説明

電源装置

【課題】省電力で効率のよい電源装置を提供する事である。
【解決手段】直流電源1と、直流電源1から入力される電圧を変圧して出力する変圧回路2と、変圧回路2により充電されるとともに外部負荷5へ変圧後の電圧を供給するキャパシタ3とを備えた電源装置において、キャパシタ3の電圧が外部負荷5の動作電圧範囲内の所定電圧未満であると変圧回路2を駆動してキャパシタ3を充電し、キャパシタ3の電圧が外部負荷5の動作電圧範囲内で所定電圧を超える目標電圧にまで達するとキャパシタ3への充電を停止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電源装置としては、たとえば、直流電源と、直流電源から入力される電圧を昇圧あるいは降圧するチョッパ回路と、チョッパ回路によって充電されるとともに負荷に変圧後の電圧を供給するキャパシタとを備えて構成されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この電源装置にあっては、昇圧チョッパ回路を利用する場合には、スイッチング素子の開閉によって回路中のコイルにサージ電圧を生じさせて昇圧してキャパシタを充電するようになっており、他方の降圧チョッパ回路を利用する場合には、スイッチング素子の開閉によって回路中のコイルへ印加される電圧を降圧してキャパシタを充電するようになっている。
【0004】
そして、従来の電源装置にあっては、スイッチング素子の開閉を行うに際し、コンパレータでキャパシタの電圧と基準電圧を比較してスイッチング素子へ開閉動作を制御する信号を発生しスイッチング素子を駆動するようにしており、これによって、キャパシタへ出力する電圧を基準電圧にコントロールしている。そのため、従来の電源装置にあっては、昇圧チョッパ回路を利用するか降圧チョッパ回路を利用するかによらず、常時スイッチング素子を開閉してキャパシタの電圧を基準電圧に保つようにしている。
【特許文献1】特開2005−261124号公報(背景技術欄、図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述従来の電源装置では、キャパシタは出力電圧を平滑化するためだけに設けられ、これを充電するチョッパ回路は常時駆動してスイッチングを繰り返しているので、外部負荷で電力消費しない待機中にもチョッパ回路で電力が消費されてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、省電力で効率のよい電源装置を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、直流電源と、直流電源から入力される電圧を変圧して出力する変圧回路と、変圧回路により充電されるとともに外部負荷へ変圧後の電圧を供給するキャパシタとを備えた電源装置において、キャパシタの電圧が外部負荷の動作電圧範囲内の所定電圧未満であると変圧回路を駆動してキャパシタを充電し、キャパシタの電圧が外部負荷の動作電圧範囲内で所定電圧を超える目標電圧にまで達するとキャパシタへの充電を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電源装置によれば、キャパシタの電圧が外部負荷の動作電圧範囲にあって充電開始となる所定電圧以上である場合、変圧回路が駆動されずに電力を消費しない状態となるため、省電力となる。
【0009】
つまり、従来の電源装置では、常時チョッパ回路が駆動しておりスイッチング素子の開閉が繰り返されて、このスイッチング素子の開閉に必要な電力に加え、チョッパ回路自体で損失する電力が常時消費されていたが、本発明の電源装置では変圧回路がキャパシタの充電が必要なときのみに駆動されるので、変圧回路で無駄な電力を消費することがないため、省電力となるのである。
【0010】
さらに、本発明の電源装置では変圧回路がキャパシタの充電が必要なときのみに駆動されるので、外部負荷が電力を消費しない待機時や、外部負荷が誘導性負荷であってキャパシタへの回生充電が期待できる時には、変圧回路の駆動を停止して電力消費しないから直流電源の限りある電力を無駄にすることが無く、電源装置が効率的となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における電源装置の構成図である。図2は、一実施の形態の電源装置におけるキャパシタの充電タイミングを説明する図である。
【0012】
図1に示すように、一実施の形態における電源装置は、直流電源1と、直流電源1に接続される変圧回路2と、変圧回路2により充電されるキャパシタ3と、変圧回路2を制御する制御部4とを備えて構成され、キャパシタ3は外部負荷5へ変圧後の電圧を供給できるように外部負荷5に並列されている。
【0013】
以下、詳しく説明すると、直流電源1とキャパシタ3とは、給電ライン10で接続されており、変圧回路2は、給電ライン10の途中に介装されて、直流電源1から入力される電圧を変圧してキャパシタ3へ出力するようになっている。
【0014】
変圧回路2は、具体的には、DC−DCコンバータとされ、たとえば、チョッパ型スイッチングコンバータや、直流電圧をスイッチングによって交流電圧に変換しトランスを介して変圧して整流して再度直流電圧に変換するもの等、種々の方式を採用したものが利用でき、直流電源1から入力される電圧を変圧して、変圧後の電圧をキャパシタ3に出力してキャパシタ3を充電できるようになっている。すなわち、変圧回路2は、図示しないスイッチング素子を備えて、スイッチング素子の開閉動作を行う駆動時に直流電源1から入力される電圧を変圧してキャパシタ3を充電するようになっている。
【0015】
キャパシタ3は、外部負荷5の動作を確保できるような耐電圧および容量に設定されるとともに繰り返しの充放電に対して充分に耐性を備えているものであればよいが、具体的にはたとえば、電気二重層コンデンサを複数直列に接続して構成するとよい。なお、キャパシタ3が複数のコンデンサを直列接続して構成される場合には、各コンデンサの分担電圧を均一にするために並列モニタを設けておくとよい。
【0016】
制御部4は、キャパシタ3の電圧を検知して、キャパシタ3の電圧が外部負荷5の動作電圧範囲内の所定電圧未満であると変圧回路2を駆動してキャパシタ3を充電し、その後、充電を継続してキャパシタ3の電圧が外部負荷5の動作電圧範囲内であって所定電圧を超える目標電圧にまで達すると変圧回路2の駆動を停止してキャパシタ3への充電を停止するようになっている。
【0017】
そして、具体的にはたとえば、外部負荷5の動作電圧範囲が36Vを中心として±6Vの範囲、すなわち、30Vから42Vまでの範囲である場合、変圧回路2を駆動するトリガとなる所定電圧は動作電圧範囲の下限である30Vより高い電圧である33V程度に設定され、他方、目標電圧は外部負荷5の動作電圧範囲の上限電圧未満である40Vに設定されている。なお、外部負荷5の動作範囲電圧とは、外部負荷5が正常に動作する電圧の範囲であり、供給電圧が動作範囲電圧内にあると外部負荷5は問題なく機能を発揮することができるのである。
【0018】
そして、制御部4のハードウェア構成としては、具体的には図示しないが、たとえば、キャパシタ3の電圧を検出する電圧検出器と、電圧検出器が出力するアナログの電圧信号をデジタル信号に変換する変換器と、CPU(Central Prossesing Unit)と、CPUが実行するオペレーティングシステムおよびアプリケーション等が格納されるROM(Read Only Memory)と、CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)とを備えたマイクロコンピュータシステムとして構成されればよく、変圧回路2のスイッチング素子へ開閉の動作指示を行うための制御信号を出力する事ができるようになっている。なお、制御部4は、ハードウェア構成としては、上記したマイクロコンピュータシステム以外にも、コンパレータ等を利用した回路を用いて上記した動作を行うよう構成されてもよい。
【0019】
そして、このように構成された制御部4によって変圧回路2の駆動が制御され、この実施の形態の場合、変圧回路2が駆動されてスイッチング動作により変圧するのは、図2に示すように、キャパシタ3の電圧が所定電圧33V未満の場合であり、その後、キャパシタ3の電圧が目標電圧である40Vまで上昇すると変圧回路2の動作は停止される。
【0020】
このように変圧回路2が動作する事により、この電源装置では、キャパシタ3の電圧が外部負荷5の動作電圧範囲にあって充電開始となる所定電圧以上である場合、変圧回路2が駆動されずに電力を消費しない状態となり、このため、電源装置は飛躍的に省電力となる。
【0021】
つまり、従来の電源装置では、常時チョッパ回路が駆動しておりスイッチング素子の開閉が繰り返されて、このスイッチング素子の開閉に必要な電力に加え、チョッパ回路自体で損失する電力が常時消費されていたが、本発明の電源装置では変圧回路2がキャパシタ3の充電が必要なときのみに駆動されるので、銅損も抑制され変圧回路2で無駄な電力を消費することがないため、省電力となるのである。
【0022】
また、本発明の電源装置では変圧回路2がキャパシタ3の充電が必要なときのみに駆動されるので、外部負荷5が電力を消費しない待機時や、外部負荷5が誘導性負荷であってキャパシタ3への回生充電が期待できる時には、変圧回路2の駆動を停止して電力消費しないから直流電源1の限りある電力を無駄にすることが無く、電源装置が効率的となる。
【0023】
さらに、キャパシタ3への充電を停止するトリガとなる目標電圧は、充電開始のトリガとなる所定電圧を超える電圧であって外部負荷5の動作電圧範囲内であるので、外部負荷5に過電圧が入力されてしまう不具合が無い。
【0024】
そしてさらに、この実施の形態のように、上記目標電圧が外部負荷5の動作電圧範囲の上限電圧未満に設定されれば、外部負荷5に過電圧が入力されてしまう不具合も無いことに加えて、キャパシタ3が目標電圧まで充電されても動作範囲電圧の上限まで余裕があるので、特に外部負荷5が誘導性負荷であってキャパシタ3が回生充電されたりサージによって充電されたりするような状況であっても、キャパシタ3の電圧を動作範囲電圧内に留めておくことができ、外部負荷5への過電圧の入力を防止することができる。
【0025】
なお、キャパシタ3の充電頻度を少なくすることを考えると、目標電圧は外部負荷5の動作範囲電圧内であってできる限り大きな電圧に設定されるほうがよいが、外部負荷5への過電圧入力の阻止に対してトレードオフの関係になるため、特に外部負荷5にてキャパシタ3が充電されるようなケースでは、目標電圧は外部負荷5への過電圧入力を阻止できる範囲内で可能な限り大きな電圧に設定されるとよい。
【0026】
また、この実施の形態の場合、変圧回路2をキャパシタ3を充電するために駆動させるトリガとなる所定電圧が外部負荷5の動作電圧範囲の下限より高い電圧とされているので、キャパシタ3が充電されないままに外部負荷5の動作を補償できなくなる低い電圧となるまで放電してしまうような事態の発生が阻止され、外部負荷5を安定的に動作させる事ができる。
【0027】
そして、本発明の電源装置は、省電力であってキャパシタ3を外部負荷5の回生によって充電する際には変圧回路2の駆動を停止できるので、車両の操舵輪の電動パワーアシストや電磁サスペンション、車両走行用駆動源の電源装置に最適となる。
【0028】
具体的には、電源装置は、直流電源1が車両のバッテリであって、外部負荷5が常に電力を必要とせず間欠駆動され短時間に大電流を要求するモータ等である場合に特に適するが、これ以外にも、たとえば、リフト昇降用駆動源、シャッター駆動源、門扉開閉用駆動源等として使用される際の電源としても使用可能であり、本発明の効果を失うことがない。
【0029】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施の形態における電源装置の構成図である。
【図2】一実施の形態の電源装置におけるキャパシタの充電タイミングを説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1 直流電源
2 変圧回路
3 キャパシタ
4 制御部
5 外部負荷
10 給電ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、直流電源から入力される電圧を変圧して出力する変圧回路と、変圧回路により充電されるとともに外部負荷へ変圧後の電圧を供給するキャパシタとを備えた電源装置において、キャパシタの電圧が外部負荷の動作電圧範囲内の所定電圧未満であると変圧回路を駆動してキャパシタを充電し、キャパシタの電圧が外部負荷の動作電圧範囲内で所定電圧を超える目標電圧にまで達するとキャパシタへの充電を停止することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
所定電圧は、外部負荷の動作電圧範囲の下限より高い電圧に設定されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
目標電圧は、外部負荷の動作電圧範囲の上限電圧未満に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−312289(P2008−312289A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155467(P2007−155467)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】