説明

電磁弁

【課題】シートのガイド孔と軸部との隙間に流体中の異物が噛み込まれないようにする。
【解決手段】可動部材33における軸部332の外周面に、低圧通路311とアーマチャ室37との間を連通させる軸部逃がし部334を設ける。これによると、アーマチャ室37と低圧通路311との間で流体が出入りする際、その流体は主に軸部逃がし部334を通り、ガイド孔313と軸部332とが摺動する部位には浸入しにくいため、その摺動部位に流体中の異物を噛み込むことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路を開閉する電磁弁に関し、流体を吸入・吐出するポンプに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁弁は、可動部材をシートにて摺動自在に保持し、ソレノイドへの通電を制御することにより可動部材を駆動して流体通路を開閉するようになっている。可動部材は、磁気回路を構成するアーマチャと、シートのガイド孔に摺動自在に挿入される軸部を備えている。ソレノイドとシートとの間には、アーマチャが配置されるアーマチャ室が区画形成されており、このアーマチャ室と流体通路は、シートによって隔てられている。但し、可動部材の変位に伴ってアーマチャ室と流体通路間で流体が容易に出入りできるようにするために、シートに形成された貫通孔によってアーマチャ室と流体通路とが連通されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−100590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁弁は、アーマチャ室と流体通路間で流体が出入りする際に、ガイド孔と軸部との隙間を介しても流体が出入りし、その隙間に流体中の異物が侵入して噛み込む虞があった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、シートのガイド孔と軸部との隙間に流体中の異物が噛み込まれないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、通電時に吸引力を発生するソレノイド(32)と、ソレノイドへの通電状態に応じて変位して流体通路(311)を開閉する可動部材(33)と、可動部材を摺動自在に保持するシート(31)とを備える電磁弁において、ソレノイドとシートとの間にアーマチャ室(37)が区画形成され、可動部材は、アーマチャ室内に位置して磁気回路を構成するアーマチャ(331)と、一端側にアーマチャが固定されるとともに、シートの円柱形状のガイド孔(313、313a、313b)に摺動自在に挿入される円柱形状の軸部(332、332a、332b)と、軸部における反アーマチャ側に形成されるとともに、シートのシート面(312)と接離して流体通路を開閉する弁体部(333)とを備え、軸部の外周面に、流体通路とアーマチャ室との間を連通させる軸部逃がし部(334、334a、334b)が形成されていることを特徴とする。
【0007】
これによると、アーマチャ室(37)と流体通路(311)との間で流体が出入りする際、その流体は主に軸部逃がし部(334、334a、334b)を通り、ガイド孔(313、313a、313b)と軸部(332、332a、332b)とが摺動する部位には浸入しにくいため、ガイド孔と軸部とが摺動する部位に流体中の異物を噛み込むことを防止することができる。
【0008】
また、ガイド孔と軸部とが摺動する部位の面積が小さくなるため、摺動抵抗が小さくなり、従来よりも小さい力で可動部材(33)を動かすことができる。
【0009】
さらに、軸部逃がし部を軸部の外周面に形成するため、その加工が容易である。さらにまた、従来の電磁弁においてシート(31)に形成されていた貫通孔を廃止することも可能である。
【0010】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の電磁弁において、軸部逃がし部(334、334a、334b)を複数個形成することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の電磁弁において、軸部逃がし部(334、334a、334b)は、軸部(332、332a、332b)の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする。
【0012】
これによると、軸部逃がし部(334、334a、334b)の流体の圧力が軸部(332、332a、332b)に均等に作用しやすくなり、ガイド孔(313、313a、313b)と軸部とが摺動する部位の面圧を略均一にすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁弁において、軸部逃がし部(334、334a、334b)を、円弧と弦によって囲まれた半月状の断面形状にすることができる。また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁弁において、軸部逃がし部(334、334a、334b)を溝にすることもできる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、通電時に吸引力を発生するソレノイド(32)と、ソレノイドへの通電状態に応じて変位して流体通路(311)を開閉する可動部材(33)と、可動部材を摺動自在に保持するシート(31)とを備える電磁弁において、ソレノイドとシートとの間にアーマチャ室(37)が区画形成され、可動部材は、アーマチャ室内に位置して磁気回路を構成するアーマチャ(331)と、一端側にアーマチャが固定されるとともに、シートの円柱形状のガイド孔(313、313a、313b)に摺動自在に挿入される円柱形状の軸部(332、332a、332b)と、軸部における反アーマチャ側に形成されるとともに、シートのシート面(312)と接離して流体通路を開閉する弁体部(333)とを備え、ガイド孔に、流体通路とアーマチャ室との間を連通させるガイド孔逃がし部(314)が形成されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、アーマチャ室(37)と流体通路(311)との間で流体が出入りする際、その流体は主にガイド孔逃がし部(314)を通り、ガイド孔(313、313a、313b)と軸部とが摺動する部位には浸入しにくくなるため、ガイド孔と軸部とが摺動する部位に流体中の異物を噛み込むことを防止することができる。
【0016】
また、ガイド孔と軸部とが摺動する部位の面積が小さくなるため、摺動抵抗が小さくなり、従来よりも小さい力で可動部材(33)を動かすことができる。さらに、従来の電磁弁においてシート(31)に形成されていた貫通孔を廃止することも可能である。
【0017】
請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載の電磁弁において、ガイド孔逃がし部(314)を複数個形成することができる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の電磁弁において、ガイド孔逃がし部(314)は、ガイド孔(313、313a、313b)の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする。
【0019】
これによると、ガイド孔逃がし部(314)の流体の圧力が軸部(332、332a、332b)に均等に作用しやすくなり、ガイド孔(313、313a、313b)と軸部とが摺動する部位の面圧を略均一にすることができる。
【0020】
請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電磁弁において、アーマチャ(331)、軸部(332、332a、332b)、および弁体部(333)を一体化することができる。
【0021】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電磁弁において、軸部(332、332a、332b)は、アーマチャ(331)と一体化された第1軸部(332、332a、332b)と、弁体部(333)が形成された第2軸部(332、332a、332b)とに分割され、弁体部および第2軸部はアーマチャおよび第1軸部に向かってスプリング(39)にて付勢され、アーマチャおよび第1軸部がソレノイドに吸引されると、弁体部および第2軸部がアーマチャおよび第1軸部に追従して移動するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
これによると、ソレノイド(32)に吸引されるのはアーマチャ(331)および第1軸部(332、332a、332b)であり、ソレノイドに吸引されるものが軽くなるため、ソレノイドの吸引力を小さくすることができ、ひいてはソレノイドを小型にすることができる。
【0023】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁弁を用いたポンプを示す断面図である。
【図2】図1の電磁弁単体を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】第1実施形態の第1変型例を示す要部の断面図である。
【図5】第1実施形態の第2変型例を示す要部の断面図である。
【図6】第1実施形態の第3変型例を示す要部の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電磁弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る電磁弁を用いたポンプを示す断面図、図2は図1の電磁弁単体を示す断面図、図3は図2のA−A線に沿う断面図である。
【0027】
本実施形態に係るポンプは、圧縮着火式内燃機関に燃料を噴射するための燃料噴射装置において、高圧の燃料を蓄えるコモンレールに高圧の燃料を供給する燃料供給ポンプとして用いられる。
【0028】
図1、図2において、ポンプハウジング10には、その下端側に位置するカム室101と、このカム室101からポンプハウジング10の上方に向かって延びる円柱状の摺動子挿入孔102と、この摺動子挿入孔102からポンプハウジング10の上端面まで延びる円柱状のシリンダ挿入孔103とが形成されている。
【0029】
カム室101には、図示しない圧縮着火式内燃機関(以下、内燃機関という)にて駆動されるカム軸11が配置され、このカム軸11はポンプハウジング10に回転自在に支持されている。また、カム軸11にはカム12が形成されている。
【0030】
シリンダ挿入孔103には、シリンダ挿入孔103を塞ぐようにしてシリンダ13が取り付けられている。このシリンダ13には、円柱状のプランジャ挿入穴131が形成されており、このプランジャ挿入穴131に、円柱状のプランジャ14が往復動自在に挿入されている。そして、このプランジャ14の上端面とシリンダ13の内周面とによりプランジャ室15が形成されている。
【0031】
プランジャ14の下端にシート141が連結されており、このシート141はスプリング16によって摺動子17に押し付けられている。この摺動子17は、円筒状に形成されており、摺動子挿入孔102に往復動自在に挿入されている。
【0032】
摺動子17にはカムローラ18が回転自在に取り付けられており、このカムローラ18はカム12に当接している。そして、カム軸11の回転によりカム12が回転すると、シート141、摺動子17およびカムローラ18とともに、プランジャ14が往復駆動されるようになっている。
【0033】
シリンダ13とポンプハウジング10との間には、燃料溜り19が形成されている。この燃料溜り19には、図示しない低圧供給ポンプから吐出される低圧の燃料が、図示しない低圧燃料配管を介して供給されるようになっている。また、燃料溜り19は、シリンダ13に形成された低圧連通路132、シリンダ13と後述する電磁弁30のシート31との間に形成された吸入室21、および後述する電磁弁30内の低圧通路311を介して、プランジャ室15に連通されている。
【0034】
シリンダ13には、プランジャ室15に常時連通する高圧連通路133が形成されている。そして、プランジャ室15は、この高圧連通路133、吐出弁20、および図示しない高圧燃料配管を介して図示しないコモンレールに接続されている。
【0035】
吐出弁20は、高圧連通路133の下流側においてシリンダ13に取り付けられている。この吐出弁20は、高圧燃料供給経路を開閉する弁体201と、この弁体201を閉弁方向に付勢するスプリング202とを備えている。そして、プランジャ室15で加圧された燃料は、スプリング202の付勢力に抗して弁体201を開弁向きに移動させ、コモンレールに圧送されるようになっている。
【0036】
電磁弁30は、プランジャ14の上端面に対向した位置において、プランジャ室15を閉塞するようにしてシリンダ13に螺合固定されている。
【0037】
電磁弁30はシート31を備えており、このシート31には、一端がプランジャ室15に連通し他端が吸入室21に連通する流体通路としての低圧通路311と、この低圧通路311中に配置されたシート面312とが形成されている。
【0038】
電磁弁30は、通電時に吸引力を発生するソレノイド32、ソレノイド32への通電状態に応じて変位して低圧通路311を開閉する可動部材33、この可動部材33を反吸引側に向かって付勢する(換言すると、可動部材33を開弁向きに付勢する)第1スプリング34、および可動部材33の開弁時の位置を規制するストッパ35を有している。ストッパ35は、電磁弁30とシリンダ13に挟持されており、低圧通路311とプランジャ室15とを連通させる連通孔351が多数形成されている。
【0039】
シート31とソレノイド32との間に円筒状のスペーサ36が配置されて、シート31とソレノイド32との間にアーマチャ室37が区画形成され、このアーマチャ室37はシート31によって低圧通路311および吸入室21と隔てられている。
【0040】
可動部材33は、アーマチャ室37内に位置して磁気回路を構成する円盤状のアーマチャ331、シート31に形成された円柱形状のガイド孔313に摺動自在に挿入される円柱形状の軸部332、および軸部332における反アーマチャ側に形成された弁体部333を備えている。この弁体部333は、シート面312と接離して低圧通路311を開閉する。軸部332と弁体部333は一体物であり、軸部332および弁体部333の一体物と、アーマチャ331は、かしめ等にて一体化されている。
【0041】
図2、図3に示すように、軸部332の外周面には、低圧通路311とアーマチャ室37との間を常時連通させる軸部逃がし部334が形成されている。この軸部逃がし部334は、円弧と弦によって囲まれた半月状の断面形状である。
【0042】
また、軸部逃がし部334は、軸部332の周方向に沿って等間隔に3つ配置されており、これにより、軸部逃がし部334の流体の圧力が軸部332に均等に作用しやすくなり、ガイド孔313と軸部332とが摺動する部位の面圧を略均一にすることができる。
【0043】
なお、本例では、軸部逃がし部334を3個形成したが、軸部逃がし部334は、1個でもよいし、2個、或いは4個以上形成してもよい。
【0044】
上記構成における作動を説明する。まず、電磁弁30のソレノイド32に通電されていないときには、可動部材33は第1スプリング34の付勢力により開弁位置に移動されている。すなわち、弁体部333がシート面312から離れており、低圧通路311が開かれている。
【0045】
そして、低圧通路311が開かれている状態でプランジャ14が下降するときには、低圧供給ポンプから吐出される低圧の燃料が、燃料溜り19、低圧連通路132、吸入室21、および低圧通路311を介して、プランジャ室15に供給される。
【0046】
次いで、プランジャ14が上昇し始めると、プランジャ14はプランジャ室15内の燃料を加圧しようとする。しかし、プランジャ14の上昇開始初期においては、電磁弁30に通電されておらず、低圧通路311が開かれているため、プランジャ室15内の燃料は、低圧通路311、吸入室21および低圧連通路132を介して燃料溜り19側に溢流し、加圧されない。
【0047】
このプランジャ室15内の燃料の溢流中に電磁弁30に通電されると、可動部材33が第1スプリング34の付勢力に抗して吸引され、弁体部333がシート面312に着座して低圧通路311が閉塞される。これにより、燃料溜り19側への燃料の溢流が停止されて、プランジャ14によるプランジャ室15内の燃料の加圧が開始される。そして、プランジャ室15内の燃料圧力により吐出弁20が開弁され、燃料がコモンレールに圧送される。
【0048】
本実施形態では、可動部材33の変位に伴って、ガイド孔313と軸部332との隙間を介して、アーマチャ室37と低圧通路311との間を燃料が出入りするが、その際、その燃料は主に軸部逃がし部334を通り、ガイド孔313と軸部332とが摺動する部位には浸入しにくいため、ガイド孔313と軸部332とが摺動する部位に燃料中の異物を噛み込むことを防止することができる。
【0049】
また、ガイド孔313と軸部332とが摺動する部位の面積が小さくなるため、摺動抵抗が小さくなり、従来よりも小さい力で可動部材33を動かすことができる。したがって、ソレノイド32の吸引力を小さくすることができ、ひいてはソレノイド32を小型にすることができる。
【0050】
さらに、軸部逃がし部334を軸部332の外周面に形成するため、その加工が容易である。さらにまた、従来の電磁弁においてシートに形成されていた貫通孔を廃止することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、軸部逃がし部334は、軸部332の外周面を平面カットした半月状の断面形状としたが、図4に示す第1変型例や図5に示す第2変形例のように、軸部逃がし部334は溝であってもよい。
【0052】
具体的には、図4に示す第1変型例は、軸部332が十字状の断面形状で、軸部逃がし部334が扇状(より詳細には、1/4円状)の断面形状になっている。図5に示す第2変型例は、軸部逃がし部334は略矩形の断面形状になっている。また、第1変型例および第2変形例では、軸部逃がし部334は、軸部332の周方向に沿って等間隔に4つ配置されている。
【0053】
そして、第1変型例および第2変形例のように、軸部逃がし部334を溝にした場合、軸部332を平面カットした場合よりも、ガイド孔313と軸部332とが摺動する部位の面積を確保しつつ、軸部逃がし部334の通路面積を大きくすることができる。
【0054】
なお、第1変型例や第2変形例では、軸部逃がし部334を4個形成したが、軸部逃がし部334は、1〜3個、或いは5個以上形成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、軸部332に逃がし部334を形成したが、図6に示す第3変型例のように、シート31のガイド孔313に、低圧通路311とアーマチャ室37との間を常時連通させるガイド孔逃がし部314を形成してもよい。
【0056】
具体的には、図6に示す第3変型例は、ガイド孔逃がし部314は略矩形の断面形状になっている。また、ガイド孔逃がし部314は、ガイド孔313の周方向に沿って等間隔に4つ配置されている。なお、第3変型例において、ガイド孔逃がし部314は、1〜3個、或いは5個以上形成してもよい。
【0057】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図7は本実施形態に係る電磁弁を示す断面図である。本実施形態は、シート31および可動部材33を分割したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図7に示すように、軸部332は、アーマチャ331と一体化された第1軸部332aと、弁体部333が形成された第2軸部332bとに分割されている。また、シート31は、第1ガイド孔313a内に第1軸部332aを摺動自在に保持する第1シート31aと、第2ガイド孔313b内に第2軸部332bを摺動自在に保持する第2シート31bとに分割されている。
【0059】
第1シート31aと第2シート31bとの間には、第1ガイド孔313aおよび第2ガイド孔313bと連通する中間室38が形成されている。
【0060】
第1軸部332aの外周面には、中間室38とアーマチャ室37との間を常時連通させる第1軸部逃がし部334aが形成されている。第2軸部332bの外周面には、中間室38と低圧通路311との間を常時連通させる第2軸部逃がし部334bが形成されている。
【0061】
第2軸部332bにおける反弁体部側が、中間室38に突出している。中間室38には、第2軸部332bを第1軸部332aに向かって付勢する(換言すると、第2軸部332bを閉弁向きに付勢する)第2スプリング39が配置されている。
【0062】
上記構成において、電磁弁30のソレノイド32に通電されていないときには、アーマチャ331および第1軸部332aが第1スプリング34に付勢されて第2軸部332b側に向かって移動し、第1軸部332aが第2軸部332bに当接する。さらに、アーマチャ331と第1軸部332aと第2軸部332bが、第1スプリング34の付勢力により第2スプリング39の付勢力に抗して開弁位置に移動される。すなわち、弁体部333がシート面312から離れて、低圧通路311が開かれる。
【0063】
一方、電磁弁30に通電されて、アーマチャ331および第1軸部332aが第1スプリング34の付勢力に抗して吸引されると、第2スプリング39に付勢された第2軸部332bがアーマチャ331および第1軸部332aに追従して移動し、弁体部333がシート面312に着座して低圧通路311が閉塞される。
【0064】
そして、本実施形態では、可動部材33の変位に伴って、第1軸部逃がし部334a、第2軸部逃がし部334b、および中間室38を介して、アーマチャ室37と低圧通路311との間を燃料が出入りする。したがって、第1ガイド孔313aと第1軸部332aとが摺動する部位や、第2ガイド孔313bと第2軸部332bとが摺動する部位に、燃料中の異物を噛み込むことを防止することができる。
【0065】
また、ソレノイド32に吸引されるのは、可動部材33のうちアーマチャ331および第1軸部332aであり、ソレノイド32に吸引されるものが軽くなるため、ソレノイド32の吸引力を小さくすることができ、ひいてはソレノイド32を小型にすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、第1軸部332aおよび第2軸部332bにそれぞれ逃がし部334a、334bを形成したが、シート31の第1ガイド孔313aおよび第2ガイド孔313bにそれぞれ逃がし部を形成してもよい。
【0067】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、本発明の電磁弁を内燃機関用燃料噴射装置の燃料供給ポンプに適用したが、本発明は、流体通路を開閉する電磁弁に広く適用することができる。また、上記各実施形態は、実施可能な範囲で任意に組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0068】
31 シート
32 ソレノイド
33 可動部材
37 アーマチャ室
311 流体通路(低圧通路)
312 シート面
313 ガイド孔
331 アーマチャ
332 軸部
333 弁体部
334 軸部逃がし部
313a ガイド孔
313b ガイド孔
332a 軸部
332b 軸部
334a 軸部逃がし部
334b 軸部逃がし部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に吸引力を発生するソレノイド(32)と、
前記ソレノイドへの通電状態に応じて変位して流体通路(311)を開閉する可動部材(33)と、
前記可動部材を摺動自在に保持するシート(31)とを備える電磁弁において、
前記ソレノイドと前記シート(31)との間にアーマチャ室(37)が区画形成され、
前記可動部材は、前記アーマチャ室内に位置して磁気回路を構成するアーマチャ(331)と、一端側に前記アーマチャが固定されるとともに、前記シートの円柱形状のガイド孔(313、313a、313b)に摺動自在に挿入される円柱形状の軸部(332、332a、332b)と、前記軸部における反アーマチャ側に形成されるとともに、前記シートのシート面(312)と接離して前記流体通路を開閉する弁体部(333)とを備え、
前記軸部の外周面に、前記流体通路と前記アーマチャ室との間を連通させる軸部逃がし部(334、334a、334b)が形成されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記軸部逃がし部(334、334a、334b)は、複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記軸部逃がし部(334、334a、334b)は、前記軸部(332、332a、332b)の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記軸部逃がし部(334、334a、334b)は、円弧と弦によって囲まれた半月状の断面形状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項5】
前記軸部逃がし部(334、334a、334b)は、溝であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項6】
通電時に吸引力を発生するソレノイド(32)と、
前記ソレノイドへの通電状態に応じて変位して流体通路(311)を開閉する可動部材(33)と、
前記可動部材を摺動自在に保持するシート(31)とを備える電磁弁において、
前記ソレノイドと前記シートとの間にアーマチャ室(37)が区画形成され、
前記可動部材は、前記アーマチャ室内に位置して磁気回路を構成するアーマチャ(331)と、一端側に前記アーマチャが固定されるとともに、前記シートの円柱形状のガイド孔(313、313a、313b)に摺動自在に挿入される円柱形状の軸部(332、332a、332b)と、前記軸部における反アーマチャ側に形成されるとともに、前記シートのシート面(312)と接離して前記流体通路を開閉する弁体部(333)とを備え、
前記ガイド孔に、前記流体通路と前記アーマチャ室との間を連通させるガイド孔逃がし部(314)が形成されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項7】
前記ガイド孔逃がし部(314)は、複数個形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記ガイド孔逃がし部(314)は、前記ガイド孔(313、313a、313b)の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記アーマチャ(331)、前記軸部(332、332a、332b)、および前記弁体部(333)は一体化されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項10】
前記軸部(332、332a、332b)は、前記アーマチャ(331)と一体化された第1軸部(332、332a、332b)と、前記弁体部(333)が形成された第2軸部(332、332a、332b)とに分割され、
前記弁体部および前記第2軸部は前記アーマチャおよび前記第1軸部に向かってスプリング(39)にて付勢され、前記アーマチャおよび前記第1軸部が前記ソレノイドに吸引されると、前記弁体部および前記第2軸部が前記アーマチャおよび前記第1軸部に追従して移動するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196435(P2011−196435A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62683(P2010−62683)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】