説明

電車線材料の非破壊検査装置

【課題】電車線材料の状態を任意の位置で移動しながら簡単に非破壊で高精度に検査することができる電車線材料の非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】(A)に示すように、電車線材料C1が検査箇所P1で収容部6内に収容されて、X線照射部14Bが電車線材料C1の検査箇所P1にX線を照射し、この電車線材料C1を透過する透過X線を透過X線測定部16Aが測定する。その後に、電車線材料C1が検査箇所P1で収容部6内から開放されて、収容部6が所定の間隔Δだけ移動する。次に、図(B)に示すように、電車線材料C1が検査箇所P1で収容部6内に収容されて、X線照射部15Bが電車線材料C1の検査箇所P1にX線を照射し、この電車線材料C1を透過する透過X線を透過X線測定部17Aが測定する。その結果、透過X線測定部16A,17Aが出力する透過X線情報が測定結果記録部に記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電車線材料の状態を非破壊で検査する電車線材料の非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、鉄道車両に電力を供給する架線のトロリ線、このトロリ線をちょう架線に吊り下げるハンガなどの電車線材料の事故を防止するために保守検査を実施している。従来、このような電車線材料の保守検査では、事故の未然発見、保守員の省力化及び作業の短時間化の3つの目的と特性とが要求されている。しかし、通常の保守検査では、地上から目視で電車線材料を検査する場合には、検査1回当たりに要求される保守時間が非常に短いにもかかわらず、作業時間がかかるため損傷を短時間で発見することが困難である。また、電車線材料を至近距離から検査する場合には、電車線材料に梯子などを使用して近づく必要があり多くの時間と労力が必要になる。一方、電車線材料を目視で検査不可能な場合には、この電車線材料を現場から撤去して詳しく検査し判定する必要がある。このため、電車線材料を現場から撤去してしまうとこの電車線材料の劣化の進行状況を定期的に観察し劣化状態を把握することが困難であるとともに、電車線が劣化していないにもかかわらず抜き取り検査で撤去してしまう問題点がある。さらに、トロリ線を吊り下げるちょう架線や、き電用変電所から電車線に電力を供給するき電線などの撚線を検査する非破壊検査装置が提案されている。しかし、このような従来の非破壊検査装置では、撚線の亀裂が大きくなるまで進行しないとこの亀裂を検出することができず、ハンガーのイヤーなどの金具によってトロリ線が支持される支持点では亀裂を測定することができない問題点がある。
【0003】
従来の非破壊検査装置は、移動ケーブルを収容する左右に分割可能な構造のX線検査装置と、このX線検査装置内で移動ケーブルにX線を照射するX線発生部と、移動ケーブルを透過したX線をX線検査装置内で可視像に変換するX線受像部と、X線検査装置内を移動ケーブルが通過するようにこのX線検査装置に形成された切欠部と、この切欠部と移動ケーブルとの間からX線が漏れ出すのを防ぐ遮蔽部材などを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の非破壊検査装置は、移動ケーブルの検査位置の近くに存在する隣接するL型鋼にX線検査装置を支持部材によって取り付けて、このL型鋼にこのX線検査装置を取り付けた状態でこの移動ケーブルを移動させながら検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-318949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の非破壊検査装置では、L型鋼が存在しない位置には支持部材によってX線検査装置を取り付けることができず、このX線検査装置の設置箇所が制限されてしまう問題点がある。また、このような従来の非破壊検査装置では、移動ケーブルの長さ方向にX線検査装置を移動させることができず、この移動ケーブルが可動可能な範囲のみに検査範囲が制限されてしまう問題点がある。さらに、このような従来の非破壊検査装置では、遮蔽部材と接触させながら移動ケーブルを移動させて検査するため、この遮蔽部材とこの移動ケーブルとが摩擦接触しこれらが摩耗してしまう問題点がある。
【0006】
この発明の課題は、電車線材料の状態を任意の位置で移動しながら簡単に非破壊で高精度に検査することができる電車線材料の非破壊検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1、図6、図7、図11及び図12に示すように、電車線材料(C1,C2)の状態を非破壊で検査する電車線材料の非破壊検査装置であって、軌道(R)に沿って走行する車両(1)に装着されて前記電車線材料を収容する収容部(6)と、前記電車線材料の検査箇所(P1,P2)に前記収容部内でX線を照射するX線照射部(14A〜14C,15A〜15C)と、前記電車線材料の検査箇所を透過する透過X線を前記収容部内で測定する透過X線測定部(16A〜16C,17A〜17C)と、X線照射時には前記電車線材料を前記収容部に収容し、X線非照射時には前記電車線材料を前記収容部から開放するように、この収容部を開閉する開閉部(12)と、前記電車線材料の検査箇所でこの電車線材料を前記収容部に収容するように、前記開閉部の開閉動作を制御する制御部(32)とを備える電車線材料の非破壊検査装置(5)である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図6、図7、図8、図11及び図12に示すように、前記収容部は、前記電車線材料の右側側面を収容する右側収容部(7R)とこの電車線材料の左側側面を収容する左側収容部(7L)とに分割可能であり、前記開閉部は、前記右側収容部と前記左側収容部とが結合状態と分割状態とに切り替わるように前記収容部を開閉することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、前記右側収容部と前記左側収容部とが接合する接合部からのX線の漏洩を防止するX線漏洩防止部(9)を備え、前記収容部は、前記右側収容部側のX線漏洩防止部と前記左側収容部側のX線漏洩防止部との間に前記電車線材料を挟み込みこの電車線材料を収容することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、前記X線漏洩防止部は、前記電車線材料と密着してこの電車線材料の表面形状に沿って弾性変形可能な弾性体であることを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図6及び図11に示すように、前記X線照射部(14A,14B)は、前記電車線材料の右側側面に右斜め上方向からX線を照射するとともに、この電車線材料の左側側面に左斜め上方向からX線を照射し、前記透過X線測定部(16A,16B)は、前記電車線材料の左側側面を右斜め上方向から透過する透過X線を測定するとともに、この電車線材料の右側側面を左斜め上方向から透過する透過X線を測定することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図7及び図12に示すように、前記X線照射部(15A,15B)は、前記電車線材料の右側側面に右斜め下方向からX線を照射するとともに、この電車線材料の左側側面に左斜め下方向からX線を照射し、前記透過X線測定部(17A,17B)は、前記電車線材料の左側側面を右斜め下方向から透過する透過X線を測定するとともに、この電車線材料の右側側面を左斜め下方向から透過する透過X線を測定することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、前記X線照射部(14C,15C)は、前記電車線材料の右側側面に右方向からX線を照射するとともに、この電車線材料の左側側面に左方向からX線を照射し、前記透過X線測定部(16C,17C)は、前記電車線材料の左側側面を右方向から透過する透過X線を測定するとともに、この電車線材料の右側側面を左方向から透過する透過X線を測定することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、前記透過X線測定部の測定結果を合成する測定結果合成部(18)を備えることを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図1、図13及び図14に示すように、前記電車線材料の測定区間(D)を設定する測定区間設定部(21)と、前記車両の現在位置を検出(S100)する現在位置検出部(22)と、前記測定区間設定部によって設定される前記測定区間と前記現在位置検出部によって検出される前記現在位置とに基づいて、前記測定区間の前記収容部の通過を判定(S130,S170)する測定区間通過判定部(23)とを備え、前記制御部は、前記測定区間通過判定部の判定結果に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御(S160)することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図13及び図14に示すように、前記電車線材料の測定を任意の通過地点で強制的に開始するときに手動操作(S190)される測定開始手動操作部(26)を備え、前記制御部は、前記測定開始手動操作部からの指令に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御(S220)することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である
【0017】
請求項11の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図13及び図14に示すように、前記電車線材料の測定を任意の通過地点で強制的に停止するときに手動操作(S230)される測定停止手動操作部(27)を備え、前記制御部は、前記測定停止手動操作部からの指令に基づいて前記開閉部の開閉動作(S220)を制御することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図1、図13及び図14に示すように、前記電車線材料の検査箇所を設定する検査箇所設定部(24)と、前記電車線材料の検査箇所を検出(S110)する検査箇所検出部(19)と、前記検査箇所設定部によって設定される前記検査箇所と前記検査箇所検出部によって検出される前記検査箇所とに基づいて、この検査箇所への前記収容部の到達を判定(S210)する検査箇所到達判定部(25)とを備え、前記制御部は、前記検査箇所到達判定部の判定結果に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御(S220)することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0019】
請求項13の発明は、請求項12に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図1、図10〜図12に示すように、前記検査箇所設定部は、前記電車線材料がトロリ線(C1)であるときに、このトロリ線と電車線金具(C2)とが接続する接続部を検査箇所(P2)として設定することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0020】
請求項14の発明は、請求項12又は請求項13に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図1、図5〜図7に示すように、前記検査箇所設定部は、前記電車線材料がトロリ線であるときに、このトロリ線と電車線金具とが接続する接続部以外の部分(C1,C2)を検査箇所(P1)として設定することを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【0021】
請求項15の発明は、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、図13に示すように、前記車両が起点から前記検査箇所まで走行する走行距離に対応させて前記透過X線測定部の測定結果を記録する測定結果記録部(29)を備えることを特徴とする電車線材料の非破壊検査装置である。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、電車線材料の状態を任意の位置で移動しながら簡単に非破壊で高精度に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の使用状態の模式図である。
【図2】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の非使用状態の模式図である。
【図3】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置におけるトロリ線を検査しているときの正面図である。
【図4】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の非使用状態の正面図である。
【図5】図3のV-V線で切断した状態を示す断面図であり、(A)はトロリ線の上部を検査しているときの断面図であり、(B)はトロリ線の下部を検査しているときの縦断面図である。
【図6】図5のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【図7】図5のVII-VII線で切断した状態を示す断面図である。
【図8】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置における収容部の分割状態を示す断面図である。
【図9】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置におけるトロリ線とイヤーとの接続部を検査しているときの正面図である。
【図10】図9のX-X線で切断した状態を示す断面図であり、(A)は接続部の上部を検査しているときの断面図であり、(B)は接続部の下部を検査しているときの縦断面図である。
【図11】図10のXI-XI線で切断した状態を示す断面図である。
【図12】図10のXII-XII線で切断した状態を示す断面図である。
【図13】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の構成図である。
【図14】この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の使用状態の模式図である。図2は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の非使用状態の模式図である。
図1及び図2に示す軌道Rは、車両1が走行する通路(線路)であり、電車又は電気機関車などの電気車(鉄道車両)の車輪3aが転がり接触する左右一対のレールを備えている。架線Lは、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて支持物Sによって支持点で支持されている。図1及び図2に示す架線Lは、トロリ線と、ちょう架線と、ハンガイヤーなどから構成されるシンプルカテナリ式ちょう架方式の架線である。架線Lは、例えば、支持物Sによって支持点間の距離(径間)が所定の長さになるように支持されている。支持物Sは、架線Lを支持する構造物であり、架線Lを固定するビーム又はブラケットを電柱によって支持している。き電線Fは、き電用変電所から電車線に電力を供給する電線であり、架線Lと並行に架設されており、一定区間毎に電車線材料C1に電力を供給する。
【0025】
電車線材料C1〜C5は、電気車に電力を供給するために線路に沿って架設される電線路(電車線路)に使用される種々の材料である。電車線材料C1〜C5は、線路上の高い位置に架設される架空式電車線路で使用される電車線とこの支持物、き電線路及びその他の付属設備などある。
【0026】
電車線材料C1は、電気車の集電装置のすり板が接触するトロリ線(電線)であり、すり板が摺動することによって電気車に負荷電流を供給する。電車線材料C1は、例えば、材質が硬銅又は銀若しくはすずなどを僅かに含有する銅合金であり、鋼線を銅で被覆した複合トロリ線(CSトロリ線)、鋼心をアルミニウムで被覆した複合トロリ線(TAトロリ線)、又は大きな引張強さと高い導電率を有する銅合金トロリ線でCr,Zr,Siを僅かに含有する銅合金を熱処理することによって特性を向上させたクロム・ジルコニウム系高強度銅合金トロリ(PHCトロリ線))などである。電車線材料C2は、電車線材料C1を電車線材料C3に吊り下げるためのハンガイヤー(架線金具(電車線金具))であり、この電車線材料C1の高さを略一定に保持する。電車線材料C2は、例えば、材質がアルミニウム青銅、りん青銅又は可鍛鋳鉄などである。電車線材料C2は、電車線材料C3に吊り下げられるハンガC21と、このハンガC21の下端部に取り付けられて電車線材料C1の両側の溝部を締め付けるイヤーC22などを備えている。電車線材料C3は、電車線材料C1を支持するちょう架線(線条(撚線))であり、この電車線材料C1の重量による弛み(弛度)が小さくなるようにこの電車線材料C1を吊るして水平に保持する。電車線材料C4は、電車線材料C1と電車線材料C3とを電気的に接続するコネクタ(架線金具(電車線金具))であり、電車線材料C1の両側の溝部を締め付けるイヤーC41と、電車線材料C3に取り付けられるクランプC42と、イヤーC41とクランプC42とを接続するリード線C43などを備えている。電車線材料C5は、き電線Fから電車線材料C1に電力を供給するフィードイヤー(架線金具(電車線金具))であり、電車線材料C4と同様に、電車線材料C1の両側の溝部を締め付けるイヤーC51と、き電線Fに取り付けられるクランプC52と、イヤーC51とクランプC52とを接続するリード線C53などを備えている。
【0027】
車両1は、軌道Rに沿って走行する移動体である。図1及び図2に示すようにA方向に移動している。図1に示す車両1は、鉄道車両が走行する軌道Rと自動車が走行する道路との双方を走行可能な軌陸車、電気関係の地上設備を走行しながら検査する電気検測車、又は軌道Rの保守作業を実施するために軌道R上を走行する保線作業車などである。車両1は、例えば、軌陸車である場合には、道路走行時には道路走行用のゴムタイヤで道路上を走行し、軌道走行時にはこのゴムタイヤの内側の軌道走行用の車輪3aで軌道R上を走行する構造、又は道路走行時には軌道走行用の車輪3aを上昇させて道路走行用のゴムタイヤで道路上を走行し、軌道走行時には軌道走行用の車輪3aを下降させてこの軌道走行用の車輪3aで軌道R上を走行する構造などを備えている。車両1は、車体2と、走り装置3と、昇降装置4と、非破壊検査装置5などを備えている。車体2は、作業員及び機器を積載するための構造物である。走り装置3は、車体2を支持して軌道R上を走行する装置であり、車輪3aと、駆動力発生部3bと、回転検出部3cなどを備えている。車輪3aは、軌道R上を走行する部材であり、左右一対のレールと転がり接触する。駆動力発生部3bは、車輪3aを回転するための駆動力を発生する部分であり、電動機又は内燃機関などの原動機と、この原動機からの動力を車輪3aに伝達する伝達機構部などを備えている。回転検出部3cは、車両1の車輪3aの回転を検出する部分であり、車両1の車輪3aの回転数に応じたパルス信号を発生する速度発電機などである。回転検出部3cは、例えば、車輪3aの1回転毎に所定数のパルス信号(距離パルス信号)を発生して車輪3aの回転数を検出し、この検出結果を回転検出情報(回転検出信号)として制御部32に出力する。
【0028】
昇降装置4は、非破壊検査装置5の収容部6を昇降する装置である。昇降装置4は、架線Lの電車線材料C1から電気車に電力を導く集電装置(パンタグラフ)に近似した構造であり、実際の集電装置とは異なり集電機能を有さない無集電パンタグラフである。昇降装置4は、図1に示すように、上昇した状態で側面から見たときの外観形状が菱形であり前後対称構造である菱形パンタグラフを利用可能である。昇降装置4は、図1及び図2に示すように、支え部4aと、枠組4bと、台枠4cと、駆動力発生部4dなどを備えている。支え部4aは、非破壊検査装置5の収容部6を支持する部分であり、この収容部6を架線Lに対して水平に押上げるとともにこの収容部6にばねによる緩衝作用を与える。枠組4bは、支え部4aを支持し上下方向に昇降する部材である。枠組4bは、上端が支え部4aに回転自在に連結される上枠4eと、上端が上枠4eに回転自在に連結され、下端が台枠4cに回転自在に連結される下枠4fなどを備えている。台枠4cは、枠組4bを支持する部材であり、車体2の屋根上に支持されており、この車体2との間が碍子などによって電気的に絶縁されている。駆動力発生部4dは、収容部6を昇降させるための駆動力を発生する部分であり、非破壊検査装置5の使用時には支え部4aを上昇させ、非破壊検査装置5の非使用時にはこの支え部4aを下降させる。駆動力発生部4dは、作動流体の流体圧によって駆動力を発生する流体圧シリンダなどであり、下枠4fを昇降動作させる主軸にこの流体圧シリンダのピストンロッドが連結されている。
【0029】
図3は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置におけるトロリ線を検査しているときの正面図である。図4は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の非使用状態の正面図である。図5は、図3のV-V線で切断した状態を示す断面図であり、図5(A)はトロリ線の上部を検査しているときの断面図であり、図5(B)はトロリ線の下部を検査しているときの縦断面図である。図6は、図5のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。図7は、図5のVII-VII線で切断した状態を示す断面図である。図8は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置における収容部の分割状態を示す断面図である。図9は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置におけるトロリ線とイヤーとの接続部を検査しているときの正面図である。図10は、図9のX-X線で切断した状態を示す断面図であり、図10(A)は接続部の上部を検査しているときの断面図であり、図10(B)は接続部の下部を検査しているときの縦断面図である。図11は、図10のXI-XI線で切断した状態を示す断面図である。図12は、図10のXII-XII線で切断した状態を示す断面図である。図13は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の構成図である。
【0030】
図1及び図2に示す非破壊検査装置5は、電車線材料C1,C2の状態を非破壊で検査する装置である。非破壊検査装置5は、図5〜図7、図11及び図12に示すように、架線Lに沿って移動しながら電車線材料C1,C2にX線を照射し、この電車線材料C1,C2を透過する透過X線を測定して、この電車線材料C1,C2を非破壊で検査する。非破壊検査装置5は、車両1に着脱自在に搭載されており、軌道R上を走行しながら電車線材料C1,C2の劣化状態を診断する自走式の劣化状態診断装置である。非破壊検査装置5は、図3〜図12に示す収容部6と、図6〜図8、図11及び図12に示す連結部8と、図3〜図12に示すX線漏洩防止部9と、図3〜図5、図9及び図10に示すガイド部10と、スライド部11と、図6〜図8、図11及び図12に示す開閉部12と、図3〜図5、図9及び図10に示す装着部13と、図5〜図8及び図10〜図12に示すX線照射部14A〜14C,15A〜15Cと、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cと、図13に示す測定結果合成部18と、図3〜図5、図9、図10及び図13に示す検査箇所検出部19と、図13に示す線路情報記憶部20と、測定区間設定部21と、現在位置検出部22と、測定区間通過判定部23と、検査箇所設定部24と、検査箇所到達判定部25と、測定開始手動操作部26と、測定停止手動操作部27と、劣化状態診断部28と、測定結果記録部29と、設定情報記憶部30と、電源部31と、制御部32などを備えている。
【0031】
図1及び図2に示す収容部6は、軌道Rに沿って走行する車両1に装着されて電車線材料C1,C2を収容する部分である。収容部6は、図5及び図11に示すように、架線Lの長さ方向に長い立方体状の容器であり、図3、図4、図6〜図9、図11及び図12に示すように右側収容部7Rと左側収容部7Lなどを備えている。収容部6は、図6、図7、図11及び図12に示すように、電車線材料C1,C2を収容したときに、この電車線材料C1,C2にX線を照射し透過X線を測定可能なように、電車線材料C1,C2の周囲に空間を形成している。収容部6は、図4及び図8に示すように、右側収容部7Rと左側収容部7Lとに分割可能である。収容部6は、図3、図6、図7、図9、図11及び図12に示すように、検査時には右側収容部7Rと左側収容部7Lとが結合し、図4及び図8に示すように移動時には右側収容部7Rと左側収容部7Lとが分割する。収容部6は、この収容部6内で照射されるX線がこの収容部6を透過してこの収容部6外に放射するのを防ぐために、X線を遮蔽可能な鉛などの遮蔽材によって全体を形成、又はこの遮蔽材によってこの収容部6の内面が被覆されている。収容部6は、図3及び図9に示すように、右側収容部7R側のX線漏洩防止部9と左側収容部7L側のX線漏洩防止部9との間に電車線材料C1,C2を挟み込みこの電車線材料C1,C2を収容する。
【0032】
図6、図7、図11及び図12に示す右側収容部7Rは、電車線材料C1,C2の右側側面を収容する部分であり、左側収容部7Lは電車線材料C1,C2の左側側面を収容する部分である。右側収容部7Rは、電車線材料C1,C2の右側面側に開口部を有する断面形状が略U字状の部材であり、左側収容部7Lは電車線材料C1,C2の左側面側に右側収容部7Rと同一形状の開口部を有する断面形状が略U字状の部材である。
【0033】
図6〜図8、図11及び図12に示す連結部8は、右側収容部7Rと左側収容部7Lとを回転自在に連結する部分である。連結部8は、右側収容部7Rの開口部寄りの下縁部と左側収容部7Lの開口部寄りの下縁部とをピン結合(ヒンジ結合)している。連結部8は、図5及び図10に示すように、収容部6が架線Lの長さ方向(A方向)に移動するときには、図4及び図8に示すように右側収容部7Rの開口部寄りの上縁部と左側収容部7Lの開口部寄りの上縁部とが離間して、これらの間に間隙部を形成するように、右側収容部7Rと左側収容部7Lとを連結する。
【0034】
図3〜図12に示すX線漏洩防止部9は、右側収容部7Rと左側収容部7Lとが接合する接合部からのX線の漏洩を防止する部分である。X線漏洩防止部9は、図3、図4、図6〜図9、図11及び図12に示すように、右側収容部7Rと左側収容部7Lとにそれぞれ取り付けられており、右側収容部7R側の開口部の周縁部と左側収容部7L側の開口部の周縁部とを囲むように、これらの周縁部と一体に固定されている。X線漏洩防止部9は、図3、図9、図11及び図12に示すように、電車線材料C1,C2を左右方向から挟み込んだときにこの電車線材料C1,C2との間に隙間が形成されないように、この電車線材料C1,C2と密着してこの電車線材料C1,C2の表面形状に沿って弾性変形可能な弾性体である。X線漏洩防止部9は、例えば、タングステン又はビスマスなどの金属とクロロプレンゴムとを混合して成形した弾力性を有する高比重ゴムなどのようなX線遮蔽ゴムである。
【0035】
図3〜図5、図9及び図10に示すガイド部10は、電車線材料C1の長さ方向に収容部6を移動自在にガイドする部分である。ガイド部10は、電車線材料C1に対してこの収容部6が位置決めされるように、図5及び図10に示すようにこの電車線材料C1の長さ方向(A方向)に沿って移動可能にこの収容部6をガイドする。ガイド部10は、収容部6の進行方向前側と進行方向後側とにそれぞれ配置されており、図3〜図5、図9及び図10に示すようにガイドローラ10aと、フランジ部10bと、支持部10cなどを備えている。ガイド部10は、非破壊検査装置5の使用時には上昇してガイドローラ10aと電車線材料C1とが接触し、非破壊検査装置5の非使用時には下降してこのガイドローラ10aと電車線材料C1とが離間する。ガイドローラ10aは、電車線材料C1と転がり接触する部材である。フランジ部10bは、電車線材料C1から逸脱するのを防止する部分であり、ガイドローラ10aの外周部の両側に形成された断面が略U字状の溝部である。フランジ部10bは、電車線材料C1の幅よりも幅が僅かに広く形成されており、ガイド部10の上昇時に電車線材料C1に案内されるように開口部側が幅広のテーパ状に形成されている。支持部10cは、ガイドローラ10aを回転自在に支持する部分である。支持部10cは、右側収容部7Rと左側収容部7Lとに収容部6が結合状態から分割状態に切り替わったときにも、このガイドローラ10aが電車線材料C1と接触状態を維持するように、スライド部11のスライダ11a側に固定されている。
【0036】
図3〜図5、図9及び図10に示すスライド部11は、電車線材料C1の長さ方向と交差する方向に収容部6を移動自在にガイドする部分である。スライド部11は、電気車の集電装置のすり板が電車線材料C1と同一箇所で摺動するのを防ぐためにこの電車線材料C1に付与されているジグザグ偏位に収容部6が追従して動作するように、この電車線材料C1の長さ方向と交差する方向(図3、図4及び図9に示すB1,B2方向)に往復移動可能にこの収容部6をガイドする。スライド部11は、図5及び図10に示すように、収容部6の進行方向前側と進行方向後側とにそれぞれ配置されており、スライダ11aとガイドレール11bなどを備えている。スライド部11は、例えば、スライダ11a側の凹部とガイドレール11b側の凸部とをスライド自在に嵌合させて、このガイドレール11bに沿ってスライダ11aを往復移動自在にガイドするリニアガイド装置などである。スライダ11aは、ガイドレール11bによってガイドされる部分である。スライダ11aは、外観が板状の部材であり、収容部6、ガイド部10及び検査箇所検出部19を支持した状態でこの収容部6と一体となってこの収容部6の進行方向に対して左右方向(B1,B2方向)に往復移動可能である。ガイドレール11bは、スライダ11aを移動自在にガイドする部分であり、電車線材料C1の長さ方向と直交する方向に沿って配置されている。
【0037】
図6〜図8、図11及び図12に示す開閉部12は、X線照射時には電車線材料C1,C2を収容部6に収容し、X線非照射時にはこの電車線材料C1,C2をこの収容部6から開放するように、この収容部6を開閉する部分である。開閉部12は、右側収容部7Rと左側収容部7Lとが結合状態と分割状態とに切り替わるように収容部6を開閉する。開閉部12は、駆動力発生部12aと、連結部12b,12cなどを備えている。駆動力発生部12aは、収容部6を開閉させるための駆動力を発生する部分である。駆動力発生部12aは、図6、図7、図11及び図12に示すように、非破壊検査装置5の検査動作時にはこの収容部6を閉じ、図8に示すように非破壊検査装置5の移動時にはこの収容部6を開く。駆動力発生部12aは、作動流体の流体圧によって駆動力を発生する流体圧シリンダなどである。駆動力発生部12aは、連結部8を回転中心として右側収容部7Rと左側収容部7Lとが互に逆方向に回転するように、この右側収容部7Rとこの左側収容部7Lとに同一の大きさの駆動力を互に逆方向に作用させる。図6〜図8、図11及び図12に示す連結部12b,12cは、駆動力発生部12aを回転自在に連結する部分である。連結部12bは、駆動力発生部12aのシリンダと右側収容部7Rとをピン結合(ヒンジ結合)し、連結部12cはこの駆動力発生部12aのピストンロッドと左側収容部7Lとをピン結合(ヒンジ結合)する。
【0038】
図3〜図5、図9及び図10に示す装着部13は、軌道Rに沿って走行する車両1に収容部6を装着する部分である。装着部13は、収容部6の下方にこの収容部6と間隔をあけて配置されており、収容部6の幅よりも僅かに長く形成されており、この収容部6の長さよりも僅かに長く形成されている板状部材である。装着部13は、昇降装置4の支え部4aに着脱自在に装着されており、この昇降装置4を介して車両1に装着される。装着部13は、例えば、無集電パンタグラフの集電舟(舟体)を取り外して、この無集電パンタグラフの集電舟を支持する支え部(舟支え部)に装着可能である。装着部13は、スライド部11のガイドレール11bを支持することによってこのスライド部11を介して収容部6を支持するとともに、両端部に検査箇所検出部19を支持している。
【0039】
図5〜図8及び図10〜図12に示すX線照射部14A〜14C,15A〜15Cは、電車線材料C1に収容部6内でX線を照射する部分である。図6及び図11に示すX線照射部14Aは、電車線材料C1の右側側面に右斜め上方向からX線を照射し、X線照射部14Bは電車線材料C1の左側側面に左斜め上方向からX線を照射し、X線照射部14Cは電車線材料C1の右側面に右方向からX線を照射する。一方、図7及び図12に示すX線照射部15Aは、電車線材料C1の右側側面に右斜め下方向からX線を照射し、X線照射部15Bは電車線材料C1の左側側面に左斜め下方向からX線を照射し、X線照射部15Cは電車線材料C1の左側側面に左方向からX線を照射する。図5及び図10に示すように、X線照射部14A〜14Cは収容部6内の一方の端部寄りに配置されており、X線照射部15A〜15CはX線照射部14A〜14Cと所定の間隔Δをあけてこの収容部6の他方の端部寄りに配置されている。X線照射部14A〜14C,15A〜15Cは、電車線材料C1,C2にX線を照射するときには、いずれも電車線材料C1,C2の同一の検査箇所P1,P2にX線を照射する。X線照射部15A〜15Cは、例えば、車両1がA方向に走行するときには、X線照射部14A〜14Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2にX線を照射してからこの車両1が所定の間隔Δだけ走行した後に、この電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2にX線を照射する。X線照射部14A〜14C,15A〜15Cは、例えば、電子ビームをターゲットに衝突させてX線を発生させるX線発生装置であり、電子線を高電圧で加速して陽極に衝突させてX線を発生するX線管などを備えている。
【0040】
図5〜図8及び図10〜図12に示す透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cは、電車線材料C1,C2を透過する透過X線を収容部6内で測定する部分である。図6及び図11に示す透過X線測定部16Aは、電車線材料C1の左側側面を右斜め上方向から透過する透過X線を測定し、透過X線測定部16Bは電車線材料C1の右側側面を左斜め上方向から透過する透過X線を測定し、透過X線測定部16Cは電車線材料C1の左側側面を右方向から透過する透過X線を測定する。一方、図7及び図12に示す透過X線測定部17Aは、電車線材料C1の左側側面を右斜め下方向から透過する透過X線を測定し、透過X線測定部17Bは電車線材料C1の右側側面を左斜め下方向から透過する透過X線を測定し、透過X線測定部17Cは電車線材料C1の右側側面を左方向から透過する透過X線を測定する。透過X線測定部16A〜16Cは、図6及び図11に示すように、電車線材料C1,C2を挟みX線照射部14A〜14Cと対向して、図5及び図10に示すように収容部6内の一方の端部寄りに配置されている。一方、透過X線測定部17A〜17Cは、図7及び図12に示すように、電車線材料C1,C2を挟みX線照射部15A〜15Cと対向して、図5及び図10に示すように透過X線測定部16A〜16Cと所定の間隔Δをあけてこの収容部6の他方の端部寄りに配置されている。透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cは、例えば、透過X線のX線エネルギーを電気信号に変換して出力するX線CCD(電荷結合素子(Charge Coupled Device))であり、この透過X線を可視光線に変換する蛍光倍増管(真空管)などを備えている。透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cは、透過X線の測定結果を透過X線情報(透過X線信号)として制御部32に出力する。
【0041】
図13に示す測定結果合成部18は、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cの測定結果を合成する部分である。測定結果合成部18は、図6及び図11に示す透過X線測定部16Aの右斜め上方向からの透過X線の測定結果と、透過X線測定部16Bの左斜め上方向からの透過X線の測定結果と、透過X線測定部16Cの左方向からの透過X線の測定結果と、図7及び図12に示す透過X線測定部17Aの左斜め下方向からの透過X線の測定結果と、透過X線測定部17Bの右斜め下方向からの透過X線の測定結果と、透過X線測定部17Cの右方向からの透過X線の測定結果とを合成する。測定結果合成部18は、これらの透過X線の測定結果を合成し、略三次元の可視光線からなる透過X線情報を生成し制御部32に出力する。
【0042】
図3〜図5、図9、図10及び図13に示す検査箇所検出部19は、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2を検出する部分である。検査箇所検出部19は、図10〜図12に示す電車線材料C1と電車線材料C2とが接続する接続部であるトロリ線とハンガイヤーとの接続部を検査箇所P2として検出するとともに、図5〜図7に示すこの接続部以外の部分であるトロリ線及びハンガイヤーを検査箇所P1として検出する。検査箇所検出部19は、図5及び図10に示すように、収容部6の進行方向前側と進行方向後側とにそれぞれ配置されており、図13に示すように撮影部19aと照合部19bなどを備えている。撮影部19aは、電車線材料C1,C2を撮影する部分であり、電車線材料C1,C2の周囲を撮影しこの撮影画像を撮影画像情報として照合部19bに出力する。照合部19bは、撮影画像と基準画像とを照合する部分である。照合部19bは、撮影部19aが撮影した撮影画像と、電車線材料C1のみを撮影した第1基準画像とを照合するとともに、撮影部19aが撮影した撮影画像と電車線材料C1,C2のみを撮影した第2基準画像とを照合する。照合部19bは、撮影画像と第2基準画像とが一致するときには検査箇所P2であると判定し、撮影画像と第1基準画像とが一致するときには検査箇所P1であると判定する。検査箇所検出部19は、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2を検出したときには、各検査箇所P1,P2に対応する検査箇所検出情報(検査箇所検出信号)を制御部32に出力する。
【0043】
線路情報記憶部20は、車両1が走行する線路に関する情報を線路情報として記憶する部分である。線路情報記憶部20は、例えば、車両1が通過する各通過地点の位置、距離及び座標などを線路情報として記憶するメモリであり、各通過地点の位置などが変更されたような場合には変更後の線路情報が書き込まれ記憶される。
【0044】
測定区間設定部21は、電車線材料C1,C2の測定区間Dを設定する部分である。測定区間設定部21は、図1及び図2に示すように、電車線材料C1,C2にX線を照射してこの電車線材料C1,C2を透過する透過X線の測定を開始してからこの測定を終了するまでに車両1が移動する測定区間(移動距離)Dを任意に設定する。測定区間設定部21は、電車線材料C1,C2の測定開始地点から測定終了地点までを予め設定する必要があるときに作業者によって操作される入力装置などである。測定区間設定部21は、測定開始地点に車両1が到達したときに電車線材料C1,C2の測定を自動的に開始する必要があるときに作業者によって設定される。また、測定区間設定部21は、測定終了地点に車両1が到達したときに電車線材料C1,C2の測定を自動的に終了する必要があるときに作業者によって設定される。測定区間設定部21は、例えば、線路情報記憶部20が記憶する線路情報を参照して、起点から測定開始地点までの距離と、起点から測定終了地点までの距離とを設定する。測定区間設定部21は、電車線材料C1,C2の測定区間Dを複数設定可能であり、各測定区間Dに対応する測定区間設定情報(測定区間設定信号)を制御部32に出力する。
【0045】
現在位置検出部22は、車両1の現在位置を検出する部分である。現在位置検出部22は、例えば、軌道R側の特定地点に設置された自動列車停止装置(ATS(Automatic Train Stop))のATS地上子との間で相互に情報を送受信するために車両1側に設置されたATS車上子と、このATS車上子からの信号を受信し起点からATS地上子までの距離を表す絶対位置情報(絶対位置信号)を出力するATS受信機と、ATS受信機が出力する絶対位置情報に基づいて車両1の絶対位置を検出し、次のATS地上子に車両1が到達するまでの間に回転検出部3cが出力する回転数検出信号を積算して車両1の現在位置を演算する演算部などを備えている。現在位置検出部22は、回転検出部3cが出力する回転数検出信号とATS受信機が出力する絶対位置信号とに基づいて、起点からの車両1の移動距離(走行距離)を演算し、車両1の現在位置を現在位置情報(現在位置信号)として制御部32に出力する。
【0046】
測定区間通過判定部23は、測定区間設定部21によって設定される測定区間Dと現在位置検出部22によって検出される現在位置とに基づいて、この測定区間Dの車両1の通過を判定する部分である。測定区間通過判定部23は、測定区間設定部21が設定した測定区間Dの起点からの距離と、現在位置検出部22が検出した車両1の起点からの走行距離とに基づいて、測定区間Dに収容部6が進入したか否かを判定するとともに、この測定区間Dから収容部6が進出したか否かを判定する。測定区間通過判定部23は、この判定結果を測定区間通過判定情報(測定区間通過判定信号)として制御部32に出力する。
【0047】
検査箇所設定部24は、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2を設定する部分である。検査箇所設定部24は、例えば、図1及び図2に示す電車線材料C1と電車線材料C2との接続部以外の部分を検査箇所P1として設定する第1の検査箇所設定モードと、電車線材料C1と電車線材料C2との接続部を検査箇所P2として設定する第2の検査箇所設定モードと、電車線材料C1と電車線材料C2との接続部及び接続部以外の部分を検査箇所P1,P2として設定する第3の検査箇所設定モードとを作業者が選択する選択スイッチなどである。検査箇所設定部24は、測定区間D毎に異なる検査箇所設定モードを設定可能であるとともに、電車線材料C1,C2の異なる検査箇所P1,P2を複数設定可能である。検査箇所設定部24は、第1の検査箇所設定モードから第3の検査箇所設定モードまでのいずれか1つの検査箇所設定モードが選択されて検査箇所P1,P2が選択されたときには、各検査箇所P1,P2に対応する検査箇所設定情報(検査箇所設定信号)を制御部32に出力する。
【0048】
検査箇所到達判定部25は、検査箇所設定部24によって設定される検査箇所P1,P2と検査箇所検出部19によって検出される検査箇所P1,P2とに基づいて、この検査箇所P1,P2への車両1の到達を判定する部分である。検査箇所到達判定部25は、検査箇所設定部24が設定した検査箇所P1,P2と、現在位置検出部22が検出した検査箇所P1,P2とに基づいて、検査箇所P1,P2に収容部6が到達したか否かを判定する。検査箇所到達判定部25は、例えば、検査箇所設定部24によって検査箇所P1が設定された場合に、図1及び図2に示すように車両1が軌道R上を走行して検査箇所検出部19によってトロリ線が検出されたときには、収容部6がトロリ線に到達したと判定する。検査箇所到達判定部25は、この判定結果を検査箇所到達判定情報(検査箇所到達判定信号)として制御部32に出力する。
【0049】
測定開始手動操作部26は、電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点で強制的に開始するときに手動操作される部分である。測定開始手動操作部26は、例えば、電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点で強制的に開始するときに作業者によって手動で操作される0N/OFFスイッチなどである。測定開始手動操作部26は、例えば、測定区間設定部21によって測定区間Dが設定された場合や、検査箇所設定部24によって電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2が設定された場合であっても、任意の位置で電車線材料C1,C2の測定を開始する必要があるときに作業者によって手動で選択される。測定開始手動操作部26は、作業者によって測定動作の強制的な開始が選択されたときには、測定開始手動操作情報(測定開始手動操作信号)を制御部32に出力する。
【0050】
測定停止手動操作部27は、電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点で強制的に停止するときに手動操作される部分である。測定停止手動操作部27は、例えば、電車線材料C1,C2の測定を任意の位置で強制的に終了するときに作業者によって操作される0N/OFFスイッチなどである。測定停止手動操作部27は、例えば、測定区間設定部21によって測定区間Dが設定されてこの測定区間Dで測定を開始している場合や、検査箇所設定部24によって電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2が設定されてこの検査箇所P1,P2で測定を開始している場合に、任意の位置で電車線材料C1,C2の測定を終了する必要があるときに作業者によって手動で選択される。測定停止手動操作部27は、作業者によって測定動作の強制的な終了が選択されたときには、測定停止手動操作情報(測定停止手動操作信号)を制御部32に出力する。
【0051】
劣化状態診断部28は、電車線材料C1,C2の劣化状態を診断する部分である。劣化状態診断部28は、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cが出力する透過X線情報、又は測定結果合成部18が出力する透過X線情報に基づいて、電車線材料C1,C2の劣化状態を診断する。劣化状態診断部28は、例えば、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2に損傷部があるときには、損傷部のない健全部に比べて損傷部ではX線の吸収が少なくなるため、この損傷部のX線の透過度と健全部のX線の透過度とを比較して、透過X線強度の相違に基づいて欠陥像を識別し電車線材料C1,C2の劣化状態を診断する。劣化状態診断部28は、電車線材料C1,C2の劣化状態の診断結果を劣化状態情報(劣化状態検出信号)として制御部32に出力する。
【0052】
測定結果記録部29は、車両1が起点から検査箇所P1,P2まで走行する走行距離に対応させて透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cの測定結果を記録する部分である。測定結果記録部29は、例えば、現在位置検出部22が出力する現在位置情報、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17C及び測定結果合成部18が出力する透過X線情報、劣化状態診断部28が出力する劣化状態情報、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2などを記憶するメモリなどである。測定結果記録部29は、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2に欠陥部があるときには、この欠陥部を保守作業時に容易に特定可能なように、起点から検査箇所P1,P2までの車両1の走行距離を透過X線情報及び劣化状態情報と対応させて記憶する。
【0053】
設定情報記憶部30は、測定区間設定部21によって設定される測定区間設定情報と検査箇所設定部24によって設定される検査箇所設定情報とを記憶する部分である。設定情報記憶部30は、例えば、電車線材料C1,C2の測定区間Dと、この電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2とを記憶するメモリなどである。設定情報記憶部30は、測定区間設定情報を記憶するときには、電車線材料C1,C2の測定を開始する測定開始地点までの起点からの距離と、電車線材料C1,C2の測定を終了する測定終了地点までの起点からの距離とを記憶する。設定情報記憶部30は、検査箇所設定情報を記憶する場合には、設定区間Dが設定されているときには各設定区間Dに対応して各検査箇所P1,P2を記憶し、設定区間Dが設定されていないときには検査箇所P1,P2のみを記憶する。
【0054】
電源部31は、非破壊検査装置5に電力を供給する部分である。電源部31は、例えば、X線の照射に必要な電力をX線照射部14A〜14C,15A〜15Cなどに供給するバッテリ装置又は発電機などである。電源部31は、車両1が軌陸車である場合にはこの軌陸車に搭載されている電源装置を利用可能である。
【0055】
制御部32は、非破壊検査装置5の種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部32は、例えば、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2でこの電車線材料C1,C2を収容部6に収容するように開閉部12の開閉動作を制御したり、測定区間通過判定部23の判定結果に基づいて開閉部12の開閉動作を制御したり、検査箇所到達判定部25の判定結果に基づいて開閉部12の開閉動作を制御したり、測定開始手動操作部26からの指令に基づいて開閉部12の開閉動作を制御したり、測定停止手動操作部27からの指令に基づいて開閉部12の開閉動作を制御したりする。また、制御部32は、検査箇所検出部19の検出結果、測定区間通過判定部23の判定結果、検査箇所到達判定部25の判定結果、測定開始手動操作部26からの指令及び測定停止手動操作部27からの指令に基づいて、走り装置3の駆動動作を制御したり、開閉部12の開閉動作を制御したり、X線照射部14A〜14C,15A〜15Cの照射動作を制御したり、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cの測定動作を制御したりする。制御部32は、例えば、検査箇所到達判定部25の判定結果に基づいて、電車線材料C1,C2を収容部6内に収容するように開閉部12の開閉動作を制御したり、電車線材料C1を収容部6内に収容するように開閉部12の開閉動作を制御したりする。さらに、制御部32は、走り装置3の駆動動作を制御するために駆動力発生部3bに回転動作を指令したり、回転検出部3cに検出動作を指令したり、昇降装置4の昇降動作を制御するために駆動力発生部4dに昇降動作を指令したり、開閉部12の開閉動作を制御するために駆動力発生部12aに開閉動作を指令したり、X線照射部14A〜14C,15A〜15Cの照射動作を指令したり、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cの測定動作を指令したり、測定結果合成部18に合成動作を指令したり、検査箇所検出部19及び現在位置検出部22に検出動作を指令したり、線路情報記憶部20から線路情報を読み出したり、測定区間通過判定部23に判定動作を指令したり、検査箇所到達判定部25に判定動作を指令したり、劣化状態診断部28に劣化状態の診断を指令したり、測定結果記録部29に測定結果の記録を指令したり、設定情報記憶部30に測定区間設定情報及び検査箇所設定情報の記憶を指令したり、設定情報記憶部30から測定区間設定情報及び検査箇所設定情報を読み出したりする。制御部32には、駆動力発生部3b、回転検出部3c、駆動力発生部4d、駆動力発生部12a、X線照射部14A〜14C,15A〜15C、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17C、測定結果合成部18、検査箇所検出部19、線路情報記憶部20、測定区間設定部21、現在位置検出部22、測定区間通過判定部23、検査箇所設定部24、検査箇所到達判定部25、測定開始手動操作部26、測定停止手動操作部27、劣化状態診断部28、測定結果記録部29、設定情報記憶部30及び電源部31などが通信装置によって相互に通信可能に接続されている。
【0056】
次に、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の動作を説明する。
図14は、この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。以下では、制御部32の動作を中心として説明する。
図14に示すステップ(以下、Sという)100において、現在位置の検出開始を現在位置検出部22に制御部32が指令する。図1及び図2に示す昇降装置4の駆動力発生部4dが枠組4bを上昇させると、昇降装置4が図2に示す折畳状態から図1に示す上昇状態に切り替わる。その結果、図4に示すように、収容部6が上昇してガイド部10のガイドローラ10aが電車線材料C1と接触し、電車線材料C1に沿って収容部6が移動可能にガイドされる。このとき、図4及び図8に示すように、開閉部12の駆動力発生部12aが収容部6を右側収容部7Rと左側収容部7Lとに分割しているため、右側収容部7Rと左側収容部7Lとが架線Lから離間し、架線Lに収容部6が接触するのを防止する。次に、図1に示すように、軌道R上を車両1が起点から走行を開始すると、回転検出部3cが車輪3aの回転を検出して回転数検出信号を制御部32に出力する。図13に示す現在位置検出部22にこの回転数検出信号を制御部32が出力すると、現在位置検出部22がこの回転数検出信号に基づいて車両1の現在位置を検出する。
【0057】
S110において、検査箇所P1,P2の検出開始を検査箇所検出部19に制御部32が指令する。図1に示すように、車両1が軌道R上を走行すると電車線材料C1に沿って収容部6が移動し、図5及び図10に示すように収容部6とともに検査箇所検出部19も電車線材料C1に沿って移動する。検査箇所検出部19が移動を開始すると、図13に示す撮影部19aが電車線材料C1,C2の周囲を撮像し、照合部19bが基準画像と照合して、図1に示す電車線材料C1と電車線材料C2との接続部である検査箇所P2と、この接続部以外の電車線材料C1のみからなる検査箇所P1とを照合部19bが検出する。
【0058】
S120において、測定区間Dが設定されているか否かを制御部32が判断する。例えば、図1に示すように、ある走行区間のみの電車線材料C1,C2を測定する必要があるときには、測定区間設定部21によって作業者がこの走行区間を測定区間Dとして設定し、図13に示す測定区間設定部21が出力する測定区間設定情報が設定情報記憶部30に記憶されている。このため、設定情報記憶部30から測定区間設定情報を制御部32が読み出して、測定区間Dが設定されているか否かを制御部32が判断する。設定区間Dが設定されていると制御部32が判断したときにはS130に進み、設定区間Dが設定されていないと制御部32が判断したときにはS190に進む。
【0059】
S130において、測定区間Dに収容部6が進入したか否かを制御部32が判断する。現在位置検出部22が出力する現在位置情報を測定区間通過判定部23に制御部32が出力するとともに、設定情報記憶部30から読み出した測定区間設定情報を測定区間通過判定部23に制御部32が出力する。その結果、図1に示すように、電車線材料C1に沿って移動する収容部6が測定区間Dに進入したか否かを測定区間通過判定部23が判定し、測定区間Dに収容部6が進入したと測定区間通過判定部23が判定したときには、測定区間通過判定部23が測定区間通過判定情報を制御部32に出力する。測定区間通過判定情報が制御部32に入力したときには、収容部6が測定区間Dに進入したと制御部32が判断してS140に進む。一方、測定区間通過判定情報が制御部32に入力しなかったときには、収容部6が測定区間Dに進入していないと制御部32が判断して、測定区間通過判定情報が入力するまでS130の判断を制御部32が繰り返す。
【0060】
S140において、検査箇所P1,P2が設定されているか否かを制御部32が判断する。図1に示すように、車両1が走行する通過区間D内における電車線材料C1,C2のある特定の検査箇所P1,P2を指定する必要がある場合には、図13に示す検査箇所設定部24によって作業者が測定区間D毎に検査箇所P1,P2を設定し、検査箇所設定部24が出力する検査箇所設定情報が設定情報記憶部30に記憶されている。このため、設定情報記憶部30から検査箇所設定情報を制御部32が読み出して、検査箇所P1,P2が設定されているか否かを制御部32が判断する。検査箇所P1,P2が設定されていると制御部32が判断したときにはS150に進み、検査箇所P1,P2が設定されていないと制御部32が判断したときにはS160に進み、制御部32が測定動作の開始を直ちに指令する。
【0061】
S150において、検査箇所P1,P2に収容部6が到達したか否かを制御部32が判断する。検査箇所検出部19が出力する検査箇所検出情報を検査箇所到達判定部25に制御部32が出力するとともに、設定情報記憶部30から読み出した検査箇所設定情報を検査箇所到達判定部25に制御部32が出力する。その結果、図1に示すように、電車線材料C1に沿って移動する収容部6が検査箇所P1,P2に到達したか否かを図13に示す検査箇所到達判定部25が判定し、検査箇所P1,P2に収容部6が到達したと検査箇所到達判定部25が判定したときには、検査箇所到達判定部25が検査箇所到達判定情報を制御部32に出力する。検査箇所到達判定情報が制御部32に入力したときには、収容部6が検査箇所P1,P2に到達したと制御部32が判断してS160に進む。一方、検査箇所到達判定情報が制御部32に入力しなかったときには、収容部6が検査箇所P1,P2に到達していないと制御部32が判断して、検査箇所到達判定情報が入力するまでS150の判断を制御部32が繰り返す。
【0062】
S160において、測定動作の開始を制御部32が指令する。現在位置検出部22が出力する現在位置情報と設定情報記憶部30から読み出した測定区間設定情報とに基づいて、車両1が測定区間Dに接近していると制御部32が判断する。その結果、電車線材料C1,C2の測定が可能な徐行速度まで車両1の走行速度を低下させるために、駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。図1に示すように、収容部6が低速で測定区間Dに進入して検査箇所P1,P2に到達すると、図5、図6、図10及び図11に示すようにX線照射部14A〜14Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2に位置決めされて車両1が一時的に停車するように、駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。次に、図6及び図11に示すように、右側収容部7Rと左側収容部7Lとが結合して電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内に収容されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。X線照射部14A〜14Cを制御部32が動作制御すると、X線照射部14A〜14Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2にX線を照射し、この電車線材料C1,C2を透過する透過X線を透過X線測定部16A〜16Cが測定する。透過X線測定部16A〜16Cが透過X線の測定を終了すると、図8に示すように右側収容部7Rと左側収容部7Lとが分割して電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内から開放されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。次に、図5(B)及び図10(B)に示すように、収容部6が所定の間隔Δだけ移動するように、現在位置検出部22が出力する現在位置情報に基づいて駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。収容部6が低速で所定の間隔Δだけ移動すると、X線照射部15A〜15Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2に位置決めされて車両1が一時的に停車するように、駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。次に、図7及び図12に示すように、右側収容部7Rと左側収容部7Lとが結合して電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内に収容されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。X線照射部15A〜15Cを制御部32が動作制御すると、X線照射部15A〜15Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2にX線を照射し、この電車線材料C1,C2を透過する透過X線を透過X線測定部17A〜17Cが測定する。以降は、収容部6の開閉動作及び収容部6の駆動動作などを間欠的に繰り返されて、電車線材料C1,C2の測定が継続される。その結果、図13に示す透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cが出力する透過X線情報が測定結果記録部29に記録されるとともに、測定結果合成部18が出力する透過X線情報も測定結果記録部29に記録される。測定結果記録部29が透過X線情報の記録を終了すると、図8に示すように右側収容部7Rと左側収容部7Lとが分割して電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内から開放されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。
【0063】
S170において、測定区間Dから収容部6が進出したか否かを制御部32が判断する。図13に示す現在位置検出部22が出力する現在位置情報を測定区間通過判定部23に制御部32が出力するとともに、設定情報記憶部30から読み出した測定区間設定情報を測定区間通過判定部23に制御部32が出力する。その結果、電車線材料C1に沿って移動する収容部6が測定区間Dから進出したか否かを測定区間通過判定部23が判定し、測定区間Dから収容部6が進出したと測定区間通過判定部23が判定したときには、測定区間通過判定部23が測定区間通過判定情報を制御部32に出力する。測定区間通過判定情報が制御部32に入力したときには、収容部6が測定区間Dから進出したと制御部32が判断してS180に進む。一方、測定区間通過判定情報が制御部32に入力しなかったときには、収容部6が測定区間Dから進出していないと制御部32が判断して、測定区間通過判定情報が入力するまでS170の判断を制御部32が繰り返す。
【0064】
S180において、次の測定区間Dが設定されているか否かを制御部32が判断する。図1に示すような測定区間Dを作業者が複数設定したときには、測定区間設定部21が出力する測定区間設定情報が設定情報記憶部30に測定順に複数記憶されている。このため、図13に示す設定情報記憶部30から測定区間設定情報を制御部32が読み出して、次の測定区間Dが設定されているか否かを制御部32が判断する。次の設定区間Dが設定されていると制御部32が判断したときにはS130に戻り、S130以降の処理を制御部32が繰り返し、設定区間Dが設定されていないと制御部32が判断したときには制御部32が一連の処理を終了する。
【0065】
S190において、測定開始手動指令が入力したか否かを制御部32が判断する。測定区間設定部21によって作業者が測定区間を設定していない場合であって、作業者が任意の通過地点で強制的に電車線材料C1,C2の測定を開始する必要があるときには、測定開始手動操作部26を作業者が手動で操作する。測定開始手動操作部26を作業者が操作するとこの測定開始手動操作部26が出力する測定開始手動操作情報が制御部32に入力し、測定開始手動操作情報が入力したか否かを制御部32が判断する。測定開始手動操作情報が制御部32に入力したときにはS200に進み、測定開始手動操作情報が制御部32に入力しなかったときには制御部32が一連の処理を終了する。
【0066】
S200において、検査箇所P1,P2が設定されているか否かを制御部32が判断する。検査箇所設定部24によって作業者が検査箇所P1,P2を設定しているときには、設定情報記憶部30から検査箇所設定情報を制御部32が読み出して、検査箇所P1,P2が設定されているか否かを制御部32が判断する。検査箇所P1,P2が設定されていると制御部32が判断したときにはS210に進み、検査箇所P1,P2が設定されていないと制御部32が判断したときにはS220に進み、制御部32が測定動作の開始を直ちに指令する。
【0067】
S210において、検査箇所P1,P2に収容部6が到達したか否かを制御部32が判断する。電車線材料C1に沿って移動する収容部6が検査箇所P1,P2に到達したか否かを検査箇所到達判定部25が判定し、検査箇所到達判定部25が出力する検査箇所到達判定情報が制御部32に入力したときには、収容部6が検査箇所P1,P2に到達したと制御部32が判断してS220に進む。一方、検査箇所到達判定情報が制御部32に入力しなかったときには、収容部6が検査箇所P1,P2に到達していないと制御部32が判断して、検査箇所到達判定情報が入力するまでS210の判断を制御部32が繰り返す。
【0068】
S220において、測定動作の開始を制御部32が指令する。現在位置検出部22が出力する現在位置情報と設定情報記憶部30から読み出した測定区間設定情報とに基づいて、図1に示すように車両1が検査箇所P1,P2に接近していると制御部32が判断したときには、車両1の走行速度を低下させるために駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。収容部6が低速で測定区間Dに進入して検査箇所P1,P2に到達すると、車両1が一時的に停車するように駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。次に、図6及び図11に示すように、電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内に収容されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。X線照射部14A〜14Cを制御部32が動作制御すると、X線照射部14A〜14Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2にX線を照射し、この電車線材料C1,C2を透過する透過X線を透過X線測定部16A〜16Cが測定する。透過X線測定部16A〜16Cが透過X線の測定を終了すると、図8に示すように電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内から開放されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。次に、図5(B)及び図10(B)に示すように、収容部6が所定の間隔Δだけ移動するように駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御し、収容部6が低速で所定の間隔Δだけ移動すると、車両1が一時的に停車するように駆動力発生部3bを制御部32が駆動制御する。次に、図7及び図12に示すように、電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内に収容されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。X線照射部15A〜15Cを制御部32が動作制御すると、X線照射部15A〜15Cが電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2にX線を照射し、この電車線材料C1,C2を透過する透過X線を透過X線測定部17A〜17Cが測定する。その結果、図13に示す透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cが出力する透過X線情報が測定結果記録部29に記録されるとともに、測定結果合成部18が出力する透過X線情報も測定結果記録部29に記録される。測定結果記録部29が透過X線情報の記録を終了すると、図8に示すように電車線材料C1,C2が検査箇所P1,P2で収容部6内から開放されるように、開閉部12の駆動力発生部12aを制御部32が駆動制御する。
【0069】
S230において、測定停止手動指令が入力したか否かを制御部32が判断する。作業者が任意の通過地点で強制的に電車線材料C1,C2の測定を停止する必要があるときには、測定停止手動操作部27を作業者が手動で操作する。測定停止手動操作部27を作業者が操作するとこの測定停止手動操作部27が出力する測定停止手動操作情報が制御部32に入力し、測定停止手動操作情報が入力したか否かを制御部32が判断する。測定停止手動操作情報が制御部32に入力したときには制御部32が一連の処理を終了し、測定停止手動操作情報が制御部32に入力しなかったときにはS200に戻り、S200以降の処理を制御部32が繰り返す。
【0070】
この発明の実施形態に係る電車線材料の非破壊検査装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、軌道Rに沿って走行する車両1に装着されて電車線材料C1,C2を収容部6が収容し、X線照射時にはこの電車線材料C1,C2を収容部6に収容し、X線非照射時にはこの電車線材料C1,C2をこの収容部6から開放するように、この収容部6を開閉部12が開閉し、この電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2でこの電車線材料C1,C2をこの収容部6に収容するように、この開閉部12の開閉動作を制御部32が制御する。このため、軌道Rに沿って移動しながら電車線材料C1,C2を任意の検査箇所P1,P2で簡単に検査することができる。その結果、電車線材料C1,C2の劣化状態を診断することによって、この電車線材料C1,C2の腐食状態などの劣化状況を容易に把握して劣化状態が促進する要因を解明することができ、保守検査の効率化を図ることができる。
【0071】
(2) この実施形態では、電車線材料C1,C2の右側側面を収容する右側収容部7Rとこの電車線材料C1,C2の左側側面を収容する左側収容部7Lとに収容部6が分割可能であり、この右側収容部7Rとこの左側収容部7Lとが結合状態と分割状態とに切り替わるようにこの収容部6を開閉部12が開閉する。このため、簡単な構造によって迅速に電車線材料C1,C2を収容部6内に簡単に収納したりこの電車線材料C1,C2を収容部6内から簡単に開放したりすることができる。また、右側収容部7Rとこの左側収容部7Lとを結合状態と分割状態とに検査時及び移動時に切り替えることができるため、電車線材料C1,C2と収容部6とが衝突するのを防ぐことができるとともに、これらが摩擦接触してこれらの接合部が摩耗するのを防ぐことができる。
【0072】
(3) この実施形態では、右側収容部7Rと左側収容部7Lとが接合する接合部からのX線の漏洩をX線漏洩防止部9が防止し、この右側収容部7R側のX線漏洩防止部9とこの左側収容部7L側のX線漏洩防止部9との間に電車線材料C1,C2を挟み込みこの電車線材料C1,C2を収容部6が収容する。このため、電車線材料C1,C2と収容部6との間に形成される隙間をX線漏洩防止部9によって密封して、これらの間からX線が漏洩するのを防止することができる。
【0073】
(4) この実施形態では、X線漏洩防止部9が電車線材料C1,C2と密着してこの電車線材料C1,C2の表面形状に沿って弾性変形可能な弾性体である。このため、電車線材料C1,C2の表面形状が複雑であってもこの電車線材料C1,C2の表面とX線漏洩防止部9とを密着させて、電車線材料C1,C2と収容部6との隙間からX線が漏洩するのを防止することができる。
【0074】
(5) この実施形態では、X線照射部14Aが電車線材料C1,C2の右側側面に右斜め上方向からX線を照射するとともに、X線照射部14Bがこの電車線材料C1,C2の左側側面に左斜め上方向からX線を照射し、透過X線測定部16Aがこの電車線材料C1,C2の左側側面を右斜め上方向から透過する透過X線を測定するとともに、透過X線測定部16Bがこの電車線材料C1,C2の右側側面を左斜め上方向から透過する透過X線を測定する。このため、電車線材料C1,C2の上側からX線を照射することによってこの電車線材料C1,C2の内部の欠陥部を高精度に検出することができる。
【0075】
(6) この実施形態では、X線照射部15Aが電車線材料C1,C2の右側側面に右斜め下方向からX線を照射するとともに、X線照射部15Bがこの電車線材料C1,C2の左側側面に左斜め下方向からX線を照射し、透過X線測定部16Aがこの電車線材料C1,C2の左側側面を右斜め下方向から透過する透過X線を測定するとともに、透過X線測定部16Bがこの電車線材料C1,C2の右側側面を左斜め下方向から透過する透過X線を測定する。このため、電車線材料C1,C2の下側からX線を照射することによってこの電車線材料C1,C2の内部の欠陥部を高精度に検出することができる。
【0076】
(7) この実施形態では、X線照射部14Cが電車線材料C1,C2の右側側面に右方向からX線を照射するとともに、X線照射部15Cこの電車線材料C1,C2の左側側面に左方向からX線を照射し、透過X線測定部16Cが電車線材料C1,C2の左側側面を右方向から透過する透過X線を測定するとともに、透過X線測定部17Cがこの電車線材料C1,C2の右側側面を左方向から透過する透過X線を測定する。このため、電車線材料C1,C2の側面からX線を照射することによってこの電車線材料C1,C2の内部の欠陥部を高精度に検出することができる。
【0077】
(8) この実施形態では、透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cの測定結果を測定結果合成部18が合成する。このため、電車線材料C1,C2の略三次元の可視光線からなる透過X線情報を生成してこの電車線材料C1,C2の腐食状態などの欠陥部を高精度に検出することができる。
【0078】
(9) この実施形態では、測定区間設定部21によって設定される電車線材料C1,C2の測定区間Dと、現在位置検出部22によって検出される車両1の現在位置とに基づいて、この測定区間Dの収容部6の通過を測定区間通過判定部23が判定し、この測定区間通過判定部23の判定結果に基づいて開閉部12の開閉動作を制御部32が制御する。このため、電車線材料C1,C2の測定を開始し終了するまでの測定区間Dを予め設定しておき、この測定区間Dに収容部6が進入してから進出するまでの間に電車線材料C1,C2の測定を自動的に開始し終了することができる。
【0079】
(10) この実施形態では、電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点で強制的に開始するときに測定開始手動操作部26が手動操作されて、この測定開始手動操作部26からの指令に基づいて開閉部12の開閉動作を制御部32が制御する。このため、電車線材料C1,C2の測定を緊急に実施する必要があるときなどに、簡単な手動操作によって電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点から迅速に開始することができる。
【0080】
(11) この実施形態では、電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点で強制的に停止するときに測定停止手動操作部27が手動操作されて、この測定停止手動操作部27からの指令に基づいて開閉部12の開閉動作を制御部32が制御する。このため、電車線材料C1,C2の測定を直ちに中止する必要があるときなどに、簡単な手動操作によって電車線材料C1,C2の測定を任意の通過地点から迅速に中止することができる。
【0081】
(12) この実施形態では、検査箇所設定部24によって設定される電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2と、検査箇所検出部19によって検出されるこの電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2とに基づいて、この検査箇所P1,P2への収容部6の到達を検査箇所到達判定部25が判定し、この検査箇所到達判定部25の判定結果に基づいて開閉部12の開閉動作を制御部32が制御する。このため、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2を予め設定しておき、この検査箇所P1,P2に収容部6が到達したときにこの検査箇所P1,P2の状態を自動的に測定することができる。
【0082】
(13) この実施形態では、電車線材料C1がトロリ線であるときに、このトロリ線と電車線金具とが接続する接続部を検査箇所P2として検査箇所設定部24が設定する。このため、トロリ線応力が繰り返し作用するトロリ線と電車線金具との接続部を重点的に検査して、この接続部に発生する欠陥を早期に発見することができる。また、トロリ線に電車線金具を取り付けた状態でこのトロリ線の欠陥を検査することができる。
【0083】
(14) この実施形態では、電車線材料C1がトロリ線であるときに、このトロリ線と電車線金具とが接続する接続部以外の部分を検査箇所P1として検査箇所設定部24が設定する。このため、トロリ線内部の欠陥を重点的に検査して、このトロリ線に発生する腐食状態などの欠陥を早期に発見することができる。
【0084】
(15) この実施形態では、車両1が起点から検査箇所P1,P2まで走行する走行距離に対応させて透過X線測定部16A〜16C,17A〜17Cの測定結果を測定結果記録部29が記録する。このため、電車線材料C1,C2の検査箇所P1,P2に欠陥部があるときには、この欠陥部を保守作業時に容易に特定することができ、電車線材料C1,C2の修繕作業や交換作業を迅速に実施することができる。
【0085】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、電車線材料C1とイヤーC22との接続部を検査箇所P1として検査する場合を例に挙げて説明したが、電車線材料C1とイヤーC41,C51との接続部を検査箇所として検査することもできる。また、この実施形態では、電車線材料C1〜C5を例に挙げて説明したが、トロリ線とトロリ線とを添わせて接続するダブルイヤー、トロリ線とトロリ線とを突き合わせて接続するスプライサなどについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、架線Lがシンプルカテナリ式ちょう架方式の架線である場合を例に挙げて説明したが、このような架線方式に限定するものではない。例えば、シンプルカテナリ式ちょう架方式の架線Lのトロリ線とちょう架線との間に補助ちょう架線を1本架設し、補助ちょう架線にトロリ線をハンガイヤーによって吊り下げるコンパウンドカテナリ式ちょう架方式の架線についてもこの発明を適用することができる。同様に、シンプルカテナリ式ちょう架方式の架線を所定の間隔をあけて2組平行に架設したツインシンプルカテナリ式ちょう架方式の架線についてもこの発明を適用することができる。この場合には、電車線材料C1の長さ方向に前後にずらして収容部6を複数設置し、それぞれの収容部6によって電車線材料C1,C2を収容して検査することができる。
【0086】
(2) この実施形態では、昇降装置4として菱形パンタグラフを例に挙げて説明したが、車両1の進行方向に対して非対称であるシングルアーム式パンタグラフなどの他の形式のパンタグラフについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、電車線として架空式電車線路を例に挙げて説明したが、導電性レールを使用する第三軌条式(サードレール式)電車線路や、車両1が走行する軌道Rの左右のレールなどについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、透過X線測定部16A〜16Cの測定結果と透過X線測定部17A〜17Cの測定結果とを可視光線に変換してこれらを合成又はいずれか一方を選択して表示装置上に表示することができる。
【0087】
(3) この実施形態では、検査箇所検出部19が撮影画像と基準画像とを照合して検査箇所P1,P2を検出しているが、電車線材料C1,C2に光を照射しこの反射光を検出することによって検査箇所P1,P2を検出することもできる。また、この実施形態では、現在位置検出部22が回転検出部3cの出力信号とATS車上子の出力信号とに基づいて車両1の現在位置を検出する場合を例に挙げて説明したが、このような検出方法に限定するものではない。例えば、GPS(Global Positioning System(全地球測位システム))又は自律航行装置(ジャイロ)を併用して車両1の現在位置を検出することもできる。例えば、トンネル区間以外の明かり区間を車両1が走行するときにはGPS信号などに基づいて現在位置検出部22が車両1の走行距離を演算し、トンネル区間を車両1が走行するときには回転検出部3cの出力信号とATS車上子の出力信号とに基づいて現在位置検出部22が車両1の走行距離を演算することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
2 車体
3 走り装置
3a 車輪
3b 駆動力発生部
3c 回転検出部
4 昇降装置
5 非破壊検査装置
6 収容部
7R 右側収容部
7L 左側収容部
8 連結部
9 X線漏洩防止部
10 ガイド部
11 スライド部
12 開閉部
12a 駆動力発生部
13 装着部
14A〜14C,15A〜15C X線照射部
16A〜16C,17A〜17C 透過X線測定部
18 測定結果合成部
19 検査箇所検出部
20 線路情報記憶部
21 測定区間設定部
22 現在位置検出部
23 測定区間通過判定部
24 検査箇所設定部
25 検査箇所到達判定部
26 測定開始手動操作部
27 測定終了手動操作部
28 劣化状態診断部
29 測定結果記録部
30 設定情報記憶部
31 電源部
32 制御部
R 軌道
L 架線
S 支持物
F き電線
1 電車線材料(トロリ線)
2 電車線材料(ハンガイヤー)
3 電車線材料(ちょう架線)
4 電車線材料(コネクタ)
5 電車線材料(フィードイヤー)
1,P2 検査箇所
D 測定区間
Δ 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線材料の状態を非破壊で検査する電車線材料の非破壊検査装置であって、
軌道に沿って走行する車両に装着されて前記電車線材料を収容する収容部と、
前記電車線材料の検査箇所に前記収容部内でX線を照射するX線照射部と、
前記電車線材料の検査箇所を透過する透過X線を前記収容部内で測定する透過X線測定部と、
X線照射時には前記電車線材料を前記収容部に収容し、X線非照射時には前記電車線材料を前記収容部から開放するように、この収容部を開閉する開閉部と、
前記電車線材料の検査箇所でこの電車線材料を前記収容部に収容するように、前記開閉部の開閉動作を制御する制御部と、
を備える電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記収容部は、前記電車線材料の右側側面を収容する右側収容部とこの電車線材料の左側側面を収容する左側収容部とに分割可能であり、
前記開閉部は、前記右側収容部と前記左側収容部とが結合状態と分割状態とに切り替わるように前記収容部を開閉すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記右側収容部と前記左側収容部とが接合する接合部からのX線の漏洩を防止するX線漏洩防止部を備え、
前記収容部は、前記右側収容部側のX線漏洩防止部と前記左側収容部側のX線漏洩防止部との間に前記電車線材料を挟み込みこの電車線材料を収容すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記X線漏洩防止部は、前記電車線材料と密着してこの電車線材料の表面形状に沿って弾性変形可能な弾性体であること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記X線照射部は、前記電車線材料の右側側面に右斜め上方向からX線を照射するとともに、この電車線材料の左側側面に左斜め上方向からX線を照射し、
前記透過X線測定部は、前記電車線材料の左側側面を右斜め上方向から透過する透過X線を測定するとともに、この電車線材料の右側側面を左斜め上方向から透過する透過X線を測定すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記X線照射部は、前記電車線材料の右側側面に右斜め下方向からX線を照射するとともに、この電車線材料の左側側面に左斜め下方向からX線を照射し、
前記透過X線測定部は、前記電車線材料の左側側面を右斜め下方向から透過する透過X線を測定するとともに、この電車線材料の右側側面を左斜め下方向から透過する透過X線を測定すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記X線照射部は、前記電車線材料の右側側面に右方向からX線を照射するとともに、この電車線材料の左側側面に左方向からX線を照射し、
前記透過X線測定部は、前記電車線材料の左側側面を右方向から透過する透過X線を測定するとともに、この電車線材料の右側側面を左方向から透過する透過X線を測定すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記透過X線測定部の測定結果を合成する測定結果合成部を備えること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記電車線材料の測定区間を設定する測定区間設定部と、
前記車両の現在位置を検出する現在位置検出部と、
前記測定区間設定部によって設定される前記測定区間と前記現在位置検出部によって検出される前記現在位置とに基づいて、前記測定区間の前記収容部の通過を判定する測定区間通過判定部とを備え、
前記制御部は、前記測定区間通過判定部の判定結果に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記電車線材料の測定を任意の通過地点で強制的に開始するときに手動操作される測定開始手動操作部を備え、
前記制御部は、前記測定開始手動操作部からの指令に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記電車線材料の測定を任意の通過地点で強制的に停止するときに手動操作される測定停止手動操作部を備え、
前記制御部は、前記測定停止手動操作部からの指令に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記電車線材料の検査箇所を設定する検査箇所設定部と、
前記電車線材料の検査箇所を検出する検査箇所検出部と、
前記検査箇所設定部によって設定される前記検査箇所と前記検査箇所検出部によって検出される前記検査箇所とに基づいて、この検査箇所への前記収容部の到達を判定する検査箇所到達判定部とを備え、
前記制御部は、前記検査箇所到達判定部の判定結果に基づいて前記開閉部の開閉動作を制御すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記検査箇所設定部は、前記電車線材料がトロリ線であるときに、このトロリ線と電車線金具とが接続する接続部を検査箇所として設定すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記検査箇所設定部は、前記電車線材料がトロリ線であるときに、このトロリ線と電車線金具とが接続する接続部以外の部分を検査箇所として設定すること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。
【請求項15】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の電車線材料の非破壊検査装置において、
前記車両が起点から前記検査箇所まで走行する走行距離に対応させて前記透過X線測定部の測定結果を記録する測定結果記録部を備えること、
を特徴とする電車線材料の非破壊検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−209227(P2011−209227A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79305(P2010−79305)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】