説明

電波吸収パネルの取付け金具および取り付け方法

【課題】電波吸収パネルの取付け金具および該金具を用いた電波吸収パネルの取り付け方法を提供する。
【解決手段】躯体に取り付けられた下地材に固定する係止部3と、電波吸収パネルに取り付けするための保持部4とを備える取付け金具1であって、前記保持部4は電波吸収パネルにねじ留めするねじ孔8が設けられた折曲げ部7がその先端を折り曲げすることにより形成されており、前記係止部3には下地材に係止できるフック部5と下地材に固定するためのボルトを横方向から差し込みできる留め孔6とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収パネルの取付け金具、並びに該金具を用いた電波吸収パネルの取り付け方法および取り付け構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度道路交通システムの一つとして、DSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)を利用したETC(Electronic Toll Collection)が、ノンストップ自動料金支払いシステムとして広く利用されている。このETCのアンテナ設置周囲には、アンテナ間の電波多重反射に起因するシステムの誤操作を防止するために、電波吸収体が設置される。図10はこのようなETCゲート部の一例を示したものである。図10に示す如く、ゲート入口部の両側には電波吸収壁28が設置されるとともに、ゲート部の側部や天井部にも電波吸収体29が躯体14に設置され、システムのご操作を防止している。
【0003】
かかる電波吸収壁や電波吸収体として、特許文献1に耐候性と耐久性に優れ、透視性も得られるガラスを使用した電波吸収体が開示されている。この電波吸収体は、2枚の導電膜付きガラスを樹脂層を介して接合して積層構造にし電波吸収性能と安全性が得られるようにしたもので、従来の合成繊維やカーボン含有発泡体を使用した電波吸収体に代わる物として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−182045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のガラスを使用した電波吸収体では、例えば50×180cmとかなりの広面積を有し重量が大きい板状体を、電波吸収性能が低下しないように安全かつ効率よく施工することが課題となる。特に、既設のETCゲートの天井部への取り付けは、駆体および作業環境の制約を受け一般に作業性が悪いため、電波吸収体としての安全性を確保しながら駆体に効率よく取り付けできる取付け金具および施工方法が強く求められている。
【0006】
本発明は、以上に鑑みてなされたもので、電波吸収パネルの取り付け施工における効率化と、電波吸収パネルの取り付け構造体における安全性および電波吸収性能の確保と、を同時に実現できる、電波吸収パネル取付け金具、並びに該取付け金具を用いた電波吸収パネルの取り付け方法および取り付け構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電波吸収パネルの施工上の条件と制約および作業環境などを考慮して、電波吸収パネルの取り付けに適合する取付け金具を用いることによって上記目的を達成することを特徴とする。具体的には、本発明は、電波吸収パネルを駆体に固定された下地材に取付け金具を用いて取り付けする際、フック部を有する取付け金具を使用し、このフック部を下地材に係止させて電波吸収パネルを仮保持することによって、重い電波吸収パネルであっても効率的な取り付け作業が実現できるようにしたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、駆体に取り付けられた下地材に固定する係止部と、電波吸収パネルに取り付けするための保持部とを備える取付け金具であって、前記保持部は電波吸収パネルにねじ留めする折曲げ部がその先端を折り曲げすることにより形成されており、前記係止部には下地材に係止できるフック部と下地材に固定するためのボルトを横方向から挿入できる留め孔とが形成されていることを特徴とする電波吸収パネルの取付け金具を提供する。
【0009】
本発明の取付け金具において、前記保持部は、下地材の長さ方向と直交する方向において係止部に対し所定の角度をなしていることが好ましい。また、前記フック部は、下地材の長さ方向に沿って形成された条溝に係止できるように係止部の一部を折り曲げて形成され、また前記留め孔と同一高さに設けられることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、電波吸収パネルの両側をそれぞれ2個以上の取付け金具で保持し、駆体に固定された下地材に取り付けする方法であって、前記電波吸収パネルの少なくとも片側に、フック部を有する取付け金具を予め取り付けておき、該取付け金具のフック部を前記下地材の長さ方向に沿って形成されている条溝に係止させることにより電波吸収パネルを仮保持し、仮保持された状態で電波吸収パネルを前記取付け金具を用いて下地材に固定することを特徴とする電波吸収パネルの取り付け方法を提供する。
【0011】
上記取り付け方法において、すべての取付け金具にフック部を有する上記取付け金具を使用することが好ましい。また、電波吸収パネルの片側だけにフック部を有する上記取付け金具を使用し、他側にはフック部を有しない取付け金具を使用して、電波吸収パネルの片側をフック部を有する取付け金具で仮保持した状態で、電波吸収パネルの他側をフック部を有しない前記取付け金具で下地材に固定することが好ましい。
【0012】
また、上記取り付け方法において、前記電波吸収パネルの片側の取付け金具が、フック部を有する取付け金具であり、前記電波吸収パネルの他の側の取付け金具がフック部を有しない取付け金具であり、前記電波吸収パネルの片側をフック部を有する取付け金具で仮保持した状態で、電波吸収パネルの他の側に取り付けられた取付け金具を下地材に固定することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、電波吸収パネルの両側をそれぞれ2個以上の取付け金具で保持することにより、駆体に固定された下地材に取り付けされた電波吸収パネルの取り付け構造体であって、前記電波吸収パネルの少なくとも片側の2個の取付け金具が、上記取付け金具であることを特徴とする電波吸収パネルの取り付け構造体を提供する。
【0014】
上記取り付け構造体において、前記電波吸収パネルは、電磁波入射面側から導電膜付きガラス、該ガラスより導電率の低い樹脂層、および導電膜付きガラスがこの順で配置されるとともに、各ガラスの導電膜はそれぞれ前記樹脂層に面するように配置された積層体であって、該積層体のいずれか一方の対向する各辺部に、取付け金具を取り付けるための枠体が装着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の取付け金具によれば、電波吸収パネルを躯体に固定された下地材に取り付ける際、電波吸収パネルを係止部のフックにより下地材に仮保持できるので、重量が大きい電波吸収パネルを厳しい作業環境下であっても安全に効率よく取り付けできる。また、電波吸収パネルを取り換えたり、取り外す際にも、電波吸収パネルを仮保持できるので、電波吸収パネルの取り換えおよび取り外しを安全かつ効率よくできる。さらに、既設の躯体に対しても電波吸収パネルの取り付け作業の効率化を図ることができる。
【0016】
さらに、取付け金具の保持部が係止部に対し所定の角度をなしていれば、保持部と係止部との間に生じる弾性作用によって衝撃が緩和されるため、電波吸収パネルの安全性を向上できる。
【0017】
さらにまた、取付け金具のボルトが下地材から外れた場合でも、係止部のフックにより電波吸収パネルが保持されるので、落下を一時的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施形態である取付け金具の斜視図である。
【図2】図1のX−X部の断面図である。
【図3】本発明の電波吸収パネルの取り付け構造体の1実施形態を下方から見たときの平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図4のA部の拡大説明図である。
【図6】図4のB部の拡大説明図である。
【図7】本発明の電波吸収パネルの取り付けにおいて使用できる金具の一例の斜視図である。
【図8】本発明に係る電波吸収パネルに使用される枠体の一例の斜視図である。
【図9】図4のY−Y部の断面図である。
【図10】ETCゲート部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態である取付け金具1を示し、図2は図1のX−X部における取付け金具1の断面図を示す。図示するように本発明の取付け金具1は、躯体に取り付けられた下地材に固定する係止部3と電波吸収パネルに取り付けるための保持部4とを有している。係止部3には、下地材に係止できるフック部5と下地材に固定するためのボルトを横方向から挿入できる留め孔6とが形成されている。本取付け金具では、後述するように下地材の側部においてフック部5を係止し、留め孔6にボルトを挿入して固定するため、係止部3の例えば左側の一部を縦方向に切断して折り曲げることによってフック部5を形成し、該フック部5と反対側の係止部を端部から横方向に切り欠いて留め孔6が設けられている。この場合、フック部5と留め孔6とは、フック部5で仮保持した状態で留め孔6にボルトが挿入しやすいように係止部3の同レベル位置に並べて設けるのが好ましい。留め孔6を係止部3の端部から横方向に形成することにより、ボルトをこの端部から挿入できるので、電波吸収パネルの取り付け作業がしやすくなり施工性が向上する。
【0020】
本発明の取付け金具において、これらのフック部5および留め孔6の位置や形状は固定する下地材に合わせて適宜変えられる。例えば、フック部5を下地材の上部に係止させる場合には、留め孔6の位置は変えなくてもよいが、フック部5は係止部3の上端を折り曲げて形成してもよい。もちろん、留め孔6の位置も取付け金具1を下地材のどこに固定するかによって変えられる。また、留め孔6の形状は、留め孔6にボルトを挿入した時、あるいは下地材に取付け金具1をボルトで固定した後、取付け金具1がボルトから離脱するのを防ぐために、留め孔6の終端上部に挿入されたボルトが納まる凹部を有していることが好ましい。
【0021】
一方、取付け金具1の保持部4は上記係止部3と一体化して取付け金具の下半部を形成しており、その先端には折り曲げ加工によって電波吸収パネルにねじ留めする折曲げ部7が形成されている。折曲げ部7にはねじ孔8が設けられる。
【0022】
本発明において、取付け金具1は金属板を打ち抜いて曲げ加工することにより容易に得られる。取付け金具1の材質としては、強度や加工の容易さから例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属が好ましく使用できる。なかでも切り欠き性、曲げ加工のし易さからステンレスが好ましく、その厚さは5mm以下、さらには2mm以下であることがより好ましいが、所望の強度を得るために1mm以上が好ましい。これらの金属板を取付け金具1の形状に合わせて打ち抜いた後、フック部5および折曲げ部7を曲げ加工すればよい。この場合、図2に示すように保持部4を係止部3に対し湾曲(屈曲を含む)させて、保持部4が係止部3に対して所定の角度θを有していることが好ましい。このように保持部4が係止部3に対し角度θを有していると、電波吸収パネルに衝撃や左右および上下方向の外力が付与されたとき、両者の間の弾性作用によって緩衝効果が得られやすくなるため、取付け金具1への集中応力を回避できるとともに、電波吸収パネルの取り付け作業も行いやすくなる。さらに、保持部4を係止部3に対し湾曲させることによって、保持部4の折曲げ部7の係止部5に対する位置関係を調整して片寄りをなくし、折曲げ部7を係止部5のほぼ真下に形成できるため、ねじ孔8を係止部5のほぼ真下に設けることができる。その結果、係止部5のほぼ真下の位置で電波吸収パネルを取付け金具1で保持できるので、取付け金具1に偏った応力が発生しなくなり電波吸収パネルを安定して保持できる。角度θの大きさは、取付け金具1の厚さ、幅および高さ寸法などによって変わり特定されないが、通常5〜30度が好ましく、10〜20度がより好ましい。
【0023】
次に、本発明の取付け金具を用いて電波吸収パネルを躯体に固定された下地材に取り付けする方法について、図3および図4を参照して説明する。図3は、例えば図10のETCゲートの天井部に上記取付け金具1を用いて取り付け施工された電波吸収パネル2を下方から見たときの平面図であり、図4はその正面図である。図3には1枚の電波吸収パネル2だけを示したが、枚数に関わりなく所望の枚数の電波吸収パネルを同様な方法によって取り付けできる。最初に、電波吸収パネル2について説明する。
【0024】
本発明において、電波吸収パネルとしては所定の電波吸収性能を有する板状の電波吸収体であれば、従来から知られているものを含めて使用できる。しかし、特許文献1に記載されているガラスを基体とする電波吸収体(以下、ガラス製電波吸収体とする)は、耐候性および耐久性が優れており、風雨に曝されるETCゲートの電波吸収体として特に適している。本例の電波吸収パネル2はこのガラス製電波吸収体を使用している。電波吸収パネル2は一般に矩形状であり、その対向する辺部のうちの一方(本例では長辺側)の各辺部の耳部に枠体9が装着されており、該枠体部分を取付け金具で保持することによって電波吸収パネル2を躯体に固定された下地材に取り付ける。
【0025】
図8は枠体9の一例である。図8に示すように枠体9は、例えばステンレス鋼製の長尺材で、下側には支持爪22が設けられている。この支持爪22によって電波吸収パネル2の耳部を嵌合するための断面コ字状の空隙部が長手方向に形成され、該空隙部に嵌合された電波吸収パネル2の耳部を支持爪22で挟持できるようになっている。一方、枠体9の上側には取付け金具1を取り付けるためのねじ棒21が下地材の位置に合わせて植設されている。したがって、本例のように電波吸収パネル2を2本の下地材に取り付ける場合には、1個の枠体9に2個のねじ棒21を設けるが、下地材の数が増えるとそれに合わせて必要個数のねじ棒21が設けられる。電波吸収パネル2を安定に保持するためには、電波吸収パネル2の対向する各辺部を少なくとの2個の取付け金具で保持する必要があるが、その個数は電波吸収パネル2を何箇所で保持するかによって決まり、電波吸収パネル2の大きさや重量を考慮して決められる。なお、電波吸収パネル2の電波吸収性能に影響を及ぼさないように、支持爪22はできるだけ小さく、またその個数も少ないことが好ましい。枠体9の材質および形体は、電波吸収パネル2の端部に装着でき、電波吸収性能を損ねないものであれば限定されない。
【0026】
図9は、矩形状のガラス製電波吸収体の長辺側の耳部に上記枠体9が装着された電波吸収パネル2の端部(図4のY−Y部)の断面図である。この断面部は、枠体9の下部に支持爪22が設けられている箇所のため、ガラス製電波吸収体の端部は支持爪22によって支持される。ここで、本例のガラス製電波吸収体について図9を参照して具体的に説明する。図9に示すようにガラス製電波吸収体は、到来電磁波30の入射面側から導電膜付きガラス23、該ガラス23より導電率の低い樹脂層24、および導電膜付きガラス23'がこの順で配置されるとともに、各ガラスの導電膜25、25'がそれぞれ前記樹脂層24に面するように配置された積層体である。この積層体は、電磁波入射面側のガラス23の導電膜25のシート抵抗値が他方のガラス23'の導電膜25'よりも大きく、電磁波入射面側の導電膜25を透過した電磁波が他方の導電膜25'で反射され、反射された電磁波によって打ち消し合うように構成されており、所望の電波吸収性能を有している。前記導電膜としては、Sn、In、およびZnからなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物を主成分とする膜が好ましく、また樹脂層24としてはEVA(エチレン酢酸ビニル)またはPVB(ポリビニルブチラール)が好ましく使用できる。
【0027】
電波吸収パネル2に装着された枠体9は、電波吸収パネル2との隙間にシール材27を充填して堅固に固定される。さらに、電波吸収パネル2に装着された枠体9が電波吸収パネル2から離脱しないように、枠体9は図3に示すごとく対向する枠体同士を連結金具26によって連結することが好ましい。連結は2個所以上で行われるのが好ましく、本例では取付け金具1を取り付けるためのねじ棒21が設けられている2箇所で連結している。
【0028】
本発明において、電波吸収パネル2の下地材11への取り付けは、前記取付け金具1を用いて次の手順によって行われる。下地材11としては、汎用の構造材として知られている断面四角形のシステム材(図5参照)が、曲げ強度が大きく、かつ躯体への取り付けや電波吸収パネル2の取り付けに適合している点で好ましく使用できる。具体的には、上記下地材11の各面には各種の留め具が適用しやすい蟻溝状の条溝12が長さ方向に沿って形成されているので、該条溝12を利用して下地材自体を躯体に取り付けたり、該下地材11に電波吸収パネル2を取付け金具を用いて取り付けできる機能を有している。例えば、下地材11は、吊棒15の下端部を下地材11の上面の条溝に係止させてナット16で緊締することによって躯体14に取り付けることができる。本例は、このようにして躯体に固定された2本の下地材11に、電波吸収パネル2の対向する長辺耳部に装着した各枠体9にそれぞれあらかじめ取り付けた2個(合計で4個)の取付け金具を用いて電波吸収パネル2を取り付ける方法である。
【0029】
このように電波吸収パネル2を4個の取付け金具で下地材11に取り付ける場合、取り付け作業において電波吸収パネル2を4個の取付け金具で仮保持するか、または2個の取付け金具で電波吸収パネル2の片側だけを仮保持するかによって、使用する取付け金具が選択される。前者の場合には、4個ともフック部5を有する本発明の取付け金具1を使用し、4個の取付け金具1のフック部5を下地材11に係止させて電波吸収パネル2を仮保持して下地材11への取り付け作業を行う。一方、後者の場合には、電波吸収パネル2の長辺または短辺のいずれか一方の側に取り付ける2個の取付け金具はフック部5を有する本発明の取付け金具1を使用するが、他方の側には本発明の取付け金具1と異なる、すなわちフック部を有しない取付け金具を使用し、本発明の取付け金具1のフック部5を下地材11に係止させることによって電波吸収パネル2の片側だけを仮保持して取り付け作業を行う。したがって、本発明において電波吸収パネルの取り付けは、電波吸収パネルの長辺側または短辺側のいずれか一方または両方に、フック部を有する本発明の取付け金具を各側において少なくとも2個取り付けることによって実施が可能となる。
【0030】
図3は、上記の後者の取り付け方法であり、以下この方法について詳述する。図3において電波吸収パネル2の左の短辺側には本発明の取付け金具1を使用し、右の短辺側には本発明の取付け金具1とは異なる取付け金具10を使用している。右の短辺側に使用する取付け金具10は、電波吸収パネル2を仮保持しないため前記した取付け金具1のフック部は必須でなく、また電波吸収パネル2の反対側が仮保持された状態でボルト留めができるため、ボルト孔は取付け金具1のようなボルトを横方向から挿入できる留め孔でなくてもよい。
【0031】
図7は上記取付け金具10の好ましい実施形態を示したものである。図示するように取付け金具10は、過度の衝撃に対する緩衝作用を得られやすくし、また電波吸収パネル2と下地材11に対する留め位置が横方向にずれないようにするため、打ち抜かれた金属板を曲げ加工して作られる。この場合、曲げ加工の形状としては、前記取付け金具1の保持部4の曲げ角度θと対称状になるように反対側に曲げ加工されることが好ましい。このように取付け金具1と取付け金具10の形状を対称状にすることによって、電波吸収パネル2に外力や衝撃が付与されたとき両者が打ち消しあって、電波吸収パネル2の変動を軽減させることができるからである。なお、20は電波吸収パネル2および下地材11にねじ留めするボルトのねじ孔である。
【0032】
電波吸収パネル2の取り付け作業は、最初に電波吸収パネル2の長辺端部に装着された各枠体9に植立されているねじ棒21に取付け金具1と取付け金具10の取り付けを行う。具体的には、各枠体9の左側のねじ棒21には、図5に示すように取付け金具1をナット19によってねじ留めし、各枠体9の右側のねじ棒21には、図6に示すように前記取付け金具10をナット19によってねじ留めし、あらかじめ取り付けておく。これによって、電波吸収パネル2の左側には2個の取付け金具1が取り付けられ、右側には2個の取付け金具10が取り付けられる。
【0033】
次いで、電波吸収パネル2に取り付けられた2個の取付け金具1のフック部5を、躯体14に固定して準備されている下地材11の側面の条溝12に係止させて、電波吸収パネル2の左側を下地材11に取付け金具1によって仮保持する。このように仮保持された状態で電波吸収パネル2の位置を調整した後、電波吸収パネル2の右側に取り付けられている2個の取付け金具10の上端を、図6に示すように下地材11の下面の条溝12にボルト13とナット17によって固定する。次に、電波吸収パネル2の右側の取付け金具1の留め孔6にボルト13を挿入してナット17で固定する。この場合、電波吸収パネル2が取付け金具10で固定されていても、取付け金具1の留め孔6とボルト13とが同じ高さになるようにフック部5で仮保持されているため、ボルト13を取付け金具1の留め孔6に横方向から容易に挿入できる。なお、取付け金具1と取付け金具10を下地材11に固定するボルト13は、作業の効率化を図るために、あらかじめ下地材11の条溝12に嵌挿しておくことが好ましい。
【0034】
本発明の電波吸収パネルの取り付け構造体は、本発明のフック部を有する取付け金具を用いて行う電波吸収パネルの取り付け方法によって施工されたものである。
【0035】
以上、本発明の電波吸収パネルの取り付け方法について説明したが、この方法を繰り返すことによって所定枚数の電波吸収パネル2を下地材11に取り付けすることができる。また、本例は電波吸収パネル2の左側だけに本発明の取付け金具1を使用したが、前記したように右側にもフック部を有する取付け金具を使用し、電波吸収パネル2の全体をこれらの取付け金具1で仮保持することにより、電波吸収パネル2を下地材に効率よく取り付けできる。この場合、電波吸収パネルの右側に使用する取付け金具の係止部に設けるボルトのねじ孔は、ボルトを端部から挿入できなくてもよい。
【0036】
また、本例は横幅が大きい細長の電波吸収パネルを2本の下地材11に取り付け施工するため、取付け金具の位置を短辺の端部からかなり内側に設定しているが、横幅が大きくない電波吸収パネルの場合には、端部付近に設定してもよい。この場合には枠体を短辺側に装着してもよい。さらに、本例のような横幅が大きい電波吸収パネルを3本の下地材に取り付けする場合には、各枠体にはそれぞれ下地材の位置に合わせて3個の取付け金具が取り付けられる。この場合、使用する取付け金具は、少なくとも最左の取付け金具にフック部を有する本発明の取付け金具を使用することによって、該取付け金具で電波吸収パネルの左側を仮保持できるので、他の取付け金具はフック部を有する取付け金具であってもよいし、フック部を有しない取付け金具であってもよい。
【0037】
また、図3では電波吸収パネル2の短辺左側の2個に本発明の取付け金具1を使用したが、電波吸収パネル2の長辺側の例えば上側の2個に本発明の取付け金具1を使用し、下側の2個にフック部を有しない取付け金具を使用してもよい。この場合には、電波吸収パネル2の長辺上側を取付け金具1で仮保持して電波吸収パネル2の取り付けを行うことができる。
【0038】
本発明の電波吸収パネルの取り付け方法によれば、このように取り付け作業時の電波吸収パネルを取付け金具のフック部によって下地材に仮保持できるので、ETCゲートの天井に電波吸収パネルを取り付ける場合のように厳しい作業環境であっても、電波吸収パネルを安全に効率よく取り付けできる。そして、電波吸収パネルを取り換えたり、取り外しする際にも、電波吸収パネルを取付け金具のフック部で下地材に仮保持できるため、作業が同様に安全に効率よくできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、電波吸収パネルの取り付けに好適し、特にETCゲートの天井部への電波吸収パネルの取り付けに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1:取付け金具
2:電波吸収パネル
3:係止部
4:保持部
5:フック部
6:留め孔
7:折曲げ部
8:ねじ孔
9:枠体
10:金具
11:下地材
12:条溝
14:躯体
15:吊棒
22:支持爪
23:ガラス
24:樹脂層
25:導電膜
30:到来電磁波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆体に取り付けられた下地材に固定するための係止部と、電波吸収パネルに取り付けするための保持部とを備える取付け金具であって、前記保持部は電波吸収パネルにねじ留めする折曲げ部がその先端を折り曲げすることにより形成されており、前記係止部には下地材に係止できるフック部と下地材に固定するためのボルトを横方向から挿入できる留め孔とが形成されていることを特徴とする電波吸収パネルの取付け金具。
【請求項2】
前記保持部は、下地材の長さ方向と直交する方向において係止部に対し所定の角度をなしている請求項1に記載の電波吸収パネルの取付け金具。
【請求項3】
前記フック部は、下地材の長さ方向に沿って形成された条溝に係止できるように係止部の一部を折り曲げて形成されている請求項1または2に記載の電波吸収パネルの取付け金具。
【請求項4】
前期フック部および留め孔が、係止部の同じ高さ位置に設けられている請求項1、2または3に記載の電波吸収パネルの取付け金具。
【請求項5】
電波吸収パネルの両側をそれぞれ2個以上の取付け金具で保持し、駆体に固定された下地材に取り付けする方法であって、前記電波吸収パネルの少なくとも片側に、フック部を有する取付け金具を予め取り付けておき、該取付け金具のフック部を前記下地材の長さ方向に沿って形成されている条溝に係止させることにより電波吸収パネルを仮保持し、仮保持された状態で電波吸収パネルを前記取付け金具を用いて下地材に固定することを特徴とする電波吸収パネルの取り付け方法。
【請求項6】
前記取付け金具のすべてが、請求項1〜4のいずれかに記載の取付け金具である請求項5に記載の電波吸収パネルの取り付け方法。
【請求項7】
前記電波吸収パネルの片側の取付け金具が、請求項1〜4のいずれかに記載のフック部を有する取付け金具であり、前記電波吸収パネルの他の側の取付け金具がフック部を有しない取付け金具であり、前記電波吸収パネルの片側をフック部を有する取付け金具で仮保持した状態で、電波吸収パネルの他の側に取り付けられた取付け金具を下地材に固定する請求項5に記載の電波吸収パネルの取り付け方法。
【請求項8】
電波吸収パネルの両側をそれぞれ2個以上の取付け金具で保持することにより、駆体に固定された下地材に取り付けされた電波吸収パネルの取り付け構造体であって、前記電波吸収パネルの少なくとも片側の2個の取付け金具が、請求項1〜4のいずれかに記載の取付け金具であることを特徴とする電波吸収パネルの取り付け構造体。
【請求項9】
前記電波吸収パネルは、電磁波入射面側から導電膜付きガラス、該ガラスより導電率の低い樹脂層、および導電膜付きガラスがこの順で配置されるとともに、各ガラスの導電膜はそれぞれ前記樹脂層に面するように配置された積層体であって、該積層体のいずれか一方の対向する各辺部に金具を取り付けるための枠体を有している請求項7に記載の電波吸収パネルの取り付け構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−278264(P2010−278264A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129682(P2009−129682)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(599093524)旭ビルウォール株式会社 (19)
【Fターム(参考)】