説明

電源装置、非接触送電装置、車両、および非接触電力伝送システム

【課題】スイッチング素子の寄生容量が大きい場合にも零電圧スイッチングを実現する増幅回路を備える電源装置、非接触送電装置、車両、および非接触電力伝送システムを提供する。
【解決手段】電源装置20は、チョークコイル210と、スイッチング素子220と、共振回路250と、補償回路260とを含む。スイッチング素子220の寄生容量270は、E級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きい。補償回路260は、スイッチング素子220に並列に接続される。補償回路260は、直列接続されたコイル262およびキャパシタ264を含み、誘導性インピーダンスを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源装置、非接触送電装置、車両、および非接触電力伝送システムに関し、特に、非接触電力伝送に用いられる高周波電源の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波の電力を低損失で生成可能なE級増幅回路(「E級零電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)回路」とも称される。)が知られている。E級増幅回路では、スイッチング素子の両端の電圧が零で、かつ、その傾きも零の状態でスイッチング素子がターンオンするので(零電圧スイッチング)、スイッチング損失を小さくすることができ、特に高周波電源において有用である。
【0003】
特開平7−142937号公報(特許文献1)は、そのようなE級増幅回路の一構成を開示する。一般的に、E級増幅回路は、チョークコイルと、スイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続されるシャントキャパシタと、チョークコイルおよび負荷間に直列に接続されるインダクタおよびキャパシタとを含む。そして、このE級増幅回路においては、スイッチング素子およびシャントキャパシタに並列に、直列接続されたインダクタおよびキャパシタから成る直列共振回路が設けられる。
【0004】
このような構成とすることにより、このE級増幅回路によれば、E級増幅回路の入力電力、出力電力、負荷抵抗の関係に設計上の許容範囲をもたせることができるとされる(特許文献1参照)。
【0005】
また、特開2011−30298号公報(特許文献2)は、高周波電源を有するワイヤレス給電装置を開示する。このワイヤレス給電装置においては、電源制御回路によって高周波電力が生成される。そして、生成された高周波電力が供給される給電コイルから受電コイルへ磁場共鳴により電力が伝送される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−142937号公報
【特許文献2】特開2011−30298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなワイヤレス給電装置の高周波電源にE級増幅回路を用いることによって低損失の電源装置を構成し、非接触電力伝送の効率向上を図ることができる。ここで、大電力の電力伝送を実現するには、電源装置に用いられるE級増幅回路のスイッチング素子の定格電圧や定格電流を大きくする必要がある。スイッチング素子の定格には上限があるので、複数のスイッチング素子を並列接続して等価的に定格電流の大きいスイッチング素子を構成することができる。
【0008】
ここで、スイッチング素子には寄生容量が存在する。そして、大電力伝送を実現するためにスイッチング素子を大型化したり、複数のスイッチング素子を並列接続したりすると、スイッチング素子全体としての寄生容量が増大する。そうすると、スイッチング素子のターンオン時に零電圧スイッチングを達成することができなくなり、その結果、損失が増大してしまう。このような問題点およびその解決手段について、上記の各文献では特に検討されていない。
【0009】
そこで、この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、スイッチング素子の寄生容量が大きい場合にも零電圧スイッチングを実現する増幅回路を備える電源装置、非接触送電装置、車両、および非接触電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、電源装置は、増幅回路と、補償回路とを備える。増幅回路は、スイッチング素子を含む。スイッチング素子の寄生容量は、E級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きい。補償回路は、スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する。
【0011】
好ましくは、増幅回路は、スイッチング素子と、第1のインダクタと、共振回路とを含む。第1のインダクタは、スイッチング素子と直流電源との間に接続される。共振回路は、第1のインダクタおよびスイッチング素子間の接続ノードと増幅回路に接続される負荷との間に接続される。
【0012】
さらに好ましくは、補償回路は、直列接続された第2のインダクタおよび容量素子を含む。
【0013】
さらに好ましくは、第2のインダクタのインダクタンスは、第2のインダクタとスイッチング素子の寄生容量とによって形成される回路の共振周波数がスイッチング素子のスイッチング周波数と同等になるように設定される。
【0014】
好ましくは、所定の容量は、スイッチング素子のスイッチング周波数および増幅回路に接続される負荷によって決定される。
【0015】
好ましくは、スイッチング素子は、互いに並列接続された複数のスイッチング素子によって構成される。
【0016】
また、この発明によれば、非接触送電装置は、受電装置へ電力を非接触で出力する非接触送電装置であって、交流電力を生成する電源部と、送電用共鳴部とを備える。送電用共鳴部は、電源部から供給される交流電力を受電装置の受電用共鳴部へ非接触で出力するように構成される。送電用共鳴部の固有周波数は、受電用共鳴部の固有周波数と同じである。電源部は、増幅回路と、補償回路とを含む。増幅回路は、スイッチング素子を含む。スイッチング素子の寄生容量は、E級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きい。補償回路は、スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する。
【0017】
好ましくは、増幅回路は、スイッチング素子と、第1のインダクタと、共振回路とを含む。第1のインダクタは、スイッチング素子と直流電源との間に接続される。共振回路は、第1のインダクタおよびスイッチング素子間の接続ノードと送電用共鳴部との間に接続される。
【0018】
さらに好ましくは、補償回路は、直列接続された第2のインダクタおよび容量素子を含む。
【0019】
さらに好ましくは、第2のインダクタのインダクタンスは、第2のインダクタとスイッチング素子の寄生容量とによって形成される回路の共振周波数がスイッチング素子のスイッチング周波数と同等になるように設定される。
【0020】
好ましくは、所定の容量は、スイッチング素子のスイッチング周波数および増幅回路に接続される負荷によって決定される。
【0021】
好ましくは、スイッチング素子は、互いに並列接続された複数のスイッチング素子によって構成される。
【0022】
好ましくは、送電用共鳴部は、送電用共鳴部と受電用共鳴部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送電用共鳴部と受電用共鳴部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて受電用共鳴部へ送電する。
【0023】
好ましくは、送電用共鳴部と受電用共鳴部との結合係数は、0.1以下である。
また、この発明によれば、車両は、車両外部の負荷へ電力を非接触で出力する車両であって、蓄電装置と、電源部と、共鳴部とを備える。電源部は、蓄電装置から電力を受けて交流電力を生成する。共鳴部は、電源部から供給される交流電力を負荷側の受電用共鳴部へ非接触で出力するように構成される。共鳴部の固有周波数は、受電用共鳴部の固有周波数と同じである。電源部は、増幅回路と、補償回路とを含む。増幅回路は、スイッチング素子を含む。スイッチング素子の寄生容量は、E級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きい。補償回路は、スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する。
【0024】
また、この発明によれば、非接触電力伝送システムは、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する非接触電力伝送システムである。送電装置は、交流電力を生成する電源部と、送電用共鳴部とを備える。送電用共鳴部は、電源部から供給される交流電力を受電装置へ非接触で出力するように構成される。受電装置は、受電用共鳴部を備える。受電用共鳴部は、送電用共鳴部から出力される電力を非接触で受電するように構成される。受電用共鳴部の固有周波数は、送電用共鳴部の固有周波数と同じである。電源部は、増幅回路と、補償回路とを含む。増幅回路は、スイッチング素子を含む。スイッチング素子の寄生容量は、E級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きい。補償回路は、スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する。
【発明の効果】
【0025】
増幅回路のスイッチング素子の寄生容量がE級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きい場合、このままでは零電圧スイッチングを実現することができない。そこで、この発明においては、スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する補償回路が設けられる。これにより、スイッチング素子の寄生容量の放電が補償回路によって早められる。
【0026】
したがって、この発明によれば、スイッチング素子の寄生容量が大きい場合にも零電圧スイッチングを実現することができる。その結果、大電力の非接触電力伝送を高効率に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明による電源装置が適用される非接触電力伝送システムの全体構成図である。
【図2】磁場共鳴による非接触送電の原理を説明するための図である。
【図3】図1に示す電源装置の回路図である。
【図4】一般的なE級増幅回路における理想状態下での波形図である。
【図5】一般的なE級増幅回路において、スイッチング素子の寄生容量が理論容量を超える場合の波形図である。
【図6】実施の形態1の電源装置における波形図である。
【図7】電源装置の回路図である。
【図8】この発明による電源装置が適用される車両の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
[実施の形態1]
図1は、この発明による電源装置が適用される非接触電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、この非接触電力伝送システムは、送電装置100と、車両200とを備える。送電装置100は、パワーコントローラ10と、電源装置20と、共鳴ユニット30とを含む。車両200は、共鳴ユニット50と、整流回路60と、蓄電装置70と、動力生成装置80とを含む。
【0030】
パワーコントローラ10は、たとえば、系統電源12や太陽電池14、蓄電装置16等から電力の供給を受ける。そして、パワーコントローラ10は、一定の直流電圧を生成し、その生成した直流電圧を電源装置20へ供給する。
【0031】
電源装置20は、パワーコントローラ10から電力を受けて高周波の交流電力を生成する。この電源装置20には、大電力を出力可能であり、かつ、零電圧スイッチングを行なうことにより低損失で作動可能な増幅回路が用いられる。この電源装置20の回路構成については、後ほど詳しく説明する。
【0032】
共鳴ユニット30は、電源装置20から高周波の交流電力の供給を受け、共鳴ユニット50へ非接触で電力を伝送する。一例として、共鳴ユニット30は、コイルおよびキャパシタを含む共振回路によって構成される。
【0033】
一方、車両200において、共鳴ユニット50は、送電装置100側の共鳴ユニット30から送出される電力を非接触で受電して整流回路60へ出力する。一例として、共鳴ユニット50も、コイルおよびキャパシタを含む共振回路によって構成される。
【0034】
整流回路60は、共鳴ユニット50から受ける交流電力を直流電力に変換し、その変換された直流電力を蓄電装置70へ出力することによって蓄電装置70を充電する。蓄電装置70は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池によって構成される。蓄電装置70は、整流回路60から出力される電力を蓄えるほか、動力生成装置80によって発電される電力も蓄える。そして、蓄電装置70は、その蓄えられた電力を動力生成装置80へ供給する。なお、蓄電装置70として大容量のキャパシタも採用可能である。
【0035】
動力生成装置80は、蓄電装置70に蓄えられる電力を用いて車両200の走行駆動力を発生する。特に図示しないが、動力生成装置80は、たとえば、蓄電装置70から電力を受けるインバータ、インバータによって駆動されるモータ、モータによって駆動される駆動輪等を含む。なお、動力生成装置80は、蓄電装置70を充電するための発電機と、その発電機を駆動可能なエンジンを含んでもよい。
【0036】
この非接触電力伝送システムにおいては、送電装置100の共鳴ユニット30の固有周波数は、車両200の共鳴ユニット50の固有周波数と同じである。ここで、共鳴ユニット30(50)の固有周波数とは、共鳴ユニット30(50)を構成する電気回路(共振回路)が自由振動する場合の振動周波数を意味する。なお、共鳴ユニット30(50)の共振周波数とは、共鳴ユニット30(50)を構成する電気回路(共振回路)において、制動力または電気抵抗を零としたときの固有周波数を意味する。
【0037】
また、固有周波数が「同じ」とは、完全に同じ場合だけでなく、固有周波数が実質的に同じ場合も含む。固有周波数が「実質的に同じ」とは、たとえば、共鳴ユニット30の固有周波数と共鳴ユニット50の固有周波数との差が、共鳴ユニット30または共鳴ユニット50の固有周波数の10%以内の場合を意味する。
【0038】
そして、共鳴ユニット30は、共鳴ユニット30,50間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、共鳴ユニット30,50間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、車両200の共鳴ユニット50へ非接触で送電する。共鳴ユニット30と共鳴ユニット50との結合係数κは0.1以下であり、結合係数κとQ値との積が所定値(たとえば1.0)以上になるように共鳴ユニット30,50が設計される。このように、共鳴ユニット30と共鳴ユニット50とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電装置100の共鳴ユニット30から車両200の共鳴ユニット50へ非接触で電力が伝送される。
【0039】
なお、上記のように、この非接触電力伝送システムにおいては、共鳴ユニット30と共鳴ユニット50とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、共鳴ユニット30から共鳴ユニット50へ非接触で電力が伝送される。電力伝送における、このような共鳴ユニット30と共鳴ユニット50との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」、または「電界(電場)共振結合」等という。「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
【0040】
共鳴ユニット30と共鳴ユニット50とが上記のようにコイルによって形成される場合には、共鳴ユニット30と共鳴ユニット50とは、主に磁界(磁場)によって結合し、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」が形成される。なお、共鳴ユニット30と共鳴ユニット50とに、たとえばメアンダライン等のアンテナを採用することも可能であり、この場合には、共鳴ユニット30と共鳴ユニット50とは、主に電界(電場)によって結合し、「電界(電場)共鳴結合」が形成される。
【0041】
図2は、磁場共鳴による非接触送電の原理を説明するための図である。図2を参照して、この送電手法では、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つの共振コイルが磁場(電場でもよい)において共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへ磁場を介して電力が伝送される。
【0042】
具体的には、送電装置100側の共鳴ユニット30は、電磁誘導コイル110と共振コイル120とによって構成され、電源装置20に接続される電磁誘導コイル110を用いて、高周波電力が共振コイル120に供給される。車両200側の共鳴ユニット50も、共振コイル140と電磁誘導コイル160とによって構成される。共振コイル120は、キャパシタ130とともにLC共振器を形成し、共振コイル120と同じ固有周波数を有する車両200側の共振コイル140と磁場において共鳴する。そうすると、共振コイル120から共振コイル140へ磁場を介してエネルギー(電力)が移動する。共振コイル140へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導コイル160を用いて取出され、整流回路60(図1)へ出力される。
【0043】
なお、電磁誘導コイル110は、電源装置20から共振コイル120への給電を容易にするために設けられるものであり、電磁誘導コイル110を設けずに共振コイル120に電源装置20を直接接続してもよい。また、共振コイル120の浮遊容量を利用してキャパシタ130を設けない構成としてもよい。
【0044】
同様に、電磁誘導コイル160は、共振コイル140からの電力の取出しを容易にするために設けられるものであり、電磁誘導コイル160を設けずに共振コイル140に整流回路60を直接接続してもよい。また、共振コイル140の浮遊容量を利用してキャパシタ150を設けない構成としてもよい。
【0045】
図3は、図1に示した電源装置20の回路図である。図3を参照して、電源装置20は、チョークコイル210と、スイッチング素子220と、パルス発生器230と、ゲート抵抗240と、共振回路250と、補償回路260と、出力端子280とを含む。
【0046】
チョークコイル210は、パワーコントローラ10(図1)とノードNDとの間に接続され、ノードNDにスイッチング素子220が接続される。共振回路250は、ノードNDと出力端子280との間に接続され、出力端子280に負荷290が接続される。なお、負荷290は、電源装置20から見た、共鳴ユニット30(図1)以降の負荷を総括的に示したものである。補償回路260は、ノードNDと共振回路250との間の電力線PLに接続される。すなわち、補償回路260は、スイッチング素子220に並列に接続される。
【0047】
チョークコイル210は、パワーコントローラ10から受ける電流を略一定にする。すなわち、チョークコイル210のインダクタンスは、パワーコントローラ10から受ける電流を略一定化できる程度に大きく設定される。
【0048】
スイッチング素子220は、パルス発生器230およびゲート抵抗240から成るゲート駆動回路によってオンオフ駆動される。送電装置100の給電能力を大きくするためにスイッチング素子220は大きな定格を有しており、そのためにスイッチング素子220の寄生容量は大きなものとなっている。スイッチング素子220には、代表的にはパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられるが、パワーMOSFETに代えてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワートランジスタを用いてもよい。なお、スイッチング素子220には、逆並列にダイオードが接続される。
【0049】
パルス発生器230は、スイッチング素子220をオンオフ駆動するためのパルス信号(デューティー比50%)を発生する。パルス発生器230が発生するパルス信号の周波数は、この電源装置20により生成される交流電力の周波数である。ゲート抵抗240は、寄生振動等を防止するために設けられる。
【0050】
共振回路250は、直列接続されたキャパシタ252およびコイル254を含む。共振回路250については、電源装置20により生成される交流電力の周波数付近に固有周波数を有するように、キャパシタ252およびコイル254が設計される。
【0051】
補償回路260は、直列接続されたコイル262およびキャパシタ264を含む。この補償回路260は、誘導性インピーダンスを有し、スイッチング素子220の寄生容量の放電を早めるために設けられる。以下、この点について説明する。
【0052】
チョークコイル210、スイッチング素子220、および共振回路250の各仕様は、この電源装置20の作動周波数、出力電力、および負荷290に基づいて、E級増幅回路の設計理論に従って決定される。ここで、一般的なE級増幅回路においては、電圧の立上りを遅らせて出力を正弦波に近づけるために、スイッチング素子に並列にキャパシタが接続される。このキャパシタの仕様については、E級増幅回路の作動周波数および出力の負荷に基づいて、E級増幅回路の設計理論に従ってたとえば次式にて決定される。
【0053】
C=8/{π(π2+4)ωR} …(1)
ここで、ω=2πfであり、fは作動周波数を示し、Rは負荷の大きさを示す。スイッチング素子は寄生容量を有するので、スイッチング素子に並列に接続されるキャパシタの容量については、上記の算出値からスイッチング素子の寄生容量を差引く必要がある。
【0054】
一方、この実施の形態1における電源装置20においては、上述のように、送電装置100の給電能力を大きくするためにスイッチング素子220は大きな定格を有している。そのためにスイッチング素子220の寄生容量270も大きなものとなっており、寄生容量270が式(1)で示される容量を超える。このため、この電源装置20においては、一般的なE級増幅回路においてスイッチング素子に並列に接続されるキャパシタが設けられていない。
【0055】
スイッチング素子の寄生容量が式(1)で示される容量を超える場合、このままでは、スイッチング素子のターンオン時に零電圧スイッチングを実現できない。そこで、この実施の形態1では、スイッチング素子220(寄生容量270)に並列に誘導性インピーダンスを有する補償回路260を設け、スイッチング素子220の寄生容量270の放電を早めることで、寄生容量270が大きくてもスイッチング素子220の零電圧スイッチングを実現可能としたものである。
【0056】
補償回路260のコイル262は、スイッチング素子220のスイッチング周波数において、スイッチング素子220の寄生容量270と共振するように設計される。すなわち、コイル262のインダクタンスは、コイル262とスイッチング素子220の寄生容量270とによって形成される回路の共振周波数がスイッチング素子220のスイッチング周波数と同等になるように設定される。これにより、寄生容量270の電荷量を適切にすることができ、スイッチング素子220の零電圧スイッチングを実現することができる。
【0057】
補償回路260のキャパシタ264は、直流阻止用に設けられ、十分に大きな容量を有するものである。一例として、キャパシタ264のインピーダンスの大きさがコイル262のインピーダンスの大きさの10倍以上になるように、キャパシタ264の容量が設定される。なお、特に図示しないが、コイル262とキャパシタ264との配置を入替えてもよい。
【0058】
図4は、一般的なE級増幅回路における理想状態下での波形図である。なお、この図4および後述の図5は、後述の図6に示される本実施の形態1の波形と比較するために示されるものである。図4を参照して、電圧Vgは、スイッチング素子のゲート電圧を示し、電圧Vcは、スイッチング素子に並列接続されるキャパシタの端子間電圧を示す。また、電流Isは、スイッチング素子に流れる電流を示し、電流Ioは、E級増幅回路の出力電流を示す。
【0059】
時刻t1において、電圧Vgが立ち上がり、スイッチング素子がターンオンする。スイッチング素子がオンしている間は、電圧Vcは略0であり、スイッチング素子には電流Isが流れる。
【0060】
時刻t2において、電圧Vgが立ち下がり、スイッチング素子がターンオフする。電流Isは0となり、スイッチング素子に並列接続されるキャパシタが充電されることにより電圧Vcが上昇する。その後、共振回路の作用によってキャパシタの放電が始まり、電圧Vcは低下する。キャパシタの容量は、スイッチング素子の零電圧スイッチングを実現するために上記の式(1)に基づいて設計されており、スイッチング素子がターンオンする時刻t3の直前に電圧Vcは0となる。
【0061】
そして、時刻t3において、電圧Vgが再び立ち上がり、電圧Vcが0の状態でスイッチング素子がターンオンする。すなわち、スイッチング素子の零電圧スイッチングが実現される。
【0062】
図5は、一般的なE級増幅回路において、スイッチング素子の寄生容量が大きい場合の波形図である。なお、この図5も、後述の図6に示される本実施の形態1の波形と比較するために示されるものである。図5を参照して、時刻t2において、スイッチング素子がターンオフすると、スイッチング素子に並列接続されるキャパシタが充電されることにより電圧Vcが上昇する。
【0063】
ここで、スイッチング素子の寄生容量が式(1)で示される容量を超えるほど大きいと、スイッチング素子がターンオンする時刻t3に寄生容量に電荷が残留し、電圧Vcは0にならない。したがって、この状態で、時刻t3において、スイッチング素子がターンオンすると、スイッチング素子に短絡電流が流れ、大きな損失が発生する。すなわち、このケースでは、零電圧スイッチングが実現できていない。
【0064】
図6は、この実施の形態1の電源装置20における波形図である。図6を参照して、電圧Vcは、寄生容量270の電圧、すなわちスイッチング素子220のドレイン−ソース間電圧を示し、電流Ixは、補償回路260のコイル262(図3)に流れる電流を示す。時刻t2において、スイッチング素子がターンオフすると、スイッチング素子220の寄生容量270が充電されることにより電圧Vcが上昇する。
【0065】
ここで、この実施の形態1では、スイッチング素子220(寄生容量270)に並列に誘導性インピーダンスを有する補償回路260が設けられるので(図3)、スイッチング素子220のターンオフ後、誘導性インピーダンスを有する補償回路260へスイッチング素子220(寄生容量270)から電流Ixが流れる。これにより、スイッチング素子220の寄生容量270の放電が早められ、スイッチング素子220がターンオンする時刻t3の直前に電圧Vcは0となる。
【0066】
そして、時刻t3において、電圧Vgが再び立ち上がり、電圧Vcが0の状態でスイッチング素子220がターンオンする。すなわち、スイッチング素子220の零電圧スイッチングが実現される。
【0067】
なお、上記においては、送電装置100の給電能力を大きくするためにスイッチング素子220は大きな定格を有するものとしたが、スイッチング素子の定格には上限があるので、図7に示すように、複数のスイッチング素子を並列接続することによってスイッチング素子220を構成してもよい。この図7では、スイッチング素子220が、互いに並列接続された3つのスイッチング素子220A〜220Cによって構成される一例が示されている。このように複数のスイッチング素子を並列接続すると、スイッチング素子全体としての寄生容量が大きくなるところ、この実施の形態1においては、補償回路260が設けられるので、零電圧スイッチングが実現される。
【0068】
以上のように、この実施の形態1においては、スイッチング素子220の寄生容量270が式(1)で示される容量を超えるところ、誘導性インピーダンスを有する補償回路260がスイッチング素子220に並列に接続される。これにより、スイッチング素子220の寄生容量270の放電が補償回路260によって早められる。したがって、この実施の形態1によれば、寄生容量270の大きいスイッチング素子220を用いてもスイッチング素子220の零電圧スイッチングを実現することができる。その結果、送電装置100から車両200へ大電力の非接触電力伝送を高効率に実現することができる。
【0069】
[実施の形態2]
車両外部へ電力を出力可能に構成された車両に、本発明の電源装置を適用することも可能である。
【0070】
図8は、この発明による電源装置が適用される車両の全体構成図である。図8を参照して、車両200Aは、図1に示した実施の形態1における車両200の構成において、整流回路60に代えて電源装置90を備える。
【0071】
電源装置90は、蓄電装置70から電力を受けて高周波の交流電力を生成する。この電源装置90の構成は、図3に示した電源装置20と同じである。すなわち、電源装置90においては、車両200Aから負荷320への給電能力を大きくするためにスイッチング素子220が大きな定格を有するものであるところ、スイッチング素子220に並列に誘導性インピーダンスを有する補償回路260が接続され、スイッチング素子220の零電圧スイッチングが実現される。
【0072】
共鳴ユニット50は、電源装置90から高周波の交流電力の供給を受け、車両外部に設けられる共鳴ユニット310へ電力を伝送する。共鳴ユニット50の固有周波数は、共鳴ユニット310の固有周波数と同じである。「固有周波数」や「固有周波数が同じ」の意味は、実施の形態1で説明したとおりである。そして、車両外部において、共鳴ユニット310は、車両200Aの共鳴ユニット50から送出される電力を非接触で受電して負荷320へ出力する。
【0073】
この実施の形態2によれば、車両200Aの電源装置90に寄生容量の大きいスイッチング素子220を用いてもスイッチング素子220の零電圧スイッチングを実現することができる。その結果、車両200Aから負荷320へ大電力の非接触電力伝送を高効率に実現することができる。
【0074】
なお、上記の実施の形態1,2においては、車両を用いた非接触電力伝送システムに本発明の電源装置が適用される場合について説明したが、携帯電話や家電製品など、車両以外の非接触電力伝送システムにも本発明は適用可能である。
【0075】
また、上記の各実施の形態においては、一次側の共鳴ユニットと二次側の共鳴ユニットとを電磁界によって共振(共鳴)させることで、一次側の共鳴ユニットから二次側の共鳴ユニットへ非接触で電力が伝送されるものとしたが、電磁誘導により一次側から二次側へ電力を伝送するシステムにもこの発明は適用可能である。すなわち、たとえば、図1に示した非接触電力伝送システムでは、共鳴ユニット30,50間の結合係数κは0.1以下であり、結合係数κとQ値との積が所定値(たとえば1.0)以上になるように共鳴ユニット30,50を設計するものとしたが、各共鳴ユニット30,50を一つのコイルで構成するとともに結合係数κが1.0に近くなるように各コイルを設計することによって、電磁誘導により送電装置から車両へ電力が伝送される。
【0076】
なお、上記において、チョークコイル210は、この発明における「第1のインダクタ」の一実施例に対応する。また、コイル262は、この発明における「第2のインダクタ」の一実施例に対応し、キャパシタ264は、この発明における「容量素子」の一実施例に対応する。さらに、電源装置20は、この発明における「電源部」の一実施例に対応し、共鳴ユニット30は、この発明における「送電用共鳴部」の一実施例に対応する。
【0077】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 パワーコントローラ、12 系統電源、14 太陽電池、16,70 蓄電装置、20,90 電源装置、30,50,310 共鳴ユニット、60 整流回路、80 動力生成装置、100 送電装置、110,160 電磁誘導コイル、120,140 共振コイル、130,150,252,264 キャパシタ、200,200A 車両、210 チョークコイル、220,220A〜220C スイッチング素子、230 パルス発生器、240 ゲート抵抗、250 共振回路、254,262 コイル、260 補償回路、270 寄生容量、280 出力端子、290,320 負荷。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生容量がE級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きいスイッチング素子を含む増幅回路と、
前記スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する補償回路とを備える電源装置。
【請求項2】
前記増幅回路は、
前記スイッチング素子と、
前記スイッチング素子と直流電源との間に接続される第1のインダクタと、
前記第1のインダクタおよび前記スイッチング素子間の接続ノードと当該増幅回路に接続される負荷との間に接続される共振回路とを含む、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記補償回路は、直列接続された第2のインダクタおよび容量素子を含む、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第2のインダクタのインダクタンスは、前記第2のインダクタと前記スイッチング素子の寄生容量とによって形成される回路の共振周波数が前記スイッチング素子のスイッチング周波数と同等になるように設定される、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記所定の容量は、前記スイッチング素子のスイッチング周波数および前記増幅回路に接続される負荷によって決定される、請求項1から4のいずれかに記載の電源装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、互いに並列接続された複数のスイッチング素子によって構成される、請求項1から5のいずれかに記載の電源装置。
【請求項7】
受電装置へ電力を非接触で出力する非接触送電装置であって、
交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記受電装置の受電用共鳴部へ非接触で出力するように構成された送電用共鳴部とを備え、
前記送電用共鳴部の固有周波数は、前記受電用共鳴部の固有周波数と同じであり、
前記電源部は、
寄生容量がE級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きいスイッチング素子を含む増幅回路と、
前記スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する補償回路とを含む、非接触送電装置。
【請求項8】
前記増幅回路は、
前記スイッチング素子と、
前記スイッチング素子と直流電源との間に接続される第1のインダクタと、
前記第1のインダクタおよび前記スイッチング素子間の接続ノードと前記送電用共鳴部との間に接続される共振回路とを含む、請求項7に記載の非接触送電装置。
【請求項9】
前記補償回路は、直列接続された第2のインダクタおよび容量素子を含む、請求項8に記載の非接触送電装置。
【請求項10】
前記第2のインダクタのインダクタンスは、前記第2のインダクタと前記スイッチング素子の寄生容量とによって形成される回路の共振周波数が前記スイッチング素子のスイッチング周波数と同等になるように設定される、請求項9に記載の非接触送電装置。
【請求項11】
前記所定の容量は、前記スイッチング素子のスイッチング周波数および前記増幅回路に接続される負荷によって決定される、請求項7から10のいずれかに記載の非接触送電装置。
【請求項12】
前記スイッチング素子は、互いに並列接続された複数のスイッチング素子によって構成される、請求項7から11のいずれかに記載の非接触送電装置。
【請求項13】
前記送電用共鳴部は、前記送電用共鳴部と前記受電用共鳴部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、前記送電用共鳴部と前記受電用共鳴部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて前記受電用共鳴部へ送電する、請求項7から12のいずれかに記載の非接触送電装置。
【請求項14】
前記送電用共鳴部と前記受電用共鳴部との結合係数は、0.1以下である、請求項7から13のいずれかに記載の非接触送電装置。
【請求項15】
車両外部の負荷へ電力を非接触で出力する車両であって、
蓄電装置と、
前記蓄電装置から電力を受けて交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記負荷側の受電用共鳴部へ非接触で出力するように構成された共鳴部とを備え、
前記共鳴部の固有周波数は、前記受電用共鳴部の固有周波数と同じであり、
前記電源部は、
寄生容量がE級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きいスイッチング素子を含む増幅回路と、
前記スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する補償回路とを含む、車両。
【請求項16】
送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する非接触電力伝送システムであって、
前記送電装置は、
交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記受電装置へ非接触で出力するように構成された送電用共鳴部とを備え、
前記受電装置は、前記送電用共鳴部から出力される電力を非接触で受電するように構成された受電用共鳴部を備え、
前記受電用共鳴部の固有周波数は、前記送電用共鳴部の固有周波数と同じであり、
前記電源部は、
寄生容量がE級零電圧スイッチングを実現するための所定の容量よりも大きいスイッチング素子を含む増幅回路と、
前記スイッチング素子に並列に接続され、誘導性インピーダンスを有する補償回路とを含む、非接触電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−30973(P2013−30973A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165524(P2011−165524)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】