨張するように突出し、一定の圧力に到達した後に、防爆薄肉部1cに破断が生じ、底板3に設けた穴11aを通って内部のガスを排出する。
【0029】
この防爆機構としての防爆薄肉部1cをさらに詳しく説明する。
【0030】
ガスケット1の平板部1bに沿って環状に設けた溝部1aの肉厚が0.25mm以下で形成された防爆薄肉部1cに対し、過放電時や逆接続によって起こる乾電池のガス発生によって生じる内圧上昇によって発生する圧力が集中し、外方に膨張するように突出し、防爆薄肉部1cにかかる圧力が一定の値を超えることで破断され、電池ケース8の内部に高い圧力で存在するガスを破断された防爆薄肉部1cの隙間を利用して効率よく排出することができる。
【0031】
また、円筒の高さ方向において、薄型のガスケット1を用いた封口体4で開口部を封口することにより、防爆薄肉部1cが伸張するために必要な空間を最小にすることができ、結果的には封口体4を構成するガスケット1の薄型化が可能となり、内容積を増大しアルカリマンガン乾電池の電池容量を増大させることができる。
【0032】
さらに、底板3と溶接接続された集電体2をガスケット1の軸中心に圧入するためのガスケット1の軸となる嵌合部1eを図2、図3を用いてさらに詳しく説明する。
【0033】
ガスケット1に設けられた嵌合部1eは一般にガスケット1が溶融した樹脂によって射出成形され際に、金型内の雄型と雌型の隙間によって形成される。この嵌合部1eを形成する際には、集電体2を圧入するための接合穴1fを形成するために、集電体2の径より小さい径の円筒状の雄型を設けて成形している。その際にガスケット1に設けた嵌合部1eの接合穴1fの接合面を非晶質状態の樹脂層21bで構成することで、ガスケット1に設けられた嵌合部1eに集電体2を圧入する際の負荷による嵌合部1eの割れを軽減することができ、かつ電池の過放電や電池の逆接続時にガスが発生し、内部の圧力が上昇した際に、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、また、長期間保存後の性能に対し、信頼性を持った電池の提供を可能とする構成となっている。
【0034】
図2は本発明の一実施の形態におけるガスケットの嵌合部1eの結晶化状態を示した主要部の断面図である。図2に示すように、ガスケット1に設けられた嵌合部1e内において結晶化した樹脂層21aの全周面に非晶質状態の樹脂層21bを形成して構成することで、嵌合時の衝撃や外的圧力の緩和を行い、内部ひずみなどを持たずに嵌合することが可能となり、ガスケット1の割れを抑制し、安全性を向上することが可能となる。
【0035】
次に、図3は本発明の一実施の形態におけるガスケット1の嵌合部1eの結晶化状態を示した主要部の断面図である。図3に示すようにガスケット1の嵌合部1eの結晶化した樹脂層21aは溶融樹脂を結晶化温度で徐冷することにより形成され、図2に示すものより肉厚に形成された非晶質状態の樹脂層21bは溶融樹脂を結晶化温度で急令することにより形成されたことで、成形条件に依存せずに、冷却作用をコントロールすることが可能な金型構造だけでガスケット1を生産することができ、ガスケット1の割れを抑制し、安全性を向上することが可能となり、電池内容物の漏洩などを抑制することができる。
【0036】
図2、図3ではガスケット1の嵌合部1eについて説明したが、嵌合部1e以外のガスケット1の全体にわたって設けても同じような作用効果が得られる。
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0037】
図1に示すように、正極端子を兼ねる鉄製で外径がφ14mm(単三サイズ)の電池ケース8の中には二酸化マンガンと黒鉛とを主構成材料とし、短い円筒状に成形された正極材6が複数個挿入されている。この正極材6の内側には、セパレータ7を介してゲル状の負極材5が注入され、このゲル状の負極材5の中には外径がφ1mmの集電体2が挿入されておいる。このゲル状の負極材5の底面には電池ケース8との絶縁を目的とした絶縁キャップ10が挿入されこの電池ケース8の外周面は絶縁被覆と商品の外装を目的として外装ラベル9が装着されている。
【0038】
さらに、図2に示すように、例えば、ガスケット1はプラスチック又はゴム製であり射出成形などによって280℃に溶融された結晶性樹脂を80℃に冷却した金型に0.5秒で射出し、6秒間の冷却により固化形成される。このガスケット1の嵌合部1eの軸方向断面で結合穴1fの端面から3.5mmの長さにわたり結合面より製品内部方向に50μm以下の領域内で樹脂層21bを非晶質状態に成形し、また底板3と溶接接続された集電体2をガスケット1の軸中心に圧入して組みこんだものを封口体4と呼び、この封口体4で電池ケース8の開口部を封口することによって構成したアルカリマンガン乾電池を実施例1とした。
【実施例2】
【0039】
図3に示すように、実施例1に比べて非晶質状態の樹脂層21bを肉厚に形成した。
【0040】
詳しくは成形時に急冷しガスケット1の嵌合部1eの軸方向断面で結合穴1fの端面から3.5mmの長さにわたり結合面より製品内部方向に100μm以下の領域内で樹脂層21bを非晶質状態に成形したガスケット1を用いた実施例1と同様の内容物の仕様であるアルカリマンガン乾電池を実施例2とした。
【0041】
(比較例1)
図4に示すように、実施例1に比べて非晶質状態の樹脂層21bを極端に薄肉に形成した。
【0042】
詳しくは、成形時に徐冷しガスケット1の嵌合部1eの軸方向断面で結合穴1fの端面から3.5mmの長さにわたり結合面より製品内部方向に100μm以下の領域内で樹脂層を過度の結晶状態に成形したガスケットを用いた実施例1と同様のアルカリマンガン乾電池を比較例1とした。
【0043】
(比較例2)
図5に示すように、ガスケット1の一端部に結晶化した樹脂層21aよりもさらに結晶化が進んだ状態の樹脂層21cを形成した。
【0044】
詳しくは、成形時にガスケット1の嵌合部1eの軸方向断面で結合穴1fの端面から長さ0.5mmの範囲にわたる結合面より製品内部の方向に100μm以下の領域内で極度に徐冷することで、結晶化した樹脂層21aよりも結晶化が進んだ状態の樹脂層21cを成形し、かつ上記嵌合部1eの軸方向断面で結合穴1fの端面から0.5mmの位置から3mmの長さにわたり結合面より製品内部方向に100μm以下の領域内で樹脂層21bを非晶質状態に成形したガスケットを用いた実施例1と同様の内容物の仕様であるアルカリマンガン乾電池を比較例2とした。
【0045】
以上のような実施例1,2および比較例1,2に示したものを以下のように測定した。
【0046】
実施例1,2および比較例1,2の軸方向断面で切断し、薄肉状で結合穴1fの端面に隣接する長さ0.5mmの範囲にわたる結合面より製品内部方向に100μm以下の領域内を含む長さ3.5mmの切断片を作製し、偏光顕微鏡にて各30個測定し、平面部位での結晶化が占める面積の割合を測定した平均値の結果と実施例1,2および比較例1,2のガスケットに集電体2を挿入した際の、割れの状況と約6ヶ月間の長期保存による漏液状況を(表1)に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(表1)に示すように、本発明の実施例1,2は、比較例1,2と比べ結合面から100μm以下の範囲で結晶化の割合が少なく、かつ非晶質状態であるということが判った。
【0049】
これは、結合面から100μm以下の範囲、つまりは嵌合部の表面の樹脂層が非晶質状態にあり、一般に溶融樹脂を成形時に結晶化させるためには、金型内に射出された溶融樹脂が充填された後、溶融温度から結晶領域まで冷却され、熱的プロファイルが制御された下で結晶領域を通して転移が行われる。結晶性の程度は、結晶化領域を通じた温度プロファイル及び転移の間の時間に依存する。結晶化に続いて射出成形された成形部品は、金型から取り出された時点での排出温度へと冷却される。
【0050】
このことから、本発明の実施例1,2は金型からの冷却作用が働き、結晶化領域を通じた温度プロファイルと短時間での転移により結晶化を促進すること無く非晶質化している結果であると考えられる。
【0051】
また、(表1)に示すように、本発明の実施例1,2は、比較例1,2と比べ集電体2を挿入時の割れが無く、かつ、長期間の保存下でも電池の封口部位からの漏液が無いことが判った。
【0052】
さらに、実施例1に比べ実施例2では、金型内での冷却を行う際に急冷されることで、結晶化温度で結晶化を促進すること無く非晶質化する領域が増えているということが判った。
【0053】
また、比較例1は結合面から100μm以下の範囲で結晶化の割合が高いということが判った。これは、結合面から100μm以下の範囲、つまりは嵌合部の表面の非晶質状態の樹脂層21bが少なく結晶化が促進されている状態にあり集電体2を挿入時にかかる残留応力を持った状態で長期保存の結果、電解質な電池内容物によって表面劣化することで割れに至ったものと考えられる。
【0054】
また、比較例2の軸方向断面で結合穴1fの端面から長さ0.5mmの範囲にわたる結合面より製品内部方向に100μm以下の領域内で結晶化の高い状態の樹脂層21aの割合が非常に高く、局部的に結晶化が促進されて、上記端面から長さ0.5mmの範囲の位置より3mmの範囲で樹脂層の結晶状態に偏りが発生し、集電体2を挿入時に挿入時からの応力の緩和ができずに、破壊に至っているということが明らかとなった。
【0055】
上記のことから、実施例1,2は比較例1,2に比べガスケット1に設けた嵌合部1eの接合穴1fの接合面を非晶質状態の樹脂層21bで構成することが可能で、集電体2を挿入する際に受ける応力の緩和ができ、集電体2を貫通させるガスケット1の嵌合部1eを結晶性樹脂により構成し、その内部を結晶化した樹脂とし、少なくとも上記集電体2との嵌合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことを特徴とする電池によって、ガスケット1の割れを抑制し、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、長期間保存後の信頼性を持った乾電池として有効であることが判った。
【0056】
また、上記に示した実施例おいては、外径がφ13mmのアルカリマンガン乾電池を代表として説明してきたが、結晶性樹脂を用いた封口体4により封口された電池においても同様の構成とすることで同じ効果が得られる。
【0057】
さらに、上記実施例に記載した冷却時間はこれに限定したものではなく、任意の冷却時間下でも同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば少なくとも正極材と負極材とをセパレータを介して対向配置させ電解液を含浸させた発電部を電池ケースに収納し、この電池ケース開口部をー端側負極材中にはまり込む棒状の集電体の他端に接合した底板と絶縁体からなるガスケットにより構成される封口体で封口した電池において、前記集電体を貫通させるガスケットの嵌合部を結晶性樹脂により構成し、その内部を結晶化した樹脂とし、少なくとも上記集電体との接合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことを特徴とする電池嵌によって、ガスケットの割れを抑制し、電池内容物の漏洩などの抑制を図り、長期間保存後の信頼性を持った電池として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスケット
1a 溝部
1b 平板部
1c 防爆薄肉部
1d 底壁部
1e 嵌合部
1f 結合穴
2 集電体
3 底板
4 封口体
5 負極材
6 正極材
7 セパレータ
8 電池ケース
9 外装ラベル
10 絶縁キャップ
21a 結晶化した樹脂層
21b 非晶質状態の樹脂層
21c 結晶化が進んだ状態の樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材と負極材とをセパレータを介して対向配置させ電解液を含浸させた発電部を電池ケースに収納し、前記電池ケースの開口部をー端側が負極材中にはまり込む棒状の集電体の他端に接合した底板と絶縁体からなるガスケットにより構成される封口体で封口した電池において、前記集電体を貫通させるガスケットの嵌合部を結晶性樹脂により構成し、その内部を結晶化した樹脂とし、少なくとも上記集電体との接合部を非晶質状態の樹脂層で形成して構成したことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記ガスケットの嵌合部として、結晶化した樹脂の全周面に非晶質状態の樹脂層を形成して構成した請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記ガスケットの結晶化した樹脂は溶融樹脂を結晶化温度で徐冷することにより形成され、非晶質状態の樹脂層は溶融樹脂を結晶化温度で急令することにより形成された請求項1記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94309(P2012−94309A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239249(P2010−239249)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】