説明

電磁波ノイズ除去装置およびこれを用いたマイクロホン

【課題】既存のマイクロホンに対して後付けが容易な電磁波ノイズ除去装置を提供すること。
【解決手段】電磁波ノイズ除去装置20は、コネクタ基台11に植設してなる1〜3番ピンE,SH,SCを利用して、マイクケースの外側に面するコネクタ基台11側に装着される。前記電磁波ノイズ除去装置20は、プリント基板21の両面に形成されたベタパターン23〜25を利用してコンデンサを生成し、プリント基板21を挟んでその両面に配置された磁性体シート31,32により、前記1〜3番ピンにインダクタンスを生成する。信号伝送に寄与する2番および3番ピンSH,SCには、前記コンデンサとインダクタンスにより、等価的にT型フィルタが挿入された構成になされ、マイクロホン内のインピーダンス変換器を含む電子回路内にノイズ成分が侵入するのを効果的に阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロホンの出力コネクタに装着可能な電磁波ノイズ除去装置およびこれを用いたマイクロホン、特にコンデンサマイクロホンに関し、例えば携帯電話機などから発生する電磁波ノイズに起因する雑音の発生を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンデンサマイクロホンは、そのマイクロホンユニットの出力インピーダンスがきわめて高いために、FET(電界効果トランジタ)などを用いたインピーダンス変換器を内蔵している。一般にコンデンサマイクロホンはいわゆるファントム電源が用いられ、マイク音声信号はファントム電源用の平衡シールドケーブルを介してミキサなどに出力される。
【0003】
そして、この種のコンデンサマイクロホンにおいては、3ピンタイプの出力コネクタを備えており、マイクロホンとマイクケーブルとが着脱可能となっている。前記出力コネクタはEIAJ RC−5236「音響機器用ラッチロック式丸型コネクタ」で規定されるコネクタであり、電気絶縁体からなる円柱状の基台に接地用の1番ピン、信号のホット側として用いられる2番ピン、信号のコールド側として用いられる3番ピンの3本のピンがそれぞれ取り付けられている。
【0004】
図5および図6は、前記した従来の出力コネクタの構成を示したものである。すなわち、図5は出力コネクタをマイクケース内に装着した状態で示す断面図であり、図6は出力コネクタを外側(マイクケーブルの接続側)から視た状態の正面図である。
【0005】
この出力コネクタ10はPBT(ポリブタジエンテレフタレート)樹脂などの電気絶縁体からなる円盤状のコネクタ基台11を備えている。このコネクタ基台11には3本のピン、すなわち前記した接地用の1番ピンE、信号のホット側の2番ピンSHおよび信号のコールド側の3番ピンSCとがそれぞれ圧入により取り付けられている。
【0006】
そして、出力コネクタ10はマイクグリップの端部にネジ止めされるコネクタ収納筒18内に筒状体17を介して装着されている。なお、前記コネクタ収納筒18を含めてマイクグリップ部は真鍮などの金属材からなり、その内部に収容された前記インピーダンス変換器等を含む電子回路(図示せず)のシールドケースとしても作用する。
【0007】
前記コネクタ基台11内には接地用の1番ピンEをコネクタ収納筒18に電気的に接続するための雄ネジ12が設けられている。この雄ネジ12はコネクタ基台11の半径方向に穿設されているネジ収納穴13に収納されるとともに、コネクタ基台11にはネジ収納穴13内において前記雄ネジ12と螺合する雌ネジを有するアース端子板14が設けられている。そして、アース端子板14と接地用の1番ピンEは、図には示されていないが接続金具を介して導通されている。
【0008】
また、図5に示すように、コネクタ収納筒18の側壁に穿設されている丸孔19から、例えばドライバ(図示せず)の先端を挿入し、前記雄ネジ12を回して同雄ネジ12を丸孔19の周縁に当接させることができるように構成されている。これにより、接地用の1番ピンEとコネクタ収納筒18とが、雄ネジ12、アース端子板14および図示されていない前記した接続金具を介して電気的に接続される。
【0009】
前記した出力コネクタ10に、図示しないファントム電源側から引き出されているマイクケーブル(平衡シールドケーブル)が接続された状態において、強い電磁波がマイクロホンやマイクケーブルに輻射されると、その電磁波が出力コネクタ10を介してマイクロホンの内部に入り込み、これが前記したインピーダンス変換器で復調されて可聴周波数の雑音としてマイクロホンから出力されるという問題が発生する。
【0010】
このような問題を解消するために本件特許出願人は、特許文献1に示すような対策を先に提案している。これによると、コネクタ基台11の内側にプリント配線板を配置して、このプリント配線板上にコンデンサ素子とゼナーダイオードとの並列接続体を搭載し、信号のホット側の2番ピンSHと接地用の1番ピンEとの間、および信号のコールド側の3番ピンSCと接地用の1番ピンEとの間に、それぞれ前記コンデンサ素子とゼナーダイオードとの並列接続体が挿入接続されるように構成されている。
【0011】
これによると、強い電磁波を受けてマイクケーブルに誘起されるノイズ成分は、出力コネクタ10を介してマイクロホンの内部に入り込もうとするものの、前記プリント配線板上に搭載されたコンデンサ素子を含むフィルタ回路が、高周波のノイズ成分を減衰させて、前記したインピーダンス変換器を含む電子回路内にノイズ成分が侵入するのを阻止もしくは減衰させるように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−72545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、本件特許出願人が提案した前記特許文献1に開示の構成によると、コンデンサ素子を含むフィルタ回路は、前記した1〜3番ピンを植設したコネクタ基台の内側に配置されたプリント配線板に搭載されるものである。したがって、この構成によるとマイクロホンの組み立て工程においてコンデンサ素子等を搭載したプリント配線板を内部に組み込む必要があり、既存のマイクロホンに対して前記フィルタ回路を後付けすることは不可能となる。
【0014】
この発明は、昨今において多用されている例えば携帯電話機のように高周波かつ高レベル電磁波を輻射する機器が、マイクロホンに接近して使用される状況に鑑みてなされたものであり、3ピンタイプの出力コネクタを備えた既存のマイクロホンに対しても、後付けで容易に装着することができ、前記した電磁波に対しても効果的に抑制効果を図ることができる低コストの電磁波ノイズ除去装置およびこれを用いたマイクロホンを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる電磁波ノイズ除去装置は、電気絶縁体からなるコネクタ基台に接地用の1番ピン、信号用の2番ピンおよび3番ピンが植設され、前記1番ピンが前記コネクタ基台を包囲するマイクケースに導通されてなるマイクロホンの出力コネクタに対して、前記マイクケースの外側に面するコネクタ基台側に前記3本のピンを利用して装着される電磁波ノイズ除去装置であって、前記電磁波ノイズ除去装置は、両面に導体箔が施されると共に、前記3本のピンを挿通するピン挿通孔が形成されたプリント基板と、前記プリント基板の両面にそれぞれ接するようにして配置され、前記3本のピンを挿通するピン挿通孔がそれぞれ形成された第1と第2の磁性体シートよりなり、前記プリント基板の一方の面は導体箔のベタパターンが形成されて前記1番ピンと導通し、前記2番ピンおよび3番ピンとは非導通になされ、前記プリント基板の他方の面は、少なくとも2つの島状に分離された導体箔のベタパターンが形成されて、第1の島状のベタパターンは前記2番ピンと導通し、前記1番ピンおよび3番ピンとは非導通になされ、第2の島状のベタパターンは前記3番ピンと導通し、前記1番ピンおよび2番ピンとは非導通になされていることを特徴とする。
【0016】
この場合、好ましい形態においては、前記プリント基板に形成されているピン挿通孔は、いずれも前記各ピンの外径よりも大径になされると共に、前記第1ないし第3のピン挿通孔のうちのいずれか1つのピン挿通孔が、対応する前記ピンに対して第1の方向に偏心して配置され、残りの2つのピン挿通孔が対応する前記各ピンに対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に偏心して配置され構成にされる。
【0017】
加えて、前記プリント基板に形成されているピン挿通孔内には、前記各1〜3番ピンとの電気的な導通を確保するためのスルーホールメッキがそれぞれ施され、前記各ピン挿通孔内に形成された各スルーホールメッキが、前記プリント基板に形成された各ベタパターンにそれぞれ導通されていることが望ましい。
【0018】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるマイクロホンは、前記した構成の電磁波ノイズ除去装置を用いたマイクロホンであって、前記電磁波ノイズ除去装置を構成する前記プリント基板および第1と第2の磁性体シートに形成されたピン挿通孔を、前記マイクロホンの出力コネクタを構成する3本のピンにそれぞれ挿通し、前記電磁波ノイズ除去装置をマイクケースの外側に面する前記コネクタ基台側に装着したことを特徴とする。
【0019】
そして、前記電磁波ノイズ除去装置は、マイクロホンユニットからの出力インピーダンスを変換する変換器を前記マイクケース内に内蔵してなるコンデンサマイクロホンに装着することで、好ましい作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
前記した構成の電磁波ノイズ除去装置は、両面に互いに導体箔によるベタパターンが対峙するように構成されたプリント基板と、その両外側に配置された第1と第2の磁性体シートにより構成され、マイクロホンの出力コネクタを構成する1〜3番ピンを利用して外側から装着することができるので、電磁波ノイズの対策がなされていない従来のマイクロホンに対しても容易にその対策を施すことができる。
【0021】
そして、電磁波ノイズ除去装置を構成する前記プリント基板の両面に対峙するようにして構成されたベタパターンにより、接地用の1番ピンに対して信号用の2番および3番ピンとの間に等価的にそれぞれコンデンサを形成させることができる。また、前記第1と第2の磁性体シートは、各1〜3番ピンの周囲の透磁率を増大させる作用を与え、いわゆるフェライトビーズと同様の自己誘導作用により実質的に各ピンに対してインダクタンス成分を生成するように働く。
【0022】
これにより、信号伝送路として機能する前記2番および3番ピンには、前記コンデンサとインダクタンスによるT型フィルタを実質的に形成することができ、このT型フィルタが信号用の2番ピンおよび3番ピンを介して伝わる電磁波のレベルを好適に低減させることに寄与する。
【0023】
また、前記磁性体シートは、前記1番ピンに対してもインダクタンス成分を生成するように働き、接地用の1番ピンは実質的に前記インダクタンス成分(高周波チョークコイル)を介してマイクロホン内部の電子回路のグランドラインに接続されることになる。これによれば、外来電磁波に起因する高周波電流は接地用の1番ピンから、電子回路内には流れ込まずに、マイクケース側に流れるように作用し、コモンモードノイズの対策を効果的に施すことができる。
【0024】
さらに、出力コネクタを構成する1〜3番ピンに対して、前記プリント基板に形成されるピン挿通孔の位置関係を前記したように偏心して配置したことで、前記プリント基板を含む電磁波ノイズ除去装置を前記1〜3番ピンを利用して装着した場合、各1〜3番ピンに対して各ピン挿通孔がバランス良く当接し、電磁波ノイズ除去装置を安定した状態で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明にかかる電磁波ノイズ除去装置をマイクロホンの出力コネクタに装着する様子を示した一部断面図である。
【図2】電磁波ノイズ除去装置を構成するプリント基板の一例を示した表裏両面図および断面図である。
【図3】電磁波ノイズ除去装置の装着によって出力コネクタ部分に生成されるフィルタ回路の等価回路図である。
【図4】前記プリント基板に形成されたピン挿通孔と出力コネクタの各ピンとの好ましい関係を示した透視図である。
【図5】従来のマイクロホンの出力コネクタの例を示した断面図である。
【図6】同じく出力コネクタを外側(マイクケーブルの接続側)から視た状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明にかかる電磁波ノイズ除去装置およびこれを用いたマイクロホンについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1はマイクロホンの出力コネクタに、この発明にかかる電磁波ノイズ除去装置を装着した例、および電磁波ノイズ除去装置を構成する各部材を分解した状態で示したものである。なお、図1に示すマイクロホンの出力コネクタ部分は、図5に基づいて説明した例と同一であり、したがって図5と同一部号を付けてその詳細な説明は省略する。
【0027】
この発明にかかる電磁波ノイズ除去装置20は、図1に示したように出力コネクタ10を構成する基台11の外側に突出した3本のピン、すなわち接地用の1番ピンE、信号用の2番ピンSHおよび信号用の3番ピンSCを利用してマイクケースの外側に面するコネクタ基台11側に装着されるものである。したがって、円盤状に形成された電磁波ノイズ除去装置20の外径は、コネクタ収納筒18内に配置される筒状体17の内径よりも僅かに小さな寸法になされている。
【0028】
前記電磁波ノイズ除去装置20は、図1に示す出力コネクタ10の右側にも分解した状態で示されており、円板状に形成されたプリント基板(両面銅箔基板)21と、このプリント基板21の両外側にそれぞれ貼り張り付けられた前記プリント基板21とほぼ同寸法の円板状に成形された第1と第2の磁性体シート31,32より構成されている。そして前記プリント基板21および第1と第2の磁性体シート31,32には、前記3本のピンを挿通することができるピン挿通孔がそれぞれ形成されている。
【0029】
図2は前記プリント基板21を示すものであり、(A)はプリント基板21の表面、すなわち図1に示すように、電磁波ノイズ除去装置20がコネクタ基台11に接して装着された場合に、マイクケーブルの接続側に向く表面のプリントパターン(ベタパターン)を示すものである。また、(B)は前記(A)におけるA−A線より矢印方向に視た断面図であり、(C)はプリント基板21の裏面のプリントパターン(ベタパターン)を示すものである。
【0030】
前記プリント基板21の基板素体22の厚さは、0.2mm程度の薄物が用いられ、この基板素体22の表面は、図2(A)に示すようにほぼ全面にわたって導体箔(銅箔)のベタパターン23になされている。このベタパターン23は電磁波ノイズ除去装置20を装着した場合において、ピン挿通孔に形成されたスルーホールメッキを利用して前記1番ピンEと導通し、前記2番ピンSHおよび3番ピンSCとは非導通になされる。
【0031】
また、前記プリント基板21の裏面には、図2(C)に示すように2つの島状に分離された導体箔(銅箔)のベタパターンが形成されている。第1の島状のベタパターン24は電磁波ノイズ除去装置20を装着した場合において、ピン挿通孔に形成されたスルーホールメッキを利用して前記2番ピンSHと導通し、前記1番ピンEおよび3番ピンSCとは非導通になされる。またプリント基板21の裏面に形成された第2の島状のベタパターン25はピン挿通孔に形成されたスルーホールメッキを利用して前記3番ピンSCと導通し、前記1番ピンEおよび2番ピンSHとは非導通になされる。
【0032】
前記した構成のプリント基板21によると、図3に等価回路図で示したように前記プリント基板21の両面に対峙するようにして構成された各ベタパターンにより、接地用の1番ピンEと信号用の2番ピンSHとの間に等価的にコンデンサC1を形成することができる。また、接地用の1番ピンEと信号用の3番ピンSCとの間に等価的にコンデンサC2を形成することができる。
【0033】
そして、前記電磁波ノイズ除去装置20は、前記プリント基板21の両面に第1と第2の磁性体シート31,32が貼り付けられた状態で構成されている。この磁性体シート31,32としては、例えばTDK株式会社より提供されている“IFL10M”と称呼される磁性体シートを好適に利用することができる。この磁性体シートは表面抵抗率が高く比較的大きな透磁率を備えるものであり、したがって前記した両面銅箔基板を構成するプリント基板21に直接貼り付けても電気的に支障をもたらすことはない。
【0034】
前記第1と第2の磁性体シート31,32は、前記したとおり等価的にコンデンサC1およびC2を形成するプリント基板21の両面に沿って配置され、各1〜3番ピンの周囲の透磁率を増大させる作用を与え、いわゆるフェライトビーズと同様の自己誘導作用により実質的に各ピンに対してインダクタンス成分を生成するように働く。
【0035】
これにより、前記第1の磁性体シート31により、図3に等価的に示すように各1〜3番ピンE,SH,SCに対してL1,L2,L3で示すインダクタンスが生成される。また、前記第2の磁性体シート32により、各1〜3番ピンに対してL4,L5,L6で示すインダクタンスが生成される。
【0036】
図3に示す等価回路によると、信号のホット側として用いられる2番ピンSHと、接地用の1番ピンEとの間で、コンデンサC1とインダクタンスL2,L5によるT型フィルタが形成される。また、信号のコールド側として用いられる3番ピンSCと、接地用の1番ピンEとの間で、コンデンサC2とインダクタンスL3,L6によるT型フィルタが形成される。
【0037】
前記コンデンサおよびインダクタンスの各定数を選定することにより、昨今において多用されている例えば800MHzおよび1.5GHzのキャリア周波数を利用する携帯電話機からの輻射ノイズを効果的に減衰させるフィルタとして機能させることができる。これにより特にマイクロホンユニットの出力インピーダンスがきわめて高いために、FETなどのインピーダンス変換器を内蔵したコンデンサマイクロホンに対して、高いノイズ低減効果を発揮することができる。
【0038】
また、前記した電磁波ノイズ除去装置20によると、図3に等価回路図で示すように、接地用の1番ピンEに対してインダクタンスL1,L4を生成することができる。これによれば、インダクタンスL1,L4は高周波チョークコイルとしての機能を発揮し、外来電磁波に起因する高周波電流は接地用の1番ピンEからマイクケース内の電子回路には流れ込まずに、マイクケース側に流すように作用する。よって、前記した電磁波ノイズ除去装置20の構成によると、本件出願人が先に出願した特開2005−244409号公報に示された例と同様のコモンモードノイズの対策を効果的に発揮することができる。
【0039】
加えて、前記した電磁波ノイズ除去装置20を構成する前記第1と第2の磁性体シート31,32は、コネクタ収納筒18内を物理的に閉塞した状態に配置されるので、外部からの電磁波を磁性体シート31,32によって効果的に遮蔽することができる。そして、前記1番ピンEと導通するプリント基板21の表面側のベタパターン23による遮蔽作用も相乗して、より効果的な電磁波遮蔽機能を発揮することができる。
【0040】
次に図4は、電磁波ノイズ除去装置20を構成する前記プリント基板21に形成されたピン挿通孔と前記出力コネクタ10の各ピンとの好ましい位置関係を透視図で示したものであり、図4においてはその前面に配置された前記磁性体シートを除き、出力コネクタ10を構成する各ピンE,SH,SCと、プリント基板21に形成されたピン挿通孔26〜28との関係を示している。
【0041】
EIAJ RC−5236に規定されているコネクタは、1番ピンE、2番ピンSH、3番ピンSCはほぼ二等辺三角形の各点に位置し、3番ピンが1番ピンと2番ピンとのほぼ中間の二等辺三角形の頂点位置に配置された構成にされる。
【0042】
そこで、前記プリント基板21に形成された第1〜3のピン挿通孔26〜28については、図4に示すように前記1〜3番ピンE,SH,SCの外径よりもそれぞれ大径になされると共に、前記第3のピン挿通孔28が、対応する前記3番ピンSCに対して、図4において下方向に偏心して配置され、残りの2つのピン挿通孔26,27が対応する前記1番ピンEおよび2番ピンSHに対して図4において上方向に偏心して配置されている。
【0043】
また、前記プリント基板21に形成されている第1〜3のピン挿通孔26〜28内には、前記各1〜3番ピンE,SH,SCとの電気的な導通を確保するためのスルーホールメッキがそれぞれ施されている。そして、第1のピン挿通孔26内に形成されたスルーホールメッキは、図2(A)に示すベタパターン23に導通されており、第2のピン挿通孔27内に形成されたスルーホールメッキは、図2(B)に示す島状のベタパターン24に導通されている。さらに、第3のピン挿通孔28内に形成されたスルーホールメッキは、図2(B)に示す島状のベタパターン25に導通されている。
【0044】
以上のとおり、出力コネクタを構成する1〜3番ピンに対して、前記プリント基板21に形成されたピン挿通孔26〜28の位置関係を前記したように偏心して配置したことで、前記プリント基板21を含む電磁波ノイズ除去装置20を前記1〜3番ピンを利用して装着した場合、各1〜3番ピンに対して各ピン挿通孔がバランス良く当接し、電磁波ノイズ除去装置を安定した状態で固定することができる。
【0045】
加えて、前記プリント基板21に形成されたピン挿通孔26〜28内には、当該プリント基板に形成された各ベタパターン23〜25に導通するスルーホールメッキが施されているので、この発明にかかる電磁波ノイズ除去装置20をマイクロホンに後付けする場合においても電気的な接触を確実にすることができ、前記スルーホールメッキを利用して、1〜3番ピンにはんだ付けすることも容易になし得る。
【符号の説明】
【0046】
10 出力コネクタ
11 コネクタ基台
20 電磁波ノイズ除去装置
21 プリント基板
23 ベタパターン
24,25 島状ベタパターン
26〜28 ピン挿通孔
31,32 磁性体シート
E 接地用1番ピン
SH ホット側2番ピン
SC コールド側3番ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁体からなるコネクタ基台に接地用の1番ピン、信号用の2番ピンおよび3番ピンが植設され、前記1番ピンが前記コネクタ基台を包囲するマイクケースに導通されてなるマイクロホンの出力コネクタに対して、前記マイクケースの外側に面するコネクタ基台側に前記3本のピンを利用して装着される電磁波ノイズ除去装置であって、
前記電磁波ノイズ除去装置は、両面に導体箔が施されると共に、前記3本のピンを挿通するピン挿通孔が形成されたプリント基板と、前記プリント基板の両面にそれぞれ接するようにして配置され、前記3本のピンを挿通するピン挿通孔がそれぞれ形成された第1と第2の磁性体シートよりなり、
前記プリント基板の一方の面は導体箔のベタパターンが形成されて前記1番ピンと導通し、前記2番ピンおよび3番ピンとは非導通になされ、前記プリント基板の他方の面は、少なくとも2つの島状に分離された導体箔のベタパターンが形成されて、第1の島状のベタパターンは前記2番ピンと導通し、前記1番ピンおよび3番ピンとは非導通になされ、第2の島状のベタパターンは前記3番ピンと導通し、前記1番ピンおよび2番ピンとは非導通になされていることを特徴とする電磁波ノイズ除去装置。
【請求項2】
前記プリント基板に形成されているピン挿通孔は、いずれも前記各ピンの外径よりも大径になされると共に、前記第1ないし第3のピン挿通孔のうちのいずれか1つのピン挿通孔が、対応する前記ピンに対して第1の方向に偏心して配置され、残りの2つのピン挿通孔が対応する前記各ピンに対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に偏心して配置されていることを特徴とする請求項1に記載された電磁波ノイズ除去装置。
【請求項3】
前記プリント基板に形成されているピン挿通孔内には、前記各1〜3番ピンとの電気的な導通を確保するためのスルーホールメッキがそれぞれ施され、前記各ピン挿通孔内に形成された各スルーホールメッキが、前記プリント基板に形成された各ベタパターンにそれぞれ導通されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された電磁波ノイズ除去装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された電磁波ノイズ除去装置を用いたマイクロホンであって、
前記プリント基板および第1と第2の磁性体シートに形成されたピン挿通孔を、前記マイクロホンの出力コネクタを構成する3本のピンにそれぞれ挿通し、前記電磁波ノイズ除去装置をマイクケースの外側に面する前記コネクタ基台側に装着したことを特徴とするマイクロホン。
【請求項5】
前記マイクロホンが、マイクロホンユニットからの出力インピーダンスを変換する変換器を前記マイクケース内に内蔵してなるコンデンサマイクロホンであることを特徴とする請求項4に記載されたマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−60276(P2012−60276A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199469(P2010−199469)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】