説明

電磁波発生装置

【課題】 周波数変化に伴う、2つのポンプ光間の交叉角度の制御も不要で、テラヘルツ波の出力側に複雑な光学系を設けることなく、簡単な装置構成で、周波数可変のテラヘルツ帯の電磁波を発生することの可能な電磁波発生装置を提供する。
【解決手段】第1のポンプ光を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光とは異なる波長の第2のポンプ光を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、周期的な分極反転構造を有し、第1のポンプ光と第2のポンプ光との差周波数の電磁波を生成する擬似位相整合素子19と、第1のポンプ光と第2のポンプ光との交叉角を位相整合範囲角に調整して固定し、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M6,18)とを備え、第2のポンプ光の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子19から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数可変のテラヘルツ帯の電磁波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ技術の応用可能性が次々と提案されてきたため、高出力で耐久性があるテラヘルツ放射源が求められるようになってきた。ここ何年かの間で、主に2つのテラヘルツ波放射源が研究されてきた。1つはフェムト秒レーザ励起による半導体からのテラヘルツ波放射であり、もう1つは非線形光学結晶を使っての差周波発生である。フェムト秒レーザ励起の場合は、ピコ秒のパルス幅を発生するために光整流により過度サージ電流が必要となる。差周波発生では、ほとんどの場合において、2つの励起レーザが必要である。差周波発生は、比較的大きい出力が期待できるが、これには位相整合を満足するために正確なビームアラインメントや、様々な光学素子の同期調整などが要求される。
【0003】
従来、差周波発生による波長可変テラヘルツ電磁波の発生装置として、図26に示すような誘電体であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶内のポラリトンモードを利用したテラヘルツ電磁波発生装置が知られていた。図26に示したような従来の電磁波発生装置においては、LiNbO3結晶101に第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2を入射し、差周波発生によりテラヘルツ電磁波hν3=hν1−hν2を発生する。こうして得られるテラヘルツ電磁波hν3の周波数帯域は、およそ0.7THzから2.5THzの範囲のコヒーレント光である。しかし、テラヘルツ電磁波分光スペクトルの違いを使って多様な生体物質などを識別するような目的のためにはスペクトル可変範囲として上記周波数帯域は、図26に示したような従来の電磁波発生装置では狭すぎたのである。図26に示した従来の電磁波発生装置においては、テラヘルツ電磁波hν3は、LiNbO3結晶101の表面に配置された複数のシリコン(Si)プリズム105a,105b,105c,105dからなるプリズムアレイを介して取り出し、テラヘルツ電磁波hν3の取り出し角度を大きくしている。そのためテラヘルツ電磁波hν3とポンプ光hν1及びhν2のビームの重なりが悪く、周波数帯域・効率とも低下する原因となっている。
【0004】
一方、LiNbO3結晶に1つのポンプ光を入射し、パラメトリック発振によりテラヘルツ電磁波hν3を発生することも可能である。この様なパラメトリック発振型のLiNbO3テラヘルツ発生装置においては、発生したテラヘルツ電磁波hν3のスペクトル線幅は、連続波(CW)レーザダイオード(半導体レーザ)によるインジェクションシーディングを行うことにより、100MHz程度まで狭線幅にできる。即ち、LiNbO3テラヘルツ発生装置をスレーブレーザ(ホストレーザ)とし、スペクトル幅の狭いCWレーザダイオードをシードレーザ(マスター発振器)として、この2つのレーザを組み合わせ、スレーブレーザとスレーブレーザの両方の性質を兼ね備えさせることにより、スペクトル幅の狭いテラヘルツ電磁波hν3を発生することができる。しかしながら、CWレーザダイオードのモードホッピングのため、逆に、広い範囲で連続的に周波数掃引することが困難となる。一方、インジェクションシーディングを行わないと、スペクトル線幅は極めて大きく100GHz(0.1THz)を越えるため、分解能が著しく低下し、周波数帯域が狭いことと合わせて物質同定の性能が十分でない。
【0005】
このため、図27に示すような、第1波長の第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数の電磁波hν3を生成する非線形光学結晶109と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数1THzにおける外部交叉角度θ inextを0.5°以内に調整し、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を非線形光学結晶109に入射させる光学系(M6,18)とを備える電磁波発生装置が提案されている(特許文献1参照。)。ここで、外部交叉角度θ inext は、非線形光学結晶109の結晶外における第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との交叉角度であって、非線形光学結晶109の内部で定義される内部交叉角度θ in とは、ほぼ:

θ inext=nL θ in ……(1)

なる関係を有する。 nLはポンプ光周波数での非線形光学結晶109の屈折率であるから、非線形光学結晶109が、GaPの場合は、屈折率nL=3.1程度である。
【0006】
特許文献1に記載された差周波発生による従来の電磁波発生装置においては、光学系(M6,18)は、ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18からなり、ミラーM6は、第1のポンプ光出射部24から出射した第1のポンプ光hν1を反射し、第1のポンプ光hν1を偏光ビームスプリッタ18に入射する角度を調整する。図27に示すように光学系(M6,18)を配置することにより、第2のポンプ光出射部25から出射した信号光(第2のポンプ光)hν2を偏光ビームスプリッタ18を透過させ、第1のポンプ光出射部24から出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1を、ミラーM6を用いて、垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、平行に近い微小な外部交叉角度θ inextで、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1及び信号光(第2のポンプ光)hν2を、非線形光学結晶109内で結合させている。
【0007】
nIをテラヘルツ電磁波hν3の周波数での非線形光学結晶109の屈折率、nLをポンプ光hν1,hν2の周波数での非線形光学結晶109の屈折率とすると、2つのポンプ光hν1,hν2が結晶内でなす内部交叉角度θ in が十分に小さいときは、図28に示した波数ベクトルの幾何学的な関係から、次の式(2)に示す条件が必要になる:

θ in = (2 Δq/ q) 1/2 (nI/nL)(ν3 / ν1) ……(2)

即ち、外部交叉角度θ inext は、非線形光学結晶109の横波格子振動周波数より十分小さい領域では、式(2)に示すように、差周波数ν3に比例して増大する。差周波数ν3が横波格子振動周波数に近くなると、外部交叉角度θ inext は式(2)が示す比例関係からずれ初め、非線形光学結晶109の周波数分散を示す曲線(カーブ)に沿って変化する。
【0008】
このため、特許文献1に記載された従来の電磁波発生装置では、図27に示すように、パーソナルコンピュータ11からの信号で、偏光ビームスプリッタ18を搭載した回転ステージ55の回転やビームスプリッタ用線形ステージ54の位置をステージコントローラ35とを用いて制御し、且つ、第2のポンプ光出射部25のポンプ光源の波長をレーザコントローラ31を用いて掃引する必要がある。2つのポンプ光hν1,hν2は、偏光ビームスプリッタ18と約60mm離れて配置されている非線形光学結晶109の表面で任意の微小な外部交叉角度θ inextにおいて常に同じ点で重ね合わせるために、偏光ビームスプリッタ18は、図27に示すように、回転ステージ55による回転に連動してビームスプリッタ用線形ステージ54上を動くように、ステージコントローラ35で制御されるという複雑な駆動系を必要としていた。
【0009】
更に、特許文献1に記載された電磁波発生装置においては、図28に示すように、非線形光学結晶109より出射されるテラヘルツ電磁波hν3が、その周波数ν3により出射角度(ポンプ光hν1,hν2とテラヘルツ電磁波hν3のなす角)θI が変化するという問題があった。例えば、周波数ν3=0.4〜6THzでこの出射角度θI は30〜60°となる。
【0010】
出射角度θIを周波数ν3によらず、一定位置或いは一定線上を通過するようにするには、図27のように一対の非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要があり、特許文献1に記載された電磁波発生装置のシステム構成が複雑になるという不具合があった。即ち、第1の非軸放物面鏡7aは非線形光学結晶109直近において、上記周波数範囲のテラヘルツ電磁波hν3を捕獲できるよう配置し、この際、第1の非軸放物面鏡7aの焦点の位置に非線形光学結晶109のテラヘルツ電磁波hν3の出射点が来るような光学配置にして、テラヘルツ電磁波hν3の出射方向に関わらず、テラヘルツ電磁波hν3のビームを同一光路にすることができるようにする複雑な駆動システムの必要な光学系が必要であるという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO2005/073795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、特許文献1に記載された従来の電磁波発生装置においては、入射ポンプ光hν1,hν2の微小な外部交叉角度θ inextを制御するための偏光ビームスプリッタ18を搭載した回転ステージ55とビームスプリッタ用線形ステージ54を、レーザコントローラ31と連動して駆動し、2つのポンプ光hν1,hν2間の外部交叉角度θ inextを自動的に制御し、更に、放物面鏡用線形ステージ53の移動をも、ステージコントローラ35で制御できるようにパーソナルコンピュータ11が制御するという、複雑なシステム構成を採用していた。つまり、特許文献1に記載された従来の電磁波発生装置においては、自動で連続的に周波数ν3を掃引し、且つそれぞれの周波数ν3で最高出力を得るためには、第2のポンプ光出射部25の波長、2つのポンプ光hν1,hν2間の外部交叉角度θ inext、第2の非軸放物面鏡7bの位置を同時に制御する必要があり、非常に複雑なシステム構成であった。
【0013】
上記課題を鑑み、本発明は、周波数変化に伴う、2つのポンプ光間の交叉角度の制御も不要で、テラヘルツ波の出力側に複雑な光学系を設けることなく、簡単な装置構成で、周波数可変のテラヘルツ帯の電磁波を発生することの可能な電磁波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(a)第1のポンプ光を出射する第1のポンプ光出射部と、(b)第1のポンプ光とは異なる波長の第2のポンプ光を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部と、(c)周期的な分極反転構造を有し、第1のポンプ光と第2のポンプ光との差周波数の電磁波を生成する擬似位相整合素子と、(d)第1のポンプ光と第2のポンプ光との交叉角を位相整合範囲角に調整して固定し、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子に入射させる光学系とを備える電磁波発生装置であることを要旨とする。この本発明の態様に係る電磁波発生装置においては、交叉角を固定した状態で、第2のポンプ光の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させることを特徴とする。ここで「交叉角」は、後述するように、互いに関連する「外部交叉角度δ」又は「内部交叉角θ」である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、周波数変化に伴う、2つのポンプ光間の交叉角度の制御も不要で、テラヘルツ波の出力側に複雑な光学系を設けることなく、簡単な装置構成で、周波数可変のテラヘルツ帯の電磁波を発生することの可能な電磁波発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の基本コンセプトに係る電磁波発生装置の全体構成の概略を説明する模式的な図である。
【図2】本発明の基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子の構造例の概略を説明する模式的な鳥瞰図である。
【図3】擬似位相整合素子において、互いに打ち消し合うフェーズが、結晶の分極を反転させることにより、SHG波長変換光の位相が反し、強度が増大することを説明する模式図である。
【図4】図3に示した擬似位相整合素子の製造方法の概略を説明する模式的な鳥瞰図である。
【図5】擬似位相整合素子の製造方法の他の例を概略的に説明する模式的な鳥瞰図である。
【図6】本発明の基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子の他の構造例の概略を説明する模式的な断面図である。
【図7】本発明の基本コンセプトに係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図(ベクトル合成図)である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図において、半径kLa,kLbと半径kTa,kTbの2つの円の交点が、一般には2つ存在することを説明する図である。
【図9】図8の2つの円の交点の一方に関し、図8で定義した第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来する一つのベクトルkLa、及び、対応するテラヘルツ波の波数ベクトルkTaのそれぞれを、擬似位相整合素子の傾き、第1のポンプ光の波数ベクトルkp1、及び第2のポンプ光の波数ベクトルkp2と共に示す図である。
【図10】図8の2つの円の交点の他方に関し、図8で定義した第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来する、図9に示したのとは異なる、他のベクトルkLb及び、対応する他のテラヘルツ波の波数ベクトルkTbのそれぞれを、擬似位相整合素子の傾き、第1のポンプ光の波数ベクトルkp1、及び第2のポンプ光の波数ベクトルkp2と共に示す図である。
【図11】ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合について、複数のテラヘルツ波の波数ベクトルの軌跡を示す複数の円を示し、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図である。
【図12】ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合について、複数のテラヘルツ波の波数ベクトルの軌跡を示す複数の円を示し、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図である。
【図13】第1の実施の形態に係る電磁波発生装置に用いるPPKTP結晶のテラヘルツ波透過特性を示す図である。
【図14】内部交叉角度の値が位相整合範囲角を超えている場合について、複数のテラヘルツ波の波数ベクトルの軌跡を示す複数の円を示し、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図である。
【図15】内部交叉角度の値が位相整合範囲角に相当する場合について、複数のテラヘルツ波の波数ベクトルの軌跡を示す複数の円を示し、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図である。
【図16】内部交叉角度の値が位相整合範囲角に相当する場合について、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)を横軸に、テラヘルツ波の周波数を縦軸に示す図である。
【図17】テラヘルツ波の波数ベクトルkTの角度と、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)の定義を説明する模式図である。と
【図18】内部交叉角度の値が位相整合範囲角に相当する場合について、図16の中央に□印でプロットした内側整合条件の部分を拡大して示す図である。
【図19】ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合において、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値を3Dプロットにしたものである。
【図20】ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合において、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値を3Dプロットにしたものである。
【図21】内部交叉角度の値が位相整合範囲角に相当する場合について、本発明の第2の実施の形態に係る電磁波発生装置のベクトルkLの傾きの角度(kL角)とテラヘルツ波の周波数との関係を示す図である。
【図22】ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合において、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値を3Dプロットにしたものである。
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る電磁波発生装置の全体構成の概略を説明する模式的な図である。
【図24】本発明の第4の実施の形態に係る電磁波発生装置の全体構成の概略を説明する模式的な図である。
【図25】本発明の第5の実施の形態に係る電磁波発生装置の全体構成の概略を説明する模式的な図である。
【図26】従来技術に係る電磁波発生装置の一部を説明する模式的な断面図である。
【図27】他の従来技術に係る電磁波発生装置の全体構成の概略を説明する模式的な図である。
【図28】従来技術に係る電磁波発生装置に於ける位相整合を説明する2次元ベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
(基本コンセプト)
本発明の基本コンセプトに係る電磁波発生装置は、図1に示すように、第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、周期的な分極反転構造を有し、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数の電磁波を生成する擬似位相整合素子19と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との外部交叉角度δ及び内部交叉角θを調整して固定し、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2を擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M6,18)とを備える。ここで、外部交叉角度δ は擬似位相整合素子19の外部における第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との交叉角度であって、擬似位相整合素子19の内部の交叉角度である内部交叉角度θとは、ほぼ:

δ=nL θ in ……(3)

なる関係を有するのは、式(1)と同様である。式(3)は、空気中を伝播する第1のポンプ光hν1や第2のポンプ光hν2等の波数ベクトルと、擬似位相整合素子19中を伝播する第1のポンプ光hν1や第2のポンプ光hν2等に対する波数ベクトルが違うことを意味しており、注意が必要である。式(3)のnLはポンプ光周波数での擬似位相整合素子19の屈折率であるから、周波数分散が無視できれば、テラヘルツ波hνTに対する擬似位相整合素子19の屈折率nTHzを用いて、

L =nTHz ……(4)

と、近似することができる。
【0019】
図1に示すように、基本コンセプトに係る電磁波発生装置は、更に、シリコンボロメータやDTGS赤外光検出器のようなテラヘルツ帯の電磁波検出器34を備え、擬似位相整合素子19から出射したテラヘルツ帯の電磁波は電磁波検出器34で検出される。電磁波検出器34は、電圧計33に接続され、電圧計33は、パーソナルコンピュータ(PC)11に接続されて、電磁波検出器34が検知したテラヘルツ帯の電磁波に依拠した電気信号に対し、演算処理が可能なように構成されている。擬似位相整合素子19から出射するテラヘルツ帯の電磁波は、一定方向に出射するので、電磁波検出器34は固定位置に配置することが可能である。
【0020】
光学系(M6,18)は、図1に示すように、ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18からなる。ミラーM6は、第1のポンプ光出射部24から出射した第1のポンプ光hν1を反射し、第1のポンプ光hν1を偏光ビームスプリッタ18に入射する角度を調整するように回転可能なミラーである。図1に示す光学系(M6,18)の配置により、第2のポンプ光出射部25から出射した信号光(第2のポンプ光)hν2を偏光ビームスプリッタ18を透過させる。又、第1のポンプ光出射部24から出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1は、ミラーM6を用いて、垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、平行に近い微小な外部交叉角度δで、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1及び信号光(第2のポンプ光)hν2を、擬似位相整合素子19内で結合させる光学系を構成している。
【0021】
基本コンセプトに係る電磁波発生装置は、図1に示すように、擬似位相整合素子19は、回転ステージ57に搭載され、回転ステージ57は、ステージコントローラ32による駆動される。ステージコントローラ32は、パーソナルコンピュータ11により制御されるように接続されている。具体的には、回転ステージ57は、例えばステッピングモータにより駆動され、ステージコントローラ32は、このステッピングモータを制御するモータコントローラから構成することが可能である。ステージコントローラ32は、GPIB通信やUSB通信、RS−232C通信等によりパーソナルコンピュータ11から制御されるようにできる。但し、後述するように、本発明の第1第4の実施の形態に係る電磁波発生装置では、擬似位相整合素子19をほとんど回転させることなく、0.3〜2THzのテラヘルツ波放射源が設計可能であるので、回転ステージ57を省略することも可能である。
【0022】
更に、第1のポンプ光出射部24及び第2のポンプ光出射部25は、レーザコントローラ31に接続され、レーザコントローラ31により出力強度及び周波数を制御される。レーザコントローラ31は、パーソナルコンピュータ11に接続され、GPIB通信やUSB通信、RS−232C通信等により制御される。特に、第2のポンプ光出射部25の波長は、レーザコントローラ31を介してパーソナルコンピュータ11により制御されるが、ステージコントローラ32をレーザコントローラ31と連動して駆動・制御することにより、自動で連続的に周波数ν3を掃引し、且つそれぞれの周波数ν3で最高出力を得るためには、第2のポンプ光出射部25の波長及び擬似位相整合素子19の回転角度が制御される。
【0023】
冒頭で述べたとおり、特許文献1に記載された従来の電磁波発生装置においては、外部交叉角度θ inext は、非線形光学結晶109の横波格子振動周波数より十分小さい領域では、式(2)に示すように、差周波数ν3に比例して増大し、差周波数ν3が横波格子振動周波数に近くなると、外部交叉角度θ inext は、非線形光学結晶109の周波数分散を示す曲線に沿って変化するので、従来は、パーソナルコンピュータ11からの信号で、偏光ビームスプリッタ18を搭載した回転ステージ55の回転やビームスプリッタ用線形ステージ54の位置をステージコントローラ32を用いて制御する必要があったが、基本コンセプトに係る電磁波発生装置においては、図7に示すように、外部交叉角度δ は、差周波数ν3に依存しないので、一定方向に出射可能に構成できるので、図27に記載されたような回転ステージ55、ビームスプリッタ用線形ステージ54やこれらを駆動制御するステージコントローラ32は不要である。
【0024】
ここで、第1のポンプ光出射部24は、例えば、第1のポンプ光hν1を出射するクロム(Cr)添加フォルステライトレーザ、イッテルビウム(Yb)添加YLF(イットリウム・リチウム・フルオライド)レーザ、Yb添加ファイバレーザのいずれかからなる第1のポンプ光hν1源を備え、第2のポンプ光出射部25は、例えば、第2のポンプ光hν2を出射するCr添加フォルステライトレーザ、Yb添加YLFレーザ、Yb添加ファイバレーザのいずれかからなる第2のポンプ光源を備えるようにすることが可能である。ここで、Cr添加フォルステライトレーザは、かんらん石の主成分であるフォルステライト(SiO2・2MgO=Mg2SiO4)中のCrの準位を用いているため、インジェクションシーディングなしのOPOに比べてスペクトル線幅が極めて狭い。Cr添加フォルステライトレーザは、波長1.064μmの励起光源(YAGレーザ)16を用いて励起され、OPOのようにYAG第3高調波を用いないので効率が高い。第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光源をそれぞれ励起し、第1及び第2のポンプ光源から第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2を出射させる励起光源を更に備えるようにしても良い。或いは、第1のポンプ光出射部24から波長1.064μmのYAGレーザの出力を第1のポンプ光hν1として出射し、第2のポンプ光出射部25は、インジェクションシーディング機構を有するオプティカルパラメトリックオシレータを備え、オプティカルパラメトリックオシレータをYAGレーザの出力で励起することにより、第2のポンプ光出射部25からオプティカルパラメトリックオシレータの出力を第2のポンプ光hν2として出射するようにしても良い。
【0025】
周期的な分極反転構造を有した擬似位相整合素子19としては、例えば、図2に示すようなコヒーレンス長lcごとに結晶の分極方向を周期的に反転させた構造が採用可能である。図2では、厚さlcで方向Mに分極している部分191Mと、厚さlcで方向Mに反対の方向Nに分極している部分191Nとが交互に周期的に積層されている。歴史的には、図2に示すような、周期的な分極反転構造は、当初、第二高調波を生成する場合の位相整合に主に用いられていた。第二高調波を生成する場合のコヒーレンス長lcは、k1を基本波(入射光)の波数、k2を第二高調波(射出光)の波数とした場合には、

lc=π/(k2−2k1) ……(5)

で表され、和周波を生成する場合のコヒーレンス長lcは、k3、k4を入射光の波数、k5を射出光の波数とした場合に、

lc=π/{k5−(k3+k4)} ……(6)

で表される。
【0026】
そして、分極反転の周期(格子定数)Λは、Λ=2mlc(ここでmは、次数を表す正の整数である。)で表される。図2に示すとおり、Λは、分極反転の1周期分の長さであり、mが奇数の場合、その中にある基準となる方向Mに分極している部分191Mの長さlc(M)と、方向Mの反対方向Nに分極している部分191Nの部分の長さlc(N)の関係は、m=1として、Λ=lc(M)+lc(N)となる。このときlc(M):lc(N)=1:1の関係が望ましい。一方、mが偶数の場合、基準となる方向Mに分極している部分191Mの長さt(M)と、方向Mの反対方向Nに分極している部分191Nの部分の長さt(N)の関係も、Λ=t(M)+t(N)となるが、m=2として、t(M):t(N)=1:3の関係が望ましい。
【0027】
図2に示したように、擬似位相整合素子19には、結晶の分極(M,N)を周期的に反転させた周期分極反転構造が形成されており、擬似位相整合の原理から分かるように、分極反転の周期Λは、分極の正負の領域を一対としてコヒーレンス長lcの2倍の長さになる。擬似位相整合素子19の大きな特徴の1つとして、分極反転周期を調整することで、対応波長や変換方法(高調波発生、光パラメトリック発振等)をカスタマイズすることができることである。擬似位相整合素子19は分極反転構造を形成する方位を選ぶことで、従来の複屈折位相整合では実現できなかった方位の高い非線形定数を利用でき、結晶本来の非線形特性を十分に活用した効率の良い波長変換が可能になる。
【0028】
一般的に位相整合がとれていない場合には、基本波光と発生した波長変換光の間で位相速度に差があるために、基本波が結晶内を伝播するにつれて次々と発生する波長変換光は、少しずつ位相がずれて発生する。発生した波長変換光は、各々が加算されて徐々に強度が増すが、ある距離lc離れた2点で発生した波長変換光の位相差がπになると、互いに打ち消し合うようになり逆に強度が減衰していく。その結果、波長変換光の強度は図3(b)の点線で示すように、分極反転の周期Λで、周期的に強弱を繰り返すようになる。擬似位相整合素子19においては、図3(b)の実線で示すように、互いに打ち消し合うフェーズにおいて、結晶の分極を反転させて、このフェーズで発生する波長変換光の位相を反転させ、安定して強度を増大させている。図3(b)の実線で示すように、本来なら互いに打ち消し合うフェーズでも、逆に強め合うフェーズに移行でき、強度を常に増加させることができる。
【0029】
基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子19としては、第1のポンプ光hν1、第2のポンプ光hν2及びテラヘルツ波hνTの波長に対して透明で、機械的/光学的特性に優れ、中でも非線形光学定数が最も大きく、低価格な誘電体や半導体が好適である。
【0030】
図2に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子19は、例えば、図4に示すように、リオブ酸リチウム(LiNbO3 )結晶(LN結晶)、タンタル酸リチウム(LiNbO3 )結晶(LN結晶)、リン酸チタン酸カリウム(KTiOPO4 )結晶(KTP結晶)等の誘電体結晶から、超精密加工と研磨等により数μm〜50μmの薄板191M,191N,191M,191N,191M,191N,…を用意し、薄板191M,191N,191M,191N,191M,191N,…を交互に分極(M,N)が反転するようにして(図4(a)の矢印が分極M,Nの方向を示す。)接合することにより、図4(b)に示すように、擬似位相整合素子19を製造することができる。図4(b)における接合方法としては、拡散接合や常温接合が採用可能で、拡散接合や常温接合を用いることにより、光学的/機械的に安定な接合を行うことができる。図4(a)では、便宜上、8枚を接合する場合を例示しているが、基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子19に用いる薄板191M,191N,191M,191N,191M,191N,…の枚数は、図4に例示する枚数に限定されるものではない。又薄板191M,191N,191M,191N,191M,191N,…の厚さΛ/2は、高次の周期にすれば(次数mを大きくすれば)厚くできるため、加工精度に応じて最適な次数にすれば良い。
【0031】
又、図2に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子19は、図5に示すような製造方法でも製造可能である。図4に示したような方法で必要な枚数だけ薄板を重ねて接合することにより擬似位相整合素子19を作る場合には、枚数が非常に多くなるため、それらすべてを研削/研磨して接合するのは時間と価格がかかる。そこで図3に示すとおり、先ず、素材となる誘電体結晶や半導体結晶から、X線リソグラフィーや超精密加工等により、2つの櫛形状基板19a,19bを作成する。この際、櫛形の歯の部分の長さ方向が分極(M,N)の方向となるようにしておく(矢印が分極(M,N)の方向を示す)。そして、櫛形状基板19aと19bを、櫛形の歯の部分の分極(M,N)が互いに反転する方向となるようにして嵌合させて接合するれば良い。図5に示す接合方法としては拡散接合や常温接合を用いることができる。このとき、2つの櫛形状基板19a,19bが互いに勘合しやすいように、溝が深くなるに従い、溝の間隔が狭くなるように、精密加工や異方性エッチングなどで櫛形部の構造を形成しても良い。又接合を用いずに嵌め合わせただけで使用可能な場合には、櫛形状基板19a,19bの互いの櫛歯の間に少し隙間ができるように加工し、隙間をマッチングオイルなどで埋めるようにしても良い。
【0032】
更に、基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子19は、図6に示すように分極Mの基板192の表面に、この表面に垂直方向の断面形状が円弧状であり、分極方向Nが、分極Mとは反対方向である領域193を、周期Λで、板面方向に周期的にストライプ状に埋め込んだ構造で周期分極反転構造を構成しても良い。即ち、基本コンセプトに係る電磁波発生装置に用いる擬似位相整合素子19は、結晶の分極(M,N)が周期的に反転した構造であれば種々の周期分極反転構造が採用可能であり、又、その製造方法も種々の方法が採用可能である。

【0033】
(第1の実施の形態)
以下の本発明の第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の説明では、図1に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置の構成において、擬似位相整合素子19として周期分極反転KTP結晶(以下において「PPKTP結晶」という。)を用いた場合を例示し、この擬似位相整合素子19を用いた擬似位相整合条件により、擬似位相整合素子19中で差周波信号を発生し、これによりテラヘルツ波を生成する構成を説明する。尚、図1の基本コンセプトの説明では、擬似位相整合素子19を回転ステージ57に搭載し、回転ステージ57をステージコントローラ32により駆動する構成を、便宜上例示的に説明したが、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置では、擬似位相整合素子19をほとんど回転させることなく、0.3〜2THzのテラヘルツ波を擬似位相整合素子19から出射することが可能である。
【0034】
よって、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、図1に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置の説明で用いたステージコントローラ32をパーソナルコンピュータ11により制御することや、図1に示した基本コンセプトで説明した回転ステージ57そのものを省略しても良い。又、以下の第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の説明では、0.3〜2THzの範囲において、擬似位相整合素子19から出射するテラヘルツ波の分散の範囲は、3.0°〜3.5°程度以下の小さな値に設定できるので、図1に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置の構成において、電磁波検出器34の位置を所定の位置に固定でき、且つ、擬似位相整合素子19と電磁波検出器34との間に、図27に示したような、非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要もない。
【0035】
先ず、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の擬似位相整合素子19として用いるPPKTP結晶のテラヘルツ波透過特性を調べた結果を図13に示す。図13の測定では、広帯域出力可能なテラヘルツ波放射源を使い、厚さ465μmのKTP基板に対して透過特性の計測を行った。図13に示すように、0.5〜2THzの領域において比較的高い透過性が観測された。それ以下の周波数範囲では、光源の制約上測定できなかったが、KTP基板は、少なくとも0.3THzまでは透明であると推定される。
【0036】
第1の実施の形態に係る電磁波発生装置における差周波発生によるテラヘルツ波の周波数幅は、擬似位相整合素子19のテラヘルツ波の透過性特性を考慮して決めれば良い。よって、第1の実施の形態として例示するように、擬似位相整合素子19が、PPKTP結晶であれば、対象振動数領域を0.3〜2THzに設定できる。尚、図13に示す透過スペクトルのファブリーペロー干渉縞から、テラヘルツ波のPPKTPの屈折率nTHz=3.393と計算される。図14〜図20にデータでは、PPKTPの屈折率nTHz=3.393の値を用いて計算している。但し、上述の基本コンセプトに係る電磁波発生装置の説明から理解できるように、より小さな吸収率や屈折率nTHzを持つ擬似位相整合素子19を用いることにより、より実現可能で扱いやすい差周波発生を用いた電磁波発生装置が実現可能である。
【0037】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置では、第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25との2つのポンプ光hν1.hν2の相互作用により差周波を発生させる。第1のポンプ光hν1の波長は1.21μmに固定し、第2のポンプ光hν2は1.199μm〜1.221μmに調整される。尚、Cr添加フォルステライトレーザは第1の実施の形態に係る電磁波発生装置で使用するレーザの波長帯を完全に網羅している。周期的な分極反転構造を持つ擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λは6μmである。
【0038】
擬似位相整合素子19の周期的な分極反転構造に由来する光子運動量をベクトルkLで示し、テラヘルツ波の波数ベクトルをベクトルkTとし、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルをベクトルkp1で示し、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルをベクトルkp2で表現すれば、擬似位相整合での運動量保存則は式(7)で示される:

ベクトルkp1−ベクトルkp2=ベクトルkT+ベクトルkL…(7)

式(7)の関係は、図8に示される。
【0039】
第1のポンプ光hν1のベクトルkp1は、この波長領域での屈折率nTHz=1.745として、ベクトルkp1=2nπ/λp1により計算し、波長1.21μmで固定としているので、9.06μm−1で固定である。一方、第2のポンプ光hν2のベクトルkp2は、第2のポンプ光出射部25の波長をレーザコントローラ31を介してパーソナルコンピュータ11により制御することにより、波長1.199μmから1.221μmまで変化することにより、この波長領域での屈折率nTHz=1.745として、ベクトルkp2=2nπ/λp2により計算されるので、8.987μm−1から9.145μm−1 まで変化する。尚、図8に示すとおり、運動量ベクトルベクトルkp1は平行線上にある。
【0040】
第1の実施の形態に係る電磁波発生装置で扱う内部交叉角度θは、すべてベクトルkp1から見た内角であり、又その角度は擬似位相整合素子19中での内部交叉角度θである。これ以降は、特に何も示さない限り、計算により得た内部交叉角度θは擬似位相整合素子19中での角度を意味している。式(7)の右辺のベクトルkLの値(〜1μm−1)は、擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λ=6μmの値を使って、ベクトルkL=2π/Λと導出される。一方、テラヘルツ波の波数kTは、差周波の運動量ベクトルベクトルの絶対値であるので、以下の式(8)のように表現できる:

T ≒ ABS(ベクトルkp1−ベクトルkp2) …(8)

ここでABS(ベクトルkp1−ベクトルkp2) は、(ベクトルkp1−ベクトルkp2) の絶対値を表す。
【0041】
式(8)のベクトルkTの軌跡は、図8に半径がベクトルkTa=ベクトルkTbの円として描かれている。擬似位相整合素子19の配置が容易になっていることが明らかになっている。ベクトルkTa,ベクトルkTbの半径が式(8)により決定され、ベクトルkTa,kTbのそれぞれの矢印の付け根(つまり半径kTa,kTbの円の中心)はベクトルkp2のベクトルの終点に位置している。一方、分極反転構造に由来するベクトルkLa,kLbを表す円の付け根(つまり半径kLa,kLbの円の中心)はベクトルkp1のベクトルの終点にそれぞれ位置している。
【0042】
擬似位相整合素子19の周期的な分極反転構造に由来する光子運動量を表すベクトルkLa,kLbは、テラヘルツ波の波数ベクトルkTa,kTbとは異なり、擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λ=6μmにより決まるので、1μm−1の値を持つ定数であり、2つの円の交点は位相整合条件を満足する点である。図8から、半径kLa,kLbと半径kTa,kTbの2つの円が互いに接して交点が1つとなる場合を除いては、一般的に交点は2つ存在している。従って、図8に示すように、二とおりの交点が定義され、一方の交点でベクトルkLaとベクトルkTaとが定義され、他方の交点でベクトルkLbとベクトルkTbが、それぞれ定義される。図8から、擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λの大きさの上限はテラヘルツ波の波長程度、即ち、例えば、1mm(0.3THz)程度の値にすることが好ましいことが分かる。擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λを、テラヘルツ波の波長程度を越えて、更に大きくすると、図8に示すベクトルkLa,kLbが小さくなり、従来の擬似位相整合素子19を用いない差周波発生のベクトル図との差が無くなり、本発明の特徴が失われることになる。一方、分極反転の周期Λの下限は、擬似位相整合素子19の製造技術によっても制限されるが、あまり微細化することも好ましくない。分極反転の周期Λの値が0.7μm程度まで小さくなると、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルkp1、及び第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2と同じ大きさに、ベクトルkLa,kLbの絶対値が大きくなる。この場合、図8から理解できるように、運動量を保存するためには、ほぼ正三角形のベクトル合成図になり、励起2波の波数ベクトルkp1と波数ベクトルkp2との角度が60°くらいとなり、ビームの重なりが小さくなり、都合がよくない。よって、擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λの下限は、励起光の波長よりも大きな値を選ぶことが好ましい。
【0043】
図9は、図8で定義した第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来するベクトルkLa、及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTaのそれぞれを、擬似位相整合素子19、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルkp1、及び第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2と共に示す図であり、図10は、図8で定義した、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の分極反転構造に由来するベクトルkLb及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTbのそれぞれを、擬似位相整合素子19、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルkp1、及び第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2と共に示す図である。図9及び図10に示すように、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、擬似位相整合素子19から発生するテラヘルツ波の波数ベクトルkTa,kTbの進路方向が2パターン存在する。よって、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の設計においては、システムが要求する仕様に応じて、テラヘルツ波の波数ベクトルkTaの進路方向、又は、テラヘルツ波の波数ベクトルkTbの進路方向のいずれかを選択可能である。
【0044】
第2のポンプ光出射部25の波長を、レーザコントローラ31を介してパーソナルコンピュータ11が制御して、第2のポンプ光hν2の波長が、1.199μmから1.221μmまで変化することにより、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2の値は、8.977μm−1から9.145μm−1に変化する。第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2の値が、8.977μm−1から9.145μm−1に変化するにつれて、図11及び図12に示すように、異なる波数ベクトルkp2のベクトルのそれぞれの終点に、円の中心がそれぞれ位置するように、異なる半径kTの円がそれぞれ描かれる。
【0045】
図11に示すように、ベクトルkp1がベクトルkp2よりも大きい場合(ベクトルkp2<ベクトルkp1)は、8.977μm−1から9.145μm−1の範囲で変化する波数ベクトルkp2のベクトルのそれぞれの終点に、円の中心がそれぞれ位置するように、異なる半径kTの円がそれぞれ描かれ、異なる半径kTの円が、それぞれ、分極反転構造に由来するベクトルkLの円と異なる点で交わる。一方、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円の付け根(つまり一定半径kLの円の中心)は、ベクトルkp1のベクトルの終点に位置している。このことは、差周波発生による生成したテラヘルツ波の波数ベクトルkTの絶対値や方向が、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2の値によって、変化することを示唆している。更に、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2の値が、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルベクトルkp1に近づくにつれ、テラヘルツ波の波数ベクトルkTの円の半径、つまりベクトルkTの絶対値が徐々に小さくなっていくことが予測される。従って、ベクトルkp1 @ ベクトルkp2のとき(ベクトルkTが0に限りなく近いとき)ベクトルkp1とベクトルkp2の間の内部交叉角度θの値によっては、図14に示すように位相整合が満たされない場合が起こりうる。
【0046】
図12に示すように、ベクトルkp1がベクトルkp2よりも小さい場合(ベクトルkp2>ベクトルkp1)も、図11と同様に、波数ベクトルkp2のベクトルのそれぞれの終点に、円の中心がそれぞれ位置するように、異なる半径kTの円がそれぞれ描かれるので、異なる半径kTの円が、それぞれ、分極反転構造に由来するベクトルkLの円と異なる点で交わる。図12においても、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円の付け根は、ベクトルkp1のベクトルの終点に位置している。図12に示すベクトルkp1がベクトルkp2よりも小さい場合も、図11と同様に、差周波発生による生成したテラヘルツ波の波数ベクトルkTの絶対値や方向が、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2の値によって、変化することが分かる。図11の場合と同様に、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルkp2の値が、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルベクトルkp1に近づくにつれ、テラヘルツ波の波数ベクトルkTの円の半径が徐々に小さくなっていくことが予測されるので、ベクトルkp1 @ ベクトルkp2のときは、ベクトルkp1とベクトルkp2の間の内部交叉角度θの値によっては、位相整合が満たされない場合が起こりうる。
【0047】
図14は、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、内部交叉角度θ=〜7.44°とした場合について、図11及び図12を拡大して示したものである。但し、図14は、図11に示したベクトルkp1がベクトルkp2よりも大きい場合(ベクトルkp2<ベクトルkp1)と図12に示したベクトルkp1がベクトルkp2よりも小さい場合(ベクトルkp2>ベクトルkp1)の2つの図を合成した図の拡大図に相当する。図14に示すように内部交叉角度θ=〜7.44°の場合は、擬似位相整合素子19の分極反転構造に由来するベクトルkLは、第2のポンプ光hν2のベクトルkp2と接しなくなるので、内部交叉角度θの値が位相整合範囲角を超えている場合に相当する。図14の左側の破線で示した最も半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が8.81THzの場合の波数ベクトルkTを示す。又、図14の左側の破線で示した円の内側の2点鎖線で示した2番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が6.15THzの場合の波数ベクトルkTを示し、左側の2点鎖線で示した円の内側の1点鎖線で示した3番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が3.37THzの場合の波数ベクトルkTを示す。これらテラヘルツ波の周波数が8.81THz,6.15THz,3.37THzの3本の波数ベクトルkTを示す円は、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円に交わり、擬似位相整合条件が存在する。しかしながら、図14の左側において、1点鎖線で示した円の更に内側に、実線で示した最も半径が小さい円は、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円との交点がなく、擬似位相整合条件が満たされなくなってしまうことが分かる。
【0048】
同様に、図14の右側の破線で示した最も半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が12.74THzの場合の波数ベクトルkTを示す。又、図14の右側の破線で示した円の内側の2点鎖線で示した2番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が9.19THzの場合の波数ベクトルkTを示し、右側の2点鎖線で示した円の内側の3番目に半径の大きな1点鎖線で示した円は、テラヘルツ波の周波数が5.82THzの場合の波数ベクトルkTを示す。これらテラヘルツ波の周波数が12.74THz,9.19THz,5.82THzの3本の波数ベクトルkTを示す円は、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円に交わり、擬似位相整合条件が存在する。しかしながら、図14の左側において、1点鎖線で示した円の更に内側に、実線で示した最も半径が小さい円は、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円との交点がなく、擬似位相整合条件が満たされなくなってしまうことが分かる。この様に、内部交叉角度θの値が大きくなり、位相整合範囲角を超えた場合は、特に、テラヘルツ波の波数ベクトルkTを示す円の半径がある値より小さな場合、擬似位相整合条件が満たされなくなってしまうことが分かる。
【0049】
同様に、図15は、分かりやすいように、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、内部交叉角度θ=〜6.34°となる場合について、図11及び図12を拡大して示したものである。図14と同様に、図15は、図11に示したベクトルkp1がベクトルkp2よりも大きい場合(ベクトルkp2<ベクトルkp1)と図12に示したベクトルkp1がベクトルkp2よりも小さい場合(ベクトルkp2>ベクトルkp1)の2つの図を合成した図の拡大図に相当する。図14に示した場合と異なり、図15に示すように内部交叉角度θ=〜6.34°の場合は、擬似位相整合素子19の分極反転構造に由来するベクトルkLは、第2のポンプ光hν2のベクトルkp2と接しているので、内部交叉角度θの値が位相整合範囲角の範囲内に存在する場合に相当する。即ち、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルkp1が9.06μm−1のとき、分極反転構造に由来するベクトルkLとテラヘルツ波の波数ベクトルkTが丁度接するときの内部交叉角度θの値が、図15にあるように〜6.34°である。図15の左側の破線で示した最も半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が8.81THzの場合の波数ベクトルkTを示し、破線で示した円の内側の2点鎖線で示した2番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が6.15THzの場合の波数ベクトルkTを示し、2点鎖線で示した円の内側の1点鎖線で示した3番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が3.37THzの場合の波数ベクトルkTを示し、1点鎖線で示した円の更に内側に、実線で示した最も半径が小さい円は、テラヘルツ波の周波数が0.45THzの場合の波数ベクトルkTを示す。これら図15の左側のテラヘルツ波の周波数が8.81THz,6.15THz,3.37THz,0.45THzの4本の波数ベクトルkTを示す円は、すべて、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円に交わり、擬似位相整合条件が存在する。
【0050】
一方、図15の右側の破線で示した最も半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が12.74THzの場合の波数ベクトルkTを示し、破線で示した円の内側の2点鎖線で示した2番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が9.19THzの場合の波数ベクトルkTを示し、2点鎖線で示した円の内側の1点鎖線で示した3番目に半径の大きな円は、テラヘルツ波の周波数が5.82THzの場合の波数ベクトルkTを示し、1点鎖線で示した円の更に内側に、実線で示した最も半径が小さい円は、テラヘルツ波の周波数が2.61THzの場合の波数ベクトルkTを示す。これら図15の右側のテラヘルツ波の周波数が12.74THz,9.19THz,5.82THz,2.61THzの4本の波数ベクトルkTを示す円は、すべて、分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円に交わり、擬似位相整合条件が存在することが分かる。この様に、内部交叉角度θの値が位相整合範囲角の範囲内にある場合は、テラヘルツ波の波数ベクトルkTを示す円の半径がある値より小さな場合であっても、常に、擬似位相整合条件を満たすことが分かる。
【0051】
同様に、内部交叉角度θの値が小さくなり、最適値よりも小さくなった場合、図14と同じ状況が起こり、擬似位相整合条件が満たされなくなってしまうことが分かる。いずれにせよ、図14及び図15に示したとおり、テラヘルツ波の波数ベクトルkTの軌跡を示す円が、分極反転構造に由来するベクトルkLの軌跡を示す円と接する場合を除いて、擬似位相整合を満足できる点が、ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合と、ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合で2点あるので、あるベクトルkp2の値に対し、二とおりの擬似位相整合条件が存在するということが分かる。
【0052】
更に、図14及び図15から分かるとおり、ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合のベクトルkTの軌跡を示す左側の円と、ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合のベクトルkTの軌跡を示す右側とが外接する位置を基準として、ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合と、ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合の2つの場合のそれぞれに関し、外接位置から遠方側のベクトルkTの擬似位相整合条件と、外接位置に近接側のベクトルkTの擬似位相整合条件で、二とおりの擬似位相整合条件が分類される。即ち、図8では、ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合について、半径kTa=kTbの円と、半径kLa=kLbを表す円の二とおりの交点に対応して、それぞれ左側にベクトルkLaとベクトルkTaとを定義し、右側にベクトルkLbとベクトルkTbを定義したが、同様に、ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合についても、ベクトルkp1とベクトルkp2との交差点から見て、遠方側のテラヘルツ波の波数ベクトルkTの擬似位相整合条件と、近接側のテラヘルツ波の波数ベクトルkTの擬似位相整合条件の分類ができる。このことは、図14及び図15において、ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合も、ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合も、それぞれ、2つの円の外接位置から見てほぼ対称的に、外側(両側)にできる交点での擬似位相整合条件(外側整合条件)と、内側(外接位置の近傍)にできる交点での擬似位相整合条件(内側整合条件)が定義できる。
【0053】
図17(a)は、x軸の正の方向に平行なベクトルkp1を基準にして、テラヘルツ波の波数ベクトルkTの角度が定義される方向を示し、図17(b)は、同じくx軸の正の方向に平行なベクトルkp1を基準にして擬似位相整合素子19の分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度φが定義される方向を示す。ここで、ベクトルkLの方向自身は、分極反転構造が周期的に配列される方向として定義される。即ち、ベクトルkLの方向は、図2,図5等に例示した分極反転構造を規定するストライプに垂直となる方向に定義される。図17に定義したベクトルkLの傾きの角度(kL角)を横軸に、 最適化した内部交叉角度θ=6.34°の場合について、図16の縦軸に位相整合条件を満足する0.3〜2THz領域のテラヘルツ波の周波数を示す(図16において、屈折率nTHz=3.93としている。)図16に示したとおり、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)の分散(角度の変化量)は、0.3〜2THzの全領域において、両側に△印でプロットした外側整合条件の方が、中央に□印でプロットした内側整合条件の分散に比べて、非常に大きいことが分かる。
【0054】
図16の左右対称に近い△印でプロットした外側整合条件は、左側がベクトルkp2>ベクトルkp1の場合の擬似位相整合条件に対応し、右側がベクトルkp2<ベクトルkp1の場合の擬似位相整合条件に対応している。ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合はテラヘルツ波の周波数が増大するとkL角が減少し、ベクトルkp2<ベクトルkp1の場合はテラヘルツ波の周波数が増大するとkL角が増大することは、図15からも理解できる。ちなみに、図16の対称点はベクトルkp1@ベクトルkp2の場所である。
【0055】
図16から分かるとおり、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、図15の2次元ベクトル図の外側整合条件における擬似位相整合条件を満足するテラヘルツ波の周波数領域は、図15の2次元ベクトル図の内側整合条件でも同様に満足でき得る。それ故、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置では、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数として発生するテラヘルツ波の、ある周波数領域を無駄にすることなく、ただ、図15の2次元ベクトル図の内側整合条件のみを考慮してシステムを設計すれば良い。更に、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、図15の2次元ベクトル図の内側整合条件のみを考えることにより、より簡単で実行可能な設計が期待できる。即ち、擬似位相整合素子19の周期的な分極反転構造に由来するベクトルkLの角度分散を最小に抑えることが可能なので、考慮しているテラヘルツ波の周波数領域においては、図1に示したステージコントローラ32を介した回転ステージ57による駆動が、擬似位相整合素子19の回転を最小にできるという有利な効果を奏することが可能である。尚、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2に用いるレーザのビーム広がり角は、一般に1mrad(≒0.0573°)程度である。一方、図16から、図1に例示した回転ステージ57で必要とされる回転角は、ビーム広がりよりも小さな値であることが分かるので、回転ステージ57で擬似位相整合素子19を回転させる必要はなくなるので、回転ステージ57を省略しても良い。したがって、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、場合によっては、図1に示したステージコントローラ32や回転ステージ57を省略可能であるというという有利な効果を奏することが可能である。
【0056】
図18は、図16の中央に□印でプロットした内側整合条件の部分を拡大して示した図である。図16では図13に示したPPKTPの透過率を考慮して、2THzまでしかプロットしていないが、図18では、より一般化して、内部交叉角度θ=6.34°の場合において、擬似位相整合素子19が2THz以上の高周波領域に透明である場合について、プロットしている。図18から、図15の2次元ベクトル図の内側整合条件における擬似位相整合条件を満足するベクトルkLの傾きの角度(kL角)の値の範囲は約0.007°であることが分かる。
【0057】
図18によれば、差周波発生によるテラヘルツ波の周波数領域の中で、273.1627°〜273.1636°のベクトルkLの傾きの角度(kL角)が、空白のバンドギャップを示すことが分かるが、このバンドギャップは、273.1627°〜273.1636°のkL角の領域においては、擬似位相整合が成り立たないことを示している。バンドギャップとなるkL角が、273.1627°〜273.1636°の領域は、波数ベクトルkp1@波数ベクトルkp2付近の波数ベクトルkLに対応する。図18の、ほぼ左右対称に近い□印でプロットした内側整合条件は、右側がベクトルkp2>ベクトルkp1の場合の擬似位相整合条件に対応し、左側がベクトルkp2<ベクトルkp1の場合の擬似位相整合条件に対応している。右側のベクトルkp2<ベクトルkp1の場合はテラヘルツ波の周波数が減少するとともにkL角が増大し、左側のベクトルkp2>ベクトルkp1の場合はテラヘルツ波の周波数が増大するとkL角が増大することは、図15からも理解できる。
【0058】
図18から、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の設計を行う際、右側のベクトルkp2>ベクトルkp1及び左側のベクトルkp2<ベクトルkp1の2つのケースうち、どちらか一方だけを選んだとしても、得られるテラヘルツ波周波数帯は変わらないことが分かる。よって、どちらか一方だけを選ぶことにより、擬似位相整合素子19の分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)の範囲は、更に0.0035°に小さくすることが可能となる。図18の極狭いkL角の範囲に限定された変化を鑑みれば、システム構成の観点から、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の設計において、擬似位相整合素子19を大きく回転させる必要がないか、 図1に示したステージコントローラ32や回転ステージ57を省略可能であるということが理解できる。即ち、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2に用いるレーザのビーム広がり角は、上述したように、一般には、1mrad(≒0.0573°)程度である。一方、図18から、図1に例示した回転ステージ57で必要とされる回転角は、ビーム広がりよりも遙かに小さな値とすることが可能であることが分かるので、回転ステージ57で擬似位相整合素子19を回転させる必要はなくなるからである。図18から、内部交叉角度θ=6.34°の場合は、約12THzまでは位相整合条件を満たすことが分かるが、内部交叉角度θを更に角度θを大きく設定すれば、12THz以上まで位相整合条件を満たすようにできる。
【0059】
図8,図11,図12,図14及び図15等から分かるように、擬似位相整合素子19の分極反転構造に由来するベクトルkLに対して、それに対応する方向を持ったテラヘルツ波の波数ベクトルkTが一対一で存在する。テラヘルツ波の波数ベクトルkTの値の範囲は分極反転構造に由来するベクトルkLと同様に重要である。なぜなら、テラヘルツ波の波数ベクトルkTをテラヘルツ波発生源と考えた場合、発生するテラヘルツ波の角度分散はできるだけ小さい方が好ましいからである。従来は、図27に示したような電磁波発生装置を用いて周波数調整を行うときには、第2のポンプ光hν2の波長、2つのポンプ光hν1,hν2間の外部交叉角度θ inext、第2の非軸放物面鏡7bの位置を同時に制御する必要があり、非常に複雑なシステム構成が必要で、実際に、常に、差周波発生条件を満足させることは困難であった。図19は、ベクトルkp2>ベクトルkp1の場合における、分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値を3Dプロットにしたものであるが、図15の2次元ベクトル図の内側整合条件だけをその対象としている。一方、図20は、図15の2次元ベクトル図の内側整合条件におけるベクトルkp2<ベクトルkp1の場合における、分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値を3Dプロットにしたものである。
【0060】
図19から、273.1636°〜273.1664°の僅かなベクトルkLの方向角の範囲の変化に対応するベクトルkTの方向角の値の範囲は3.5°未満であり、図20から、273.164°〜273.187°の僅かなベクトルkLの方向角の範囲の変化に対応するベクトルkTの方向角の値の範囲は3.0°未満であることが分かる。既に述べたとおり、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値は、擬似位相整合素子19の中のテラヘルツ波伝播に対して定義される値であり、屈折効果は考慮に入れていない。しかしながら、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値の範囲は大変小さいものであるので、自由空間であっても、屈折率効果はテラヘルツ波の発生方向の方向角に少々の補正を加えれば十分である。
【0061】
第1の実施の形態に係る電磁波発生装置において、発生したテラヘルツ波のスペクトル純度は、ベクトルkp2の調節分解能、励起レーザの線幅、擬似位相整合素子19の角度分解能によってのみ制限される。式(3)に示したとおり、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との2つのレーザ光の間の擬似位相整合素子19の外部交叉角度δは、擬似位相整合素子19内の内部交叉角度θと屈折率の関係上異なったものである。更に、内部交叉角度θは擬似位相整合素子19が回転するにつれて変化するが、その変化は、擬似位相整合素子19を5°回転させたところで、内部交叉角度θの値は0.02°以上変化しないことが計算で確認されている。この様な内部交叉角度θの値の小さな変化は、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2のどちらか一方の励起レーザ光のビーム径の円形上の焦点調節でカバーできる。
【0062】
以上のように、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを〜6.34°の内部交叉角度θで、擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜2THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波を発生させることが可能である。即ち、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置では、互いに式(3)で関連する外部交叉角度δ又は内部交叉角θを固定した状態で、第2のポンプ光hν2の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子19から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させることができる。この第1の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、周期的な分極反転構造を持つ擬似位相整合素子19を、0.3〜2THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するために、僅か0.0035°しか回転させる必要がない。即ち、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2に用いるレーザのビーム広がり角は、上述したように、一般には、1mrad(≒0.0573°)程度であるが、0.0035°という角度は、ビーム広がりよりも遙かに小さな値であるので、図1に例示した回転ステージ57で擬似位相整合素子19を回転させる必要はなくなる。よって、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の現実の構成としては、回転ステージ57は不要となる。又、差周波として、擬似位相整合素子19から発生するテラヘルツ波も僅か3.0°〜3.5°程度しか広がらないので、図1に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置の構成において、電磁波検出器34の位置を固定でき、且つ、電磁波検出器34の位置を固定した状態において、擬似位相整合素子19と電磁波検出器34の間に、図27に示したような、従来技術において用いられていた非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要もない。よって、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、使用部品の点数を減少させ、極めて簡単且つ安価な構成することが可能になるので、第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の工業的な実用可能性は極めて高い。

【0063】
(第2の実施の形態)
以下の本発明の第2の実施の形態に係る電磁波発生装置の説明では、図1に示した基本コンセプトに係る電磁波発生装置の構成において、擬似位相整合素子19として周期分極反転GaP結晶(以下において「PPGaP結晶」という。)を用いた場合を例示する。即ち、装置構成の図示を省略するが、本発明の第2の実施の形態に係る電磁波発生装置は、図1に示したのと同様に、第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、周期的な分極反転構造を有し、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数の電磁波を生成するPPGaPからなる擬似位相整合素子19と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との外部交叉角度δ及び内部交叉角θを調整して固定し、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2をPPGaPからなる擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M6,18)とを備える。ここで、外部交叉角度δ はPPGaPからなる擬似位相整合素子19の外部における第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との交叉角度であって、PPGaPからなる擬似位相整合素子19の内部の交叉角度である内部交叉角度θとは、既に説明した式(3)で示した関係を有する。テラヘルツ波のPPGaPの屈折率nTHz=3.4であり、ポンプ光周波数(λ=1.55μm)でのPPGaPの屈折率nL =3.055である。
【0064】
PPGaPからなる擬似位相整合素子19としては、分極反転の周期Λを6μmとし、例えば、図2に示したようなコヒーレンス長lcごとにGaP結晶の分極方向を周期的に反転させた構造や、図5(b)に示したような2つの櫛形状のGaP基板19a,19bを貼り合わせて作成しても良く、或いは、図6に示したように分極MのGaP基板192の表面に、この表面に垂直方向の断面形状が円弧状であり、分極方向Nが、分極Mとは反対方向であるGaP領域193を、周期Λで、板面方向に周期的にストライプ状に埋め込んだ構造で周期分極反転構造を構成しても良い。即ち、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置に用いるPPGaPからなる擬似位相整合素子19は、GaP結晶の分極(M,N)が周期的に反転した構造であれば種々の周期分極反転構造が採用可能であり、又、その製造方法も種々の方法が採用可能である。
【0065】
図1に示したのと同様に、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置は、更に、シリコンボロメータやDTGS赤外光検出器のようなテラヘルツ帯の電磁波検出器34を備え、電磁波検出器34を固定した状態で、PPGaPからなる擬似位相整合素子19から出射したテラヘルツ帯の電磁波は電磁波検出器34で検出できる。電磁波検出器34は、電圧計33に接続され、電圧計33は、パーソナルコンピュータ(PC)11に接続されて、電磁波検出器34が検知したテラヘルツ帯の電磁波に依拠した電気信号に対し、演算処理が可能なように構成されている。PPGaPからなる擬似位相整合素子19から出射するテラヘルツ帯の電磁波は、一定方向に出射するので、擬似位相整合素子19と電磁波検出器34の間に、図27に示したような、従来技術において用いられていた非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要もない。
【0066】
光学系(M6,18)は、図1に示したのと同様に、ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18から構成することが可能である。図1に示す光学系(M6,18)の配置により、第2のポンプ光出射部25から出射した信号光(第2のポンプ光)hν2を偏光ビームスプリッタ18を透過させ、第1のポンプ光出射部24から出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1は、ミラーM6を用いて、垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、平行に近い微小な外部交叉角度δで、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1及び信号光(第2のポンプ光)hν2を、PPGaPからなる擬似位相整合素子19内で結合させることができる。
【0067】
尚、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置は、図1に示したのと同様に、擬似位相整合素子19は、回転ステージ57に搭載され、回転ステージ57は、ステージコントローラ32による駆動されるようにすることも可能ではあるが、PPGaPからなる擬似位相整合素子19をほとんど回転させることなく、0.3〜7THzのテラヘルツ波放射源が設計可能であるので、回転ステージ57を省略することも可能である。第1の実施の形態に係る電磁波発生装置で説明したとおり、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2に用いるレーザのビーム広がり角は、一般には、1mrad(≒0.0573°)程度であり、これに対し、回転ステージ57で必要とされる回転角は、ビーム広がりよりも小さな値であるので、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置においても、同様に、回転ステージ57で擬似位相整合素子19を回転させる必要はなくなるからである。
【0068】
第2の実施の形態に係る電磁波発生装置に用いる第1のポンプ光出射部24は、例えば、第1のポンプ光hν1を出射するCr添加フォルステライトレーザ、Yb添加YLFレーザ、Yb添加ファイバレーザのいずれかからなる第1のポンプ光hν1源を備え、第2のポンプ光出射部25は、例えば、第2のポンプ光hν2を出射するCr添加フォルステライトレーザ、Yb添加YLFレーザ、Yb添加ファイバレーザのいずれかからなる第2のポンプ光源を備えるようにすることが可能である。この際、第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光源をそれぞれ励起し、第1及び第2のポンプ光源から第1のポンプ光hν1及び第2のポンプ光hν2を出射させる励起光源を更に備えるようにしても良い。或いは、第1のポンプ光出射部24から波長1.064μmのYAGレーザの出力を第1のポンプ光hν1として出射し、第2のポンプ光出射部25は、インジェクションシーディング機構を有するオプティカルパラメトリックオシレータを備え、オプティカルパラメトリックオシレータをYAGレーザの出力で励起することにより、第2のポンプ光出射部25からオプティカルパラメトリックオシレータの出力を第2のポンプ光hν2として出射するようにしても良い。
【0069】
第1の実施の形態と同様に、PPGaPからなる擬似位相整合素子19の周期的な分極反転構造に由来する光子運動量をベクトルkLで示し、テラヘルツ波の波数ベクトルをベクトルkTとし、第1のポンプ光hν1の波数ベクトルをベクトルkp1で示し、第2のポンプ光hν2の波数ベクトルをベクトルkp2で表現すれば、擬似位相整合での運動量保存則は、既に述べた式(7)で示される。式(7)の右辺のベクトルkLの値(〜1μm−1)は、PPGaPからなる擬似位相整合素子19の分極反転の周期Λ=6μmの値を使って、ベクトルkL=2π/Λと導出され、テラヘルツ波の波数kTも、既に述べた式(8)で表現できる。
【0070】
2次元ベクトル図の図示を省略するが、式(7)及び(8)から、図15に示したのと同様に、ベクトルkp1がベクトルkp2よりも大きい場合(ベクトルkp2<ベクトルkp1)は、7.083μm−1から7.329μm−1の範囲で変化する波数ベクトルkp2のベクトルのそれぞれの終点に、円の中心がそれぞれ位置するように、異なる半径kTの円がそれぞれ描かれ、異なる半径kTの円が、それぞれ、分極反転構造に由来するベクトルkLの円と異なる点で交わる。一方、PPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLを表す円の付け根(つまり一定半径kLの円の中心)は、ベクトルkp1のベクトルの終点に位置している。
【0071】
第2の実施の形態に係る電磁波発生装置において、内部交叉角度θ=〜4.85°とすると、PPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLが、第2のポンプ光hν2のベクトルkp2と接するように構成できるので、内部交叉角度θの値が位相整合範囲角の範囲内に存在する場合に相当する。既に、図14及び図15を用いて説明したとおり、外側整合条件と、内側整合条件が定義できる。第2の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、外側整合条件における擬似位相整合条件を満足するテラヘルツ波の周波数領域は、内側整合条件でも同様に満足でき得る。それ故、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置では、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数として発生するテラヘルツ波の、ある周波数領域を無駄にすることなく、ただ内側整合条件のみを考慮してシステムを設計すれば良い。更に、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、内側整合条件のみを考えることにより、より簡単で実行可能な設計が期待できる。
【0072】
図21は、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置の内側整合条件における、PPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)と、擬似位相整合素子19から発生するテラヘルツ波の周波数の関係を示す図である。 図21によれば、差周波発生によるテラヘルツ波の周波数領域の中で、272.423°〜272.4234°のベクトルkLの傾きの角度(kL角)が、空白のバンドギャップを示すことが分かる。このバンドギャップは、272.423°〜272.4234°のkL角の領域においては、擬似位相整合が成り立たないことを示している。バンドギャップとなるkL角が、272.423°〜272.4234°の領域は、波数ベクトルkp1@波数ベクトルkp2付近の波数ベクトルkLに対応する。図21の、ほぼ左右対称に近い□印でプロットした内側整合条件は、右側がベクトルkp2>ベクトルkp1の場合の擬似位相整合条件に対応し、左側がベクトルkp2<ベクトルkp1の場合の擬似位相整合条件に対応している。右側のベクトルkp2<ベクトルkp1の場合はテラヘルツ波の周波数が減少するとともにkL角が増大し、左側のベクトルkp2>ベクトルkp1の場合はテラヘルツ波の周波数が増大するとkL角が増大することは、式(7)及び(8)からから理解できる。
【0073】
図21から、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置の設計を行う際、右側のベクトルkp2>ベクトルkp1及び左側のベクトルkp2<ベクトルkp1の2つのケースうち、どちらか一方だけを選んだとしても、得られるテラヘルツ波周波数帯は変わらないことが分かる。よって、どちらか一方だけを選ぶことにより、PPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)の範囲は、更に0.001°に小さくすることが可能となる。図21の極狭いkL角の範囲に限定された変化を鑑みれば、システム構成の観点から、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置の設計において、PPGaPからなる擬似位相整合素子19を大きく回転させる必要がないか、 図1に示したステージコントローラ32や回転ステージ57を省略可能であるということが理解できる。図21には、擬似位相整合素子19から発生するテラヘルツ波の周波数が2THzまでしかプロットしていないが、内部交叉角度θ=4.85°の場合は、約7THzまでは位相整合条件を満たす。
【0074】
式(7)及び(8)から分かるように、PPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLに対して、それに対応する方向を持ったテラヘルツ波の波数ベクトルkTが一対一で存在する。テラヘルツ波の波数ベクトルkTの値の範囲はPPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLと同様に重要である。なぜなら、テラヘルツ波の波数ベクトルkTをテラヘルツ波発生源と考えた場合、発生するテラヘルツ波の角度分散はできるだけ小さい方が好ましいからである。既に述べたとおり、従来は、図27に示したような電磁波発生装置を用いて周波数調整を行うときには、第2のポンプ光hν2の波長、2つのポンプ光hν1,hν2間の外部交叉角度θ inext、第2の非軸放物面鏡7bの位置を同時に制御する必要があり、非常に複雑なシステム構成が必要で、実際に、常に、差周波発生条件を満足させることは困難であった。図22は、内側整合条件におけるベクトルkp2<ベクトルkp1の場合における、PPGaPの分極反転構造に由来するベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値を3Dプロットにしたものである。
【0075】
図22から、274.4234°〜272.4223°の僅かなベクトルkLの方向角の範囲の変化に対応するベクトルkTの方向角の値の範囲は2.2°未満であることが分かる。既に述べたとおり、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値は、PPGaPからなる擬似位相整合素子19の中のテラヘルツ波伝播に対して定義される値であり、屈折効果は考慮に入れていない。しかしながら、ベクトルkLの傾きの角度(kL角)及びテラヘルツ波の波数ベクトルkTの方向角の値の範囲は大変小さいものであるので、自由空間であっても、屈折率効果はテラヘルツ波の発生方向の方向角に少々の補正を加えれば十分である。
【0076】
以上のように、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを〜4.85°の内部交叉角度θで、PPGaPからなる擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜7THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波を発生させることが可能である。即ち、第2の実施の形態に係る電磁波発生装置では、互いに式(3)で関連する外部交叉角度δ又は内部交叉角θを固定した状態で、第2のポンプ光hν2の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子19から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させることができる。この第2の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、周期的な分極反転構造を持つPPGaPからなる擬似位相整合素子19を、0.3〜7THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するために僅か0.001°しか回転させる必要がない。又、差周波として発生するテラヘルツ波は、周波数0.34〜7.2THzの範囲で、2.2°以内、0.8〜7.2THzと限定すれば0.85°程度しか広がらないので、工業的な実用可能性が極めて高い。

【0077】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る電磁波発生装置は、図23に示すように、第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数の電磁波hν3を生成する擬似位相整合素子19と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との内部交叉角度θを位相整合範囲角に調整して固定し、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M6,18)を備える。ここで、内部交叉角度θ は、擬似位相整合素子19の内部における第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との交叉角度であって、擬似位相整合素子19の外部で定義される外部交叉角度δとは、ほぼ式(3)の関係を有する。例えば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、内部交叉角度θ=6.34°程度の値が位相整合範囲角であり、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたときは、内部交叉角度θ=4.85°程度が、位相整合範囲角になる。第3の実施の形態に係る電磁波発生装置では、互いに式(3)で関連する外部交叉角度δ又は内部交叉角θを固定した状態で、第2のポンプ光hν2の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子19から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させる。
【0078】
第3の実施の形態に係る電磁波発生装置においては、図23に示すように、1個のフラッシュランプ61で第1YAGロッド62及び第2YAGロッド63を励起するYAGレーザ6即ち「ダブルパルスYAGレーザ6」を励起光源として用い、ダブルパルスYAGレーザ6をタイミング制御機構(手段)として機能させることによって2つのCr添加フォルステライトレーザを励起する。ダブルパルスYAGレーザ6は、1つのフラッシュランプ61で第1YAGロッド62及び第2YAGロッド63を励起し、2つの1064nmの波長の出力パルス光hν1,hν2を得る。
【0079】
フラッシュランプ61で第1YAGロッド62及び第2YAGロッド63を励起してから相当遅れてQ−スイッチパルスによってYAGレーザの発振を生じるので、第1YAGロッド62及び第2YAGロッド63のQスイッチパルスのタイミングを1ナノ秒の精度でそれぞれ変えることができる。この結果、第1YAGロッド62からの励起光パルスが第1のポンプ光源(Cr添加フォルステライトレーザ)を励起する時間と、第2YAGロッド63からの励起光パルスが第2のポンプ光源(Cr添加フォルステライトレーザ)を励起する時間との間の時間差を調整することにより、第1のポンプ光源からのポンプ光(第1のポンプ光)のパルスと第2のポンプ光源からの信号光(第2のポンプ光)のパルスとが、ほぼ同時に擬似位相整合素子19に到達するようにタイミングを制御する。「ほぼ同時に」とは、「Cr添加フォルステライトレーザの出力光のパルス幅よりも、十分に短い時間で」という意味であり、例えば、Cr添加フォルステライトレーザのパルス幅は、一般に20〜30ナノ秒程度であり、この様な場合は、1ナノ秒或いはそれ以下の時間差にすれば良い。
【0080】
光学系(M6,18)は、反射鏡(ミラー)M6及び偏光ビームスプリッタ18からなる。反射鏡(ミラー)M6は、第1のポンプ光出射部24から出射した第1のポンプ光hν1を反射し、第1のポンプ光hν1を偏光ビームスプリッタ18に入射する角度を調整するように回転可能なミラーである。図23に示す光学系(M6,18)の配置により、第2のポンプ光出射部25から出射した信号光(第2のポンプ光)hν2を偏光ビームスプリッタ18を透過させる。又、第1のポンプ光出射部24から出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1は、反射鏡(ミラー)M6を用いて、垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、内部交叉角度θを位相整合範囲角とするように、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1及び信号光(第2のポンプ光)hν2を、擬似位相整合素子19結合させる光学系を構成している。
【0081】
但し、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1と信号光(第2のポンプ光)hν2は、偏光ビームスプリッタ18よってビームを平行に近く重ねれば良いので、第4実施例の図9に示すように、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1を偏光ビームスプリッタ18を透過させ、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1に対し偏波面の直交する信号光(第2のポンプ光)hν2を垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、内部交叉角度θを位相整合範囲角とするように、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19内で結合させる光学系を構成しても良い。
【0082】
尚、図23に示した光学系(M6,18)は、例示であり、反射鏡(ミラー)M6及び偏光ビームスプリッタ18の他に、他のミラー等の光学素子を加えても良く、反射鏡(ミラー)M6の代わりに、プリズム等の反射鏡(ミラー)M6と等価な機能を有する光学素子に置き換えても良いことは勿論である。
【0083】
第1のポンプ光源からのポンプ光(第1のポンプ光)のパルスと第2のポンプ光源からの信号光(第2のポンプ光)のパルスとが、ほぼ同時に擬似位相整合素子19に到達するということは、第1及び第2のポンプ光源からの出力(パルス)をほぼ同時にすることである。第1及び第2のポンプ光源としての2つのCr添加フォルステライトレーザの出力(パルス)がほぼ同時になるようにするには、ダブルパルスYAGレーザ6のQスイッチパルスのタイミングを変化させるようにあらかじめプログラムしておけば良い。或いは、テラヘルツ電磁波出力が最大になるようにQスイッチパルス発生のタイミングをフィードバック制御するループを形成することにより、第1のポンプ光源からのポンプ光(第1のポンプ光)と第2のポンプ光源からの信号光(第2のポンプ光)のタイミングを一致させることができる。
【0084】
ダブルパルスYAGレーザ6は、図23に示すレーザコントローラ31により駆動される。即ち、レーザコントローラ31は、フラッシュランプ励起用パルスP1、YAGレーザQ−スイッチパルスP2,P3を発生し、レーザコントローラ31とダブルパルスYAGレーザ6とによって、信号光(第2のポンプ光)のパルスとポンプ光(第1のポンプ光)のパルスとをほぼ同時に擬似位相整合素子19に到達させるタイミング制御機構(手段)(6,31)を構成している。
【0085】
図23において、第1のポンプ光出射部24の第1のポンプ光源、第2のポンプ光出射部25の第2のポンプ光源として、それぞれCr添加フォルステライトレーザを用いる。Cr添加フォルステライトレーザの遅れ時間は、主に、ダブルパルスYAGレーザ6からの励起光強度とCr添加フォルステライトレーザの出力波長によって決まるので、第1及び第2のポンプ光源としての2つのCr添加フォルステライトレーザは、必ずしも同一のタイミングで出力を発生しない。テラヘルツ電磁波hν3の周波数ν3を掃引するには、例えば、第1のポンプ光出射部24を構成する一方のCr添加フォルステライトレーザ(第1のポンプ光源)の波長を固定し、第2のポンプ光出射部25を構成する他方のCr添加フォルステライトレーザ(第2のポンプ光源)の波長を掃引する(逆に、第2のポンプ光出射部25を構成するCr添加フォルステライトレーザ(第2のポンプ光源)の波長を固定し、第1のポンプ光出射部24を構成するCr添加フォルステライトレーザ(第1のポンプ光源)の波長を掃引するようにしても良い。)。
【0086】
第2のポンプ光出射部25を構成するCr添加フォルステライトレーザ(第2のポンプ光源)の波長と強度が掃引に伴って変化するから、この2つのパラメータの関数として、2つのCr添加フォルステライトレーザの出力が同時となるための2つのQ−スイッチパルスP2,P3のタイミング差tをあらかじめプログラムしておき、プログラムに従って2つのQ−スイッチパルスP2,P3を発生すれば良い。Cr添加フォルステライトレーザの出力パルス幅は約10ナノ秒であるからQ−スイッチパルスP2,P3のタイミング差tは、1ナノ秒の精度で制御すれば十分である。
【0087】
第1のポンプ光出射部24と第2のポンプ光出射部25からそれぞれ出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1と信号光(第2のポンプ光)hν2は、偏光ビームスプリッタ18よってビームを内部交叉角度θを位相整合範囲角とするように重ねられ、擬似位相整合素子19に入射する。擬似位相整合素子19から、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1と信号光(第2のポンプ光)hν2の差の周波数を有するテラヘルツ電磁波hν3が出力する。
2台のCr添加フォルステライトレーザを用いる場合は、発振波長により遅れ時間が10ナノ秒以上になることがある。この様な場合、反射鏡を複数枚用いて構成した可変遅延線路では、光路が長くなり、装置の構成が大きくなりすぎる場合がある。したがって、調整すべき遅延時間が長くなる場合は、第3の実施の形態に係る電磁波発生装置のように、ダブルパルスYAGレーザ6を用いる方法が電磁波発生装置の小型化に有効である。尚、第1のポンプ光出射部24或いは第2のポンプ光出射部25に用いる第1及び第2のポンプ光源としてのCr添加フォルステライトレーザを、Yb添加したYLFレーザやYb添加ファイバレーザで置き換えても良いこともできることは、第4の実施の形態や第5実施例と同様である。
【0088】
以上のように、第3の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを6.34°程度の内部交叉角度θで、擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜2THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波をPPKTP結晶から発生させることが可能である。又、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを4.85°程度の内部交叉角度θで、PPGaPからなる擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜7THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波をPPGaP結晶から発生させることが可能である。
【0089】
PPKTP結晶を擬似位相整合素子19として用いた場合は、0.3〜2THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するためには、僅か0.0035°しか擬似位相整合素子19を回転させる必要がない。又、差周波として、PPKTP結晶から発生するテラヘルツ波も僅か3.0°〜3.5°程度しか広がらない。一方、PPGaP結晶からなる擬似位相整合素子19を用いた場合は、0.3〜7THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するためにも、僅か0.001°しか擬似位相整合素子19を回転させる必要がなく、差周波としてPPGaP結晶から発生するテラヘルツ波は、周波数0.34〜7.2THzの範囲で、2.2°以内、0.8〜7.2THzと限定すれば0.85°程度しか広がらない。よって、第3の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、図1に示した構成において、電磁波検出器34の位置を固定でき、且つ、電磁波検出器34の位置を固定した状態において、擬似位相整合素子19と電磁波検出器34の間に、図27に示したような、従来技術において用いられていた非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要もない。このため、第3の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、使用部品の点数を減少させ、極めて簡単且つ安価な構成することが可能になり、第3の実施の形態に係る電磁波発生装置の工業的な実用可能性は極めて高い。

【0090】
(第4の実施の形態)
図24に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る電磁波発生装置は、第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数の電磁波hν3を生成する擬似位相整合素子19と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との内部交叉角度θを位相整合範囲角に調整して固定し、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M3,M6,M5,18)とを備える。ここで、内部交叉角度θ は、擬似位相整合素子19の内部における第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との交叉角度であって、擬似位相整合素子19の外部で定義される外部交叉角度δとは、ほぼ式(3)の関係を有する。例えば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、内部交叉角度θ=6.34°程度の値が位相整合範囲角であり、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたときは、内部交叉角度θ=4.85°程度が、位相整合範囲角になる。第4の実施の形態に係る電磁波発生装置では、互いに式(3)で関連する外部交叉角度δ又は内部交叉角θを固定した状態で、第2のポンプ光hν2の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子19から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させる。
【0091】
光学系(M3,M6,M5,18)は、ハーフミラーM3、第1ミラーM5、第2ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18からなる。ハーフミラーM3は、励起光源16としてのYAGレーザから出射した励起光の一部を透過し第1のポンプ光出射部24に入射させ、励起光源(YAGレーザ)16から出射した励起光の他の一部を反射し、第2のポンプ光出射部25に入射させるミラーである。第1ミラーM5は、ハーフミラーM3で反射した励起光を更に反射し、励起光源(YAGレーザ)16から出射した励起光の他の一部を第2のポンプ光出射部25に入射させるミラーである。第2ミラーM6は、第1のポンプ光出射部24から出射した第1のポンプ光hν1を反射し、第1のポンプ光hν1を偏光ビームスプリッタ18に入射する角度を調整するように回転可能なミラーである。図24に示す光学系(M3,M6,M5,18)の配置により、第2のポンプ光出射部25から出射した信号光(第2のポンプ光)hν2を偏光ビームスプリッタ18を透過させる。又、第1のポンプ光出射部24から出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1は、第2ミラーM6を用いて、垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、内部交叉角度θを位相整合範囲角とするように、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1及び信号光(第2のポンプ光)hν2を、擬似位相整合素子19内で結合させる光学系を構成している。
【0092】
但し、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1と信号光(第2のポンプ光)hν2は、偏光ビームスプリッタ18よってビームを位相整合範囲角に設定すれば良いので、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1を偏光ビームスプリッタ18を透過させ、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1に対し偏波面の直交する信号光(第2のポンプ光)hν2を垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、内部交叉角度θが位相整合範囲角となるように、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19内で結合させる光学系を構成しても良い。尚、図24に示した光学系(M3,M6,M5,18)は、例示であり、ハーフミラーM3、第1ミラーM5、第2ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18の他に、他のミラー等の光学素子を加えても良く、第1ミラーM5、第2ミラーM6等の代わりに、プリズム等の第1ミラーM5や第2ミラーM6等と等価な機能を有する光学素子に置き換えても良いことは勿論である。
【0093】
第1のポンプ光出射部24及び第2のポンプ光出射部25にそれぞれ備えられる第1及び第2のポンプ光源として、励起光源(YAGレーザ)16で励起されるクロム(Cr)添加フォルステライトレーザを使う。既に述べたとおり、Cr添加フォルステライトレーザは、フォルステライト中のCrの準位を用いているため、スペクトル線幅が極めて狭い。Cr添加フォルステライトレーザは、波長1.064μmの励起光源(YAGレーザ)16を用いて励起することが可能で、OPOのようにYAG第3高調波を用いないので効率が高くすることが可能である。
【0094】
即ち、第4の実施の形態に係る電磁波発生装置では、2つのCr添加フォルステライトレーザを第1のポンプ光出射部24及び第2のポンプ光出射部25にそれぞれ備えられる第1及び第2のポンプ光源として用い、第1のポンプ光出射部24を固定波長で、第2のポンプ光出射部25を波長可変ポンプ光源とし、インジェクションシーディングなしで差周波としてのテラヘルツ電磁波hν3のスペクトル線幅を狭くすることができる。ポンプ光(第1のポンプ光)hν1の波長を、例えば、1.20μmに固定する。第1のポンプ光出射部24に備えられる第1のポンプ光源は、内部にエタロンを設置することにより、固定波長でスペクトル線幅を1GHz程度に狭くすることができる。第2のポンプ光出射部25に備えられる第2のポンプ光源には同種のCr添加フォルステライトレーザを使い、波長を掃引する。第2のポンプ光出射部25は連続波長掃引のため、エタロンを挿入しないのでスペクトル線幅は10GHzから15GHzである。更に、Cr添加フォルステライトレーザは、OPOのようにYAGの高調波を使う必要がないため、基本波1.064μmによって励起でき、高出力且つ安価であることが特徴である。尚、第1のポンプ光出射部24及び第2のポンプ光出射部25に用いる第1及び第2のポンプ光源としてのCr添加フォルステライトレーザを、Ybを添加したYLFレーザやYbを添加したファイバレーザで置き換えることもできる。Yb添加YLFレーザやYb添加ファイバレーザを用いる場合も、インジェクションシーディングなしで比較的狭線幅を得られるので、極めて安価である利点を有する。但し、Yb添加YLFレーザやYb添加ファイバレーザの場合は、YAGレーザ16の波長1.064μmより、僅かに波長が短いので、YAGレーザ16の2倍波(波長530nm)で励起する必要がある。
【0095】
以上のように、第4の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを6.34°程度の内部交叉角度θで、擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜2THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波をPPKTP結晶から発生させることが可能である。又、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを4.85°程度の内部交叉角度θで、PPGaPからなる擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜7THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波をPPGaP結晶から発生させることが可能である。
【0096】
PPKTP結晶を擬似位相整合素子19として用いた場合は、0.3〜2THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するためには、僅か0.0035°しか擬似位相整合素子19を回転させる必要がない。又、差周波として、PPKTP結晶から発生するテラヘルツ波も僅か3.0°〜3.5°程度しか広がらない。一方、PPGaP結晶からなる擬似位相整合素子19を用いた場合は、0.3〜7THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するためにも、僅か0.001°しか擬似位相整合素子19を回転させる必要がなく、差周波としてPPGaP結晶から発生するテラヘルツ波は、周波数0.34〜7.2THzの範囲で、2.2°以内、0.8〜7.2THzと限定すれば0.85°程度しか広がらない。よって、第4の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、図1に示した構成において、電磁波検出器34の位置を固定でき、且つ、電磁波検出器34の位置を固定した状態において、擬似位相整合素子19と電磁波検出器34の間に、図27に示したような、従来技術において用いられていた非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要もない。このため、第4の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、使用部品の点数を減少させ、極めて簡単且つ安価な構成することが可能になり、第4の実施の形態に係る電磁波発生装置の工業的な実用可能性は極めて高い。

【0097】
(第5の実施の形態)
図25に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る電磁波発生装置は、第1のポンプ光hν1を出射する第1のポンプ光出射部24と、第1のポンプ光hν1とは異なる波長の第2のポンプ光hν2を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部25と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数の電磁波hν3を生成する擬似位相整合素子19と、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との差周波数ν3=1THzにおける内部交叉角度θを位相整合範囲角に調整して固定し、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M1,M6,18)とを備える。ここで、内部交叉角度θ は、擬似位相整合素子19の内部における第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2との交叉角度であって、擬似位相整合素子19の外部で定義される外部交叉角度δとは、ほぼ式(3)の関係を有する。例えば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、内部交叉角度θ=6.34°程度の値が位相整合範囲角であり、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたときは、内部交叉角度θ=4.85°程度が、位相整合範囲角になる。第5の実施の形態に係る電磁波発生装置では、互いに式(3)で関連する外部交叉角度δ又は内部交叉角θを固定した状態で、第2のポンプ光hν2の周波数を変えることにより、擬似位相整合素子19から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させる。
【0098】
内部交叉角度θを上記のような位相整合範囲角に調整して固定し、第1及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19に入射させる光学系(M1,M6,18)は、第1ミラーM、第2ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18からなる。第1ミラーMは、第1のポンプ光出射部24から出射した第1のポンプ光hν1を反射し、第1のポンプ光hν1を第2のポンプ光出射部25に入射させるミラーである。第2ミラーM6は、第1のポンプ光出射部24から出射した第1のポンプ光hν1を反射し、第1のポンプ光hν1を偏光ビームスプリッタ18に入射する角度を調整するように回転可能なミラーである。図25に示す光学系(M1,M6,18)の配置により、第2のポンプ光出射部25から出射した信号光(第2のポンプ光)hν2を偏光ビームスプリッタ18を透過させる。又、第1のポンプ光出射部24から出射したポンプ光(第1のポンプ光)hν1は、第2ミラーM6を介して垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、内部交叉角度θを位相整合範囲角とするように、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1及び信号光(第2のポンプ光)hν2を擬似位相整合素子19内で結合させる光学系を構成している。
【0099】
但し、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1と信号光(第2のポンプ光)hν2は、偏光ビームスプリッタ18よってビームを平行に近く重ねれば良いので、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1を偏光ビームスプリッタ18を透過させ、ポンプ光(第1のポンプ光)hν1に対し偏波面の直交する信号光(第2のポンプ光)hν2を垂直方向から入射させて偏光ビームスプリッタ18の偏光面で反射させ、内部交叉角度θを位相整合範囲角とするように、第1のポンプ光及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19内で結合させる光学系を構成しても良い。
【0100】
尚、図25に示した光学系(M1,M6,18)は、例示であり、第1ミラーM、第2ミラーM6及び偏光ビームスプリッタ18の他に、他のミラー等の光学素子を加えても良く、第1ミラーM、第2ミラーM6の代わりに、プリズム等の第1ミラーMや第2ミラーM6と等価な機能を有する光学素子に置き換えても、内部交叉角度θを位相整合範囲角に調整して固定して、第1及び第2のポンプ光を擬似位相整合素子19に入射させることができることは勿論である。
【0101】
具体的には、第1のポンプ光出射部24として波長1.064μmのパルスを発振するYAGレーザ16を使用する。第2のポンプ光出射部25として、波長可変パラメトリックオッシレータ(OPO)17を用いる。波長可変OPO17は、励起光源16としてのYAGレーザからのポンプ光(第1のポンプ光)hν1の基本波を3逓倍した355nmの光で励起される。
【0102】
テラヘルツ電磁波hν3のスペクトル線幅を狭く且つ、広い周波数にわたってモードホップなしで動作させるために、波長可変OPO17は、インジェクションシーディング機構(手段)を備える。インジェクションシーディング機構(手段)として、波長可変OPO17内にシードレーザ(マスター発振器)を具備する。シードレーザ(マスター発振器)としては、例えば、Q値の高い共振器を硼酸バリウム(BaB24)結晶に用い、スペクトル幅を狭くすれば良い。即ち、シードレーザ(マスター発振器)及びスレーブレーザ(ホストレーザ)共に、BaB24結晶のパラメトリック効果を用いる。そして、スレーブレーザ(ホストレーザ)である波長可変OPO17の共振器長を、シードレーザとスレーブレーザの縦モードが一致するように制御すれば良い。スレーブレーザの共振器長を制御する共振器ロックには、少なくとも(波長)/(共振器のフィネス) オーダー以上の正確な制御が必要になるので、例えば、ピエゾドライバで共振器長を制御することが好ましい。
【0103】
即ち、波長可変OPO17の出力をフォトディテクターで検出し、その信号をブランキング回路を経てロックインアンプに入力する。更に、このロックインアンプの出力信号を、ピエゾドライバでファンクションジェネレーターからの変調信号と加算し、ピエゾ駆動電圧に変換し、変調ミラーを動かすようにすれば良い。このとき、ファンクションジェネレーターの同調信号をロックインアンプの参照信号とするようにしても良い。この様な波長可変OPO17は励起光源(YAGレーザ)16の第3高調波即ち波長355nm光で励起されることによりスペクトル線幅を広げる原因となる波長縮退を避け、更にインジェクションシーディングを行うことにより、波長可変OPO17のスペクトル線幅を狭くできるので、差周波として発生するテラヘルツ電磁波hν3のスペクトル線幅も同様に狭くなる。
【0104】
波長可変OPO17の出力光波長を1.038μmから1.0635μmの範囲に選べば差周波数ν3は0.15THzから7THzの範囲になる。又、波長可変OPO17の波長を1.0646μmから1.091μmの範囲に選んでも良い。尚、励起光源(YAGレーザ)16も、同様に、Q値の高い共振器のYAGレーザをシードレーザ(マスター発振器)として用い、スペクトル幅を狭くし、インジェクションシーディングすることにより、狭線幅の励起光源とすることが好ましい。
【0105】
ポンプ光(第1のポンプ光)hν1と信号光(第2のポンプ光)hν2は直交した偏波方向を持ち、偏光ビームスプリッタ18よってビームを位相整合範囲角となる内部交叉角度θに重ねる。ビームスプリッタ18、又は、第2ミラーM6を微小回転させ、テラヘルツ電磁波hν3の周波数ν3に応じて位相整合範囲角となる内部交叉角度θ とするようにポンプ光(第1のポンプ光)hν1或いは信号光(第2のポンプ光)hν2のビーム方向を調整する。
第1のポンプ光出射部24である励起光源(YAGレーザ)16のスペクトル線幅は十分狭いので、差周波であるテラヘルツ電磁波hν3のスペクトル線幅は第2のポンプ光出射部25のOPO17のスペクトル線幅で決まることになる。OPO17はインジェクションシーディングされているためスペクトル線幅約4GHzであり、差周波であるテラヘルツ電磁波hν3のスペクトル線幅もほぼ4GHzである。テラヘルツ帯における固体、液体状物質のスペクトル線幅は一般的に50GHz以上なので第5の実施の形態に係る電磁波発生装置は十分に高分解能の分光測定を可能にする。
【0106】
以上のように、第5の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、擬似位相整合素子19にPPKTP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを6.34°程度の内部交叉角度θで、擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜2THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波をPPKTP結晶から発生させることが可能である。又、擬似位相整合素子19にPPGaP結晶を用いたとき、第1のポンプ光hν1と第2のポンプ光hν2の2つのレーザビームを4.85°程度の内部交叉角度θで、PPGaPからなる擬似位相整合素子19に入射させれば、0.3〜7THzの周波数領域内での狭帯域のテラヘルツ波の電磁波をPPGaP結晶から発生させることが可能である。
【0107】
PPKTP結晶を擬似位相整合素子19として用いた場合は、0.3〜2THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するためには、僅か0.0035°しか擬似位相整合素子19を回転させる必要がない。又、差周波として、PPKTP結晶から発生するテラヘルツ波も僅か3.0°〜3.5°程度しか広がらない。一方、PPGaP結晶からなる擬似位相整合素子19を用いた場合は、0.3〜7THzのテラヘルツ波の周波数帯内で、テラヘルツ波の周波数を掃引するためにも、僅か0.001°しか擬似位相整合素子19を回転させる必要がなく、差周波としてPPGaP結晶から発生するテラヘルツ波は、周波数0.34〜7.2THzの範囲で、2.2°以内、0.8〜7.2THzと限定すれば0.85°程度しか広がらない。よって、第5の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、図1に示した構成において、電磁波検出器34の位置を固定でき、且つ、電磁波検出器34の位置を固定した状態において、擬似位相整合素子19と電磁波検出器34の間に、図27に示したような、従来技術において用いられていた非軸放物面鏡7a,7bを用いる必要もない。このため、第5の実施の形態に係る電磁波発生装置によれば、使用部品の点数を減少させ、極めて簡単且つ安価な構成することが可能になり、第5の実施の形態に係る電磁波発生装置の工業的な実用可能性は極めて高い。

【0108】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は本発明の第1の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0109】
例えば、既に述べた本発明の第3の実施の形態の説明では、第1のポンプ光出射部24として、第1のポンプ光hν1を出射するCr添加フォルステライトレーザ、Yb添加YLFレーザ、Yb添加ファイバレーザのいずれかからなる第1のポンプ光hν1源を備え、第2のポンプ光出射部25として、例えば、第2のポンプ光hν2を出射するCr添加フォルステライトレーザ、Yb添加YLFレーザ、Yb添加ファイバレーザのいずれかからなる第2のポンプ光源を備えるようにすることが可能であることを述べたが、第1のポンプ光出射部24及び第2のポンプ光出射部25の少なくとも、いずれか一方を半導体レーザとすれば、更に、装置構成を小型化することが可能である。
【0110】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0111】
6…YAGレーザ
7a…第1の非軸放物面鏡
7b…第2の非軸放物面鏡
11…パーソナルコンピュータ
16…励起光源(YAGレーザ)
17…OPO
18…偏光ビームスプリッタ
19…擬似位相整合素子
19a,19b…櫛形状基板(GaP基板)
24…第1のポンプ光出射部
25…第2のポンプ光出射部
31…レーザコントローラ
32…ステージコントローラ
33…電圧計
34…電磁波検出器
35…ステージコントローラ
53…放物面鏡用線形ステージ
54…ビームスプリッタ用線形ステージ
55…回転ステージ
57…回転ステージ
61…フラッシュランプ
62…第1YAGロッド
63…第2YAGロッド
101…結晶
105a,105b,105c,105d…プリズム
109…非線形光学結晶
191M,191N,…薄板
192…GaP基板
193…GaP領域
…第1ミラー
3…ハーフミラー
5…第1ミラー
6…ミラー(第2ミラー)
1…フラッシュランプ励起用パルス
2,P3…スイッチパルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポンプ光を出射する第1のポンプ光出射部と、
前記第1のポンプ光とは異なる波長の第2のポンプ光を、波長可変で出射する第2のポンプ光出射部と、
周期的な分極反転構造を有し、前記第1のポンプ光と前記第2のポンプ光との差周波数の電磁波を生成する擬似位相整合素子と、
前記第1のポンプ光と前記第2のポンプ光との交叉角を位相整合範囲角に調整して固定し、前記第1のポンプ光及び前記第2のポンプ光を前記擬似位相整合素子に入射させる光学系
とを備え、前記第2のポンプ光の周波数を変えることにより、前記擬似位相整合素子から可変波長のテラヘルツ電磁波を発生させることを特徴とする電磁波発生装置。
【請求項2】
前記交叉角は、前記擬似位相整合素子の内部において、前記第1のポンプ光の波数ベクトルと前記第2のポンプ光の波数ベクトルとの交叉角として定義される内部交差角度であり、該内部交差角度が、前記第1のポンプ光の波数ベクトルの終点を中心とする、前記擬似位相整合素子の分極反転構造に由来するベクトルの軌跡として描かれる第1の円と、前記第2のポンプ光の波数ベクトルの終点を中心とする、前記テラヘルツ電磁波の波数ベクトルの軌跡として描かれる第2の円とが、互いに交わるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生装置。
【請求項3】
前記第2のポンプ光の波数ベクトルが、前記第1の円に外接するように、前記内部交差角度が設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波発生装置。
【請求項4】
前記第1のポンプ光出射部からYAGレーザの出力を前記第1のポンプ光として出射し、
前記第2のポンプ光出射部は、インジェクションシーディング機構を有するオプティカルパラメトリックオシレータを備え、前記オプティカルパラメトリックオシレータを前記YAGレーザの出力で励起することにより、前記第2のポンプ光出射部から前記オプティカルパラメトリックオシレータの出力を前記第2のポンプ光として出射する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項5】
前記第1のポンプ光出射部は、前記第1のポンプ光を出射するクロム添加フォルステライトレーザ、イッテルビウム添加イットリウム・リチウム・フルオライドレーザ、イッテルビウム添加ファイバレーザのいずれかからなる第1のポンプ光源を備え、
前記第2のポンプ光出射部は、前記第2のポンプ光を出射するクロム添加フォルステライトレーザ、イッテルビウム添加イットリウム・リチウム・フルオライドレーザ、イッテルビウム添加ファイバレーザのいずれかからなる第2のポンプ光源を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のポンプ光源をそれぞれ励起し、前記第1及び第2のポンプ光源から前記第1及び第2のポンプ光を出射させる励起光源を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の電磁波発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−203013(P2012−203013A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64448(P2011−64448)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(502350504)学校法人上智学院 (50)
【出願人】(395023060)株式会社東京インスツルメンツ (7)
【Fターム(参考)】