説明

電源基板

【課題】 電流値容量が十分に大きくない導体パターンであっても、その導体パターンの幅寸法を増大させることなく電流値容量を増大させて、その導体パターンの早期劣化や焼き切れを防止する。
【解決手段】 電源基板1において、電流が常時供給される電路を形成している1つの導体パターン31の全長及び全幅に亘る領域に半田盛り4を追加してその導体パターン31の電流値容量を増大させることによりその導体パターン31の早期劣化及び焼き切れを防止する。半田盛り4を追加した導体パターン41によって形成される電路の終部が、記録メディアとしてのハードディスクドライブ7の電源ラインにコネクタ5を介して接続されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源基板、特に、常に大電流が流れる電路を備えている電源基板において、その電路を形成している導体パターンの早期劣化や焼き切れを防ぐ対策を講じた電源基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクやDVDなどの駆動装置(ドライブ)に設けられる電源基板では、そのコンパクト化を通じてそれらのドライブの小形化、ひいては電気機器の小形化を図ることなどのために、多くの電路のそれぞれを形成している導体パターンの配置密度を高めることが行われている。そのため、個々の導体パターンの電流値容量を増大させて電流が流れることによる導体パターンの早期劣化や焼き切れを防ぐための対策として、導体パターンの幅寸法をその全長に亘って拡大してその電流値容量を増大させるという対策を講じることは、導体パターンの全体的なレイアウトの変更などを伴うという点で割高になるために好ましいことではなく、電源基板のコンパクト化を図るという観点から見ても好ましいことではない。
【0003】
一方、電源回路のような大電流を流すプリント基板において、幅の広いパターンの表面の一部だけに半田を盛ってそのパターンの見掛け上の表面積を拡大することにより、電気抵抗を低減して電圧降下を低減するという提案がなされている(たとえば特許文献1参照)。また、高周波混成集積回路装置に関し、電源ラインの導体パターン上に半田を盛るという対策を講じることによって、その導体パターンの断面積を広くして電気抵抗を小さくし、電圧降下を低減させるという提案がなされている(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1によって提案されている技術は、高周波混成集積回路装置の電源ラインの導体パターンの断面積が小さく、直流抵抗成分が大きいために起こり得る問題点、すなわち、トランジスタなどの能動素子に供給される電圧が低下するという問題点を解消することを意図していると考えられる。したがって、この技術は、トランジスタなどの能動素子に供給される電圧の低下を抑制するという課題に対して適用され得るだけであり、仮に導体パターンが十分に大きな電流値容量を有していないためにその導体パターンが早期に劣化したり焼き切れたりするという問題を解消し得るものではない。また、この特許文献1では、導体パターンに半田を盛るということだけが開示されているだけであり、どのような形態で半田を盛ることが有益であるか、という点については触れられていない。
【0005】
これに対し、特許文献2によって提案されている技術は、幅の広いパターンの表面の一部だけに半田を盛ってそのパターンの見掛け上の表面積を拡大するというものであるに過ぎないので、パターン全体の電流値容量を増大させ得るものではない。したがって、この技術は、幅の広いパターンが半田盛りを備えていない状態でも十分に大きな電流値容量を有している場合にだけ適用することができるものであると考えられ、仮に幅の広いパターンが十分に大きな電流値容量を有していない場合には、そのパターンの一部に半田を盛ったとしても、大電流が常に流れるという環境の下ではそのパターンが半田の盛られていない箇所で劣化や焼き切れを生じるおそれがある。
【特許文献1】特開平10−313153号公報
【特許文献2】特開平6−275926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冒頭で説明したところから判るように、ハードディスクドライブなどに設けられる電源基板にはそのコンパクト化が要求されているために、大電流が常に流れる電路を形成している導体パターンについても、他の電路を形成している導体パターンに比べて格段に幅広に形成してその電流値容量を増大させることは許されない。このことから、幅寸法が1mm程度以下(たとえば0.25mm程度)の導体パターンによって大電流が常に流れる電路を形成する場合でも、その導体パターンの早期劣化や焼き切れを生じない電流値容量を確保するための対策を講じておくことが必要である。また、ハードディスクドライブの駆動電流には5V程度の電圧で1Aを越える電流を常に流すことが要求されるために、大電流が常に流れる電路を形成している導体パターンについては、そのような環境下で早期劣化や焼き切れを生じないことが要求されている。
【0007】
そこで、上掲の特許文献1や特許文献2によって提案されている技術を、上記した程度の大電流が常に流れる電路を形成する導体パターンを備えた電源回路に適用することができるか否かを考察してみると、それらの各特許文献による提案技術は、いずれも、もともと十分な電流値容量を有する導体パターンの抵抗値をさらに低減するというものであるに過ぎないために、それらの提案技術をそのまま適用しただけでは、電流値容量が十分に大きくない導体パターンの電流値容量を増大させてその早期劣化や焼き切れを防ぐことはできない。
【0008】
本発明は以上の状況の下でなされたものであって、電流値容量が十分に大きくない導体パターンであっても、その導体パターンの幅寸法を増大させることなく電流値容量を増大させて、その導体パターンの早期劣化や焼き切れを防止することのできる電源基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電源基板は、互いに沿うように基材に形成された複数の導体パターンのそれぞれが電路を形成し、それらの電路のそれぞれの始部に、変圧器の二次側端子から出力される異値電流が供給されるようになっている電源基板において、
電流が常時供給される電路を形成している1つの導体パターンの全長及び全幅に亘る領域に半田盛りを追加してその電路の電流値容量を増大させることにより、その導体パターンの早期劣化及び焼き切れを防止してあると共に、導体パターンと半田盛りとによって形成される電路の終部が、記録メディアとしてのハードディスクドライブの電源ラインにコネクタを介して接続されるようになっている。
【0010】
この構成であると、電流が常時供給される電路を形成している1つの導体パターンの全長及び全幅に亘る領域に半田盛りを追加してその電路の電流値容量を増大させることにより、その導体パターンの早期劣化及び焼き切れを防止してあるために、長時間に亘ってその電路に大電流が流れても、導体パターンが劣化したり焼き切れたりするおそれがなくなる。しかも、導体パターンに半田を盛るという対策を採用したために、導体パターンの全体的なレイアウトの変更を行う必要がなり、そのことが、電源基板のコストアップを回避することに役立ち、また、電源基板のコンパクト化を損なうことにもつながらないという利点がある。したがって、変圧器の二次側端子から出力される電流値で、ハードディスクトライブを駆動するという電気回路を構成する場合に、導体パターンの早期劣化や焼き切れによるトラブルを回避して電源基板、ひいては電気機器の寿命性能を向上させることが可能になる。
【0011】
本発明に係る電源基板は、互いに沿うように基材に形成された複数の導体パターンのそれぞれが電路を形成し、それらの電路のそれぞれの始部に、変圧器の二次側端子から出力される異値電流が供給されるようになっている電源基板において、電流が常時供給される電路を形成している導体パターンの全長及び全幅に亘る領域に半田盛りを追加してその電路の電流値容量を増大させてある、というものであってもよい。
【0012】
また、導体パターンと半田盛りとによって形成される電路の終部が、記録メディアとしてのハードディスクドライブの電源ラインにコネクタを介して接続されるようになっている、というものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によると、電源基板のコンパクト化が損なわれることなく、しかも、導体パターンの全体的なレイアウトの変更を伴うことなく、大電流が常に流れる電路を形成している導体パターンの電流値容量が十分に増大したものになる。そのため、当該電源基板をハードディスクドライブなどの電気機器に採用することによって、その電気機器の耐用寿命を延ばすことに役立つだけでなく、その電気機器のユーザはハードディスクに記録した画像情報などをいつでも安定した状態で楽しむことができるようになるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る電源基板1の要部を示した概略平面図、図2は図1のII−II線に沿う部分の概略拡大断面図、図3は図1の電源基板1を採用することのできる電気機器Aの構成図である。
【0015】
図1又は図2のように、電源基板1は、基材2の表面にエンチングなどの手法を採用して様々な形状の導体パターンを高密度で形成することによって製作されていて、それらの導体パターンには、図1や図2に示したように、複数の電路を形成している導体パターン31,32,33,34,35が含まれている。図示した複数の導体パターン31〜35は、互いに沿うように配置されていて、そのうちの1つの導体パターン31によって形成されている電路には、ハードディスクドライブを駆動することに用いられる大電流が常に流される。また、その導体パターン31は、大電流が常に流れるものであるにもかかわらず、その幅寸法が他の導体パターン32〜35と略同等の寸法に定められていて、そうすることによって導体パターンの配置の高密度化と電源基板1のコンパクト化が損なわれないようになっている。このことから、その導体パターン31に、後述する半田盛り・・が追加されていない状態で大電流が流れると、その導体パターン31が早期に劣化して電路としての性能に不具合が発生したり、あるいは、その導体パターン31が焼き切れて電源基板1自体の性能が損なわれる可能性がある。
【0016】
そこで、この実施形態では、図2に示したように、大電流が流れる導体パターン31に半田盛り4を追加してその導体パターン31の電流値容量を増大させてあり、そうすることによって、導体パターンの配置の高密度化と電源基板1のコンパクト化が損なわずに、その導体パターン31に劣化や焼き切れが生じることを回避してある。
【0017】
導体パターン31に半田盛り4を追加する場合、その半田盛り4は、導体パターン31の全長及び全幅に亘って形成してある。そのため、半田盛り4が追加されている導体パターン31では、その長手方向のどの箇所においても電路としての断面積が増大している。そして、半田盛り4による電路の断面積の増加面積は、導体パターン31と半田盛り4とによって形成される電路の劣化や焼き切れを生じないように定めてある。
【0018】
図1に示したように、大電流が常に流れる電路を形成している導体パターン31は、その始部と蹴部とに半田ランド36,37を備えている。そして、始部の半田ランド36に、図示していない変圧器の二次側端子から出力される大電流(たとえば5V程度)が供給されるようになっているのに対し、終部の半田ランド37には、電源基板1の実装されているコネクタ5の電極が接続されている。また、他の電路を形成しているを導体パターン32〜35もコネクタ5の他の電極に接続されていて、このコネクタ5に接続したフレキシブル基板(不図示)によってハードディスクドライブなどの各種のドライブに駆動電流が供給されるようになっている。なお、上記変圧器は、異値電流を供給し得る複数の二次側端子を備えていて、それらの二次側端子から小電流が他の電路を形成しているを導体パターン32〜35に供給されるようになっている。
【0019】
図3に示した電気機器Aは、1つの偏平箱形の筐体6に、ハードディスクドライブ7と、ビデオカセットレコーダ8と、DVDレコーダ9とを内蔵させた複合機を例示している。そして、上記した大電流の流れる電路を形成している導体パターン31を介してハードディスクドライブ7に駆動電流が供給されるようになっている。
【0020】
このように構成された実施形態の電源基板1によると、電流が常時供給される電路を形成している1つの導体パターン31の全長及び全幅に亘る領域に半田盛り4を追加してその導体パターン31と半田盛り4とによって形成される電路の電流値容量を増大させることによりその導体パターン31の早期劣化及び焼き切れを防止してあるために、長時間に亘ってその導体パターン41及び半田盛り4によって形成される電路に大電流が流れても、その導体パターン41が劣化したり焼き切れたりするおそれがない。しかも、導体パターン31の幅寸法を増大させることなく、その導体パターン31に半田盛り4を追加するという対策を講じてあるだけであるので、電源基板1自体を低コストで得ることができ、電源基板1のコンパクト化も損なわれない。
【0021】
なお、図2において、6はレジストを示し、このレジスト6は、半田盛り4を備える導体パターン31を除く他の導体パターン32〜35を被覆している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る電源基板の要部を示した概略平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う部分の概略拡大断面図である。
【図3】図1の電源基板を採用することのできる電気機器の構成図である。
【符号の説明】
【0023】
2 基材
4 半田盛り
5 コネクタ
9 ハードディスクドライブ
31,32,33,34,35 導体パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに沿うように基材に形成された複数の導体パターンのそれぞれが電路を形成し、それらの電路のそれぞれの始部に、変圧器の二次側端子から出力される異値電流が供給されるようになっている電源基板において、
電流が常時供給される電路を形成している1つの導体パターンの全長及び全幅に亘る領域に半田盛りを追加してその電路の電流値容量を増大させることにより、その導体パターンの早期劣化及び焼き切れを防止してあると共に、導体パターンと半田盛りとによって形成される電路の終部が、記録メディアとしてのハードディスクドライブの電源ラインにコネクタを介して接続されるようになっていることを特徴とする電源基板。
【請求項2】
互いに沿うように基材に形成された複数の導体パターンのそれぞれが電路を形成し、それらの電路のそれぞれの始部に、変圧器の二次側端子から出力される異値電流が供給されるようになっている電源基板において、
電流が常時供給される電路を形成している導体パターンの全長及び全幅に亘る領域に半田盛りを追加してその電路の電流値容量を増大させてあることを特徴とする電源基板。
【請求項3】
導体パターンと半田盛りとによって形成される電路の終部が、記録メディアとしてのハードディスクドライブの電源ラインにコネクタを介して接続されるようになっている請求項2に記載した電源基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−273687(P2007−273687A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96846(P2006−96846)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】