説明

電線結合構造、電線結合方法及び電線

【課題】第1導線及び第2導線のそれぞれの径が異なる場合であっても、第1導線の端部と第2導線の端部とを確実に結合できる電線結合構造、電線結合方法及びこれらに用いられる電線を提供する。
【解決手段】本発明に係る電線結合構造1では、第1電線10に設けられる第1導線11の端部11Aと、第2電線20に設けられるとともに、第1導線11の径と異なる径を有する第2導線21の端部21Aとが結合される。第2導線21の端部21Aは、電線長手方向LDに直交する電線短手方向SDにおける第1導線11の断面形状と一致した状態で第1導線11の端部と加圧溶接により結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線の端部同士を結合する電線結合構造、電線結合方法及びこれらに用いられる電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導線の端部同士、具体的には、第1電線に設けられる第1導線の端部と、第2電線に設けられる第2導線の端部とを冷間圧接により結合させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、冷間圧接とは、第1導線及び第2導線(金属材料)のそれぞれの端部を加圧変形させることにより相互間で原子結合(金属結合)を起こすことにより互いを結合させる方法である。つまり、第1導線及び第2導線のそれぞれの端部における端面には、空気中の酸素と結合して酸化膜が形成されている。この酸化膜を除去して、第1導線及び第2導線のそれぞれの端部で原子結合を起こすことにより互いに結合される。
【0003】
ここで、冷間圧接を行う条件として、第1導線及び第2導線のそれぞれの径は、同一(同径)である必要がある。これにより、第1導線の端部と第2導線の端部とが冷間圧接により強固に結合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−40382号公報(第1〜第2頁、第1及び第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、第1導線及び第2導線のそれぞれの径が同一であるため、第1導線及び第2導線のそれぞれの径が異なる場合、酸化膜の除去や原子結合(金属結合)が完全に行われない箇所が生じてしまう。この結果、第1導線の端部と第2導線の端部とを結合し難いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、第1導線及び第2導線のそれぞれの径が異なる場合であっても、第1導線の端部と第2導線の端部とを確実に結合できる電線結合構造、電線結合方法及びこれらに用いられる電線の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、第1電線(第1電線10)に設けられる第1導線(第1導線11)の端部(端部11A)と、第2電線(第2電線20)に設けられるとともに前記第1導線の径と異なる径を有する第2導線(第2導線21)の端部(端部21A)と、が結合される電線結合構造(電線結合構造1)であって、前記第2導線の端部は、電線長手方向(電線長手方向LD)に直交する電線短手方向(電線短手方向SD)における前記第1導線の断面形状と一致した状態で前記第1導線の端部と加圧溶接により結合されることを要旨とする。
【0008】
かかる特徴によれば、第2導線の端部は、第1導線の断面形状と一致した状態で第1導線の端部と加圧溶接により結合される。これにより、第1導線及び第2導線のそれぞれの径が異なる場合であっても、酸化膜の除去や原子結合(金属結合)が行われない箇所が生じることなく、第1導線の端部及び第2導線の端部とを確実に結合させることができる。この結果、自動車用のワイヤーハーネスにおいて、使用可能な部位が増大し、端部同士を結合するための部品(端子等)が不要になることによるコストの低減や軽量化、小型化などに寄与する。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記加圧溶接は、前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とを加圧変形させることにより相互間で原子結合を起こす冷間圧接であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係り、前記第2導線は、複数の導線によって構成されることを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、第1電線に設けられる第1導線の端部と、第2電線に設けられるとともに前記第1導線の径と異なる径を有する第2導線の端部と、を結合する電線結合方法であって、電線長手方向に直交する電線短手方向における前記第1導線の断面形状と一致するように、前記第2導線の端部を加工するステップ(ステップA)と、前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とを加圧溶接により結合するステップ(ステップB)とを含むことを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記第2導線の端部を加工するステップでは、前記第2導線の端部を熱又は圧力によって前記第1導線の断面形状と一致させることを要旨とする。
【0013】
本発明の第6の特徴は、相手側の被結合導線(第1導線11)の端部(端部11A)に結合されるとともに前記被結合導線の径と異なる径を有する結合導線(第2導線21)を備えた電線(第2電線20)であって、前記結合導線の端部(端部21A)は、電線長手方向に直交する電線短手方向における前記被結合導線の断面形状と一致するように加工されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特徴によれば、第1導線及び第2導線のそれぞれの径が異なる場合であっても、第1導線の端部と第2導線の端部とを確実に結合できる電線結合構造、電線結合方法及びこれらに用いられる電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態に係る電線結合構造1を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、本実施形態に係る第1電線10のみを示す斜視図であり、図2(b)は、本実施形態に係る第1導線11を示す正面図(図2(a)のA矢視図)である。
【図3】図3(a)は、本実施形態に係る第2電線20のみを示す斜視図であり、図3(b)は、本実施形態に係る第2導線21を示す正面図(図3(a)のB矢視図)である。
【図4】図4(a)は、第2導線21の端部21Aの加工処理前を示す斜視図であり、図4(b)は、第2導線21の端部21Aの加工処理中を示す斜視図であり、図4(c)は、第2導線21の端部21Aの加工処理中を示す断面図であり、図4(d)は、第2導線21の端部21Aの加工処理後を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、加工処理前の第2導線21を示す斜視図であり、図5(b)は、加工処理後の第2導線21を示す斜視図であり、図5(c)は、第1導線11と第2導線21とを示す側面図であり、図5(d)は、第1導線11と第2導線21との結合を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る電線結合構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)電線結合構造の構成、(2)第2導線の端部の加工処理、(3)電線結合方法、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。
【0017】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0018】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0019】
(1)電線結合構造の構成
まず、本実施形態に係る電線結合構造1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電線結合構造1を示す斜視図である。図2(a)は、本実施形態に係る第1電線10のみを示す斜視図であり、図2(b)は、本実施形態に係る第1導線11を示す正面図(図2(a)のA矢視図)である。図3(a)は、本実施形態に係る第2電線20のみを示す斜視図であり、図3(b)は、本実施形態に係る第2導線21を示す正面図(図3(a)のB矢視図)である。
【0020】
図1に示すように、電線結合構造1では、第1電線10に設けられる第1導線11の端部11Aと、第2電線20に設けられる第2導線21の端部21Aとが結合される。
【0021】
第1電線10は、図1及び図2に示すように、単線からなる「相手側の被結合導線」としての第1導線11と、第1導線11を被覆する第1絶縁体12とによって形成されている。また、電線長手方向LDに直交する電線短手方向SDにおける第1導線11の断面形状は、略円形状をなしている。この第1導線11の端部11Aは、第2電線20(第2導線21の端部21A)に結合される。
【0022】
第2電線20は、図1及び図3に示すように、複数(本実施形態では、7本)の導線が撚られることによって構成される「結合導線」としての第2導線21と、第2導線21を被覆する第2絶縁体22とによって形成されている。また、第2導線21は、第1導線11の径と異なる径を有している。さらに、電線短手方向SDにおける第2導線21の断面形状は、加工処理前において上述した第1導線11の断面形状と異なっている(図3(b)及び図4(a)参照)。このため、図1及び図3に示すように、第2導線21の端部21Aは、加工処理(熱又は圧力)によって第1導線11の断面形状と一致するように加工される。つまり、第2導線21の端部21Aは、第1導線11の断面形状と一致した状態で第1導線11の端部11Aと加圧溶接により結合される。
【0023】
なお、ここで示す「一致」とは、必ずしも第2導線21の端部21Aが第1導線11の断面形状と完全に一致するものに限らず、多少の誤差(±10mm)を含む範囲内であればよい。
【0024】
また、加圧溶接(圧接)とは、結合面(接合面)を溶融させずに結合部(溶接継手)に機械的圧力や熱を加えることで溶接する溶接法の総称を示す。例えば、加圧溶接には、摩擦圧接、鍛接、拡散接合、熱間圧接、冷間圧接、爆発圧接、ガス圧接などの圧接方法が挙げられる。
【0025】
本実施形態では、加圧溶接として、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとを加圧変形させることにより相互間で原子結合を起こす冷間圧接であるものとする。すなわち、本実施形態では、第1導線11及び第2導線21は、冷間圧接が可能な材料(例えば、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛、銀、金、ニッケル、真鍮、マグネシウム、鉛)によって形成される。
【0026】
(2)第2導線の端部の加工処理
次に、上述した第2導線21の端部21Aの加工処理について、図面を参照しながら説明する。図4(a)は、第2導線21の端部21Aの加工処理前を示す斜視図であり、図4(b)は、第2導線21の端部21Aの加工処理中を示す斜視図であり、図4(c)は、第2導線21の端部21Aの加工処理中を示す断面図であり、図4(d)は、第2導線21の端部21Aの加工処理後を示す斜視図である。
【0027】
第2導線21の端部21Aの加工処理は、端部加工用装置100を用いて行われる。この端部加工用装置100は、図4に示すように、第2導線21の端部21Aの一側を加工するダイス110と、ダイス110に嵌合されるとともに第2導線21の端部21Aの他側を加工するパンチ120とによって構成される。
【0028】
ダイス110には、パンチ120が挿入される略矩形状の溝部111が形成される。この溝部111の底面には、第2導線21の端部21Aの一側を加工する半円状の加工溝112が形成される。また、パンチ120の一端(ダイス110に嵌合される側)には、第2導線21の端部21Aの他側を加工する半円状の加工溝121が形成される。
【0029】
まず、図4(a)に示すように、ダイス110の加工溝112に第2導線21の端部21Aをセットする。このとき、第2導線21の断面形状は、第1導線11の断面形状と異なっている。
【0030】
次いで、図4(b)及び図4(c)に示すように、ダイス110の溝部111内にパンチ120が嵌合し、加工溝112及び加工溝121は、一致することによって断面円形状となる。この加工溝112及び加工溝121内において、第2導線21の端部21Aに加工処理(熱又は圧力)が施され、第2導線21の端部21Aを第1導線11の断面形状と一致するような円形状に圧縮する。
【0031】
そして、図4(d)に示すように、第2導線21の端部21Aに加工処理が施された後、ダイス110の溝部111からパンチ120が外れて、第2導線21を端部加工用装置100(加工溝112)から引き抜く。これにより、第1導線11の断面形状と一致する第2導線21の端部21Aが形成される。
【0032】
(3)電線結合方法
次に、上述した第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとを結合する電線結合方法について、図面を参照しながら説明する。図5(a)は、加工処理前の第2導線21を示す斜視図であり、図5(b)は、加工処理後の第2導線21を示す斜視図であり、図5(c)は、第1導線11と第2導線21とを示す側面図であり、図5(d)は、第1導線11と第2導線21との結合を示す側面図である。
【0033】
電線結合方法には、第2導線21の端部21Aを加工するステップAと、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとを結合するステップBとが少なくとも含まれる。
【0034】
図5(a)に示すように、第2導線21の断面形状は、加工処理前において第1導線11の断面形状と異なっている。このため、図5(b)及び図5(c)に示すように、ステップAにおいて、上述した加工処理(熱又は圧力)によって第2導線21の断面形状と一致するように、第2導線21の端部21Aを加工する。
【0035】
次いで、図5(d)に示すように、ステップBにおいて、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとを加圧溶接(本実施形態では、冷間圧接)により結合する。具体的には、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとには、空気中の酸素と結合して酸化膜が形成されている。この酸化膜を除去して、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとで原子結合を起こすことにより互いに結合される。
【0036】
(4)作用・効果
以上説明した本実施形態では、第2導線21の端部21Aは、第1導線11の断面形状と一致した状態で第1導線11の端部11Aと加圧溶接により結合される。これにより、第1導線11及び第2導線21のそれぞれの径が異なる場合であっても、酸化膜の除去や原子結合(金属結合)が行われない箇所が生じることなく、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとを確実に結合させることができる。この結果、自動車用のワイヤーハーネスにおいて、使用可能な部位が増大し、端部同士を結合するための部品(端子等)が不要になることによるコストの低減や軽量化、小型化などに寄与する。
【0037】
また、本実施形態では、加圧溶接として、冷間圧接である。これにより、第1導線11の端部11Aと第2導線21の端部21Aとの結合における信頼性をより高めることができる。さらに、第2導線21が複数の導線が撚られることによって構成される場合など、第1導線11の径や断面形状と異なる場合において特に有効となる。
【0038】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0039】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、加圧溶接として、冷間圧接であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、その他の圧接方法であってもよい。
【0040】
また、第2導線21は、複数(本実施形態では、7本)の導線によって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、加工処理前に第2導線21の端部21Aが第1導線11の径や断面形状と異なっていればよく、単線であってもよい。
【0041】
また、第2導線21の端部21Aの加工処理は、端部加工用装置100を用いて行われるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、第2導線21の端部21Aを圧縮加工できればよく、その他の装置や治具であってもよい。
【0042】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0043】
1…電線結合構造
10…第1電線
11…第1導線(被結合導線)
11A…第1導線の端部
12…第1絶縁体
20…第2電線(電線)
21…第2導線(結合導線)
21A…第2導線の端部
22…第2絶縁体
LD…電線長手方向
SD…電線短手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電線に設けられる第1導線の端部と、第2電線に設けられるとともに前記第1導線の径と異なる径を有する第2導線の端部と、が結合される電線結合構造であって、
前記第2導線の端部は、電線長手方向に直交する電線短手方向における前記第1導線の断面形状と一致した状態で、前記第1導線の端部と加圧溶接により結合されることを特徴とする電線結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電線結合構造であって、
前記加圧溶接は、前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とを加圧変形させることにより相互間で原子結合を起こす冷間圧接であることを特徴とする電線結合構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電線結合構造であって、
前記第2導線は、複数の導線によって構成されることを特徴とする電線結合構造。
【請求項4】
第1電線に設けられる第1導線の端部と、第2電線に設けられるとともに前記第1導線の径と異なる径を有する第2導線の端部と、を結合する電線結合方法であって、
電線長手方向に直交する電線短手方向における前記第1導線の断面形状と一致するように、前記第2導線の端部を加工するステップAと、
前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とを加圧溶接により結合するステップBと
を含むことを特徴とする電線結合方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電線結合方法であって、
前記第2導線の端部を加工するステップAでは、前記第2導線の端部を熱又は圧力によって前記第1導線の断面形状と一致させることを特徴とする電線結合方法。
【請求項6】
相手側の被結合導線の端部に結合されるとともに前記被結合導線の径と異なる径を有する結合導線を備えた電線であって、
前記結合導線の端部は、電線長手方向に直交する電線短手方向における前記被結合導線の断面形状と一致するように加工されていることを特徴とする電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−20833(P2013−20833A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153678(P2011−153678)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】