電源装置
【課題】 複数の部品を効率よくふり分けて空気冷却することができる電源装置を提供する。
【解決手段】 電源装置Aにおいて、風路には、互いに隔てられた第1および第2の風路9,9’が含まれるとともに、ファンには、第1および第2の風路9,9’のそれぞれに風を送り込む第1および第2のファン8,8’が含まれる。電子部品30は、第2の風路9’に沿って配置されており、電気部品31は、第1の風路9に沿って配置されている。第1および第2の風路9,9’は、水平長手状を呈して互いに平行をなすとともに、仕切板7Cの水平部分を隔壁として上下に隔てられている。
【解決手段】 電源装置Aにおいて、風路には、互いに隔てられた第1および第2の風路9,9’が含まれるとともに、ファンには、第1および第2の風路9,9’のそれぞれに風を送り込む第1および第2のファン8,8’が含まれる。電子部品30は、第2の風路9’に沿って配置されており、電気部品31は、第1の風路9に沿って配置されている。第1および第2の風路9,9’は、水平長手状を呈して互いに平行をなすとともに、仕切板7Cの水平部分を隔壁として上下に隔てられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば溶接用の電源装置に関し、特に空気冷却のためのファンを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶接用の電源装置には、複数の電子部品と、長手状に延びる風路と、この風路に風を送り込むファンとを備えたものがある(たとえば、特許文献1を参照)。同文献に開示された電源装置では、1つの風路の側壁に沿って複数の電子部品が配置され、その風路の長手方向一端部にファンが設けられている。ファンにより風路内に送り込まれた風は、電子部品から熱を奪いながら風路の長手方向他端部の出口より吹き出る。特に発熱しやすい電子部品は、効率よく空気冷却されるようにファンの近傍に配置されている。このような電源装置には、半導体素子のようなチップ型の電子部品とは別の発熱しやすい部品、たとえばトランスやリアクトルといった電気部品が内蔵されている。一般的にこれらの電子部品および電気部品は、発熱の程度や傾向といった発熱特性が大きく異なる。
【0003】
しかしながら、上記従来の電源装置では、風路が1つしかないため、異なる発熱特性の部品が多くなるほどそれらを風路の長手方向に沿って適切に配置しなければならず、冷却対象となる部品の配置が風の温度や流れにも大きく影響することから、複数の部品を効率よく空気冷却することができないという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−229644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、複数の部品を効率よくふり分けて空気冷却することができる電源装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明により提供される電源装置は、空洞状の風路と、上記風路に風を送り込むファンと、上記風路に沿って配置される複数の部品と、を備え、上記風路を通る風によって上記複数の部品が冷却されるように構成された電源装置であって、上記風路には、互いに隔てられた第1および第2の風路が含まれるとともに、上記ファンには、上記第1および第2の風路のそれぞれに風を送り込む第1および第2のファンが含まれることを特徴としている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、少なくとも一部が水平に配置される仕切板を備え、上記第1および第2の風路は、水平長手状を呈して互いに平行をなすとともに、上記仕切板の水平部分を隔壁として上下に隔てられている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2のファンは、互いに風量が異なり、これらのうち風量大となるファンは、上記第1および第2の風路のうち上側の風路に対応して配置されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の風路のそれぞれは、上記隔壁に対して垂直に配置されて互いに対向する一対の垂直壁と、上記隔壁に対向する上部壁あるいは底部壁とによって囲われているとともに、長手方向両端部が風の出口になっており、上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路の長手方向中間部に位置し、上記一対の垂直壁の一方の内面から風路の長手方向に対して交差する方向に風を送り込むように配置されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、装置内部を保護する筐体カバーを備え、上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路のそれぞれに隣接し、かつ上記筐体カバーによって囲まれた空間に配置されるとともに、上記筐体カバーは、上記第1および第2のファンに対向するとともに外部の空気を上記空間内に導くための吸気孔部を有するファン対向壁を有しており、かつ、上記吸気孔部は、上記第1および第2のファンに対して正面となる領域に対して上記ファン対向壁の面内方向に位置ずれした水平方向端部寄りの領域に設けられている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記吸気孔部は、上記ファン対向壁における上下方向中間部ないし上部寄りの領域に設けられている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記筐体カバーは、上記第1および第2の風路の各出口に面する正面部および背面部を有しており、その正面部および背面部には、上記各出口からの風を外部に導くための通風孔部が設けられている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の部品には、リアクトルまたはトランスといった電気部品、ならびに電子部品およびヒートシンクが含まれ、上記第1および第2の風路のうち、下側の風路には、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記電気部品が配置され、その電気部品のコイル部分が風路内に位置する一方、上側の風路には、上記一対の垂直壁の他方に沿って内側に上記ヒートシンクが配置されており、上記電子部品は、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記ヒートシンクと接するように配置されている。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の風路には、それぞれの内部温度を検出する第1および第2の温度センサが設けられており、上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の温度センサからの信号に基づき、それぞれ独立して制御されるように構成されている。
【0016】
上記構成では、第1および第2の風路がたとえば上下に隔てて配置され、第1および第2のファンによって各風路に風が送り込まれる。このような構成によれば、冷却対象となる複数の部品を第1および第2の風路にふり分けて配置することができ、これらの部品を各風路において効率よく空気冷却することができる。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電源装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の電源装置を別角度から示した分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1に示した電源装置の側面図である。
【図6】図5のVI矢視方向の正面図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6のIIX−IIX線に沿う断面図である。
【図9】図6のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】本発明に係る電源装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明に係る電源装置の他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1〜9は、本発明に係る電源装置の一実施形態を示している。本実施形態の電源装置Aは、たとえばアーク溶接に必要な大電流および高電圧を出力させるために用いられる。電源装置Aは、一般的に工場などの粉塵が多い雰囲気環境下で使用される。
【0021】
電源装置Aは、ベース部材1、筐体カバー2、電源回路を構成する電子部品30および電気部品31、ヒートシンク5、第1の仕切板6、第2の仕切板7A,7B、第3の仕切板7C、第1および第2のファン8,8’、ならびに第1および第2の温度センサS,S’(図3および図4参照)を備える。装置内には、第2の仕切板7Aの下側部分、第3の仕切板7C、およびベース部材1の一部によって囲われた空洞状の第1の風路9が設けられているとともに、この第1の風路9の上方において、第1の仕切板6の一部、第2の仕切板7Aの上側部分、第2の仕切板7B、および第3の仕切板7Cの一部によって囲われた空洞状の第2の風路9’が設けられている。これらの風路9,9’は、電源装置Aの前後方向(以下、「F方向」と称する)に長手状に延びている。また、装置内において第1および第2の風路9,9’の外側方には、ベース部材1の一部、筐体カバー2の一部、第1の仕切板6、および第2の仕切板7Aによって囲まれた電子部品30などの配置空間B1が設けられるとともに、ベース部材1の一部、筐体カバー2の一部、第1の仕切板6の一部、第2の仕切板7B、および第3の仕切板7Cによって囲まれたファン8,8’の配置空間B2が設けられている。電子部品30などの配置空間B1は、第1の仕切板6より上方の空間と連続している。
【0022】
ベース部材1は、F方向に長い長矩形状の平板部材である。ベース部材1の下面には、ブラケットを介して複数の車輪10が軸支されている。ベース部材1は、これらの車輪10によって床面上を移動可能である。図7に示すように、ベース部材1の上面中央部には、その上面に対して垂直に第2の仕切板7Aが配置されている。この第2の仕切板7Aの下側部分片面とベース部材1の上面一部とを囲うように第3の仕切板7Cが配置されている。
【0023】
筐体カバー2は、たとえば金属製であり、装置内を保護するためのものである。筐体カバー2は、ベース部材1に対して着脱可能な箱状を呈し、ベース部材1の両側部に沿って鉛直面をなす2つの側面部2A,2Bと、ベース部材1の前端部および後端部に沿って鉛直面をなす正面部2Cおよび背面部2Dを有する。図4に示すように、筐体カバー2の側面部2Aは、第1および第2のファン8,8’に対する対向壁となる。この側面部2AにおいてF方向両端部寄りの領域には、外部の空気を配置空間B2に導くための吸気孔部20が設けられている(図3および図4参照)。吸気孔部20は、比較的小さな多数のスリット孔よりなる。図3および図4に示すように、正面部2Cおよび背面部2Dにおいて第1および第2の風路9,9’と対応する領域には、これらの風路9,9’からの風を外部に導くための通風孔部21が設けられている。通風孔部21は、風通しを良好とするために比較的大きな多数の孔よりなる。
【0024】
図4、図7、および図9に示すように、電子部品30は、スイッチング素子やダイオード、コンデンサ、さらにはマイクロコンピュータといったものである。これらの電子部品30は、第2の仕切板7Aの上側部分を貫通してヒートシンク5に直接取り付けられている。これにより、電子部品30からの熱は、ヒートシンク5へと速やかに伝わる。図3、図7、および図9に示すように、電気部品31は、トランスやリアクトルといったものであり、コイル部分31Aと端子部31Bとを有する。コイル部分31Aは、少なくとも先端部が第1の風路9内に位置し、端子部31Bは、電子部品30と同じ配置空間B1内に配置される。すなわち、電気部品31は、第2の仕切板7Aの下側部分を貫通し、配置空間B1および第1の風路9に対して臨むように配置される。このような電気部品31は、比較的大きくて重い。そのため、電気部品31は、第2の仕切板7Aを貫通して固定する際に重量バランスがとられ、第1の風路9に臨むコイル部分31Aの突出量が調整される。なお、電気部品31のコイル部分31Aは、巻線が露出していてもよく、あるいは巻線がモールド樹脂によって封止されていてもよい。マイクロコンピュータは、たとえば電源回路とは別の制御回路に組み込まれたものでもよい。
【0025】
図4および図7に示すように、ヒートシンク5は、たとえばアルミニウム製の放熱部材であり、第2の仕切板7Aに固定される基部50と、基部50から延出してF方向に延びるとともに上下方向に並ぶ複数のフィン51とを有する。第2の仕切板7Aに対向する基部50の一部分には、ネジ(図示略)などを介して電子部品30が直接取り付けられる。複数のフィン51は、基部50から伝わってきた熱を空気中に効率よく放熱する部分であり、放熱効果を高めるために表面積が大きくなっている。本実施形態では、ヒートシンク5も冷却対象となる。なお、ヒートシンク5は、第2の仕切板7Aに沿って複数個がF方向に並ぶように配置されていてもよい。
【0026】
図7に示すように、第1の仕切板6は、たとえば金属製であり、ファン8,8’の配置空間B2や第2の風路9’といった空間と電子部品30の配置空間B1とを上下に分けるものである。第1の仕切板6は、F方向にベース部材1と同程度の長さを有し、その短手方向一端が第2の仕切板7Aの上端に垂直に接合される。これにより、第1の仕切板6は、筐体カバー2の上下方向中間部に水平に位置する。第1の仕切板6は、ファン8,8’の配置空間B2および第2の風路9’の上部壁をなす。
【0027】
第2の仕切板7Aは、たとえば金属製であり、第1および第2の風路9,9’と配置空間B1とを仕切るものである。第2の仕切板7Aも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第2の仕切板7Aは、ベース部材1および第1の仕切板6に対して垂直に配置される。これにより、第2の仕切板7Aは、第1および第2の風路9,9’の垂直壁をなす。この第2の仕切板7Aの上側部分には、ヒートシンク5の基部50一部を配置空間B1に露出させ、その部分に電子部品30を取り付け可能とするための角窓70が設けられている。この角窓70は、基部50より若干小さく形成されており、基部50によって閉塞される。第2の仕切板7Aの下側部分には、電気部品31が貫通して嵌合可能な開口が設けられている(符号略)。
【0028】
第2の仕切板7Bは、たとえば金属製であり、第2の風路9’と配置空間B2とを仕切るものである。第2の仕切板7Bも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第2の仕切板7Bは、第2の仕切板7Aの上側部分に対して対向するように配置され、その上端および下端が第1の仕切板6および第3の仕切板7Cに対して垂直に接合される。これにより、第2の仕切板7Bは、第2の風路9’の垂直壁をなす。第2の仕切板7BのF方向中間部には、第2の風路9’に対して第2のファン8’を臨ませる開口71’が設けられている(図4参照)。
【0029】
第3の仕切板7Cは、たとえば金属製であり、第1の風路9を囲うように断面L字状に形成されている。第3の仕切板7Cも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第3の仕切板7Cの水平部分の先端は、第2の仕切板7Aの中央部に垂直に接合される一方、鉛直部分の基端は、ベース部材1に垂直に接合される。これにより、第3の仕切板7Cの水平部分は、第1の風路9の上部壁および第2の風路9’の底部壁をなし、その鉛直部分は、第2の仕切板7Aの下側部分に対向した第1の風路9の垂直壁をなす。第3の仕切板7Cの鉛直部分におけるF方向中間部には、第1の風路9に対して第1のファン8を臨ませる開口71が設けられている(図3参照)。
【0030】
図3および図7に示すように、下側の第1のファン8は、図示しない複数の羽根と電動機とが一体化された軸流式のものであり、電動機の軸方向両端側に空気の吸入口80および吐出口81を有する。第1のファン8は、第3の仕切板7Cの開口71に吐出口81が一致して配置される。すなわち、第1のファン8は、第1の風路9の長手方向中間部に配置され、吐出口81が風路9の内側に臨むように位置する。これにより、第1のファン8の送風方向は、第1の風路9の長手方向に対して水平面内で交差する方向となる。吸入口80は、配置空間B2に位置し、側面部2Aの内面に対して所定の間隔をもって対向している。この側面部2Aにおける吸入口80の正面領域には、吸気孔部20が設けられていない。すなわち、側面部2AのF方向両端部寄りに位置する吸気孔部20に対して吸入口80がある程度離れて位置する。
【0031】
図4および図7に示すように、上側の第2のファン8’は、第1のファン8と同様に軸流式のものであり、軸方向両端側に空気の吸入口80’および吐出口81’を有する。第2のファン8’は、第2の仕切板7Bの開口71’に吐出口81’が一致して配置される。すなわち、第2のファン8’は、第2の風路9’の長手方向中間部に配置され、吐出口81’が風路9’の内側に臨むように位置する。これにより、第2のファン8’の送風方向は、第2の風路9’の長手方向に対して水平面内で交差する方向となる。吸入口80’は、配置空間B2に位置し、側面部2Aの内面に対して所定の間隔をもって対向している。この側面部2Aにおける吸入口80’の正面領域にも、吸気孔部20が設けられていない。すなわち、側面部2AのF方向両端部寄りに位置する吸気孔部20に対して吸入口80’がある程度離れて位置する。なお、本実施形態では、第1および第2のファン8,8’の風量が互いに異なり、上側の第2のファン8’は、下側の第1のファン8よりも風量大になっている。
【0032】
図3に示すように、第1の風路9は、第1のファン8からの風によって電気部品31を直接冷却し、その風を長手方向両端部に導くものである。第1の風路9は、第2の仕切板7Aの下側部分および第3の仕切板7Cの鉛直部分を幅方向に対向する一対の垂直壁とし、さらに第3の仕切板7Cの水平部分およびベース部材1の一部を上下方向に対向する上部壁および底部壁として囲われており、横断面矩形状に形成されている。第1の風路9の長手方向両端部は、風が吹き出る出口90となる。第1のファン8から第1の風路9内に送り込まれた風は、電気部品31のコイル部分31Aに直接当たって第1の風路9の長手方向両端部へと二手に分かれ、このコイル部分31Aから多くの熱を奪いながら出口90から吹き出る。この風は、筐体カバー2の正面部2Cおよび背面部2Dに設けた通風孔部21を通って速やかに外部に吹き出る。第1の風路9内において第1のファン8から出口90までの風が流れる平均的な距離は、この風路9全体の長さの半分程度となる。これにより、第1のファン8からの風は、第1の風路9を速やかに流れて外部に排出され、電気部品31は、第1の風路9内を流れる風によって効率よく空気冷却される。
【0033】
上記第1の風路9には、その内部温度を検出する第1の温度センサSが設けられている。第1の温度センサSは、たとえば第2の仕切板7Aの表面に設置されている。なお、第1の温度センサSは、たとえば電気部品31に直接取り付けられていてもよい。第1の温度センサSは、マイクロコンピュータに対して信号を出力する。マイクロコンピュータは、第1の温度センサSからの信号に基づき、第1の風路9の内部温度がたとえば50℃未満の場合には第1のファン8を動作させない。マイクロコンピュータは、第1の風路9の内部温度が50℃以上70℃未満の場合、第1のファン8を低速回転させ、その内部温度が70℃以上になると、第1のファン8を高速回転させる。マイクロコンピュータは、第1の風路9の内部温度が70℃よりさらに上昇して所定温度に達すると、電子部品30および電気部品31によって構成された電源回路全体の動作を停止させる。
【0034】
図4に示すように、第2の風路9’は、第2のファン8’からの風によってヒートシンク5を冷却し、その風を長手方向両端部に導くものである。第2の風路9’は、第2の仕切板7Aの上側部分および第2の仕切板7Bを幅方向に対向する一対の垂直壁とし、さらに第1の仕切板6の一部および第3の仕切板7Cの水平部分を上下方向に対向する上部壁および底部壁として囲われており、横断面矩形状に形成されている。すなわち、第2の風路9’は、第3の仕切板7Cの水平部分を隔壁として第1の風路9と仕切られており、第1の風路9の上方に配置されている。第2の風路9’の長手方向両端部は、風が吹き出る出口90’となる。第2のファン8’から第2の風路9’内に送り込まれた風は、ヒートシンク5に直接当たって第2の風路9’の長手方向両端部へと二手に分かれ、このヒートシンク5から多くの熱を奪いながら出口90’から吹き出る。第2の風路9’内において第2のファン8’から出口90’までの風が流れる平均的な距離も、この風路9’全体の長さの半分程度となる。これにより、第2のファン8’からの風は、第2の風路9’を速やかに流れて外部に排出され、ヒートシンク5は、第2の風路9’内を流れる風によって効率よく空気冷却される。その結果、電子部品30は、ヒートシンク5を介して効率よく冷却される。
【0035】
上記第2の風路9’には、その内部温度を検出する第2の温度センサS’が設けられている。第2の温度センサS’は、たとえば第2の仕切板7Aの表面に設置されている。なお、第2の温度センサS’は、たとえばヒートシンク5に直接取り付けられていてもよい。第2の温度センサS’は、マイクロコンピュータに対して信号を出力する。マイクロコンピュータは、第2の温度センサS’からの信号に基づき、第2の風路9’の内部温度がたとえば40℃未満の場合には第2のファン8’を動作させない。マイクロコンピュータは、第2の風路9’の内部温度が40℃以上60℃未満の場合、第2のファン8’を低速回転させ、さらにその内部温度が60℃以上になると、第2のファン8’を高速回転させる。マイクロコンピュータは、第2の風路9’の内部温度が60℃よりさらに上昇して所定温度に達すると、電子部品30および電気部品31によって構成された電源回路全体の動作を停止させる。
【0036】
次に、上記電源装置Aの作用について説明する。
【0037】
電源装置Aは、動作中、溶接用の大電流および高電圧を出力するのに伴い、電子部品30および電気部品31が発熱してその温度が高まる。電子部品30の熱は、配置空間B1の空気中に伝わるほか、ヒートシンク5に対して直接伝わる。ヒートシンク5に伝えられた熱は、複数のフィン51によって第2の風路9’の空気中に効率よく放熱される。一方、電気部品31は、コイル部分31Aが最も発熱しやすく、このコイル部分31Aの熱が第1の風路9’の空気中に伝わる。
【0038】
第1および第2のファン8,8’が作動すると、吸入口80,80’周辺の空気が第1および第2のファン8,8’に取り込まれ、その空気が風として第1および第2の風路9,9’の長手方向に対して交差する方向に吐出口81から風路9,9’内に送り出される。それに伴い配置空間B2には、吸気孔部20から外部の空気が流入する。
【0039】
このとき、図3および図4に示すように、配置空間B2内における吸入口80,80’付近の空気は、第1および第2のファン8,8’に吸い込まれ、それに伴い外部の空気が多数のスリットからなる吸気孔部20を通じて配置空間B2内に吸い込まれる。これは、吸入口80,80’に対して離れた位置の吸気孔部20が空気の流入抵抗となり、吸入口80,80’付近と吸気孔部20付近との間に十分な圧力差が生じ、配置空間B2内が負圧になるためである。これにより、吸気孔部20から配置空間B2内に吸気された粉塵を含む空気は、吸気孔部20に対してF方向に離れて位置する吸入口80,80’へと減速しながら流れ、空気中の粉塵は、その多くが重力落下し、あるいは配置空間B2の内壁面に当たるなどして空気と分離されやすくなる。その結果、第1および第2のファン8,8’は、配置空間B2を介して粉塵が効果的に除去された空気を取り込み、その空気を第1および第2の風路9,9’内に送り出す。
【0040】
第1のファン8から第1の風路9内に送られた風は、二手に分かれてこの風路9の長手方向両端部へと流れながら電気部品31に当たる。その際、電気部品31のコイル部分31Aに対して風が直接当たるため、このコイル部分31Aから効率的に熱が奪われる。また、第1のファン8から出た風は、第1の風路9の長手方向両端部へと二手に分かれ、比較的短い距離を流れて両側の出口90から外部に排出される。そのため、第1の風路9を流れる風の抵抗が少なくなり、速やかに出口90から風が排出される。これにより、電気部品31は、効率よく空気冷却される。
【0041】
第2のファン8’から第2の風路9’内に送られた風は、ヒートシンク5に対して直接当たり、フィン51に沿ってこの風路9’の長手方向両端部へと流れる。その際、多数のフィン51に対して風が効率よく当たるため、各フィン51の表面から多くの熱が奪われる。また、第2のファン8’から出た風は、第2の風路9’の長手方向両端部へと二手に分かれ、比較的短い距離を流れて両側の出口90’から外部に排出される。そのため、第2の風路9’を流れる風の抵抗が少なくなり、速やかに出口90’から風が排出される。これにより、ヒートシンク5は、効率よく空気冷却されるとともに、このヒートシンク5を介して電子部品30が効率よく冷却される。
【0042】
上記第1および第2の風路9,9’は、第3の仕切板7Cの水平部分によって上段と下段とに分けられている。そのため、たとえば電気部品31からの熱によって暖められた下段の第1の風路9内の空気は、温度が高くなるほど上昇しがちになるものの、上段の第2の風路9’に侵入することなく速やかに外部に排出される。これにより、上段に位置する電子部品30と下段に位置するヒートシンク5とは、互いに熱の影響を受けずに第1および第2のファン8,8’からの風によって効率よく冷却される。
【0043】
本実施形態では、第1および第2のファン8,8’の風量が異なり、さらに第1および第2の風路9,9’内の温度に応じて第1および第2のファン8,8’の回転速度が可変制御される。これにより、第1および第2の風路9,9’内を流れる風は、それぞれの冷却対象や温度上昇特性に応じて適切な風速に設定され、上段に位置するヒートシンク5と下段に位置する電気部品31とは、それぞれ異なる風速の風によって効率よく冷却される。本実施形態では、特に下側の第1のファン8よりも上側の第2のファン8’の風量が大きくなっているので、上段に位置するヒートシンク5の方がより空気冷却されやすく、このようなヒートシンク5を介して電子部品30が効率よく冷却される。また、第1および第2のファン8,8’は、それぞれ個別に制御され、第1および第2の風路9,9’内の温度が所定温度に達するまでは動作停止状態とされるため、省電力化や騒音低減にも寄与する。
【0044】
上記電源装置Aは、たとえば工場内の床面上に配置され、その床面付近には、粉塵が集まりやすく、より多くの粉塵を含む空気が存在する。このような状態において、第1および第2のファン8,8’が作動すると、上側よりも下側の第1のファン8の方が床面に近い空気を吸い込みがちとなる。その反面、下側の第1のファン8は、上側の第2のファン8’よりも風量小で吸気力も小さくなっている。これにより、下側の第1のファン8によって吸い込まれる粉塵の量が抑えられ、床面に近い下側の風路9でも、第1のファン8からの粉塵の侵入が効果的に抑制される。
【0045】
電源装置Aの動作時、仮に、第1および第2のファン8,8’が故障などによって風量低下あるいは送風停止の状態となり、もしくは電気部品31およびヒートシンク5がファン8,8’の風による冷却能力を超えて過熱状態になると、第1および第2の風路9,9’の内部温度が上昇する。これら第1および第2の風路9,9’では、第1および第2の温度センサS,S’によって個別に内部温度が検出され、いずれか一方の内部温度が所定値以上に達すると、電子部品30および電気部品31によって構成された電源回路全体の動作が停止させられる。これにより、電源装置Aは、第1および第2の風路9,9’のうちのいずれか一方の冷却能力が急激に低下するだけで全体の動作が緊急停止させられるといったフェイルセーフ機能をもつため、アーク溶接などに必要な大電流および高電圧を安全に出力することができる。
【0046】
なお、たとえば上段のヒートシンク5よりも下段の電気部品31の方が発熱によって温度が高くなりやすい場合、下段の第1のファン8として風量大のものを採用してもよい。また、たとえば電子部品30および電気部品31の動作が時間的に異なる場合、それに応じて第1および第2のファン8,8’を作動させるタイミングをそれぞれ異なるようにすることもできる。
【0047】
冷却対象となる電子部品30および電気部品31は、第1および第2のファン8,8’が第1および第2の風路9,9’の長手方向中間部に位置するために、それぞれのファン8,8’の周辺に位置した恰好となる。すなわち、F方向において、第1のファン8と各電気部品31との距離や、第2のファン8’と各電子部品30との距離は、第1および第2の風路9,9’全体の長さに比べて短くなり、これらのファン8,8’に対して比較的近い位置に電子部品30および電気部品31が配置される。このようなF方向の位置関係によっても、電子部品30および電気部品31が効率よく冷却される。そのため、電子部品30および電気部品31については、それらの発熱特性に応じてF方向の位置を決める必要はなく、ある程度自由に配置することができる。
【0048】
上記電源装置Aの運用時は、エアブローガンを用いた除塵作業が行われる。その際、たとえば第1の風路9の一方の出口90からエアブローガンの空気噴出口を内部に向けて圧縮空気が噴射される。圧縮空気は、第1の風路9の長手方向に沿う噴流となり、電気部品31のコイル部分31Aに付着した粉塵を他方の出口90に向けて勢いよく吹き飛ばす。エアブローガンから噴射された圧縮空気の噴射方向は、第1の風路9の長手方向に沿った方向となり、すなわち第1のファン8の送風方向に対して交差した方向となる。これにより、エアブローガンを用いた除塵作業時、圧縮空気の強い噴流によって第1のファン8が高速に逆転させられるといったことはなく、このファン8の羽根や回転軸受を破損させるおそれはない。同様に、第2の風路9’についても、エアブローガンを用いて除塵作業を行うことができ、その際に第2のファン8’の羽根や回転軸受を破損させるおそれはない。また、第1および第2のファン8,8’から風とともに第1および第2の風路9,9’内に入る粉塵が抑えられるため、除塵作業を行うまでの期間を延長し、動作効率を高めることができる。
【0049】
図10および図11は、本発明に係る電源装置の他の実施形態を示している。なお、図10に示す電源装置A1は、先述の実施形態によるものとは別の電気部品32を追加して所定の位置に配置したものである。図11に示す電源装置A2は、先述の実施形態によるものとは吸気孔部20の位置が異なるものである。先述した実施形態によるものと同一または類似の構成要素については、同一または類似の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図10に示す電源装置A1では、電気部品32がたとえば第2の風路9’の上部壁となる第1の仕切板6を貫通してコイル部分32Aが風路9’内に位置するように配置されている。第2のファン8’からの風は、電気部品32のコイル部分32Aとヒートシンク5のフィン51に当たりながら第2の風路9’の長手方向両端部へと流れて外部に吹き出る。このような構成によれば、1つの風路9’の異なる壁に沿って配置された複数の部品を効率よく空気冷却することができる。なお、その他には、ファンが配置された垂直壁、あるいは上部壁に対向する底部壁に部品を配置しても、同様の効果を得ることができる。
【0051】
図11に示す電源装置A2では、筐体カバー2の側面部2Aにおける吸気孔部20は、その側面部2AのF方向両端部寄りの領域でかつ上下方向中間部付近に設けられている。この電源装置A2を工場内の床面上に配置した場合、吸気孔部20は、粉塵が集積した床面付近より上方に離れて位置する。そのため、配置空間B2には、吸気孔部20を通じて空気とともに吸い込まれる粉塵の量が抑えられ、ひいては第1および第2の風路に対する第1および第2のファン8,8’からの粉塵の侵入がより効果的に抑制される。このような粉塵の侵入を抑制する効果は、吸気孔部20を上下方向上部寄りに位置させるほどより高めることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
上記の各実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、各請求項に記載した事項の範囲内での各部の変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0054】
風路には、電子部品を直接臨ませるように配置してもよい。
【0055】
ファンは、たとえば風路の長手方向一端部に配置され、その長手方向一端部から他端部へと風を送るように構成されたものでもよい。この場合、風路の長手方向他端部が風の出口となる。
【0056】
第1および第2の風路は、たとえば水平方向に隣接するように配置されたものでもよい。
【0057】
風路の数は2つに限らず、3つ以上の風路を設けてもよい。その場合、各風路に対応してファンが設けられる。
【符号の説明】
【0058】
A,A1,A2 電源装置
1 ベース部材
2 筐体カバー
2A,2B 側面部
2C 正面部
2D 背面部
20 吸気孔部
21 通風孔部
30 電子部品
31 電気部品
5 ヒートシンク
6 第1の仕切板
7A,7B 第2の仕切板
7C 第3の仕切板
8 第1のファン
8’ 第2のファン
80,80’ 吸入口
81,81’ 吐出口
9 第1の風路
9’ 第2の風路
90,90’ (風路の)出口
S 第1の温度センサ
S’ 第2の温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば溶接用の電源装置に関し、特に空気冷却のためのファンを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶接用の電源装置には、複数の電子部品と、長手状に延びる風路と、この風路に風を送り込むファンとを備えたものがある(たとえば、特許文献1を参照)。同文献に開示された電源装置では、1つの風路の側壁に沿って複数の電子部品が配置され、その風路の長手方向一端部にファンが設けられている。ファンにより風路内に送り込まれた風は、電子部品から熱を奪いながら風路の長手方向他端部の出口より吹き出る。特に発熱しやすい電子部品は、効率よく空気冷却されるようにファンの近傍に配置されている。このような電源装置には、半導体素子のようなチップ型の電子部品とは別の発熱しやすい部品、たとえばトランスやリアクトルといった電気部品が内蔵されている。一般的にこれらの電子部品および電気部品は、発熱の程度や傾向といった発熱特性が大きく異なる。
【0003】
しかしながら、上記従来の電源装置では、風路が1つしかないため、異なる発熱特性の部品が多くなるほどそれらを風路の長手方向に沿って適切に配置しなければならず、冷却対象となる部品の配置が風の温度や流れにも大きく影響することから、複数の部品を効率よく空気冷却することができないという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−229644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、複数の部品を効率よくふり分けて空気冷却することができる電源装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明により提供される電源装置は、空洞状の風路と、上記風路に風を送り込むファンと、上記風路に沿って配置される複数の部品と、を備え、上記風路を通る風によって上記複数の部品が冷却されるように構成された電源装置であって、上記風路には、互いに隔てられた第1および第2の風路が含まれるとともに、上記ファンには、上記第1および第2の風路のそれぞれに風を送り込む第1および第2のファンが含まれることを特徴としている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、少なくとも一部が水平に配置される仕切板を備え、上記第1および第2の風路は、水平長手状を呈して互いに平行をなすとともに、上記仕切板の水平部分を隔壁として上下に隔てられている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2のファンは、互いに風量が異なり、これらのうち風量大となるファンは、上記第1および第2の風路のうち上側の風路に対応して配置されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の風路のそれぞれは、上記隔壁に対して垂直に配置されて互いに対向する一対の垂直壁と、上記隔壁に対向する上部壁あるいは底部壁とによって囲われているとともに、長手方向両端部が風の出口になっており、上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路の長手方向中間部に位置し、上記一対の垂直壁の一方の内面から風路の長手方向に対して交差する方向に風を送り込むように配置されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、装置内部を保護する筐体カバーを備え、上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路のそれぞれに隣接し、かつ上記筐体カバーによって囲まれた空間に配置されるとともに、上記筐体カバーは、上記第1および第2のファンに対向するとともに外部の空気を上記空間内に導くための吸気孔部を有するファン対向壁を有しており、かつ、上記吸気孔部は、上記第1および第2のファンに対して正面となる領域に対して上記ファン対向壁の面内方向に位置ずれした水平方向端部寄りの領域に設けられている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記吸気孔部は、上記ファン対向壁における上下方向中間部ないし上部寄りの領域に設けられている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記筐体カバーは、上記第1および第2の風路の各出口に面する正面部および背面部を有しており、その正面部および背面部には、上記各出口からの風を外部に導くための通風孔部が設けられている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の部品には、リアクトルまたはトランスといった電気部品、ならびに電子部品およびヒートシンクが含まれ、上記第1および第2の風路のうち、下側の風路には、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記電気部品が配置され、その電気部品のコイル部分が風路内に位置する一方、上側の風路には、上記一対の垂直壁の他方に沿って内側に上記ヒートシンクが配置されており、上記電子部品は、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記ヒートシンクと接するように配置されている。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の風路には、それぞれの内部温度を検出する第1および第2の温度センサが設けられており、上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の温度センサからの信号に基づき、それぞれ独立して制御されるように構成されている。
【0016】
上記構成では、第1および第2の風路がたとえば上下に隔てて配置され、第1および第2のファンによって各風路に風が送り込まれる。このような構成によれば、冷却対象となる複数の部品を第1および第2の風路にふり分けて配置することができ、これらの部品を各風路において効率よく空気冷却することができる。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電源装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の電源装置を別角度から示した分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1に示した電源装置の側面図である。
【図6】図5のVI矢視方向の正面図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6のIIX−IIX線に沿う断面図である。
【図9】図6のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】本発明に係る電源装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明に係る電源装置の他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1〜9は、本発明に係る電源装置の一実施形態を示している。本実施形態の電源装置Aは、たとえばアーク溶接に必要な大電流および高電圧を出力させるために用いられる。電源装置Aは、一般的に工場などの粉塵が多い雰囲気環境下で使用される。
【0021】
電源装置Aは、ベース部材1、筐体カバー2、電源回路を構成する電子部品30および電気部品31、ヒートシンク5、第1の仕切板6、第2の仕切板7A,7B、第3の仕切板7C、第1および第2のファン8,8’、ならびに第1および第2の温度センサS,S’(図3および図4参照)を備える。装置内には、第2の仕切板7Aの下側部分、第3の仕切板7C、およびベース部材1の一部によって囲われた空洞状の第1の風路9が設けられているとともに、この第1の風路9の上方において、第1の仕切板6の一部、第2の仕切板7Aの上側部分、第2の仕切板7B、および第3の仕切板7Cの一部によって囲われた空洞状の第2の風路9’が設けられている。これらの風路9,9’は、電源装置Aの前後方向(以下、「F方向」と称する)に長手状に延びている。また、装置内において第1および第2の風路9,9’の外側方には、ベース部材1の一部、筐体カバー2の一部、第1の仕切板6、および第2の仕切板7Aによって囲まれた電子部品30などの配置空間B1が設けられるとともに、ベース部材1の一部、筐体カバー2の一部、第1の仕切板6の一部、第2の仕切板7B、および第3の仕切板7Cによって囲まれたファン8,8’の配置空間B2が設けられている。電子部品30などの配置空間B1は、第1の仕切板6より上方の空間と連続している。
【0022】
ベース部材1は、F方向に長い長矩形状の平板部材である。ベース部材1の下面には、ブラケットを介して複数の車輪10が軸支されている。ベース部材1は、これらの車輪10によって床面上を移動可能である。図7に示すように、ベース部材1の上面中央部には、その上面に対して垂直に第2の仕切板7Aが配置されている。この第2の仕切板7Aの下側部分片面とベース部材1の上面一部とを囲うように第3の仕切板7Cが配置されている。
【0023】
筐体カバー2は、たとえば金属製であり、装置内を保護するためのものである。筐体カバー2は、ベース部材1に対して着脱可能な箱状を呈し、ベース部材1の両側部に沿って鉛直面をなす2つの側面部2A,2Bと、ベース部材1の前端部および後端部に沿って鉛直面をなす正面部2Cおよび背面部2Dを有する。図4に示すように、筐体カバー2の側面部2Aは、第1および第2のファン8,8’に対する対向壁となる。この側面部2AにおいてF方向両端部寄りの領域には、外部の空気を配置空間B2に導くための吸気孔部20が設けられている(図3および図4参照)。吸気孔部20は、比較的小さな多数のスリット孔よりなる。図3および図4に示すように、正面部2Cおよび背面部2Dにおいて第1および第2の風路9,9’と対応する領域には、これらの風路9,9’からの風を外部に導くための通風孔部21が設けられている。通風孔部21は、風通しを良好とするために比較的大きな多数の孔よりなる。
【0024】
図4、図7、および図9に示すように、電子部品30は、スイッチング素子やダイオード、コンデンサ、さらにはマイクロコンピュータといったものである。これらの電子部品30は、第2の仕切板7Aの上側部分を貫通してヒートシンク5に直接取り付けられている。これにより、電子部品30からの熱は、ヒートシンク5へと速やかに伝わる。図3、図7、および図9に示すように、電気部品31は、トランスやリアクトルといったものであり、コイル部分31Aと端子部31Bとを有する。コイル部分31Aは、少なくとも先端部が第1の風路9内に位置し、端子部31Bは、電子部品30と同じ配置空間B1内に配置される。すなわち、電気部品31は、第2の仕切板7Aの下側部分を貫通し、配置空間B1および第1の風路9に対して臨むように配置される。このような電気部品31は、比較的大きくて重い。そのため、電気部品31は、第2の仕切板7Aを貫通して固定する際に重量バランスがとられ、第1の風路9に臨むコイル部分31Aの突出量が調整される。なお、電気部品31のコイル部分31Aは、巻線が露出していてもよく、あるいは巻線がモールド樹脂によって封止されていてもよい。マイクロコンピュータは、たとえば電源回路とは別の制御回路に組み込まれたものでもよい。
【0025】
図4および図7に示すように、ヒートシンク5は、たとえばアルミニウム製の放熱部材であり、第2の仕切板7Aに固定される基部50と、基部50から延出してF方向に延びるとともに上下方向に並ぶ複数のフィン51とを有する。第2の仕切板7Aに対向する基部50の一部分には、ネジ(図示略)などを介して電子部品30が直接取り付けられる。複数のフィン51は、基部50から伝わってきた熱を空気中に効率よく放熱する部分であり、放熱効果を高めるために表面積が大きくなっている。本実施形態では、ヒートシンク5も冷却対象となる。なお、ヒートシンク5は、第2の仕切板7Aに沿って複数個がF方向に並ぶように配置されていてもよい。
【0026】
図7に示すように、第1の仕切板6は、たとえば金属製であり、ファン8,8’の配置空間B2や第2の風路9’といった空間と電子部品30の配置空間B1とを上下に分けるものである。第1の仕切板6は、F方向にベース部材1と同程度の長さを有し、その短手方向一端が第2の仕切板7Aの上端に垂直に接合される。これにより、第1の仕切板6は、筐体カバー2の上下方向中間部に水平に位置する。第1の仕切板6は、ファン8,8’の配置空間B2および第2の風路9’の上部壁をなす。
【0027】
第2の仕切板7Aは、たとえば金属製であり、第1および第2の風路9,9’と配置空間B1とを仕切るものである。第2の仕切板7Aも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第2の仕切板7Aは、ベース部材1および第1の仕切板6に対して垂直に配置される。これにより、第2の仕切板7Aは、第1および第2の風路9,9’の垂直壁をなす。この第2の仕切板7Aの上側部分には、ヒートシンク5の基部50一部を配置空間B1に露出させ、その部分に電子部品30を取り付け可能とするための角窓70が設けられている。この角窓70は、基部50より若干小さく形成されており、基部50によって閉塞される。第2の仕切板7Aの下側部分には、電気部品31が貫通して嵌合可能な開口が設けられている(符号略)。
【0028】
第2の仕切板7Bは、たとえば金属製であり、第2の風路9’と配置空間B2とを仕切るものである。第2の仕切板7Bも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第2の仕切板7Bは、第2の仕切板7Aの上側部分に対して対向するように配置され、その上端および下端が第1の仕切板6および第3の仕切板7Cに対して垂直に接合される。これにより、第2の仕切板7Bは、第2の風路9’の垂直壁をなす。第2の仕切板7BのF方向中間部には、第2の風路9’に対して第2のファン8’を臨ませる開口71’が設けられている(図4参照)。
【0029】
第3の仕切板7Cは、たとえば金属製であり、第1の風路9を囲うように断面L字状に形成されている。第3の仕切板7Cも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第3の仕切板7Cの水平部分の先端は、第2の仕切板7Aの中央部に垂直に接合される一方、鉛直部分の基端は、ベース部材1に垂直に接合される。これにより、第3の仕切板7Cの水平部分は、第1の風路9の上部壁および第2の風路9’の底部壁をなし、その鉛直部分は、第2の仕切板7Aの下側部分に対向した第1の風路9の垂直壁をなす。第3の仕切板7Cの鉛直部分におけるF方向中間部には、第1の風路9に対して第1のファン8を臨ませる開口71が設けられている(図3参照)。
【0030】
図3および図7に示すように、下側の第1のファン8は、図示しない複数の羽根と電動機とが一体化された軸流式のものであり、電動機の軸方向両端側に空気の吸入口80および吐出口81を有する。第1のファン8は、第3の仕切板7Cの開口71に吐出口81が一致して配置される。すなわち、第1のファン8は、第1の風路9の長手方向中間部に配置され、吐出口81が風路9の内側に臨むように位置する。これにより、第1のファン8の送風方向は、第1の風路9の長手方向に対して水平面内で交差する方向となる。吸入口80は、配置空間B2に位置し、側面部2Aの内面に対して所定の間隔をもって対向している。この側面部2Aにおける吸入口80の正面領域には、吸気孔部20が設けられていない。すなわち、側面部2AのF方向両端部寄りに位置する吸気孔部20に対して吸入口80がある程度離れて位置する。
【0031】
図4および図7に示すように、上側の第2のファン8’は、第1のファン8と同様に軸流式のものであり、軸方向両端側に空気の吸入口80’および吐出口81’を有する。第2のファン8’は、第2の仕切板7Bの開口71’に吐出口81’が一致して配置される。すなわち、第2のファン8’は、第2の風路9’の長手方向中間部に配置され、吐出口81’が風路9’の内側に臨むように位置する。これにより、第2のファン8’の送風方向は、第2の風路9’の長手方向に対して水平面内で交差する方向となる。吸入口80’は、配置空間B2に位置し、側面部2Aの内面に対して所定の間隔をもって対向している。この側面部2Aにおける吸入口80’の正面領域にも、吸気孔部20が設けられていない。すなわち、側面部2AのF方向両端部寄りに位置する吸気孔部20に対して吸入口80’がある程度離れて位置する。なお、本実施形態では、第1および第2のファン8,8’の風量が互いに異なり、上側の第2のファン8’は、下側の第1のファン8よりも風量大になっている。
【0032】
図3に示すように、第1の風路9は、第1のファン8からの風によって電気部品31を直接冷却し、その風を長手方向両端部に導くものである。第1の風路9は、第2の仕切板7Aの下側部分および第3の仕切板7Cの鉛直部分を幅方向に対向する一対の垂直壁とし、さらに第3の仕切板7Cの水平部分およびベース部材1の一部を上下方向に対向する上部壁および底部壁として囲われており、横断面矩形状に形成されている。第1の風路9の長手方向両端部は、風が吹き出る出口90となる。第1のファン8から第1の風路9内に送り込まれた風は、電気部品31のコイル部分31Aに直接当たって第1の風路9の長手方向両端部へと二手に分かれ、このコイル部分31Aから多くの熱を奪いながら出口90から吹き出る。この風は、筐体カバー2の正面部2Cおよび背面部2Dに設けた通風孔部21を通って速やかに外部に吹き出る。第1の風路9内において第1のファン8から出口90までの風が流れる平均的な距離は、この風路9全体の長さの半分程度となる。これにより、第1のファン8からの風は、第1の風路9を速やかに流れて外部に排出され、電気部品31は、第1の風路9内を流れる風によって効率よく空気冷却される。
【0033】
上記第1の風路9には、その内部温度を検出する第1の温度センサSが設けられている。第1の温度センサSは、たとえば第2の仕切板7Aの表面に設置されている。なお、第1の温度センサSは、たとえば電気部品31に直接取り付けられていてもよい。第1の温度センサSは、マイクロコンピュータに対して信号を出力する。マイクロコンピュータは、第1の温度センサSからの信号に基づき、第1の風路9の内部温度がたとえば50℃未満の場合には第1のファン8を動作させない。マイクロコンピュータは、第1の風路9の内部温度が50℃以上70℃未満の場合、第1のファン8を低速回転させ、その内部温度が70℃以上になると、第1のファン8を高速回転させる。マイクロコンピュータは、第1の風路9の内部温度が70℃よりさらに上昇して所定温度に達すると、電子部品30および電気部品31によって構成された電源回路全体の動作を停止させる。
【0034】
図4に示すように、第2の風路9’は、第2のファン8’からの風によってヒートシンク5を冷却し、その風を長手方向両端部に導くものである。第2の風路9’は、第2の仕切板7Aの上側部分および第2の仕切板7Bを幅方向に対向する一対の垂直壁とし、さらに第1の仕切板6の一部および第3の仕切板7Cの水平部分を上下方向に対向する上部壁および底部壁として囲われており、横断面矩形状に形成されている。すなわち、第2の風路9’は、第3の仕切板7Cの水平部分を隔壁として第1の風路9と仕切られており、第1の風路9の上方に配置されている。第2の風路9’の長手方向両端部は、風が吹き出る出口90’となる。第2のファン8’から第2の風路9’内に送り込まれた風は、ヒートシンク5に直接当たって第2の風路9’の長手方向両端部へと二手に分かれ、このヒートシンク5から多くの熱を奪いながら出口90’から吹き出る。第2の風路9’内において第2のファン8’から出口90’までの風が流れる平均的な距離も、この風路9’全体の長さの半分程度となる。これにより、第2のファン8’からの風は、第2の風路9’を速やかに流れて外部に排出され、ヒートシンク5は、第2の風路9’内を流れる風によって効率よく空気冷却される。その結果、電子部品30は、ヒートシンク5を介して効率よく冷却される。
【0035】
上記第2の風路9’には、その内部温度を検出する第2の温度センサS’が設けられている。第2の温度センサS’は、たとえば第2の仕切板7Aの表面に設置されている。なお、第2の温度センサS’は、たとえばヒートシンク5に直接取り付けられていてもよい。第2の温度センサS’は、マイクロコンピュータに対して信号を出力する。マイクロコンピュータは、第2の温度センサS’からの信号に基づき、第2の風路9’の内部温度がたとえば40℃未満の場合には第2のファン8’を動作させない。マイクロコンピュータは、第2の風路9’の内部温度が40℃以上60℃未満の場合、第2のファン8’を低速回転させ、さらにその内部温度が60℃以上になると、第2のファン8’を高速回転させる。マイクロコンピュータは、第2の風路9’の内部温度が60℃よりさらに上昇して所定温度に達すると、電子部品30および電気部品31によって構成された電源回路全体の動作を停止させる。
【0036】
次に、上記電源装置Aの作用について説明する。
【0037】
電源装置Aは、動作中、溶接用の大電流および高電圧を出力するのに伴い、電子部品30および電気部品31が発熱してその温度が高まる。電子部品30の熱は、配置空間B1の空気中に伝わるほか、ヒートシンク5に対して直接伝わる。ヒートシンク5に伝えられた熱は、複数のフィン51によって第2の風路9’の空気中に効率よく放熱される。一方、電気部品31は、コイル部分31Aが最も発熱しやすく、このコイル部分31Aの熱が第1の風路9’の空気中に伝わる。
【0038】
第1および第2のファン8,8’が作動すると、吸入口80,80’周辺の空気が第1および第2のファン8,8’に取り込まれ、その空気が風として第1および第2の風路9,9’の長手方向に対して交差する方向に吐出口81から風路9,9’内に送り出される。それに伴い配置空間B2には、吸気孔部20から外部の空気が流入する。
【0039】
このとき、図3および図4に示すように、配置空間B2内における吸入口80,80’付近の空気は、第1および第2のファン8,8’に吸い込まれ、それに伴い外部の空気が多数のスリットからなる吸気孔部20を通じて配置空間B2内に吸い込まれる。これは、吸入口80,80’に対して離れた位置の吸気孔部20が空気の流入抵抗となり、吸入口80,80’付近と吸気孔部20付近との間に十分な圧力差が生じ、配置空間B2内が負圧になるためである。これにより、吸気孔部20から配置空間B2内に吸気された粉塵を含む空気は、吸気孔部20に対してF方向に離れて位置する吸入口80,80’へと減速しながら流れ、空気中の粉塵は、その多くが重力落下し、あるいは配置空間B2の内壁面に当たるなどして空気と分離されやすくなる。その結果、第1および第2のファン8,8’は、配置空間B2を介して粉塵が効果的に除去された空気を取り込み、その空気を第1および第2の風路9,9’内に送り出す。
【0040】
第1のファン8から第1の風路9内に送られた風は、二手に分かれてこの風路9の長手方向両端部へと流れながら電気部品31に当たる。その際、電気部品31のコイル部分31Aに対して風が直接当たるため、このコイル部分31Aから効率的に熱が奪われる。また、第1のファン8から出た風は、第1の風路9の長手方向両端部へと二手に分かれ、比較的短い距離を流れて両側の出口90から外部に排出される。そのため、第1の風路9を流れる風の抵抗が少なくなり、速やかに出口90から風が排出される。これにより、電気部品31は、効率よく空気冷却される。
【0041】
第2のファン8’から第2の風路9’内に送られた風は、ヒートシンク5に対して直接当たり、フィン51に沿ってこの風路9’の長手方向両端部へと流れる。その際、多数のフィン51に対して風が効率よく当たるため、各フィン51の表面から多くの熱が奪われる。また、第2のファン8’から出た風は、第2の風路9’の長手方向両端部へと二手に分かれ、比較的短い距離を流れて両側の出口90’から外部に排出される。そのため、第2の風路9’を流れる風の抵抗が少なくなり、速やかに出口90’から風が排出される。これにより、ヒートシンク5は、効率よく空気冷却されるとともに、このヒートシンク5を介して電子部品30が効率よく冷却される。
【0042】
上記第1および第2の風路9,9’は、第3の仕切板7Cの水平部分によって上段と下段とに分けられている。そのため、たとえば電気部品31からの熱によって暖められた下段の第1の風路9内の空気は、温度が高くなるほど上昇しがちになるものの、上段の第2の風路9’に侵入することなく速やかに外部に排出される。これにより、上段に位置する電子部品30と下段に位置するヒートシンク5とは、互いに熱の影響を受けずに第1および第2のファン8,8’からの風によって効率よく冷却される。
【0043】
本実施形態では、第1および第2のファン8,8’の風量が異なり、さらに第1および第2の風路9,9’内の温度に応じて第1および第2のファン8,8’の回転速度が可変制御される。これにより、第1および第2の風路9,9’内を流れる風は、それぞれの冷却対象や温度上昇特性に応じて適切な風速に設定され、上段に位置するヒートシンク5と下段に位置する電気部品31とは、それぞれ異なる風速の風によって効率よく冷却される。本実施形態では、特に下側の第1のファン8よりも上側の第2のファン8’の風量が大きくなっているので、上段に位置するヒートシンク5の方がより空気冷却されやすく、このようなヒートシンク5を介して電子部品30が効率よく冷却される。また、第1および第2のファン8,8’は、それぞれ個別に制御され、第1および第2の風路9,9’内の温度が所定温度に達するまでは動作停止状態とされるため、省電力化や騒音低減にも寄与する。
【0044】
上記電源装置Aは、たとえば工場内の床面上に配置され、その床面付近には、粉塵が集まりやすく、より多くの粉塵を含む空気が存在する。このような状態において、第1および第2のファン8,8’が作動すると、上側よりも下側の第1のファン8の方が床面に近い空気を吸い込みがちとなる。その反面、下側の第1のファン8は、上側の第2のファン8’よりも風量小で吸気力も小さくなっている。これにより、下側の第1のファン8によって吸い込まれる粉塵の量が抑えられ、床面に近い下側の風路9でも、第1のファン8からの粉塵の侵入が効果的に抑制される。
【0045】
電源装置Aの動作時、仮に、第1および第2のファン8,8’が故障などによって風量低下あるいは送風停止の状態となり、もしくは電気部品31およびヒートシンク5がファン8,8’の風による冷却能力を超えて過熱状態になると、第1および第2の風路9,9’の内部温度が上昇する。これら第1および第2の風路9,9’では、第1および第2の温度センサS,S’によって個別に内部温度が検出され、いずれか一方の内部温度が所定値以上に達すると、電子部品30および電気部品31によって構成された電源回路全体の動作が停止させられる。これにより、電源装置Aは、第1および第2の風路9,9’のうちのいずれか一方の冷却能力が急激に低下するだけで全体の動作が緊急停止させられるといったフェイルセーフ機能をもつため、アーク溶接などに必要な大電流および高電圧を安全に出力することができる。
【0046】
なお、たとえば上段のヒートシンク5よりも下段の電気部品31の方が発熱によって温度が高くなりやすい場合、下段の第1のファン8として風量大のものを採用してもよい。また、たとえば電子部品30および電気部品31の動作が時間的に異なる場合、それに応じて第1および第2のファン8,8’を作動させるタイミングをそれぞれ異なるようにすることもできる。
【0047】
冷却対象となる電子部品30および電気部品31は、第1および第2のファン8,8’が第1および第2の風路9,9’の長手方向中間部に位置するために、それぞれのファン8,8’の周辺に位置した恰好となる。すなわち、F方向において、第1のファン8と各電気部品31との距離や、第2のファン8’と各電子部品30との距離は、第1および第2の風路9,9’全体の長さに比べて短くなり、これらのファン8,8’に対して比較的近い位置に電子部品30および電気部品31が配置される。このようなF方向の位置関係によっても、電子部品30および電気部品31が効率よく冷却される。そのため、電子部品30および電気部品31については、それらの発熱特性に応じてF方向の位置を決める必要はなく、ある程度自由に配置することができる。
【0048】
上記電源装置Aの運用時は、エアブローガンを用いた除塵作業が行われる。その際、たとえば第1の風路9の一方の出口90からエアブローガンの空気噴出口を内部に向けて圧縮空気が噴射される。圧縮空気は、第1の風路9の長手方向に沿う噴流となり、電気部品31のコイル部分31Aに付着した粉塵を他方の出口90に向けて勢いよく吹き飛ばす。エアブローガンから噴射された圧縮空気の噴射方向は、第1の風路9の長手方向に沿った方向となり、すなわち第1のファン8の送風方向に対して交差した方向となる。これにより、エアブローガンを用いた除塵作業時、圧縮空気の強い噴流によって第1のファン8が高速に逆転させられるといったことはなく、このファン8の羽根や回転軸受を破損させるおそれはない。同様に、第2の風路9’についても、エアブローガンを用いて除塵作業を行うことができ、その際に第2のファン8’の羽根や回転軸受を破損させるおそれはない。また、第1および第2のファン8,8’から風とともに第1および第2の風路9,9’内に入る粉塵が抑えられるため、除塵作業を行うまでの期間を延長し、動作効率を高めることができる。
【0049】
図10および図11は、本発明に係る電源装置の他の実施形態を示している。なお、図10に示す電源装置A1は、先述の実施形態によるものとは別の電気部品32を追加して所定の位置に配置したものである。図11に示す電源装置A2は、先述の実施形態によるものとは吸気孔部20の位置が異なるものである。先述した実施形態によるものと同一または類似の構成要素については、同一または類似の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図10に示す電源装置A1では、電気部品32がたとえば第2の風路9’の上部壁となる第1の仕切板6を貫通してコイル部分32Aが風路9’内に位置するように配置されている。第2のファン8’からの風は、電気部品32のコイル部分32Aとヒートシンク5のフィン51に当たりながら第2の風路9’の長手方向両端部へと流れて外部に吹き出る。このような構成によれば、1つの風路9’の異なる壁に沿って配置された複数の部品を効率よく空気冷却することができる。なお、その他には、ファンが配置された垂直壁、あるいは上部壁に対向する底部壁に部品を配置しても、同様の効果を得ることができる。
【0051】
図11に示す電源装置A2では、筐体カバー2の側面部2Aにおける吸気孔部20は、その側面部2AのF方向両端部寄りの領域でかつ上下方向中間部付近に設けられている。この電源装置A2を工場内の床面上に配置した場合、吸気孔部20は、粉塵が集積した床面付近より上方に離れて位置する。そのため、配置空間B2には、吸気孔部20を通じて空気とともに吸い込まれる粉塵の量が抑えられ、ひいては第1および第2の風路に対する第1および第2のファン8,8’からの粉塵の侵入がより効果的に抑制される。このような粉塵の侵入を抑制する効果は、吸気孔部20を上下方向上部寄りに位置させるほどより高めることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
上記の各実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、各請求項に記載した事項の範囲内での各部の変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0054】
風路には、電子部品を直接臨ませるように配置してもよい。
【0055】
ファンは、たとえば風路の長手方向一端部に配置され、その長手方向一端部から他端部へと風を送るように構成されたものでもよい。この場合、風路の長手方向他端部が風の出口となる。
【0056】
第1および第2の風路は、たとえば水平方向に隣接するように配置されたものでもよい。
【0057】
風路の数は2つに限らず、3つ以上の風路を設けてもよい。その場合、各風路に対応してファンが設けられる。
【符号の説明】
【0058】
A,A1,A2 電源装置
1 ベース部材
2 筐体カバー
2A,2B 側面部
2C 正面部
2D 背面部
20 吸気孔部
21 通風孔部
30 電子部品
31 電気部品
5 ヒートシンク
6 第1の仕切板
7A,7B 第2の仕切板
7C 第3の仕切板
8 第1のファン
8’ 第2のファン
80,80’ 吸入口
81,81’ 吐出口
9 第1の風路
9’ 第2の風路
90,90’ (風路の)出口
S 第1の温度センサ
S’ 第2の温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞状の風路と、
上記風路に風を送り込むファンと、
上記風路に沿って配置される複数の部品と、
を備え、
上記風路を通る風によって上記複数の部品が冷却されるように構成された電源装置であって、
上記風路には、互いに隔てられた第1および第2の風路が含まれるとともに、
上記ファンには、上記第1および第2の風路のそれぞれに風を送り込む第1および第2のファンが含まれることを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
少なくとも一部が水平に配置される仕切板を備え、
上記第1および第2の風路は、水平長手状を呈して互いに平行をなすとともに、上記仕切板の水平部分を隔壁として上下に隔てられている、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
上記第1および第2のファンは、互いに風量が異なり、これらのうち風量大となるファンは、上記第1および第2の風路のうち上側の風路に対応して配置されている、請求項3に記載の電源装置。
【請求項4】
上記第1および第2の風路のそれぞれは、上記隔壁に対して垂直に配置されて互いに対向する一対の垂直壁と、上記隔壁に対向する上部壁あるいは底部壁とによって囲われているとともに、長手方向両端部が風の出口になっており、
上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路の長手方向中間部に位置し、上記一対の垂直壁の一方の内面から風路の長手方向に対して交差する方向に風を送り込むように配置されている、請求項2または3に記載の電源装置。
【請求項5】
装置内部を保護する筐体カバーを備え、
上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路のそれぞれに隣接し、かつ上記筐体カバーによって囲まれた空間に配置されるとともに、
上記筐体カバーは、上記第1および第2のファンに対向するとともに外部の空気を上記空間内に導くための吸気孔部を有するファン対向壁を有しており、かつ、
上記吸気孔部は、上記第1および第2のファンに対して正面となる領域に対して上記ファン対向壁の面内方向に位置ずれした水平方向端部寄りの領域に設けられている、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
上記吸気孔部は、上記ファン対向壁における上下方向中間部ないし上部寄りの領域に設けられている、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
上記筐体カバーは、上記第1および第2の風路の各出口に面する正面部および背面部を有しており、その正面部および背面部には、上記各出口からの風を外部に導くための通風孔部が設けられている、請求項5または6に記載の電源装置。
【請求項8】
上記複数の部品には、リアクトルまたはトランスといった電気部品、ならびに電子部品およびヒートシンクが含まれ、
上記第1および第2の風路のうち、下側の風路には、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記電気部品が配置され、その電気部品のコイル部分が風路内に位置する一方、上側の風路には、上記一対の垂直壁の他方に沿って内側に上記ヒートシンクが配置されており、
上記電子部品は、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記ヒートシンクと接するように配置されている、請求項4ないし7のいずれかに記載の電源装置。
【請求項9】
上記第1および第2の風路には、それぞれの内部温度を検出する第1および第2の温度センサが設けられており、
上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の温度センサからの信号に基づき、それぞれ独立して制御されるように構成されている、請求項1ないし8のいずれかに記載の電源装置。
【請求項1】
空洞状の風路と、
上記風路に風を送り込むファンと、
上記風路に沿って配置される複数の部品と、
を備え、
上記風路を通る風によって上記複数の部品が冷却されるように構成された電源装置であって、
上記風路には、互いに隔てられた第1および第2の風路が含まれるとともに、
上記ファンには、上記第1および第2の風路のそれぞれに風を送り込む第1および第2のファンが含まれることを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
少なくとも一部が水平に配置される仕切板を備え、
上記第1および第2の風路は、水平長手状を呈して互いに平行をなすとともに、上記仕切板の水平部分を隔壁として上下に隔てられている、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
上記第1および第2のファンは、互いに風量が異なり、これらのうち風量大となるファンは、上記第1および第2の風路のうち上側の風路に対応して配置されている、請求項3に記載の電源装置。
【請求項4】
上記第1および第2の風路のそれぞれは、上記隔壁に対して垂直に配置されて互いに対向する一対の垂直壁と、上記隔壁に対向する上部壁あるいは底部壁とによって囲われているとともに、長手方向両端部が風の出口になっており、
上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路の長手方向中間部に位置し、上記一対の垂直壁の一方の内面から風路の長手方向に対して交差する方向に風を送り込むように配置されている、請求項2または3に記載の電源装置。
【請求項5】
装置内部を保護する筐体カバーを備え、
上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の風路のそれぞれに隣接し、かつ上記筐体カバーによって囲まれた空間に配置されるとともに、
上記筐体カバーは、上記第1および第2のファンに対向するとともに外部の空気を上記空間内に導くための吸気孔部を有するファン対向壁を有しており、かつ、
上記吸気孔部は、上記第1および第2のファンに対して正面となる領域に対して上記ファン対向壁の面内方向に位置ずれした水平方向端部寄りの領域に設けられている、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
上記吸気孔部は、上記ファン対向壁における上下方向中間部ないし上部寄りの領域に設けられている、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
上記筐体カバーは、上記第1および第2の風路の各出口に面する正面部および背面部を有しており、その正面部および背面部には、上記各出口からの風を外部に導くための通風孔部が設けられている、請求項5または6に記載の電源装置。
【請求項8】
上記複数の部品には、リアクトルまたはトランスといった電気部品、ならびに電子部品およびヒートシンクが含まれ、
上記第1および第2の風路のうち、下側の風路には、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記電気部品が配置され、その電気部品のコイル部分が風路内に位置する一方、上側の風路には、上記一対の垂直壁の他方に沿って内側に上記ヒートシンクが配置されており、
上記電子部品は、上記一対の垂直壁の他方を貫通して上記ヒートシンクと接するように配置されている、請求項4ないし7のいずれかに記載の電源装置。
【請求項9】
上記第1および第2の風路には、それぞれの内部温度を検出する第1および第2の温度センサが設けられており、
上記第1および第2のファンは、上記第1および第2の温度センサからの信号に基づき、それぞれ独立して制御されるように構成されている、請求項1ないし8のいずれかに記載の電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−211773(P2011−211773A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74438(P2010−74438)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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