説明

電線保護具及びワイヤハーネス

【課題】電線の中間部に存在する枝線との接合部を絶縁体で保護でき、さらに、枝線に加わる引っ張り力により電線の接合が外れる不都合を回避できること。
【解決手段】電線保護具10は、第1の電線91及び第2の電線92の接合部80を挟み込んで組み合わされる2つの絶縁部材100からなる。電線保護具10には、第2の電線92が引っ掛けられ第2の電線92を外縁に沿って折り返された状態で支持する支持部11が形成されている。支持部11における第2の電線92が沿う外縁は、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の中間部に存在する電線の接合部を保護する電線保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、幹線を構成する第1の電線の中間部と、枝線を構成する第2の電線の一部とが接合された構造を有することがある。例えば、特許文献1には、第1の電線の中間部と第2の電線の端部とが、それらに圧着される圧着部材により接合された構造を有するワイヤハーネスが示されている。
【0003】
また、ワイヤハーネスにおける電線の接合部は、被覆されることによって保護される必要がある。例えば、特許文献1に示されるワイヤハーネスにおいて、電線の接合部は、絶縁テープが巻き付けられることによって保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−101865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今、車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、軽量化及びコスト低減のため、より細い電線の採用が望まれている。しかしながら、2本の細い電線が圧着部材などによって接合される場合、電線の接合強度を十分に確保することが難しく、電線に加わる引っ張り力によって電線の接合が外れやすいという問題が顕在化する。そのことが、細い電線の採用によるワイヤハーネスの軽量化及びコスト低減の支障となっている。
【0006】
例えば、特許文献1に示されるように、絶縁テープが電線の接合部に巻き付けられた場合、枝線に加わる引っ張り力は、ほぼそのまま電線の接合部にも加わってしまうため、電線の接合が外れやすい。
【0007】
また、特許文献1に示されるワイヤハーネスにおいて、仮に、枝線が、接合部における枝線の分岐方向に対して反対の方向へ折り返して配線された場合、枝線に加わる引っ張り力の大部分は、絶縁テープが巻かれた部分の端部に作用する。そのため、電線の接合部に加わる力は緩和される。しかしながら、枝線が、絶縁テープが巻かれた部分の端部で鋭角に折れ曲がるため、枝線の破損が生じやすい。
【0008】
本発明は、電線の中間部に存在する枝線との接合部を絶縁体で保護でき、さらに、枝線に加わる引っ張り力により電線の接合が外れる不都合を回避できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電線保護具は、第1の電線及び第1の電線の中間部に接合された第2の電線を備えたワイヤハーネスに取り付けられ、第1の電線及び第2の電線の接合部を保護する用具である。そして、本発明に係る電線保護具は、第1の電線及び第2の電線の接合部を挟み込んで組み合わされる2つの絶縁部材からなる。さらに、本発明に係る電線保護具には、第2の電線が引っ掛けられ第2の電線を外縁に沿って折り返された状態で支持する支持部が形成されている。
【0010】
また、本発明に係る電線保護具において、支持部における第2の電線が沿う外縁が、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成することが望ましい。そのような支持部は、例えば、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成する複数の単位支持部からなる。
【0011】
また、本発明に係る電線保護具において、2つの絶縁部材を組み合わされた状態で保持するロック部がさらに形成されていることが望ましい。
【0012】
また、本発明に係る電線保護具において、支持部の端から外側への第2の電線の位置ずれを制限する第1の規制部がさらに形成されていることが望ましい。この第1の規制部は、支持部の両端部から第2の電線が配設される領域の両側を遮って張り出して形成される。
【0013】
また、本発明に係る電線保護具において、支持部における第2の電線が沿う面から離れる方向への第2の電線の位置ずれを制限する第2の規制部がさらに形成されていることが考えられる。この第2の規制部は、支持部に対して第2の電線が配設される領域を挟んで対向する可撓性を有する部分である。
【0014】
また、本発明に係る電線保護具を構成する2つの絶縁部材は、同じ形状で形成されていることが望ましい。
【0015】
また、本発明は、以上に示した第1の電線及び第2の電線と、それらの電線に取り付けられた本発明に係る電線保護具とを備えるワイヤハーネスの発明として捉えられても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、第1の電線は幹線を構成し、第2の電線は枝線を構成する。本発明において、枝線は、支持部の外縁に沿って、接合部における幹線からの分岐方向に対して少なくとも1回以上折り返される。そのため、枝線に加わる引っ張り力の大部分は、支持部に作用し、接合部に加わる力は大幅に緩和される。従って、細い電線が、幹線及び枝線として採用された場合でも、電線の接合が外れにくい。
【0017】
また、本発明において、枝線は、支持部の外縁に沿って折り返される。そのため、支持部の外縁の形状が比較的曲率の小さな形状であれば、枝線が支持部に沿う部分で鋭角に折れ曲がって破損することは防止される。
【0018】
しかも、当該電線保護具を構成する2つの絶縁部材は、幹線の中間部に存在する枝線との接合部を、その両側から挟み込むことによって保護する。即ち、本発明に係る電線保護具は、電線の接合部を電気的に絶縁して保護する保護機能と、枝線に加わる引っ張り力に応じて電線の接合部に加わる力を緩和する外力緩和機能とを備える。従って、本発明に係る電線保護具が採用された場合、保護機能を実現する部材と外力緩和機能を実現する部材とを個別に取り付ける必要がなく、ワイヤハーネス作製の工程を簡素化できる。
【0019】
ところで、本発明において、枝線が支持部に対して滑りやすいと、接合部に加わる力を緩和する効果が低減する。そのため、本発明において、支持部における枝線が沿う外縁が、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成していれば好適である。この場合、枝線は、支持部に沿う部分において、曲げ部と直線部とが順次連続する状態で折り返される。そのため、枝線の曲げ部における支持部に対する摩擦抵抗が大きくなり、枝線は、支持部に対して滑りにくい。その結果、接合部に加わる力が、より確実に緩和される。
【0020】
また、本発明において、支持部が、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成する複数の単位支持部で構成されていればなお好適である。この場合、接合部に加わる力がより確実に緩和されるとともに、電線保護具の軽量化の効果も得られる。
【0021】
また、本発明に係る電線保護具が、ロック部をさらに備えていれば、電線保護具を電線に取り付ける作業が簡素化される。即ち、2つの絶縁部材を組み合わされた状態で固定するために、粘着テープを巻き付ける又は溶着するなどの煩雑な作業が不要となる。
【0022】
また、電線保護具に第1の規制部が形成されていれば、枝線が、支持部に沿って位置づれし、支持部の端からその外側へ外れることを防止できる。また、電線保護具に第2の規制部が形成されていれば、枝線の張力が緩んだときに、枝線が支持部から外れることを防止できる。
【0023】
当該電線保護具を構成する2つの絶縁部材が同じ形状で形成されていれば、部材の種類が少なくなり、電線保護具の製造工程及び電線保護具を電線に取り付ける工程が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の3面図である。
【図2】ワイヤハーネス1の縦断面図である。
【図3】ワイヤハーネス1の横断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電線保護具10の3面図である。
【図5】電線保護具10を構成する分割部材の3面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電線保護具10Aを構成する分割部材の3面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス1Bの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0026】
<第1実施形態>
まず、図1から図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1及び電線保護具10の構成について説明する。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、幹線を形成する第1の電線91と、枝線を形成する第2の電線92と、圧着部材8と、電線保護具10とを備えている。電線保護具10は、相互に組み合わされた2つの分割部材100で構成されている。
【0027】
図1(a)はワイヤハーネス1の正面図、図1(b)はワイヤハーネス1の側面図、図1(c)はワイヤハーネス1の平面図である。図1、図4及び図5において、電線保護具10の隠れ線は、破線で描かれている。また、便宜上、図1において、第1の電線91、第2の電線92及び圧着部材8は二点鎖線で描かれている。さらに、図1(a)において、第1の電線91、第2の電線92及び圧着部材8を表す線は、隠れ線も含めて二点鎖線で描かれている。また、図2は、図1に示されるD−D平面の断面図(縦断面図)であり、図3は、図1に示されるE−E平面の断面図(横断面図)である。
【0028】
<電線及び圧着部材>
第1の電線91及び第2の電線92は、銅又はアルミニウムを主成分とする導体からなる芯線と、その芯線の周囲を覆う絶縁被覆と、により構成された絶縁電線である。第1の電線91は、その中間部の一部において絶縁被覆が剥がれており、第2の電線92は、その端部において絶縁被覆が剥がれている。
【0029】
そして、第2の電線92の端部の芯線は、第1の電線91の中間部の芯線に対して圧着部材8により接合されている。図2及び図3に示されるように、圧着部材8は、第1の電線91の中間部の芯線と第2の電線92の端部の芯線とを束ねる状態で両芯線に対してかしめられている。これにより、第2の電線92の端部は、第1の電線91の中間部に対して接合され、第2の電線92は、幹線を形成する第1の電線91の中間部から枝分かれした枝線を形成する。以下、第1の電線91及び第2の電線92における圧着部材8で接合された部分及びその圧着部材8のことを接合部80と称する。
【0030】
<電線保護具>
電線保護具10は、接合された第1の電線91及び第2の電線92における接合部80に取り付けられ、接合部80を保護する用具である。電線保護具10は、第1の電線91及び第2の電線92における接合部80をその両側から挟み込んで組み合わされる2つの分割部材100からなる。
【0031】
2つの分割部材100は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる一体成形部材である。本実施形態では、電線保護具10を構成する2つの分割部材100は同じ形状で形成されている。
【0032】
図1から図5に示されるように、電線保護具10は、2つの電線挟持部20と、それらを連結する連結部30とにより構成されている。また、電線挟持部20には、支持部11と、鍔部12と、起立部13と、ロック用突起部14と、ロック用孔15と、位置決め用突起部16と、位置決め用穴17とが形成されている。
【0033】
<電線保護具:支持部>
支持部11は、第2の電線92が引っ掛けられ、その第2の電線92を支持する部分であるとともに、接合部80を収容する部分でもある。支持部11は、2つの分割部材100各々に2分割されて形成された2つの部分が組み合わされた構造を有している。図5に示される支持部11は、組み合わされる2つの部分のうちの一方である。
【0034】
図2に示されるように、支持部11は、第2の電線92が引っ掛けられることにより、第2の電線92を外縁に沿って折り返された状態で支持する。本実施形態においては、支持部11における前記第2の電線92が沿う外縁は、正八角形の角部を形成している。そのため、第2の電線92における支持部11に支持された部分は、正八角形の各辺に沿う状態で折れ曲がる。なお、正八角形は、全ての角が鈍角である多角形の一例である。
【0035】
また、支持部11は、第1の電線91の通路となる貫通孔111が形成されており、その貫通孔111の一部が、接合部80を収容する収容部112となっている。収容部112は、接合部80が嵌り込む形状で形成されている。収容部112の一部は、接合部80の角部、即ち、圧着部材8の角部に引っ掛かることにより、接合部80が収容部112から抜け出る方向への動くことを妨げる。
【0036】
また、電線保護具10は、間隔を空けて配置された2つの支持部11を備える。そのため、電線保護具10は、図2に示されるように、第2の電線92を、一方の支持部11で一回折り返した後、他方の支持部11で再度折り返した状態で支持することができる。そのため、第2の電線92を、接合部80における分岐方向と同じ方向へ分岐させることができる。もちろん、電線保護具10は、一方の支持部11のみを用いることにより、第2の電線92を、接合部80における分岐方向に対して反対の方向へ分岐させることもできる。
【0037】
<電線保護具:鍔部>
鍔部12は、支持部11の端から外側への第2の電線92の位置ずれを制限する部分である。鍔部12は、その機能を果たすため、支持部11の両端部から第2の電線92が配設される領域113の両側を遮って張り出して形成されている。本実施の形態では、鍔部12は、支持部11の周囲の全方向に亘って張り出したフランジ状に形成されている。しかしながら、鍔部12は、支持部11の周囲の全方向における一部の方向にのみ張り出した形状で形成されてもよい。
【0038】
また、本実施の形態において、2つの電線挟持部20を繋ぐ連結部30は、2つの電線挟持部20各々の鍔部12に連なって形成されている。
【0039】
<電線保護具:起立部>
起立部13は、鍔部12の内側の面に起立して形成され、支持部11に対して第2の電線92が配設される領域113を挟んで対向する可撓性を有する部分である。この起立部13は、支持部11における第2の電線92が沿う面から離れる方向への第2の電線92の位置ずれを制限する。即ち、起立部13は、第2の電線92の張力が緩んだときに第2の電線92が支持部11から浮き上がることを防止する。
【0040】
また、起立部13は、板状に形成されているため、第2の電線92が外側から内側の領域113へ押し入れられると撓む。起立部13が一時的に撓むことにより、起立部13の外側から内側への第2の電線92の挿入経路が形成される。
【0041】
<電線保護具:ロック機構及び位置決め機構>
図5に示されるように、分割部材100には、2つの電線挟持部20各々の半分を構成する第1分割挟持部201と第2分割挟持部202とが形成されている。第1分割挟持部201と第2分割挟持部202とは、一部の形状が異なる。第1分割挟持部201には、ロック用突起部14と位置決め用突起部16とが形成されている。一方、第2分割挟持部202には、ロック用孔15と位置決め用穴17とが形成されている。ロック用孔15は貫通孔である。一方、位置決め用穴17は窪み状の穴である。なお、第1分割挟持部201と第2分割挟持部202とにおいて、その他の構成要素は同じである。
【0042】
2つの分割部材100が正しい向き及び位置関係で相互に押し付けられると、一方の分割部材100の位置決め用突起部16が、他方の分割部材100の位置決め用穴17に嵌り込む。これにより、2つの分割部材100は、相互に離間する方向以外の方向における相対的な位置が固定される。即ち、位置決め用突起部16及び位置決め用穴17は、2つの分割部材100の相対的な位置を固定する位置決め機構を構成する。
【0043】
また、2つの分割部材100が、正しい向き及び位置関係で相互に押し付けられると、一方の分割部材100のロック用突起部14が、他方の分割部材100のロック用孔15を貫通する。さらに、ロック用突起部14の先端において側方に張り出して形成された爪部141が、電線挟持部20の外側の面におけるロック用孔15の縁部に引っ掛かる。これにより、2つの分割部材100は、組み合わされた状態で保持される。即ち、ロック用突起部14及びロック用孔15は、2つの分割部材100を組み合わされた状態で保持するロック機構を構成する。
【0044】
また、位置決め機構において、位置決め用突起部16と位置決め用穴17との間にあそびは設けられていない。そのため、位置決め機構は、2つの分割部材100をガタ無く位置決めする。そのため、ロック機構に多少のあそびが設けられていても、組み合わされた2つの分割部材100がガタつくことがない。
【0045】
<効果>
ワイヤハーネス1において、第1の電線91は幹線を構成し、第2の電線92は枝線を構成する。第2の電線92は、支持部11の外縁に沿って、接合部80における第1の電線91からの分岐方向に対して少なくとも1回以上折り返される。
【0046】
そのため、第1の電線91に加わる引っ張り力の大部分は、支持部11に作用し、接合部80に加わる力は大幅に緩和される。従って、細い電線が、第1の電線91及び第2の電線92として採用された場合でも、接合部80の接合が外れにくい。
【0047】
また、第2の電線92線は、支持部11の外縁に沿って折り返される。そのため、支持部11の外縁の形状が比較的曲率の小さな形状であれば、第2の電線92が支持部11に沿う部分で鋭角に折れ曲がって破損することは防止される。
【0048】
しかも、電線保護具10を構成する2つの分割部材100は、第1の電線91の中間部に存在する第2の電線92との接合部80を、その両側から挟み込むことによって保護する。
【0049】
即ち、電線保護具10は、接合部80を電気的に絶縁して保護する保護機能と、第2の電線92に加わる引っ張り力に応じて接合部80に加わる力を緩和する外力緩和機能とを備える。従って、電線保護具10が採用された場合、保護機能を実現する部材と外力緩和機能を実現する部材とを個別に取り付ける必要がなく、ワイヤハーネス1作製の工程を簡素化できる。
【0050】
ところで、ワイヤハーネス1において、第2の電線92が支持部11に対して滑りやすいと、接合部80に加わる力を緩和する効果が低減する。そのため、電線保護具10においては、支持部11における第2の電線92が沿う外縁が、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成している。そのため、第2の電線92は、支持部11に沿う部分において、曲げ部と直線部とが順次連続する状態で折り返される。そのため、第2の電線92の曲げ部における支持部11に対する摩擦抵抗が大きくなり、第2の電線92は、支持部11に対して滑りにくい。その結果、接合部80に加わる力が、より確実に緩和される。
【0051】
また、電線保護具10は、ロック用突起部14及びロック用孔15からなるロック機構を備えている。そのため、電線保護具10を電線に取り付ける作業が簡素化される。即ち、2つの分割部材100を組み合わされた状態で固定するために、粘着テープを巻き付ける又は溶着するなどの煩雑な作業が不要となる。
【0052】
また、電線保護具10において、鍔部12が形成されているため、第2の電線92が、支持部11に沿って位置づれして支持部11の端からその外側へ外れることを防止できる。さらに、電線保護具10に起立部13が形成されているため、第2の電線92の張力が緩んだときに、第2の電線92が支持部11から外れることを防止できる。
【0053】
また、電線保護具10を構成する2つの分割部材100が同じ形状で形成されているため、部材の種類が少なくなり、電線保護具10の製造工程及び電線保護具10を電線に取り付ける工程が簡素化される。
【0054】
<第2実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電線保護具10Aについて説明する。電線保護具10Aは、図1から図5に示された電線保護具10と比較して、第2の電線92を支持する支持部の構成のみが異なる。図6において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具10Aにおける電線保護具10と異なる点についてのみ説明する。
【0055】
図6は、電線保護具10Aを構成する分割部材100Aの3面図である。電線保護具10Aを構成する2つの分割部材100Aも、電線保護具10を構成する2つの分割部材100と同様に、同じ形状で形成されている。
【0056】
また、図6に示されるように、電線保護具10Aの支持部11Aも、電線保護具10の支持部11と同様に、第2の電線92が引っ掛けられることにより、第2の電線92を外縁に沿って折り返された状態で支持する。さらに、支持部11における前記第2の電線92が沿う外縁は、正八角形の角部を形成している。
【0057】
しかしながら、電線保護具10Aの支持部11Aは、正八角形の角部を形成する8つの単位支持部110A,110Bで構成されている。図6に示される例では、支持部11Aは、4つの第1の単位支持部材110Aと、4つの第2の単位支持部材110Bとで構成されている。4つの第1の単位支持部材110Aは、電線保護具10の支持部11と同様に、その内側に接合部80を収容する収容部112を形成している。
【0058】
一方、4つの第2の単位支持部材110Bは、引っ掛けられた第2の電線92を支持する機能のみを果たす。
【0059】
<効果>
図6に示される電線保護具10Aが採用されることにより、電線保護具10が採用される場合と同じ効果が得られ、さらに、電線保護具10Aの軽量化の効果も得られる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス1Bについて説明する。ワイヤハーネス1Bは、本発明の第3実施形態に係る電線保護具10Bを備える。電線保護具10Bは、図1から図5に示された電線保護具10と比較して、第2の電線92を支持する部分の数のみが異なる。図7において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具10Bにおける電線保護具10と異なる点についてのみ説明する。
【0061】
図7は、ワイヤハーネス1Bの縦断面図であり、その断面は、図2に示されるワイヤハーネス1の断面図が示すD−D断面に相当する。
【0062】
図7に示されるように、電線保護具10Bは、第1の電線挟持部20Bと第2の電線挟持部20とそれらを連結する連結部30とを有する。第2の電線挟持部20及び連結部30は、電線保護具10の電線挟持部20及び連結部30と同じである。
【0063】
一方、電線保護具10Bにおける第1の電線挟持部20Bは、電線保護具10における一方の電線挟持部20から、鍔部12及び起立部13が除かれた構造を有している。即ち、第1の電線挟持部20Bに形成された支持部11Bは、その内側に接合部80を収容する収容部12が形成されているが、外縁に沿って第2の電線92を支持する機能は備えていない。
【0064】
一方、第2の電線挟持部20は、外縁に沿って第2の電線92を支持する機能を有している。従って、電線保護具10Bは、図7に示されるように、第2の電線92を、第2の電線挟持部20の支持部11で一回折り返す状態で支持することができる。
【0065】
また、図示されていないが、第2の電線92が第2の電線挟持部20の支持部11に巻き付けられることにより、電線保護具10Bは、第2の電線92を二回以上折り返す状態で支持することもできる。図7に示されるようなワイヤハーネス1も、本発明の実施形態の一つである。
【0066】
<その他>
電線保護具10,10A,10Bにおいて、支持部11,11Aの外縁は、正八角形の角部を形成しているが、それ以外の多角形の各角部を形成してもよい。但し、第2の電線92が鋭角に折れ曲がることを避けるため、支持部11,11Aの外縁は、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成することが望ましい。
【0067】
また、電線保護具10,10Aにおいて、支持部11,11Aと第2の電線92との間の摩擦抵抗が十分高い場合には、支持部11,11Aの外縁が、円又は楕円などの湾曲した形成で形成されてもよい。例えば、支持部11,11Aの外縁部分に、第2の電線92に対する摩擦抵抗を高めるための凹凸が設けられることなどが考えられる。
【符号の説明】
【0068】
1,1B ワイヤハーネス
8 圧着部材
10,10A,10B 電線保護具
11,11A,11B 支持部
12 鍔部
12 収容部
13 起立部
14 ロック用突起部
15 ロック用孔
16 位置決め用突起部
17 位置決め用穴
20 電線挟持部(第2の電線挟持部)
20B 第1の電線挟持部
30 連結部
80 接合部
91 第1の電線
92 第2の電線
100,100A 分割部材
110A,110B 単位支持部
111 貫通孔
112 収容部
113 第2の電線が配設される領域
141 爪部
201 分割挟持部
202 分割挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電線及び該第1の電線の中間部に接合された第2の電線を備えたワイヤハーネスに取り付けられ、前記第1の電線及び前記第2の電線の接合部を保護する電線保護具であって、
前記第1の電線及び前記第2の電線の接合部を挟み込んで組み合わされる2つの絶縁部材からなり、
前記第2の電線が引っ掛けられ前記第2の電線を外縁に沿って折り返された状態で支持する支持部が形成されていることを特徴とする電線保護具。
【請求項2】
前記支持部における前記第2の電線が沿う外縁は、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成する、請求項1に記載の電線保護具。
【請求項3】
前記支持部は、全ての角が鈍角である多角形の各角部を形成する複数の単位支持部からなる、請求項2に記載の電線保護具。
【請求項4】
前記2つの絶縁部材を組み合わされた状態で保持するロック部がさらに形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項5】
前記支持部の両端部から前記第2の電線が配設される領域の両側を遮って張り出して形成され、前記支持部の端から外側への前記第2の電線の位置ずれを制限する第1の規制部がさらに形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項6】
前記支持部に対して前記第2の電線が配設される領域を挟んで対向する可撓性を有する部分であり、前記支持部における前記第2の電線が沿う面から離れる方向への前記第2の電線の位置ずれを制限する第2の規制部がさらに形成されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項7】
当該電線保護具を構成する前記2つの絶縁部材は同じ形状で形成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項8】
第1の電線と
前記第1の電線の中間部に接合された第2の電線と、
前記第1の電線及び前記第2の電線の接合部を挟み込んで組み合わされた2つの絶縁部材からなり、前記第2の電線が引っ掛けられ前記第2の電線を外縁に沿って折り返された状態で支持する支持部が形成された電線保護具を備えることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9547(P2013−9547A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141438(P2011−141438)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】