説明

電流検出用センサ

【課題】電源を不要とし、環状コアの磁気回路についての非対称性を容易に補正可能で、かつ検出する電流について大きなダイナミックレンジを確保する。
【解決手段】分離位置Aを挟んでコア部2aに巻回された第1コイル3およびコア部2bに巻回された第2コイル4と、分離位置Bを挟んでコア部2aに巻回された第3コイル5およびコア部2bに巻回された第4コイル6とを備え、各コイル3,5は順極性で直列接続されて第1直列回路21を構成し、各コイル4,6は順極性で直列接続されて第2直列回路22を構成し、第1直列回路21にはコイル3,5に発生する誘起電圧のバランス調整用の第1抵抗回路7が接続され、第2直列回路22にはコイル4,6に発生する誘起電圧のバランス調整用の第2抵抗回路8が接続され、各直列回路21,22は順極性の状態で直列接続されて、各直列回路21,22の両端間にそれぞれ発生する誘起電圧の差動電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを巻回した分離可能な環状コアを有し、電路を流れる電流を検出する電流検出用センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電流検出用センサとして、下記特許文献1に開示された漏洩電流検出用センサ(漏洩電流測定用クランプテスタ)が知られている。この漏洩電流検出用センサは、コイルを巻回した分離可能な環状のコアを有し、活線の状態で回路の漏洩電流を測定することができるように構成された漏洩電流検出用センサであって、環状のコアのそれぞれに巻回した実質上2個ずつのコイルを直列または並列に接続した2組のコイルと、コアの磁気回路の非対称性を補正するために抵抗を用いた回路により2組のコイルの出力電流のアンバランスを調整すると共に、被測定電流の電流測定レンジに応じて2組のコイルの各出力電流の信号振幅をそれぞれ制限する回路およびこの回路の2つの出力電流を加算しその加算値に対応する電圧を出力する加算回路を備え、この加算回路より被測定電流に対応した電圧が得られるように構成されている。
【0003】
この構成により、この電流検出用センサでは、回路規模を大きくすることなく、コアの磁気回路についての非対称性を補正可能であり、また測定電流について大きなダイナミックレンジを確保可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3441984号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の電流検出用センサには、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、この電流検出用センサでは、2組のコイルの各出力電流の信号振幅を接地の電位に対して同極性の状態で発生させるため、演算増幅器などで構成された加算回路が必須となる。このため、この電流検出用センサには、加算回路を作動させる電圧を供給する電源が必要になることから、部品点数の増加と共に製品コストの上昇を招来するという課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、電源を不要としつつ、環状コアの磁気回路についての非対称性を容易に補正可能で、かつ検出する電流について大きなダイナミックレンジを確保し得る電流検出用センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電流検出用センサは、周方向に沿って離間した一対の分離位置で2つのコア部に分離可能な環状コアと、前記一対の分離位置のうちの一方の分離位置を挟んで前記2つのコア部のうちの一方のコア部に巻回された第1コイルおよび当該2つのコア部のうちの他方のコア部に巻回された第2コイルと、前記一対の分離位置のうちの他方の分離位置を挟んで前記一方のコア部に巻回された第3コイルおよび前記他方のコア部に巻回された第4コイルとを備え、電路に流れる電流を検出可能に構成された電流検出用センサであって、前記環状コアを一方向に巡る磁束によって前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ生じる誘起電圧の極性を基準としたときに、前記第1コイルおよび前記第3コイルは順極性の状態で直列接続されて第1直列回路を構成すると共に、前記第2コイルおよび前記第4コイルは順極性の状態で直列接続されて第2直列回路を構成し、前記第1直列回路には、前記第1コイルおよび前記第3コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第1抵抗回路が接続され、前記第2直列回路には、前記第2コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第2抵抗回路が接続され、前記第1直列回路および前記第2直列回路は、順極性の状態で直列接続されて、当該第1直列回路の両端間および当該第2直列回路の両端間にそれぞれ発生する前記誘起電圧の差動電圧をそれぞれの非接続端部間から出力する。
【0008】
また、請求項2記載の電流検出用センサは、周方向に沿って離間した一対の分離位置で2つのコア部に分離可能な環状コアと、前記一対の分離位置のうちの一方の分離位置を挟んで前記2つのコア部のうちの一方のコア部に巻回された第1コイルおよび当該2つのコア部のうちの他方のコア部に巻回された第2コイルと、前記一対の分離位置のうちの他方の分離位置を挟んで前記一方のコア部に巻回された第3コイルおよび前記他方のコア部に巻回された第4コイルとを備え、電路に流れる電流を検出可能に構成された電流検出用センサであって、前記環状コアを一方向に巡る磁束によって前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ生じる誘起電圧の極性を基準としたときに、前記第1コイルおよび前記第2コイルは順極性の状態で直列接続されて第1直列回路を構成すると共に、前記第3コイルおよび前記第4コイルは順極性の状態で直列接続されて第2直列回路を構成し、前記第1直列回路には、前記第1コイルおよび前記第2コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第1抵抗回路が接続され、前記第2直列回路には、前記第3コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第2抵抗回路が接続され、前記第1直列回路および前記第2直列回路は、順極性の状態で直列接続されて、当該第1直列回路の両端間および当該第2直列回路の両端間にそれぞれ発生する前記誘起電圧の差動電圧をそれぞれの非接続端部間から出力する。
【0009】
また、請求項3記載の電流検出用センサは、請求項1または2記載の電流検出用センサにおいて、前記第1直列回路の前記非接続端部には、当該第1直列回路の両端間に発生する前記誘起電圧の振幅を調整するための第3抵抗回路が接続され、前記第2直列回路の前記非接続端部には、当該第2直列回路の両端間に発生する前記誘起電圧の振幅を調整するための第4抵抗回路が接続されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の電流検出用センサによれば、演算増幅器などで構成された加算回路を使用しないことから電源を不要としつつ、環状コアの各分離位置を含む仮想平面に対して直交する方向から印加される外部磁界(平行磁界)に起因して第1コイルおよび第3コイルに発生する各誘起電圧、並びに第2コイルおよび第4コイルに発生する各誘起電圧を第1抵抗回路および第2抵抗回路を調節してそれぞれ打ち消すことができるため(すなわち、環状コアの磁気回路についての非対称性を補正することができるため)、クランプした電路に流れる電流に応じて出力される各直列回路に発生する誘起電圧の差動電圧(出力電圧)に対する外部磁界の影響を低減して、電路に流れる電流を高精度で測定することができる。また、第1直列回路に発生する誘起電圧、およびこの誘起電圧と位相の反転する第2直列回路に発生する誘起電圧の差動電圧を出力電圧として出力するため、電源で作動する加算回路を用いることなく、出力電圧の振幅を大きくすることができる(大きなダイナミックレンジを確保することができる)。
【0011】
請求項2記載の電流検出用センサによれば、演算増幅器などで構成された加算回路を使用しないことから電源を不要としつつ、環状コアの各分離位置を結ぶ仮想線分と平行な方向から印加される外部磁界(平行磁界)に起因して第1コイルおよび第2コイルに発生する各誘起電圧、並びに第3コイルおよび第4コイルに発生する各誘起電圧を第1抵抗回路および第2抵抗回路を調節してそれぞれ打ち消すことができるため(すなわち、環状コアの磁気回路についての非対称性を補正することができるため)、クランプした電路に流れる電流に応じて出力される各直列回路に発生する誘起電圧の差動電圧(出力電圧)に対する外部磁界の影響を低減して、電路に流れる電流を高精度で測定することができる。また、第1直列回路に発生する誘起電圧、およびこの誘起電圧と位相の反転する第2直列回路に発生する誘起電圧の差動電圧を出力電圧として出力するため、電源で作動する加算回路を用いることなく、出力電圧の振幅を大きくすることができる(大きなダイナミックレンジを確保することができる)。
【0012】
請求項3記載の電流検出用センサによれば、第1直列回路の両端間に発生する誘起電圧の振幅を調整するための第3抵抗回路が接続され、第2直列回路の両端間に発生する誘起電圧の振幅を調整するための第4抵抗回路が接続されているため、請求項1記載の電流検出用センサでは、さらに、環状コアの各分離位置を結ぶ仮想線分と平行な方向から印加される外部磁界に起因して各直列回路に発生する誘起電圧の差動電圧をゼロボルトにすることができ、一方、請求項2記載の電流検出用センサでは、さらに、環状コアの各分離位置を含む仮想平面に対して直交する方向から印加される外部磁界に起因して各直列回路に発生する誘起電圧の差動電圧をゼロボルトにすることができる。このため、電路に流れる電流に応じて発生する出力電圧に対する外部磁界の影響を低減して、電路に流れる電流を一層高精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】分離位置A,Bを含む仮想平面に対して直交する方向から平行磁界Hが印加されている状態での電流検出用センサ1の構成図である。
【図2】図1の状態での電流検出用センサ1の回路図である。
【図3】分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な平行磁界Hが印加されている状態での電流検出用センサ1の構成図である。
【図4】図3の状態での電流検出用センサ1の回路図である。
【図5】分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な方向から平行磁界Hが印加されている状態での電流検出用センサ1Aの構成図である。
【図6】図5の状態での電流検出用センサ1Aの回路図である。
【図7】分離位置A,Bを含む仮想平面に対して直交する方向から平行磁界Hが印加されている状態での電流検出用センサ1Aの構成図である。
【図8】図7の状態での電流検出用センサ1Aの回路図である。
【図9】電流検出用センサ1Bの回路図である。
【図10】電流検出用センサ1Cの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、電流検出用センサ1の実施の形態について説明する。
【0015】
まず、電流検出用センサ1の構成について図1を参照して説明する。
【0016】
電流検出用センサ1は、図1に示すように、環状コア2、第1コイル3、第2コイル4、第3コイル5、第4コイル6、第1抵抗回路7、第2抵抗回路8、第3抵抗回路9、第4抵抗回路10および出力コネクタ11を備えて、一例として活線の状態で、電路12を流れる電流(漏洩電流などの交流電流)を検出可能に構成されている。
【0017】
環状コア2は、一例として円環状の磁性コア(トロイダルコア)で構成されている。また、環状コア2は、周方向に沿って離間した一対の分離位置A,B(本例では一例として、環状コア2を1/2に分離する位置)で2つのコア部2a,2bに分離可能に構成されている。なお、トロイダルコアに代えて、UU型のコアやUI型(CI型)のコアを用いて環状コア2を構成することもできる。
【0018】
第1コイル3および第2コイル4は、一対の分離位置A,Bのうちの一方の分離位置Aを挟んで、環状コア2に巻回されて形成されている。具体的には、第1コイル3は、環状コア2を構成する2つのコア部2a,2bのうちの一方のコア部2aにおける分離位置A寄りに形成されており、第2コイル4は、2つのコア部2a,2bのうちの他方のコア部2bにおける分離位置A寄りに形成されている。
【0019】
第3コイル5および第4コイル6は、一対の分離位置A,Bのうちの他方の分離位置Bを挟んで、環状コア2に巻回されて形成されている。具体的には、第3コイル5は、一方のコア部2aにおける分離位置B寄りに形成されており、第4コイル6は、他方のコア部2bにおける分離位置B寄りに形成されている。また、各コイル3,4,5,6は、それぞれ同じターン数に形成されると共に、環状コア2の周方向に沿って等間隔に配設されている。なお、各コイル3,4,5,6は、それぞれ1つのコイルで構成してもよいし、複数のコイルを組み合わせて構成してもよい。
【0020】
また、環状コア2を一方向に巡る磁束Cによって第1コイル3、第2コイル4、第3コイル5および第4コイル6にそれぞれ生じる誘起電圧の極性(一例として図1中において●を付した正極性側)を基準としたときに、一方のコア部2aに巻回された第1コイル3および第3コイル5は、順極性の状態(第1コイル3および第3コイル5の異極同士(本例では、第1コイル3の正極側と第3コイル5の負極側)が接続される状態)で直列接続されて第1直列回路21を構成している。一方、他方のコア部2bに巻回された第2コイル4および第4コイル6は順極性の状態(第2コイル4および第4コイル6の異極同士(本例では、第2コイル4の負極側と第4コイル6の正極側)が接続される状態)で直列接続されて第2直列回路22を構成している。
【0021】
なお、電路12の電流は上記したように交流電流であるため、第1コイル3、第2コイル4、第3コイル5および第4コイル6にそれぞれ生じる誘起電圧も交流電圧となって、各コイル3,4,5,6の各端部に発生する極性も変化するが、電流検出用センサ1の構成を説明する際には、発明の理解を容易にするため、各コイル3,4,5,6および各直列回路21,22については、●を付した端部側が正極側であり、●を付していない端部側が負極側であるものとして説明する。
【0022】
第1抵抗回路7は、本例では一例として可変抵抗器7aで構成されて、第1直列回路21に並列に接続されている。具体的には、可変抵抗器7aの一方の固定端子(図2において上側)が第1コイル3の負極側に接続されると共に可変抵抗器7aの他方の固定端子が第3コイル5の正極側に接続されている。この場合、可変抵抗器7aの可動端子は、第1直列回路21を構成する第1コイル3および第3コイル5の各接続端部に接続されている。この構成により、第1抵抗回路7は、第1直列回路21に対するシャント抵抗(第1コイル3および第3コイル5のそれぞれに対するシャント抵抗)として機能すると共に、第1コイル3および第3コイル5のそれぞれに発生する誘起電圧のバランスを調整するバランス調整用抵抗としても機能する。
【0023】
第2抵抗回路8は、本例では一例として可変抵抗器7aと同じ仕様の可変抵抗器8aで構成されて、第2直列回路22に並列に接続されている。具体的には、可変抵抗器8aの一方の固定端子(図2において上側)が第2コイル4の正極側に接続されると共に可変抵抗器8aの他方の固定端子が第4コイル6の負極側に接続されている。この場合、可変抵抗器8aの可動端子は、第2直列回路22を構成する第2コイル4および第4コイル6の各接続端部に接続されている。この構成により、第2抵抗回路8は、第2直列回路22に対するシャント抵抗(第2コイル4および第4コイル6のそれぞれに対するシャント抵抗)として機能すると共に、第2コイル4および第4コイル6のそれぞれに発生する誘起電圧のバランスを調整するバランス調整用抵抗としても機能する。
【0024】
また、上記のようにして、第1抵抗回路7が並列に接続された第1直列回路21、および第2抵抗回路8が並列に接続された第2直列回路22は、順極性の状態(異極となる端部同士(本例では、第1直列回路21の正極側(第3コイル5の正極側)の端部と第2直列回路22の負極側(第4コイル6の負極側)の端部。各端部を接続端部Eともいう)が接続される状態)で互いに直列接続されている。
【0025】
第3抵抗回路9は、一例として、可変抵抗器9aおよび固定抵抗器9bを備え、可変抵抗器9aおよび固定抵抗器9bが直列接続されて構成されている。また、第3抵抗回路9は、一例として可変抵抗器9aの各固定端子のうちの可動端子が接続された一方の固定端子が第1直列回路21の非接続端部(第1コイル3の負極側の端部)Dに接続され、固定抵抗器9bにおける可変抵抗器9aと接続されていない端部(可変抵抗器9aとの非接続端部)が第1直列回路21の接続端部Eに接続されている。また、可変抵抗器9aおよび固定抵抗器9bの各接続端部(固定抵抗器9bにおける可変抵抗器9aと接続されている端部(可変抵抗器9aとの接続端部))は、出力コネクタ11の一方の出力端子11aに接続されている。また、本例では一例として、第3抵抗回路9は、全体の抵抗値(可変抵抗器9aおよび固定抵抗器9bの合計抵抗値)が、シャント抵抗として機能する第1抵抗回路7の抵抗値よりも十分に大きな抵抗値に規定されている。この構成により、第3抵抗回路9は、可変抵抗器9aの抵抗値を変更することにより、第1直列回路21の両端間(第1直列回路21全体)に発生する誘起電圧(第1コイル3および第3コイル5のそれぞれに発生する誘起電圧の合成電圧)を分圧して第1分圧電圧Vd1として出力端子11aに出力するアッテネータとして機能する。
【0026】
第4抵抗回路10は、一例として、可変抵抗器10aおよび固定抵抗器10bを備え、可変抵抗器10aおよび固定抵抗器10bが直列接続されて構成されている。また、第4抵抗回路10は、一例として可変抵抗器10aの各固定端子のうちの可動端子が接続された一方の固定端子が第2直列回路22の非接続端部(第2コイル4の負極側の端部)Fに接続され、固定抵抗器10bにおける可変抵抗器10aと接続されていない端部(可変抵抗器10aとの非接続端部)が第2直列回路22の接続端部Eに接続されている。また、可変抵抗器10aおよび固定抵抗器10bの各接続端部(固定抵抗器10bにおける可変抵抗器10aと接続されている端部(可変抵抗器10aとの接続端部))は、出力コネクタ11の他方の出力端子11bに接続されている。また、本例では一例として、第4抵抗回路10は、全体の抵抗値(可変抵抗器10aおよび固定抵抗器10bの合計抵抗値)が、シャント抵抗として機能する第2抵抗回路8の抵抗値よりも十分に大きな抵抗値に規定されている。この構成により、第4抵抗回路10は、可変抵抗器10aの抵抗値を変更することにより、第2直列回路22の両端間(第2直列回路22全体)に発生する誘起電圧(第2コイル4および第4コイル6のそれぞれに発生する誘起電圧の合成電圧)を分圧して第2分圧電圧Vd2として出力端子11bに出力するアッテネータとして機能する。
【0027】
次に、第1直列回路21を構成する第1コイル3および第3コイル5、並びに第2直列回路22を構成する第2コイル4および第4コイル6に対する第1抵抗回路7および第2抵抗回路8を使用したバランス調整の手順と、第1直列回路21および第2直列回路22に対する第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を使用したバランス調整の手順とを説明する。
【0028】
まず、第1抵抗回路7および第2抵抗回路8を使用したバランス調整の手順について説明する。なお、電流検出用センサ1には磁束Cが生じていない状態(電路12をクランプしていない状態)であるものとする。
【0029】
図1に示すように、環状コア2に設けられた各分離位置A,Bを含み、かつ環状コア2に対して直交する仮想平面に対して直交する方向(図1中の左右方向)から、一点鎖線で示す外部磁界としての平行磁界H(一例として、磁束密度が一様に増加する平行磁界)を印加する。
【0030】
この例では、図1に示すように、第1コイル3では、平行磁界Hは、●を付した端部側から進入して他方の端部側から抜け、第2コイル4でも、平行磁界Hは、●を付した端部側から進入して他方の端部側から抜ける。一方、第3コイル5では、平行磁界Hは、●を付していない端部側から進入して●を付した端部側から抜け、第4コイル6でも、平行磁界Hは、●を付していない端部側から進入して●を付した端部側から抜ける。
【0031】
これにより、この平行磁界Hの通過に起因して、図2に示すように、第1コイル3には、●を付した端部側が正極側となる誘起電圧Vs11が発生し、この第1コイル3に直列に接続されている第3コイル5には、逆に、●を付した端部側が負極側となる誘起電圧Vs13が発生する。また、第2コイル4には、●を付した端部側が正極側となる誘起電圧Vs12が発生し、この第2コイル4に直列に接続されている第4コイル6には、逆に、●を付した端部側が負極側となる誘起電圧Vs14が発生する。
【0032】
この場合、各コイル3,4,5,6を同一のターン数で形成しようとしても、それぞれのターン数には製造上の誤差に起因した若干のバラツキがあり、またコア部2a,2bが接合する各分離位置A,Bでの磁気抵抗にもバラツキがある。このため、第1コイル3に発生する誘起電圧Vs11の電圧値と第3コイル5に発生する誘起電圧Vs13の電圧値とが不揃いの状態(ばらついた状態)で、また第2コイル4に発生する誘起電圧Vs12の電圧値と第4コイル6に発生する誘起電圧Vs14の電圧値とが不揃いの状態(ばらついた状態)となっていることがある(すなわち、環状コア2の磁気回路が非対称性を有していることがある)。
【0033】
この電流検出用センサ1では、互いに逆極性の状態(位相が反転した状態)で発生している誘起電圧Vs11,Vs13相互間のバラツキについては、第1直列回路21全体に発生する誘起電圧(第1コイル3に発生する誘起電圧Vs11と第3コイル5に発生する誘起電圧Vs13の合成電圧(Vs11+Vs13))をモニタしつつ、可変抵抗器7aを調節して誘起電圧Vs11,Vs13をバランスさせることにより、合成電圧(Vs11+Vs13)をゼロボルトにする。同様にして、互いに逆極性の状態(位相が反転した状態)で発生している誘起電圧Vs12,Vs14相互のバラツキについても、第2直列回路22全体に発生する誘起電圧(第2コイル4に発生する誘起電圧Vs12と第4コイル6に発生する誘起電圧Vs14の合成電圧(Vs12+Vs14))をモニタしつつ、可変抵抗器8aを調節して誘起電圧Vs12,Vs14をバランスさせることにより、合成電圧(Vs12+Vs14)をゼロボルトにする。これにより、第1抵抗回路7および第2抵抗回路8を使用したバランス調整が完了する。
【0034】
次いで、第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を使用したバランス調整の手順について説明する。
【0035】
図3に示すように、環状コア2に設けられた各分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な方向(図3中の上下方向)から、一点鎖線で示す外部磁界としての平行磁界H(一例として、磁束密度が一様に増加する平行磁界)を印加する。
【0036】
この例では、図3に示すように、第1コイル3では、平行磁界Hは、●を付していない端部側から進入して●を付した端部側から抜け、第3コイル5でも、平行磁界Hは、●を付していない端部側から進入して●を付した端部側から抜ける。一方、第2コイル4では、平行磁界Hは、●を付した端部側から進入して他方の端部側から抜け、第4コイル6でも、平行磁界Hは、●を付した端部側から進入して他方の端部側から抜ける。
【0037】
これにより、この平行磁界Hの通過に起因して、図4に示すように、第1コイル3には、●を付した端部側が負極側となる誘起電圧Vs11が発生し、この第1コイル3に直列に接続されている第3コイル5にも、●を付した端部側が負極側となる誘起電圧Vs13が発生する。また、第2コイル4には、●を付した端部側が正極側となる誘起電圧Vs12が発生し、この第2コイル4に直列に接続されている第4コイル6にも、●を付した端部側が正極側となる誘起電圧Vs14が発生する。
【0038】
この場合、各コイル3,4,5,6のターン数についての上記のバラツキや、コア部2a,2bの各分離位置A,Bでの上記の磁気抵抗のバラツキに起因して、同極性で発生する第1コイル3での誘起電圧Vs11および第3コイル5での誘起電圧Vs13の合成電圧(Vs11+Vs13)の電圧値と、同じく同極性で発生する第2コイル4での誘起電圧Vs12および第4コイル6での誘起電圧Vs14の合成電圧(Vs12+Vs14)の電圧値とが不揃いの状態(ばらついた状態)となっていることがある。
【0039】
この電流検出用センサ1では、第1直列回路21および第2直列回路22の接続端部Eを基準として互いに同極性(同位相)の状態で発生している合成電圧(Vs11+Vs13)および合成電圧(Vs12+Vs14)相互間のバラツキについては、接続端部Eを基準として出力コネクタ11の出力端子11aから出力される第1分圧電圧Vd1、および接続端部Eを基準として出力コネクタ11の出力端子11bから出力される第2分圧電圧Vd2をそれぞれモニタしつつ、可変抵抗器9aおよび可変抵抗器10aを調節することにより、第1分圧電圧Vd1および第2分圧電圧Vd2を電圧値が最も大きくなる状態でバランスさせる。これにより、同じ接続端部Eを基準とする合成電圧(Vs11+Vs13)および合成電圧(Vs12+Vs14)の差動電圧として各出力端子11a,11b間から出力される出力電圧Voは、合成電圧(Vs11+Vs13)および合成電圧(Vs12+Vs14)が同極性(同位相)で、かつバランス状態(同じ電圧)にあることから、ゼロボルトとなる(各Vs11〜Vs14は打ち消される)。これにより、第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を使用したバランス調整が完了する。
【0040】
次に、電流検出用センサ1の動作について図1,2を参照して説明する。なお、発明の理解を容易にするため、電流検出用センサ1がクランプしている電路12に流れる交流電流は、図1,2に示すように紙面の手前側から奥側に向かって電流値が増加しつつ流れており、この交流電流に起因して環状コア2には、同図において破線で示す一方向に磁束Cが、磁束密度の増加状態で発生しているものとする。
【0041】
この状態において、電流検出用センサ1では、図2に示すように、上記の磁束Cに起因して、第1コイル3には、●を付した端部側が正極となる誘起電圧V1が発生し、第2コイル4にも、●を付した端部側が正極となる誘起電圧V2が発生し、第3コイル5にも、●を付した端部側が正極となる誘起電圧V3が発生し、第4コイル6にも、●を付した端部側が正極となる誘起電圧V4が発生している。
【0042】
この場合、電流検出用センサ1に対して、図1において一点鎖線で示すような平行磁界Hが印加されていたとしても、第1抵抗回路7および第2抵抗回路8を使用した上記のバランス調整により、この平行磁界Hに起因して第1直列回路21を構成する第1コイル3および第3コイル5に逆極性の状態で発生する各誘起電圧Vs11,Vs13の電圧値が揃えられ、かつこの平行磁界Hに起因して第2直列回路22を構成する第2コイル4および第4コイル6に逆極性の状態で発生する各誘起電圧Vs12,Vs14の電圧値が揃えられている。このため、この電流検出用センサ1では、各誘起電圧Vs11,Vs13は打ち消され、また各誘起電圧Vs12,Vs14も打ち消される。
【0043】
また、電流検出用センサ1に対して、図3において一点鎖線で示すような平行磁界Hが印加されていたとしても、第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を使用した上記のバランス調整により、この平行磁界Hに起因して第1直列回路21および第2直列回路22に接続端部Eを基準として同極性の状態で発生する合成電圧(Vs11+Vs13),(Vs12+Vs14)の各電圧値が揃えられているため、各合成電圧(Vs11+Vs13),(Vs12+Vs14)は打ち消される。
【0044】
上記のようにして各コイル3,4,5,6に発生する各誘起電圧V1,V2,V3,V4のうちの接続端部Eを基準として第1直列回路21に発生する各誘起電圧V1,V3の合成電圧(V1+V3)については、第3抵抗回路9が第1分圧電圧Vd1に分圧して出力し、接続端部Eを基準として第2直列回路22に発生する各誘起電圧V2,V4の合成電圧(V2+V4)については、第4抵抗回路10が第2分圧電圧Vd2に分圧して出力する。
【0045】
これにより、電流検出用センサ1は、接続端部Eを基準として第3抵抗回路9から出力される第1分圧電圧Vd1と、同じ接続端部Eを基準として第4抵抗回路10から出力されて、第1分圧電圧Vd1に対して逆極性の(位相が反転している)第2分圧電圧Vd2との差動電圧(V1+V3+V2+V4)を出力コネクタ11の各出力端子11a,11b間から出力電圧Voとして出力する。また、このようにして、電流検出用センサ1の出力コネクタ11から出力されるこの出力電圧Voは、例えば、オシロスコープや電力計などの入力インピーダンスの高い測定装置に入力されて測定される。
【0046】
なお、出力コネクタ11から出力される出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)に対する影響が大きな2方向(図1に示す方向と図2に示す方向)から外部磁界としての平行磁界Hが環状コア2に印加される例を挙げて説明したが、図示はしないが、この2方向以外の方向から、環状コア2に対して平行磁界Hが印加されている場合もある。この場合においては、上記の各バランス調整を行った状態であっても、各誘起電圧Vs11,Vs13や、各誘起電圧Vs12,Vs14は完全には打ち消されず、また各合成電圧(Vs11+Vs13),(Vs12+Vs14)も完全には打ち消されない。このため、出力コネクタ11から出力される差動電圧(V1+V3+V2+V4)には、平行磁界Hに起因して各コイル3,4,5,6に発生する誘起電圧Vs11,Vs12,Vs13,Vs14の影響が残存することになる。しかしながら、環状コア2の一方のコア部2aに第1コイル3および第3コイル5を形成し、かつ他方のコア部2bに第2コイル4および第4コイル6を形成して、上記の各バランス調整を行うことで、残存する各誘起電圧Vs11,Vs12,Vs13,Vs14の差動電圧(V1+V3+V2+V4)に対する影響が最小限に抑制されている。
【0047】
このように、この電流検出用センサ1では、一対の分離位置A,Bのうちの一方の分離位置Aを挟んで環状コア2の一方のコア部2aに第1コイル3が巻回されて形成されると共に分離位置Aを挟んで他方のコア部2bに第2コイル4が巻回されて形成され、他方の分離位置Bを挟んで一方のコア部2aに第3コイル5が巻回されて形成されると共に分離位置Bを挟んで他方のコア部2bに第4コイル6が巻回されて形成されている。また、環状コア2を一方向に巡る磁束Cによって第1コイル3、第2コイル4、第3コイル5および第4コイル6にそれぞれ生じる誘起電圧V1,V2,V3,V4の極性を基準としたときに、第1コイル3および第3コイル5は順極性の状態で直列接続されて第1直列回路21を構成すると共に、第2コイル4および第4コイル6は順極性の状態で直列接続されて第2直列回路22を構成し、この第1直列回路21には、第1コイル3および第3コイル5に外部磁界としての平行磁界Hに起因して発生する誘起電圧Vs11,Vs13のバランス調整を行うための第1抵抗回路7が接続され、第2直列回路22には、第2コイル4および第4コイル6に発生する平行磁界Hに起因して発生する誘起電圧Vs12,Vs14のバランス調整を行うための第2抵抗回路8が接続されている。
【0048】
したがって、この電流検出用センサ1によれば、演算増幅器などで構成された加算回路を使用しないことから電源を不要としつつ、図1に示すように、環状コア2の各分離位置A,Bを含む仮想平面に対して直交する方向から印加される平行磁界Hに起因して第1コイル3および第3コイル5に発生する誘起電圧Vs11,Vs13、並びに第2コイル4および第4コイル6に発生する誘起電圧Vs12,Vs14をそれぞれ打ち消すことができるため(すなわち、環状コア2の磁気回路についての非対称性を補正することができるため)、クランプした電路12に流れる電流に応じて出力される出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)に対する平行磁界Hの影響を低減して、電路12に流れる電流を高精度で測定することができる。また、第1直列回路21に発生する誘導電圧(合成電圧(V1+V3))、およびこの合成電圧(V1+V3)と位相の反転する第2直列回路22に発生する誘導電圧(合成電圧(V2+V4))の差動電圧を出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)として出力するため、電源で作動する加算回路を用いることなく、出力電圧Voの振幅を大きくすることができる(大きなダイナミックレンジを確保することができる)。
【0049】
また、この電流検出用センサ1では、第1直列回路21の非接続端部Dには、第1直列回路21の両端間に発生する誘起電圧(V1+V3)の振幅を調整するための第3抵抗回路9が接続され、第2直列回路22の非接続端部Fには、第2直列回路22の両端間に発生する誘起電圧(V2+V4)の振幅を調整するための第4抵抗回路10が接続されている。
【0050】
したがって、この電流検出用センサ1によれば、図3に示すように、さらに、環状コア2の各分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な方向から印加される平行磁界Hに起因して第1直列回路21に発生する合成電圧(第1コイル3および第3コイル5に発生する誘起電圧Vs11,Vs13の合成電圧(Vs11+Vs13))と、第2直列回路22に発生する合成電圧(第2コイル4および第4コイル6に発生する誘起電圧Vs12,Vs14の合成電圧(Vs12+Vs14))とを独立して調整して、両合成電圧の差動電圧をゼロボルトにすることができる(小さくすることができる)ため、電路12に流れる電流に応じて発生する出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)に対する平行磁界Hの影響を低減して、電路12に流れる電流を一層高精度で測定することができる。
【0051】
なお、上記の電流検出用センサ1では、環状コア2の各分離位置A,Bで分離される一方のコア部2aに形成(巻回)される2つの第1コイル3および第3コイル5を直列に接続し、他方のコア部2bに形成される2つの第2コイル4および第4コイル6を直列に接続する構成を採用しているが、図5,7に示す電流検出用センサ1Aのように、一方の分離位置Aを挟んでコア部2a,2bのそれぞれに形成された第1コイル3および第2コイル4を直列に接続し、他方の分離位置Bを挟んでコア部2a,2bのそれぞれに形成された第3コイル5および第4コイル6を直列に接続する構成を採用することもできる。以下、この電流検出用センサ1Aについて説明する。なお、電流検出用センサ1と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
この電流検出用センサ1Aは、図5に示すように、環状コア2、第1コイル3、第2コイル4、第3コイル5、第4コイル6、第1抵抗回路7、第2抵抗回路8、第3抵抗回路9、第4抵抗回路10および出力コネクタ11を備えて、活線の状態で電路12を流れる電流(交流電流)を検出可能に構成されている。
【0053】
この電流検出用センサ1Aでは、一方の分離位置Aを挟んで互いに異なるコア部2a,2bに形成された第1コイル3と第2コイル4とが、順極性の状態(第1コイル3および第2コイル4の異極同士(本例では、第1コイル3の正極側と第2コイル4の負極側)が接続される状態)で直列接続されて第1直列回路21Aを構成している。また、他方の分離位置Bを挟んで互いに異なるコア部2a,2bに形成された第3コイル5と第4コイル6とが、順極性の状態(第3コイル5および第4コイル6の異極同士(本例では、第3コイル5の負極側と第4コイル6の正極側)が接続される状態)で直列接続されて第2直列回路22Aを構成している。
【0054】
また、第1直列回路21Aを構成する第1コイル3および第2コイル4の各接続端部が、第1抵抗回路7を構成する可変抵抗器7aの可動端子に接続され、第2直列回路22Aを構成する第3コイル5および第4コイル6の各接続端部が、第2抵抗回路8を構成する可変抵抗器8aの可動端子に接続されている。また、第1抵抗回路7が直列に接続された第1直列回路21A、および第2抵抗回路8が直列に接続された第2直列回路22Aは、順極性の状態(異極となる端部E同士が接続された状態)で互いに直列接続されている。
【0055】
この電流検出用センサ1Aにおいても、図5に示すように、各分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な方向から平行磁界Hが印加されている状態においては、電流検出用センサ1と同様にして、図6に示すように、各コイル3,4,5,6に誘起電圧Vs11,Vs12,Vs13,Vs14が発生する。このため、電流検出用センサ1と同様にして、可変抵抗器7aを調節して第1コイル3に発生する誘起電圧Vs11と、第2コイル4に発生する誘起電圧Vs12とをバランスさせることにより、平行磁界Hに起因して第1直列回路21Aに発生する合成電圧(Vs11+Vs12)をゼロボルトにすることができると共に、可変抵抗器8aを調節して第3コイル5に発生する誘起電圧Vs13と、第4コイル6に発生する誘起電圧Vs14とをバランスさせることにより、平行磁界Hに起因して第2直列回路22Aに発生する合成電圧(Vs13+Vs14)をゼロボルトにすることができる。
【0056】
また、図7に示すように、分離位置A,Bを含む仮想平面に対して直交する方向から平行磁界Hが印加されている状態においては、電流検出用センサ1と同様にして、図8に示すように、各コイル3,4,5,6に誘起電圧Vs11,Vs12,Vs13,Vs14が発生する。このため、電流検出用センサ1と同様にして、可変抵抗器9aおよび可変抵抗器10aを調節して、第1分圧電圧Vd1および第2分圧電圧Vd2を電圧値が最も大きくなる状態でバランスさせることにより、同じ接続端部Eを基準とする合成電圧(Vs11+Vs12)および合成電圧(Vs13+Vs14)の差動電圧として各出力端子11a,11b間から出力される平行磁界Hに起因した出力電圧Voをゼロボルトにすることができる。
【0057】
したがって、この電流検出用センサ1Aにおいても、電源を不要としつつ、図5に示すように、環状コア2の各分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な方向から印加される平行磁界Hに起因して第1コイル3および第2コイル4に発生する誘起電圧Vs11,Vs12、並びに第3コイル5および第4コイル6に発生する誘起電圧Vs13,Vs14をそれぞれ打ち消すことができるため(すなわち、環状コア2の磁気回路についての非対称性を補正することができるため)、クランプした電路12に流れる電流に応じて発生する出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)に対する平行磁界Hの影響を低減して、電路12に流れる電流を高精度で測定することができる。また、第1直列回路21Aに発生する誘起電圧(合成電圧(Vs11+Vs12))、およびこの誘起電圧と位相の反転する第2直列回路22Aに発生する誘起電圧(合成電圧(Vs13+Vs14))の差動電圧を出力電圧Voとして出力するため、電源で作動する加算回路を用いることなく、出力電圧Voの振幅を大きくすることができる(大きなダイナミックレンジを確保することができる)。
【0058】
また、この電流検出用センサ1Aでは、第1直列回路21Aの非接続端部Dには、第1直列回路21Aの両端間に発生する誘起電圧(V1+V2)の振幅を調整するための第3抵抗回路9が接続され、第2直列回路22Aの非接続端部Fには、第2直列回路22Aの両端間に発生する誘起電圧(V3+V4)の振幅を調整するための第4抵抗回路10が接続されている。
【0059】
したがって、この電流検出用センサ1Aにおいても、図7に示すように、環状コア2の各分離位置A,Bを含む仮想平面に対して直交する方向から印加される平行磁界Hに起因して第1直列回路21Aに発生する合成電圧(第1コイル3および第2コイル4に発生する誘起電圧Vs11,Vs12の合成電圧(Vs11+Vs12))と、第2直列回路22Aに発生する合成電圧(第3コイル5および第4コイル6に発生する誘起電圧Vs13,Vs14の合成電圧(Vs13+Vs14))とを独立して調整して、両合成電圧の差動電圧をゼロボルトにすることができる(小さくすることができる)ため、電路12に流れる電流に応じて発生する差動電圧(V1+V3+V2+V4)に対する平行磁界Hの影響を低減して、電路12に流れる電流を一層高精度で測定することができる。
【0060】
なお、上記の電流検出用センサ1,1Aでは、可変抵抗器9aおよび固定抵抗器9bで第3抵抗回路9を構成し、可変抵抗器10aおよび固定抵抗器10bで第4抵抗回路10を構成しているが、図9に示す電流検出用センサ1Bのように、第3抵抗回路9を可変抵抗器9aのみで構成し、第4抵抗回路10を可変抵抗器10aのみで構成することもできる。なお、この電流検出用センサ1Bは、一例として、電流検出用センサ1の第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を変更して構成したものである。また、説明は省略するが、電流検出用センサ1Aの第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を同様に変更して構成することもできる。さらに、第3抵抗回路9および第4抵抗回路10のいずれか一方のみを可変抵抗器のみで構成することもできる。
【0061】
この電流検出用センサ1Bでは、可変抵抗器9aを第1直列回路21に並列に接続し、可変抵抗器10aを第2直列回路22に並列に接続する。この構成においても、可変抵抗器9aおよび可変抵抗器10aが、第1直列回路21や第2直列回路22に対するシャント抵抗として機能する程度の抵抗値とすることにより、第1直列回路21に発生する合成電圧(Vs11+Vs13)を可変抵抗器9aを用いて調整することができ、また第2直列回路22に発生する合成電圧(Vs12+Vs14)を可変抵抗器10aを用いて調整することができる。
【0062】
したがって、この電流検出用センサ1Bにおいても、電源を不要としつつ、電流検出用センサ1,1Aと同様にして、環状コア2の磁気回路についての非対称性を補正することができるため、クランプした電路12に流れる電流に応じて発生する出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)に対する平行磁界Hの影響を低減し、かつ大きなダイナミックレンジを確保した状態で、電路12に流れる電流を高精度で測定することができる。
【0063】
また、この電流検出用センサ1Bにおいても、第3抵抗回路9および第4抵抗回路10を使用することにより、電流検出用センサ1と同様にして、環状コア2の各分離位置A,Bを結ぶ仮想線分と平行な方向から印加される平行磁界Hに起因して第1直列回路21に発生する合成電圧(Vs11+Vs13)と、第2直列回路22に発生する合成電圧(Vs12+Vs14)とを独立して調整して、両合成電圧の差動電圧をゼロボルトにすることができる(小さくすることができる)ため、電路12に流れる電流に応じて発生する出力電圧Vo(=V1+V3+V2+V4)に対する平行磁界Hの影響を低減して、電路12に流れる電流を高精度で測定することができる。
【0064】
また、図10に示す電流検出用センサ1Cのように、出力コネクタ11の出力端子11aと出力端子11bとの間に直列に接続された第1直列回路21および第2直列回路22における第1直列回路21の非接続端部(第1コイル3の負極側の端部)Dと、第2直列回路22の非接続端部(第2コイル4の正極側の端部)Fとの間に、半固定抵抗31を接続する構成を採用することもできる。この電流検出用センサ1Cでは、半固定抵抗31の可動端子を第1直列回路21および第2直列回路22の接続端部Eに接続することで、半固定抵抗31を、第3抵抗回路9および第4抵抗回路10の両回路として機能させることができる結果、装置構成を簡易にすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 電流検出用センサ
2 環状コア
2a,2b コア部
3 第1コイル
4 第2コイル
5 第3コイル
6 第4コイル
7 第1抵抗回路
8 第2抵抗回路
9 第3抵抗回路
10 第4抵抗回路
21 第1直列回路
22 第2直列回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿って離間した一対の分離位置で2つのコア部に分離可能な環状コアと、
前記一対の分離位置のうちの一方の分離位置を挟んで前記2つのコア部のうちの一方のコア部に巻回された第1コイルおよび当該2つのコア部のうちの他方のコア部に巻回された第2コイルと、
前記一対の分離位置のうちの他方の分離位置を挟んで前記一方のコア部に巻回された第3コイルおよび前記他方のコア部に巻回された第4コイルとを備え、電路に流れる電流を検出可能に構成された電流検出用センサであって、
前記環状コアを一方向に巡る磁束によって前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ生じる誘起電圧の極性を基準としたときに、前記第1コイルおよび前記第3コイルは順極性の状態で直列接続されて第1直列回路を構成すると共に、前記第2コイルおよび前記第4コイルは順極性の状態で直列接続されて第2直列回路を構成し、
前記第1直列回路には、前記第1コイルおよび前記第3コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第1抵抗回路が接続され、
前記第2直列回路には、前記第2コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第2抵抗回路が接続され、
前記第1直列回路および前記第2直列回路は、順極性の状態で直列接続されて、当該第1直列回路の両端間および当該第2直列回路の両端間にそれぞれ発生する前記誘起電圧の差動電圧をそれぞれの非接続端部間から出力する電流検出用センサ。
【請求項2】
周方向に沿って離間した一対の分離位置で2つのコア部に分離可能な環状コアと、
前記一対の分離位置のうちの一方の分離位置を挟んで前記2つのコア部のうちの一方のコア部に巻回された第1コイルおよび当該2つのコア部のうちの他方のコア部に巻回された第2コイルと、
前記一対の分離位置のうちの他方の分離位置を挟んで前記一方のコア部に巻回された第3コイルおよび前記他方のコア部に巻回された第4コイルとを備え、電路に流れる電流を検出可能に構成された電流検出用センサであって、
前記環状コアを一方向に巡る磁束によって前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ生じる誘起電圧の極性を基準としたときに、前記第1コイルおよび前記第2コイルは順極性の状態で直列接続されて第1直列回路を構成すると共に、前記第3コイルおよび前記第4コイルは順極性の状態で直列接続されて第2直列回路を構成し、
前記第1直列回路には、前記第1コイルおよび前記第2コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第1抵抗回路が接続され、
前記第2直列回路には、前記第3コイルおよび前記第4コイルにそれぞれ発生する前記誘起電圧のバランス調整を行うための第2抵抗回路が接続され、
前記第1直列回路および前記第2直列回路は、順極性の状態で直列接続されて、当該第1直列回路の両端間および当該第2直列回路の両端間にそれぞれ発生する前記誘起電圧の差動電圧をそれぞれの非接続端部間から出力する電流検出用センサ。
【請求項3】
前記第1直列回路の前記非接続端部には、当該第1直列回路の両端間に発生する前記誘起電圧の振幅を調整するための第3抵抗回路が接続され、
前記第2直列回路の前記非接続端部には、当該第2直列回路の両端間に発生する前記誘起電圧の振幅を調整するための第4抵抗回路が接続されている請求項1または2記載の電流検出用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−141151(P2012−141151A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292153(P2010−292153)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】