説明

電磁弁

【課題】蓋部材が弁座と一体に成形される電磁弁において、蓋部材の吸水変形による弁座の傾きを抑制し、シール不良の発生を防止する。
【解決手段】蒸発燃料処理装置のパージ通路に設置される電磁弁において、蓋部材としてのバルブシート5は、バルブ6が着座または離座することにより流路を遮断または開放する弁座としてのシート面40が筒部39の下端に形成されている。一方、バルブ6が組み付けられるバルブケース4は、弁軸Zに近い側の側壁21と短手対称面Syに対して対称に補助壁22が設けられる。バルブシート5は、天板部33が側壁21の周縁端面21aに溶着されるとともに、補助壁22の補助端面22aに溶着される。これにより、バルブシート5が吸水性樹脂で成形される場合、バルブシート5が吸水したとき短手対称面Syに対してほぼ均等に膨潤するため、シート面40の傾きを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路を連通または遮断する電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸発燃料処理装置のパージ通路に設置される電磁弁が知られている。例えば、特許文献1の電磁弁は、樹脂で成形される弁ケースの開口の周縁部に、樹脂で成形される蓋部材が溶着されて形成される。弁ケースは、蒸発燃料を導入する入口ポートが設けられるとともに、外部から通電されて弁部材を往復移動させるための電磁駆動部が組み付けられる。一方、蓋部材は、蒸発燃料を排出する出口ポートが設けられるとともに、出口ポートに連通する筒部の端面に弁座が形成される。電磁弁は、弁部材が弁座に着座または離座することで、入口ポートから出口ポートへの蒸発燃料の流路を遮断または連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−308045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、弁ケースおよび蓋部材を成形する樹脂材料として、耐燃料性および難燃性を有するPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)66等が使用される。しかし、蒸発燃料中にアルコール燃料が含まれる場合には、加水分解しやすいPBT等は不適当である。一方、PA66等は、加水分解はしないものの、アルコールの脱水反応によって生成する水分を吸水しやすいという特性がある。
蓋部材が吸水性樹脂で成形される場合、蓋部材は、周縁部が弁ケースに溶着固定されているため、吸水によって膨潤すると、弁軸方向の外側へせり上がるように変形する。
【0005】
特に特許文献1に記載の電磁弁のように弁ケース内部の入口ポート側にチャンバが設けられる場合、弁軸が弁ケースの開口の中心軸と偏心して配置されることとなる。すると、蓋部材がせり上がって変形するとき、弁軸からの距離の長い側の変形が弁軸からの距離の短い側の変形よりも大きくなる。その結果、蓋部材に一体に成形される弁座が、弁ケースに設けられる弁部材の端面に対して傾くこととなり、弁部材が弁座へ着座したとき、シール不良が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、蓋部材が弁座と一体に成形される電磁弁において、蓋部材の吸水変形による弁座の傾きを抑制し、シール不良の発生を防止する電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の電磁弁は、弁ケース、蓋部材、弁部材、付勢手段、電磁駆動部を備える。
弁ケースは、側壁と底壁とからなり一端に開口を有する略筒状に樹脂で成形される。弁ケースは、開口の中心軸に対して偏心して配置される弁収容部、及び、開口の中心軸に対して弁収容部と反対側に設けられ側壁もしくは底壁の外部と連通する第1ポート、を有する。
蓋部材は、樹脂で成形され、開口の周縁に形成される周縁端面に溶着または接着されて開口を塞ぐ天板部、天板部の外部と連通する第2ポート、天板部から弁収容部側に延び第2ポートと連通する流体通路を有する筒部、及び、筒部の端面に形成される弁座、を有する。
【0008】
弁部材は、弁収容部に収容され、弁座に着座または離座することにより、第1ポートと第2ポート間の流体の流路を遮断または連通する。付勢手段は、弁収容部に収容され、弁部材を閉弁または開弁方向へ付勢する。電磁駆動部は、弁収容部に収容され、電磁吸引力を発生させることにより、付勢手段に抗して弁部材を開弁または閉弁方向へ駆動する。
【0009】
そして、筒部の中心軸である弁軸と開口の中心軸とを含む仮想平面を長手対称面とし、弁軸を含み長手対称面と直交する仮想平面を短手対称面とする。
弁ケースは、弁軸に近い側の側壁と短手対称面に対して対称に補助壁を設けている。
蓋部材は、天板部が周縁端面に溶着または接着されるとともに、天板部が補助壁の開口側の端面に溶着または接着される。
【0010】
ここで、補助壁が弁ケースの側壁と短手対称面に対して「対称に」設けられるとは、厳密に対称であることに限定されず、弁ケースの全体に対する位置がほぼ対称であることを意味する。
これにより、蓋部材が吸水により膨潤したとき、短手対称面から溶着または接着による固定箇所までの距離が均等となるため、弁座の傾きが抑制される。よって、弁部材が弁座に着座したとき、シール不良の発生を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、補助壁は、第1ポートの流路面積以上の流路面積を有し第1ポートと弁収容部とを連通する連通路が形成される。
これにより、流体の最大流量が確保される。
さらに請求項3に記載の発明によると、第1ポートおよび連通路は、長手対称面に対して対称に形成される。これにより、第1ポートおよび連通路と弁軸とが一直線上に配置されるため、流体の流れが良好となる。
【0012】
請求項4に記載の発明によると、蓋部材は、筒部の径方向外側と天板部とを連結する複数のリブを弁軸に対して対称に設けている。これにより、蓋部材の吸水による変形を抑制し、シート面の傾きをさらに防止することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明によると、弁ケースの弁軸に近い側の側壁および補助壁は、弁軸に直交方向の断面形状が円弧である。
これにより、弁軸から蓋部材の溶着または接着部までの距離が周方向の広い範囲にわたって均等となるため、蓋部材の吸水による変形に対して有利となる。また、弁ケースの側壁の断面形状が円弧であると、電磁弁の外部への作動音の伝達を抑制することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明によると、第1ポートは、弁ケースの外部から流体を導入する入口ポートであり、第2ポートは、蓋部材の外部に流体を排出する出口ポートである。すなわち、流体は、弁ケース側の入口ポートから電磁弁に導入され、蓋部材側の出口ポートから排出される。
【0015】
逆に蓋部材側の第2ポートを入口ポートとする場合、流体中の異物を濾過するためのフィルタを電磁弁の上流側に別に設けなければならない。また、付勢手段が弁部材を閉弁方向へ付勢し電磁駆動部が弁部材を開弁方向へ駆動する電磁弁においては、閉弁時、流体の圧力が開弁方向に作用するのに抗して弁部材を閉弁方向に付勢するため付勢手段の荷重を大きくする必要がある。それに応じて開弁のための電磁駆動力を大きくしなければならず、電磁弁の体格が大きくなる。
【0016】
これに対し、弁ケース側の第1ポートを入口ポートとすることで、入口ポートと弁収容部との間の空間にフィルタを設置することができる。また、流体の圧力が閉弁方向に作用するため付勢手段の荷重を小さくすることができ、それに応じて開弁のための電磁駆動力を小さくすることができるため、電磁弁の体格を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による電磁弁の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による電磁弁が設置される蒸発燃料処理装置の全体構成を示す概略図である。
【図3】(a):本発明の一実施形態による電磁弁の開弁時の要部拡大図である。(b):本発明の一実施形態による電磁弁の閉弁時の要部拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態によるコイルアッセンブリの平面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるバルブシートの(a)長手方向断面図、(b)底面図である。
【図6】比較例のバルブシートの(a)長手方向断面図、(b)底面図である。
【図7】本発明のその他の実施形態のバルブケースの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、自動車等の車両で蒸発燃料をエンジン吸気管に導入する蒸発燃料処理装置に本発明の電磁弁を適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
蒸発燃料処理装置10は、図2に示すように、自動車等の車両の燃料タンク11内で蒸発気化した蒸発燃料等の流体を、エンジン吸気管13に吸気管負圧を利用して導入する。このとき、蒸発燃料等の流体は、キャニスタ12を経由して吸着されることで、大気中へ放出されることが防止される。
【0019】
キャニスタ12は、蒸発燃料導入通路14を介して燃料タンク11と連通している。キャニスタ12内には活性炭等の吸着剤が収納されており、蒸発燃料等の流体を吸着する。
キャニスタ12は、また、大気導入通路16を介して空気を導入可能である。大気導入通路16の途中には、外部からキャニスタ12内に流入する空気を濾過するフィルタ17、及び、常閉型の電磁式開閉弁であるキャニスタ制御弁18が設けられている。
【0020】
エンジン吸気管13内には、エンジンの各気筒の燃料室内に連通する吸気通路内を流れる吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ19が設置されている。キャニスタ12は、パージ通路15を介してエンジン吸気管13の負圧発生部分となるスロットルバルブ19の下流側に連通している。パージ通路15の途中には電磁弁1が設置されている。電磁弁1は、流体の上流側であるキャニスタ側にメッシュフィルタ70を備えている。
エンジン運転中、大気導入通路16のキャニスタ制御弁18を開くことで外部からキャニスタ12へ空気が導入されるとともに、パージ通路15の電磁弁1を開くことでキャニスタ12内に吸着された蒸発燃料がエンジン吸気管13へ導入される。
【0021】
次に、本実施形態の電磁弁1の構成を図1および図3〜図5に基づいて説明する。
電磁弁1は、常閉型の電磁式流体流量制御弁としてのデューティコントロールバルブである。電磁弁1は、ECU(エンジン制御ユニット)からの信号によって電磁弁1を通電する時間のデューティ比を制御することで、キャニスタ12からエンジン吸気管13内に導入する流体のパージ流量を制御する。
【0022】
電磁弁1は、ハウジング3、バルブ6、コイルスプリング8、電磁駆動部9、メッシュフィルタ70等から構成されている。バルブ6は、特許請求の範囲に記載の「弁部材」に相当し、コイルスプリング8は、特許請求の範囲に記載の「付勢手段」に相当する。
ハウジング3は、パージ通路15の途中に接続される流体流路管としての入口ポート31および出口ポート38を備える。バルブ6は、ハウジング3の内部に開閉自在に収容されている。コイルスプリング8は、バルブ6をシート面40に押し付ける方向に付勢する。電磁駆動部9は、ハウジング3の内部に一体に設けられ、バルブ6の開閉を制御する。メッシュフィルタ70は、電磁弁1に流入する流体中に混入した異物を捕捉して、エンジン吸気管13内への異物の侵入を防止する。
以下、各部の構成を詳細に説明する。なお、電磁弁1の説明では、図1の上側を上、図1の下側を下として説明する。
【0023】
ハウジング3は、バルブケース4およびバルブシート5から構成されている。バルブケース4は、特許請求の範囲に記載の「弁ケース」に相当し、バルブシート5は、特許請求の範囲に記載の「蓋部材」に相当する。バルブケース4およびバルブシート5は、耐燃料性および難燃性を有する樹脂材料、例えば、PA(ポリアミド)66、または、そのガラス繊維入り樹脂で成形されている。
【0024】
バルブケース4は略筒形の容器状であり、弁収容部20、側壁21、補助壁22、底壁27、取付用ステー24、入口ポート31等が一体的に形成されている。
弁収容部20は、側壁21の径方向内側に円筒状に設けられ、バルブ6、ソレノイドコイル7等を同軸に収容する。以下、弁収容部20、バルブ6等の中心軸を弁軸Zという。
【0025】
バルブケース4は開口4aを有する。図4に示すように、本実施形態では、開口4aは略長円形状をしている。弁軸Zは、開口の中心軸Cに対して偏心している。以下、弁軸Zと開口の中心軸Cとを含む仮想平面を「長手対称面Sx」といい、弁軸Zを含み長手対称面Sxと直交する仮想平面を「短手対称面Sy」という。また、開口の中心軸Cに対して弁軸Zと反対側を「チャンバ側」といい、開口の中心軸Cに対して弁軸Z側を「反チャンバ側」という。
【0026】
側壁21は、開口4aの周縁に、長手対称面Sxに対して対称に設けられる。側壁21は、長手対称面Sxに平行な直線状部分と、チャンバ側および反チャンバ側の円弧状部分とを有している。補助壁22は、反チャンバ側の側壁21bと短手対称面Syに対して略対称の円弧状に設けられる。ここで「略対称」というのは、メッシュフィルタ70を保持する嵌合溝47等との干渉を避けるため厳密に対称に設けることができない場合があり、厳密な対称の構成のみに限定されないことを意味する。本実施形態の構成の趣旨は、バルブケース4全体に対して「ほぼ対称」の位置に補助壁22が設けられることである。
【0027】
補助壁22には、端面側から切り欠かれた連通路23が形成されている。連通路23は、後述するチャンバ41とフィルタ収容空間43とを連通する。連通路23は、電磁弁1に導入される蒸発燃料の最大流量に応じた流路面積を確保することができるように幅Wが設定されている。
また、側壁21の端面である周縁端面21a、及び、補助壁22の端面である補助端面22aは、バルブシート5の天板部33を受け、天板部33が溶着固定される。補助端面22aは、特許請求の範囲に記載の「開口側の端面」に相当する。
【0028】
バルブケース4の底部を形成する底壁27は、棚状部28および樹脂モールド部55が一体的に形成されている。棚状部28は、チャンバ側の側壁21cと弁収容部20とを接続する。棚状部28には補強リブ28aが形成されている。
樹脂モールド部55は、電磁駆動部9を被覆する。また、樹脂モールド部55には、電磁駆動部9に励磁電流を供給するためのコネクタ端子57を保持する筒状のコネクタシェル64が一体的に形成されている。
【0029】
取付用ステー24は、開口4aのチャンバ側および反チャンバ側の径方向外側に延びて形成されている。取付用ステー24には、締付ボルトが挿入される挿入孔25を有するカラー26がインサート成形されている。取付用ステー24は、エンジン吸気管13、キャニスタ12、エンジンのヘッドカバー、エアクリーナ等に締め付け固定される。取付用ステー24の表面には補強リブ24aが形成されている。
【0030】
略円管状の入口ポート31は、棚状部23から弁軸Zに平行な方向へ突出するように設けられている。すなわち、入口ポート31は、開口の中心軸Cに対して弁軸Zと反対側に設けられ、底壁27の外部と連通する。入口ポート31は、パージ通路15の上流側部を介してキャニスタ12に接続される。入口ポート31の内部には、入口流路32が形成されている。入口ポート31は、特許請求の範囲に記載の「第1ポート」に相当する。
【0031】
バルブシート5は、天板部33、出口ポート38、筒部39が一体に形成されている。
図5(a)に示すように、バルブシート5は、バルブケース4の開口4aに対応する天板部33を有している。天板部33は、バルブケース4の側壁21の周縁端面21aおよび補助壁22の補助端面22aに溶着固定され、バルブケース4の開口4aを塞ぐ。
【0032】
また、図5(b)に示すように、バルブシート5は、筒部39の径方向外側と天板部33とを連結する複数のリブ35を、弁軸Zに対して対称に設けている。本実施形態では、複数のリブ35は、周方向に等分に12箇所設けられる。さらに、複数のリブ35は、相対的に太いリブ35aと相対的に細いリブ35bとが交互に配置されている。
【0033】
略円管状の出口ポート38は、天板部33に直交して弁軸Zの上方向に延びている。出口ポート38は、パージ通路15の下流側を介してエンジン吸気管13に接続される。出口ポート38の外周には、図示しない配管継ぎ手との間の気密性を保つためのOリング34が装着されている。出口ポート38は、特許請求の範囲に記載の「第2ポート」に相当する。
【0034】
筒部39は、天板部33に対して出口ポート38と反対側に、すなわち弁軸Zの下方向に延びている。シート面40は、筒部39の下端に円環状に形成されている。シート面40には、バルブ6が着座可能となっている。シート面40は、特許請求の範囲に記載の「弁座」に相当する。
【0035】
筒部39および出口ポート38の内部には、バルブ6によって開閉される弁孔36、及び、弁孔36に連続し内径が徐々に拡径する出口流路37が形成されている。弁孔36および出口流路37は、特許請求の範囲に記載の「第2ポートと連通する流体通路」に相当する。
【0036】
バルブシート5がバルブケース4に溶着された状態で、側壁21、補助壁22、底壁27の棚状部28および天板部33によって囲まれた空間に、比較的容積の大きいチャンバ41が形成される。チャンバ41は、入口流路32から流入する蒸発燃料等の流体の圧力脈動を減衰させる。
【0037】
弁収容部20の上面と天板部33との間で筒部39の径方向外側には、円環状空間44が形成される。また、弁収容部20の径方向内側で筒部39の径方向外側には、円環状空間45が形成される。円環状空間45の径方向内側で、且つシート面40と電磁駆動部9の上面との間にはバルブ室46が形成される。
【0038】
次に、電磁駆動部9は、ソレノイドコイル7、ステータコア51、ヨーク52、ムービングコア53、ピース54等から構成されている。ステータコア51およびヨーク52は固定コアであり、ムービングコア53は可動コアである。ソレノイドコイル7に励磁電流が供給されることにより、固定コアおよび可動コアに磁気吸引力を発生させる。
【0039】
ソレノイドコイル7は、通電を受けることにより起磁力を発生して、磁性材料よりなるムービングコア53、ステータコア51、及び、ヨーク52の各磁性体を磁化する。
ソレノイドコイル7は、絶縁被膜を施した導線が円筒状のコイルボビン56に複数回巻回されて構成されている。コイルボビン56は、樹脂モールド部55とステータコア51との間に設けられる。ソレノイドコイル7の径方向外側は、樹脂モールド部55により被覆されて保護されている。また、ソレノイドコイル7から延びる端末リード線は、コネクタ端子57に電気的に接続されている。
【0040】
ステータコア51は、磁性材料によって円筒状に形成されており、ソレノイドコイル7の通電時に磁化されて電磁石となる。ステータコア51は、上側に大径孔51aを有し、大径孔51aの下側に小径孔51bを有している。大径孔51aと小径孔51bとの段差面51cは、ムービングコア53を下方向に吸引する。
【0041】
ムービングコア53は、磁性材料によってカップ状に形成されており、ソレノイドコイル7の通電時に磁化されて電磁石となり、ステータコア51の段差面51cに吸引される。また、ムービングコア53は、ソレノイドコイル7の非通電時に、コイルスプリング8の付勢力によって、バルブ6をシート面40に着座させる方向にバルブ6に荷重を与える。
【0042】
ムービングコア53は、弁軸Z方向の上端側が閉塞し、下端側が開口するカップ状であり、カップ状の内径部がピース54の外径に摺動自在に外挿されるとともに、カップ状の外径部がステータコア51の大径孔51aに摺動自在に内挿されている。上端側の中央には、軸線方向に貫通する貫通孔62が形成されている。また、ムービングコア53とピース54との間の円筒状空間であるスプリング室63には、コイルスプリング8が収容される。
【0043】
ピース54は、ステータコア51の小径孔51bに嵌め込まれて保持されている。図3(a)に示すように、ムービングコア53が下方向に吸引されたとき、ムービングコア53と一体に移動するバルブ6の下端部がピース54の上端面に当接して、下方向すなわち開弁方向への移動が規制される。このときのムービングコア53およびバルブ6の移動距離がフルリフト量となる。
【0044】
バルブ6は、フッ素ゴムまたはシリコンゴム等のゴム系弾性体で形成される。バルブ6は、ムービングコア53の貫通孔62に一体に装着されて、バルブ室46内を軸線方向に往復移動する。
バルブ6の上端部は円環状のゴムシール部となっており、ソレノイドコイル7の非通電時にコイルスプリング8の付勢力によって、シート面40に着座する(図3(b)参照)。また、バルブ6のゴムシール部は、ソレノイドコイル7の通電時にシート面40から離座する(図3(a)参照)。これにより、弁孔36がバルブ室46と連通する。
バルブ6の下端部は円環状のゴムクッション部となっており、ピース54の上端面に当接可能である。なお、バルブ6のゴムクッション部は、バルブ6がピース54の上端面に当接した際の衝撃を吸収する。
【0045】
コイルスプリング8は、ムービングコア53とピース54との間に形成されるスプリング室63内に収容されている。コイルスプリング8は、一端がピース54に当接し、他端が、ムービングコア53に当接して、バルブ6を閉弁方向に付勢する。
バルブケース4に、電磁駆動部9、バルブ6およびコイルスプリング8が組み付けられたサブアッセンブリを、コイルアッセンブリ2という。電磁弁1は、コイルアッセンブリ2にメッシュフィルタ70を組み付け、バルブシート5を溶着して完成品となる。
【0046】
メッシュフィルタ70は、バルブケース4の弁収容部22と棚状部28との間のフィルタ収容区間43に収容される。メッシュフィルタ70は、流体流方向の上流側に湾曲した柵状に形成され、流体が通過可能な略方形状のメッシュ部71と、メッシュ部71の外周端縁を保持するフィルタ枠72とによって構成される。フィルタ枠72は、バルブシート5の嵌合溝47に嵌合して保持される。
【0047】
メッシュ部71は、PA(ポリアミド)等の樹脂材料によってシート状に成形されている。メッシュ部71は、入口ポート31から流入する流体中に混入したメッシュ開口サイズ以上のサイズの異物を捕捉する。異物とは、例えば、エンジン振動等によってキャニスタ12内に保持された吸着体が微粉末化された粉体、給油中に燃料タンク11内に侵入する大気中の塵埃、キャニスタ12の大気開放孔より侵入する大気中の塵埃等である。
【0048】
(作用)
次に、本発明の一実施形態による電磁弁1の作用を説明する。
ECUからソレノイドコイル7に励磁電流が供給されると、ソレノイドコイル7の周囲に磁束が発生し、ステータコア51、ヨーク52、及び、ムービングコア53が磁化されるため、ムービングコア53には、ステータコア51の段差面51cに近づく方向への電磁吸引力が働く。
【0049】
ムービングコア53がステータコア51の段差面51cに近づく方向に移動すると、バルブ6がバルブシート5のシート面40から離座する。そして、弁孔36が開放されるため、キャニスタ12内にエンジン吸気管13の吸気管負圧が導入される。
すると、キャニスタ12内の吸着剤より脱離した蒸発燃料は、キャニスタ12→パージ通路15の上流部→電磁弁1の入口ポート31→入口流路32→チャンバ41→連通路23→メッシュフィルタ70→円環状空間44→円環状空間45→バルブ室46→弁孔36→出口流路37→電磁弁1の出口ポート38→パージ通路15の下流部を経由してエンジン吸気管13内に導入される。このとき、流体中に混入したメッシュ開口サイズ以上の異物がメッシュ部71に捕捉されることにより、異物がエンジン吸気管13へ侵入することを防止する。
【0050】
なお、ECUによって電磁弁1を通電する時間を制御することで、バルブ6のリフト量に対応した弁孔36のバルブ開度を変更して、キャニスタ12からエンジン吸気管13内に導入する流体のパージ流量を制御することができる。
電磁弁1への通電時間が長い時には、ソレノイドコイル7に流れる平均電流が大きくなる。すると、ムービングコア53がコイルスプリング8の付勢力に抗してステータコア51の段差面51cに近づく方向に動き、このムービングコア53の動きに連動してバルブ6のリフト量が大きくなり、バルブ開度が大きくなる。これにより、パージ流量が多くなる。
【0051】
電磁弁1への通電時間が短い時には、ソレノイドコイル7に流れる平均電流が小さくなる。すると、ムービングコア53がコイルスプリング8の付勢力によって戻され、このムービングコア53の動きに連動してバルブ6のリフト量が小さくなり、バルブ開度が小さくなる。これにより、パージ流量が少なくなる。
電磁弁1への通電が停止された時には、ムービングコア53がコイルスプリング8の付勢力によって初期位置まで戻され、このムービングコア53の動きに連動してバルブ6がシート面40に着座する。これにより、パージ通路15は閉鎖される。
【0052】
ここで、バルブ6がシート面40に着座して確実なシールを実現するためには、バルブ6の端面とシート面40との平行度の精度が確保されていることが重要である。
ところで、電磁弁1に導入される蒸発燃料中にアルコール燃料が含まれる場合には、バルブケースおよびバルブシートの樹脂材料として、加水分解しやすいPBT(ポリブチレンテレフタレート)等は不適当である。一方、PA66等は、加水分解はしないものの、アルコールの脱水反応によって生成する水分を吸水しやすいという特性がある。そこで、特に肉厚が相対的に薄いバルブシートの天板部33が吸水したとき、シート面40がバルブ6との平行度を維持することができるか否かが問題となる。
【0053】
まず、比較例の電磁弁について図6に基づいて説明する。比較例の電磁弁は、バルブケース94の開口94aの形状、及び、弁軸Zの位置については本発明の一実施形態と同様である。しかし、バルブケース94には補助壁が設けられておらず、バルブシート95にはリブが設けられていない。
【0054】
比較例では、バルブシート95は、バルブケース94の周縁端面21aにのみ溶着されるため、バルブシート95が吸水により膨潤すると、弁軸Zからの距離が遠いチャンバ側での膨張が、弁軸Zからの距離の短い反チャンバ側での膨張に比べて大きくなる。また、変形防止用のリブがないため、天板部33は、上側へせり上がり、図6(a)に太破線で示すように湾曲して変形する。その結果、出口ポート38の先端が角度θで示すように反チャンバ側に倒れ、シート面40は、チャンバ側がバルブ6から離れるように傾く。そのため、閉弁時にバルブ6の端面とシート面40との間にクリアランスCLが生じ、シール不良が発生する。
【0055】
それに対し、本発明の一実施形態では、バルブシート5の天板部33は、反チャンバ側では側壁21の周縁端面21aに固定され、チャンバ側では補助壁22の補助端面22aに固定されることで、反チャンバ側およびチャンバ側での弁軸Zから固定箇所までの距離がほぼ均等となる。また、リブ35によって天板部33の変形が抑制される。これにより、シート面40がバルブ6との平行度を維持することができ、バルブ6がシート面40に着座したとき、シール不良の発生を防止することができる。
【0056】
(効果)
次に、本発明の一実施形態による電磁弁1の効果を説明する。
(1)バルブケース4に、反チャンバ側の側壁21bと短手対称面Syに対して対称に補助壁22が設けられ、天板部33が側壁21bの周縁端面21aおよび補助壁22の補助端面22aに溶着固定されることで、反チャンバ側およびチャンバ側での弁軸Zから固定箇所までの距離がほぼ均等となる。これにより、バルブシート5が吸水性樹脂で成形される場合、バルブシート5が吸水したとき短手対称面Syに対してほぼ均等に膨潤するため、シート面40の傾きを抑制することができる。よって、バルブ6がシート面40に着座したとき、シール不良の発生を防止することができる。
【0057】
(2)補助壁22には、入口ポート31の流路面積以上の流路面積を有する連通路23が形成されるため、蒸発燃料の最大流量が確保される。
(3)入口ポート31および連通路23は、長手対称面Syに対して対称に形成されることで、入口ポート31、連通路23、弁軸Zが一直線上に配置されるため、蒸発燃料の流れが良好となる。
【0058】
(4)バルブシート5に複数のリブ35が設けられるため、天板部33の変形を抑制し、シート面の傾きをさらに抑制することができる。
(5)バルブケース4の開口4aは略長円形状であり、反チャンバ側の側壁21b、および補助壁22の、弁軸Zに直交方向の断面形状は円弧である。これにより、弁軸Zから固定箇所までの距離が、周方向の広い範囲にわたって均等となるため、バルブシート5の吸水に対して有利となる。また、バルブケース4の側壁21の断面形状が円弧であると、電磁弁1外部への作動音の伝達を抑制することができる。
【0059】
(6)バルブケース4に入口ポート31が設けられ、バルブシート5に出口ポート38が設けられる。これにより、電磁弁1内部のバルブ6の上流側となるフィルタ収容空間43にメッシュフィルタ70を設置することができる。また、蒸発燃料の圧力が閉弁方向に作用するため、コイルスプリング8の荷重を比較的小さくすることができ、それに応じて電磁駆動力を小さくすることができるため、電磁弁1の体格を小さくすることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
(ア)上記の実施形態では、バルブケース4の開口4aは略長円形状に形成され、補助壁22は略円弧状に設けられる。しかし、本発明の電磁弁の形態はこれに限らない。その他の実施形態によるバルブケースの開口形状および補助壁の形状の例を図7に示す。
図7(a)に示す実施形態では、バルブケース91の開口91aは角丸めされた略長方形状であり、弁軸Zが開口の中心軸Cに対して偏心している。補助壁82は、バルブケース91の反チャンバ側の側壁81と短手対称面Syに対して対称に、略直線状に設けられる。補助壁82には、連通路23が長手対称面Sxに対して対称に形成される。
【0061】
図7(b)に示す実施形態では、バルブケース92の開口92aは略円形であり、弁軸Zが開口の中心軸Cに対して偏心している。補助壁84は、バルブケース92の反チャンバ側の側壁83と短手対称面Syに対して対称に、略円弧状に設けられる。補助壁84には、連通路23が長手対称面Sxに対して対称に形成される。
【0062】
図7(c)に示す実施形態では、バルブケース93の開口93aはしゃもじ形であり、弁軸Zが開口の中心軸Cに対して偏心している。この場合、しゃもじ形の柄の部分にあたるチャンバ41部分の短手方向の幅を縮小することで、バルブケース93の側壁85は、チャンバ41側に延びる部分を除いて、断面形状がC形に形成される。したがって、側壁85自身が補助壁に相当する部分を兼ね、開口93aの一部が連通路23を兼ねる。
【0063】
これらの実施形態でも、バルブシートが吸水により膨潤したとき、短手対称面Syから固定箇所までの距離が均等となるため、シート面40の傾きが抑制される。よって、バルブ6がシート面40に着座したとき、シール不良の発生を防止することができる。
【0064】
(イ)上記の実施形態では、バルブシート5の天板部33は、バルブケース4に溶着される。この場合、溶着方法は、レーザ溶着、熱溶着、振動溶着、超音波溶着等、いかなる溶着方法であってもよい。また、溶着に代えて接着により接合してもよい。
(ウ)上記の実施形態では、筒部39の径方向外側と天板部33とを連結する複数のリブ35を弁軸Zに対して対称に周方向に12箇所設けている。複数のリブの数や形状はこれに限らない。また、複数のリブを設けず、筒部と天板部との隅Rを大きくしたり、天板部の肉厚を厚くしたりすることで、天板部変形を抑制するようにしてもよい。
【0065】
(エ)上記の実施形態では、バルブケース4に入口ポート31を設け、バルブシート5に出口ポート38を設ける。その逆に、バルブケースに出口ポートを設け、バルブシートに入口ポートを設けてもよい。すなわち、特許請求の範囲に記載の「第1ポート」を出口ポートとし、「第2ポート」を入口ポートとしもよい。
(オ)上記の実施形態では、柵状のメッシュフィルタ70を採用しているが、フィルタとして、略円筒形状のフィルタが筒部を囲むように設置されてもよい。また、樹脂のメッシュ状シートに代えて、金網、不織布などを採用してもよい。
【0066】
(カ)上記の実施形態では、付勢手段としてのコイルスプリング8がバルブ6を閉弁方向へ付勢し、電磁駆動部9がバルブ6を開弁方向へ駆動する。その逆に、付勢手段がバルブを開弁方向へ付勢し、電磁駆動部がバルブを開弁方向へ付勢するようにしてもよい。
(キ)上記の実施形態では電磁弁として電磁式流量制御弁を採用しているが、電磁弁として電磁式開閉弁を採用してもよい。また、常閉型(ノーマリクローズタイプ)の電磁弁だけでなく、常開型(ノーマリオープンタイプ)の電磁弁に本発明を適用してもよい。
【0067】
(ク)電磁弁に導入される流体は蒸発燃料に限らない。バルブシートが吸水性樹脂で成形され、水分を含む流体によってバルブシートが変形する可能性がある場合は、本発明の効果が発揮される。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ・・・電磁弁、
2 ・・・コイルアッセンブリ、
3 ・・・ハウジング、
4 ・・・バルブケース(弁ケース)、
4a・・・開口、
5 ・・・バルブシート(蓋部材)、
6 ・・・バルブ(弁部材)、
7 ・・・ソレノイドコイル、
8 ・・・コイルスプリング(付勢手段)、
9 ・・・電磁駆動部、
20 ・・・弁収容部、
21 ・・・側壁、
21a・・・周縁端面、
22 ・・・補助壁、
22a・・・補助端面(開口側の端面)、
23 ・・・連通路、
27 ・・・底壁、
31 ・・・入口ポート(第1ポート)、
33 ・・・天板部、
35 ・・・リブ、
38 ・・・出口ポート(第2ポート)、
39 ・・・筒部、
40 ・・・シート面(弁座)、
41 ・・・チャンバ、
C ・・・開口の中心軸、
Z ・・・弁軸、
Sx ・・・長手対称面、
Sy ・・・短手対称面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と底壁とからなり一端に開口を有する略筒状に樹脂で成形され、前記開口の中心軸に対して偏心して配置される弁収容部、及び、前記開口の中心軸に対して前記弁収容部と反対側に設けられ前記側壁もしくは前記底壁の外部と連通する第1ポート、を有する弁ケースと、
樹脂で成形され、前記開口の周縁に形成される周縁端面に溶着または接着されて前記開口を塞ぐ天板部、前記天板部の外部と連通する第2ポート、前記天板部から前記弁収容部側に延び前記第2ポートと連通する流体通路を有する筒部、及び、前記筒部の端面に形成される弁座、を有する蓋部材と、
前記弁収容部に収容され、前記弁座に着座または離座することにより、前記第1ポートと前記第2ポート間の流体の流路を遮断または連通する弁部材と、
前記弁収容部に収容され、前記弁部材を閉弁または開弁方向へ付勢する付勢手段と、
前記弁収容部に収容され、電磁吸引力を発生させることにより、前記付勢手段に抗して前記弁部材を開弁または閉弁方向へ駆動する電磁駆動部と、
を備え、
前記弁収容部の中心軸である弁軸と前記開口の中心軸とを含む仮想平面を長手対称面とし、前記弁軸を含み当該長手対称面と直交する仮想平面を短手対称面とすると、
前記弁ケースは、前記弁軸に近い側の側壁と前記短手対称面に対して対称に補助壁を設けており、
前記蓋部材は、前記天板部が前記周縁端面に溶着または接着されるとともに、前記天板部が前記補助壁の前記開口側の端面に溶着または接着されることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記補助壁は、前記第1ポートの流路面積以上の流路面積を有し前記第1ポートと前記弁収容部とを連通する連通路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第1ポートおよび前記連通路は、前記長手対称面に対して対称に形成されることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記筒部の径方向外側と前記天板部とを連結する複数のリブを前記弁軸に対して対称に設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記弁ケースの前記弁軸に近い側の側壁および前記補助壁は、前記弁軸に直交方向の断面形状が円弧であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記第1ポートは、前記弁ケースの外部から流体を導入する入口ポートであり、
前記第2ポートは、前記蓋部材の外部に流体を排出する出口ポートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−87884(P2012−87884A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235282(P2010−235282)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】