説明

電線の止水処理方法と電線の止水構造

【課題】 電線として必要な柔軟性を何等損なうことなく所望の止水効果を得ることができるように工夫した電線の止水処理方法と電線の止水構造を提供すること。
【解決手段】 キャップ内にポリウレタン剤を充填すると共に電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたものであり、硬化後においても電線としての柔軟性を損なうようなことはなく、各電線毎に止水処理を施すといった煩雑な作業はなく、必要な止水効果についてはこれを確実に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の止水処理方法と電線の止水構造に係り、特に、キャップ内にポリウレタン剤を充填すると共にそこに電線の接続部を浸漬させることにより所望の止水処理を施すように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種車両に搭載されているハーネスにおいては、敷設されている電線に各種電子機器が接続されている。この種の電線の接続部において何等の止水処理も施されていない場合には、その接続部より電線内に水が浸入して電線内を通って接続されている電子機器に至ってしまうことになる。電子機器に水が浸入した場合には、電子機器内にて短絡状態となり、電子機器を損傷させてしまうおそれがあった。
【0003】
そこで、従来からそのような電線の接続部に様々な止水処理が施されている。そのような止水処理の一例を図3に示す。図3に示すように、まず、複数本の電線101があり、これら電線101は絶縁被覆103内に導体105を収容した構成になっている。上記複数本の電線101の先端部においては絶縁被覆103が剥ぎ取られていて導体105が露出されている。それら露出された導体105同士は接続されていて接続部107となっている。この接続部107の複数本の導体105は端子109によって束ねられている。
【0004】
上記構成をなす電線101の接続部107はPVCキャップ111内に収容されている。そして、上記PVCキャップ111の開口部111a側にはテープ113が巻き付けられていた。
【0005】
しかしながら、上記構成では所望の防水性能を得ることはできなかった。そこで、図4、図5に示すような止水処理が提案されている。まず、図4に示す場合であるが、各電線101に対して絶縁被覆103を部分的に剥ぎ取って導体105を露出させる。その露出された導体105に半田115を滴下する。滴下された半田115は絶縁被覆103内に含浸されていき、それによって、所望の防水処理を施すものである。
【0006】
又、図5に示す場合には、各電線101に対してその接続部を熱収縮性チューブ117によって覆う。そして、熱処理によって熱収縮性チューブ117が収縮することにより、所望の防水処理を施すものである。
【0007】
その他にも様々な止水処理を開示したものがあるが、例えば、シリコーンを使用した止水処理を開示したものとして、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−226836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の構成によると次のような問題があった。まず、図4に示す半田115を滴下・含浸させる方法の場合には、その半田115の滴下・含浸部分が硬化してまって電線としての柔軟性が損なわれてしまうという問題があった。そして、その硬化した部位が繰り返し屈曲された場合には破断してしまうおそれがあった。又、各電線101毎に処理を施す必要があり面倒であった。
【0010】
又、図5に示す熱収縮性チューブ117の場合であるが、この場合にも電線としての柔軟性が損なわれてしまうという問題があった。又、各電線101毎に処理を施す必要があり面倒であり、且つ、全ての電線101に対して処理を施すことはできなかった。
【0011】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、電線として必要な柔軟性を何等損なうことなく所望の止水効果を得ることができるように工夫した電線の止水処理方法と電線の止水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による電線の止水処理方法は、キャップ内にポリウレタン剤を充填すると共に電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による電線の止水処理方法は、請求項1記載の電線の止水処理方法において、キャップ内にポリウレタン剤を充填し、そこに電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による電線の止水処理方法は、請求項2記載の電線の止水処理方法において、上記電線の接続部の絶縁被覆の端から10mm以上上の部分までがポリウレタン剤中に浸漬されるようにポリウレタン剤の充填量を調整するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項4による電線の止水構造は、電線の接続部を収容するキャップと、上記キャップ内に充填されて硬化するポリウレタン剤と、を具備し、上記充填されたポリウレタン剤が上記電線の接続部に浸入して硬化することにより止水機能を発揮するように構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本願発明の請求項1による電線の止水処理方法は、キャップ内にポリウレタン剤を充填すると共に電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたので、まず硬化後においても電線としての柔軟性を損なうようなことはない。各電線毎に止水処理を施すといった煩雑な作業はなく簡単である。又、必要な止水効果についてはこれを確実に提供することができる。すなわち、ポリウレタン剤13が毛細管現象によって接続部内に隙間なく入り込んで硬化するからである。
又、請求項2による電線の止水処理方法は、請求項1記載の電線の止水処理方法において、キャップ内にポリウレタン剤を充填し、そこに電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたことを特徴とするものであり、それによって、上記効果を確実に得ることができるものである。
又、請求項3による電線の止水処理方法は、請求項2記載の電線の止水処理方法において、上記電線の接続部の絶縁被覆の端から10mm以上上の部分までがポリウレタン剤中に浸漬されるようにポリウレタン剤の充填量を調整するようにしたことを特徴とするものであり、それによって、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項4は本発明を電線の止水構造としてクレームしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、電線の止水処理方法を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す図で、電線の構造を一部切り欠いて示す図である。
【図3】従来例を示す図で、電線の止水処理方法を示す正面図である。
【図4】従来例を示す図で、電線の止水処理方法を示す正面図である。
【図5】従来例を示す図で、電線の止水処理方法を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び図2を参照して本発明の一実施の形態を説明する。まず、複数本の電線1があり、これら電線1は、図2に拡大して示すように、絶縁被覆3内に導体5を収容した構成になっている。上記各電線1の先端部は絶縁被覆3が剥ぎ取られていて導体5が露出されている。それら露出された導体5が接続されていて接続部7となっている。この接続部7は端子9によって束ねられている。
【0016】
上記接続部7はPVC(ポリ塩化ビニール)キャップ11内に挿入されている。又、上記PVCキャップ11内にはポリウレタン剤13が充填・硬化されている。それによって、所望の止水機能を発揮するように構成されている。
【0017】
次に、接続部7に止水処理を施す手順を説明する。まず、PVCキャップ11内にポリウレタン剤13を充填する。次に、上記電線1の接続部をPVCキャップ11内に挿入し接続部7を上記ポリウレタン剤13中に浸漬させる。その際、接続部7の絶縁被覆3の縁から略10mm以上上の部分までがポリウレタン剤13内に浸漬されるようにポリウレタン剤13の量を調整する。電線1をPVCキャップ11内に挿入した後にポリウレタン剤13の量を微調整する。それによって、止水処理を施す。すなわち、ポリウレタン剤13が各電線間或いは各電線1の絶縁被覆3内に浸入して硬化することになるからである。
【0018】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、止水材料としてポリウレタン剤13を使用しているので、硬化後においても電線としての柔軟性を損なうようなことはない。
又、複数本の電線1を束ねた場合においても各電線5毎に止水処理を施すといった煩雑な作業はなく簡単である。
又、必要な止水効果についてはこれを確実に提供することができる。すなわち、ポリウレタン剤13が毛細管現象によって電線1間や各電線1の絶縁被覆3内に隙間なく入り込んで硬化するからである。
【0019】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記一実施の形態の場合には、剥ぎ取られた絶縁被覆3の端から10mm以上上の部分までがポリウレタン剤中に浸漬されるように構成したが、それに限定されるものではない。
又、キャップについてはその構成を特に限定するものではなく様々な形状、材質のキャップの使用が想定される。
又、キャップ内に電線を先に挿入するか或いはポリウレタン剤を先に充填するかは任意である。
その他図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、電線の止水処理方法と電線の止水構造に係り、特に、PVCキャップ内にポリウレタン剤を充填し、そこに電線の接続部を浸漬させることにより所望の止水処理を施すように工夫したものに関し、例えば、各種車両に搭載される車両用ハーネスにおける電線の止水処理に好適である。
【符号の説明】
【0021】
1 電線
3 絶縁被覆
5 導体
7 接続部
9 端子
11 PVCキャップ(キャップ)
13 ポリウレタン剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ内にポリウレタン剤を充填すると共に電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたことを特徴とする電線の止水処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の電線の止水処理方法において、
キャップ内にポリウレタン剤を充填し、そこに電線の接続部を挿入して上記充填されたポリウレタン剤中に浸漬させ、それによって、上記接続部に止水処理を施すようにしたことを特徴とする電線の止水処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の電線の止水処理方法において、
上記電線の接続部の絶縁被覆の端から10mm以上上の部分までがポリウレタン剤中に浸漬されるようにポリウレタン剤の充填量を調整するようにしたことを特徴とする電線の止水処理方法。
【請求項4】
電線の接続部を収容するキャップと、上記キャップ内に充填されて硬化するポリウレタン剤と、を具備し、上記充填されたポリウレタン剤が上記電線の接続部に浸入して硬化することにより止水機能を発揮するように構成されたことを特徴とする電線の止水構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−192128(P2010−192128A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32140(P2009−32140)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】