電源モジュール
【課題】入力側キャパシタの機能を保持しつつ、配線インピーダンスを低減することができ、これにより、電子回路の誤動作を確実に防止して正確な動作を安定に維持することが可能な電源モジュールを提供する。
【解決手段】電源モジュールとしてのDCDCコンバータは、ICチップ7が内蔵された電子部品内蔵基板と、その上に載置された入力側キャパシタC1等とを備えるものである。電子部品内蔵基板は、入力側キャパシタC1とは反対側に、入力電圧が入力される入力電圧端子VINを有し、ICチップ7は、入力電圧端子VINからの入力電圧が、所定の接地電位に接続される入力側キャパシタC1を経由して入力される入力電圧端子71を有するものである。そして、入力電圧端子71と入力側キャパシタC1とが接続される配線に、ビア導体(抵抗R3)が形成されるものである。
【解決手段】電源モジュールとしてのDCDCコンバータは、ICチップ7が内蔵された電子部品内蔵基板と、その上に載置された入力側キャパシタC1等とを備えるものである。電子部品内蔵基板は、入力側キャパシタC1とは反対側に、入力電圧が入力される入力電圧端子VINを有し、ICチップ7は、入力電圧端子VINからの入力電圧が、所定の接地電位に接続される入力側キャパシタC1を経由して入力される入力電圧端子71を有するものである。そして、入力電圧端子71と入力側キャパシタC1とが接続される配線に、ビア導体(抵抗R3)が形成されるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の内部に電子部品が埋め込まれた(内蔵された)電源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に用いられるICチップ(ベアチップ:ダイ(Die))等の半導体装置といった能動部品や、キャパシタ(コンデンサ)、インダクタ、サーミスタ、抵抗等の受動部品等の電子部品が実装されたモジュール化が進んでおり、かかるモジュールに対する小型化や薄型化がますます熱望されている。
【0003】
かかる要求に応えるべく、例えば、特許文献1には、能動部品や受動部品が実装されたモジュールとして、電子部品が載置された基板上に電子部品より高いスタッド出力端子を設け、このスタッド出力端子上にマイクロインダクタを設置することにより、電子部品とマイクロインダクタとを、基板面に対して上下方向に載置するように配設してなるマイクロコンバータが提案されており、例えば電子機器の電源回路として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−63676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構造の電源回路としてのマイクロコンバータでは、その電源回路の更なる高効率化(高性能化)を達成すべく、配線インピーダンスをこれまで以上に低下させることが必要不可欠となってきており、また、モジュールの更なる小型化に伴い、配線領域の縮小・低減(縮減)を図る必要も生じてきている。そこで、それらの要求に応えるべく、上記特許文献1に開示されたマイクロコンバータでは、接続元と接続先(接続すべき対象環)を接続する複数の配線のうち、同様の役割を担う配線が同一の配線で一体に形成される傾向にある。
【0006】
例えば、電圧変換を行う電源回路では、入力側からの外部ノイズが電源回路に入射・伝達することを抑止し、かつ、電流の逆流し、さらに、入力電圧の安定化を図るべく、入力電圧が入力(印加)される入力電圧端子と、制御回路の入力電圧端子との間に、入力側キャパシタ(コンデンサ)が設けられた回路構成が採られることがある。この場合、本来、入力側の配線として、2つの異なる配線、すなわち、入力電圧が印加される入力電圧端子と入力側キャパシタとを接続する配線、及び、入力側キャパシタと制御回路の入力電圧端子とを接続する配線といった別体に形成された異なる複数の配線が別々に設けられるべきところ、それらの複数の配線は、機能的に、入力側の配線として同様の役割を有することから、それらの少なくとも一部を同一(一体)の配線で兼用することにより、配線インピーダンスの低減を図ることが試みられつつある。
【0007】
しかしながら、これらの配線の少なくとも一部を同一の配線(同一の代用配線)とした場合には、入力電圧が印加される入力電圧端子と制御回路の入力電圧端子とが直接的に接続されてしまうため、それらの間に設けられた入力側キャパシタを経由することなく、入力電圧が印加される入力電圧端子から制御回路の入力電圧端子へ電流が流れてしまい、或いは、電流が逆流してしまうおそれが生じ得る。また、制御回路のスイッチング動作に伴って入力電圧が変動するため、このように、入力側キャパシタを経由することなく、入力電圧が印加される入力電圧端子から制御回路の入力電圧端子へ電流が流れてしまうような同一の配線を入力側の配線として設けた場合には、入力側の信号ライン全体に、電圧変動に起因する大きな影響が生じてしまう。
【0008】
それらの結果、入力側の信号ラインに外部ノイズが含まれてしまったり、入力側信号が不安定になったりする不都合が生じる可能性も高くなる。このように、本来的に複数必要な入力側の配線を、単純に同一の配線で代用しようとすると、入力側キャパシタが本来有する複数の有用な機能、つまり、入力側から侵入し得る外部ノイズを除去する機能、入力電圧の変動の影響を制御回路に与えない電池(二次電池)としての機能、及び、電流の逆流を防止する機能が発現されず、その結果、そのような同一の代用配線は、電源回路の誤動作を引き起こす要因となってしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、入力側キャパシタの機能を保持しつつ、配線インピーダンスを低減することができ、これにより、電子回路の誤動作を確実に防止して正確な動作を安定に維持することが可能な電源モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は電源モジュールに関する発明であって、かかる電源モジュールは、電子部品が内蔵された基板と、基板上に載置され、且つ、所定の接地電位に接続される入力側キャパシタと、基板に設けられ、且つ、入力電圧が入力(印加)される第1入力端子とを備え、第1入力端子は、入力側キャパシタと電気的に接続され、電子部品は、基板に設けられた(形成された)第1ビア導体を介して入力側キャパシタと電気的に接続されている。
【0011】
上記構成においては、第1入力端子と電子部品が、ともに入力側キャパシタに接続されており、より具体的には、第1入力端子と電子部品が、入力側キャパシタを構成する一対の電極のうち接地電位に接続されていない電極に接続され、換言すれば、第1入力端子と電子部品が、入力側キャパシタを経由して互いに電気的に接続されている。よって、入力電圧が入力される第1入力端子と入力側キャパシタとを接続する配線、及び、入力側キャパシタと電子部品とを接続する配線のそれぞれの少なくとも一部を同一の配線(同一の代用配線)として一体に形成することができるので、両配線を別体に設ける場合に比して、配線インピーダンスの低減を図り得る。
【0012】
しかも、電子部品が、基板に設けられた第1ビア導体を介して入力側キャパシタと接続される、言い換えれば、電子部品と入力側キャパシタを接続する配線の途中に第1ビア導体が介在し、この第1ビア導体は、回路上、抵抗成分として作用するので、電圧が入力された第1入力端子から流入する電流は、その抵抗成分によって電子部品に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタへ確実に流れ込む。その結果、入力側キャパシタが有する、入力側から侵入し得る外部ノイズを除去する機能、入力電圧の変動を制御回路に伝えない電池(二次電池)としての機能、及び、電流の逆流を防止するという本来の機能が十分に発動されるので、電源回路である電源モジュールの安定な動作が確保される。
【0013】
なお、本明細書において、「電子部品が内蔵された基板」とは、電子部品が内蔵された単位基板である個別基板(個片、個品)のみではなく、その個別基板を複数有する集合基板(ワークボード、ワークシート)を含む概念であり、その「電子部品」とは、その種類は特に制限されず、例えば、通常の電子機器に用いられるICチップ等の半導体装置といった能動部品、より具体的には、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)のように、動作周波数が非常に高いデジタルIC、又は、高周波増幅器やアンテナスイッチ、高周波発振回路といったアナログIC等が挙げられる。
【0014】
具体的には、第1入力端子が、基板に設けられた第2ビア導体を介して入力側キャパシタと電気的に接続されている構成が挙げられる。
【0015】
上記構成においては、第1入力端子と入力側キャパシタを接続する配線の途中に第2ビア導体が介在されるため、特に、積層基板において、第1入力端子と入力側キャパシタとが離れて配置されている場合に有効である。また、この第2ビア導体は、回路上、抵抗成分として作用するが、第1ビア導体による抵抗成分より第2ビア導体による抵抗成分が小さくなるように第2ビア導体を形成すれば、電圧が入力された第1入力端子から流入する電流は、それらの抵抗成分によって電子部品に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタへ確実に流れ込む。
【0016】
また、電子部品は、入力電圧に応じた電圧が入力(印加)される第2入力端子を有し、第1入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線、並びに、第2入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線が、第2入力端子が形成される層とは異なる層で短絡されていてもよい。
【0017】
上記構成においては、第1入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線と、第2入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線とが、第2入力端子が形成される層とは異なる層で直結されるので、入力側キャパシタの入力側(接地側とは反対側)には、両配線が並列に接続されることとなる。これにより、第1入力端子、入力側キャパシタ、第2入力端子が1本の配線で接続されることが防止され得る。これにより、第1入力端子、入力側キャパシタ、第2入力端子間を流れる電流の逆流をより一層確実に防止することができる。
【0018】
また、基板上に載置され、且つ、基板に内蔵された電子部品とは異なる電子部品を備え、電子部品は、第2入力端子(電子部品の主面側)が、異なる電子部品とは反対側を向く(いわゆるフェイスダウンとなる)ように配置されると、電子部品の第2出力端子が異なる電子部品を向くように配置された場合に比して、第2入力端子を異なる電子部品から離間させることができ、構造的に、電子部品の周辺に位置し得る信号ラインもまた異なる電子部品(例えば、インダクタ)から比較的遠方に遠ざけられる。これにより、異なる電子部品に起因するノイズ(例えば、インダクタからの漏れ磁束に起因するノイズ)が、電子部品の周辺に位置する各種信号ラインに結合することに起因するノイズを抑制且つ遮断し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電源モジュールによれば、基板に設けられ、且つ、入力電圧が入力される第1入力端子は、入力側キャパシタと電気的に接続され、電子部品は、基板に設けられた第1ビア導体を介して入力側キャパシタと電気的に接続するようにしたので、入力電圧が入力される第1入力端子と入力側キャパシタとを接続する配線、及び、入力側キャパシタと電子部品とを接続する配線のそれぞれの少なくとも一部を同一の配線として一体に形成することができる。これにより、両配線を別体に設ける場合に比して、配線インピーダンスの低減を図ることができる。また、電子部品と入力側キャパシタを接続する配線の途中に、抵抗成分として作用する第1ビア導体が介在するので、電圧が入力された第1入力端子から流入する電流は、その抵抗成分によって、電子部品に直接流れ込むことを回避することができる一方、入力側キャパシタへ確実に流れ込むことができる。これにより、入力側キャパシタの本来の機能が保持されるので、電源モジュールの回路等の誤動作を確実に防止して正確な動作を定常的に維持することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による電源モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示すDCDCコンバータ1の等価回路図である。
【図3】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図4】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図5】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図6】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図7】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図8】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図9】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図10】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図11】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図12】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図13】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図14】本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。
【図15】図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線図である。
【図16】図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線図である。
【図17】図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の端子71〜74の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図である。
【図18】図14に示すIV−IV線に沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【図19】入力側の配線インピーダンスを示す等価回路図である。
【図20】図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明による電源モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1(電源モジュール)の構造を概略的に示す断面図であり、図2は、DCDCコンバータ1の等価回路図である。
【0023】
DCDCコンバータ1は、電子部品内蔵基板2(基板)と、接合部81を介して電子部品内蔵基板2の接合領域(電極パッド)61,62に接続された例えばインダクタ8(本発明における「異なる電子部品」:受動部品)とから構成されるものであり、電子部品内蔵基板2には、例えばICチップ7(本発明における「電子部品」:能動部品)が内蔵されている。なお、電子部品内蔵基板2上には、インダクタ8の他にキャパシタ(コンデンサ)等の受動部品が更に載置されていてもよく、図1においては、DCDCコンバータ1を構成する受動部品のうち、インダクタ8のみを電子部品内蔵基板2上に載置している状態を示している。
【0024】
ICチップ7は、図2の等価回路図に示されるように、入力電圧VINに対してスイッチング制御を行い所望の出力電圧VOUTを出力させる制御回路Cと、実際のスイッチング動作を担うスイッチ回路S1,S2とから構成されている。なお、図2の等価回路図は、図1に示す電子部品内蔵基板2上に、インダクタ8(図2では、Lと記載)の他にキャパシタ(コンデンサ)C1,C2の受動部品が更に載置されている状態を示している。
【0025】
DCDCコンバータ1においては、最下層から第1絶縁層41、第2絶縁層42、第3絶縁層43、第4絶縁層44、及び第5絶縁層45と、第1配線層31、第2配線層32、第3配線層33、及び第4配線層34とが順次積層されており、第3絶縁層43の内部の所定位置にICチップ7が埋設されている。最下層である第1絶縁層41には、外部素子と電気的に接続するために、少なくとも3つの各種出力端子21〜23(例えば、BGA:Ball Grid Array、いわゆるユーザ端子)が形成されており、それらは、DCDCコンバータ1に電圧を印加する入力電圧端子21(第1入力端子)、DCDCコンバータ1から任意の電圧を出力する出力電圧端子22、接地電位(グラウンド;例えば0V電圧)に接地されるグラウンド(GND)端子23から構成されている。
【0026】
なお、図1は、入力電圧端子21、及び、グラウンド端子23側の断面から、紙面奥行側に出力電圧端子22が視認される状態を示す。
【0027】
本実施形態のICチップ7も、各第1配線層31〜第4配線層34と電気的に接続するために最下層側に各端子が設けられており(内部電極、バンプ、ランド等)、これらの出力端子は、DCDCコンバータ1の電子部品内蔵基板2の最下層に形成された、少なくとも3つの各種出力端子21〜23に接続される少なくとも3つの端子、すなわち、入力電圧端子71(第2入力端子、入力電圧用の端子)、入力電圧に対してスイッチング制御を行うスイッチ(SW)端子72(スイッチング用の端子)、グラウンド(GND)端子73(グラウンド用の端子)に加え、インダクタ8とキャパシタC2(図2参照:上述のとおり図1には示していない)によって平滑された出力電圧を監視し出力電圧が予め設定された基準電圧内となるように制御するフィードバック(FB)端子74から構成されている。
【0028】
このように、ICチップ7は、それらの端子71〜74が電子部品内蔵基板2の最下層側に向けて配置されたいわゆるフェイスダウンの形態で設置されている。なお、入力電圧端子71とスイッチ端子72、及びグラウンド端子73とフィードバック端子74が、それぞれ、図1の視認方向において紙面の奥行き方向に重なるように設けられており、これらのうち、断面図である同図においては、入力電圧端子71、及び、グラウンド端子73のみを示した。
【0029】
また、ICチップ7のフィードバック端子74に対応する電子部品内蔵基板2の出力端子は形成されていない。これは、ICチップ7のフィードバック端子74は、平滑後の出力電圧を監視するためのものであるので、電子部品内蔵基板2の出力電圧端子22と接続させれば、その機能が果たされることによる。
【0030】
以上のとおり、図1は、ICチップ7を略中央で破断し、ICチップ7の一方側から平面視した場合の断面図を示しており、ICチップ7における片側一列の出力端子である、入力電圧端子71、及びグラウンド端子73の配線導体を介して、それぞれ、電子部品内蔵基板2の片側一列の入力電圧端子21、及びグラウンド端子23と電気的に接続されている構成を示す。このように、電子部品内蔵基板2に形成された外部出力用の各種出力端子21〜23とICチップ7の各種端子71〜74との対応関係は、以上説明したとおりである。
【0031】
また、ICチップ7の各種端子71〜74が電子部品内蔵基板2の内部において接続される構造は、次のとおりである。すなわち、ICチップ7の入力電圧端子71は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成された入力電圧端子21に接続される。また、ICチップ7の入力電圧端子71は、ビア導体95、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド61を介してキャパシタC1と接続される。
【0032】
ICチップ7のスイッチ端子72は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド62を介してインダクタ8と接続される。
【0033】
ICチップ7のグラウンド端子73は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31、及び電子部品内蔵基板2に形成されたグラウンド端子23に接続される。また、ICチップ7のグラウンド端子73は、ビア導体95、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド64,66を介してキャパシタC1,C2に接続される。
【0034】
ICチップ7のフィードバック端子74は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成された出力電圧端子22に接続される。また、ICチップ7のフィードバック端子74は、ビア導体95、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド61を介してインダクタ8に接続され、ビア導体95,93,94、及び接合領域である電極パッド65を介してキャパシタC2に接続される。
【0035】
図3乃至図13は、DCDCコンバータ1の半導体内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図(プロセスフロー図)である。
【0036】
まず、両面CCL(Copper Clad Laminate)である両面銅張ガラスエポキシをドリル穿孔し、さらに無電解めっき、及び電解めっきを施した後、めっき膜の不要部分をエッチング等により除去するといった公知の手法を用いて、パターニングされた第3配線層33及び第4配線層34が形成されたコア基板3を準備する(図3)。
【0037】
次いで、そのコア基板3の上に絶縁性の樹脂フィルムを真空圧着させて未硬化状態の第3絶縁層43を積層し、RCC(Resin Coated Copper)構造を形成する(図4)。
【0038】
そして、未硬化状態の第3絶縁層43上にICチップ7をいわゆるフェイスアップの状態で載置した後(図5)、再びその上を未硬化状態の樹脂で覆って第3絶縁層43内にICチップ7を埋め込み、第3絶縁層43を硬化させる。次に、第3絶縁層43上に銅箔を重ねて形成された第2配線層32の不要部分をエッチング等によって除去した後、第2配線層32を除去した箇所に、公知の方法でビアホール93H,95Hを穿設し、ビアホール93Hの底部に第3配線層33を露出させ、且つ、ビアホール95Hの底部にICチップ7の各端子71〜74(図示においては、入力電圧端子71、及びグラウンド端子73の2つの端子のみ示す)を露出させる(図6)。
【0039】
それから、ビアホール93H,95Hが形成されたコア基板3上に銅等のめっきを施し、第2配線層32と第3配線層33、及び、第2配線層とICチップ7の端子71〜74を、それぞれ、ビア導体93,95により接続する(図7)。
【0040】
次に、第2配線層32をエッチング等によりパターニングして第2配線層32の配線パターンを形成させる(図8)。次いで、第2配線層32上及びビアホール93H,95Hの内部に樹脂を充填して未硬化状態の第2絶縁層42を形成し、更にその上に銅箔等を積層して第1配線層31を形成した後、熱プレス等により基板全体を押圧することによって、第2絶縁層42を硬化させると同時に、積層される各第1配線層31〜第4配線層34及び各第2絶縁層42〜第4絶縁層44、並びにICチップ7間の密着性を高める(図9)。
【0041】
その後、その状態での最外両層である第1配線層31及び第4配線層34の不要部分をエッチング等によって除去して、ビアホール92H,94Hを穿設し、それらの底部に、それぞれ、第2配線層32及び第3配線層33を露出させる(図10)。
【0042】
次いで、ビアホール92H,94Hの内部、並びに、第1配線層31上及び第4配線層上に銅めっきを施して、第1配線層31と第2配線層32、及び第3配線層33と第4配線層34を、それぞれ、ビア導体92、94に接続する(図11)。次いで、第1配線層31及び第4配線層34をエッチング等によりパターニングして配線パターンを形成する(図12)。
【0043】
そして、第1配線層31及び第4配線層34の配線パターン上、及び、それらの配線パターン以外の適宜の部分に、ソルダーレジストを塗布等してマスク層である第1絶縁層41及び第5絶縁層45を形成させることにより、電子部品内蔵基板2を得る(図13)。それから、この電子部品内蔵基板2を反転させ上下を逆さまにした状態で、その上にインダクタ8及びキャパシタ等の受動部品を載置して接続することにより、DCDCコンバータ1を完成させる。
【0044】
このように形成された電子部品内蔵基板2を配線層31〜34ごとに接地側(インダクタ8の反対側)から平面視したときの配線構造を、図14から図20を参照しながら具体的に説明する。まず、図14は、本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。また、図15は、図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線構造図(I−I線断面図)である。さらに、図19は、入力側の配線インピーダンス(抵抗成分)を含めて示す等価回路図である。
【0045】
第1配線層31には、入力電圧用の配線パターン31Vi、グラウンド(接地)用の配線パターン31G、及び、出力電圧用の配線パターン31Voが形成される。また、第1配線層31には、外部素子と電気的に接続するために端子が形成されており、入力電圧端子21、出力電圧端子22、及びグラウンド端子23を有している。さらに、積層される第2配線層32と接続するために、入力電圧用のビア導体92Vi、出力電圧用のビア導体92Vo、及びグラウンド用のビア導体92Gが形成されている。また、第1配線層31に形成されるグラウンド用の配線パターン31Gは、2つのグラウンド用のビア導体92G、及び電子部品内蔵基板2に形成されたグラウンド端子23を一体に接続する。上記各種の配線パターン31Vi,Vo,Gは、各種出力端子21〜23と、各種出力端子21〜23に対応する各ビア導体92とを接続している。
【0046】
このように形成された配線構造において、入力電圧端子21は、図19に示すVIN端子に対応し、入力電圧用のビア導体92Viは、図19に示すR1に対応する。そして、入力電圧用の配線パターン31Viは、VIN端子と抵抗R1とを接続するリード線L1に対応する。
【0047】
図16は、図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線構造図(II−II線断面図)である。
【0048】
第2配線層32には、2つの入力電圧用の配線パターン32Vi‐1,Vi‐2(駆動用の信号ライン)、グラウンド(接地)用の配線パターン32G(駆動用の信号ライン)、スイッチング用の配線パターン32S(スイッチング用の信号ライン)、出力電圧用の配線パターン32Vo(駆動用の信号ライン)、及びフィードバック用の配線パターン32F(フィードバック用の信号ライン)が形成される。
【0049】
また、第2配線層32には、上述の第1配線層31と接続するために入力電圧用のビア導体92Vi、出力電圧用のビア導体92Vo、及びグラウンド用のビア導体92Gが形成され、第3配線層33と接続するために2つの入力電圧用のビア導体92Vi、2つの出力電圧用のビア導体93Vo、2つのスイッチング用のビア導体93S、及び2つのグラウンド用のビア導体93Gが形成される。また、ICチップ7の各種端子71〜74に接続される各種ビア導体95Vi,95G,95F,95Sが形成される。
【0050】
入力電圧用の配線パターン32Vi‐1の両端は、入力電圧用のビア導体92Vi,93Vi‐1に接続され、入力電圧用の配線パターン32Vi‐2の両端は、入力電圧用のビア導体93Vi‐2,95Viに接続される。入力電圧用のビア導体95Viは、ICチップ7の入力電圧端子71と接続される。
【0051】
また、出力電圧用の配線パターン32Voの両端は、出力電圧用のビア導体92Vo,93Voに接続される。さらにまた、スイッチング用の配線パターン32Sは、ICチップ7のスイッチ端子72に接続されるビア導体95S、及びスイッチング用のビア導体93Sと一体に接続される。また、グラウンド用の配線パターン32Gは、ICチップ7のグラウンド端子73に接続されるビア導体95G、及びグラウンド用のビア導体92G,93Gと一体に接続される。
【0052】
このように形成された配線構造において、入力電圧用のビア導体92Vi(第2ビア導体)と一体に接続されるビア導体93Vi‐1は、図19に示す、回路上の、抵抗R2に対応し、配線パターン32Vi‐1は、この抵抗R2と抵抗R1とを接続するリード線L2に対応する。また、入力電圧用のビア導体95Viと一体に接続されるビア導体93Vi‐2(第1ビア導体)は、図19に示す、回路上の、抵抗R3に対応し、配線パターン32Vi‐2は、この抵抗R3とICチップ7の入力電圧端子71とを接続するリード線L3に対応する。
【0053】
このように構成したことにより、図19に基づいて説明すれば、リード線L4から入力側キャパシタC1に至る配線を、ICチップ7と入力側キャパシタC1との接続、及び、入力電圧端子21(VIN端子)と入力側キャパシタC1との接続において共用できる、すなわち、入力電圧端子21と入力側キャパシタC1とを接続する配線、及び、入力側キャパシタC1とICチップ7とを接続する配線の、それぞれ少なくとも一部を同一の配線として一体に形成することができる。これにより、両配線を別体に設ける場合に比して配線インピーダンスの低減を図ることができる。
【0054】
また、入力電圧端子21から流入する電流が、ICチップ7と入力側キャパシタC1とを接続する配線の途中に設けられたビア導体93Vi‐2(抵抗R3に対応)によって、ICチップ7に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタC1へ確実に流れ込むことができる。そして、ビア導体93Vi‐2を形成するだけでなく、別々の入力電圧用の配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2を形成することによって、入力側キャパシタC1への配線経路を確実に確保することができる。
【0055】
さらにまた、ICチップ7と入力側キャパシタC1とを接続する配線の途中に介在する少なくとも2つのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2を形成したことにより、これらのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2に対応する回路上の抵抗R4,R5が並列に接続される等価回路となるので、配線インピーダンスを大幅に低減することが可能となる。
【0056】
ここで、フィードバック用の配線パターン32Fの一部は、入力電圧用の配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2、及びスイッチング用の配線パターン32Sが延在する方向を横断(縦断)するように形成されることが好ましい。
【0057】
本実施形態(図16)では、フィードバック用の配線パターン32Fの一部が、ICチップ7の長辺に沿って端子71,73と端子72,74との間、及び他の配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2,32Sを横断(縦断)するように形成されている。より具体的には、フィードバック用の配線パターン32Fの一部が、ICチップ7の略中央を通るように形成され、各種配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2,32Sに対して略直交するように形成されている。
【0058】
このように形成することにより、各種信号ラインとの接触が最小限に抑えられるため、各種信号ラインとの相互干渉を回避できるだけでなく、各種信号ラインとの容量結合をも防止することができ、フィードバック用の信号ラインである配線パターン32Fへのノイズの重畳を抑止又は遮断させて、フィードバック用の信号をより一層安定化させることができる。
【0059】
また、フィードバック用の配線パターン32Fは、フィードバック端子74、ビア導体95F、及び、出力電圧用のビア導体92Vo,93Vo,93Voに接続され、フィードバック用の配線パターン32Fの少なくとも一部が、図16に示す如く、電子部品内蔵基板2を平面視した状態において、ICチップ7の載置領域(実装領域)A7の外周(外枠)よりも内側に形成される。換言すれば、フィードバック用の配線パターン32Fの少なくとも一部は、ICチップ7の載置下であって、電子部品内蔵基板2を平面視した状態で(電子部品内蔵基板2の面方向において)ICチップ7と重なり合うように形成される。さらに、フィードバック用の配線パターン32Fが、インダクタ8から発生する漏れ磁束と略直交するように形成されているので、電子部品内蔵基板2は、フィードバック用の配線パターン32Fに対するインダクタ8から発生する漏れ磁束の影響を最も受け難くさせることができる。
【0060】
また、フィードバック用の配線パターン32Fの近くに、好ましくは、フィードバック用の配線パターン32Fの少なくとも一部を取り囲むように、グラウンド用の配線パターン32Gが形成される。グラウンド用の配線パターン32Gは、電子部品内装基板2の両端部であってICチップ7の側端部に形成されるグラウンド用のビア導体93G,93G、ICチップ7のグラウンド端子73に接続されるビア導体95G、及びグラウンド用のビア導体92G,92Gが一体に形成されるグラウンド層(第2グラウンド層)を画成する。本実施形態(図16)では、グラウンド用の配線パターン32Gは、フィードバック用の配線パターン32Fの周囲の他、スイッチング用の配線パターン32Sの近くにも形成される。
【0061】
このように、フィードバック用の配線パターン32Fがインダクタ8から離間した第2配線層32に形成されており、インダクタ8からより遠方に配置されているだけではなく、第2配線層32において、フィードバック用の配線パターン32FがICチップ7の載置領域内に形成されており、且つ、ICチップ7の載置下に配置されることにより、ICチップ7が、インダクタ8から発生する漏れ磁束を遮断する媒体(シールド体、シールド層)として機能するので、インダクタ8の漏れ磁束によって影響を受けやすいフィードバック用の信号ラインである配線パターン32Fへのノイズの重畳を抑止又は遮断させて安定化させることができる。
【0062】
なお、フィードバック用の配線パターン32Fは、平滑後の出力電圧を監視するためだけに形成された配線であることから、電流が僅かに流れる程度の細い配線パターンであればよい。また、このように形成されるフィードバック用の配線パターン32Fは、その一方端である出力電圧用のビア導体92Vo,93Vo,93Voから他方端であるフィードバック端子74に向かって電流が流れ、この電流は、インダクタ8が基板上で流れる電流の方向と反対向きに流れている。これにより、フィードバック用の配線パターン32Fには、インダクタ8から発生する磁界と反対向きの磁界(反磁界)が発生するので、インダクタ8から発生する漏れ磁束を少なからず軽減することができる。
【0063】
図17は、図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の端子71〜74の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図(III−III線断面図)である。第3絶縁層43の内部には、ICチップ7が埋設され、ICチップ7の各種端子71〜74及び第3配線層33と接続するための各種ビア導体93が形成される。これらの各種ビア導体93は、ICチップ7の一方側の端部に形成され、第2配線層32に形成されたビア導体93の略真上に設けられる。ICチップ7は、インダクタ8側からより離間した側(接地側)に各種端子71〜74が配置されるように第3絶縁層43内部に載置されている。
【0064】
図18は、図14に示すIV−IV線に沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図(IV−IV線断面図)である。第3配線層33には、入力電圧用の配線パターン33Vi、グラウンド用の配線パターン33G、スイッチング用の配線パターン33S、及び出力電圧用の配線パターン33Voが形成される。
【0065】
入力電圧用の配線パターン33Viは、第3配線層33に設けられた4つの入力電圧用のビア導体93Vi‐1、93Vi‐2、94Vi‐1、94Vi‐2と一体に接続されている。4つの入力電圧用のビア導体93Vi‐1、93Vi‐2、94Vi‐1、94Vi‐2のうち、一方の入力電圧用のビア導体93Vi‐1は、図19に示す抵抗R2,他方の入力電圧用のビア導体93Vi‐2は、図19に示す抵抗R3に対応する。また、一方の入力電圧用のビア導体94Vi‐1は、図19に示す抵抗R4,他方の入力電圧用のビア導体94Vi‐2は、図19に示す抵抗R5に対応する。このように、回路上、等価な抵抗R2,R3のそれぞれの値は、等価であっても良いが、抵抗R4,R5のそれぞれの値より大きい値であることが好ましい。そして、入力電圧用の配線パターン33Viは、並列に接続された抵抗R2,R3と抵抗R4,R5とをそれぞれ並列に接続する結線と、これら並列群を直列に接続する結線とに相当するリード線L4に対応する。
【0066】
ここで、本実施形態とは異なり、例えば、配線インピーダンスの低減を図ることを目的に配線パターン32Vi−1,32Vi−2をまとめて1つのパターンとすると、抵抗R2、抵抗R3は並列接続となるため、新たに配線N3ができることとなる。したがって、入力側の電流が、抵抗R2から、抵抗R3,R4,R5を通らず,そのまま入力電圧端子71へ流入してしまうことになる。このため、もし、入力電圧が低下してしまい、その結果、入力電圧が出力電圧よりも低くなった場合には、電流の逆流を回避することが極めて難しく、また、制御回路Cのスッチング動作に伴って変動する入力電圧の影響も大きくなる傾向にある。また例えば、抵抗R2、抵抗R4、抵抗R5、抵抗R3をその順(又はその逆順)で直列に(言わば、「一筆書き」状に、又は、一気通貫的に)接続し、抵抗R4と抵抗R5との結線に、グラウンドに接続された入力側キャパシタC1を接続する回路構成の場合には、配線インピーダンスが比較的大きくなる傾向にあることから、電源としての効率を考慮すると抵抗R4と抵抗R5とを並列接続することが好ましい。
【0067】
先にも関連して述べたとおり、本実施形態(図19参照)の如く、回路上の2点N1,N2間が相対的に低いインピーダンスで電気的に接続される状態(短絡)となるように、第3配線層33に、配線パターン33Viが、ビア導体93Vi‐1,93Vi‐2,94Vi‐1,94Vi‐2と一体になるように形成されているので、入力電圧が入力される入力電圧端子21と入力側キャパシタC1を接続する配線、及び入力側キャパシタC1とICチップ7とを接続する配線のそれぞれの少なくとも一部を同一の配線として一体に形成することができる。よって、本実施形態によれば、上述した抵抗R2,R4,R5,R3を直列に接続し且つ抵抗R4,R5間に入力側キャパシタC1を接続した構成に起因して生じ得る電流の逆流等の不都合を、有効に回避することができる。
【0068】
また、このように形成することにより、回路上では、抵抗R2,R3間の結線が分断され得る。このため、入力側の電流が一気に入力側キャパシタC1を通らずに入力電圧端子71まで流れることが防止され、その結果、入力電圧の降下に伴う電流の逆流を防止することができる。また、入力電圧端子21及び入力側キャパシタC1が接続される配線、並びに、入力電圧端子71及び入力側キャパシタC1が接続される配線が、ICチップ7の入力電圧端子71が形成される層とは異なる層である配線層33においてで短絡されているため、制御回路Cのスイッチング動作に伴う入力電圧の変動による影響を、無視し得る程度にまで軽減し得る。さらに、2つのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2を設け、配線パターン33Viと一体に接続することにより、抵抗R4と抵抗R5とが並列に接続されるので、これによっても配線インピーダンスを低減することができる。
【0069】
グラウンド用の配線パターン33Gは、第3配線層33下に載置されるICチップ7の載置領域A7よりも外側に形成されたグラウンド層(言わば、第1グラウンド層)であって、本実施形態では、入力電圧用の配線パターン33Vi、スイッチング用の配線パターン33S、及び出力電圧用の配線パターン33Voが形成された領域を除く、インダクタ8の載置領域(実装領域)の略全域を覆うように形成される。このように、グラウンド用の配線パターン33Gは、ICチップ7の載置領域A7、及びインダクタ8の載置領域を覆うように形成されるため、優れた電磁波シールドとして機能する。
【0070】
このように、前述の如く、第2配線層32に形成させたグラウンド層に加え、インダクタ8とICチップ7との間の第3配線層33に、ICチップ7を覆うように広範囲に亘るグラウンド層を形成させることにより、インダクタ8の表面から発生する漏れ磁束に起因する電磁波ノイズの影響を、大幅に抑制又は遮断することが可能となる。加えて、第2配線層32に形成される様々な信号ラインの相互干渉が防止され得る。さらに、制御回路Cにおけるスイッチング制御の際に発生し易いノイズの発生をも防止することができる。
【0071】
また、第3配線層33に形成されるグラウンド層は、入力電圧用の配線パターン33Viと出力電圧用の配線パターン33Voとの間に形成されることが望ましい。このように形成することで、第3配線層33に形成される入力側の信号ラインと出力側の信号ラインとがグラウンド層を介して分断されるため、両信号ラインの相互干渉を防止することができ、電子部品内蔵基板2の動作が安定する。
【0072】
図19は、図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図(V−V線断面図)である。第4配線層34は、入力電圧用の配線パターン34Vi、グラウンド用の配線パターン34G、スイッチング用の配線パターン34S、及び出力電圧用の配線パターン34Voから構成され、それぞれの配線パターン34Vi,34G,34S,34Vは、入力電圧用のビア導体94Vi‐1,94Vi‐2、グラウンド用のビア導体94G、スイッチ要のビア導体94S、出力電圧用のビア導体94Voのそれぞれに接続される。
【0073】
そして、それぞれの配線パターン34Vi,34G,34S,34Vo上に、電極パッド61〜66が設置される。各電極パッド61〜66は、それぞれの配線パターン34Vi,34G,34S,34Voの領域内であって、インダクタ8又はキャパシタC1,C2が載置される領域の端部よりも外側に配置されるように形成されている。そして、電極パッド61,62上にインダクタ8が載置され、電極パッド63,64上に入力側キャパシタC1が載置され、電極パッド65,66上に出力側キャパシタC2が載置されることにより、インダクタ8及びキャパシタC1,C2が実装されたDCDCコンバータ1を得ることができる。
【0074】
以上のとおり、本実施形態によれば、ICチップ7と入力側キャパシタC1とを接続する配線、及び、入力電圧端子21と入力側キャパシタC1とを接続する配線の少なくとも一部を同一の配線として一体に形成したので、両配線を別体に設ける場合に比して配線インピーダンスの低減を図ることができる。
【0075】
また、ICチップ7の入力電圧端子71が接続される配線層32と入力側キャパシタC1が接続される配線層34との間に、抵抗成分として作用するビア導体93Vi‐2を形成したので、入力電圧端子21から流入する電流がICチップ7に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタC1へ確実に流れ込むことができる。さらにまた、これにより、入力側キャパシタC1の本来の機能を保持することができるので、電源モジュールであるDCDCコンバータ1の回路等の誤動作を確実に防止して正確な動作を定常的に維持することが可能となる。
【0076】
また、ICチップ7の入力電圧端子71が形成される層とは異なる層である配線層33において、入力電圧端子21及び入力側キャパシタC1が接続される配線、並びに、入力電圧端子71及び入力側キャパシタC1が接続される配線を短絡させ、同一の配線としたので、配線インピーダンスを一層低減することができる。さらに、これにより、入力電圧の降下に伴う電流の逆流をより確実に防止することができる。さらにまた、2つのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2を設け、配線パターン33Viと一体に接続することにより、配線インピーダンスの更なる低減が可能となる。
【0077】
加えて、インダクタ8とフィードバック用の信号ラインである配線パターン32Fとの間の第3配線層33に、所定の接地電位と接続されるグラウンド用の配線パターン33GをICチップ7の載置領域A7より外側に形成し、且つ、電子部品内蔵基板2の面方向における配線パターン33Gを介して入力信号ラインと出力信号ラインと形成したので、インダクタ8からの漏れ磁束を大幅に遮断することができるとともに、両信号ラインの相互干渉が防止され、ノイズ抑止効果が高められ、その結果、モジュール動作の更なる安定化を図ることができる。
【0078】
なお、上述したとおり、発発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において、これまでに適宜述べたとおり、様々な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したとおり、本発明の電源モジュールは、入力側キャパシタの機能を保持しつつ、配線インピーダンスを低減することができ、これにより、インダクタ等の電子部品の近傍に配置されるICチップ等の電子部品の安定な動作を確保し、且つ、誤動作を確実に防止することができるとともに、信頼性すなわち純度の高い信号伝送を行うことができるので、電子部品を内蔵する機器、装置、システム、各種デバイス等、特に小型化及び高性能化が要求されるもの、並びにそれらの生産、製造等に広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…DCDCコンバータ(電源モジュール)、2…電子部品内蔵基板、3…コア基板、C…制御回路、S1,S2…スイッチ回路、7…ICチップ(第1電子部品)、A7…ICチップの載置領域(実装領域)、8,L…インダクタ(第2電子部品)、C1…入力側キャパシタ(コンデンサ),C2…出力側キャパシタ(コンデンサ)、21…電子部品内蔵基板の入力電圧端子(第1入力端子)、22…電子部品内蔵基板の出力電圧端子、23…電子部品内蔵基板のグラウンド端子、31〜34…配線層、32F…フィードバック用の配線パターン(フィードバック用の信号ライン)、32Vi−1,32Vi−2…入力電圧用の配線パターン(駆動用の信号ライン)、32Vo…出力電圧用の配線パターン、32S…スイッチング用の配線パターン(スイッチング用の信号ライン)、32G…グラウンド用の配線パターン(駆動用の信号ライン,第2グラウンド層)、33G…グラウンド用の配線パターン(第1グラウンド層)、41〜45…絶縁層、61〜66…電極パッド、71…入力電圧用の端子(第2入力端子)、72…スイッチ端子、73…グラウンド端子、74…フィードバック端子、81…接合部、92Vi…ビア導体(第2ビア導体)、93Vi‐2…ビア導体(第1ビア導体),94Vi‐1,94Vi‐2…ビア導体、92〜95…ビア導体、92H〜95H…ビアホール、VIN…入力電圧、VOUT…出力電圧。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の内部に電子部品が埋め込まれた(内蔵された)電源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に用いられるICチップ(ベアチップ:ダイ(Die))等の半導体装置といった能動部品や、キャパシタ(コンデンサ)、インダクタ、サーミスタ、抵抗等の受動部品等の電子部品が実装されたモジュール化が進んでおり、かかるモジュールに対する小型化や薄型化がますます熱望されている。
【0003】
かかる要求に応えるべく、例えば、特許文献1には、能動部品や受動部品が実装されたモジュールとして、電子部品が載置された基板上に電子部品より高いスタッド出力端子を設け、このスタッド出力端子上にマイクロインダクタを設置することにより、電子部品とマイクロインダクタとを、基板面に対して上下方向に載置するように配設してなるマイクロコンバータが提案されており、例えば電子機器の電源回路として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−63676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構造の電源回路としてのマイクロコンバータでは、その電源回路の更なる高効率化(高性能化)を達成すべく、配線インピーダンスをこれまで以上に低下させることが必要不可欠となってきており、また、モジュールの更なる小型化に伴い、配線領域の縮小・低減(縮減)を図る必要も生じてきている。そこで、それらの要求に応えるべく、上記特許文献1に開示されたマイクロコンバータでは、接続元と接続先(接続すべき対象環)を接続する複数の配線のうち、同様の役割を担う配線が同一の配線で一体に形成される傾向にある。
【0006】
例えば、電圧変換を行う電源回路では、入力側からの外部ノイズが電源回路に入射・伝達することを抑止し、かつ、電流の逆流し、さらに、入力電圧の安定化を図るべく、入力電圧が入力(印加)される入力電圧端子と、制御回路の入力電圧端子との間に、入力側キャパシタ(コンデンサ)が設けられた回路構成が採られることがある。この場合、本来、入力側の配線として、2つの異なる配線、すなわち、入力電圧が印加される入力電圧端子と入力側キャパシタとを接続する配線、及び、入力側キャパシタと制御回路の入力電圧端子とを接続する配線といった別体に形成された異なる複数の配線が別々に設けられるべきところ、それらの複数の配線は、機能的に、入力側の配線として同様の役割を有することから、それらの少なくとも一部を同一(一体)の配線で兼用することにより、配線インピーダンスの低減を図ることが試みられつつある。
【0007】
しかしながら、これらの配線の少なくとも一部を同一の配線(同一の代用配線)とした場合には、入力電圧が印加される入力電圧端子と制御回路の入力電圧端子とが直接的に接続されてしまうため、それらの間に設けられた入力側キャパシタを経由することなく、入力電圧が印加される入力電圧端子から制御回路の入力電圧端子へ電流が流れてしまい、或いは、電流が逆流してしまうおそれが生じ得る。また、制御回路のスイッチング動作に伴って入力電圧が変動するため、このように、入力側キャパシタを経由することなく、入力電圧が印加される入力電圧端子から制御回路の入力電圧端子へ電流が流れてしまうような同一の配線を入力側の配線として設けた場合には、入力側の信号ライン全体に、電圧変動に起因する大きな影響が生じてしまう。
【0008】
それらの結果、入力側の信号ラインに外部ノイズが含まれてしまったり、入力側信号が不安定になったりする不都合が生じる可能性も高くなる。このように、本来的に複数必要な入力側の配線を、単純に同一の配線で代用しようとすると、入力側キャパシタが本来有する複数の有用な機能、つまり、入力側から侵入し得る外部ノイズを除去する機能、入力電圧の変動の影響を制御回路に与えない電池(二次電池)としての機能、及び、電流の逆流を防止する機能が発現されず、その結果、そのような同一の代用配線は、電源回路の誤動作を引き起こす要因となってしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、入力側キャパシタの機能を保持しつつ、配線インピーダンスを低減することができ、これにより、電子回路の誤動作を確実に防止して正確な動作を安定に維持することが可能な電源モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は電源モジュールに関する発明であって、かかる電源モジュールは、電子部品が内蔵された基板と、基板上に載置され、且つ、所定の接地電位に接続される入力側キャパシタと、基板に設けられ、且つ、入力電圧が入力(印加)される第1入力端子とを備え、第1入力端子は、入力側キャパシタと電気的に接続され、電子部品は、基板に設けられた(形成された)第1ビア導体を介して入力側キャパシタと電気的に接続されている。
【0011】
上記構成においては、第1入力端子と電子部品が、ともに入力側キャパシタに接続されており、より具体的には、第1入力端子と電子部品が、入力側キャパシタを構成する一対の電極のうち接地電位に接続されていない電極に接続され、換言すれば、第1入力端子と電子部品が、入力側キャパシタを経由して互いに電気的に接続されている。よって、入力電圧が入力される第1入力端子と入力側キャパシタとを接続する配線、及び、入力側キャパシタと電子部品とを接続する配線のそれぞれの少なくとも一部を同一の配線(同一の代用配線)として一体に形成することができるので、両配線を別体に設ける場合に比して、配線インピーダンスの低減を図り得る。
【0012】
しかも、電子部品が、基板に設けられた第1ビア導体を介して入力側キャパシタと接続される、言い換えれば、電子部品と入力側キャパシタを接続する配線の途中に第1ビア導体が介在し、この第1ビア導体は、回路上、抵抗成分として作用するので、電圧が入力された第1入力端子から流入する電流は、その抵抗成分によって電子部品に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタへ確実に流れ込む。その結果、入力側キャパシタが有する、入力側から侵入し得る外部ノイズを除去する機能、入力電圧の変動を制御回路に伝えない電池(二次電池)としての機能、及び、電流の逆流を防止するという本来の機能が十分に発動されるので、電源回路である電源モジュールの安定な動作が確保される。
【0013】
なお、本明細書において、「電子部品が内蔵された基板」とは、電子部品が内蔵された単位基板である個別基板(個片、個品)のみではなく、その個別基板を複数有する集合基板(ワークボード、ワークシート)を含む概念であり、その「電子部品」とは、その種類は特に制限されず、例えば、通常の電子機器に用いられるICチップ等の半導体装置といった能動部品、より具体的には、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)のように、動作周波数が非常に高いデジタルIC、又は、高周波増幅器やアンテナスイッチ、高周波発振回路といったアナログIC等が挙げられる。
【0014】
具体的には、第1入力端子が、基板に設けられた第2ビア導体を介して入力側キャパシタと電気的に接続されている構成が挙げられる。
【0015】
上記構成においては、第1入力端子と入力側キャパシタを接続する配線の途中に第2ビア導体が介在されるため、特に、積層基板において、第1入力端子と入力側キャパシタとが離れて配置されている場合に有効である。また、この第2ビア導体は、回路上、抵抗成分として作用するが、第1ビア導体による抵抗成分より第2ビア導体による抵抗成分が小さくなるように第2ビア導体を形成すれば、電圧が入力された第1入力端子から流入する電流は、それらの抵抗成分によって電子部品に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタへ確実に流れ込む。
【0016】
また、電子部品は、入力電圧に応じた電圧が入力(印加)される第2入力端子を有し、第1入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線、並びに、第2入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線が、第2入力端子が形成される層とは異なる層で短絡されていてもよい。
【0017】
上記構成においては、第1入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線と、第2入力端子及び入力側キャパシタが接続される配線とが、第2入力端子が形成される層とは異なる層で直結されるので、入力側キャパシタの入力側(接地側とは反対側)には、両配線が並列に接続されることとなる。これにより、第1入力端子、入力側キャパシタ、第2入力端子が1本の配線で接続されることが防止され得る。これにより、第1入力端子、入力側キャパシタ、第2入力端子間を流れる電流の逆流をより一層確実に防止することができる。
【0018】
また、基板上に載置され、且つ、基板に内蔵された電子部品とは異なる電子部品を備え、電子部品は、第2入力端子(電子部品の主面側)が、異なる電子部品とは反対側を向く(いわゆるフェイスダウンとなる)ように配置されると、電子部品の第2出力端子が異なる電子部品を向くように配置された場合に比して、第2入力端子を異なる電子部品から離間させることができ、構造的に、電子部品の周辺に位置し得る信号ラインもまた異なる電子部品(例えば、インダクタ)から比較的遠方に遠ざけられる。これにより、異なる電子部品に起因するノイズ(例えば、インダクタからの漏れ磁束に起因するノイズ)が、電子部品の周辺に位置する各種信号ラインに結合することに起因するノイズを抑制且つ遮断し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電源モジュールによれば、基板に設けられ、且つ、入力電圧が入力される第1入力端子は、入力側キャパシタと電気的に接続され、電子部品は、基板に設けられた第1ビア導体を介して入力側キャパシタと電気的に接続するようにしたので、入力電圧が入力される第1入力端子と入力側キャパシタとを接続する配線、及び、入力側キャパシタと電子部品とを接続する配線のそれぞれの少なくとも一部を同一の配線として一体に形成することができる。これにより、両配線を別体に設ける場合に比して、配線インピーダンスの低減を図ることができる。また、電子部品と入力側キャパシタを接続する配線の途中に、抵抗成分として作用する第1ビア導体が介在するので、電圧が入力された第1入力端子から流入する電流は、その抵抗成分によって、電子部品に直接流れ込むことを回避することができる一方、入力側キャパシタへ確実に流れ込むことができる。これにより、入力側キャパシタの本来の機能が保持されるので、電源モジュールの回路等の誤動作を確実に防止して正確な動作を定常的に維持することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による電源モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示すDCDCコンバータ1の等価回路図である。
【図3】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図4】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図5】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図6】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図7】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図8】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図9】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図10】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図11】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図12】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図13】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図14】本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。
【図15】図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線図である。
【図16】図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線図である。
【図17】図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の端子71〜74の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図である。
【図18】図14に示すIV−IV線に沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【図19】入力側の配線インピーダンスを示す等価回路図である。
【図20】図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明による電源モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1(電源モジュール)の構造を概略的に示す断面図であり、図2は、DCDCコンバータ1の等価回路図である。
【0023】
DCDCコンバータ1は、電子部品内蔵基板2(基板)と、接合部81を介して電子部品内蔵基板2の接合領域(電極パッド)61,62に接続された例えばインダクタ8(本発明における「異なる電子部品」:受動部品)とから構成されるものであり、電子部品内蔵基板2には、例えばICチップ7(本発明における「電子部品」:能動部品)が内蔵されている。なお、電子部品内蔵基板2上には、インダクタ8の他にキャパシタ(コンデンサ)等の受動部品が更に載置されていてもよく、図1においては、DCDCコンバータ1を構成する受動部品のうち、インダクタ8のみを電子部品内蔵基板2上に載置している状態を示している。
【0024】
ICチップ7は、図2の等価回路図に示されるように、入力電圧VINに対してスイッチング制御を行い所望の出力電圧VOUTを出力させる制御回路Cと、実際のスイッチング動作を担うスイッチ回路S1,S2とから構成されている。なお、図2の等価回路図は、図1に示す電子部品内蔵基板2上に、インダクタ8(図2では、Lと記載)の他にキャパシタ(コンデンサ)C1,C2の受動部品が更に載置されている状態を示している。
【0025】
DCDCコンバータ1においては、最下層から第1絶縁層41、第2絶縁層42、第3絶縁層43、第4絶縁層44、及び第5絶縁層45と、第1配線層31、第2配線層32、第3配線層33、及び第4配線層34とが順次積層されており、第3絶縁層43の内部の所定位置にICチップ7が埋設されている。最下層である第1絶縁層41には、外部素子と電気的に接続するために、少なくとも3つの各種出力端子21〜23(例えば、BGA:Ball Grid Array、いわゆるユーザ端子)が形成されており、それらは、DCDCコンバータ1に電圧を印加する入力電圧端子21(第1入力端子)、DCDCコンバータ1から任意の電圧を出力する出力電圧端子22、接地電位(グラウンド;例えば0V電圧)に接地されるグラウンド(GND)端子23から構成されている。
【0026】
なお、図1は、入力電圧端子21、及び、グラウンド端子23側の断面から、紙面奥行側に出力電圧端子22が視認される状態を示す。
【0027】
本実施形態のICチップ7も、各第1配線層31〜第4配線層34と電気的に接続するために最下層側に各端子が設けられており(内部電極、バンプ、ランド等)、これらの出力端子は、DCDCコンバータ1の電子部品内蔵基板2の最下層に形成された、少なくとも3つの各種出力端子21〜23に接続される少なくとも3つの端子、すなわち、入力電圧端子71(第2入力端子、入力電圧用の端子)、入力電圧に対してスイッチング制御を行うスイッチ(SW)端子72(スイッチング用の端子)、グラウンド(GND)端子73(グラウンド用の端子)に加え、インダクタ8とキャパシタC2(図2参照:上述のとおり図1には示していない)によって平滑された出力電圧を監視し出力電圧が予め設定された基準電圧内となるように制御するフィードバック(FB)端子74から構成されている。
【0028】
このように、ICチップ7は、それらの端子71〜74が電子部品内蔵基板2の最下層側に向けて配置されたいわゆるフェイスダウンの形態で設置されている。なお、入力電圧端子71とスイッチ端子72、及びグラウンド端子73とフィードバック端子74が、それぞれ、図1の視認方向において紙面の奥行き方向に重なるように設けられており、これらのうち、断面図である同図においては、入力電圧端子71、及び、グラウンド端子73のみを示した。
【0029】
また、ICチップ7のフィードバック端子74に対応する電子部品内蔵基板2の出力端子は形成されていない。これは、ICチップ7のフィードバック端子74は、平滑後の出力電圧を監視するためのものであるので、電子部品内蔵基板2の出力電圧端子22と接続させれば、その機能が果たされることによる。
【0030】
以上のとおり、図1は、ICチップ7を略中央で破断し、ICチップ7の一方側から平面視した場合の断面図を示しており、ICチップ7における片側一列の出力端子である、入力電圧端子71、及びグラウンド端子73の配線導体を介して、それぞれ、電子部品内蔵基板2の片側一列の入力電圧端子21、及びグラウンド端子23と電気的に接続されている構成を示す。このように、電子部品内蔵基板2に形成された外部出力用の各種出力端子21〜23とICチップ7の各種端子71〜74との対応関係は、以上説明したとおりである。
【0031】
また、ICチップ7の各種端子71〜74が電子部品内蔵基板2の内部において接続される構造は、次のとおりである。すなわち、ICチップ7の入力電圧端子71は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成された入力電圧端子21に接続される。また、ICチップ7の入力電圧端子71は、ビア導体95、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド61を介してキャパシタC1と接続される。
【0032】
ICチップ7のスイッチ端子72は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド62を介してインダクタ8と接続される。
【0033】
ICチップ7のグラウンド端子73は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31、及び電子部品内蔵基板2に形成されたグラウンド端子23に接続される。また、ICチップ7のグラウンド端子73は、ビア導体95、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド64,66を介してキャパシタC1,C2に接続される。
【0034】
ICチップ7のフィードバック端子74は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成された出力電圧端子22に接続される。また、ICチップ7のフィードバック端子74は、ビア導体95、第3配線層33に接続されるビア導体93、第4配線層34に接続されるビア導体94、及び接合領域である電極パッド61を介してインダクタ8に接続され、ビア導体95,93,94、及び接合領域である電極パッド65を介してキャパシタC2に接続される。
【0035】
図3乃至図13は、DCDCコンバータ1の半導体内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図(プロセスフロー図)である。
【0036】
まず、両面CCL(Copper Clad Laminate)である両面銅張ガラスエポキシをドリル穿孔し、さらに無電解めっき、及び電解めっきを施した後、めっき膜の不要部分をエッチング等により除去するといった公知の手法を用いて、パターニングされた第3配線層33及び第4配線層34が形成されたコア基板3を準備する(図3)。
【0037】
次いで、そのコア基板3の上に絶縁性の樹脂フィルムを真空圧着させて未硬化状態の第3絶縁層43を積層し、RCC(Resin Coated Copper)構造を形成する(図4)。
【0038】
そして、未硬化状態の第3絶縁層43上にICチップ7をいわゆるフェイスアップの状態で載置した後(図5)、再びその上を未硬化状態の樹脂で覆って第3絶縁層43内にICチップ7を埋め込み、第3絶縁層43を硬化させる。次に、第3絶縁層43上に銅箔を重ねて形成された第2配線層32の不要部分をエッチング等によって除去した後、第2配線層32を除去した箇所に、公知の方法でビアホール93H,95Hを穿設し、ビアホール93Hの底部に第3配線層33を露出させ、且つ、ビアホール95Hの底部にICチップ7の各端子71〜74(図示においては、入力電圧端子71、及びグラウンド端子73の2つの端子のみ示す)を露出させる(図6)。
【0039】
それから、ビアホール93H,95Hが形成されたコア基板3上に銅等のめっきを施し、第2配線層32と第3配線層33、及び、第2配線層とICチップ7の端子71〜74を、それぞれ、ビア導体93,95により接続する(図7)。
【0040】
次に、第2配線層32をエッチング等によりパターニングして第2配線層32の配線パターンを形成させる(図8)。次いで、第2配線層32上及びビアホール93H,95Hの内部に樹脂を充填して未硬化状態の第2絶縁層42を形成し、更にその上に銅箔等を積層して第1配線層31を形成した後、熱プレス等により基板全体を押圧することによって、第2絶縁層42を硬化させると同時に、積層される各第1配線層31〜第4配線層34及び各第2絶縁層42〜第4絶縁層44、並びにICチップ7間の密着性を高める(図9)。
【0041】
その後、その状態での最外両層である第1配線層31及び第4配線層34の不要部分をエッチング等によって除去して、ビアホール92H,94Hを穿設し、それらの底部に、それぞれ、第2配線層32及び第3配線層33を露出させる(図10)。
【0042】
次いで、ビアホール92H,94Hの内部、並びに、第1配線層31上及び第4配線層上に銅めっきを施して、第1配線層31と第2配線層32、及び第3配線層33と第4配線層34を、それぞれ、ビア導体92、94に接続する(図11)。次いで、第1配線層31及び第4配線層34をエッチング等によりパターニングして配線パターンを形成する(図12)。
【0043】
そして、第1配線層31及び第4配線層34の配線パターン上、及び、それらの配線パターン以外の適宜の部分に、ソルダーレジストを塗布等してマスク層である第1絶縁層41及び第5絶縁層45を形成させることにより、電子部品内蔵基板2を得る(図13)。それから、この電子部品内蔵基板2を反転させ上下を逆さまにした状態で、その上にインダクタ8及びキャパシタ等の受動部品を載置して接続することにより、DCDCコンバータ1を完成させる。
【0044】
このように形成された電子部品内蔵基板2を配線層31〜34ごとに接地側(インダクタ8の反対側)から平面視したときの配線構造を、図14から図20を参照しながら具体的に説明する。まず、図14は、本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。また、図15は、図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線構造図(I−I線断面図)である。さらに、図19は、入力側の配線インピーダンス(抵抗成分)を含めて示す等価回路図である。
【0045】
第1配線層31には、入力電圧用の配線パターン31Vi、グラウンド(接地)用の配線パターン31G、及び、出力電圧用の配線パターン31Voが形成される。また、第1配線層31には、外部素子と電気的に接続するために端子が形成されており、入力電圧端子21、出力電圧端子22、及びグラウンド端子23を有している。さらに、積層される第2配線層32と接続するために、入力電圧用のビア導体92Vi、出力電圧用のビア導体92Vo、及びグラウンド用のビア導体92Gが形成されている。また、第1配線層31に形成されるグラウンド用の配線パターン31Gは、2つのグラウンド用のビア導体92G、及び電子部品内蔵基板2に形成されたグラウンド端子23を一体に接続する。上記各種の配線パターン31Vi,Vo,Gは、各種出力端子21〜23と、各種出力端子21〜23に対応する各ビア導体92とを接続している。
【0046】
このように形成された配線構造において、入力電圧端子21は、図19に示すVIN端子に対応し、入力電圧用のビア導体92Viは、図19に示すR1に対応する。そして、入力電圧用の配線パターン31Viは、VIN端子と抵抗R1とを接続するリード線L1に対応する。
【0047】
図16は、図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線構造図(II−II線断面図)である。
【0048】
第2配線層32には、2つの入力電圧用の配線パターン32Vi‐1,Vi‐2(駆動用の信号ライン)、グラウンド(接地)用の配線パターン32G(駆動用の信号ライン)、スイッチング用の配線パターン32S(スイッチング用の信号ライン)、出力電圧用の配線パターン32Vo(駆動用の信号ライン)、及びフィードバック用の配線パターン32F(フィードバック用の信号ライン)が形成される。
【0049】
また、第2配線層32には、上述の第1配線層31と接続するために入力電圧用のビア導体92Vi、出力電圧用のビア導体92Vo、及びグラウンド用のビア導体92Gが形成され、第3配線層33と接続するために2つの入力電圧用のビア導体92Vi、2つの出力電圧用のビア導体93Vo、2つのスイッチング用のビア導体93S、及び2つのグラウンド用のビア導体93Gが形成される。また、ICチップ7の各種端子71〜74に接続される各種ビア導体95Vi,95G,95F,95Sが形成される。
【0050】
入力電圧用の配線パターン32Vi‐1の両端は、入力電圧用のビア導体92Vi,93Vi‐1に接続され、入力電圧用の配線パターン32Vi‐2の両端は、入力電圧用のビア導体93Vi‐2,95Viに接続される。入力電圧用のビア導体95Viは、ICチップ7の入力電圧端子71と接続される。
【0051】
また、出力電圧用の配線パターン32Voの両端は、出力電圧用のビア導体92Vo,93Voに接続される。さらにまた、スイッチング用の配線パターン32Sは、ICチップ7のスイッチ端子72に接続されるビア導体95S、及びスイッチング用のビア導体93Sと一体に接続される。また、グラウンド用の配線パターン32Gは、ICチップ7のグラウンド端子73に接続されるビア導体95G、及びグラウンド用のビア導体92G,93Gと一体に接続される。
【0052】
このように形成された配線構造において、入力電圧用のビア導体92Vi(第2ビア導体)と一体に接続されるビア導体93Vi‐1は、図19に示す、回路上の、抵抗R2に対応し、配線パターン32Vi‐1は、この抵抗R2と抵抗R1とを接続するリード線L2に対応する。また、入力電圧用のビア導体95Viと一体に接続されるビア導体93Vi‐2(第1ビア導体)は、図19に示す、回路上の、抵抗R3に対応し、配線パターン32Vi‐2は、この抵抗R3とICチップ7の入力電圧端子71とを接続するリード線L3に対応する。
【0053】
このように構成したことにより、図19に基づいて説明すれば、リード線L4から入力側キャパシタC1に至る配線を、ICチップ7と入力側キャパシタC1との接続、及び、入力電圧端子21(VIN端子)と入力側キャパシタC1との接続において共用できる、すなわち、入力電圧端子21と入力側キャパシタC1とを接続する配線、及び、入力側キャパシタC1とICチップ7とを接続する配線の、それぞれ少なくとも一部を同一の配線として一体に形成することができる。これにより、両配線を別体に設ける場合に比して配線インピーダンスの低減を図ることができる。
【0054】
また、入力電圧端子21から流入する電流が、ICチップ7と入力側キャパシタC1とを接続する配線の途中に設けられたビア導体93Vi‐2(抵抗R3に対応)によって、ICチップ7に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタC1へ確実に流れ込むことができる。そして、ビア導体93Vi‐2を形成するだけでなく、別々の入力電圧用の配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2を形成することによって、入力側キャパシタC1への配線経路を確実に確保することができる。
【0055】
さらにまた、ICチップ7と入力側キャパシタC1とを接続する配線の途中に介在する少なくとも2つのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2を形成したことにより、これらのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2に対応する回路上の抵抗R4,R5が並列に接続される等価回路となるので、配線インピーダンスを大幅に低減することが可能となる。
【0056】
ここで、フィードバック用の配線パターン32Fの一部は、入力電圧用の配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2、及びスイッチング用の配線パターン32Sが延在する方向を横断(縦断)するように形成されることが好ましい。
【0057】
本実施形態(図16)では、フィードバック用の配線パターン32Fの一部が、ICチップ7の長辺に沿って端子71,73と端子72,74との間、及び他の配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2,32Sを横断(縦断)するように形成されている。より具体的には、フィードバック用の配線パターン32Fの一部が、ICチップ7の略中央を通るように形成され、各種配線パターン32Vi‐1,32Vi‐2,32Sに対して略直交するように形成されている。
【0058】
このように形成することにより、各種信号ラインとの接触が最小限に抑えられるため、各種信号ラインとの相互干渉を回避できるだけでなく、各種信号ラインとの容量結合をも防止することができ、フィードバック用の信号ラインである配線パターン32Fへのノイズの重畳を抑止又は遮断させて、フィードバック用の信号をより一層安定化させることができる。
【0059】
また、フィードバック用の配線パターン32Fは、フィードバック端子74、ビア導体95F、及び、出力電圧用のビア導体92Vo,93Vo,93Voに接続され、フィードバック用の配線パターン32Fの少なくとも一部が、図16に示す如く、電子部品内蔵基板2を平面視した状態において、ICチップ7の載置領域(実装領域)A7の外周(外枠)よりも内側に形成される。換言すれば、フィードバック用の配線パターン32Fの少なくとも一部は、ICチップ7の載置下であって、電子部品内蔵基板2を平面視した状態で(電子部品内蔵基板2の面方向において)ICチップ7と重なり合うように形成される。さらに、フィードバック用の配線パターン32Fが、インダクタ8から発生する漏れ磁束と略直交するように形成されているので、電子部品内蔵基板2は、フィードバック用の配線パターン32Fに対するインダクタ8から発生する漏れ磁束の影響を最も受け難くさせることができる。
【0060】
また、フィードバック用の配線パターン32Fの近くに、好ましくは、フィードバック用の配線パターン32Fの少なくとも一部を取り囲むように、グラウンド用の配線パターン32Gが形成される。グラウンド用の配線パターン32Gは、電子部品内装基板2の両端部であってICチップ7の側端部に形成されるグラウンド用のビア導体93G,93G、ICチップ7のグラウンド端子73に接続されるビア導体95G、及びグラウンド用のビア導体92G,92Gが一体に形成されるグラウンド層(第2グラウンド層)を画成する。本実施形態(図16)では、グラウンド用の配線パターン32Gは、フィードバック用の配線パターン32Fの周囲の他、スイッチング用の配線パターン32Sの近くにも形成される。
【0061】
このように、フィードバック用の配線パターン32Fがインダクタ8から離間した第2配線層32に形成されており、インダクタ8からより遠方に配置されているだけではなく、第2配線層32において、フィードバック用の配線パターン32FがICチップ7の載置領域内に形成されており、且つ、ICチップ7の載置下に配置されることにより、ICチップ7が、インダクタ8から発生する漏れ磁束を遮断する媒体(シールド体、シールド層)として機能するので、インダクタ8の漏れ磁束によって影響を受けやすいフィードバック用の信号ラインである配線パターン32Fへのノイズの重畳を抑止又は遮断させて安定化させることができる。
【0062】
なお、フィードバック用の配線パターン32Fは、平滑後の出力電圧を監視するためだけに形成された配線であることから、電流が僅かに流れる程度の細い配線パターンであればよい。また、このように形成されるフィードバック用の配線パターン32Fは、その一方端である出力電圧用のビア導体92Vo,93Vo,93Voから他方端であるフィードバック端子74に向かって電流が流れ、この電流は、インダクタ8が基板上で流れる電流の方向と反対向きに流れている。これにより、フィードバック用の配線パターン32Fには、インダクタ8から発生する磁界と反対向きの磁界(反磁界)が発生するので、インダクタ8から発生する漏れ磁束を少なからず軽減することができる。
【0063】
図17は、図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の端子71〜74の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図(III−III線断面図)である。第3絶縁層43の内部には、ICチップ7が埋設され、ICチップ7の各種端子71〜74及び第3配線層33と接続するための各種ビア導体93が形成される。これらの各種ビア導体93は、ICチップ7の一方側の端部に形成され、第2配線層32に形成されたビア導体93の略真上に設けられる。ICチップ7は、インダクタ8側からより離間した側(接地側)に各種端子71〜74が配置されるように第3絶縁層43内部に載置されている。
【0064】
図18は、図14に示すIV−IV線に沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図(IV−IV線断面図)である。第3配線層33には、入力電圧用の配線パターン33Vi、グラウンド用の配線パターン33G、スイッチング用の配線パターン33S、及び出力電圧用の配線パターン33Voが形成される。
【0065】
入力電圧用の配線パターン33Viは、第3配線層33に設けられた4つの入力電圧用のビア導体93Vi‐1、93Vi‐2、94Vi‐1、94Vi‐2と一体に接続されている。4つの入力電圧用のビア導体93Vi‐1、93Vi‐2、94Vi‐1、94Vi‐2のうち、一方の入力電圧用のビア導体93Vi‐1は、図19に示す抵抗R2,他方の入力電圧用のビア導体93Vi‐2は、図19に示す抵抗R3に対応する。また、一方の入力電圧用のビア導体94Vi‐1は、図19に示す抵抗R4,他方の入力電圧用のビア導体94Vi‐2は、図19に示す抵抗R5に対応する。このように、回路上、等価な抵抗R2,R3のそれぞれの値は、等価であっても良いが、抵抗R4,R5のそれぞれの値より大きい値であることが好ましい。そして、入力電圧用の配線パターン33Viは、並列に接続された抵抗R2,R3と抵抗R4,R5とをそれぞれ並列に接続する結線と、これら並列群を直列に接続する結線とに相当するリード線L4に対応する。
【0066】
ここで、本実施形態とは異なり、例えば、配線インピーダンスの低減を図ることを目的に配線パターン32Vi−1,32Vi−2をまとめて1つのパターンとすると、抵抗R2、抵抗R3は並列接続となるため、新たに配線N3ができることとなる。したがって、入力側の電流が、抵抗R2から、抵抗R3,R4,R5を通らず,そのまま入力電圧端子71へ流入してしまうことになる。このため、もし、入力電圧が低下してしまい、その結果、入力電圧が出力電圧よりも低くなった場合には、電流の逆流を回避することが極めて難しく、また、制御回路Cのスッチング動作に伴って変動する入力電圧の影響も大きくなる傾向にある。また例えば、抵抗R2、抵抗R4、抵抗R5、抵抗R3をその順(又はその逆順)で直列に(言わば、「一筆書き」状に、又は、一気通貫的に)接続し、抵抗R4と抵抗R5との結線に、グラウンドに接続された入力側キャパシタC1を接続する回路構成の場合には、配線インピーダンスが比較的大きくなる傾向にあることから、電源としての効率を考慮すると抵抗R4と抵抗R5とを並列接続することが好ましい。
【0067】
先にも関連して述べたとおり、本実施形態(図19参照)の如く、回路上の2点N1,N2間が相対的に低いインピーダンスで電気的に接続される状態(短絡)となるように、第3配線層33に、配線パターン33Viが、ビア導体93Vi‐1,93Vi‐2,94Vi‐1,94Vi‐2と一体になるように形成されているので、入力電圧が入力される入力電圧端子21と入力側キャパシタC1を接続する配線、及び入力側キャパシタC1とICチップ7とを接続する配線のそれぞれの少なくとも一部を同一の配線として一体に形成することができる。よって、本実施形態によれば、上述した抵抗R2,R4,R5,R3を直列に接続し且つ抵抗R4,R5間に入力側キャパシタC1を接続した構成に起因して生じ得る電流の逆流等の不都合を、有効に回避することができる。
【0068】
また、このように形成することにより、回路上では、抵抗R2,R3間の結線が分断され得る。このため、入力側の電流が一気に入力側キャパシタC1を通らずに入力電圧端子71まで流れることが防止され、その結果、入力電圧の降下に伴う電流の逆流を防止することができる。また、入力電圧端子21及び入力側キャパシタC1が接続される配線、並びに、入力電圧端子71及び入力側キャパシタC1が接続される配線が、ICチップ7の入力電圧端子71が形成される層とは異なる層である配線層33においてで短絡されているため、制御回路Cのスイッチング動作に伴う入力電圧の変動による影響を、無視し得る程度にまで軽減し得る。さらに、2つのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2を設け、配線パターン33Viと一体に接続することにより、抵抗R4と抵抗R5とが並列に接続されるので、これによっても配線インピーダンスを低減することができる。
【0069】
グラウンド用の配線パターン33Gは、第3配線層33下に載置されるICチップ7の載置領域A7よりも外側に形成されたグラウンド層(言わば、第1グラウンド層)であって、本実施形態では、入力電圧用の配線パターン33Vi、スイッチング用の配線パターン33S、及び出力電圧用の配線パターン33Voが形成された領域を除く、インダクタ8の載置領域(実装領域)の略全域を覆うように形成される。このように、グラウンド用の配線パターン33Gは、ICチップ7の載置領域A7、及びインダクタ8の載置領域を覆うように形成されるため、優れた電磁波シールドとして機能する。
【0070】
このように、前述の如く、第2配線層32に形成させたグラウンド層に加え、インダクタ8とICチップ7との間の第3配線層33に、ICチップ7を覆うように広範囲に亘るグラウンド層を形成させることにより、インダクタ8の表面から発生する漏れ磁束に起因する電磁波ノイズの影響を、大幅に抑制又は遮断することが可能となる。加えて、第2配線層32に形成される様々な信号ラインの相互干渉が防止され得る。さらに、制御回路Cにおけるスイッチング制御の際に発生し易いノイズの発生をも防止することができる。
【0071】
また、第3配線層33に形成されるグラウンド層は、入力電圧用の配線パターン33Viと出力電圧用の配線パターン33Voとの間に形成されることが望ましい。このように形成することで、第3配線層33に形成される入力側の信号ラインと出力側の信号ラインとがグラウンド層を介して分断されるため、両信号ラインの相互干渉を防止することができ、電子部品内蔵基板2の動作が安定する。
【0072】
図19は、図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図(V−V線断面図)である。第4配線層34は、入力電圧用の配線パターン34Vi、グラウンド用の配線パターン34G、スイッチング用の配線パターン34S、及び出力電圧用の配線パターン34Voから構成され、それぞれの配線パターン34Vi,34G,34S,34Vは、入力電圧用のビア導体94Vi‐1,94Vi‐2、グラウンド用のビア導体94G、スイッチ要のビア導体94S、出力電圧用のビア導体94Voのそれぞれに接続される。
【0073】
そして、それぞれの配線パターン34Vi,34G,34S,34Vo上に、電極パッド61〜66が設置される。各電極パッド61〜66は、それぞれの配線パターン34Vi,34G,34S,34Voの領域内であって、インダクタ8又はキャパシタC1,C2が載置される領域の端部よりも外側に配置されるように形成されている。そして、電極パッド61,62上にインダクタ8が載置され、電極パッド63,64上に入力側キャパシタC1が載置され、電極パッド65,66上に出力側キャパシタC2が載置されることにより、インダクタ8及びキャパシタC1,C2が実装されたDCDCコンバータ1を得ることができる。
【0074】
以上のとおり、本実施形態によれば、ICチップ7と入力側キャパシタC1とを接続する配線、及び、入力電圧端子21と入力側キャパシタC1とを接続する配線の少なくとも一部を同一の配線として一体に形成したので、両配線を別体に設ける場合に比して配線インピーダンスの低減を図ることができる。
【0075】
また、ICチップ7の入力電圧端子71が接続される配線層32と入力側キャパシタC1が接続される配線層34との間に、抵抗成分として作用するビア導体93Vi‐2を形成したので、入力電圧端子21から流入する電流がICチップ7に直接流れ込むことが回避される一方、入力側キャパシタC1へ確実に流れ込むことができる。さらにまた、これにより、入力側キャパシタC1の本来の機能を保持することができるので、電源モジュールであるDCDCコンバータ1の回路等の誤動作を確実に防止して正確な動作を定常的に維持することが可能となる。
【0076】
また、ICチップ7の入力電圧端子71が形成される層とは異なる層である配線層33において、入力電圧端子21及び入力側キャパシタC1が接続される配線、並びに、入力電圧端子71及び入力側キャパシタC1が接続される配線を短絡させ、同一の配線としたので、配線インピーダンスを一層低減することができる。さらに、これにより、入力電圧の降下に伴う電流の逆流をより確実に防止することができる。さらにまた、2つのビア導体94Vi‐1,94Vi‐2を設け、配線パターン33Viと一体に接続することにより、配線インピーダンスの更なる低減が可能となる。
【0077】
加えて、インダクタ8とフィードバック用の信号ラインである配線パターン32Fとの間の第3配線層33に、所定の接地電位と接続されるグラウンド用の配線パターン33GをICチップ7の載置領域A7より外側に形成し、且つ、電子部品内蔵基板2の面方向における配線パターン33Gを介して入力信号ラインと出力信号ラインと形成したので、インダクタ8からの漏れ磁束を大幅に遮断することができるとともに、両信号ラインの相互干渉が防止され、ノイズ抑止効果が高められ、その結果、モジュール動作の更なる安定化を図ることができる。
【0078】
なお、上述したとおり、発発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において、これまでに適宜述べたとおり、様々な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したとおり、本発明の電源モジュールは、入力側キャパシタの機能を保持しつつ、配線インピーダンスを低減することができ、これにより、インダクタ等の電子部品の近傍に配置されるICチップ等の電子部品の安定な動作を確保し、且つ、誤動作を確実に防止することができるとともに、信頼性すなわち純度の高い信号伝送を行うことができるので、電子部品を内蔵する機器、装置、システム、各種デバイス等、特に小型化及び高性能化が要求されるもの、並びにそれらの生産、製造等に広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…DCDCコンバータ(電源モジュール)、2…電子部品内蔵基板、3…コア基板、C…制御回路、S1,S2…スイッチ回路、7…ICチップ(第1電子部品)、A7…ICチップの載置領域(実装領域)、8,L…インダクタ(第2電子部品)、C1…入力側キャパシタ(コンデンサ),C2…出力側キャパシタ(コンデンサ)、21…電子部品内蔵基板の入力電圧端子(第1入力端子)、22…電子部品内蔵基板の出力電圧端子、23…電子部品内蔵基板のグラウンド端子、31〜34…配線層、32F…フィードバック用の配線パターン(フィードバック用の信号ライン)、32Vi−1,32Vi−2…入力電圧用の配線パターン(駆動用の信号ライン)、32Vo…出力電圧用の配線パターン、32S…スイッチング用の配線パターン(スイッチング用の信号ライン)、32G…グラウンド用の配線パターン(駆動用の信号ライン,第2グラウンド層)、33G…グラウンド用の配線パターン(第1グラウンド層)、41〜45…絶縁層、61〜66…電極パッド、71…入力電圧用の端子(第2入力端子)、72…スイッチ端子、73…グラウンド端子、74…フィードバック端子、81…接合部、92Vi…ビア導体(第2ビア導体)、93Vi‐2…ビア導体(第1ビア導体),94Vi‐1,94Vi‐2…ビア導体、92〜95…ビア導体、92H〜95H…ビアホール、VIN…入力電圧、VOUT…出力電圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が内蔵された基板と、
前記基板上に載置され、且つ、所定の接地電位に接続される入力側キャパシタと、
前記基板に設けられ、且つ、入力電圧が入力される第1入力端子と、
を備え、
前記第1入力端子は、前記入力側キャパシタと電気的に接続され、
前記電子部品は、前記基板に設けられた第1ビア導体を介して前記入力側キャパシタと電気的に接続されている、
電源モジュール。
【請求項2】
前記第1入力端子は、前記基板に設けられた第2ビア導体を介して前記入力側キャパシタと電気的に接続されている、
請求項1記載の電源モジュール。
【請求項3】
前記第1入力端子及び前記電子部品は、前記入力側キャパシタを構成する一対の電極のうち接地されていない方の電極に接続されている、
請求項1又は2記載の電源モジュール。
【請求項4】
前記電子部品は、前記入力電圧に応じた電圧が入力される第2入力端子を有し、
前記第1入力端子及び前記入力側キャパシタが接続される配線、並びに、前記第2入力端子及び前記入力側キャパシタが接続される配線は、前記第2入力端子が形成される層とは異なる層で短絡されている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の電源モジュール。
【請求項5】
前記基板上に載置され、且つ、前記基板に内蔵された電子部品とは異なる電子部品を備え、
前記電子部品は、前記第2入力端子は、前記異なる電子部品とは反対側を向くように配置される、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の電源モジュール。
【請求項1】
電子部品が内蔵された基板と、
前記基板上に載置され、且つ、所定の接地電位に接続される入力側キャパシタと、
前記基板に設けられ、且つ、入力電圧が入力される第1入力端子と、
を備え、
前記第1入力端子は、前記入力側キャパシタと電気的に接続され、
前記電子部品は、前記基板に設けられた第1ビア導体を介して前記入力側キャパシタと電気的に接続されている、
電源モジュール。
【請求項2】
前記第1入力端子は、前記基板に設けられた第2ビア導体を介して前記入力側キャパシタと電気的に接続されている、
請求項1記載の電源モジュール。
【請求項3】
前記第1入力端子及び前記電子部品は、前記入力側キャパシタを構成する一対の電極のうち接地されていない方の電極に接続されている、
請求項1又は2記載の電源モジュール。
【請求項4】
前記電子部品は、前記入力電圧に応じた電圧が入力される第2入力端子を有し、
前記第1入力端子及び前記入力側キャパシタが接続される配線、並びに、前記第2入力端子及び前記入力側キャパシタが接続される配線は、前記第2入力端子が形成される層とは異なる層で短絡されている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の電源モジュール。
【請求項5】
前記基板上に載置され、且つ、前記基板に内蔵された電子部品とは異なる電子部品を備え、
前記電子部品は、前記第2入力端子は、前記異なる電子部品とは反対側を向くように配置される、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の電源モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−138812(P2011−138812A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296007(P2009−296007)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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