説明

電源回路

【課題】過電圧から電源回路を保護しつつ、特許文献1に記載の電源回路よりコストを低減することが容易な電源回路を提供する。
【解決手段】接続端子T1,T2で受電された100V電圧から、直流電圧を生成するスイッチング電源回路3と、接続端子T1とスイッチング電源回路3との間に設けられたトライアックTR1と、接続端子T1,T2により受電された電圧が、100Vより高い高側閾値電圧以上の場合、トライアックTR1をオフさせる保護制御部4とを備え、スイッチング電源回路3は、電圧耐圧が高側閾値電圧より高く、かつ200Vより低いFETQ2を含み、トライアックTR1は、電圧耐圧が、200V以上であり、かつスイッチング速度が、FETQ2より遅い構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電圧が入力された場合の保護回路を備える電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタ、その他の電気機器に使用されるAC/DC電源は、一般的に、日本国内及び北米向けの機器には100V系(例えば、100V〜120V)の専用電源を用い、欧州向けには200V系(例えば、200V〜230V)の専用電源を用いることが一般的である。100V〜200Vの範囲で対応できるワイドレンジ電源は、コストが高くなるからである。このとき、同一仕向け先に100V系と200V系が混在する地域においては、100V系電源に対応した機器が、誤ってAC200Vのコンセントに接続されて、過電圧で電源回路が故障する場合があった。
【0003】
そこで、入力電圧を監視して、過電圧が入力された場合には、スイッチング電源回路におけるスイッチング素子をオフして入力電圧を遮断することにより、回路を保護する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−182315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、100V系電源であっても、スイッチング電源回路におけるスイッチング素子は、200V系の電源電圧に耐える必要があるため、定格電圧の高いものを用いる必要があった。さらに、スイッチング電源回路に用いられるスイッチング素子は、十kHz〜1MHz程度の高周波でスイッチングを行う必要があるため、スイッチング速度が高速なものを用いる必要がある。しかし、定格電圧が高く、かつスイッチング速度が高速なスイッチング素子は高価なため、特許文献1に記載の技術では、電源回路のコストが上昇してしまうという、不都合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為された発明であり、過電圧から電源回路を保護しつつ、特許文献1に記載の電源回路よりコストを低減することが容易な電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電源回路は、所定の第1電圧を受電するための受電端子と、前記受電端子によって受電された電圧から、直流電圧を生成するスイッチング電源回路部と、前記受電端子と前記スイッチング電源回路部との間に設けられた保護用スイッチング素子と、前記受電端子により受電された電圧が、前記第1電圧より高い高側閾値電圧以上の場合、前記保護用スイッチング素子をオフさせる保護制御部とを備え、前記スイッチング電源回路部は、電圧耐圧が前記高側閾値電圧より高く、かつ所定の第2電圧より低い電源用スイッチング素子を含み、前記保護用スイッチング素子は、電圧耐圧が、前記第2電圧以上であり、かつスイッチング速度が、前記電源用スイッチング素子より遅い。
【0007】
この構成によれば、受電端子により受電された電圧が、第1電圧より高い高側閾値電圧以上の場合、保護用スイッチング素子がオフされてスイッチング電源回路部が保護される。従って、スイッチング電源回路部に高側閾値電圧以上の電圧が印加されるおそれが低減されるので、スイッチング電源回路部の電源用スイッチング素子として、電圧耐圧が高側閾値電圧より高く、かつ第2電圧より低い安価な部品を用いることが容易である。そして、保護用スイッチング素子は、第2電圧以上の電圧耐圧を有するものの、スイッチング電源回路部で用いられる電源用スイッチング素子ほど高速動作する必要がないので、低速で安価な部品を用いることが容易である。これにより、過電圧から電源回路を保護しつつ、特許文献1に記載の電源回路よりコストを低減することが容易な電源回路を提供することができる。
【0008】
また、前記保護制御部は、前記受電端子により受電された電圧が前記高側閾値電圧以上になったことを検知する高側電圧検知部と、前記高側電圧検知部によって、前記受電端子により受電された電圧が前記高側閾値電圧以上になったことが検知されたとき、前記保護用スイッチング素子をオフさせる制御信号を生成する制御用スイッチング素子とを備え、前記制御用スイッチング素子は、電圧耐圧が前記第2電圧以上であり、かつ電力容量が前記電源用スイッチング素子より小さいことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、高側電圧検知部によって、受電端子により受電された電圧が高側閾値電圧以上になったことが検知されると、制御用スイッチング素子によって保護用スイッチング素子をオフさせる制御信号が生成される。この場合、制御用スイッチング素子は、電圧耐圧は第2電圧以上であるものの、制御信号を生成するだけなので電源用スイッチング素子ほど大きな電力容量を必要としないので、電力容量が電源用スイッチング素子より小さい安価な部品を用いることができる。
【0010】
また、前記第1電圧は交流電圧であり、前記スイッチング電源回路部は、前記受電端子から前記保護用スイッチング素子を介して得られた交流電圧を整流する電源用整流回路と、前記電源用整流回路により整流された電圧を平滑する電源用コンデンサとを備え、前記電源用スイッチング素子は、前記電源用コンデンサにより平滑された電圧をチョッピングするものであり、前記保護制御部は、前記受電端子により受電された交流電圧を整流する制御用整流回路と、前記制御用整流回路により整流された電圧を平滑する制御用コンデンサとを備え、前記電源用整流回路及び前記電源用コンデンサは、電圧耐圧が、前記高側閾値電圧より高く、かつ前記第2電圧より低いものであり、前記制御用整流回路は、電圧耐圧が前記第2電圧以上であり、かつ電力容量が前記電源用整流回路より小さいものであり、前記制御用コンデンサは、電圧耐圧が前記第2電圧以上であり、かつ静電容量が前記電源用コンデンサより小さい。
【0011】
この構成によれば、受電端子により受電された電圧が高側閾値電圧以上の場合、保護用スイッチング素子がオフされてスイッチング電源回路部が保護されるので、電源用整流回路及び電源用コンデンサとして、電圧耐圧が高側閾値電圧より高く、かつ第2電圧より低い、安価な部品を用いることができる。一方、制御用整流回路は、電圧耐圧が第2電圧以上であるものの、制御信号を生成するための回路であるため電力容量が電源用整流回路より小さい安価な部品を用いることができる。また、制御用コンデンサは、電圧耐圧が第2電圧以上であるものの、制御信号を生成するための回路であるため静電容量が電源用コンデンサより小さい安価な部品を用いることができる。
【0012】
また、前記保護制御部は、さらに、前記受電端子により受電された電圧が、前記第1電圧より低い低側閾値電圧に満たない場合、前記保護用スイッチング素子をオフさせることが好ましい。
【0013】
スイッチング電源回路部は、入力電圧が低いと、一定の出力電力を維持するために入力電流を増大させるおそれがある。入力電流が増大すると、電源用スイッチング素子を流れる電流が増加して、電源用スイッチング素子の故障を招くおそれがある。そこで、この構成によれば、受電端子により受電された電圧が低側閾値電圧に満たない場合、保護用スイッチング素子をオフさせて、スイッチング電源回路部を保護することにより、スイッチング電源回路部が故障するおそれを低減することができる。
【0014】
また、前記受電端子によって受電された交流電圧を、前記保護用スイッチング素子を介して供給する交流電圧供給端子をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、交流電圧供給端子に接続された負荷を、保護用スイッチング素子によって、高側閾値電圧以上の電圧から保護することができる。
【0016】
また、前記電源用スイッチング素子は、電界効果トランジスタであり、前記保護用スイッチング素子は、トライアックであることが好ましい。
【0017】
電界効果トランジスタはスイッチングが高速なので、電源用スイッチング素子として好適である。また、トライアックは、電界効果トランジスタよりスイッチングは低速であるが、安価であるから保護用スイッチング素子として好適である。
【0018】
また、前記第1電圧は、AC100V系電源電圧であり、前記第2電圧は、AC200V系電源電圧であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、AC100V系電源電圧用の電源回路が、誤ってAC200V系電源に接続された場合であっても、保護用スイッチング素子がオフしてスイッチング電源回路部が保護される。
【発明の効果】
【0020】
このような構成の電源回路は、受電端子により受電された電圧が、第1電圧より高い高側閾値電圧以上の場合、保護用スイッチング素子がオフされてスイッチング電源回路部が保護される。従って、スイッチング電源回路部に高側閾値電圧以上の電圧が印加されるおそれが低減されるので、スイッチング電源回路部の電源用スイッチング素子として、電圧耐圧が高側閾値電圧より高く、かつ第2電圧より低い安価な部品を用いることが容易である。そして、保護用スイッチング素子は、第2電圧以上の電圧耐圧を有するものの、スイッチング電源回路部で用いられる電源用スイッチング素子ほど高速動作する必要がないので、低速で安価な部品を用いることが容易である。これにより、過電圧から電源回路を保護しつつ、特許文献1に記載の電源回路よりコストを低減することが容易な電源回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す回路図である。図1に示す電源回路1は、保護回路2と、スイッチング電源回路3とを備えている。電源回路1は、例えばAC100V系の交流電圧を、直流電圧に変換する電源回路である。
【0022】
保護回路2は、接続端子T1,T2(受電端子)、トライアックTR1(保護用スイッチング素子)、接続端子T3,T4(交流電圧供給端子)、及び保護制御部4を備えている。保護制御部4は、抵抗R1〜R8、抵抗R13、電解コンデンサC5(制御用コンデンサ)、フォトカプラPC1、ダイオードブリッジD2(制御用整流回路)、ダイオードD3、ツェナーダイオードZD1、ツェナーダイオードZD2(高側電圧検知部)、FET(Field Effect Transistor)Q1(制御用スイッチング素子)、及びトランジスタQ3,Q4(制御用スイッチング素子)を備えている。
【0023】
また、スイッチング電源回路3は、ダイオードブリッジD1(電源用整流回路)、サーミスタNTC、電解コンデンサC1(電源用コンデンサ)、トランスTRN、FETQ2(電源用スイッチング素子)、ダイオードD4、電解コンデンサC4、抵抗R11,R12、PWM制御部31、スイッチング制御部32、及び接続端子T5,T6を備えている。
【0024】
なお、接続端子T1,T2,T3,T4,T5,T6は、端子台やコネクタの他、例えばランドやパッド等の配線パターンであってもよい。
【0025】
接続端子T1,T2には、例えば商用交流のAC電源が接続される。接続端子T1は、トライアックTR1とダイオードブリッジD1とを介して接続端子T2に接続されている。また、接続端子T1は、抵抗R1とフォトカプラPC1の二次側とを介してトライアックTR1のゲートに接続されている。また、接続端子T1,T2は、ダイオードブリッジD2に接続され、ダイオードブリッジD2の出力端子間に、平滑用の電解コンデンサC5が接続されている。
【0026】
そして、ダイオードブリッジD2の正極側出力端子が、FETQ1、抵抗R13、及びフォトカプラPC1の一次側を介してダイオードブリッジD2の負極側出力端子に接続されている。FETQ1のソース−ゲート間には、抵抗R4が接続されている。そして、FETQ1のゲートは、ダイオードD3のアノードに接続され、ダイオードD3のカソードがトランジスタQ3を介してダイオードブリッジD2の負極側出力端子に接続されている。
【0027】
また、ダイオードブリッジD2の出力端子間には、抵抗R2,R3の直列回路が接続されている。抵抗R2,R3の接続点は、ツェナーダイオードZD1のカソードに接続され、ツェナーダイオードZD1のアノードは、トランジスタQ3のベースに接続されている。トランジスタQ3のベース−エミッタ間には、抵抗R7と、抵抗R6とトランジスタQ4の直列回路とが、並列に接続されている。
【0028】
また、トランジスタQ3のベースは、抵抗R5を介してツェナーダイオードZD2のカソードに接続され、ツェナーダイオードZD2のアノードが抵抗R8を介してダイオードブリッジD2の負極側出力端子に接続されている。
【0029】
スイッチング電源回路3では、ダイオードブリッジD1の正極側出力端子が、サーミスタNTC、トランスTRNの一次巻線、FETQ2を介してダイオードブリッジD1の負極側出力端子に接続されている。また、トランスTRNの一次巻線とFETQ2との直列回路と並列に、平滑用の電解コンデンサC1が接続されている。そして、トランスTRNの二次巻線の一端が、ダイオードD4のアノードに接続され、ダイオードD4のカソードが接続端子T5に接続されている。さらに、トランスTRNの二次巻線の他端が、接続端子T6に接続されている。
【0030】
また、接続端子T5,T6間に平滑用の電解コンデンサC4が接続され、電解コンデンサC4と並列に、抵抗R11,R12の直列回路が接続されている。さらに、抵抗R11,R12の接続点の電圧がPWM制御部31に入力される。
【0031】
PWM制御部31及びスイッチング制御部32は、例えばコンパレータや論理回路、CPU(Central Processing Unit)等、種々の回路を用いて構成されている。そして、PWM制御部31は、抵抗R11,R12の接続点の電圧に基づいてFETQ2のオン、オフをPWM制御することにより、接続端子T5,T6間に出力される出力電圧レベルを予め設定された出力定格電圧V1にするべく、PWM制御信号をスイッチング制御部32へ出力する。スイッチング制御部32は、PWM制御部31から出力された制御信号に応じて、FETQ2をオン、オフさせる。
【0032】
接続端子T5,T6は、負荷に直流電圧を供給する電圧出力端子である。図1では、接続端子T5,T6に、直流負荷Lが接続されている。
【0033】
接続端子T3は、トライアックTR1を介して接続端子T1と接続されている。接続端子T4は、接続端子T2と接続されている。これにより、接続端子T3,T4は、接続端子T1,T2で受電された交流電圧を、接続端子T3,T4に接続された交流負荷へ供給するようになっている。
【0034】
図1では、接続端子T3,T4にヒータHが接続される例を示している。すなわち、接続端子T3にヒータHの一端が接続され、ヒータHの他端がトライアックTR2を介して接続端子T4に接続されている。また、トライアックTR2のゲートは、フォトカプラPC2の出力側と抵抗R9とを介して、トライアックTR2とヒータHとの接続点と接続されている。そして、接続端子T5は、抵抗R10とフォトカプラPC2の一次側とを介して接続端子T6と接続されている。
【0035】
ヒータHは、例えば電子写真方式の複写機やプリンタにおいて、トナーを加熱定着させるためのヒータとして用いることができる。このようなヒータとしては、ガラスのハロゲンランプが一般的に用いられており、過電圧が印加されると破損するおそれがある。
【0036】
次に、図1に示す電源回路1の動作について説明する。図2は、図1に示す電源回路1の動作を説明するための説明図である。なお、以下の説明において、本発明に直接関係しないところは省略する。まず、接続端子T1,T2によって受電された交流電圧が、ダイオードブリッジD2によって整流され、電解コンデンサC5によって、平滑される。そして、電解コンデンサC5により平滑された電圧が、抵抗R4を介してFETQ1のゲートに供給され、FETQ1のゲートに電荷が蓄積されて、FETQ1はオフ状態となる。
【0037】
FETQ1がオフしていると、フォトカプラPC1もオフするので、トライアックTR1がオフ状態のまま維持される。
【0038】
一方、電解コンデンサC5で平滑された電圧は、抵抗R2,R3で分圧されて、ツェナーダイオードZD1のカソードに印加される。ツェナーダイオードZD1は、接続端子T1,T2で受電された電圧が低側閾値電圧Va以上になると、オンするように、抵抗R2,R3の分圧比とツェナーダイオードZD1のツェナー電圧とが設定されている。
【0039】
これにより、接続端子T1,T2で受電された電圧が低側閾値電圧Va以上になると、ツェナーダイオードZD1がオンし、トランジスタQ3にベース電流が流れてトランジスタQ3がオンする。トランジスタQ3がオンすると、ダイオードD3を介してFETQ1のゲートがローレベルにされて、FETQ1がオンする。FETQ1がオンすると、フォトカプラPC1がオンして、トライアックTR1がオンする。
【0040】
この場合、図2に示すように、接続端子T1,T2で受電された入力電圧Vinが、低側閾値電圧Vaに満たない低電圧の場合、トライアックTR1がオフのまま維持される。トライアックTR1がオフしていると、入力電圧Vinのスイッチング電源回路3への供給が遮断されて、スイッチング電源回路3が停止状態のまま維持される。
【0041】
スイッチング電源回路3は、動作時には、接続端子T5,T6間に出力される出力電圧Voutが、出力定格電圧V1で一定になるように、FETQ2のオン、オフ動作を制御する。そうすると、負荷Lの入力抵抗(消費電力)が一定であれば、スイッチング電源回路3から負荷Lへ供給される電力も一定になる。そして、スイッチング電源回路3では、入力電圧Vinが低いときは、一定の電力を得るため、FETQ2がオンしている時間を増大させて、ダイオードブリッジD1、トランスTRN、FETQ2、及びダイオードD4に流れる電流を増大させる。
【0042】
そのため、入力電圧Vinが低い状態でスイッチング電源回路3を動作させると、ダイオードブリッジD1、トランスTRN、FETQ2、及びダイオードD4に過大な電流が流れて素子が故障したり、発熱が過剰になったりするおそれがある。また、素子故障を防止するために、素子の電流定格を大きくすると、素子が高価になってコストの上昇を招く。
【0043】
しかしながら、図1に示す電源回路1では、図2に示すように、入力電圧Vinが、低側閾値電圧Vaに満たない低電圧の場合、トライアックTR1がオフされて、スイッチング電源回路3が停止状態のまま維持されるので、ダイオードブリッジD1、トランスTRN、FETQ2、及びダイオードD4に過大な電流が流れるおそれが低減される。これにより、低側閾値電圧Vaを適宜設定することで、コストの増大を抑制しつつ、ダイオードブリッジD1、トランスTRN、FETQ2、及びダイオードD4に過大な電流が流れて素子が故障したり、発熱が過剰になったりするおそれを低減することができる。
【0044】
そして、入力電圧Vinが低側閾値電圧Vaを超えるとトライアックTR1がオンし、入力電圧Vinが、ダイオードブリッジD1によって整流され、電解コンデンサC1によって、平滑される。そして、電解コンデンサC1により平滑された電圧がスイッチング制御部32に供給されて、スイッチング制御部32が動作を開始する。
【0045】
そうすると、スイッチング制御部32によって、FETQ2がオン、オフされて、トランスTRNの一次側に高周波電流が流れる。そして、磁気結合によりトランスTRNの二次側に電磁誘導された高周波のエネルギーが、ダイオードD4で整流され、電解コンデンサC4で平滑され、接続端子T5,T6から負荷Lへ出力電圧Voutとして出力される。このとき、出力電圧Voutが抵抗R1,R2で分圧されて、PWM制御部31にフィードバックされる。
【0046】
そして、PWM制御部31によって、抵抗R1,R2の分圧値に基づきPWM制御信号が生成され、スイッチング制御部32へ出力される。スイッチング制御部32は、PWM制御信号に基づきFETQ2をオン、オフすることで、出力電圧Voutが、出力定格電圧V1で一定に制御される。
【0047】
また、出力電圧Voutが出力定格電圧V1になると、フォトカプラPC2がオンしてトライアックTR2がオンする。そうすると、入力電圧Vinが、接続端子T3,T4からヒータHへ供給されて、ヒータHが発熱する。
【0048】
次に、例えばユーザが誤って200V系電源を接続端子T1,T2に接続した場合等、さらに入力電圧Vinが上昇すると、電解コンデンサC5で平滑された電圧は、抵抗R2,R3で分圧されて、ツェナーダイオードZD1、抵抗R5を介してツェナーダイオードZD2のカソードに印加される。ツェナーダイオードZD2は、接続端子T1,T2で受電された電圧が高側閾値電圧Vb以上になると、オンするように、抵抗R2,R3,R5の抵抗値とツェナーダイオードZD2のツェナー電圧とが設定されている。
【0049】
これにより、接続端子T1,T2で受電された電圧が高側閾値電圧Vb以上になると、ツェナーダイオードZD2がオンし、トランジスタQ4にベース電流が流れてトランジスタQ4がオンする。トランジスタQ4がオンすると、抵抗R6を介してトランジスタQ3のベースがローレベルにされてトランジスタQ3がオフする。トランジスタQ3がオフすると、電解コンデンサC5により平滑された電圧が、抵抗R4を介してFETQ1のゲートに供給され、FETQ1のゲートに電荷が蓄積されて、FETQ1がオフする。FETQ1がオフすると、フォトカプラPC1がオフして、トライアックTR1がオフする。
【0050】
トライアックTR1がオフすると、接続端子T1,T2から、スイッチング電源回路3及びヒータHへの電圧供給が遮断されるので、スイッチング電源回路3及びヒータHへ、高側閾値電圧Vb以上の電圧が供給されるおそれが低減されて、スイッチング電源回路3及びヒータHが過電圧から保護される。
【0051】
この場合、高側閾値電圧Vbを、100V系電源電圧(の電圧範囲の最大値)以上であって、200V系電源電圧(の電圧範囲の最小値)に満たない電圧に設定することにより、例えユーザが誤って接続端子T1,T2にAC200V系電源を接続した場合であっても、高側閾値電圧Vbを超える電圧がスイッチング電源回路3に印加されるおそれが低減される。この結果、スイッチング電源回路3を構成するFETQ2、ダイオードブリッジD1、及び電解コンデンサC1は、電圧耐圧が高側閾値電圧Vbより高ければよく、200V系電圧(の電圧範囲の最大値)に満たない低耐圧の、安価な素子を用いることができる。
【0052】
また、スイッチング電源回路3は、高側閾値電圧Vbを超える電圧が印加されることを考慮した絶縁設計を行う必要がないので、スイッチング電源回路3の絶縁設計が容易である。
【0053】
一方、保護回路2では、保護用のスイッチング素子は、スイッチング制御部32ほど高速のスイッチングを行う必要がないので、スイッチング速度がFETQ2より遅く、かつ安価なトライアックTR1を用いることができる。トライアックTR1は、200V系電圧(の電圧範囲の最大値)以上の電圧耐圧を有する必要があるが、高耐圧、高速のFETを用いるよりも、低耐圧、高速のFETQ2と高耐圧、低速のトライアックTR1とを用いる方が、安価である。
【0054】
また、保護制御部4で用いられるFETQ1、トランジスタQ3,Q4は、200V系電圧(の電圧範囲の最大値)以上の電圧耐圧を有する必要があるが、制御信号を生成できればよいので、電力定格(電力容量)がFETQ2より小さい(例えば1/10〜1/50程度)の安価な部品を用いることができる結果、高耐圧、高電力容量のFETを用いるよりも電源回路1全体でコストを低減することができる。
【0055】
また、保護制御部4で用いられるダイオードブリッジD2は、200V系電圧(の電圧範囲の最大値)以上の電圧耐圧を有する必要があるが、制御信号を生成できればよいので、電力定格(電力容量)がダイオードブリッジD1より小さい(例えば1/10以下)の安価な部品を用いることができる結果、高耐圧、高電力容量のダイオードブリッジを用いるよりも、低耐圧、高電力容量のダイオードブリッジD1と高耐圧、低電力容量のダイオードブリッジD2とを用いる方が、安価である。
【0056】
また、保護制御部4で用いられる電解コンデンサC5は、200V系電圧(の電圧範囲の最大値)以上の電圧耐圧を有する必要があるが、制御信号用電源を平滑できればよいので、静電容量が電解コンデンサC1より小さい(例えば1/100程度)の安価な部品を用いることができる結果、高耐圧、高静電容量のコンデンサを用いるよりも、低耐圧、高静電容量の電解コンデンサC1と高耐圧、低静電容量の電解コンデンサC5とを用いる方が、安価である。
【0057】
以上、図2に示すように、入力電圧Vinが低側閾値電圧Va以下の範囲では、トライアックTR1がオフされてスイッチング電源回路3が保護され、入力電圧Vinが低側閾値電圧Vaを超えて高側閾値電圧Vbに満たない範囲では、トライアックTR1がオンされてスイッチング電源回路3が動作可能になると共に接続端子T3,T4から負荷へ交流電圧を供給することが可能となり、入力電圧Vinが高側閾値電圧Vbを超える範囲では、トライアックTR1がオンされてスイッチング電源回路3が保護される。
【0058】
このように入力電圧により回路の状態を切り換えることが可能となり、あらかじめ設定された入力電圧の範囲でスイッチング電源回路3を動作させることができるため、スイッチング電源回路3で使用する素子の電流、電圧スペックを限定することができる。このため規定外の入力電圧に対する素子の保護を考慮する必要がなくなる結果、コストを低減することが可能となる。
【0059】
なお、第1電圧がAC100V系電圧、第2電圧がAC200V系電圧である例を示したが、第1電圧は、スイッチング電源回路を動作させようとする目的の電圧であればよく、AC100V系電圧に限らない。また、第2電圧は、スイッチング電源回路を保護しようとする電圧であればよく、AC200V系電圧に限らない。第1、第2電圧は交流に限らず、直流電圧であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る電源回路の構成の一例を示す回路図である。
【図2】図1に示す電源回路の動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 電源回路
2 保護回路
3 スイッチング電源回路
4 保護制御部
C1,C4,C5 電解コンデンサ
D1,D2 ダイオードブリッジ
H ヒータ
Q1,Q2 FET
Q3,Q4 トランジスタ
T1,T2,T3,T4,T5,T6 接続端子
Va 低側閾値電圧
Vb 高側閾値電圧
ZD1,ZD2 ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1電圧を受電するための受電端子と、
前記受電端子によって受電された電圧から、直流電圧を生成するスイッチング電源回路部と、
前記受電端子と前記スイッチング電源回路部との間に設けられた保護用スイッチング素子と、
前記受電端子により受電された電圧が、前記第1電圧より高い高側閾値電圧以上の場合、前記保護用スイッチング素子をオフさせる保護制御部とを備え、
前記スイッチング電源回路部は、
電圧耐圧が前記高側閾値電圧より高く、かつ所定の第2電圧より低い電源用スイッチング素子を含み、
前記保護用スイッチング素子は、
電圧耐圧が、前記第2電圧以上であり、かつスイッチング速度が、前記電源用スイッチング素子より遅いこと
を特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記保護制御部は、
前記受電端子により受電された電圧が前記高側閾値電圧以上になったことを検知する高側電圧検知部と、
前記高側電圧検知部によって、前記受電端子により受電された電圧が前記高側閾値電圧以上になったことが検知されたとき、前記保護用スイッチング素子をオフさせる制御信号を生成する制御用スイッチング素子とを備え、
前記制御用スイッチング素子は、
電圧耐圧が前記第2電圧以上であり、かつ電力容量が前記電源用スイッチング素子より小さいこと
を特徴とする請求項1記載の電源回路。
【請求項3】
前記第1電圧は交流電圧であり、
前記スイッチング電源回路部は、
前記受電端子から前記保護用スイッチング素子を介して得られた交流電圧を整流する電源用整流回路と、
前記電源用整流回路により整流された電圧を平滑する電源用コンデンサとを備え、
前記電源用スイッチング素子は、前記電源用コンデンサにより平滑された電圧をチョッピングするものであり、
前記保護制御部は、
前記受電端子により受電された交流電圧を整流する制御用整流回路と、
前記制御用整流回路により整流された電圧を平滑する制御用コンデンサとを備え、
前記電源用整流回路及び前記電源用コンデンサは、
電圧耐圧が、前記高側閾値電圧より高く、かつ前記第2電圧より低いものであり、
前記制御用整流回路は、
電圧耐圧が前記第2電圧以上であり、かつ電力容量が前記電源用整流回路より小さいものであり、
前記制御用コンデンサは、
電圧耐圧が前記第2電圧以上であり、かつ静電容量が前記電源用コンデンサより小さいこと
を特徴とする請求項1又は2記載の電源回路。
【請求項4】
前記保護制御部は、さらに、
前記受電端子により受電された電圧が、前記第1電圧より低い低側閾値電圧に満たない場合、前記保護用スイッチング素子をオフさせること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記受電端子によって受電された交流電圧を、前記保護用スイッチング素子を介して供給する交流電圧供給端子をさらに備えること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項6】
前記電源用スイッチング素子は、電界効果トランジスタであり、
前記保護用スイッチング素子は、トライアックであること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項7】
前記第1電圧は、AC100V系電源電圧であり、
前記第2電圧は、AC200V系電源電圧であること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電源回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−219316(P2009−219316A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62991(P2008−62991)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】