説明

電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法

【課題】本発明は、造管後であっても、オンラインで電縫鋼管の中継ぎ溶接部を従来より精度良く検出可能な電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法を提供することを目的としている。
【解決手段】製造ライン上を走行する先行鋼帯の後端部に後行鋼帯の先端部を溶接して、鋼帯に中継ぎ溶接部を形成させた後、該鋼帯を円筒状に成形し、突き合わせた幅方向両端部を溶接して電縫鋼管に造管してから、該電縫鋼管に存在する前記中継ぎ溶接部を検出する技術である。具体的には、前記電縫鋼管に近接して高周波電圧を印加するコイルを配置し、該コイルが発する高周波磁束により該電縫鋼管内に生じる渦電流を常時測定し、その測定値を一定の閾値と比較して、その大小で中継ぎ溶接部の位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法に係わり、電縫鋼管の素材である鋼帯(スケルプともいう)の中継溶接部を、該鋼帯を円筒状に成形、突き合わせた幅方向両端を溶接し、管体となしてからオンラインで検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管は、図4に示すように、アンコイラで素材となるコイル状鋼帯1を巻き戻し、該鋼帯1を走行させた状態で、その進行方向に多段に配置した成形ロール群2によって円筒状に連続的に成形した後、突き合わせた鋼帯の幅方向端部をインダクション・ヒータ3及びスクイズ・ロール4からなる接合装置で溶接して一応の管体5とする。そして、接合部分(シーム部という)の内外面に生じたビード(図示していないが、管の長手方向にジュズ状につらなる溶着物の盛り上がり)を切削手段6で除去し、超音波探傷器7での疵検査、シーム・アニラーなる焼鈍装置8で焼鈍、水噴射ノズル9での水冷を行った後、ストレッチ・レデューサ又はサイザーのような絞り圧延機10で管の寸法を調整し、製品の電縫鋼管16とされる。
【0003】
かかる電縫鋼管の製造では、アンコイラーから巻き戻され、成形ロール群2に供給される鋼帯1(以下、先行鋼帯という)の後端部に、次に巻き戻される鋼帯1´(以下、後行鋼帯という)の先端部を接合して操業が行われるのが一般的である。これは、素材供給の連続性を高め、電縫鋼管の生産性の向上を図るためである。そして、その接合は、図3に示すレベラー11(鋼帯の面を平滑にするローラ)の上流側に走間溶接機12を配置して行われ、鋼帯1の接合された部分は中継ぎ溶接部あるいは中継ぎ溶接点13と称される。
【0004】
ところで、電縫鋼管の製品がこの中継ぎ溶接部を含むと、その部分は欠陥になるので、製品としてはその部分を含む電縫鋼管を排除する必要がある。そのため、従来は、鋼帯の中継溶接部に貫通するパンチホールを開け,後にそのパンチホールをバックライト及びCCDカメラで検出する技術が従来よりあった。つまり、鋼帯を造管した後に中継ぎ溶接部をオンラインで検出することが行われていたのである。また、溶接で形成された微少な突起をレーザーで検出する試みもあった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、そのような技術は、造管工程後に該中継ぎ溶接部をオンラインで検出するには精度が良くなかった。特に、中継ぎ溶接部の微少な突起や窪みをレーザ距離計等の変位計で計測して中継ぎ溶接部と判定するには、以下のような問題があり、精度の良い中継ぎ溶接部位置の判定ができなかった。
(1)溶接部の研磨(手入れ)の程度により、突起や窪みの発生量にばらつきがある、
(2)実際のオンラインでは、鋼管の移動、切断時の振動等に起因して検出端と検出材までの間隔を常時一定に保つことが難しい
【特許文献1】特開昭50−086465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、造管後であっても、オンラインで電縫鋼管の中継ぎ溶接部を従来より精度良く検出可能な電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0008】
すなわち、本発明は、製造ライン上を走行する先行鋼帯の後端部に後行鋼帯の先端部を溶接して、鋼帯に中継ぎ溶接部を形成させた後、該鋼帯を円筒状に成形し、突き合わせた幅方向両端部を溶接して電縫鋼管に造管してから、該電縫鋼管に存在する前記中継ぎ溶接部を検出するに際して、前記電縫鋼管に近接して高周波電圧を印加するコイルを配置し、該コイルが発する高周波磁束により該電縫鋼管内に生じる渦電流を常時測定し、その測定値を一定の閾値と比較して、その大小で中継ぎ溶接部の位置を判定することを特徴とする電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法である。この場合、前記閾値を、前記中継ぎ溶接部以外の位置で測定した渦電流値とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電縫鋼管の中継ぎ溶接部が従来より精度良く、安定して検出できるようになる。その結果、製造した電縫鋼管のうち、クロップとして切断除去される長さ(部分)が従来より格段に低減し、製品歩留りが向上すると共に、製造コストの低下が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
【0011】
まず、発明者は、上記目的を達成する手段について検討を重ねたところ、鋼材の過流探傷装置の原理が利用できるのではないかと考えた。そして、その考えを実現させる種々の試みを行い、本発明を完成させた。
【0012】
つまり、図1に示すように、コイル14に高周波電圧を印加すると、印加された高周波電圧により高周波電流がコイル14に発生し、さらに該コイル14に発生した高周波電流により高周波磁束15が発生する。そのため、コイル14を前記管体5の表面近傍から一定距離離隔して配置すると、その高周波磁束15が差交し、該高周波磁束15により渦電流17が管体5内に発生する。
【0013】
一方、管体5に存在する前記中継ぎ溶接部13は、高温で溶融、溶接されているので、該中継ぎ溶接部以外の部分に比較してインピーダンスが大きい(透磁率が小さい)。これは、中継ぎ溶接部13で発生する渦電流値が、それ以外の部分に比べて低くなることを示唆している。従って、製造ライン上にある位置を定めて前記コイル14を配置し、走行する管体5の直近に配置したコイル14の端子電流の値を常時測定すれば、該中継ぎ溶接部13がコイルを配設した位置を通過すると、図2に示すように他の部分より波高値が小さくなる。つまり、基準となる波高値を閾値として定め、その値と測定値との大小を比較することで、中継ぎ溶接部13を直接検出することができるようになる。その測定値は、管体5のサイズや走行速度等の影響を受けるので、閾値も管体5のサイズや走行速度に対応して変更すれば良い。
【0014】
なお、図4に示したような実際の電縫鋼管16の製造ラインでは、管体5の搬送、機械の稼動に起因した振動が生じ、測定に外乱(ノイズ)として影響を与える。該振動があると、コイルと鋼管とのギャップ(間隔)が変動する。つまり、ギャップの拡大で、コイルの基準電圧に対する電流の位相は進み、該ギャップの縮小で前記電流の位相は遅れるからである。そこで、本発明では、コイル14で発生した高周波電圧の図3に示すような位相を検知し、それで補正するようにしている。
【0015】
その補正は、前記ギャップ毎の位相差と中継ぎ判定用電流の波高値の閾値をテーブル化することで行う。この補正により、ギャップの変動に伴う中継ぎ位置の誤検出は解消する。
【0016】
本発明では、前記コイル14の製造ライン上での配設位置は特に限定しない。継目部の溶接が終了してから管体5を所定長さに切断するまでの間ならどこででも測定すれば良いからである。なお、鋼管の中継ぎ溶接部13の位置が判明したら、その情報はプロセス・コンピュータ(図示せず)に入力してトラッキングし、走間切断機12に該中継ぎ溶接部13が到達したらその部分を切断除去する。従って、従来に比較して、切断除去される部分が格段に短くなり、電縫鋼管16の製品歩留りが向上する。
【実施例】
【0017】
幅162.5mm×厚み2.5mmの鋼帯を素材にして、図4に示した製造工程を用いて外径50.8mmφの電縫鋼管を製造した。その際、本発明に係る電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法を適用し、その結果を適用しない従来の操業方法と比較した。
【0018】
その結果は、製品歩留り及び生産性として評価し、表1に一括して示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1によれば、本発明を適用すると、従来に比べ製品歩留り及び生産性が格段に向上することが明らかである。これは、電縫鋼管の製造コストを従来より低減できることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法を説明する図である。
【図2】本発明に係る電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法の実施で測定される渦電流の経時変化の一例を示す図である。
【図3】測定された高周波電圧の位相のずれを示す図である。
【図4】一般的な電縫鋼管の製造工程を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0022】
1 鋼帯(コイル状鋼帯、あるいは先行鋼帯も含む)
1´ 後行鋼帯
2 成形ロール群
3 インダクション・ヒータ
4 スクイズ・ロール
5 管体
6 切削手段
7 超音波探傷器
8 焼鈍装置
9 水噴射ノズル
10 絞り圧延機
11 レベラー
12 走間切断機
13 中継ぎ溶接部(中継ぎ溶接点)
14 コイル
15 高周波磁束
16 電縫鋼管(製品)
17 渦電流
18 エッジャー
19 中継ぎ溶接機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ライン上を走行する先行鋼帯の後端部に後行鋼帯の先端部を溶接して、鋼帯に中継ぎ溶接部を形成させた後、該鋼帯を円筒状に成形し、突き合わせた幅方向両端部を溶接して電縫鋼管に造管してから、該電縫鋼管に存在する前記中継ぎ溶接部を検出するに際して、
前記電縫鋼管に近接して高周波電圧を印加するコイルを配置し、該コイルが発する高周波磁束により該電縫鋼管内に生じる渦電流を常時測定し、その測定値を一定の閾値と比較して、その大小で中継ぎ溶接部の位置を判定することを特徴とする電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法。
【請求項2】
前記閾値を、前記中継ぎ溶接部以外の位置で測定した渦電流値とすることを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管中継ぎ溶接部の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−68759(P2006−68759A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253197(P2004−253197)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】