説明

電流帰還型アンプ

【課題】 オーディオ信号を増幅する電流帰還型アンプにおいて、出力されるオーディオ信号の品質を向上させる。
【解決手段】 オーディオ信号を増幅する電流帰還型アンプにおいて、オーディオ信号を増幅するアンプ回路を備え、アンプ回路から出力されるオーディオ信号の品質を向上させるために、オーディオ信号の帰還回路と直流成分の帰還回路とをそれぞれ独立して備えるようにして、複雑な信号経路をなくし簡素化した信号経路として構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号を増幅する電流帰還型アンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電圧帰還型アンプにおいては、初段に差動アンプを配置し、アンプ又はスピーカへの出力信号を差動アンプの反転入力側に帰還することにより、アンプ機器の出力端子への直流電圧の発生を防止していた。
そして、従来の電流帰還型アンプにおいては、初段に電圧−電流変換回路を配置し、回路素子のばらつきによって出力に発生するオフセット電圧を抑圧するための回路を必要としていた(DCサーボ回路)。
【0003】
従来の電流帰還型アンプの回路図を、図2に示す。入力端子INPUTから入力されたオーディオ信号は、オペアンプU11の非反転入力端子に入力される。オペアンプU11の出力信号は、トランジスタQ11、Q12、Q13、Q14、Q15、Q16を備える増幅回路に入力される。
図2の電流帰還型アンプにおいては、オーディオ信号成分を主として帰還するAC帰還ループ(矢印c、矢印e)及び回路の直流安定性を向上させるためのDC帰還ループ(矢印d)を備える多重帰還型アンプとして構成されている。
AC帰還ループ(矢印e)、DC帰還ループ(矢印d)は、増幅回路の出力バッファとして動作するオペアンプU12の出力から、各々の帰還経路を経て、オペアンプU11の反転入力端子に入力される。
出力端子に直流電圧を発生させないようにするため、出力から直流成分及び交流成分を全帰還する回路が用いられていた(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−21730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電流帰還型アンプにおいて、DC帰還ループ(矢印d)にも多少のオーディオ信号成分が重畳され、オーディオ信号成分は全ての帰還ループ(矢印c、d、e)を通ってフィードバックされる複雑な信号経路となっていた。複雑な信号経路は、オーディオ信号の品質劣化の要因となりうる。
【0006】
オペアンプICは、複数のトランジスタ、抵抗から構成されている。抵抗をオーディオ信号が通過することにより、熱雑音、電流雑音が発生する。また、トランジスタ等の能動素子を使用することにより、フリッカー雑音も発生するため、これらの雑音がオーディオ信号に重畳して、S/Nを悪化させていた。
また、トランジスタは、非線形素子であるため、オーディオ信号が通ることにより、歪率の悪化が生じる。また、トランジスタは、端子間容量があるため、周波数特性、位相特性への悪影響も及ぼす。
【0007】
本発明の目的は、電流帰還型アンプにおいて、オーディオ信号の帰還回路をDC帰還回路と分離して簡素化し、オーディオ信号の品質劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電流帰還型アンプは、オーディオ信号を増幅するアンプ回路を備えた電流帰還型アンプにおいて、オーディオ信号の帰還回路と直流成分の帰還回路とを各々独立して備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電流帰還型アンプによれば、オーディオ信号の帰還経路をDC帰還経路と分離して簡素化し音質劣化を防止することができる。
また、本発明の電流帰還型アンプによれば、音質の劣化を防止しながら、DCオフセットを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の電流帰還型アンプの一実施例の構成を示す回路図である。入力端子INPUTは、電解コンデンサC1、抵抗R3を介して、トランジスタQ1、Q2のベースに接続される。入力端子INPUTと電解コンデンサC1の接続線は、抵抗R1を介して接地される。電解コンデンサC1と抵抗R3の接続線は、抵抗R2を介して接地される。
トランジスタQ1のエミッタは、抵抗R4、R6を介して、正電源電圧VCCに接続される。トランジスタQ2のエミッタは、抵抗R5、R7を介して、負電源電圧VEEに接続される。
【0011】
抵抗R4と抵抗R6の接続点は、トランジスタQ3のベースに接続される。抵抗R5と抵抗R7の接続点は、トランジスタQ4のベースに接続される。
トランジスタQ3のコレクタは、ダイオードD1、抵抗R10を介して、正電源電圧VCCに接続される。また、トランジスタQ3のコレクタは、トランジスタQ5のベースに接続される。
トランジスタQ4のコレクタは、ダイオードD2、抵抗R11を介して、正電源電圧VEEに接続される。また、トランジスタQ4のコレクタは、トランジスタQ6のベースに接続される。
【0012】
トランジスタQ3のエミッタは、抵抗R8、R9を介して、トランジスタQ4のエミッタに接続される。トランジスタQ3と抵抗R8の接続点は、トランジスタQ2のコレクタに接続される。トランジスタQ4と抵抗R9の接続点は、トランジスタQ1のコレクタに接続される。
トランジスタQ5のコレクタは、トランジスタQ6のコレクタに接続される。トランジスタQ5のエミッタは、抵抗R12を介して、正電源電圧VCCに接続される。トランジスタQ6のエミッタは、抵抗R13を介して、負電源電圧VEEに接続される。
【0013】
トランジスタQ5のコレクタとトランジスタQ6のコレクタは、出力バッファとして構成されたオペアンプU1、電解コンデンサC3を介して、出力端子OUTPUTに接続される。トランジスタQ5、Q6のコレクタとオペアンプU1の接続線は、抵抗R14を介して接地され、コンデンサC2を介して接地される。電解コンデンサC3と出力端子OUTPUTの接続線は、抵抗R15を介して接地される。
【0014】
オペアンプU1の出力は、抵抗R23を介して、抵抗R8とR9の接続点に接続される。抵抗R23と、抵抗R8とR9の接続点との接続線は、抵抗R24を介して接地される。
オペアンプU1の出力は、抵抗R25を介して、トランジスタQ7、Q8のベースに接続される。抵抗R25と、トランジスタQ7、Q8のベースとの接続線は、電解コンデンサC4を介して接地される。
【0015】
トランジスタQ7のエミッタは、抵抗R19、R21を介して、正電源電圧VCCに接続される。トランジスタQ8のエミッタは、抵抗R20、R22を介して、負電源電圧VEEに接続される。
抵抗R19と抵抗R21の接続点は、トランジスタQ9のベースに接続される。抵抗R20と抵抗R22の接続点は、トランジスタQ10のベースに接続される。
【0016】
トランジスタQ9のコレクタは、トランジスタQ5のエミッタに接続される。トランジスタQ10のコレクタは、トランジスタQ6のエミッタに接続される。トランジスタQ9のエミッタは、抵抗R16、R17を介して、トランジスタQ10のエミッタに接続される。トランジスタQ9と抵抗R16の接続点は、トランジスタQ8のコレクタに接続される。トランジスタQ10と抵抗R17の接続点は、トランジスタQ7のコレクタに接続される。抵抗R16と抵抗R17の接続線は、抵抗R18を介して接地される。
【0017】
入力端子INPUTから入力されたオーディオ信号は、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6を備える増幅回路に入力される。オーディオ信号成分を帰還するAC帰還ループ(矢印a1、a2)と、直流安定性を向上させるためのDC帰還ループ(矢印b1、b2)とを分離してそれぞれ独立した帰還ループとして構成している。
【0018】
AC帰還ループ(矢印a1、a2)、DC帰還ループ(矢印b1、b2)は、増幅回路の出力バッファとして動作するオペアンプU1の出力から、各々の帰還経路に分かれて帰還される。DC帰還ループ(矢印b1、b2)は、トランジスタQ7、Q8、Q9、Q10を備えたDCサーボ回路に入力され、出力端子OUTPUTでの直流電圧の発生が防止される。
【0019】
DC帰還ループ(矢印b1、b2)にはオーディオ信号成分が重畳されないので、オーディオ信号成分は全てAC帰還ループ(矢印a1、a2)を通ってフィードバックされる。信号経路を簡素化したことによって、オーディオ信号の品質劣化を抑制することができる。
【0020】
帰還ループを独立させることによって、図2の従来例で必要としていた入力アンプU11を廃し、オーディオ信号成分が通る素子数を減らすことができ、オーディオ信号成分の経路を簡素化することができる。従って、抵抗をオーディオ信号が通過することによって発生する熱雑音や電流雑音、トランジスタ等の能動素子を使用することによって発生するフリッカー雑音などによるS/Nの悪化を防止することができる。
また、トランジスタをオーディオ信号が通ることによる歪率の悪化、トランジスタの端子間容量による、周波数特性、位相特性への悪影響なども、避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電流帰還型アンプの一実施例の構成を示す回路図である。
【図2】従来の電流帰還型アンプの一構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0022】
INPUT 入力端子
OUTPUT 出力端子
R1、R2、・・・、R49 抵抗
C1、C2、・・・、C14 コンデンサ
U1、U11、U12 オペアンプ
Q1、Q2、・・・、Q16 トランジスタ
D1、D2、D11、D12 ダイオード
VCC、VEE 電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号を増幅するアンプ回路を備えた電流帰還型アンプにおいて、
オーディオ信号の帰還回路と直流成分の帰還回路とを各々独立して備えたことを特徴とする電流帰還型アンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−35117(P2010−35117A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197819(P2008−197819)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(303009467)株式会社ディーアンドエムホールディングス (274)
【Fターム(参考)】