説明

電磁式ソレノイド

【課題】検出部材の張り出しを防止し、小型化することができる電磁式ソレノイドを提供する。
【解決手段】電磁石3と、この電磁石3の励磁により作動する可動部材5と、この可動部材5の作動位置を検出する接点7を有するスイッチ9と、可動部材5とスイッチ9との間に配置され可動部材5の作動位置によってスイッチ9の接点7を断続する検出部材11とを備えた電磁式ソレノイド1において、検出部材11を、電磁石3に設けた凹部13内に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される電磁式ソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁式ソレノイドとしては、電磁石と、この電磁石の励磁により作動する可動部材としての内側作動プレートと、この内側作動プレートの作動位置を検出する接点を有するスイッチとしてのセンサアッセンブリと、内側作動プレートとセンサアッセンブリとの間に配置され内側作動プレートの作動位置によってセンサアッセンブリの接点を断続する検出部材としての被検知部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電磁式ソレノイドでは、被検知部材の軸方向移動によってセンサアッセンブリの接点が断続され、このセンサアッセンブリの接点によって内側作動プレートの作動位置を検出することができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような電磁式ソレノイドでは、検出部材が環状に形成されていると共に、検出部材が軸方向移動を伴うので、電磁式ソレノイドが全体的に大型化してしまっていた。
【0005】
これに対して、検出部材としての接触子が薄板状に形成され、この接触子が電磁石の一端面に配置された電磁式ソレノイドが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この電磁式ソレノイドでは、接触子の一端側が電磁石の一端面に固定され、他端側が可動部材に接触されている。このような接触子を適用することにより、検出部材自体を小型化させると共に、検出部材の作動スペースも小型化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−211899号公報
【特許文献2】特開2008−117957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2のような電磁式ソレノイドでは、検出部材が電磁石の一端面から張り出してしまい、電磁式ソレノイドが大型化していた。
【0009】
そこで、この発明は、検出部材の張り出しを防止し、小型化することができる電磁式ソレノイドの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電磁石と、この電磁石の励磁により作動する可動部材と、この可動部材の作動位置を検出する接点を有するスイッチと、前記可動部材と前記スイッチとの間に配置され前記可動部材の作動位置によって前記スイッチの接点を断続する検出部材とを備えた電磁式ソレノイドであって、前記検出部材は、前記電磁石に設けられた凹部内に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この電磁式ソレノイドでは、検出部材が電磁石に設けられた凹部内に配置されているので、検出部材が電磁石から張り出すことを防止でき、電磁式ソレノイドを全体的に小型化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出部材の張り出しを防止し、小型化することができる電磁式ソレノイドを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁式ソレノイドが適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電磁式ソレノイドの側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電磁式ソレノイドが適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電磁式ソレノイドの側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電磁式ソレノイドが適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電磁式ソレノイドの側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る電磁式ソレノイドが適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る電磁式ソレノイドの側面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る電磁式ソレノイドが適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る電磁式ソレノイドの可動部材が初期位置のときの断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る電磁式ソレノイドの可動部材が作動を開始したときの断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る電磁式ソレノイドの可動部材が作動を終了したときの断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る電磁式ソレノイドの他例が適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図1を用いて本発明の実施の形態に係る電磁式ソレノイドが適用されたデファレンシャル装置について説明する。
【0015】
図1に示すように、デファレンシャル装置501は、デフケース503と、ピニオンシャフト505と、ピニオン507と、一対のサイドギヤ509,511とからなる差動機構513と、この差動機構513の差動を断続する断続機構515とを備えている。
【0016】
デフケース503は、軸方向両側に形成されたボス部517,519でそれぞれベアリング(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回転可能に支持されている。また、デフケース503には、リングギヤ(不図示)が固定されるフランジ部521が形成され、リングギヤが駆動力を伝達する動力伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、駆動力が伝達されてデフケース503を回転駆動させる。このデフケース503には、ピニオンシャフト505と、ピニオン507と、一対のサイドギヤ509,511とが収容されている。
【0017】
ピニオンシャフト505は、端部をデフケース503に係合してピン523で抜け止めされデフケース503と一体に回転駆動される。このピニオンシャフト505には、ピニオン507が支承されている。
【0018】
ピニオン507は、ピニオンシャフト505に支承されてデフケース503の回転によって公転する。また、ピニオン507は、一対のサイドギヤ509,511に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ509,511に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト505に自転可能に支持されている。また、ピニオン507の背面側とデフケース503との間には、ピニオン507の公転時に発生する径方向への移動を受ける球面ワッシャ525が配置されている。
【0019】
一対のサイドギヤ509,511は、ボス部527,529でデフケース503に相対回転可能に支持され、ピニオン507と噛み合っている。また、サイドギヤ509,511とデフケース503との間には、ピニオン507との噛み合い反力によるサイドギヤ509,511の軸方向への移動を受けるスラストワッシャ531,533が配置されている。
【0020】
この一対のサイドギヤ509,511は、内周側にスプライン形状の連結部535,537が設けられ、出力側の部材に連結された一対の駆動軸(不図示)が一対のサイドギヤ509,511と一体回転可能に連結され、デフケース503に入力された駆動力を出力側の部材へ出力する。このような差動機構513の差動は、断続機構515によって断続される。
【0021】
断続機構515は、断続部材539と、断続部541とを備えている。断続部材539は、基部543と、係合凸部545と、噛み合い歯547とから構成されている。基部543は、環状に形成されてデフケース503の内部空間側に収容されている。また、基部543の内周面は、サイドギヤ509のボス部527の外周支持面に対して径方向に支持され、サイドギヤ509の背面側とデフケース503の側壁549との軸方向の間に断続部材539が軸方向移動可能に配置されている。また、基部543とサイドギヤ509の背面との軸方向間には、断続部材539を断続部541の接続解除方向に付勢するリターンスプリング551が配置されている。この基部543のデフケース503の側壁549側には、係合凸部545が設けられている。
【0022】
係合凸部545は、基部543の側面に基部543と連続する一部材として周方向等間隔に複数設けられている。この係合凸部545は、デフケース503の側壁549の回転方向間に開口して設けられた複数の係合窓部553に係合して断続部材539がデフケース503に回り止めされ、デフケース503と一体回転可能に配置されている。
【0023】
この係合凸部545と係合窓部553との周方向の対向面には、同一傾斜のカム面が形成されている。このため、断続部材539が断続部541の接続方向に移動されたときに、デフケース503の回転によってカム面が係合することにより、断続部材539をさらに断続部541の噛み合い方向に移動させ、断続部541の接続を強化させる。
【0024】
このような係合凸部545の基部543を軸方向に挟んだ反対側の基部543の側面には、複数の噛み合い歯547が設けられ、この噛み合い歯547と軸方向に対向するサイドギヤ509の背面側には、複数の噛み合い歯555が設けられ、これらの噛み合い歯547,555で断続部541が構成されている。
【0025】
断続部541は、断続部材539とサイドギヤ509の背面側との軸方向間に設けられ、断続部材539とサイドギヤ509の背面側とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯547,555となっている。この断続部541が互いに噛み合うことにより、断続部材539とサイドギヤ509とが一体回転可能に接続、すなわちデフケース503とサイドギヤ509とが一体回転可能に接続され、差動機構513の差動がロック状態となる。
【0026】
このように構成されたデファレンシャル装置501は、差動機構513の差動がロック状態となると、デフケース503に入力された駆動力が一対のサイドギヤ509,511に対して均等に出力される。このようなデファレンシャル装置501は、いわゆるデフロック機能を有するデファレンシャル装置となっている。このデファレンシャル装置501の差動を断続する断続部材539は、電磁式ソレノイドによって移動操作される。
【0027】
以下、図1〜図13を用いて本発明の実施の形態に係る電磁式ソレノイドについて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1,図2を用いて第1実施形態について説明する。
【0029】
本実施の形態に係る電磁式ソレノイド1は、電磁石3と、この電磁石3の励磁により作動する可動部材5と、この可動部材5の作動位置を検出する接点7を有するスイッチ9と、可動部材5とスイッチ9との間に配置され可動部材5の作動位置によってスイッチ9の接点7を断続する検出部材11とを備えている。
【0030】
そして、検出部材11は、電磁石3に設けられた凹部13内に配置されている。
【0031】
また、検出部材11は、可動部材5との当接部15と、スイッチ9の接点7との接点断続部17とを有し、可動部材5の作動方向と異なる方向に移動してスイッチ9の接点7を断続する。
【0032】
さらに、検出部材11は、接点断続部17を可動部材5の作動方向と異なる方向に移動させる作動変換部19を備えている。
【0033】
また、電磁石3は、環状に所定巻き数を有して通電されるコイル21と、このコイル21への通電により磁界が形成されるように所定の磁路断面積を有してコイル21の内外周面及びコイル21の軸方向一側端面を覆うコア23とからなり、凹部13は、コア23の軸方向一側端面に径方向に形成され、検出部材11は、径方向の一側に当接部15が配置され、径方向の他側に接点断続部17が配置されている。
【0034】
さらに、作動変換部19は、当接部15と接点断続部17との間に設けられた変換支点である。
【0035】
また、検出部材11には、当接部15と可動部材5とを常時当接させる付勢部材25が当接されている。
【0036】
図1,図2に示すように、電磁石3は、デフケース503のボス部517の外周側で側壁549に対して軸方向に隣接配置され、コイル21と、コア23とを備えている。コイル21は、環状に所定巻き数巻回されて樹脂でモールド成形されている。また、コイル21には、外部に引き出されてコントローラ(不図示)に接続されたリード線27が接続され、コントローラによって通電が制御されている。このコイル21の周囲には、コア23が配置されている。
【0037】
コア23は、コイル21への通電により磁界が形成されるように磁性材料から形成され、所定の磁路断面積を有している。このコア23は、コイル21の内外周面及びコイル21の側壁549と反対側に位置する軸方向一側端面を覆っている。また、コア23の軸方向外側の端面には、デフケース503のボス部517の外周に固定された固定部材29によって軸方向の位置決めがなされている。また、コア23の外径側には、キャリアなどの静止系部材に係合して電磁石3を回転方向に回り止めさせる回り止め部31が形成されている。また、コア23の外径側には、デフケース503の側壁549から軸方向に延設された延設部557が磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって配置されている。このような電磁石3の内径側には、可動部材5が配置されている。
【0038】
可動部材5は、電磁石3の内径側でデフケース503のボス部517の外周に軸方向移動可能に配置され、プランジャ33と、リング部材35とを備えている。プランジャ33は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石3の内径側に配置されている。このプランジャ33の内周には、リング部材35が一体に固定されている。
【0039】
リング部材35は、非磁性材料から形成され、プランジャ33の内周側からデフケース503側へ磁束が漏れることを防止している。また、リング部材35は、デフケース503のボス部517の外周に軸方向移動可能に配置され、固定部材29によって軸方向の移動規制がなされている。このリング部材35には、デフケース503の係合窓部553内で、断続部材539との軸方向の対向面に互いに当接する押圧部37が設けられ、電磁石3によって作動される可動部材5による軸方向の移動操作力が断続部材539に伝達される。
【0040】
このような可動部材5の作動位置を検出することにより、可動部材5と連動して作動する断続部材539の作動位置を検出することができる。すなわち、断続部材539は、可動部材5によって断続部541の接続位置と接続解除位置との間を軸方向移動されるので、可動部材5の作動位置を検出することにより、断続部541の状態を検出することができ、デファレンシャル装置501の状態を検出することができる。この可動部材5の作動位置は、スイッチ9によって検出される。
【0041】
スイッチ9は、ケース39と、接点7とを備えている。ケース39は、電磁石3のコア23の一端面に固定手段としてのボルト41,43で固定されている。このケース39内には、接点7が収容されている。
【0042】
接点7は、ケース39内でコア23の外径側に配置され、リード線45が接続されている。このリード線45は、ケース39の外部に引き出されて電磁石3のコイル21に接続されたリード線27と収束され、外部に引き出されてコントローラに接続される。この接点7は、検出部材11によって断続され、可動部材5の作動位置を検出する。
【0043】
検出部材11は、薄板状の非磁性体からなり、電磁石3のコア23の軸方向一側端面に径方向に形成された凹部13内に配置されている。この検出部材11は、径方向の一端側が可動部材5の端面に当接される当接部15となっており、径方向の他端側が接点7を断続する接点断続部17となっている。この当接部15と接点断続部17との間には、作動変換部19が設けられている。
【0044】
作動変換部19は、ケース39に係合して検出部材11がコア23の凹部13内で揺動可能となる変換支点となっている。この作動変換部19は、てこ作用により当接部15と接点断続部17とを異なる方向に移動させる。
【0045】
詳細には、電磁石3の励磁により可動部材5が作動して当接部15が図1中の右方へ移動されると、仮想線で示すように、接点断続部17が図1中の左方に移動されて接点7が接続される。一方、電磁石3の通電停止により可動部材5が断続部材539を介してリターンスプリング551の付勢力によって移動されて当接部15が図1中の左方へ移動されると、実線で示すように、接点断続部17が図1中の右方に移動されて接点7の接続が解除される。
【0046】
このような検出部材11の接点断続部17によるスイッチ9の接点7の断続により、可動部材5の作動位置を検出することができ、断続部541の状態を検出することができる。
【0047】
また、接点断続部17のコア23側の端面には、コア23に配置された付勢部材25が当接されて検出部材11に付勢力が付与され、作動変換部19を介して当接部15と可動部材5とが常時当接されている。この付勢部材25の付勢力によって、可動部材5の押圧部37は、断続部材539と常時当接され、断続部材539と可動部材5との連動性を向上することができる。このため、可動部材5の作動位置を検出することにより、正確に断続部材539の作動位置を検出することができ、断続部541の状態の検出精度を向上することができる。
【0048】
このように構成された電磁式ソレノイド1では、電磁石3の励磁によりコア23とプランジャ33とデフケース503の側壁549を透過する磁束で形成される最短の磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ33が断続部材539側に移動操作され、リング部材35がリターンスプリング551の付勢力に抗して押圧部37を介して断続部材539を押圧する。この可動部材5による断続部材539の押圧操作により、断続部材539が断続部541の接続方向に移動され、断続部541が接続される。この断続部541の接続により、サイドギヤ509と断続部材539とが一体回転可能に接続され、サイドギヤ509とデフケース503とが接続されて差動機構513がロック状態となる。
【0049】
このとき、検出部材11は、当接部15が可動部材5の断続部541の接続方向への移動と共に移動し、接点断続部17が作動変換部19によって当接部15と反対方向に移動されて接点7を接続させる。この接点7の接続により、可動部材5の作動位置が検出され、デファレンシャル装置501の差動のロック状態を検出することができる。
【0050】
一方、デファレンシャル装置501における断続部541の接続解除では、電磁石3への通電を停止することにより断続部材539がリターンスプリング551の付勢力によって電磁石3側に移動操作される。この断続部材539の移動により、断続部材539が断続部541の接続解除方向に移動され、断続部541の接続が解除される。この断続部541の接続解除により、サイドギヤ509と断続部材539とが相対回転可能となり、サイドギヤ509とデフケース503とが相対回転可能となって差動機構513のロック状態が解除される。
【0051】
このとき、検出部材11は、当接部15が可動部材5の断続部541の接続解除方向への移動と共に移動し、接点断続部17が作動変換部19によって当接部15と反対方向に移動されて接点7の接続を解除させる。この接点7の接続解除により、可動部材5の作動位置が検出され、デファレンシャル装置501の差動のロック状態が解除されたことを検出することができる。
【0052】
このような電磁式ソレノイド1では、検出部材11が電磁石3に設けられた凹部13内に配置されているので、検出部材11が電磁石3から張り出すことを防止でき、電磁式ソレノイド1を全体的に小型化することができる。
【0053】
また、電磁式ソレノイド1をデファレンシャル装置501に適用した場合には、キャリアなどの静止系部材にデファレンシャル装置501のボス部517をベアリング支持すると、ベアリング支持部とデフケース503との間の電磁式ソレノイド1を搭載可能なスペースが制限されるが、この電磁式ソレノイド1によれば、デファレンシャル装置501に確実に搭載することができる。
【0054】
さらに、検出部材11は、可動部材5との当接部15と、スイッチ9の接点7との接点断続部17とを有し、可動部材5の作動方向と異なる方向に移動してスイッチ9の接点7を断続するので、スイッチ9の配置の自由度を向上することができ、電磁式ソレノイド1の設計の自由度を向上することができる。
【0055】
また、検出部材11は、接点断続部17を可動部材5の作動方向と異なる方向に移動させる作動変換部19を備えているので、作動変換部19によって可動部材5の作動方向と接点断続部17による接点7の断続方向とを異ならせることができる。
【0056】
さらに、凹部13は、コア23の軸方向一側端面に径方向に形成され、検出部材11は、径方向の一側に当接部15が配置され、径方向の他側に接点断続部17が配置されているので、電磁式ソレノイド1を軸方向に小型化しつつ、可動部材5の作動位置の検出を行うことができる。
【0057】
また、作動変換部19は、当接部15と接点断続部17との間に設けられた変換支点であるので、てこ作用によって可動部材5の作動を接点断続部17による接点7の断続に変換することができ、検出部材11による可動部材5の作動位置の検出を安定化させることができる。
【0058】
さらに、検出部材11には、当接部15と可動部材5とを常時当接させる付勢部材25が当接されているので、可動部材5の作動を正確に検出することができ、可動部材5の作動位置の検出精度を向上することができる。
【0059】
(第2実施形態)
図3,図4を用いて第2実施形態について説明する。
【0060】
本実施の形態に係る電磁式ソレノイド101は、スイッチ103は、電磁石3の外周側に配置されている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0061】
図3,図4に示すように、スイッチ103は、ケース105と、接点107とを備えている。ケース105は、内径側が電磁石3のコア23の一端面に固定手段としてのボルト109,111で固定されている。このケース105内の外径側には、接点107が収容されている。
【0062】
接点107は、ケース105内でコア23の外径よりも外側に配置され、リード線113が接続されている。このリード線113は、ケース105の外部に引き出されて電磁石3のコイル21に接続されたリード線27と収束され、外部に引き出されてコントローラに接続される。この接点107は、検出部材115によって断続され、可動部材5の作動位置を検出する。
【0063】
検出部材115は、薄板状の非磁性体からなり、電磁石3のコア23の軸方向一側端面に径方向に形成された凹部13内に配置されている。この検出部材115は、径方向の一端側が可動部材5の端面に当接される当接部15となっており、径方向の他端側が接点107を断続する接点断続部117となっている。
【0064】
この接点断続部117は、先端側がコア23の外周面に平行となるように折り曲げ加工されている。また、この検出部材115では、作動変換部19が変換支点となっており、てこ作用により当接部15と接点断続部117とを異なる方向に移動させる。
【0065】
このため、接点断続部117は、電磁石3の励磁により可動部材5が作動して当接部15が図3中の右方へ移動されると、仮想線で示すように、接点断続部117が図3中の左斜め上方に移動されて接点107が接続される。一方、電磁石3の通電停止により可動部材5が断続部材539を介してリターンスプリング551の付勢力によって移動されて当接部15が図3中の左方へ移動されると、実線で示すように、接点断続部117が図3中の右斜め下方に移動されて接点107の接続が解除される。
【0066】
このような検出部材115の接点断続部117によるスイッチ103の接点107の断続により、可動部材5の作動位置を検出することができ、断続部541の状態を検出することができる。
【0067】
このような電磁式ソレノイド101では、スイッチ103が電磁石3の外周側に配置されているので、スイッチ103の軸方向への張り出しを抑制することができ、より電磁式ソレノイド101を軸方向に小型化することができる。
【0068】
(第3実施形態)
図5,図6を用いて第3実施形態について説明する。
【0069】
本実施の形態に係る電磁式ソレノイド201は、スイッチ203には、付勢部材205が配置されている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0070】
図5,図6に示すように、スイッチ203は、ケース207と、接点209と、付勢部材205とを備えている。ケース207は、電磁石3のコア23の一端面に固定手段としてのボルト211,213で固定されている。このケース207内には、接点209が収容されている。
【0071】
接点209は、ケース207内でコア23の外径側に配置され、リード線215が接続されている。このリード線215は、ケース207の外部に引き出されて電磁石3のコイル21に接続されたリード線27と収束され、外部に引き出されてコントローラに接続される。この接点209の内径側には付勢部材205が配置されている。
【0072】
付勢部材205は、ケース207内でコア23の内径側に配置され、検出部材11の当接部15側に当接されている。この付勢部材205は、検出部材11に付勢力を付与して当接部15と可動部材5とを常時当接させる。このように付勢部材205をスイッチ203のケース207に設けることにより、スイッチ203をモジュール化でき、部品点数を削減して組付性を向上することができる。なお、電磁石3のコア23の端面には、キャリアなどの静止系部材に係合して電磁石3を回転方向に回り止めさせる回り止め部材217が設けられている。
【0073】
このように構成された電磁式ソレノイド201では、電磁石3の励磁により可動部材5が作動して当接部15が図5中の右方へ移動されると、接点断続部17が図5中の左方に移動されて接点209が接続される。一方、電磁石3の通電停止により可動部材5が断続部材539を介してリターンスプリング551の付勢力によって移動されて当接部15が図5中の左方へ移動されると、接点断続部17が図5中の右方に移動されて接点209の接続が解除される。
【0074】
このような検出部材11の接点断続部17によるスイッチ203の接点209の断続により、可動部材5の作動位置を検出することができ、断続部541の状態を検出することができる。
【0075】
このような電磁式ソレノイド201では、スイッチ203に付勢部材205が配置されているので、複数の部品をスイッチ203に集約させることができ、部品点数を削減して電磁式ソレノイド201の組付性を向上することができる。
【0076】
(第4実施形態)
図7,図8を用いて第4実施形態について説明する。
【0077】
本実施の形態に係る電磁式ソレノイド301は、スイッチ303は、電磁石3の外周側に配置されている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0078】
図7,図8に示すように、スイッチ303は、カバー305と、接点307とを備えている。カバー305は、電磁石3のコア23の外周に延設された突出部309の外周面に係合部311で係合されている。このカバー305は、検出部材11の接点断続部17と接点307とを覆っている。
【0079】
接点307は、突出部309に配置され、リード線313が接続されている。このリード線313は、突出部309の外部に引き出されて電磁石3のコイル21に接続されたリード線27と収束され、外部に引き出されてコントローラに接続される。この接点307は、検出部材11によって断続され、可動部材5の作動位置を検出する。
【0080】
検出部材11は、当接部15側が電磁石3のコア23に径方向に形成された凹部13内に配置され、接点断続部17側がカバー305内に配置されている。この当接部15と接点断続部17との間には、作動変換部315が設けられている。
【0081】
作動変換部315は、コア23の一端面に組付けられた支点部材317を有し、検出部材11を凹部13内及びカバー305内で揺動可能とする変換支点となっている。この作動変換部315は、てこ作用により当接部15と接点断続部17とを異なる方向に移動させる。
【0082】
このように構成された電磁式ソレノイド301では、電磁石3の励磁により可動部材5が作動して当接部15が図7中の右方へ移動されると、仮想線で示すように、接点断続部17が図7中の左方に移動されて接点307の接続が解除される。一方、電磁石3の通電停止により可動部材5が断続部材539を介してリターンスプリング551の付勢力によって移動されて当接部15が図7中の左方へ移動されると、実線で示すように、接点断続部17が図7中の右方に移動されて接点307が接続される。
【0083】
このような検出部材11の接点断続部17によるスイッチ303の接点307の断続により、可動部材5の作動位置を検出することができ、断続部541の状態を検出することができる。
【0084】
このような電磁式ソレノイド301では、スイッチ303が電磁石3の外周側に配置されているので、スイッチ303の軸方向への張り出しを抑制することができ、より電磁式ソレノイド301を軸方向に小型化することができる。
【0085】
(第5実施形態)
図9〜図13を用いて第5実施形態について説明する。
【0086】
本実施の形態に係る電磁式ソレノイド401は、作動変換部403は、当接部405と可動部材5との間に設けられ可動部材5の作動方向と交差する方向に接点断続部407を作動させるカムである。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0087】
図9〜図12に示すように、スイッチ409は、ケース411と、接点413とを備えている。ケース411は、電磁石3のコア23の外周にボルトなどの固定手段(不図示)によって固定されている。このケース411内には、接点413が収容されている。
【0088】
接点413は、作動部415と固定部417とからなる。作動部415は、検出部材419の一端側に固定され、スプリング421によって固定部417に向けて付勢されている。固定部417は、ケース411内に固定され、コントローラに接続されるリード線423(図13参照)が接続されている。この接点413は、検出部材419が作動することによって作動部415と固定部417とが断続され、可動部材5の作動位置を検出する。
【0089】
検出部材419は、棒状の非磁性体からなり、電磁石3のコア23の軸方向一側端面に径方向に形成された凹部425内に配置されている。この検出部材419は、径方向の一端側が可動部材5のカム溝427に配置される当接部405となっており、径方向の他端側に作動部415が設けられ接点413を断続する接点断続部407となっている。また、検出部材419の中央部には、検出部材419を図9中の下方に付勢する付勢部材429が設けられている。また、接点断続部407側には、検出部材419の移動ストロークを規制する規制部材431が設けられている。この検出部材419の当接部405と可動部材5との間には、作動変換部403が設けられている。
【0090】
作動変換部403は、検出部材419の当接部405と、可動部材5のリング部材35の外周に形成されたカム溝427とからなるカムとなっている。この作動変換部403は、当接部405とカム溝427との当接により接点断続部407を可動部材5の作動方向と異なる方向に移動させる。
【0091】
詳細には、電磁石3への通電が停止されている可動部材5の初期状態では、図10に示すように、検出部材419の当接部405と可動部材5のカム溝427との間に隙間が形成されており、検出部材419と可動部材5との間に摺動が発生しないようにされている。なお、この状態では、検出部材419によって可動部材5のデフケース503からの抜け止めがなされているので、デフケース503のボス部517に固定部材29(図1参照)を設ける必要がない。
【0092】
電磁石3の励磁により可動部材5が作動を開始した段階では、図11に示すように、検出部材419の当接部405と可動部材5のカム溝427とが当接を開始する。このとき、接点413では、作動部415と固定部417とが接続されている。
【0093】
可動部材5の作動が終了した状態では、図12に示すように、検出部材419の当接部405が可動部材5のカム溝427に沿って移動され、当接部405が可動部材5のリング部材35の外周に乗り上げた状態となる。このとき、検出部材419の接点断続部407は、付勢部材429の付勢力に抗して図12中の上方に移動される。この接点断続部407の移動により、接点413では、スプリング421の付勢力に抗して作動部415と固定部417との接続が解除される。
【0094】
このような検出部材419の接点断続部407によるスイッチ409の接点413の断続により、可動部材5の作動位置を検出することができ、断続部541の状態を検出することができる。また、このようなカムからなる作動変換部403により、可動部材5の作動方向と交差する方向に接点断続部407を作動させることができる。
【0095】
なお、作動変換部403は、図13に示すような検出部材419の当接部405と可動部材5のカム溝427aとからなるカムの作動変換部403aであってもよい。この作動変換部403aでは、可動部材5の初期状態において、検出部材419の当接部405が可動部材5のリング部材35の外周に乗り上げた状態となっている。このとき、接点413では、作動部415と固定部417との接続が解除されている。
【0096】
この状態から可動部材5を図13中の右方へ作動させることにより、検出部材419の当接部405が可動部材5のカム溝427aに沿ってカム溝427a内に配置される。これにより、接点413では、作動部415と固定部417とが接続される。このような作動変換部403aでは、検出部材419を図13中の下方に付勢する付勢部材429(図9参照)を設ける必要がない。なお、この作動変換部403aでは、検出部材419によって可動部材5のデフケース503からの抜け止めがなされていないので、デフケース503のボス部517に固定部材29が設けられている。
【0097】
このような電磁式ソレノイド401では、作動変換部403が当接部405と可動部材5との間に設けられ可動部材5の作動方向と交差する方向に接点断続部407を作動させるカムであるので、可動部材5の作動ストローク内で検出部材419の接点断続部407を作動させることができ、より電磁式ソレノイド401を小型化することができる。
【0098】
また、作動変換部403は、検出部材419の当接部405と可動部材5のカム溝427との係合であるので、検出部材419の作動を確実に行うことができ、可動部材5の作動位置の検出精度を向上することができる。
【0099】
なお、本発明の実施の形態に係る電磁式ソレノイドでは、検出部材を配置させる凹部がコアの一端面に形成されているが、これに限らず、凹部をコイルの内外周面に設けられたコアに形成してもよい。
【0100】
また、本発明の実施の形態に係る電磁式ソレノイドは、デフロック機能を有するデファレンシャル装置に適用されているが、これに限らず、例えば、アウタケースとインナケースとの間の動力伝達を断続する断続機構を有するフリーランニングデフなど一対の回転部材間の動力伝達を断続する断続機構を有する動力伝達装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1,101,201,301,401…電磁式ソレノイド
3…電磁石
5…可動部材
7,107,209,307,413…接点
9,103,203,303,409…スイッチ
11,115,419…検出部材
13,425…凹部
15,405…当接部
17,117,407…接点断続部
19,315,403,403a…作動変換部
21…コイル
23…コア
25,205,429…付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石と、この電磁石の励磁により作動する可動部材と、この可動部材の作動位置を検出する接点を有するスイッチと、前記可動部材と前記スイッチとの間に配置され前記可動部材の作動位置によって前記スイッチの接点を断続する検出部材とを備えた電磁式ソレノイドであって、
前記検出部材は、前記電磁石に設けられた凹部内に配置されていることを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項2】
請求項1記載の電磁式ソレノイドであって、
前記検出部材は、前記可動部材との当接部と、前記スイッチの接点との接点断続部とを有し、前記可動部材の作動方向と異なる方向に移動して前記スイッチの接点を断続することを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項3】
請求項2記載の電磁式ソレノイドであって、
前記検出部材は、前記接点断続部を前記可動部材の作動方向と異なる方向に移動させる作動変換部を備えていることを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項4】
請求項3記載の電磁式ソレノイドであって、
前記電磁石は、環状に所定巻き数を有して通電されるコイルと、このコイルへの通電により磁界が形成されるように所定の磁路断面積を有して少なくとも前記コイルの内外周面及びコイルの軸方向一側端面を覆うコアとからなり、
前記凹部は、前記コアの軸方向一側端面に径方向に形成され、前記検出部材は、径方向の一側に前記当接部が配置され、径方向の他側に前記接点断続部が配置されていることを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項5】
請求項4記載の電磁式ソレノイドであって、
前記作動変換部は、前記当接部と前記接点断続部との間に設けられた変換支点であることを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項6】
請求項4記載の電磁式ソレノイドであって、
前記作動変換部は、前記当接部と前記可動部材との間に設けられ前記可動部材の作動方向と交差する方向に前記接点断続部を作動させるカムであることを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の電磁式ソレノイドであって、
前記検出部材には、前記当接部と前記可動部材とを常時当接させる付勢部材が当接されていることを特徴とする電磁式ソレノイド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電磁式ソレノイドであって、
前記スイッチは、前記電磁石の外周側に配置されていることを特徴とする電磁式ソレノイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−65796(P2013−65796A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204864(P2011−204864)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】