説明

電線の端子接続構造体及びその端子接続方法

【課題】電線端部の被覆材より突出する複数本の各芯線を一つに束ねたまま端子に接続することができる電線の端子接続構造体及びその端子接続方法を提供する。
【解決手段】電線B端部の被覆材Bbより突出する芯線Baに少なくとも一部の被覆材Bcをセミストリップ状態に残したまま、電線B端部に圧着端子Aを取り付けた端子接続構造体である。前記端子接続構造体である電線B端部に圧着端子Aを接続する端子接続方法は、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離された被覆材Bcを、芯線Ba端部が外囲されるセミストリップ位置に残して、複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に拘束する。被覆材Bcを芯線Ba端部に残したセミストリップ状態にて、電線B端部に圧着端子Aを取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電線端部に端子を取り付けた電線の端子接続構造体及び端子接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の電線の端子接続方法としては、例えば電線端部に外囲された被覆部にカッターを切り込ませて、電線端部の被覆部を残りの被覆部から切り離した後、電線端部より突出する芯線部端部に外囲された被覆部にカッターを切り込ませて、芯線部端部から被覆部を抜き取る。この後、電線端部に突出する芯線部を端子に圧着接続する特許文献1の電線のセミストリップ方法がある。
【0003】
しかし、電線端部より突出する芯線部端部から被覆部を抜き取ってしまうと、図13、図14に示すように、電線と端子を接続する際に、電線端部より突出する芯線部が外側へ広がったり、一部の芯線部が端子よりも外側へ突出(芯線こぼれ)しやすく、芯線部を構成する複数本の各芯線を一つに束ねたまま接続することが困難である。
【特許文献1】特許第2979408号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は前記問題に鑑み、電線端部の被覆材より突出する複数本の各芯線を一つに束ねられた状態に拘束することができる電線の端子接続構造体及び端子接続方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明の電線の端子接続構造体は、芯線と、該芯線を外囲する被覆材とを有する電線と、前記電線の端部に取り付けた端子と、を有する電線の端子接続構造体であって、前記芯線に少なくとも一部の被覆材がセミストリップ状態で残されたまま、前記端子が取り付けられていることを特徴とする。
【0006】
この発明によると、電線端部に突出する芯線を、その芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材により一つに束ねられた状態に拘束しているので、電線端部に突出する芯線が外側へ広がったり、一部の芯線が端子の外側へ突出する等して、他の部材に干渉するのを防止することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明の電線の端子接続構造体は、上記請求項1に記載の構成と併せて、前記セミストリップ状態の被覆材の抜け止めを行う、抜止め手段が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、電線の芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材を端子に形成した抜止め手段により抜止めしているので、セミストリップ状態の被覆材が芯線端部から抜け落ちるのを防止することができる。
【0009】
請求項3に記載した発明の電線の端子接続構造体は、上記請求項2に記載の構成と併せて、前記抜止め手段は、前記端子の、前記セミストリップ状態の被覆材の先端側に形成された突起であることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、電線の芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材を端子に形成した突起により抜止めしているので、セミストリップ状態の被覆材が突起に当接して抜止めされる。
【0011】
請求項4に記載した発明の電線の端子接続構造体は、上記請求項2に記載の構成と併せて、前記抜止め手段は、前記芯線を前記セミストリップ状態の被覆材ごと圧着する端子のバレル部であることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、電線の芯線を、芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材ごと端子のバレル部で圧着しているので、セミストリップ状態の被覆材の位置が変位することがなく、確実に抜止めされる。
【0013】
請求項5に記載した発明の電線の端子接続構造体は、上記請求項2に記載の構成と併せて、前記抜止め手段は、前記セミストリップ状態の被覆材のさらに先端側の芯線を圧着するバレル部であることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、電線の芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材よりも先端側に突出する芯線を端子のバレル部で圧着しているので、セミストリップ状態の被覆材がバレル部に当接して抜止めされる。
【0015】
請求項6に記載した発明の電線の端子接続方法は、芯線と、該芯線を外囲する被覆材とを有する電線において、前記被覆材を前記芯線の端部にセミストリップ状態に残したまま前記電線に端子を接続することを特徴とする。
【0016】
この発明によると、電線端部に突出する芯線を、その芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材により一つに束ねられた状態に拘束しているので、電線端部に突出する芯線が外側へ広がったり、一部の芯線が端子の外側へ突出する等して、他の部材に干渉するのを防止することができる。
【0017】
請求項7に記載した発明の電線の端子接続方法は、前記請求項6に記載の構成と併せて、前記電線端部に外囲した被覆材に一対の各刃物を切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部が外囲される位置へ移動した後、各刃物を芯線端部より突出する被覆材に切り込ませて不要な部分を切除し、切り残された被覆材を芯線端部に残したセミストリップ状態にて電線と端子を接続することを特徴とする。
【0018】
この発明によると、電線端部に外囲した被覆材に一対の各刃物を切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部が外囲される位置へ移動する。この後、各刃物を芯線端部により突出する被覆材に切り込ませて不要な部分を切除するとともに、切り残された被覆材を芯線端部に残したセミストリップ状態にて電線と端子を接続する。
【0019】
なお、前記電線は、例えば導電性を有する金属で形成された複数本の芯線を絶縁材からなる被覆材で外囲した電線等で構成することができる。また、相対移動とは、例えば電線は移動せず刃物側を移動する方法と、刃物は移動せず電線側を移動する方法と、電線と刃物の両方を移動する方法等である。
【0020】
請求項8に記載した発明の電線の端子接続方法は、前記請求項6に記載の構成と併せて、前記電線端部に外囲した被覆材に一対の各刃物を切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部から抜き取った後、各刃物を芯線全長側に外囲された残りの被覆材に切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部が外囲される位置へ移動して、切り残された被覆材を芯線端部に残したセミストリップ状態にて電線と端子を接続することを特徴とする。
【0021】
この発明によると、一対の各刃物を、電線端部に外囲した被覆材に切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部から抜き取る。この後、各刃物を、芯線全長側に外囲した被覆材に切り込ませて、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部が外囲される位置へ移動する。
【0022】
つまり、芯線端部に外囲したセミストリップ状態の被覆材により、残りの被覆材端部より突出する複数本の各芯線を一つに束ねられた状態に拘束するので、電線と端子を接続する際に、各芯線が外側へ広がったり、一部の芯線が端子の外側へ突出するのを防止することができる。また、被覆材を芯線端部に残したセミストリップ状態にて電線と端子を接続するので、請求項1と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、電線端部に突出する芯線を、その芯線上に残されたセミストリップ状態の被覆材により一つに束ねられた状態に拘束しているので、電線端部に端子を取り付けた後又は電線端部に端子を取り付ける際に、電線端部に突出する芯線が外側へ広がったり、一部の芯線が端子の外側へ突出する等して、他の部材に干渉するのを防止することができる。また、セミストリップ状態の被覆材を抜止め手段により抜止めするので、電線端部に突出する芯線を一つに束ねられた状態に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明は、電線端部の被覆材より突出する複数本の各芯線を一つに束ねられた状態に拘束することができるという目的を、電線端部に外囲された残りの被覆材から切り離された一部の被覆材を、該電線端部の被覆材より突出する芯線端部に残したセミストリップ状態にて、電線端部に端子を取り付けることで達成した。
【実施例】
【0025】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、端子の一例である圧着端子を電線端部に取り付けた電線の端子接続構造体及びその端子接続方法を示し、図1〜図6に於いて、電線Bの端子接続構造体は、導電性を有する金属製の芯線Baと、該芯線Baを外囲する被覆材Bcとを有する電線Bと、電線B端部に取り付けた圧着端子Aとを有する電線Bの端子接続構造体であって、電線B端部に突出する芯線Baに少なくとも一部の被覆材Bcがセミストリップ状態で残されたまま、電線B端部に圧着端子Aが取り付けたものである。
【0026】
前記端子接続構造体である電線B端部に圧着端子Aを接続する端子接続方法は、一対の各挟持体2,2により端子未接続の電線Bを挟持した後、一対の各刃物3,3を電線B端部に外囲した被覆材Bbに切り込ませて、刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bcを、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離される方向へ移動させ、残りの被覆材Bbから切り離された被覆材Bcを芯線Ba端部が外囲されるセミストリップ位置へ移動するとともに、電線B端部の被覆材Bbより突出する芯線Baを、圧着端子AのワイヤーバレルAcが圧着される面積だけ露出する。この後、各刃物3,3を芯線Ba端部より突出する被覆材Bcに切り込ませて、被覆材Bcを芯線Ba端面に沿って切除する。被覆材Bcを芯線Ba端部が外囲されるセミストリップ状態に残して、複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に拘束するとともに、被覆材Bcを芯線Ba端部に残したセミストリップ状態にて電線B端部に圧着端子Aを圧着接続するものである。
【0027】
一対の各挟持体2,2は、図1に示すように、刃物3の切込み位置よりも図中左側に突出する電線B端部に外囲した被覆材Bb外面と対向して上下に配置され、図示しない上下移動機構により電線B全長側に外囲した被覆材Bbが挟持される閉位置と、その挟持が解除される開位置へ相対移動される。また、刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bbを、一対の各刃物3,3により芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離される方向へ移動するか、或いは、残りの被覆材Bbから切り離された被覆材Bcを芯線Ba端部から抜き取られる方向へ移動する際に、電線B全体を長さ方向へ移動しないような挟持力で挟持する。
【0028】
一対の各刃物3,3は、各刃物3,3の刃先が対向するように配置され、各刃物3,3を芯線Baに外囲した被覆材Bbに切り込ませる際に、各刃物3,3の平面が互いに摺接されるように設けている。また、各刃物3,3は、図示しない上下移動機構により電線B端部に外囲した被覆材Bb外面に対して径方向へ切り込まれる刃先方向へ相対移動され、各刃物3,3間に対する電線Bの挿入及び抜き取りが許容される開位置と、各刃物3,3が芯線Baには切り込まれず被覆材Bbのみに切り込まれる閉位置に上下移動される。
【0029】
また、各刃物3,3は、被覆材Bb中心に挿入された芯線Ba外面に接する状態に切り込ませるか、芯線Ba外面に対して切り込まれない状態に近接した際に、図示しない水平移動機構により刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bbが、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離される方向(図2中の右側)へ電線Bに沿って長さ方向へ平行移動される。
【0030】
つまり、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離された被覆材Bcの不要な部分が、芯線Ba端部より所望する寸法だけ突出され、被覆材Bcの必要な部分が芯線Ba端部に残される切残し位置(図2参照)と、電線B端部に外囲した被覆材Bbが所望する寸法だけ切除される切込み位置(図1参照)と、芯線Ba端部より突出する被覆材Bcが該芯線Ba端面に沿って切除される切込み位置(図3参照)へ移動される。
【0031】
なお、一対の各刃物3,3は移動せず、一対の各挟持体2,2で挟持した電線B側を、刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bcが、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離される方向へ移動してもよい。
【0032】
前記端子接続構造体である電線B端部に圧着端子Aを取り付ける際の端子接続方法を説明する。
【0033】
先ず、図1に示すように、一対の各挟持体2,2により電線B全長側を挟持した後、一対の各刃物3,3を閉位置へ移動して、電線B端部に外囲した被覆材Bbに対して径方向へ切り込ませるとともに、電線B中心に挿入された芯線Baには切り込まず、被覆材Bbのみに切り込みを入れる。
【0034】
次に、図2に示すように、各刃物3,3を電線B端部に外囲した被覆材Bbに切り込ませたまま、刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bcが、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離される矢印方向(図2中の右側)へ電線Bの長さ方向に沿って一定量移動させるとともに、電線B端部の被覆材Bbより突出する芯線Baを、圧着端子AのワイヤーバレルAcが圧着される面積だけ露出する。
【0035】
芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離された被覆材Bcを、被覆材Bcの不要な部分が芯線Ba端部より突出され、被覆材Bcの必要な部分が芯線Ba端部に残されるセミストリップ位置へ移動した後、図3に示すように、各刃物3,3を開位置へ移動して、芯線Ba端部に移動された被覆材Bcに対して接触及び当接が回避される間隔に離間したまま、芯線Ba端部より突出する被覆材Bcの不要な部分に対して芯線Ba端面に沿って切り込まれる位置へC距離だけ移動させる。
【0036】
次に、図4に示すように、一対の各刃物3,3を、芯線Ba端面に沿って該芯線Ba端部に外囲した被覆材Bcに対して径方向へ切り込ませて、芯線Ba端部より突出する被覆材Bcの不要な部分を該芯線Ba端面に沿って切除するので、必要な部分の被覆材Bcを、芯線Ba端部が外囲されるセミストリップ状態に残すことができる。
【0037】
芯線Ba端部に残されたセミストリップ状態の被覆材Bcにより、電線B端部の被覆材Bbより突出する複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に拘束することができるので、電線B端部に圧着端子Aを取り付ける際に、電線B端部の被覆材Bbより突出する各芯線Ba…が外側へ広がったり、一部の芯線Baが圧着端子Aの外側へ突出(芯線こぼれ)するのを防止することができ、電線Bの各芯線Ba…と圧着端子Aを適切な状態に接続することができる。
【0038】
この後、各刃物3,3を開位置へ移動させ、次の電線B端部に外囲した被覆材Bbに対して切り込まれる初期位置に復帰移動する。また、各挟持体2,2を開位置へ移動させ、各挟持体2,2による電線Bの挟持を解除すれば、複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に拘束する作業が完了する。
【0039】
次に、各挟持体2,2間から抜き取ったセミストリップ済みの電線Bを圧着工程へ供給するとともに、図5、図6に示すように、被覆材Bcを芯線Ba端部が束ねられる位置に残したセミストリップ状態にて、電線B端部に圧着端子Aを圧着接続すれば、圧着接続時において、電線Bの芯線Baが圧着端子Aよりも外側へ突出するか、他の部材に干渉するのを防止することができる。
【0040】
また、圧着端子Aのバレル部Aaに形成したインシュレーションバレルAbは、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbに圧着して加締め固定され、ワイヤーバレルAcは、芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbと、芯線Ba端部に外囲した被覆材Bcの間に露出する芯線Baに圧着して加締め固定される。
【0041】
図7〜図9は、電線Bの端子接続方法の他の例を示し、一対の各刃物3,3を、電線B端部に外囲した被覆材Bbに切り込ませて、被覆材Bbのみに切り込みを入れた後(図1参照)、各刃物3,3を電線B端部に外囲した被覆材Bbに切り込ませたまま、刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bcが、該芯線Baに外囲された残りの被覆材Bbから切り離される方向へ移動させ、残りの被覆材Bbから切り離された被覆材Bcを芯線Ba端部から抜き取る(図7参照)。
【0042】
次に、各刃物3,3を開位置へ移動して、芯線Ba全長側に外囲した被覆材Bbに対して接触及び当接が回避される間隔に離間したまま、芯線Ba全長側に外囲した被覆材Bb端部に対して切り込まれる位置へC距離だけ移動させる(図8参照)。
【0043】
次に、各刃物3,3を、芯線Ba全長側に外囲した被覆材Bbに切り込ませたまま、刃物3の切込み位置よりも芯線Ba端部側に外囲した被覆材Bcが、該芯線Ba全長側に外囲された残りの被覆材Bbから切り離される方向へ移動するとともに、残りの被覆材Bb端部より突出する芯線Baを、圧着端子AのワイヤーバレルAcが圧着される面積だけ露出する(図9参照)。
【0044】
つまり、芯線Ba全長側の被覆材Bbから切り離されたリング状の被覆材Bcを、芯線Ba端部が外囲されるセミストリップ位置へ移動させて、複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に拘束するので、電線B端部に圧着端子Aを取り付ける作業途中において、各芯線Ba…が外側へ広がったり、一部の芯線Baが圧着端子Aの外側へ突出するのを防止することができる。また、被覆材Bcを芯線Ba端部に残したセミストリップ状態にて、電線B端部に圧着端子Aを圧着接続(図5、図6参照)するので、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0045】
図10は、電線Bの芯線Ba上に残されたセミストリップ状態の被覆材Bcを、圧着端子Aのバレル部Aa内壁面に突出した一対の各突起Ae,Aeで抜止めする抜止め方法を示している。つまり、電線B端部に圧着端子Aを圧着接続した際に、被覆材Bcが芯線Ba端部から抜け落ちる方向(長さ方向)へ移動しようとしても、セミストリップ状態の被覆材Bcよりも先端側に形成した各突起Ae,Aeに当接して抜止めされるので、電線B端部の被覆材Bbより突出する複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に維持することができる。なお、突起Aeの突出量は、少なくとも被覆材Bcが芯線Ba端部から抜けようとする際に突き当たる程度の突出量が好ましい。また、芯線Baと突起Aeの間隔aは、被覆材Bcの全長bよりも短いものとする。
【0046】
図11は、電線Bの芯線Baを、芯線Ba上に残されたセミストリップ状態の被覆材Bcごと圧着端子Aのバレル部Aaに形成したセミインシュレーションバレルAdで圧着して加締め固定する他の抜止め方法を示している。つまり、電線B端部に圧着端子Aを圧着接続した際に、被覆材Bcの位置が変位するか、被覆材Bcが芯線Ba端部から抜け落ちるのを防止することができ、電線B端部の被覆材Bbより突出する複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に維持することができる。なお、バレル部Aaに形成したインシュレーションバレルAbは、芯線Baに外囲された残りの被覆材Bbに圧着して加締め固定される。また、ワイヤーバレルAcは、芯線Baに外囲された残りの被覆材Bbと、芯線Ba端部に外囲した被覆材Bcの間に露出する芯線Baに圧着して加締め固定される。
【0047】
図12は、電線Bの芯線Ba上に残されたセミストリップ状態の被覆材Bcよりも、該被覆材Bcのさらに先端側に突出する芯線Baを圧着端子Aのバレル部Aaに形成したワイヤーバレルAcで圧着して加締め固定するその他の抜止め方法を示している。つまり、被覆材Bcが芯線Ba端部から抜け落ちる方向へ移動しようとしても、被覆材B先端側の芯線Baに圧着されたバレル部AaのワイヤーバレルAcに当接して抜止めされるので、電線B端部の被覆材Bbより突出する複数本の各芯線Ba…を一つに束ねられた状態に維持することができる。
また、ワイヤーバレルAcを2箇所設けたことで、電線Bと圧着端子Aの間の電気的接続の安定性が向上するので好ましい。尚、インシュレーションバレルAbは省略することも可能である。
【0048】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の抜止め手段は、実施例の圧着端子Aのバレル部Aaに形成したセミインシュレーションバレルAdと、ワイヤーンバレルAcと、突起Aeに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0049】
前記実施例では、リング状の被覆材Bcを芯線Ba端部に配置する例を説明したが、例えば被覆材Bcを、電線B端部の被覆材Bbより突出する芯線Ba中央部に配置することも可能である。この場合、図10、図11、図12に示す抜止め方法により固定してもよい。また、圧着端子Aのバレル部Aaに形成したインシュレーションバレルAb、ワイヤーンバレルAcを、芯線Ba中央部に配置された被覆材Bcに対して圧着が回避される形状に形成するか、圧着が回避される位置に配置する等してもよい。
【0050】
また、電線B端部に圧着端子Aを取り付けた後、セミストリップ状態の被覆材Bcを芯線Ba端部から抜き取ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の電線の端子接続方法は、電線端部に端子を取り付ける方法以外に、例えば2本の電線同士を互い溶接する際にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一対の各刃物を電線端部の被覆材に切り込ませた状態を示す斜視図。
【図2】切り離された被覆材を芯線端部へ移動する動作を示す斜視図。
【図3】芯線端部に移動された被覆材を切除する動作を示す斜視図。
【図4】リング状の被覆材を芯線端部に切残した状態を示す斜視図。
【図5】複数本の各芯線が束ねられた電線と端子の圧着方法を示す斜視図。
【図6】電線の端部に端子を圧着接続した状態を示す側面図。
【図7】芯線端部に外囲した被覆材を抜き取る動作を示す斜視図。
【図8】芯線全長側に外囲した被覆材を切除する動作を示す斜視図。
【図9】リング状の被覆材を芯線端部に移動した状態を示す斜視図。
【図10】芯線端部に外囲した被覆材の抜止め方法を示す平面図。
【図11】芯線端部に外囲した被覆材の他の抜止め方法を示す平面図。
【図12】芯線端部に外囲した被覆材のその他の抜止め方法を示す平面図。
【図13】従来例の芯線が突出する電線と端子を圧着方法を示す斜視図。
【図14】電線の芯線が突出する端子圧着状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0053】
A…圧着端子
Aa…バレル部
Ab…インシュレーションバレル
Ac…ワイヤーバレル
Ad…セミインシュレーションバレル
Ae…突起
B…電線
Ba…芯線
Bb,Bc…被覆材
2…挟持体
3…刃物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、該芯線を外囲する被覆材とを有する電線と、
前記電線の端部に取り付けた端子と、を有する電線の端子接続構造体であって、
前記芯線に少なくとも一部の被覆材がセミストリップ状態で残されたまま、前記端子が取り付けられていることを特徴とする
電線の端子接続構造体。
【請求項2】
前記セミストリップ状態の被覆材の抜け止めを行う、抜止め手段が形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の電線の端子接続構造体。
【請求項3】
前記抜止め手段は、前記端子の、前記セミストリップ状態の被覆材の先端側に形成された突起であることを特徴とする
請求項2に記載の電線の端子接続構造体。
【請求項4】
前記抜止め手段は、前記芯線を前記セミストリップ状態の被覆材ごと圧着する端子のバレル部であることを特徴とする
請求項2に記載の電線の端子接続構造体。
【請求項5】
前記抜止め手段は、前記セミストリップ状態の被覆材のさらに先端側の芯線を圧着するバレル部であることを特徴とする
請求項2に記載の電線の端子接続構造体。
【請求項6】
芯線と、該芯線を外囲する被覆材とを有する電線において、
前記被覆材を前記芯線の端部にセミストリップ状態に残したまま前記電線に端子を接続することを特徴とする
電線の端子接続方法。
【請求項7】
前記電線端部に外囲した被覆材に一対の各刃物を切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部が外囲される位置へ移動した後、各刃物を芯線端部より突出する被覆材に切り込ませて不要な部分を切除し、切り残された被覆材を芯線端部に残したセミストリップ状態にて電線と端子を接続することを特徴とする
請求項6に記載の電線の端子接続方法。
【請求項8】
前記電線端部に外囲した被覆材に一対の各刃物を切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部から抜き取った後、各刃物を芯線全長側に外囲された残りの被覆材に切り込ませたまま、電線及び各刃物の少なくとも一方を、刃物の切込み位置よりも芯線端部側に外囲した被覆材が、該芯線全長側に外囲された残りの被覆材から切り離される方向へ相対移動させ、残りの被覆材から切り離された被覆材を芯線端部が外囲される位置へ移動して、切り離された被覆材を芯線端部に残したセミストリップ状態にて電線と端子を接続することを特徴とする
請求項6に記載の電線の端子接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−235130(P2008−235130A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75775(P2007−75775)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】