説明

電解質膜の寸法測定装置及び電解質膜の評価方法

【課題】電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置、及び、当該電解質膜の寸法測定装置を用いて電解質膜の特性を評価する、電解質膜の評価方法を提供する。
【解決手段】電解質膜の一端を固定する第1固定手段、及び、電解質膜の他端を固定する第2固定手段と、第1固定手段及び第2固定手段によって両端を固定された電解質膜へ張力を付与可能な張力付与手段と、第1固定手段と第2固定手段との距離を測定可能な測定手段と、張力付与手段の動作を制御可能な制御手段と、を備え、電解質膜の寸法測定時にのみ、張力付与手段を介して電解質膜へ張力が付与され、電解質膜の非寸法測定時には、電解質膜に張力が付与されない、電解質膜の寸法測定装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等に備えられる電解質膜の性能を評価する際に用いられる、電解質膜の寸法測定装置、及び、電解質膜の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質層(以下、「電解質膜」という。)と、電解質膜の両面側にそれぞれ配設される電極(アノード及びカソード)とを備える膜電極構造体(以下、「MEA」という。)における電気化学反応により発生した電気エネルギーを、MEAの両側にそれぞれ配設される集電体を介して外部に取り出す装置である。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等に使用される固体高分子型燃料電池(以下、「PEFC」という。)は、低温領域での運転が可能である。このPEFCは、高いエネルギー変換効率を示し、起動時間が短く、かつシステムが小型軽量であることから、電気自動車の動力源や携帯用電源として注目されている。
【0003】
PEFCの単セルは、電解質膜と、少なくとも触媒層を備えるアノード及びカソードと、を含み、その理論起電力は1.23Vである。PEFCの運転時には、アノードに水素含有ガス(以下、「水素」という。)が供給され、カソードに酸素含有ガス(以下、「空気」という。)が供給される。アノードへと供給された水素は、アノードの触媒層(以下、「アノード触媒層」という。)に含まれる触媒金属の作用下でプロトンと電子に分離し、水素から生じたプロトンは、アノード触媒層及び電解質膜を通ってカソードの触媒層(以下、「カソード触媒層」という。)へと達する。一方、電子は、外部回路を通ってカソード触媒層へと達し、かかる過程を経ることにより、電気エネルギーを取り出すことが可能になる。そして、カソード触媒層へと達したプロトン及び電子と、カソード触媒層へと供給される空気に含まれる酸素とが反応することにより、水が生成される。
【0004】
このように、PEFCの運転時には水が生成されるため、当該水を吸収することにより、電解質膜は膨張する。これに対し、PEFCの運転停止時には水が生成されないため、電解質膜は乾燥し、収縮する。それゆえ、PEFCの運転/停止が繰り返されると、電解質膜が膨張/収縮し、電解質膜の寸法が変化する。近年の研究により、寸法が変化しやすい電解質膜は耐久性が低下しやすく、当該電解質膜を備えるPEFCは、運転時間が増加するにつれて発電性能が低下しやすいという知見が得られている。それゆえ、燃料電池の発電性能を向上させるためには、寸法が変化しにくい(寸法変化率の小さい)電解質膜を開発することが重要である。
【0005】
寸法変化率の小さい電解質膜を備えるPEFCに関する技術は、これまでにいくつか開示されてきている。例えば、特許文献1には、パーフルオロカーボン重合体型電解質からなる燃料電池用電解質膜の水やメタノール等のアルコール類による膨潤を抑制し、寸法安定性を改良した燃料電池用電解質膜、電解質膜−電極接合体、燃料電池および燃料電池用電解質膜の製造方法に関する技術が開示されている。そして、特許文献1には、電解質膜の長さを定規で測定することが記載されている。また、特許文献2には、電池製造時及び使用時の、実質的な寸法変化が少ないPEFC用電解質膜の製造方法に関する技術が開示され、特許文献2にも、電解質膜の性能を評価する際に、その寸法変化率を算出することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−247182号公報
【特許文献2】特開2005−108537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これまでは、電解質膜の寸法を自動で測定する装置が存在しなかったため、電解質膜の重要な性質の一つである寸法変化率を算出する場合には、特許文献1にも記載されているように、電解質膜の寸法を定規で測定していた。ところが、従来のように手作業で電解質膜の寸法を測定すると、電解質膜の寸法を測定できる時間が作業者の立ち会える時間に限定され、手作業での測定を繰り返す間に誤って電解質膜を傷つけることがあるため、電解質膜の寸法を測定する際の効率が極めて低いという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置、及び、当該電解質膜の寸法測定装置を用いて電解質膜の特性を評価する、電解質膜の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
第1の本発明は、電解質膜の一端を固定する第1固定手段、及び、電解質膜の他端を固定する第2固定手段と、第1固定手段及び第2固定手段によって両端を固定された電解質膜へ張力を付与可能な、張力付与手段と、第1固定手段と第2固定手段との距離を測定可能な、測定手段と、張力付与手段の動作を制御可能な制御手段と、を備え、電解質膜の寸法測定時にのみ、張力付与手段を介して電解質膜へ張力が付与され、電解質膜の非寸法測定時には、電解質膜に張力が付与されないことを特徴とする、電解質膜の寸法測定装置である。
【0010】
ここに、第1の本発明において、「第1固定手段」及び「第2固定手段」は、電解質膜の一端及び他端を固定可能であれば、その形態は特に限定されない。第1の本発明にかかる第1固定手段及び第2固定手段の具体例としては、電解質膜の端部を挟むことにより、電解質膜の一端及び他端をそれぞれ固定する手段等を挙げることができる。さらに、第1の本発明、及び、以下に示す本発明(以下これらをまとめて単に「本発明」ということがある。)において電解質膜に付与される「張力」は、電解質膜に皺が生じた場合に当該皺を伸ばすために必要とされる最小の力以上であり、かつ、寸法を測定される電解質膜の弾性限以下であれば、特に限定されない。さらに、第1の本発明において、「張力付与手段」は、両端を固定された電解質膜に張力を付与可能であれば、その形態は特に限定されない。第1の本発明にかかる張力付与手段の具体例としては、電解質膜の中央部を押して両端を固定された電解質膜を伸ばすことにより、電解質膜に張力を付与する手段のほか、第1固定手段及び/又は第2固定手段を移動させて第1固定手段と第2固定手段との間隔を広げることにより、電解質膜に張力を付与する手段等を挙げることができる。さらに、第1の本発明において、「測定手段」は、第1固定手段と第2固定手段との距離を測定可能なものであれば特に限定されない。第1の本発明にかかる測定手段の具体例としては、赤外線センサーのように、波動(例えば、赤外線)を対象物(第1固定手段及び/又は第2固定手段)へ放出することにより、第1固定手段と第2固定手段との距離を測定する手段のほか、変位計等を挙げることができる。さらに、第1の本発明において、「制御手段」は、張力付与手段の動作を制御可能なものであれば、その形態は特に限定されない。第1の本発明にかかる制御手段の具体例としては、パーソナルコンピュータに備えられる中央処理装置(CPU)等を挙げることができる。さらに、本発明において、「電解質膜の非寸法測定時には、電解質膜に張力が付与されない」とは、電解質膜の非寸法測定時には張力が付与されないように、電解質膜が弛んだ状態で保持されることを意味する。
【0011】
上記第1の本発明において、少なくとも第2固定手段が移動可能に構成され、電解質膜の寸法測定時には、張力付与手段を介して、第1固定手段から遠ざかる向きの力を加えられた第2固定手段が移動することにより、電解質膜へ張力が付与され、電解質膜の非寸法評価時には、第1固定手段と第2固定手段との距離が、電解質膜が最も縮んだ時の第1固定手段と第2固定手段との距離よりも短くなるように、第1固定手段及び第2固定手段が配置されることが好ましい。
【0012】
ここに、「電解質膜が最も縮んだ時の第1固定手段と第2固定手段との距離」とは、内部の水分が略完全に取り除かれたと判断される電解質膜(以下、「乾燥時の電解質膜」という。)に生ずる皺を引き伸ばし、乾燥時の電解質膜に張力が加わる直前の状態における、第1固定手段と第2固定手段との距離を意味する。
【0013】
また、上記第1の本発明において、測定手段に、赤外線放出部と、該赤外線放出部から放出された赤外線を受ける赤外線受け部とが備えられ、赤外線受け部が第2固定手段に備えられることが好ましい。
【0014】
ここに、第1の本発明における赤外線放出部の具体例としては、赤外線センサーに備えられる赤外線放出部等を例示することができる。さらに、第1の本発明における赤外線受け部は、第2固定手段の一部分によって構成することができる。
【0015】
また、上記第1の本発明において、張力付与手段は、第2固定手段に一端が接続されたワイヤーと、ワイヤーの他端に接続された重りと、ワイヤーの一端と他端との間を支持する滑車と、重りを支持し得る上下動可能な第1支持部とを備え、第1固定手段と第2固定手段との間に、第2固定手段を支持可能な第2支持部が配置され、第1固定手段によって電解質膜の下端が固定されるとともに、第2固定手段によって電解質膜の上端が固定され、電解質膜の寸法測定時には、第1支持部が下方へ移動するように、上記制御手段によって第1支持部の動作が制御され、重り及びワイヤーを介して上向きの力が加えられた第2固定手段が上方へ移動することにより、電解質膜へ張力が付与され、電解質膜の非寸法測定時には、第1支持部が上方へ移動するように、上記制御手段によって第1支持部の動作が制御され、重力で下方へ移動した第2固定手段が第2支持部によって支持されることにより、電解質膜へ張力が付与されない状態とされることが好ましい。
【0016】
また、上記第1の本発明において、さらに、電解質膜を加湿する加湿手段と、電解質膜を乾燥させる乾燥手段と、が備えられ、測定手段によって、電解質膜の湿潤時の上記距離、及び、電解質膜の乾燥時の上記距離が測定されることが好ましい。
【0017】
ここに、第1の本発明における「加湿手段」は、電解質膜を加湿することが可能な手段であれば、その形態は特に限定されない。当該加湿手段の具体例としては、少なくとも第1固定手段及び第2固定手段によって両端を固定された電解質膜を収容可能な水槽及び当該水槽へ水を供給可能な配管が備えられる形態のほか、電解質膜を加湿する蒸気を放出可能な加湿器等が備えられる形態等を挙げることができる。さらに、第1の本発明における「乾燥手段」は、電解質膜に含有される水分を除去し得る手段であれば、その形態は特に限定されない。当該乾燥手段の具体例としては、電解質膜へ乾燥気体(例えば、相対湿度10%未満の乾燥空気等)を供給することが可能な送風機が備えられる形態等を挙げることができる。さらに、「電解質膜の湿潤時の上記距離」とは、加湿された電解質膜の両端を固定している第1固定手段と第2固定手段との距離を意味する。さらに、「電解質膜の乾燥時の上記距離」とは、乾燥した電解質膜の両端を固定している第1固定手段と第2固定手段との距離を意味する。
【0018】
また、加湿手段及び乾燥手段が備えられる上記第1の本発明において、加湿手段は、少なくとも第1固定手段及び第2固定手段を収容する水槽、及び、該水槽へ水を供給可能な水供給手段を備え、乾燥手段に、水槽へ乾燥気体を供給可能な乾燥気体供給手段が備えられることが好ましい。
【0019】
ここに、第1の本発明における「水供給手段」は、水槽へ水又は温水を供給可能な手段であれば、その形態は特に限定されず、水道の蛇口や温水タンク等の水源、及び、当該水源から水槽へと供給される水又は温水が流通する配管等が備えられる形態を例示することができる。水槽へと供給された水又は温水は、湿潤時の電解質膜の寸法測定後に、排水手段によって排出することができる。当該排水手段は、水槽に供給された水又は温水を水槽の外へ排出し得る手段であれば、その形態は特に限定されず、水槽内の水又は温水を排出し得る配管等が備えられる形態を例示することができる。さらに、第1の本発明における「乾燥気体供給手段」は、水槽へ乾燥気体を供給させ得るものであれば、その形態は特に限定されず、乾燥気体のみを供給させ得る手段のほか、乾燥気体及び湿度が制御されていない気体を供給させ得る手段であっても良い。乾燥気体供給手段から供給される乾燥気体の具体例としては、相対湿度10%未満の空気等を挙げることができる。
【0020】
また、赤外線放出部及び赤外線受け部を備え、かつ、加湿手段に少なくとも水槽及び水供給手段が備えられる上記第1の本発明において、湿潤時の上記距離を測定する際に、赤外線放出部及び赤外線受け部が、水槽へ供給された水の水面よりも上方に配置されていることが好ましい。
【0021】
ここに、第1の本発明において、「湿潤時の上記距離」とは、水の中に浸漬されることにより膨潤した電解質膜の両端を固定している第1固定手段と第2固定手段との距離を意味する。
【0022】
また、加湿手段に少なくとも水槽及び水供給手段が備えられる上記第1の本発明において、さらに、水槽へ供給された水を温める加温手段を備えることが好ましい。
【0023】
ここに、第1の本発明における「加温手段」は、水槽の水を温めることが可能なものであれば、特に限定されず、例えば、一般に流通しているヒーター及びサーモスタット等を例示することができる。
【0024】
また、加湿手段に少なくとも水槽及び水供給手段が備えられる上記第1の本発明において、さらに、温水貯留手段を備え、水槽へと供給される水が温水であることが好ましい。
【0025】
ここに、第1の本発明における「温水貯留手段」は、水を温めることにより所定の温度(例えば、80℃)の温水とし、当該温水を溜めることが可能であれば、その形態は特に限定されない。
【0026】
また、赤外線放出部及び赤外線受け部を備え、かつ、加湿手段に少なくとも水槽及び水供給手段が備えられる上記第1の本発明において、水槽の上面が蓋で覆われ、該蓋に、赤外線受け部を貫通させる孔が備えられることが好ましい。
【0027】
ここに、第1の本発明における「蓋」は、少なくとも赤外線放出部に温水の蒸気が付着することを抑制する機能を有するものであれば、その形態は特に限定されない。当該蓋を構成する材料としては、例えば、80℃以上の温度に耐え得る各種材料(樹脂、ガラス、金属等)を挙げることができる。
【0028】
また、加湿手段に少なくとも水槽及び水供給手段が備えられる上記第1の本発明において、湿潤時の上記距離を測定する際に、乾燥気体供給手段から水槽の内側へ気体が供給されることが好ましい。
【0029】
ここに、第1の本発明において、乾燥気体供給手段から水槽の内側へと供給される「気体」は、温水の水面と赤外線放出部との間に存在する蒸気(水槽に蓋が備えられる場合には、温水の水面と蓋との間に存在する蒸気)を除去可能であれば、特に限定されない。当該気体の具体例としては、上記乾燥気体のほか、湿度が制御されていない通常の空気等を挙げることができる。
【0030】
第2の本発明は、寸法測定時にのみ電解質膜へ張力が付与され、非寸法測定時には電解質膜へ張力が付与されない条件下で、電解質膜へと吸収される液体の吸収特性、及び/又は、電解質膜から排出される液体の排出特性を評価する、電解質膜の評価方法であって、上記第1の本発明にかかる電解質膜の寸法測定装置を用いて、電解質膜の寸法を複数回測定する寸法測定工程と、該寸法測定工程で測定された寸法を用いて、単位時間当たりの寸法の変化量を算出する変化量算出工程と、該変化量算出工程で算出された変化量を用いて、電解質膜の吸収特性、及び/又は、電解質膜の排出特性を算出する特性算出工程と、を備えることを特徴とする、電解質膜の評価方法である。
【0031】
第2の本発明、及び、以下に示す本発明において、「液体」の具体例としては、水等を挙げることができる。また、第2の本発明、及び、以下に示す本発明において、「吸収特性」は、少なくとも、電解質膜へ液体が吸収される前の寸法と、電解質膜へ液体が吸収されている途中、及び/又は、電解質膜へ液体が吸収され終わった後の寸法とを測定し、測定した当該寸法を用いて単位時間当たりの液体の吸収量等を計算することにより算出される。また、第2の本発明、及び、以下に示す本発明において、「排出特性」は、少なくとも、電解質膜から液体が排出される前の寸法と、電解質膜から液体が排出されている途中、及び/又は、電解質膜から液体が排出され終わった後の寸法とを測定し、測定した当該寸法を用いて単位時間当たりの液体の排出量等を計算することにより算出される。
【0032】
第3の本発明は、寸法測定時にのみ電解質膜へ張力が付与され、非寸法測定時には電解質膜へ張力が付与されない条件下で、電解質膜へと吸収される液体の吸収特性、及び/又は、電解質膜から排出される液体の排出特性を評価する、電解質膜の評価方法であって、加湿手段及び乾燥手段が備えられる上記第1の本発明にかかる電解質膜の寸法測定装置を用いて、湿潤時の電解質膜の寸法と乾燥時の電解質膜の寸法とを連続してそれぞれ複数回測定する寸法測定工程と、該寸法測定工程で測定された寸法を用いて、単位時間当たりの寸法の変化量を算出する変化量算出工程と、該変化量算出工程で算出された変化量を用いて、電解質膜の吸収特性、及び/又は、電解質膜の排出特性を算出する特性算出工程と、を備えることを特徴とする、電解質膜の評価方法である。
【発明の効果】
【0033】
第1の本発明によれば、寸法測定時にのみ電解質膜へ張力が付与され、非寸法測定時には電解質膜へ張力が付与されないように、張力付与手段の動作が制御される。そのため、電解質膜の膨張時のみならず、収縮して皺が生じている電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0034】
また、第1の本発明において、電解質膜の非寸法評価時に、電解質膜が最も縮んだ時の第1固定手段と第2固定手段との距離よりも短くなるように、第1固定手段及び第2固定手段が配置されることにより、簡易な構成で、非寸法測定時に電解質膜へ張力が付与されない形態とすることができる。
【0035】
また、第1の本発明において、測定手段に赤外線放出部と赤外線受け部とが備えられることにより、非接触で第1固定手段と第2固定手段との距離を測定できる。したがって、かかる形態とすることにより、非接触で電解質膜の寸法を測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0036】
また、第1の本発明において、張力付与手段が、ワイヤー、重り、滑車、及び、第1支持部を備え、当該第1支持部の上下動が制御手段によって制御されることにより、第1支持部を下へ移動させることで電解質膜へ張力が付与される状態にすることができ、第1支持部を上へ移動させることで電解質膜へ張力が付与されない状態にすることができる。加えて、下方へ移動した第2固定手段が第2支持部によって支持される構成とすることにより、電解質膜を弛ませた状態で保持できるので、非寸法測定時に張力が付与されない形態で、電解質膜を保持できる。
【0037】
また、第1の本発明において、加湿手段及び乾燥手段が備えられることにより、加湿されて膨張した電解質膜の湿潤時の寸法と、乾燥して収縮した電解質膜の乾燥時の寸法を、自動で測定することが可能になる。したがって、かかる形態とすることにより、膨張・収縮の加速試験に供される電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0038】
また、第1の本発明において、加湿手段が少なくとも水槽及び水供給手段を備え、乾燥手段に乾燥気体供給手段が備えられることにより、電解質膜を容易に加湿し乾燥させることができる。したがって、かかる形態とすることにより、膨張・収縮の加速試験に供される電解質膜の寸法を自動で容易に測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0039】
また、第1の本発明において、赤外線放出部及び赤外線受け部が水面の上方に配置されることにより、電解質膜の寸法測定の精度を向上させることが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0040】
また、第1の本発明において、加温手段を備えることにより、実際のPEFCに備えられる電解質膜の環境を模擬した、電解質膜の膨張・収縮の加速試験を行うことが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0041】
また、第1の本発明において、温水貯留手段を備えることにより、実際のPEFCに備えられる電解質膜の環境を模擬した膨張・収縮の加速試験を行うことが可能であり、かつ、温められた温水が水槽へ供給されることにより電解質膜の膨張・収縮の加速試験に要する時間を短縮させることが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0042】
また、第1の本発明において、水槽の上面が蓋で覆われ、かつ、当該蓋に孔が設けられることにより赤外線放出部と赤外線受け部との間に蓋が配置されない形態とすることができる。かかる形態とすることにより、温水に起因する蒸気が赤外線放出部及び赤外線受け部に付着することを抑制できるので、電解質膜の寸法測定の精度を向上させることが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0043】
また、第1の本発明において、電解質膜を水中へ浸漬させた時の距離を測定する際に、水槽へ気体を供給することにより、さらに、水面と赤外線放出部との間に存在する蒸気を除去して電解質膜の寸法測定の精度を向上させることが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供できる。
【0044】
第2の本発明によれば、第1の本発明にかかる電解質膜の寸法測定装置を用いて電解質膜の寸法を測定する寸法測定工程が備えられる。そのため、第2の本発明によれば、自動で測定された、電解質膜の膨張時の寸法、及び/又は、収縮して皺が生じている電解質膜の寸法を用いて、電解質膜の特性を評価することが可能な、電解質膜の評価方法を提供することができる。
【0045】
第3の本発明によれば、加湿手段及び乾燥手段が備えられる上記第1の本発明にかかる電解質膜の寸法測定装置を用いて電解質膜の寸法を測定する、寸法測定工程が備えられる。そのため、第3の本発明によれば、自動で測定された、加湿されて膨張した電解質膜の湿潤時の寸法、及び/又は、乾燥して収縮した電解質膜の乾燥時の寸法を用いて、電解質膜の特性を評価することが可能な、電解質膜の評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
近年の研究により、PEFCの性能及び耐久性と電解質膜の寸法変化率との間に相関が認められることが判明し、寸法変化率の小さい電解質膜を備える形態とすることで、PEFCの性能及び耐久性を向上させることが可能になるという知見が得られている。そのため、PEFCの開発を行う上で、電解質膜の寸法変化率を把握することは極めて重要である。これまでは、電解質膜の寸法を自動で測定する装置が存在しなかったため、手作業で電解質膜の寸法を測定していた。それゆえ、電解質膜の寸法を測定する時間が作業者の立ち会える時間に限定され、1日でこなせる測定回数に限度があるという問題があった。また、例えば、温水に浸した膨潤時の電解質膜の寸法を測定した後に温水から電解質膜を取り出す際や、乾燥させた収縮時の電解質膜の寸法を測定した後に乾燥雰囲気から電解質膜を取り出す際等に、誤って電解質膜を傷つける場合があるという問題もあった。それゆえ、電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な、寸法測定装置の開発が望まれている。
【0047】
一方、PEFCに備えられる電解質膜は、PEFCの運転状態によって膨張・収縮を繰り返すと考えられるため、電解質膜の寿命等を評価する上で、液体を吸収して膨張する際の液体吸収特性や、液体を排出して収縮する際の液体排出特性を把握することも極めて重要である。従来、電解質膜の液体吸収特性や液体排出特性(以下これらをまとめて「吸排出特性」ということがある。)は、膨張した電解質膜の質量、及び、収縮した電解質膜の質量を測定し、これらの差を用いて評価していた。ところが、当該方法による評価では、加湿時のセル環境の模擬が困難であり、電解質膜の吸排出特性を評価することが困難であった。それゆえ、電解質膜の吸排出特性を評価することが可能な、電解質膜の評価方法の開発が望まれている。
【0048】
本発明は、かかる観点からなされたものであり、その第1の要旨は、電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な、電解質膜の寸法測定装置を提供することにあり、第2の要旨は、当該電解質膜の寸法測定装置を用いて電解質膜の吸排出特性を評価することが可能な、電解質膜の評価方法を提供することにある。
【0049】
以下、図面を参照しつつ、本発明の電解質膜の寸法測定装置、及び、本発明の電解質膜の評価方法について具体的に説明する。
【0050】
1.電解質膜の寸法測定装置
図1は、本発明の電解質膜の寸法測定装置(以下、「本発明の装置」という。)の一部(測定部)を簡略化して示す正面図である。図2及び図3は、本発明の装置の一部(測定部)を簡略化して示す側面図である。図1及び図2は、寸法測定時の様子を概略的に示しており、図3は、非寸法測定時の様子を概略的に示している。図4は、本発明の装置の構成を簡略化して示す概念図である。図が煩雑になることを防ぐため、図4では一部符号の記載を省略している。
【0051】
図1〜図3に示すように、本発明の装置100には、電解質膜1の一端を固定する第1固定手段としての固定チャック2と、電解質膜1の他端を固定する第2固定手段としてのスライドチャック3と、寸法測定時に電解質膜1へ張力を付与する張力付与手段4と、固定チャック2とスライドチャック3との距離を測定する測定手段5と、スライドチャック3を支持し得る第2支持部7、7と、を備える測定部8と、張力付与手段4の動作を制御する制御手段(以下、「制御装置」という。)6と、が備えられている。張力付与手段4には、スライドチャック3に一端が接続されたワイヤー4aと、ワイヤー4aの他端に接続された重り4bと、ワイヤー4aを支持する滑車4cと、重り4bを支持し得る第1支持部4dと、が備えられている。測定手段5には、赤外線を放出する赤外線放出部5aと、赤外線放出部5aから放出された赤外線を受ける赤外線受け部5bと、が備えられ、赤外線受け部5bは、スライドチャック3と一体になるように設けられている。そして、制御装置6には、張力付与手段4に備えられる第1支持部4dの動作制御を実行するCPU61と、当該CPU61に対する記憶装置とが設けられている。
【0052】
CPU61は、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU61に対する記憶装置は、例えば、第1支持部4dの動作制御に必要なプログラムや各種データを記憶するROM62と、CPU61の作業領域として機能するRAM63と、タイマー64等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、CPU61が、ROM62に記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、本発明の装置100における制御装置6が機能する。
【0053】
図1及び図2に示すように、本発明の装置100により電解質膜1の寸法を測定する際には、まず、寸法測定試験の開始を指示する出力信号が、入力ポート65を介して、入力信号としてCPU61へと到達する。CPU61は、上記入力信号及びROM62に記憶されたプログラムに基いて、非寸法測定時には上方に位置している第1支持部4dを下方へ移動させるべく、出力ポート66を介して第1支持部4dに対する動作指令を制御する。第1支持部4dは、CPU61から与えられた動作指令に応じて、非寸法測定時よりも下方へと移動し、重り4bと接触しない位置へ移動した段階で停止する。重り4bが第1支持部4dによって支持されない状態になると、ワイヤー4aが重り4bによって引っ張られ、これにより、スライドチャック3に上向きの力が付与され、電解質膜1に張力が付与される。このようにして電解質膜1に張力が付与されると、スライドチャック3に加えられる上向きの力と、当該力に抗して電解質膜1が引っ張られないようにする力とが釣り合った時点で、スライドチャック3が静止する。スライドチャック3が静止すると、赤外線放出部5aから赤外線受け部5bに向けて赤外線が放出されることにより、スライドチャック3の位置が測定され、固定チャック2とスライドチャック3との距離、すなわち、固定チャック2及びスライドチャック3によって両端を固定された電解質膜1の寸法が測定される。
【0054】
赤外線放出部5aから赤外線が放出されたことを知らせる出力信号が、入力ポート65を介して、入力信号としてCPU61へと到達すると、CPU61は、上記入力信号及びROM62に記憶されたプログラムに基いて、寸法測定が終了したと判断し、下方へ移動した第1支持部4dを上方へ移動させるべく、出力ポート66を介して第1支持部4dに対する動作指令を制御する。第1支持部4dは、CPU61から与えられた動作指令に応じて、寸法測定時よりも上方へと移動し、重り4bと接触してワイヤー4aに張力が加えられない位置へ移動した段階で停止する。このようにしてワイヤー4aに張力が付与されない状態になると、スライドチャック3を上方へ引っ張る力が付与されなくなるため、スライドチャック3は、重力によって下方へと移動し、スライドチャック3と固定チャック2との間に設けられる第2支持部7、7と接触する。第2支持部7、7は、電解質膜1の非寸法測定時にスライドチャック3を保持するために設けられる部材であり、第2支持部7、7によって保持されるスライドチャック3と固定チャック2との距離が、電解質膜1が最も縮んだ時のスライドチャック3と固定チャック2との距離よりも短くなる位置に、第2支持部7、7が設けられている。すなわち、電解質膜1の非寸法測定時には、重り4bが第1支持部4dによって保持されるとともに、スライドチャック3が第2支持部7、7によって保持され、電解質膜1が弛んだ状態で保持される(図3参照)。
【0055】
本発明の装置100において、重り4bの重さは、電解質膜1に、その弾性限以下の力を付与する重さであって、かつ、電解質膜1が縮んだ際に生じる皺を伸ばすことが可能な重さ(例えば、縦50mm×横10mmの固体高分子膜の寸法を測定する場合には、10g〜30g程度)とされる。そのため、水を含んで膨張した電解質膜1の寸法を測定する場合には、電解質膜1を破損することがない。また、乾燥して収縮した電解質膜1の寸法を測定する場合であっても、皺が伸ばされた電解質膜1の寸法を測定することができ、電解質膜1を破損することがない。従来は、電解質膜の寸法を自動で測定し得る装置が存在しなかったため、定規等で皺を伸ばしてから、電解質膜の乾燥時の寸法を測定していたが、本発明によれば、皺を伸ばすために必要とされる張力が電解質膜へ自動で付与されるので、従来と同様の測定環境を再現しつつ、電解質膜の寸法を自動で測定することができる。
【0056】
図4に示すように、本発明の装置100には、複数の測定部8、8、…を収容する水槽9と、当該水槽9と接続された水供給手段としての配管10及び排水手段としての配管11と、配管10及び配管11と接続された温水貯留手段としての温水タンク12と、水槽9へ乾燥気体(以下、「乾燥空気」という。)を供給し得る乾燥気体供給手段13と、が備えられている。水槽9の上面には、蓋14が備えられ、当該蓋14には、赤外線受け部5b、5b、…を貫通させ得る孔14a、14a、…が備えられている。そして、乾燥気体供給手段13には、乾燥空気を発生させる乾燥空気発生部13aと、乾燥空気発生部13aで発生させた乾燥空気を水槽9へと供給する配管13bと、が備えられている。
【0057】
以下、図1〜図4を参照しつつ、本発明の装置100を用いた電解質膜1の寸法測定について説明する。なお、以下の説明では、本発明の装置100に電解質膜1を配置した後、電解質膜1の湿潤時の寸法を測定し、その後、電解質膜1の乾燥時の寸法を測定する1サイクルが繰り返される形態を例示するが、本発明の装置100を用いた電解質膜1の寸法測定は、当該形態に限定されない。本発明の装置100を用いた電解質膜1の寸法測定は、電解質膜1の乾燥時の寸法を測定した後に、電解質膜1の湿潤時の寸法を測定する1サイクルが繰り返される形態とすることも可能である。
【0058】
本発明の装置100を用いて電解質膜1の湿潤時の寸法及び乾燥時の寸法を測定する場合には、まず、水槽9に収容されている各測定部8、8、…に、電解質膜1、1、…を取り付ける。具体的には、測定部8、8、…に備えられる固定チャック2、2、…で電解質膜1、1、…の下端を固定するとともに、スライドチャック3、3、…で電解質膜1、1、…の上端を固定することにより、電解質膜1、1、…を測定部8、8、…に固定する。そして、電解質膜1、1、…の上端を固定するスライドチャック3、3、…が第2支持部7、7、…によって保持されることにより、電解質膜1、1、…に張力が付与されない形態とされる。
【0059】
このようにして電解質膜1、1、…を固定したら、寸法測定のサイクル数を入力し、制御装置6に備えられるEnterキー(不図示)を押す等により、電解質膜1の寸法測定を開始する。電解質膜1、1、…の寸法測定が開始されると、常温常湿下における電解質膜1、1、…の寸法を測定するため、CPU61によって動作を制御される第1支持部4d、4d、…が下方へと移動し、重り4b、4b、…が第1支持部4d、4d、…によって支持されない状態へと移行する。当該状態へと移行すると、重り4b、4b、…、及び、ワイヤー4a、4a、…によって、スライドチャック3、3、…に上向きの力が付与され、電解質膜1、1、…へ張力が付与される。その後、電解質膜1、1、…へ張力が付与された状態でスライドチャック3、3、…が静止すると、測定手段5によってスライドチャック3、3、…の位置が測定され、電解質膜1、1、…の常温常湿下における寸法(基準寸法)が測定される。そして、基準寸法の測定が終了すると、CPU61によって動作を制御される第1支持部4d、4d、…が上方へと移動することにより、重り4b、4b、…が第1支持部4d、4d、…によって支持され、電解質膜1、1、…へ張力が付与されない状態へと移行する。
【0060】
電解質膜1、1、…の基準寸法の測定が終了すると、電解質膜1、1、…の湿潤時の寸法を測定すべく、配管10を介して温水タンク12から水槽9へと温水が供給され、当該温水に電解質膜1、1、…が浸される。予め設定された量の温水が水槽9へと供給されると、温水の供給が停止され、温水の供給停止後、一定時間(例えば、1時間程度)に亘って電解質膜1、1、…を温水に浸すことにより、電解質膜1、1、…に温水を吸収させる。当該一定時間が経過すると、電解質膜1、1、…の寸法測定が開始される。電解質膜1、1、…の寸法測定時には、乾燥気体供給手段13によって、水槽9の温水の水面と蓋14との間に乾燥空気が供給される。さらに、上述のように、CPU61によって動作を制御される第1支持部4d、4d、…が下方へと移動し、電解質膜1、1、…へ張力が付与され、湿潤時の電解質膜1、1、…の寸法が測定される。湿潤時の寸法測定が終了すると、CPU61によって動作を制御される第1支持部4d、4d、…が上方へと移動し、電解質膜1、1、…へ張力が付与されない状態とされる。
【0061】
湿潤時の電解質膜1、1、…の寸法が測定される際、測定部8、8、…に備えられる赤外線放出部5a、及び、赤外線受け部5b、5b、…は、水槽9の温水の水面よりも上方に位置し、さらに、水槽9の蓋14よりも上方に位置している。水槽9へ温水を供給すると、当該温水から発生する蒸気が赤外線放出部5a、及び/又は、赤外線受け部5b、5b、…に付着し、スライドチャック3、3、…の位置測定の精度が低下する恐れがある。そこで、本発明の装置100では、赤外線放出部5a、及び、赤外線受け部5b、5b、…に蒸気が付着しにくい構成とするため、水槽9に蓋14を設け、当該蓋14に赤外線受け部5b、5b、…を貫通させ得る孔14a、14a、…が備えられる構成とし、さらに、当該構成に加えて乾燥空気を供給することにより、より一層蒸気が付着しにくい構成としている。
【0062】
湿潤時の電解質膜1、1、…の寸法測定が終了すると、電解質膜1、1、…の乾燥時の寸法を測定すべく、配管11を介して水槽9内の温水が排水され、乾燥気体供給手段13から水槽9へ乾燥空気(例えば、相対湿度5%、温度50℃の空気)が供給される。乾燥空気の供給は、電解質膜1、1、…の内部の水分が略完全に蒸発したと判断し得る状態となる時間(例えば、1時間程度)に亘って継続され、当該時間が経過すると、電解質膜1、1、…の寸法測定が開始される。電解質膜1、1、…の寸法測定時には、上述のように、CPU61によって動作を制御される第1支持部4d、4d、…が下方へと移動し、電解質膜1、1、…へ張力が付与され、乾燥時の電解質膜1、1、…の寸法が測定される。乾燥時の寸法測定が終了すると、CPU61によって動作を制御される第1支持部4d、4d、…が上方へと移動し、電解質膜1、1、…へ張力が付与されない状態とされる。
【0063】
かかる過程を経ることにより、湿潤時の寸法測定及び乾燥時の寸法測定からなる1サイクルの寸法測定を行うことができる。2サイクル以上の寸法測定を行う場合には、上記湿潤時の寸法測定及び上記乾燥時の寸法測定を繰り返すことにより、所定のサイクルの寸法測定を行うことができる。入力したサイクル数の寸法測定が終了したら、測定部8、8、…から電解質膜1、1、…を取り外す。かかる工程を経ることにより、本発明の装置100による電解質膜1、1、…の寸法測定の全工程が終了する。
【0064】
このように、本発明の装置100によれば、寸法測定サイクルは自動で進行するため、寸法測定サイクル実行時には人手を必要とせず、電解質膜1、1、…の取り付け時と、電解質膜1、1、…の取り外し時との間は、測定者の時間が拘束されない。したがって、本発明の装置100を用いることで、寸法測定サイクルを24時間フル稼働させることができ、寸法測定の全サイクルが終了するまでに要する時間を大幅に短縮することができる。例えば、定規を用いた従来の測定では、100サイクル終了までに100日程度の期間を要していたが、本発明の装置100を用いることで、100サイクルの寸法測定が終了するまでの期間を12日程度に短縮することができる。
【0065】
また、本発明の装置100によれば、電解質膜1、1、…の取り付け時及び取り外し時にのみ、測定者が電解質膜1、1、…に触れ、寸法測定が開始されてから寸法測定が終了するまでの間は、測定者が電解質膜1、1、…に触れることがない。それゆえ、本発明の装置100を用いない従来の寸法測定時に問題とされた、寸法測定が開始されてから寸法測定が終了するまでの間における電解質膜1、1、…の破損(例えば、電解質膜を湿潤環境から乾燥環境へ移動する際の破損等)を防止できる。したがって、本発明によれば、寸法測定の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0066】
本発明の装置100に関する上記説明では、温水タンク12が備えられる形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。当該形態のほか、例えば、水槽9を温めることが可能な加温手段(例えば、ヒーター及びサーモスタット)が備えられる構成とし、水槽へ供給された水、又は、温水タンク12から供給された温水を、当該加温手段によって温める形態や、温水タンクも加温手段も備えられない形態とすることも可能である。ただし、PEFCの運転時の環境を模擬することにより、寸法測定試験(加速試験)の信頼性を向上させる等の観点からは、温水タンク12及び/又は加温手段が備えられる形態とすることが好ましく、水が温まるまでの時間を短縮することにより湿潤時の寸法測定に要する時間を短縮する等の観点からは、少なくとも温水タンク12が備えられる形態とすることが好ましい。また、本発明の装置100に関する上記説明では、湿潤時の電解質膜1、1、…の寸法を測定する際に、80℃の温水に浸される形態を例示したが、温水の温度は当該温度に限定されない。温水の温度は、常温〜90℃程度とすることができる。ただし、PEFCの運転時の環境を模擬するという観点からは、80℃以上90℃以下の温度とすることが好ましい。
【0067】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、蓋14が備えられる形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。ただし、測定手段5に蒸気が付着しにくい形態とすることにより、測定手段5の測定精度を向上させる等の観点からは、蓋14が備えられる形態とすることが好ましい。
【0068】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、蓋14に赤外線受け部5b、5b、…を貫通させる孔14a、14a、…が備えられる形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。ただし、赤外線受け部5b、5b、…を蓋14よりも上方に位置させて、赤外線受け部5b、5b、…に蒸気が付着しにくい構成として測定手段5の測定精度を向上させる等の観点からは、蓋14に赤外線受け部5b、5b、…を貫通させる孔14a、14a、…が備えられる形態とすることが好ましい。
【0069】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、湿潤時の寸法を測定する際に乾燥空気が供給される形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。ただし、測定手段5に蒸気が付着しにくい形態とすることにより、測定手段5の測定精度を向上させる等の観点からは、乾燥空気又は通常の空気を供給しながら湿潤時の寸法が測定されることが好ましい。
【0070】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、相対湿度5%、温度50℃の空気が供給されることにより、電解質膜1が乾燥状態とされる形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。水槽9へと供給される乾燥空気の温度は、例えば、常温〜100℃以下とすることができ、乾燥空気の相対湿度は0%以上10%以下とすることができる。ただし、PEFCの運転時の環境を模擬するという観点から、乾燥空気の温度は80℃以上100℃以下とすることが好ましい。
【0071】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、赤外線放出部5a、及び、赤外線受け部5b、5b、…が水面よりも上方に位置した状態で、湿潤時の寸法が測定される形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。ただし、測定手段5による測定精度を向上させる等の観点からは、赤外線放出部5a、及び、赤外線受け部5b、5b、…が水面よりも上方に位置した状態で、湿潤時の寸法が測定されることが好ましい。
【0072】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、赤外線放出部5a及び赤外線受け部5bを備える測定手段5が備えられる形態を例示したが、本発明の装置に備えられる測定手段は当該形態に限定されない。当該形態のほか、例えば、変位計、及び、当該変位計及びスライドチャック3に接続されたセンサーを有する測定手段が備えられる形態とすることも可能である。ただし、複数の測定部が水槽に収容される場合等には、センサーの個数を低減することにより装置のコストを低減することが可能になるため、赤外線放出部5a及び赤外線受け部5bを備える測定手段5が備えられる形態とすることが好ましい。本発明の装置100において、測定手段5として赤外線センサーを用いる場合、当該センサーの測定精度は特に限定されるものではないが、例えば、固定チャック2とスライドチャック3との間に位置する縦50mmの電解質膜1の1%の変位(0.5mmの変位)を確実に検知可能な精度とする観点からは、0.1mm程度の変位を検知可能な精度とすることが好ましい。
【0073】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、複数の測定部8、8、…が備えられる形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。ただし、一度に複数種類の電解質膜の寸法測定を可能な装置とする等の観点からは、複数の測定部が備えられる形態とすることが好ましい。
【0074】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、ワイヤー4a、重り4b、滑車4c、及び、第1支持部4dを有する張力付与手段4が備えられる形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。当該形態のほか、例えば、電解質膜の左端を第1固定手段で固定するとともに、同右端を第2固定手段で固定し、移動可能に構成される第1固定手段及び/又は第2固定手段の動作を制御手段(制御装置6)によって制御することにより、電解質膜1へ張力を付与する形態とすることも可能である。当該形態の場合、移動可能な第1固定手段及び/又は第2固定手段を、張力付与手段として機能させることができる。ただし、簡易な構成とすることにより本発明の装置のコストを低減する等の観点からは、張力付与手段4が備えられる形態とすることが好ましい。
【0075】
また、本発明の装置100に関する上記説明では、スライドチャック3が第2支持部7、7によって支持される形態を例示したが、本発明の装置は当該形態に限定されない。当該形態のほか、例えば、制御装置6でスライドチャック3の動作を制御することにより、非寸法測定時には電解質膜1へ張力が付与されない位置にスライドチャック3が保持される形態とすることも可能である。ただし、より簡易な構成で電解質膜1の寸法を自動で測定可能な装置を提供する等の観点からは、スライドチャック3が第2支持部7、7によって支持される形態とすることが好ましい。
【0076】
また、本発明の装置100によって寸法を測定される電解質膜1は、プロトン伝導性ポリマーを含有する固体高分子膜であれば、特に限定されない。電解質膜に含有されるプロトン伝導性ポリマーの具体例としては、含フッ素高分子を骨格として少なくともスルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基のうち一種を有するフッ素系のポリマーや、ポリオレフィンのような炭化水素を骨格とする炭化水素系のポリマー等を挙げることができる。上記フッ素系のポリマーを含有する電解質膜の具体例としては、Nafion(「Nafion」は米国デュポン社の登録商標)やフレミオン(「フレミオン」は旭硝子株式会社の登録商標)等を挙げることができる。一方、上記炭化水素系のポリマーを含有する電解質膜の具体例としては、セレミオン等(「セレミオン」は旭硝子株式会社の登録商標)を挙げることができる。
【0077】
2.電解質膜の評価方法
図5は、本発明にかかる電解質膜の評価方法に備えられる工程例を示すフローチャートである。図6は、電解質膜の吸排出特性を示す図であり、寸法測定結果の一部のみを抽出している。以下、図1〜図6を参照しつつ、本発明の電解質膜の評価方法について説明する。
【0078】
図5に示すように、本発明にかかる電解質膜の評価方法は、寸法測定工程(工程S1)と、変化量算出工程(工程S2)と、特性算出工程(工程S3)と、を備え、工程S1〜工程S3を経て、電解質膜1の吸排出特性が評価される。
【0079】
2.1.寸法測定工程(工程S1)
工程S1は、本発明の装置100を用いて、電解質膜1の寸法を測定する工程である。電解質膜1の寸法は、上述の方法により測定することができ、工程S1は、例えば、湿潤時の電解質膜1の寸法を複数回に亘って測定(例えば、数秒間隔で複数回に亘って測定。以下同じ。)した後、乾燥時の電解質膜1の寸法を複数回に亘って測定する1サイクルが、所定のサイクル数まで繰り返される形態とすることができる。
【0080】
2.2.変化量算出工程(工程S2)
工程S2は、上記工程S1で測定した寸法を用いて、電解質膜の単位時間当たりの寸法変化量を算出する工程である。工程S2は、例えば、まず、横軸が時間、縦軸が電解質膜の寸法であるグラフにプロットされた、上記工程S1の寸法測定結果を用いて、図6に示すような電解質膜1の吸排出特性を求めることができる。その後、当該グラフの傾きを計算することにより、電解質膜の単位時間当たりの寸法変化量を算出する工程、とすることができる。
【0081】
2.3.特性算出工程(工程S3)
工程S3は、上記工程S2で算出された単位時間当たりの寸法変化量を用いて、電解質膜の吸収特性や排出特性、より具体的には、単位体積当たりの電解質膜へ単位時間当たりに吸収される液体の量X[g/cm/sec](=吸収特性)、及び、単位体積当たりの電解質膜から単位時間当たりに排出される液体の量Y[g/cm/sec](=排出特性)を算出する工程である。本発明の装置100を用いて上記工程S1で測定された、電解質膜1の寸法の最大値をLmax[mm]、電解質膜1の寸法の最小値をLmin[mm]、上記工程S2で算出された、単位時間当たりの寸法変化量をΔL[mm/sec]、電解質膜1の飽和含水率をw[%]、及び、電解質膜1の密度をρ[g/cm]、とするとき、上記X及びYは、下記式により算出することができる。
X=ΔL/(Lmax−Lmin)×w×ρ
Y=ΔL/(Lmax−Lmin)×w×ρ
【0082】
このように、本発明の電解質膜の評価方法によれば、電解質膜の寸法を自動で測定することが可能な本発明の装置100を用いて、電解質膜の吸排出特性を評価することができる。本発明の装置100により、加湿時のセル内の環境を模擬した水中浸漬時の電解質膜の寸法を自動で測定することができるので、本発明によれば、電解質膜の寸法測定装置を用いて電解質膜の吸排出特性を評価することが可能な、電解質膜の評価方法を提供することができる。
【0083】
本発明において、上記工程S1で電解質膜の寸法を測定する回数、及び、測定の時間間隔は、上記ΔL、Lmax、及び、Lminの正確な値を特定可能であれば、限定されるものではなく、任意の回数、時間間隔とすることができる。
【0084】
本発明の電解質膜の評価方法に関する上記説明では、加湿手段9、10及び乾燥手段13が備えられる本発明の装置100を用いて、電解質膜1の吸収特性及び電解質膜1の排出特性が算出される形態を例示したが、本発明の電解質膜の評価方法は、当該形態に限定されるものではない。本発明の電解質膜の評価方法では、必要に応じて、電解質膜1の吸収特性、又は、電解質膜1の排出特性のみが算出される形態とすることも可能である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下の説明では、本発明の装置100を用いた寸法測定を実施例といい、定規を用いた電解質膜の寸法測定を比較例という。
【0086】
1.電解質膜の寸法測定
1.1.寸法測定
フッ素系のポリマーを含有する、縦70mm×横10mmの電解質膜1を本発明の装置100にセットし、上述の過程で基準寸法を測定した。ここで、固定チャック2で電解質膜1の下端10mmを固定し、かつ、スライドチャック3で電解質膜1の上端10mmを固定したため、固定チャック2とスライドチャック3との間の電解質膜1の寸法は、縦50mm×横10mmであった。その後、上述の過程を経て湿潤時の寸法を測定し、引き続き、上述の過程を経て乾燥時の寸法を測定する1サイクルを10回繰り返すことにより、本発明の装置100を用いて電解質膜1の寸法を測定した(実施例)。本実施例で使用した重り4bの重さは20g、水槽9へと供給した温水の温度は80℃、水槽9へと供給した空気の温度は50℃、相対湿度は5%であった。実施例の試験条件を表1に、実施例にかかる電解質膜の寸法測定における、電解質膜の寸法とサイクル数との関係を図7に、それぞれ示す。図7及び以下の説明において、「Lnwet’」は、本発明の装置100で測定した、nサイクル目の水中浸漬状態における電解質膜の寸法(L1wet’は、本発明の装置100で測定した1サイクル目の水中浸漬状態における電解質膜の寸法、L2wet’は、本発明の装置100で測定した2サイクル目の水中浸漬状態における電解質膜の寸法)を意味する。一方、「Lndry’」は、本発明の装置100で測定したnサイクル目の乾燥状態における電解質膜の寸法(L1dry’は、本発明の装置100で測定した1サイクル目の乾燥状態における電解質膜の寸法、L2dry’は、本発明の装置100で測定した2サイクル目の乾燥状態における電解質膜の寸法)を意味する。
【0087】
これに対し、比較例では、上記電解質膜1の寸法を定規で測定することにより、基準寸法を測定した。その後、80℃の温水が入ったビーカーに電解質膜1を1時間に亘って浸した。1時間経過後、電解質膜1をピンセットで掴んで、水が入ったパレットへと移し、当該パレットで湿潤時の電解質膜1の寸法を定規で測定した。このようにして湿潤時の寸法を測定したら、引き続き、ピンセットで電解質膜1を掴んでパレットから取り出し、60℃に設定された真空乾燥機へと移し、真空引きして1時間放置した。1時間経過後、電解質膜1をピンセットで掴んで真空乾燥機から取り出し、密封可能な透明な袋に電解質膜1を入れた。そして、密封された袋に入れた状態で、乾燥時の電解質膜1の寸法を定規で測定した。上記工程(湿潤時の電解質膜1の寸法測定、及び、乾燥時の電解質膜1の寸法測定)を10回繰り返すことにより、定規を用いて電解質膜1の寸法を測定した(比較例)。比較例の試験条件を表1に、比較例にかかる電解質膜の寸法測定における、電解質膜の寸法とサイクル数との関係を図8に、それぞれ示す。図8及び以下の説明において、「Lnwet」は、手作業で測定した、nサイクル目の水中浸漬状態における電解質膜の寸法(L1wetは、手作業で測定した1サイクル目の水中浸漬状態における電解質膜の寸法、L2wetは、手作業で測定した2サイクル目の水中浸漬状態における電解質膜の寸法)を意味する。一方、「Lndry」は、手作業で測定した、nサイクル目の乾燥状態における電解質膜の寸法(L1dryは、手作業で測定した1サイクル目の乾燥状態における電解質膜の寸法、L2dryは、手作業で測定した2サイクル目の乾燥状態における電解質膜の寸法)を意味する。図7及び図8に示すように、電解質膜を水中に浸漬させると、電解質膜は膨張して寸法が大きくなるのに対し、電解質膜を乾燥させると、電解質膜は収縮して寸法が小さくなる。
【0088】
【表1】

【0089】
上記条件で電解質膜の寸法を測定し、下記式1を用いて、5サイクル目の水中浸漬状態における相違率、及び、10サイクル目の水中浸漬状態における相違率を算出し、下記式2を用いて、5サイクル目の乾燥状態における相違率、及び、10サイクル目の乾燥状態における相違率を算出した。
【0090】
【数1】

【0091】
【数2】


相違率の結果を、図9に併せて示す。図9の縦軸は相違率[%]である。
【0092】
1.2.結果
図9より、相違率は、何れも5%前後の値となった。したがって、本発明の装置100を用いた電解質膜の寸法測定は、手作業による電解質膜の寸法測定を高精度で再現できることが確認された。すなわち、本発明の装置100を用いることで、手作業よりも寸法測定の作業性を向上させつつ、手作業と同等の結果を得ることが可能になる。
【0093】
2.電解質膜の吸排出特性評価
2.1.電解質膜の吸排出特性の算出
上記実施例において、80℃の温水へ30分間に亘って電解質膜1を浸漬させている間に、湿潤時の電解質膜1の寸法を2秒毎に測定し、さらに、温度50℃、相対湿度5%の乾燥空気を供給することにより30分間に亘って乾燥状態が維持されている間に、乾燥時の電解質膜1の寸法を2秒毎に測定し、その測定結果をグラフへプロットすることにより、図6に示す電解質膜の吸排出特性を表すグラフを作成した。その後、当該グラフから、上記ΔL、Lmax、及び、Lminを求めることにより、電解質膜1の吸排出特性を求めた。結果を図10に併せて示す。
【0094】
2.2.結果
図10より、電解質膜1の吸収特性Xは、X≒0.008[g/cm/sec]であり、電解質膜1の排出特性Yは、Y≒0.022[g/cm/sec]であった。したがって、本発明の電解質膜の評価方法によれば、電解質膜の吸排出特性を算出することができた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の装置の一部(測定部)を簡略化して示す正面図である。
【図2】本発明の装置の一部(測定部)を簡略化して示す側面図である。
【図3】本発明の装置の一部(測定部)を簡略化して示す側面図である。
【図4】本発明の装置の構成を簡略化して示す概念図である。
【図5】本発明にかかる電解質膜の評価方法に備えられる工程例を示すフローチャートである。
【図6】電解質膜の吸排出特性を示す図である。
【図7】電解質膜の寸法とサイクル数との関係を示す図である。
【図8】電解質膜の寸法とサイクル数との関係を示す図である。
【図9】寸法変化率の結果を示す図である。
【図10】電解質膜の吸排出特性の算出結果を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1…電解質膜
2…固定チャック(第1固定手段)
3…スライドチャック(第2固定手段)
4…張力付与手段
4a…ワイヤー
4b…重り
4c…滑車
4d…第1支持部
5…測定手段
5a…赤外線放出部
5b…赤外線受け部
6…制御装置(制御手段)
7…第2支持部
8…測定部
9…水槽(加湿手段)
10…配管(水供給手段、加湿手段)
11…配管(排水手段)
12…温水タンク(温水貯留手段)
13…乾燥気体供給手段(乾燥手段)
13a…乾燥空気発生部
13b…配管
14…蓋
14a…孔
100…装置(電解質膜の寸法測定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の一端を固定する第1固定手段、及び、前記電解質膜の他端を固定する第2固定手段と、
前記第1固定手段及び前記第2固定手段によって両端を固定された前記電解質膜へ張力を付与可能な、張力付与手段と、
前記第1固定手段と前記第2固定手段との距離を測定可能な、測定手段と、
前記張力付与手段の動作を制御可能な制御手段と、を備え、
前記電解質膜の寸法測定時にのみ、前記張力付与手段を介して前記電解質膜へ張力が付与され、前記電解質膜の非寸法測定時には、前記電解質膜に張力が付与されないことを特徴とする、電解質膜の寸法測定装置。
【請求項2】
少なくとも前記第2固定手段が移動可能に構成され、
前記電解質膜の寸法測定時には、前記張力付与手段を介して、前記第1固定手段から遠ざかる向きの力を加えられた前記第2固定手段が移動することにより、前記電解質膜へ張力が付与され、
前記電解質膜の非寸法評価時には、前記第1固定手段と前記第2固定手段との距離が、前記電解質膜が最も縮んだ時の前記第1固定手段と前記第2固定手段との距離よりも短くなるように、前記第1固定手段及び前記第2固定手段が配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項3】
前記測定手段に、赤外線放出部と、前記赤外線放出部から放出された赤外線を受ける赤外線受け部とが備えられ、前記赤外線受け部が前記第2固定手段に備えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項4】
前記張力付与手段は、前記第2固定手段に一端が接続されたワイヤーと、前記ワイヤーの他端に接続された重りと、前記ワイヤーの前記一端と前記他端との間を支持する滑車と、前記重りを支持し得る上下動可能な第1支持部とを備え、
前記第1固定手段と前記第2固定手段との間に、前記第2固定手段を支持可能な第2支持部が配置され、
前記第1固定手段によって前記電解質膜の下端が固定されるとともに、前記第2固定手段によって前記電解質膜の上端が固定され、
前記電解質膜の寸法測定時には、前記第1支持部が下方へ移動するように、前記制御手段によって前記第1支持部の動作が制御され、前記重り及び前記ワイヤーを介して上向きの力が加えられた前記第2固定手段が上方へ移動することにより、前記電解質膜へ張力が付与され、
前記電解質膜の非寸法測定時には、前記第1支持部が上方へ移動するように、前記制御手段によって前記第1支持部の動作が制御され、重力で下方へ移動した第2固定手段が前記第2支持部によって支持されることにより、前記電解質膜へ張力が付与されない状態とされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項5】
さらに、前記電解質膜を加湿する加湿手段と、前記電解質膜を乾燥させる乾燥手段と、が備えられ、
前記測定手段によって、前記電解質膜の湿潤時の前記距離、及び、前記電解質膜の乾燥時の前記距離が測定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項6】
前記加湿手段は、少なくとも前記第1固定手段及び前記第2固定手段を収容する水槽、及び、前記水槽へ水を供給可能な水供給手段を備え、
前記乾燥手段に、前記水槽へ乾燥気体を供給可能な乾燥気体供給手段が備えられることを特徴とする、請求項5に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項7】
前記赤外線放出部及び前記赤外線受け部を備える請求項6に記載の電解質膜の寸法測定装置において、前記湿潤時の前記距離を測定する際に、前記赤外線放出部及び前記赤外線受け部が、前記水槽へ供給された前記水の水面よりも上方に配置されていることを特徴とする、電解質膜の寸法測定装置。
【請求項8】
さらに、前記水槽へ供給された前記水を温める加温手段を備えることを特徴とする、請求項6又は7に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項9】
さらに、温水貯留手段を備え、前記水槽へと供給される前記水が温水であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項10】
前記赤外線放出部及び前記赤外線受け部を備える請求項8又は9に記載の電解質膜の寸法測定装置において、前記水槽の上面が蓋で覆われ、前記蓋に、前記赤外線受け部を貫通させる孔が備えられることを特徴とする、電解質膜の寸法測定装置。
【請求項11】
前記湿潤時の前記距離を測定する際に、前記乾燥気体供給手段から前記水槽の内側へ気体が供給されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の電解質膜の寸法測定装置。
【請求項12】
寸法測定時にのみ電解質膜へ張力が付与され、非寸法測定時には前記電解質膜へ張力が付与されない条件下で、前記電解質膜へと吸収される液体の吸収特性、及び/又は、前記電解質膜から排出される液体の排出特性を評価する、電解質膜の評価方法であって、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の電解質膜の寸法測定装置を用いて、前記電解質膜の寸法を複数回測定する、寸法測定工程と、
前記寸法測定工程で測定された前記寸法を用いて、単位時間当たりの前記寸法の変化量を算出する、変化量算出工程と、
前記変化量算出工程で算出された前記変化量を用いて、前記電解質膜の前記吸収特性、及び/又は、前記電解質膜の前記排出特性を算出する、特性算出工程と、
を備えることを特徴とする、電解質膜の評価方法。
【請求項13】
寸法測定時にのみ電解質膜へ張力が付与され、非寸法測定時には前記電解質膜へ張力が付与されない条件下で、前記電解質膜へと吸収される液体の吸収特性、及び/又は、前記電解質膜から排出される液体の排出特性を評価する、電解質膜の評価方法であって、
請求項5〜11のいずれか1項に記載の電解質膜の寸法測定装置を用いて、湿潤時の前記電解質膜の寸法と乾燥時の前記電解質膜の寸法とを連続して、それぞれ複数回測定する、寸法測定工程と、
前記寸法測定工程で測定された前記寸法を用いて、単位時間当たりの前記寸法の変化量を算出する、変化量算出工程と、
前記変化量算出工程で算出された前記変化量を用いて、前記電解質膜の前記吸収特性、及び/又は、前記電解質膜の前記排出特性を算出する、特性算出工程と、
を備えることを特徴とする、電解質膜の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−8653(P2009−8653A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314444(P2007−314444)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】