説明

電源装置及び電源装置を有する画像形成装置

【課題】圧電トランスの出力電圧が目標電圧に至るまでの時間を短縮する。
【解決手段】電源装置は、例えば、電圧制御発振器、駆動部、圧電トランス、周波数制御部、保持部および設定部を備える。電圧制御発振器は、入力された制御電圧に応じた周波数の信号を生成する。駆動部は電圧制御発振器から出力された信号が入力される。圧電トランスは、電圧制御発振器から出力された信号に応じて駆動部により駆動される。周波数制御部は、予め定められた初期周波数で駆動部による圧電トランスの駆動を開始させ、出力電圧が予め定められた目標電圧になるように制御電圧を通じて周波数を掃引する。保持部は、電源装置からの出力電圧が目標電圧になるときに電圧制御発振器が出力する信号の周波数に相当する制御電圧を示す情報を保持する。設定部は、初期周波数に代えて、保持部に保持されている情報に対応した掃引開始周波数を周波数制御部に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置などの電子機器で使用される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において目標性能を達成するためには電子機器に電力を供給する電源装置の能力が重要となる。例えば、電子写真方式の画像形成装置では、画像を形成する際に感光体を帯電する帯電部、現像部、転写部等の画像形成部に高電圧を印加することで、トナー画像を形成している。よって、画像形成装置では、画像の品質は高電圧の精度に依存する。つまり、安定して目標の高電圧を出力することが求められる。また、画像形成開始から画像形成を開始して1枚分画像を形成するまでの時間や単位時間あたりの画像形成枚数を増加して生産性を向上するには、目標電圧に立ち上げるために必要となる時間を如何にして短縮するかが重要となる。
【0003】
特許文献1には、巻線式の電磁トランスに代えて圧電トランスを採用した小型かつ軽量の高電圧発生装置が提案されている。とりわけ、圧電トランスは電圧制御発振器(VCO)から出力される信号の周波数に応じた電圧を出力する。圧電トランスの駆動周波数に対する出力電圧特性は、一般に略山型の特性である。つまり、共振周波数において出力電圧が最大となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の圧電トランスを採用した電源装置では、目標電圧が出力されるようになるまで周波数掃引を行う必要がある。この周波数掃引は、ある初期周波数fiから共振周波数f0に向けて開始される。初期周波数fiは、圧電トランスの共振周波数f0の固体ばらつきや回路のばらつきを考慮して、十分なマージンを与えて決定される。そのため、目標電圧に対応した駆動周波数fxよりもかなり高周波に初期周波数fiが設定されていた。なお、高周波側から周波数の掃引を開始する方法では、駆動周波数が共振周波数f0よりも低周波になってしまうと、制御不能に陥る恐れがある。これを回避するためには、回路全体のフィードバック時定数を遅くする必要がある。これは、掃引動作には多くの時間を要してしまう要因のひとつにもなっている。そこで、本発明は、圧電トランスの出力電圧が目標電圧に至るまでの時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源装置は、例えば、電圧制御発振器、駆動部、圧電トランス、周波数制御部、保持部および設定部を備える。電圧制御発振器は、入力された制御電圧に応じた周波数の信号を生成する。駆動部は電圧制御発振器から出力された信号が入力される。圧電トランスは、電圧制御発振器から出力された信号に応じて駆動部により駆動される。周波数制御部は、予め定められた初期周波数で駆動部による圧電トランスの駆動を開始させ、出力電圧が予め定められた目標電圧になるように制御電圧を通じて周波数を掃引する。保持部は、電源装置からの出力電圧が目標電圧になるときに電圧制御発振器が出力する信号の周波数に相当する制御電圧を示す情報を保持する。設定部は、初期周波数に代えて、保持部に保持されている情報に対応した掃引開始周波数を周波数制御部に設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保持部が、電源装置からの出力電圧が目標電圧になるときに電圧制御発振器が出力する信号の周波数に相当する制御電圧を示す情報を保持しおく。さらに。設定部が、初期周波数に代えて、保持部に保持されている情報に対応した掃引開始周波数を周波数制御部に設定する。よって、掃引開始周波数は、出力電圧が予め定められた目標電圧になるときの圧電トランスの駆動周波数に近いため、そこから掃引を開始することで、圧電トランスの出力電圧が目標電圧に至るまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例における画像形成装置を説明する断面図。
【図2】本発明の関連技術における電源装置の回路構成図。
【図3】本発明の関連技術における圧電トランスの周波数特性を示す図。
【図4】本発明の実施例1における電源装置の回路構成図。
【図5】本発明の実施例における電圧制御発振器の回路構成図。
【図6】本発明の実施例における電圧制御発振器の回路動作を説明する図。
【図7】本発明の実施例における圧電トランスの周波数特性を示す図。
【図8】本発明の実施例1の制御を説明するフローチャート。
【図9】本発明の実施例2における電源装置の回路構成図。
【図10】本発明の実施例2の制御を説明するフローチャート。
【図11】本発明の実施例3における電源装置の回路構成図。
【図12】本発明の実施例3の制御を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
図1は電子写真プロセスを用いたタンデム方式のカラー画像形成装置の構成図である。画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを重ねあわせることで多色画像を媒体に形成する画像形成部30を備えている。コントローラ40は画像形成部30を制御する制御部であり、MPU(マイクロコンピュータ)41を備えている。MPU41は、ワークエリアとして機能するRAM42、プログラムやデータなどを記憶するROM43、時間を計時するタイマ44などを備えている。電源装置10は、コントローラ40により制御されて、画像形成部30が備える帯電ローラに帯電バイアスを印加し、現像ローラに現像バイアスを印加し、2次転写ローラ29に転写バイアスを印加する電源装置である。このように、画像形成部30は、電源装置10から電力の供給されて記録媒体に画像を形成する。
【0010】
<電源装置10の基本構成>
図2を用いて電源装置10の基本的な構成について説明する。圧電トランス101は入力された電圧を昇圧として出力する昇圧手段である。圧電トランス101の出力は整流平滑回路14によって整流平滑され、出力端105より負荷である転写ローラなどに供給される。整流平滑回路14はダイオード102、103及び高電圧コンデンサ104によって構成されている。整流平滑された出力電圧は、抵抗106、107によって形成された分圧回路によって分圧され、帰還電圧Vfbとなる。帰還電圧Vfbは、保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に入力される。他方、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)には抵抗110を介してコントローラ40から制御電圧Vcontが入力される。制御電圧Vcontは電源装置10を制御するためのアナログ信号である。オペアンプ109、抵抗110、抵抗111およびコンデンサ112は差動増幅回路11を形成している。VcontとVfbの差に応じた電圧V1が差動増幅回路11の出力ラインに現れる。この電圧は次段の反転増幅回路12に入力される。反転増幅回路12は、オペアンプ120、抵抗121、122、123、124により形成される。抵抗121と122の抵抗値は同一であり、抵抗123と124の抵抗値も同一である。よって、反転増幅回路12は増幅度1のいわゆる反転器として動作する。電圧V1を反転増幅回路12が反転して出力するV2は制御電圧として電圧制御発振器130に入力される。
【0011】
電圧制御発振器130は入力された制御電圧V2に応じた周波数の信号を生成して出力する。具体的には制御電圧V2が上がると出力周波数が高周波に推移し、制御電圧V2が下がると出力周波数が低周波に推移する。つまり、制御電圧V2を可変制御することで、圧電トランス101を駆動するための駆動周波数の掃引が実現される。なお、差動増幅回路11、反転増幅回路12、整流平滑回路14などを含むフィードバック回路が駆動周波数を制御する周波数制御部として機能する。つまり、この周波数制御部が、予め定められた初期周波数で駆動部による圧電トランスの駆動を開始させ、出力電圧が予め定められた目標電圧になるように制御電圧を通じて周波数を掃引する。電圧制御発振器130の出力端子はプルダウン抵抗134の一端とFET131のゲート端子とに接続されている。FET131、インダクタ132およびコンデンサ133はLC並列共振回路13を形成している。圧電トランス101は、LC並列共振回路13を通じて駆動され、高電圧の出力電圧を発生する。LC並列共振回路13は、電圧制御発振器から出力された信号が入力され、圧電トランスを駆動する駆動部の一例である。圧電トランス101は、電圧制御発振器から出力された信号に応じて駆動部により駆動される圧電素子の一例である。
【0012】
図3は圧電トランス101の例示的な周波数特性を示した図である。横軸は駆動周波数を示し、縦軸は出力電圧を示している。圧電トランス101の特性は、一般的に、共振周波数f0において出力電圧が最大となる特性を有している。図2が示すように、圧電トランス101の出力電圧は駆動周波数により制御可能である。電源装置10の起動時(高電圧の出力開始時)は初期周波数fiから圧電トランス101の駆動が開始され、fiから低周波数側に向かって周波数掃引が実行される。周波数掃引によってある駆動周波数fxになったときに、出力電圧が目標電圧Edcに到達すると、駆動周波数の掃引が終了する。以降、圧電トランス101は、駆動周波数fxで安定的に目標電圧の出力を継続する。
【0013】
電源装置10が画像形成装置への高電圧の出力を停止している状態では、制御電圧Vcontも帰還電圧Vfbも0Vである。コントローラ40が高電圧の出力開始を指示すると、制御電圧Vcontが目標電圧Edcに対応した電圧に設定される。抵抗110と抵抗111で決定される差動増幅回路11の増幅度は非常に大きいものに設定されている。よって、高電圧の出力初期において、V1は0Vとなる。帰還電圧Vfbが制御電圧Vcontに近づくにつれ、V1の電圧レベルが上昇する。
【0014】
電圧制御発振器130の入力電圧であるV2は前述したV1をオペアンプ120の非反転入力端子の電圧を基準電圧として反転させた値となる。前述したように抵抗123と抵抗124の抵抗値は同じであるため、基準電圧はVcc/2である。よって、初期においてV2はVccに一致している。そして、帰還電圧Vfbが制御電圧Vcontに近づくにつれ、V2の電圧レベルは下降する。そして、電圧制御発振器130は制御電圧V2がVccであったときに初期周波数fiの信号を出力する。制御電圧V2が下降するにしたがって、電圧制御発振器130の出力周波数がfiよりも低く推移して行く。
【0015】
<電源装置10の改良構成>
上述したように出力周波数がfiから圧電トランス101の駆動を開始すると、出力電圧が目標電圧に到達するまでには相当の時間が必要となる。そこで、目標電圧に対応した駆動周波数fxを求めておき、その近辺から周波数の掃引を開始することで、実施例1では時間短縮を実現する。
【0016】
図4を用いて実施例1に係る電源装置10について説明する。図4に示した構成要素のうち、図2に示した構成要素と共通する要素については同一の符号を付与することで、説明の簡潔化を図る。図2と比較すると、図4では、電圧制御発振器130の制御電圧V2であるオペアンプ120からの出力電圧を、保持回路20を経由してフィードバックし、反転増幅回路12のオペアンプ120の非反転入力端子に印加する点で異なっている。保持回路20は、電源装置からの出力電圧が目標電圧になるときに電圧制御発振器が出力する信号の周波数に相当する制御電圧を示す情報を保持する保持部として機能する。また、保持回路20は、制御電圧V2の電位を保持するサンプルホールド回路を備えている。
【0017】
保持回路20の構成について説明する。保持回路20は、一種の保持部または記憶部として機能するサンプルホールド回路を備えている。保持回路20において、とりわけ、オペアンプ201、206、抵抗202、203、スイッチ204およびコンデンサ205が、一種のサンプルホールド回路を形成している。スイッチ204、298は、例えば、FETにより実現できる。1つ目の特徴的な点は、サンプルされたオペアンプ120の出力電圧(制御電圧V2)を、抵抗202と抵抗203による分圧回路によって分圧し、この分圧値V2’をホールドしている点である。2つ目の特徴的な点は、サンプルホールド回路の出力がオペアンプ120の非反転入力端子に接続されている点である。
【0018】
ここで本回路の動作と効果をよりわかりやすくするために、電圧制御発振器130の一例を図5と図6を用いて説明する。図5では鋸波発生回路を用いた電圧制御発振器を一例として説明するが、本発明はそれに限られるものではない。本発明は、電圧制御発振器130の内部構造によって依存しない発明だからである。
【0019】
電圧制御発振器130の制御電圧V2は抵抗220、221によって分圧され、オペアンプ222の非反転入力端子に入力される。オペアンプ222、トランジスタ223および抵抗224は定電流回路を形成している。オペアンプ222の非反転入力端子の入力電圧に応じた電流iが抵抗224に流れる。
【0020】
一方、トランジスタ223のコレクタと定電圧源Vccとの間にはコンデンサ229が接続されている。コンデンサ229の充放電動作により、コレクタに印加される電圧Vaは、図6が示すような鋸波となる。コンデンサ229の一方の端子は定電圧源Vccに接続されており、他方の端子はトランジスタ223のコレクタに接続されている。よって、電流iが流れることにより、コンデンサ229に充電された電荷が減少し、コンデンサ229の他方の端子に発生した電圧Vaが低下する。電圧Vaは、コンパレータ225の非反転入力端子にも印加されている。
【0021】
電圧Vaが抵抗226、227で決定される閾値電圧Vth以下に低下すると、コンパレータ225の出力が反転し、その結果、トランジスタ228をオンする。それに伴い、コンデンサ229の両端がトランジスタ228によってショートされ、コンデンサ229が再度で電圧源からの電圧Vccによって充電される。つまり、電圧Vaは、再度、Vccに上昇する。電圧VaがVccになると、コンパレータ225の出力が再び反転し、トランジスタ228をオフする。そして、電圧Vaは電流iが流れることでVccより低下して行く。この動作が繰り返され、図6が示したように電圧Vaは鋸波となる。
【0022】
電圧Vaは後段のコンパレータ230の非反転入力端子にも印加されている。コンパレータ230は、電圧Vaと、抵抗231、232によって決定されるVdutyとを比較し、比較結果を出力する。プルアップ抵抗233が接続されたコンパレータ230の出力端子には、出力電圧Voutが発生する。図6が示すように、出力電圧Voutは矩形波となる。さらにコンパレータ230の後段には3ステートバッファ234が接続され、制御電圧Vcontのレベルによりコンパレータ230からの出力電圧を外部に出力するか否かが制御されている。3ステートバッファ234の存在により高電圧の出力停止時には、即座に、電圧制御発振器130からの出力を停止させることが可能となる。この出力電圧Voutは図4に示した2のFET131のゲート端子に入力される。圧電トランス101の駆動周波数となる。
【0023】
図6に示した繰り返し周期Tは電圧Vaの電圧降下の傾きに依存する。この傾きは電流iによって決まる。すなわち、繰り返し周期Tは電圧制御発振器130の制御電圧V2によって下記の式で表すことができる。ここで、C229はコンデンサ229の容量値、R224は抵抗224の抵抗値である。
【0024】
T=((Vcc − Vth) / V2) × C229 × R224・・・・・・(1)
したがって、電圧制御発振器130の出力周波数は制御電圧V2に比例した周波数となる。
【0025】
図4の説明に戻り、実施例1における掃引開始周波数の更新方法と回路原理に関して説明する。ここでは、電源装置10に電力を投入して最初に高電圧を出力する初期の動作と、それ以降の動作について分けて説明することにする。はじめに初期の動作について説明する。
【0026】
(初期の動作)
図4の回路構成からわかるように、オペアンプ206の非反転入力端子に印加される電圧は、スイッチ204とスイッチ208とによって選択されることになる。初期において、コントローラ40は初期化信号をスイッチ208の制御端子に出力するため、スイッチ208がオンする。一方、コントローラ40は高電圧停止信号をスイッチ204の制御端子に出力するため、スイッチ204がオフとなっている。この初期の状態では、抵抗209、210で決定される電圧値がオペアンプ206の非反転入力端子に入力されることとなる。この電圧値は、電源装置10の設計段階で決定された初期周波数fiに対応した電圧値である。オペアンプ206は、オペアンプ201と同様にボルテージフォロアとして機能する。オペアンプ206の出力電圧は、保護抵抗207を介して、オペアンプ120の非反転入力端子に入力される。実施例2において、抵抗209、210の各抵抗値は同じ値である。よって、非反転入力端子の電圧は、Vcc/2となる。
【0027】
実施例1において、抵抗121、122の各抵抗値は其々同じ値が設定されている。よって、反転増幅回路12は、増幅度1のいわゆる反転器として動作する。つまり、反転増幅回路12は、非反転入力端子に印加された電圧Vcc/2を基準電圧として、前段から入力された電圧V1を反転させる。
【0028】
図2を用いて説明したように、電圧制御発振器130の制御電圧V2は掃引開始時においてVccであり、そこから降下する。つまり、高電圧を出力する電源回路としての周波数掃引は、初期周波数から掃引が開始され、制御電圧V2の降下とともに低周波数側に掃引が継続してゆく。
【0029】
(短縮起動)
次に、短縮起動について説明する。実施例1では、前回において出力電圧が目標電圧に達したときの駆動周波数fxよりも若干高い駆動周波数fx’を保持しておき、その駆動周波数fx’から掃引を開始することに特徴がある。初期周波数fiと比較して、駆動周波数fx’は目標電圧を出力するための駆動周波数fxと同一かそれに非常に近いため、掃引時間が大幅に短縮されることを期待できる。
【0030】
目標電圧Edcが電源装置10から出力されており、そのときの圧電トランス101の駆動周波数をfxとする。また、そのときの電圧制御発振器130の制御電圧V2はVdcであったと仮定する。
【0031】
コントローラ40は、高電圧の出力を停止させる前に初期化信号の送出を停止することで、スイッチ208をオフにする。続いて、電源装置10が高電圧の出力を停止する直前に、コントローラ40は、高電圧の出力を停止させるためのパルス信号(高電圧停止信号)をスイッチ204の制御端子に出力する。これにより、所定時間tだけスイッチ204がオンとなる。これにより、コンデンサ205には、抵抗202と抵抗203によってVdcを分圧した電圧が保持されることとなる。ここで、所定時間tとはコンデンサ205を充電するために十分な時間であればよい。高電圧停止信号としてのパルス信号は、コントローラ40が出力してもよいし、高電圧の出力停止時に制御電圧Vcontが立ち下がるときの立ち下げ波形から生成してもよい。
【0032】
コントローラ40が制御電圧Vcontを0Vに低下するため、電圧制御発振器130が出力する圧電トランス101を駆動するための駆動周波数の出力が3ステートバッファ234の機能により停止される。その結果、電源装置10から出力される高電圧の値は低下して行く。
【0033】
実施例1において特徴的な抵抗202と抵抗203による分圧は前回の駆動周波数fxに対して、どの程度高い周波数から駆動を開始するかを決定するための重要な要素である。ここで、理解を簡単にするため、前回の駆動周波数fxと同じ周波数から駆動を開始する構成に関して説明する。
【0034】
抵抗202と抵抗203の抵抗値は同じである。保持回路20のサンプルホールド回路によって保持される電圧値はVdc/2となる、つまり、オペアンプ120の入力端子は共にVdc/2となっている。その状態で次に電源装置10を起動すると、オペアンプ120を中心とした反転器の反転基準電圧がVdc/2となっている。よって、反転器の前段の電圧V1が0Vとなっている起動開始時にも、オペアンプ120の出力電圧(電圧制御発振器130の制御電圧V2)はVdcとなって、電源装置10は起動できる。それは、圧電トランス101を駆動するための駆動周波数の掃引が、初期周波数fiからではなく、前回の駆動周波数fxから開始されることを意味する。
【0035】
さて、実際に画像形成装置100が使用する各種のバイアスに対する負荷は、転写バイアスの負荷に限らず、画像形成中に常に変動する。これは転写ローラや帯電ローラ等の周方向における抵抗値のムラなどが原因である。一方、電源装置10は一定の周波数で圧電トランス101を駆動していたとしても、出力端105に接続される負荷の抵抗により出力電圧が変化する。出力電圧を一定に維持するためには、負荷変動に応じて常に周波数を追随変動させる回路構成が必要となる。
【0036】
図4に示した周波数掃引方式の電源回路は駆動開始した周波数よりも低周波数側にある領域しか制御領域とすることができない。そのため、駆動周波数fxで駆動開始したときにはfxより低周波数領域しか駆動周波数を制御できないこととなり、負荷変動に追随して高周波数領域へ推移することもできない。そこで、前回の駆動周波数fxから掃引を開始するのではなく、前回の駆動周波数fxよりも所定量高い周波数から掃引を開始することによって、負荷変動に追随するためのマージンを確保することにする。なお、このようなマージンは、負荷変動が十分に小さい電源装置にとっては不要であろう。なお、前回の駆動周波数fxより所定量高い周波数を決定する構成が、抵抗202と抵抗203による分圧比である。前回の駆動周波数fxよりも高い周波数を掃引開始周波数とするための回路は、抵抗202の抵抗値より抵抗203の抵抗値を大きくすることにより実現可能となる。この分圧比によりサンプルホールドされる電圧は、(Vdc/2) + αとなる。この電圧がオペアンプ120を中心とした反転器の反転基準電圧となったときに初期の電圧V2は、(2)式により表現できる。
【0037】
V2 = Vdc + 2α ・・・(2)
つまり、+2αに相当する周波数分だけ高い周波数から掃引を開始することとなる。なお、掃引開始周波数fi’の値は、(2)式を(1)式に代入することで算出可能である。掃引開始周波数は、高電圧の出力を再開するために掃引を再開する際に使用される周波数であるため、掃引再開周波数と呼んでもよい。
【0038】
図7が示すように、初期において初期周波数fiから掃引を開始する。しかし、初期以降においては、コントローラ40がスイッチ204をオンに切り替えることで、オペアンプ120の基準電圧をサンプルホールド回路により保持されている、掃引開始周波数fi’に対応した電圧に設定する。これにより、掃引開始周波数fi’から掃引が開始される。図7からも明らかなように、掃引開始周波数fi’は、初期周波数fiよりも前回の駆動周波数fxに近いため、電源装置10の出力電圧が目標電圧に達するまでの時間を短縮することができる。また、マージンαを見込むことで、負荷変動にも対処可能となる。なお、コントローラ40(MPU41)やスイッチ204は、初期周波数に代えて、保持部に保持されている情報に対応した掃引開始周波数を周波数制御部に設定する設定部として機能している。
【0039】
実施例1で重要な点は「抵抗122と抵抗121の抵抗値比」と「抵抗202と抵抗203の抵抗値比」の関係である。抵抗と抵抗値の関係をわかりやすくするために、抵抗xの抵抗値をRxと表現する。xは参照番号を示している。
【0040】
まず、抵抗122と抵抗121との抵抗値比はR122/R121であるが、これは反転増幅回路12の増幅度を決定している。実施例1ではR122/R121=1と仮定している。増幅度は、反転増幅回路12に入力される電圧であるV1と反転増幅回路12から出力される制御電圧V2との比にしたがって決定することができる。よって、増幅度は1に限られるものではない。そして、実施例1の重要な要素である抵抗202と抵抗203との抵抗値比R202/R203であるが、これは、次の反転基準電圧を決定する値である。
【0041】
R122/R121>=R202/R203 ・・・・(3)
常に(3)式が成り立つように各抵抗値の値を設定することにより、前回の駆動周波数fxと同じかまたはより高い周波数からの掃引を開始することができる。
【0042】
実施例1における電源装置10を画像形成装置100に適用したときの2次転写バイアスの制御について、図8のフローチャートを用いて説明する。ここでは、感光体ドラムまたは中間転写体などの像担持体に連続して複数のトナー画像を形成する際に、あるトナー画像を形成する領域と次のトナー画像を形成する領域との間に生じる非画像領域(いわゆる紙間)に検知パターンを形成するものとする。検知パターンは、色ズレを検知するための色ズレ検知パターンや、転写バイアスを調整するためのトナー画像の濃度を検知するための濃度検知パターンがある。この紙間において、2次転写の正バイアスをオフからオンに切り替えるものと仮定する。なお、本フローチャートにおいて、紙間での正バイアス以外の制御の詳細は公知であるため割愛する。また、本フローチャートに係る制御処理は、予めROM43に格納されたプログラムにしたがってMPU41が実行するものとする。ここでは、印刷ジョブが開始された以降の制御処理について説明する。
【0043】
S801で、MPU41は、初期化信号をスイッチ208の制御端子に出力することで、スイッチ208をオフからオンに切り替える。これにより、オペアンプ120の非反転入力端子に入力される電圧を初期化できる。スイッチ208などは、保持部に保持されている情報に対応した周波数とは異なる初期周波数で駆動部による圧電トランスの駆動を開始させるために、周波数制御部に設定される周波数を初期化する初期化部として機能する。MPU41は、高電圧停止信号をオフにしておく。S801の処理は印刷ジョブの開始の前、例えば、画像形成装置100のメイン電源をオンにした直後に実行してもよい。ちなみに、スイッチ208がオンで、高電圧停止信号がオフの状態は、いわゆるスタンバイ状態である。
【0044】
S802で、MPU41は、転写バイアスの供給を担当する電源装置10を起動するため、出力電圧を目標電圧にするための電圧(目標相当電圧)を制御電圧Vcontに設定して出力する。S803で、電源装置10は初期周波数fiから圧電トランス101の駆動周波数の掃引を開始する。最終的に、電源装置10からの出力電圧が目標電圧Edcに立ち上がる。なお、S803は、MPU41の動作ではなく、電源装置10の動作であるが、実施例1を理解しやすくするため、本フローチャートに記載している。ただし、MPU41の処理でないことを明示するために、破線にて示している。
【0045】
S804で、MPU41は、記録紙の後端が2次転写のためのニップを通過するまで待機する。記録紙の後端がニップを通過したかどうかは、不図示の紙検知センサの出力結果からMPU41が判断できる。記録紙の後端がニップを通過したことを確認すると、S805に進む。
【0046】
S805で、MPU41は、ジョブが終了したかどうかを判定する。MPU41は、ジョブのデータから何枚の記録紙に対して画像を形成すべきかを把握している。さらに、MPU41は、何枚の記録紙に対してすでに画像を形成したかをカウントしている。それゆえ、MPU41は、このカウント値からジョブが終了したかどうかを判定できる。ジョブが終了したのであればS812に進むが、ジョブが終了していなければS806に進む。
【0047】
S806で、MPU41は、保持回路20のサンプルホールド回路により駆動周波数fxに対応した電圧をホールドするために、初期化信号をオフに切り替える。さらに、S807で、MPU41は、高電圧停止信号を1パルス分だけ出力する。これにより、サンプルホールド回路により駆動周波数fxに対応した電圧がホールドされる。S808で、MPU41は、電源装置10からの高電圧の出力を停止させるために、制御電圧Vcontの値を0Vに設定する。
【0048】
S809で、MPU41は、上述した紙間シーケンスを実行する。さらに、S810で、MPU41は、再度高電圧の出力を電源装置10に開始させるために、制御電圧Vcontを目標相当電圧に設定する。S811で、電源装置10は、保持回路20によって記憶ないしは保持されている電圧に対応した掃引開始周波数fi’から駆動周波数の掃引を開始する。その結果、出力電圧は再び目標電圧Edcへと立ち上がる。なお、S811もMPU41の動作ではなく、電源装置10の動作である。その後、S804に戻る。
【0049】
ジョブが終了するまで、S804ないしS811までの各処理が継続的に実行される。ジョブの最後の一枚について画像形成が終了すると、S812に進む。S812で、MPU41は、制御電圧Vcontを0Vに切り替えることで、電源装置10からの高電圧の出力を停止させる。
【0050】
このように実施例1によれば、圧電トランス101を駆動する周波数を制御している電圧制御発振器130の制御電圧の分圧値をサンプルホールド回路で保持しておく。さらに、実施例1では、次に圧電トランス101の駆動を再開するときには、その保持されている電圧を基準として、掃引開始周波数に対応した制御電圧を生成する。これにより、前回の駆動周波数fxの近辺から圧電トランス101の駆動を開始することが可能となり、出力電圧が目標電圧に到達するまで時間が短縮される。前回の駆動周波数fxからではなく、それより高周波数側の近辺から低周波数側の近辺に向かって掃引を開始することで、負荷変動に対しても安定して所望の電圧出力を維持する為の周波数追随を可能とする。
【0051】
[実施例2]
図9を用いて実施例2について説明する。実施例2が実施例1と異なる点は、掃引開始周波数に対応した電圧の保持手段としてA/Dコンバータ301とD/Aコンバータ302を用いている点である。A/Dコンバータ301は、電圧制御発振器が出力する信号をアナログ値からデジタル値に変換するアナログ−デジタル変換器として機能する。D/Aコンバータ302は、デジタル値をアナログ値に変換するデジタル−アナログ変換器として機能し、出力電圧が目標電圧になっているときのデジタル値をラッチして保持する。
【0052】
実施例2の構成は、実施例1の構成より高価な構成となるが、保持手段としては電力の供給が切断されるまでオペアンプ120の非反転入力端子の電圧を維持することが可能である。よって、複数の印刷ジョブにまたがって、掃引開始周波数を保持できる利点がある。なお、実施例1と共通する事項についてはその説明を省略する。
【0053】
図9によれば、A/Dコンバータ301とD/Aコンバータ302に加えて、電圧制御発振器130及びその制御回路類、制御電圧Vcontを出力するためのD/Aコンバータ304が一体的にIC300としてIC化されている。コントローラ40に搭載されたMPU41が通信信号を送信して各種のデータやコマンドをレジスタ303に書き込む。これにより、MPU41が電源装置10を制御する。つまり、レジスタ303には、D/Aコンバータ304へのデジタルデータや、D/Aコンバータ302に対する初期化信号としてのビットと高電圧停止信号としてのビットが格納される。これらのデジタルデータやビットは、MPU41により書き換えが可能となっている。
【0054】
実施例1と同様に、Vcc/2の電圧が出力されるよう、D/Aコンバータ302へ初期化信号が入力される。例えば、D/Aコンバータ302自体が初期化信号(単信号)によりVcc/2を出力するように構成される。あるいは、レジスタ303からの初期化信号がデジタルデータであり、Vcc/2の電圧が出力されるようなデジタルデータをレジスタ303からD/Aコンバータ302へ送ってもよい。実施例2では前者の構成を採用している。また、D/Aコンバータ302はA/Dコンバータ301から出力されるデジタルデータをレジスタ303からの高電圧停止信号にしたがってラッチして出力する。具体的には、高電圧停止信号がLowからHighに変化したときに、D/Aコンバータ302がラッチ動作を実行する。実施例2の構成は実施例1の構成に比べ複雑となるが、IC化することにより、部品単価としては比較的安価で、基板上の占有面積を最小限にすることができる。
【0055】
実施例2における電源装置10を画像形成装置100に適用したときの2次転写バイアスの制御について、図10のフローチャートを用いて説明する。S1001で、MPU41は、D/Aコンバータ302を初期化することを意味するビットをレジスタ303に書き込む。D/Aコンバータ302は、初期周波数fiに相当する電圧を出力する。なお、S1001は印刷ジョブ開始の前(例えば、画像形成装置100の電源をオンにした直後)に実行してもよい。このように、MPU41などは、上述した初期化部として機能する。
【0056】
S1002で、MPU41は、電源装置10から高電圧の出力を開始させるため、D/Aコンバータ304に設定されることになる目標電圧相当のデジタルデータをレジスタ303に書き込む。D/Aコンバータ304は、レジスタ303に書き込まれたデジタルデータをアナログデータに変換することで、制御電圧Vcontを出力する。S1003で、電源装置10は、初期周波数fiから駆動周波数の掃引を開始し、最終的に出力電圧が目標電圧Edcに至る。
【0057】
S1004で、MPU41は、記録紙の後端が2次転写のためのニップを通過するまで待機する。記録紙の後端がニップを通過したことを確認すると、S1005に進む。S1005で、MPU41は、ジョブが終了したかどうかを判定する。ジョブが終了したのであればS1011に進むが、ジョブが終了していなければS1006に進む。
【0058】
S1006で、MPU41は、高圧停止信号をオンからオフに切り替えるためのビットをレジスタ303に書き込む。このビットが書き込まれると、D/Aコンバータ302はA/Dコンバータ301から出力されたデータをラッチする。ここで、ラッチされるデータは、掃印再開周波数fi’に相当する電圧の値を示している。
【0059】
S1007で、MPU41は、制御電圧Vcontを0Vに設定するためのデジタルデータをレジスタ303に書き込む。これにより、D/Aコンバータ304は、制御電圧Vcontとして0Vを出力するため、電源装置10からの高電圧の出力が停止する。
【0060】
S1008で、MPU41は、上述した紙間シーケンスを実行する。さらに、S1009で、MPU41は、再度高電圧の出力を電源装置10に開始させるために、制御電圧Vcontを目標相当電圧に設定する。S1010で、電源装置10は、D/Aコンバータ302にラッチされている前回の駆動周波数fxにマージンを加えた掃引開始周波数fi’から周波数の掃引を再開する。その後、S1004に戻る。ジョブが終了すると、S1011に進む。S1011で、MPU41は、制御電圧Vcontを0Vに設定するためのデジタルデータをレジスタ303に書き込む。これにより、D/Aコンバータ304は、制御電圧Vcontとして0Vを出力するため、電源装置10からの高電圧の出力が停止する。
【0061】
実施例2では、圧電トランス101を駆動する周波数を制御している電圧制御発振器130の制御電圧V2の分圧値をA/Dコンバータ301及びD/Aコンバータ302を用いて保持し、保持している値に対応した掃引開始周波数fi’から掃引を開始する。よって、実施例2も実施例1と同様に効果を奏することができる。さらに、実施例2では、画像形成装置100のメイン電源がオンになってからオフにされるまで、掃引開始周波数fi’に相当する電圧の値を保持できる。そのため、ある印刷ジョブが終了して次の印刷ジョブを実行するときにも、初期周波数fiではなく掃引開始周波数fi’から掃引を開始できる。
【0062】
[実施例3]
図11を用いて実施例3について説明する。実施例3が実施例1、2と異なる点は、掃引開始周波数に対応した電圧の保持手段としてEEPROM401を用いている点である。図11が示すように、電圧制御発振器130の制御電圧V2を抵抗202、203によって分圧した分圧値はMPU41が備えるA/Dポートに入力される。よって、MPU41は、A/Dコンバータ402によってアナログの分圧値をデジタルの分圧値に変換することで、その値読み取ることが可能である。MPU41は読み取った値をメモリ(例:EEPROM401)に保持しておき、オペアンプ120の非反転入力端子に接続されたD/AポートにD/Aコンバータ403を介して出力する。なお、MPU41は、D/Aコンバータ404を介して制御電圧Vcontを出力することができる。実施例3に示した構成は、実施例1及び実施例2の各構成と比較して高価な構成ではあるが、画像形成装置100のメイン電源をオフにしたとしても掃引開始周波数fi’を引き継げる利点がある。
【0063】
さらに、実施例3では、MPU41が分圧値をモニタすることが可能なため、実際に使用されている周波数範囲をモニタしてEEPROMに格納することができる。したがって、実装されている圧電トランス101の個体ごとの共振周波数に応じた適切な初期周波数fiを決定し、初期周波数fiをも可変にすることができる。
【0064】
図12を用いて、実装されている圧電トランス101に応じた適切な初期周波数の設定方法につい説明する。S1201で、MPU41は、2次転写ローラを回転させるモータの駆動回路(不図示)に対して回転開始を指示する。S1202で、MPU41は、D/Aコンバータ404から目標電圧相当の値に設定された制御電圧Vcontを出力する。これにより、電源装置10は、高電圧の出力を開始する。ただし、目標電圧相当の値は、画像形成装置100が使用する電圧のうち最も低い電圧の値とする。S1203で、圧電トランス101は駆動周波数の範囲のうちで最も高い駆動周波数から駆動を開始されることとなる。
【0065】
S1204で、MPU41は、A/Dコンバータ402を通じて、電圧制御発振器130への制御電圧V2の分圧値をモニタ(測定、計測または監視)する。S1205で、MPU41、モニタした値をEEPROM401に記憶する。S1206で、D/Aコンバータ404から0Vとの制御電圧Vcontを出力することで、電源装置10からの高電圧の出力を停止する。S1207で、MPU41は、2次転写ローラを回転させるモータの駆動回路(不図示)に対して回転停止を指示する。S1208で、MPU41は、EEPROM401から読み出した値をD/Aコンバータ403に出力する。これにより、EEPROM401から読み出した値に対応した電圧がオペアンプ120に印加されることになる。
【0066】
これにより、電源装置10が次に高電圧を出力する際には、圧電トランス101の初期周波数を、その電源装置における適切な初期周波数に変更することができる。変更後の初期周波数は、共振周波数の固体ばらつきと回路定数のばらつきが反映されている。なお、MPU41は、設計段階で決定された初期周波数をEEPROM401から読み出して、D/Aコンバータ403に出力してもよい。これにより、MPU41は、上述した初期化部として機能する。
【0067】
なお、実施例3の構成は、実施例2と同様に動作することはいうまでもない。実施例2では、D/Aコンバータ302によって掃引開始周波数に対応した分圧値を保持していたが、実施例3ではEEPROM401に保持することができる。A/Dコンバータ402は、電圧制御発振器が出力する信号をアナログ値からデジタル値に変換するアナログ−デジタル変換器として機能する。また、EEPROM401は、出力電圧が目標電圧になっているときのデジタル値を記憶するメモリとして機能している。さらに、D/Aコンバータ403は、メモリに記憶されているデジタル値をアナログ値に変換するデジタル−アナログ変換器として機能している。
【0068】
なお、ここでは、メモリの一例としてEEPROM401を用いたが、フラッシュメモリなど他の不揮発性メモリが採用されてもよい。なお、画像形成装置100のメイン電源をオフにしたときに掃引開始周波数fi’を引き継ぐ必要がなければ、EEPROM401をDRAMなどの揮発性のメモリに代えてもよい。
【0069】
上述した実施では、電子写真方式の画像形成装置に適用される電源装置に本発明を適用した実施例であったため、電源装置10の出力電圧を高電圧と呼んできた。もちろん、電子写真方式の画像形成装置以外の電子機器の電源装置に本発明を適用してもよい。その場合、電源装置10の出力電圧を高電圧でなくともよい。
【0070】
上述した実施例では、周波数掃引方式の電源回路は駆動開始した周波数よりも低周波数側にある領域しか制御領域とすることができない。しかし、本発明は、駆動開始した周波数よりも高周波数側にある領域しか制御領域とすることができない電源回路にも適用できる。さらに、本発明は、周波数を高周波数側でも低周波数側にでも掃引可能な電源回路に適用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置であって、
入力された制御電圧に応じた周波数の信号を生成する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力された信号が入力される駆動部と、
前記電圧制御発振器から出力された信号に応じて前記駆動部により駆動される圧電トランスと、
予め定められた初期周波数で前記駆動部による前記圧電トランスの駆動を開始させ、前記電源装置からの出力電圧が予め定められた目標電圧になるように前記制御電圧を通じて前記周波数を掃引する周波数制御部と、
前記出力電圧が前記目標電圧になるときに前記電圧制御発振器が出力する信号の周波数に相当する前記制御電圧を示す情報を保持する保持部と、
前記初期周波数に代えて、前記保持部に保持されている情報に対応した掃引開始周波数を前記周波数制御部に設定する設定部と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記制御電圧の電位を保持するサンプルホールド回路であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記保持部は、
前記電圧制御発振器が出力する信号をアナログ値からデジタル値に変換するアナログ−デジタル変換器と、
前記デジタル値をアナログ値に変換するデジタル−アナログ変換器と
を備え、
前記デジタル−アナログ変換器は、前記出力電圧が前記目標電圧になっているときの前記デジタル値をラッチして保持することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記保持部は、
前記電圧制御発振器が出力する信号をアナログ値からデジタル値に変換するアナログ−デジタル変換器と、
前記出力電圧が前記目標電圧になっているときの前記デジタル値を記憶するメモリと、
前記メモリに記憶されている前記デジタル値をアナログ値に変換するデジタル−アナログ変換器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記メモリは、不揮発性のメモリであることを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記保持部に保持されている情報に対応した周波数とは異なる前記初期周波数で前記駆動部による前記圧電トランスの駆動を開始させるために、前記周波数制御部に設定される周波数を初期化する初期化部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
画像形成装置であって、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電源装置と、
前記電源装置から電力が供給されることにより記録媒体に画像を形成する画像形成部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−105441(P2012−105441A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251275(P2010−251275)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】