説明

電源装置、車両及び電源装置の製造方法

【課題】組電池を他の電池と接続する接続経路を短縮することを目的とする。
【解決手段】直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池を、該電池ケースの径方向に複数配列した組電池を有する電源装置であって、前記各単電池がそれぞれ挿通される複数の開口部を備える導電板と、
前記各開口部と前記各電池ケースとの間に介在する導電層と、前記導電板と、前記組電池に隣接する他の電池の正極端子との接続に用いられるバスバーと、を有することを特徴とする電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置における単電池の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの複数の単電池からなるバッテリを動力源として用いたハイブリッド自動車、電気自動車などが知られている。
【0003】
特許文献1は、同心円状に配列される電池収容部(挿入部)を備えた平面視六角形のケースと、それぞれが各電池収容部の内部に収容される複数の円筒型形状の単位電池と、電池収容部と単位電池との間に介在する絶縁部材とを有する二次電池モジュールを開示する。この種の二次電池モジュールを車両の動力源として使用する場合、電池出力を向上させるために、複数の二次電モジュールを直列に接続した組電池集合体として車両に搭載される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−156404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、単位電池と電池収容部との間に絶縁部材が介在しており、単位電池に対してケースが絶縁されている。このため、隣接する二次電池モジュールを接続するためには、各単位電池の正極端子を正極バスバーを介して電気的に接続するとともに、各単位電池の負極端子を負極バスバーを介して電気的に接続し、さらに、隣接する二次電池モジュールの正極端子と前記負極バスバーとを電気的に接続する必要があった。そのため、バスバーの寸法が、約単位電池の長さ分だけ必要となり、コスト高となっていた。そこで、本願発明は、二次電池モジュール、つまり組電池を他の電池と接続する接続経路を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用の電源装置は、(1)直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池を、該電池ケースの径方向に配列した組電池を有する電源装置であって、前記各単電池がそれぞれ挿通される複数の開口部を備える導電板と、前記各開口部と前記各電池ケースとの間に介在する導電層と、前記導電板と、前記組電池に隣接する他の電池の正極端子との接続に用いられる第1のバスバーと、を有することを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)の構成において、前記第1のバスバーは、前記導電板に接続され、前記電池ケースの径方向に直交する方向に延びる導電板接続部と、前記導電板接続部の端部から延出して前記他の電池の前記正極端子に接続される正極接続部と、を有してもよい。(2)の構成によれば、単電池の正極端子と負極端子とを直接接続する方法と比べて、バスバーの形状を簡素化することができる。
【0008】
(3)上記(1)〜(2)の構成において、前記他の電池は、直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池を、該電池ケースの径方向に複数配列した他の組電池とすることができる。(3)の構成によれば、組電池間を互いに電気的に接続する接続経路を短縮化することができる。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)の構成において、前記導電層は、少なくとも、温度上昇により膨張する樹脂体と、前記樹脂体の内部に混入された導電性フィラーからなる粒子群とを含んでおり、前記単電池の温度が使用温度から異常温度に上昇すると、前記開口部の開口方向に前記樹脂体が熱膨張することにより、前記粒子群における粒子間の接触面積が低下する。(4)の構成によれば、単電池間の温度バラツキが抑制され、温度の高い特定の単電池に流れる電流値が高くなることによって電池劣化が促進するのを効果的に抑制することができる。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)の構成において、前記電池ケースの径方向に直交する方向において、前記導電板は、前記単電池における前記負極端子よりも前記単電池における前記正極端子に近接した領域に位置させることができる。(5)の構成によれば、組電池と他の電池とを直列に接続する接続経路をより確実に短縮化することができる。
【0011】
(6)上記(5)の構成において、前記電池ケースの径方向に直交する方向において、前記導電板を挟んで前記負極端子が位置する側の領域に位置する前記電池ケースの部分に対して冷媒を供給する供給路を設けることができる。(6)の構成によれば、接続経路を短縮化しながら、単電池の冷却面積を大きくすることができる。
【0012】
(7)上記(1)〜(6)の電源装置は、車両に搭載することができる。車両としては、当該電源装置から得られた電力を用いて車両走行用のモータを駆動する、ハイブリッド自動車、電気自動車が考えられる。
【0013】
(8)上記課題を解決するために、本願発明に係る電源装置の製造方法は、導電板に複数の貫通形状の開口部を形成する第1のステップと、直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池であって、前記電池ケースの外径が前記開口部の径よりも小さい前記単電池を、前記開口部及び前記電池ケースの非接触状態を維持しながら前記複数の開口部にそれぞれ挿通する第2のステップと、前記開口部と前記電池ケースとの間に形成された隙間に導電性ペーストを充填する第3のステップと、前記導電板と他の電池の正極端子とを接続する第4のステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組電池を他の電池と接続する接続経路を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電源装置の概略構成図である。
【図2】組電池の外観斜視図である。
【図3】組電池に含まれる単電池を径方向に直交する方向に切断した断面図である。
【図4】導電板に保持された単電池を径方向に切断した断面図である。
【図5】導電層に含まれる導電性フィラーの温度に応じた挙動を模式的に示した模式図である(通常時の状態)
【図6】導電層に含まれる導電性フィラーの温度に応じた挙動を模式的に示した模式図である(異常時の状態)
【図7】並列回路における温度バラツキの拡大特性を説明するための回路図である。
【図8】電源装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら、本実施形態に係る車両用の電源装置について説明する。図1は、電源装置1の概略構成図であり。図2は、第1の組電池2Aの外観斜視図である。図3は、第1の組電池2Aに含まれる単電池4を径方向に直交する方向に切断した断面図である。図4は、導電板6に保持された単電池4を径方向に切断した断面図である。これらの図において、X軸、Y軸及びZ軸は互いに異なる直交する三軸である。X軸、Y軸及びZ軸の定義は、他の図面においても同様である。
【0017】
図1を参照して、電源装置1は、第1の組電池2A、第2の組電池2B、第3の組電池2C及び第4の組電池2Dを含む。電源装置1は、車両を走行するのに用いられる図示しないモータに電力を供給する。車両は、電源装置1の電力のみを用いて走行する電気自動車、或いは電源装置1の電力と内燃機関で得られた動力とを動力源として兼用するハイブリッド自動車であってもよい。第1の組電池2Aは、複数の単電池4と、導電板6と、を含む。図3を参照して、単電池4は、正極端子41と、電池ケース42と、発電要素43と、ガスケット44と、正極用リード線45と、負極用リード線46と、負極端子47とを含む。
【0018】
正極端子41は、発電要素43の正極体に対して正極用リード線45を介して接続されている。また、正極端子41は、ガス通路41aと、弁板41bとを備える。過充電、過放電などの電池異常時に発電要素43からガスが発生し、電池ケース42の内部圧力が弁板41bの作動圧に達すると、弁板41bが破断し、発生したガスがガス通路41aを通って単電池4の外部に排出される。なお、弁板41bのかわりに、バネにより所定圧になると開閉する弁を用いてもよい。
【0019】
電池ケース42は、径方向の断面が円形に形成された(図4参照)直管形状に形成されている。電池ケース42には、導電性を有する金属材料を用いることができる。電池ケース42及び負極端子47は電気的に接続されており、電池ケース42は負極に帯電している。電池ケース42及び負極端子47は金属板を絞り加工することにより一体的に形成してもよいし、或いはこれらを別体で形成した後、接続することにより形成してもよい。負極端子47は、負極用リード線46を介して、発電要素43の負極体に接続されている。
【0020】
発電要素43は、正極体と、負極体と、正極体と負極体との間に配置されるセパレータと、が積層されたものである。セパレータは電解質を保持する。正極体の表面には正極活物質が塗布され、負極体の表面には負極活物質が塗布される。ただし、正極体の表面の一部と、負極体の表面の一部に、それぞれ正極活物質と負極活物質の未塗工部が形成されている。正極体の正極活物質の未塗工部には正極用リード線45が接続さる。また、負極体の負極活物質の未塗工部には負極用リード線46が接続される。これにより、発電要素43の正極体と正極端子41とが電気的及び機械的に接続され、負極体と負極端子47とが電気的及び機械的に接続される。
【0021】
単電池4は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの二次電池であってもよい。単電池4がニッケル水素電池である場合には、正極体の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極体の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、単電池4がリチウムイオン電池である場合には、正極体の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極体の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0022】
電池ケース42の外面には、径方向内側に向かって突出した突出部42aが形成されている。正極端子41は、電池ケース42の内径領域において突出部42aに支持されている。なお、図1及び図2では、図面を簡略化するために、突出部42aを省略している。ガスケット44は、絶縁性の材料で構成されており、正極端子41と電池ケース42の内面との間に介在している。これにより、正極端子41と、負極端子47に同電位な電池ケース42とが電気的に絶縁されている。
【0023】
図1、図2及び図4を参照して、複数の単電池4は、電池ケース42の径方向に配列されている。導電板6は、複数の単電池4がそれぞれ挿通される複数の開口部61を備える。各開口部61の開口径は、各単電池4の外径よりも大きく設定されている。そのため、導電板6の各開口部61と各単電池4の電池ケース42との間には、隙間が形成されており、この隙間には導電層10が充填されている。したがって、導電板6は、導電層10及び電池ケース42を介して負極端子47と導通し、互いに等電位となっている。また、各単電池4は、導電板6の各開口部61に挿入されることにより、導電板6に支持される。これにより、導電板6に対して、各単電池4を支持する役割と、各負極端子47を互いに接続する役割とを兼用させることができる。
【0024】
ここで、充放電の際に発生した各単電池4の熱は、導電層10を介して導電板6に伝熱し、導電板6を介して散熱される。したがって、複数の単電池4間における温度バラツキが抑制され、電池寿命の低下を抑制することができる。これにより、導電板6に対して、上述した役割とともに、温度バラツキを抑制する散熱板の役割を兼用させることができる。
【0025】
導電板6は、熱伝導性及び導電性に優れたアルミニウム、銅、或いは鉄などによって構成することができる。導電層10は、樹脂と、樹脂内に混入される導電性フィラーとを含む。導電性フィラーには、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛などのカーボン系素材、金属微粉末、金属酸化物、金属繊維、ウィスカーなどの金属系素材、ガラスビーズ、合成繊維などを用いることができる。導電層10の中に、充填剤を含ませることもできる。なお、他の第2〜第4の組電池2B〜2Dは、第1の組電池2Aと同じ構成であるため、説明を繰り返さない。
【0026】
ここで、導電板6に形成された開口部61と電池ケース42との間に導電層10が介在することにより、単電池4の長手方向における領域を、導電板6を挟んで二つの領域に分割することができる。これらの領域のうち正極端子41が位置する側の領域は、発電要素43から発生したガスを逃がす排煙経路として使用することができ、負極端子47が位置する側の領域は各単電池4の径方向に向かって冷媒を送風することにより冷却を行う冷却経路として使用することができる。
【0027】
バスバー8Bは、互いに隣接配置された第1の組電池2A及び第2の組電池2Bを電気的及び機械的に接続している。バスバー8Bは、正極端子接続部81及び導電板接続部82を備える。正極端子接続部81は単電池4の径方向(X軸方向)に延びており、各単電池4の正極端子41に電気的及び機械的に接続されている。接続方法には、溶接を用いることができる。導電板接続部82は、正極端子接続部81のX軸方向の端部に形成されており、Z軸方向(単電池4の長手方向)に延びている。導電板接続部82の先端部は、第1の組電池2Aに設けられた導電板6に電気的及び機械的に接続されている。接続方法には、溶接を用いることができる。これにより、第1の組電池8A及び第2の組電池8Bを電気的に直列に接続することができる。バスバー8Aは、隣接配置された第1の組電池2A及び第3の組電池2Cを互いに電気的及び機械的に接続しており、バスバー8Dは、隣接配置された第2の組電池2B及び第4の組電池2Dを互いに電気的及び機械的に接続している。バスバー8A及び8Dは、バスバー8Bと同じ構成であるため、説明を繰り返さない。
【0028】
バスバー8Cは、第3の組電池2Cの正極端子41に対して電気的及び機械的に接続されている。接続方法には、溶接を用いることができる。バスバー8Cは、電源装置1の総プラス端子として使用される。バスバー8Eは、第4の組電池2Dの導電板6に対して電気的及び機械的に接続されている。接続方法には、溶接を用いることができる。バスバー8Eは、電源装置1の総マイナス端子として使用される。
【0029】
第1〜第4の組電池2A〜2Dはそれぞれ電気的に並列に接続された複数の単電池4を有するため、電源装置1の電池容量を向上させることができる。第1〜第4の組電池2A〜2Dは互いに電気的に直列に接続されているため、車両システム電圧に応じた高い電池電圧を得ることができる。
【0030】
ここで、第1の組電池2Aの正極端子41と、第2の組電池2Bの負極端子47とを接続する方法(以下、比較例の方法という)においては、単電池4の長手方向一端部から他端部までバスバーを引き回す必要があるため、配線経路が長くなる。これに対して、本実施形態では、負極端子47よりも正極端子41に近接した領域に位置する導電板6と、正極端子41とを接続しているため、バスバーの配線経路を短くすることができる。
【0031】
さらに、前記比較例の方法では、導電板接続部82をZ軸方向に延長し、さらにX軸方向に延出させることにより、単電池4の底部に位置する負極端子47に接続しなければならないため、バスバーの形状が複雑化する。これに対して、本実施形態のバスバー8BはL字形状に形成されているため、バスバーの形状を簡素化することができる。
【0032】
つまり、本実施形態では、導電板6に対して、単電池4を保持する役割、単電池4で発生した熱を散熱させる役割、負極端子47を互いに接続する役割、バスバーの配線経路を短縮化する役割、これらの四つの異なる機能を集約化させており、部品点数の削減によるコスト削減及び製造工程の簡素化を図ることができる。
【0033】
また、導電板6は、電池ケース42の径方向に直交する方向(Z軸方向)において、負極端子47よりも正極端子41に近接した領域に位置させるのが好ましい。これにより、バスバー8A〜8Dの配線経路をさらに短縮化することができ、さらに、単電池4の冷却面積をより大きくすることができる。すなわち、電池ケース42の径方向に直交する方向において、導電板6を挟んで負極端子47が位置する側の領域を冷却経路として用いることができるため、導電板6を正極端子41に近接させることにより、冷却面積をより大きくすることができる。これにより、単電池4間における温度バラツキをより効果的に抑制することができる。
【0034】
次に、導電板6の開口部61と単電池4の電池ケース42との間に形成された隙間に導電層10を介在させることによる効果について詳細に説明する。図5及び図6は、導電層10に含まれる導電性フィラーの温度に応じた挙動を示しており、図5は通常時の状態に対応しており、図6は非通常時の状態に対応している。ここで、通常時の状態とは、電池劣化を促進しない上限温度と、必要な電池出力を確保するために必要な下限温度とによって設定される使用温度に電池温度が制御されている状態を意味する。使用温度は、電池の種類などに応じて適宜変更される。非通常時の状態とは、電池温度が使用温度よりも高く、電池劣化を促進する異常温度に至った状態を意味する。
【0035】
並列接続は、直列接続の場合よりも単電池4間における温度差が拡大しやすい特性がある。この点について図7を用いて詳細に説明する。図7は、内部抵抗R1の第1の単電池4Aと内部抵抗R2の第2の単電池4Bとをそれぞれ並列に接続した並列回路の回路図である。第1の単電池4Aの電流値をI1、第2の単電池4Bの電流値をI2とする。電池の内部抵抗は、電池の温度が高くなると低下する。したがって、例えば、第1の単電池4Aの温度が第2の単電池4Aの温度よりも高くなると、第1の単電池4Aの内部抵抗R1が、第2の単電池4Bの内部抵抗R2よりも低くなり、反対に第1の単電池4Aの電流値I1が、第2の単電池4Bの電流値I2よりも高くなる。ここで、発熱量は、電流値の2乗に内部抵抗を乗じることにより算出されるため、第1の単電池4Aは、第2の単電池4Bよりも発熱量が大きくなり、第1の単電池4A及び第2の単電池4Bの温度差がさらに拡大する。そのため、並列回路においては、特定の単電池に電流が集中しないように、単電池4間の温度バラツキを十分に抑制する必要がある。
【0036】
上記課題を解決するために、導電層10は下記の作用効果を奏する。導電層10に含まれる樹脂は、図5に図示する通常状態において、導電板6に形成された開口部61内に収まっている。電池温度が上昇して図6に図示する異常状態に至ると、導電層10に含まれる樹脂が開口部61の開口方向に膨張し、樹脂の一部が開口部61の外部に延出する。そのため、導電層10に含まれる導電性フィラー10a同士の接触面積が小さくなり、単電池4に流れる電流を小さくすることができる。つまり、導電性フィラー10aは、樹脂が熱膨張した際に互いに離間する方向に移動して接触面積が低下するため、電流が流れにくくなる。この導電性フィラー10aの温度特性を利用することにより、特定の単電池4に電流が集中するのを抑制することができる。電流が抑制された単電池4は、徐々に温度低下して、樹脂が収縮することにより正常な状態、つまり導電性が回復する。
【0037】
上記特性を備える導電層10は、導電性フィラー、樹脂及び充填剤の種類を適宜選別することにより得ることができる。例えば、樹脂には、単電池4の種類に応じて設定される異常温度付近で膨張する材料を用いることができる。
【0038】
ここで、組電池2A〜2Dに対して、電池異常時に電流回路を溶断するヒューズを設ける構成も考えられる。しかしながら、この構成では、ヒューズが溶断するまで高電流が流れ続けるため制御が煩雑化し、また、一旦溶断した場合には電池を再利用することができない。これに対して、本実施形態の構成によれば、電池異常に至った単電池4の電流をより早く制限することができる。また、単電池4の電流が制限されることにより温度が低下し、導電層10は図6に図示する異常状態から図5に図示する通常状態に復帰するため、再利用することもできる。ただし、導電層10及び溶断ヒューズの双方を組み込む構成であってもよい。
【0039】
以上の本実施形態によれば、単電池4に電流が流れて温度が上昇すると、電流が流れにくくなって、温度が自然に低下するため、特定の単電池4の温度が上昇することが抑制される。これにより組電池2に含まれる単電池4間における温度バラつきを効果的に抑制することができる。特に、温度バラツキが拡大しやすい並列回路の組電池において、好適に用いることができる。
【0040】
次に、図8を参照しながら、組電池2Aの製造方法について説明する。ステップS101において、平板形状の導電板6に対して単電池4の個数に応じた開口部61を形成する。開口部61は、図示しないダイスに載置された導電板6に対して図示しないパンチを下動させることにより形成してもよい。ステップS102において、導電板6に形成された各開口部61に各単電池4を挿入する。この際、単電池4の電池ケース42に貼られた絶縁フィルムは予め除去されており、単電池4は、開口部61の開口中心を通るように位置決めされた状態で、挿入される。つまり、単電池4は、電池ケース42及び開口部61が非接触の状態で開口部61に挿入される。
【0041】
ステップS103において、開口部61と単電池4の電池ケース42との間に形成された隙間に導電性ペーストを充填し、導電性ペーストに含まれる樹脂が硬化するまで放置する。これにより、導電板6がマイナスに帯電する。ステップS104において、第1の組電池2Aの導電板6及び第2の組電池2Bの正極端子をバスバー8Bにより接続する。ここで、第1の組電池2Aの負極端子47及び第2の組電池2Bの正極端子41を直接接続する従来の方法と比べてバスバーの配線経路が短くなるため、配線作業を効率化することができる。また、バスバー8Bの導電板接続部82が接続される導電板6の接続面は、フラットに形成されているため、接続作業を簡単に行うことができる。
【0042】
上述の方法によれば、導電性ペーストを充填する際に、導電板6をマイナスに帯電させる作業と、単電池4を固定する作業とを同時に行うことができる。これにより、製造工程が簡素化され、コストを削減することができる。
【0043】
(変形例1)
上述の実施形態では、隣接する組電池にバスバーを接続する方法について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、接続される電池は、単電池4よりも容量が大きく、出力が高い円筒型形状の別の単電池であってもよい。この場合、組電池2Aの導電板6と当該別の単電池の正極端子とがバスバーを介して接続される。これにより、バスバーの配線回路を短縮することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電源装置 2A〜2D 第1〜第4の組電池 4 単電池 6 導電板
8 バスバー 10 導電層10a 導電性微粒子 41 正極端子
42 電池ケース 43 発電要素 44 ガスケット 45 正極用リード線
46 負極用リード線 41a ガス通路 41b 弁板 81 正極端子接続部
82 導電板接続部







【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池を、該電池ケースの径方向に配列した組電池を有する電源装置であって、
前記各単電池がそれぞれ挿通される複数の開口部を備える導電板と、
前記各開口部と前記各電池ケースとの間に介在する導電層と、
前記導電板と、前記組電池に隣接する他の電池の正極端子との接続に用いられるバスバーと、を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記バスバーは、前記導電板に接続され、前記電池ケースの径方向に直交する方向に延びる導電板接続部と、前記導電板接続部の端部から延出して前記他の電池の前記正極端子に接続される正極接続部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記他の電池は、直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池を、該電池ケースの径方向に複数配列した他の組電池であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記導電層は、少なくとも、温度上昇により膨張する樹脂体と、前記樹脂体の内部に混入された導電性フィラーからなる粒子群とを含んでおり、
前記単電池の温度が使用温度から異常温度に上昇すると、前記開口部の開口方向に前記樹脂体が熱膨張することにより、前記粒子群における粒子間の接触面積が低下することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の電源装置。
【請求項5】
前記電池ケースの径方向に直交する方向において、前記導電板は、前記単電池における前記負極端子よりも前記単電池における前記正極端子に近接した領域に位置することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の電源装置。
【請求項6】
前記電池ケースの径方向に直交する方向において、前記導電板を挟んで前記負極端子が位置する側の領域に位置する前記電池ケースの部分に対して冷媒を供給する供給路を有することを特徴とする請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の電源装置を搭載した車両。
【請求項8】
導電板に複数の貫通形状の開口部を形成する第1のステップと、
直管形状の電池ケースの内部に発電要素を収容し、前記電池ケースと負極端子とが電気的に接続された単電池であって、前記電池ケースの外径が前記開口部の径よりも小さい前記単電池を、前記開口部及び前記電池ケースの非接触状態を維持しながら前記複数の開口部にそれぞれ挿通する第2のステップと、
前記開口部と前記電池ケースとの間に形成された隙間に導電性ペーストを充填する第3のステップと、
前記導電板と他の電池の正極端子とを接続する第4のステップと、を有する電源装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−37969(P2013−37969A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174548(P2011−174548)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】