説明

電鋳金型の製造方法

【課題】 バックアップ材への金属の転写性に優れ、かつ簡便に作ることができる電鋳金型の製造方法を提供する。
【解決手段】 金属、樹脂またはセラミックスからなる母型の表面に金属を電着して電鋳中間型を形成する電鋳中間型形成工程(1)と、電鋳中間型に電着された金属の表面にバックアップ材を接着するバックアップ材着接工程(2)と、電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から母型を分離してバックアップ材に金属を着接させた電鋳金型を取出す母型分離工程(3)と、電鋳金型の仕上げ工程(4)とを備え、電鋳中間型形成工程(1)を、母型の表面を該表面にトリアジンジチオール系導電化付与剤を付与するとともに金属を無電解メッキして導電化処理し、その後、導電化処理した母型に金属を電着する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂やゴム製品等の成形に使用される電鋳金型を製造する電鋳金型の製造方法に係り、特に、微細加工形状及び複雑立体形状を有する樹脂やゴム製品等の成形に適した電鋳金型を製造する電鋳金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金型は金属加工技術者や機械加工技術者が鋳造、鍛造、圧延、切削、研磨、溶接などの物理的な諸法を用いて、手仕事及び機械により金型を製造しているのが現状である。これらの金属加工には、旋盤、フライス盤、研削盤、ボール盤などの工作機械を使用し、物理的に形状を形成するのが一般的であり、高度技術と高度の加工機械が必要とされるので、金型は高価になり、また、熟練を要するので、特に最近は高度技術者の養成の点でも重要な課題になっている。日本のように先端技術が発達し、熟練者が容易に得られない金型分野においては特に、従来の手法を脱して、新しい手法による迅速、安価、高精度金型の製造技術の開発が不可欠である。さらに、最近はミクロンレベルの微細な模様が要求される分野が出現し、従来の方法での金型製作には一層の高度技術と高性能加工機械が不可欠となってきる。
【0003】
一方、最近の競争力の激化は生産性の高い技術の開発を促進しており、射出成型からプレス成型へ移行しつつある。試算で比較してみると、例えば、射出成型では、およそ20sで一個の製品が製造され、24時間休みなく稼動しても、4324個の製品が生産できるのみである。これに対して、100個取りのプレス金型を使用すると、24時間休みなく稼動すると、なんと432400個の製品が生産できる。
このような製品として、表面にサブミクロン以下のフレネル形状やマット形状を持った微小レンズ(5mm2以下)などが考えられている。このような微小レンズのフレネル形状やマット形状を迅速にかつ正確に模写するためには、金型製作に模写技術を導入する必要がある。
【0004】
この種の金型技術としては、従来から電鋳型が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電鋳金型の製造方法は、一般に、金属、樹脂またはセラミックスからなる母型の表面に金属を電着して電鋳中間型を形成し、この電鋳中間型に電着された金属の表面にバックアップ材を接着し、その後、電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から母型を分離してバックアップ材に金属を着接させた電鋳金型を取出すようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−128788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このように製造される電鋳金型にあっては、電鋳中間型にバックアップ材を接着し、この接着物から母型を分離し、バックアップ材に金属を転写させて電鋳金型を取出すようにしているが、この金属の転写が必ずしも円滑に行なわれていないという問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、バックアップ材への金属の転写性に優れ、かつ簡便に作ることができる電鋳金型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の電鋳金型の製造方法は、金属、樹脂またはセラミックスからなる母型の表面に金属を電着して電鋳中間型を形成する電鋳中間型形成工程と、該電鋳中間型に電着された金属の表面にバックアップ材を接着するバックアップ材着接工程と、該電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から上記母型を分離してバックアップ材に金属を着接させた電鋳金型を取出す母型分離工程とを備えた電鋳金型の製造方法において、
上記電鋳中間型形成工程を、上記母型の表面を該表面にトリアジンジチオール系導電化付与剤を付与するとともに金属を無電解メッキして導電化処理し、その後、該導電化処理した母型に金属を電着する構成にしている。
尚、電鋳金型としては、多数個取同種同形状、同種同形の連続模様、多種多様形状等どのような形状でも差支えない。
【0009】
このようにして得られた電鋳中間型は、金属薄膜と母型が導電化剤を介在して化学結合で接着するので、例えば高温状態にてストレスをかけない限り両者が分離することはなく、母型表面が分子レベルで模写できることになる。そして、母型分離工程においては、例えば高温状態にすると、トリアジンジチオール系導電化付与剤の剥離性に起因して、電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から母型を分離させやすくすることができ、そのため、バックアップ材への金属の転写性に優れ、型の製造が確実に行なわれるようになるとともに、簡便に作ることができるようになる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記導電化処理において、上記母型表面を、
下記の一般式(1):
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、R1は-NHCnH2n+1 または-N(CnH2n+1)2 なる一般式で示され、nは8〜20の整数であるアルキルアミノ基類、または、R1は-NHC20H12, -NHCH2C20H12, -NHCH2CH2CH2CH2C20H12, -N(CH3)C20H12, -N(CH3)CH2C20H12, -N(CH3)CH2CH2CH2CH2C20H12, -NHC22H14, -NHCH2C22H14, -N(CH3)C22H14, -N(CH3)CH2C22H14, -NHC22H14, -NHCH2C22H14なる電子供与基を有するアミノ基類、または、-N(CH2CH2)2CHOCOC6H3(NO2)2, -NHC10H20OCOC6H3(NO2)2, -NHCH2C6H3(NO2)-, -NHC6H3(NO2)-, -NHC6H3(CN), -NHC6H2(NO2)2, -NHC6H3(COOCH3), -NHC10H5(NO2), -NHC10H4(NO2)2 なる電子吸引基からなるアミノ基類である。さらに、R1は-SCONHC3H6Si(OCH3)3, -SCONHC3H6SiCH3(OCH3)2, -SCONHC3H6Si(OC2H5)3, -OCONHC3H6Si(OCH3)3, -OCONHC3H6SiCH3(OCH3)2, -OCONHC3H6Si(OC2H5)3, -NHC6H4OCOONHC3H6Si(OC2H5)3, -N(CH3)C6H4OCOONHC3H6Si(OC2H5)3, -SHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH(C2H5)C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH2C3H6Si(OCH3)3, -SHNH2C6H12Si(OC2H5)3, -OHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH(C2H5)C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH2C3H6Si(OCH3)3, -OHNH2C6H12Si(OC2H5)3, -NHC6H4OHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -NHC6H4OHNH2C3H6Si(OCH3)3, -N(CH3)C6H4OHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3 なるアルコキシシリルアミノ基類を意味し、Mは-Hまたはアルカリ金属である)で示されるアルコキシシリルトリアジンジチオール(FASTD)の少なくとも一種類以上の導電性付与剤で処理している。ここで、Mは、具体的には、-H, Li, Na, KまたはCe等である。
【0013】
アルコキシシリルトリアジンジチオール(FASTD)の少なくとも一種類以上の導電性付与剤を用いたので、例えば、加温することにより、トリアジントリチオールまたはトリアジンジチオール部分が電鋳金型表面に、一方、シリル部分は母型表面に残って離れる。そのため、分離が容易且つ確実に行なわれ、バックアップ材への金属の転写性が極めてよくなる。
【0014】
また、必要に応じ、上記導電性付与剤で処理した母型表面を、パラジウム塩、白金塩、銀塩、塩化スズ、アミン錯体の少なくともいずれかで構成される活性化剤水溶液で処理する構成としている。母型表面と反応したアルコキシシリルトリアジンジチオールの場合に、無電解金属メッキの触媒機能が付与され、メッキを確実に行なわせることができるようになる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記バックアップ材着接工程で用いるバックアップ材を、金属粉及び樹脂配合物で構成し、該金属粉及び樹脂配合物に反応性トリアジンチオールを直接混合して複合体ペースト状に調製した構成としている。
あるいは、必要に応じ、上記バックアップ材着接工程で用いるバックアップ材を、金属粉及び樹脂配合物で構成し、該金属粉を予め反応性トリアジンチオールの溶液に浸漬して界面結合付与処理後、該樹脂配合物に混合して複合体ペースト状に調製した構成としている。
この場合、上記バックアップ材着接工程で、上記複合体ペースト状のバックアップ材を上記電鋳中間型に注入後加熱硬化させることが有効である。
このように、反応性トリアジンジチオールを用いたので、金属粉と樹脂の間に反応性トリアジンジチオールが介在して両者の接着性が高められ、結合が強固になる。
【0016】
そして、必要に応じ、上記反応性トリアジンチオールとして、
下記の一般式(2)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R2は、-NHC3H6-, -NHC4H8-, -NHC6H12-, -N(C2H5)C3H6-, -N(CH3)C3H6-, -N(CH2CH=CH2)C3H6-, -N(C6H5)C3H6-, -NHCH2CH2NHC3H6-, -NHCH2CH2SC3H6-, -NHCH2CH2CH2SC3H6-, -NHCH2C6H4CH2-, -SCONHC3H6-, -SCONHC6H5-, -SCONHC6H4CH2-, -NHC6H4OCONHC3H6-, -N(CH3)C6H4OCONHC3H6-である。 X及びYはCH3-, C2H5-, C3H7-,(CH3)2CH-である。mは1、2または3である)で示される少なくとも一種類以上の反応性トリアジンチオールを用いる構成としている。
【0019】
これにより、三者の混合過程において、金属粉の表面と反応性トリアジンジチオールのチオール基またはアルコキシシリル基が反応し、加熱硬化過程において反応性トリアジンジチオールの残りのチオール基またはアルコキシシリル基が樹脂と反応して、バックアップ材においては金属粉と樹脂の間に介在して両者の接着性を高める結果となる。
【0020】
また、必要に応じ、上記バックアップ材着接工程において、上記バックアップ材を接着する前に電鋳中間型に電着された金属の表面を反応性トリアジンチオールにより界面結合付与処理する構成としている。
この場合、反応性トリアジンチオールとしては、上記一般式(2)で示される少なくとも一種類以上の反応性トリアジンチオールを用いることが有効である。
この界面結合付与処理は、バックアップ材の形成時に電鋳中間型とバックアップ材を結合するために前もって行うが、これにより、両者間の接着強度が増し、金型の耐久性が向上させられる。
【0021】
また、必要に応じ、上記母型分離工程において、上記電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から上記母型を高温中で分離する構成としている。
これにより、例えば、アルコキシシリルトリアジンジチオール(FASTD)の場合、一般には80℃以上の温度状態で母型にストレスをかけると、母型と金属との接着の役割をしていた導電化付与剤であるコピーペイントが分解反応を起こし、トリアジントリチオールまたはトリアジンジチオール部分が電鋳形表面に、またシリル部分は母型表面に残して離れるようになり、分離が容易に行われる。
【0022】
更にまた、必要に応じ、上記母型分離工程で取出された電鋳金型の表面を機能性トリアジンジチオールを用いて表面処理をする構成としている。これにより電鋳金型に、皮膜が生成して離型性が金型表面に賦与される。
【0023】
そして、必要に応じ、上記機能性トリアジンジチオールとして、
下記の一般式(3):
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、R3はCF3(CF2)nCH2N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC2H4N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC3H6N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC6H12N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC6H4(CnH2n+1)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC2H4N(CH2CH=CH2)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(CH2CH=CH2)-, CF3(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OC2H5)3)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OC2H5)3)-, CF3(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OCH3)3)-であり、nは0から10までの整数である)で示される機能性トリアジンジチオールを用いる構成としている。これにより電鋳金型に、皮膜が生成して離型性が金型表面に賦与される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電鋳金型の製造方法によれば、トリアジンジチオール系導電化付与剤の剥離性に起因して、電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から母型を分離させやすくすることができ、そのため、バックアップ材への金属の転写性に優れ、型の製造が確実に行なわれるようになるとともに、電鋳金型を迅速、安価、高精度に作ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法は、図1に示すように、(1)電鋳中間型形成工程,(2)バックアップ材着接工程,(3)母型分離工程,(4)仕上げ工程の各工程に従う。以下詳細に説明する。
【0028】
(1)電鋳中間型形成工程
この工程では、金属、樹脂またはセラミックスからなる母型を、その表面にトリアジンジチオール系導電化付与剤を付与するとともに金属を無電解メッキして導電化処理し、その後、導電化処理した母型の表面に金属を電着して電鋳中間型を形成する。
【0029】
詳しくは、本願において母型の材料として使用することができる材料は金属、樹脂及びセラミックスなど臨界表面張力が25mJ/m2以上のフイルム、板、棒、筐体、球などとその製品を意味する。
これらの中で、表面にOH基が含有する金属、樹脂及びセラミックスが特に好ましく、通常表酸化された銀、銅、ニッケル、ステンレス、鉄、亜鉛、アルミなどの金属、セルロース、メチル化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、酢酸セルロース、フェノール‐ホルマリン樹脂、ハイドロキノン樹脂、クレゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、レゾルシン樹脂、セロファン、メラミン樹脂、グリプタル樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、水酸基含有ポリビニルホルマール樹脂、ポリヒドロキシエチルメタアクリレートとその共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレートとその共重合体、ポリビニルアルコールとその共重合体、ポリ酢酸ビニルの表面加水分解物などOH基を固有の官能基として持つ樹脂、及び金属酸化物を成分として含むセラミックスが該当する。
【0030】
また、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトンイミド、ポリブチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン(アイソタクチック及びシンジオタクチック)、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂の表面に通常のコロナ放電処理をしてOH基を生成させた樹脂及び製品も有効である。
【0031】
さらに、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトンイミド、ポリブチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン(アイソタクチック及びシンジオタクチック)、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂を前記OH含有樹脂溶液に浸漬して表面に吸着させた樹脂及び製品も有効である。
【0032】
さらに加えて、アルカリ性でホルマリン処理してメチロール基を導入した、6‐ナイロン、66‐ナイロン、610ナイロン、芳香族ポリアミド、メラミン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂などの樹脂及び製品も有効である。
ポリエチレンやポリプロピレンなど臨界表面張力が25〜35mJ/m2の範囲内の樹脂は以下に記述するアルキル長鎖含有トリアジンジチオールを選択すると可能となる。
【0033】
この導電化処理においては、母型表面を下記の一般式(1)で示されるアルコキシシリルトリアジンジチオール(FASTD)の少なくとも一種類以上の導電性付与剤で処理している。
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、R1は-NHCnH2n+1 または-N(CnH2n+1)2 なる一般式で示され、nは8〜20の整数であるアルキルアミノ基類、または、R1は-NHC20H12, -NHCH2C20H12, -NHCH2CH2CH2CH2C20H12, -N(CH3)C20H12, -N(CH3)CH2C20H12, -N(CH3)CH2CH2CH2CH2C20H12, -NHC22H14, -NHCH2C22H14, -N(CH3)C22H14, -N(CH3)CH2C22H14, -NHC22H14, -NHCH2C22H14なる電子供与基を有するアミノ基類、または、-N(CH2CH2)2CHOCOC6H3(NO2)2, -NHC10H20OCOC6H3(NO2)2, -NHCH2C6H3(NO2)-, -NHC6H3(NO2)-, -NHC6H3(CN), -NHC6H2(NO2)2, -NHC6H3(COOCH3), -NHC10H5(NO2), -NHC10H4(NO2)2 なる電子吸引基からなるアミノ基類である。さらに、R1は-SCONHC3H6Si(OCH3)3, -SCONHC3H6SiCH3(OCH3)2, -SCONHC3H6Si(OC2H5)3, -OCONHC3H6Si(OCH3)3, -OCONHC3H6SiCH3(OCH3)2, -OCONHC3H6Si(OC2H5)3, -NHC6H4OCOONHC3H6Si(OC2H5)3, -N(CH3)C6H4OCOONHC3H6Si(OC2H5)3, -SHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH(C2H5)C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH2C3H6Si(OCH3)3, -SHNH2C6H12Si(OC2H5)3, -OHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH(C2H5)C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH2C3H6Si(OCH3)3, -OHNH2C6H12Si(OC2H5)3, -NHC6H4OHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -NHC6H4OHNH2C3H6Si(OCH3)3, -N(CH3)C6H4OHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3 なるアルコキシシリルアミノ基類を意味し、Mは-Hまたはアルカリ金属である)ここで、Mは、具体的には、-H, Li, Na, KまたはCe等である。
【0036】
導電化付与剤として作用するアルコキシシリルトリアジンジチオールは水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソパノール、プロピレングリコール、カルビトール、セルソルブなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、安息香酸メチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソールなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など溶剤、またはこれらの混合溶媒に溶解して使用する。
【0037】
このアルコキシシリルトリアジンジチオールは、上記溶剤に0.1〜1000 mmol/dm3の範囲、好ましくは1〜100 mmol/dm3の範囲で溶解して使用される。1 mmol/dm3以下では効果が少なく、また、100 mmol/dm3以上では単分子以上の薄膜が形成されるため、表面形状の模写の精度が落ちる。
【0038】
母型の浸漬は0〜100℃で、1秒〜100分間の範囲、好ましくは10〜70℃、1分〜30分間の範囲で行われる。10℃以下では機能性アルコキシシリルトリアジンジチオールが溶解しない場合があり、また70℃以上では単分子膜の形成が起こりにくい場合がある。1分以下では母型表面が完全に濡れない場合があり、また、30分以上では効果に変化がなく無駄である。
【0039】
上記アルコキシシリルトリアジンジチオールは、図2に示されるように、母型表面と反応して単分子薄膜を形成するが、反応を完結させるために、前記浸漬処理後70〜200℃で1秒〜100分間、望ましくは130〜160℃で1〜20分間熱処理をする場合もある。これらの条件範囲の設定は生産性と効果を尺度として決められる。
【0040】
母型表面と反応したアルコキシシリルトリアジンジチオールに無電解金属めっきの触媒機能を与えるために、パラジウム塩、白金塩、銀塩、塩化スズ、アミン錯体などからなる活性化剤水溶液を使用する。図2に示されるように、この水溶液の触媒は母型表面のSH基部分にパラジウム、白金及び銀塩として化学的に結合するので洗浄しても脱落しない。
【0041】
一般に、Pd‐Sn系の触媒が活性化工程で使用されるが、この活性化浴は水にPdCl2とSn Cl2・7H2Oを溶解させて調整する。PdCl2とSnCl2・7H2Oはそれぞれ0.001〜1mol/Lの濃度範囲で溶解して作製し、0〜70℃の温度範囲で1秒〜60分の浸漬時間で使用される。
Pd‐Sn触媒が担持された母型を無電解めっき浴に浸漬して金属を析出させるが、ここで云う無電解めっき浴とは金属塩と還元剤が主成分であり、これにpH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤及び改良剤などの補助成分が添加されてなる。
【0042】
母型表面を導電化するために、触媒担持母型を無電解めっき浴に浸漬する。無電解めっきできる金属は金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム、白金、真鍮、モリブデン、タングステン、パーマロイ、スチールなどであり、これらの金属塩が使用される。
具体的な金属塩として、AuCN, Ag(NH3)2NO3, AgCN, CuSO4・5H2O, CuEDTA, NiSO4・7H2O, NiCl2, Ni(OCOCH3)2、CoSO4, CoCl2, SnCl2・7H2O、PdCl2などを挙げることができ、主に0.001〜1 mol/Lの濃度範囲で使用される。
【0043】
還元剤とは上記の金属塩を還元して金属を生成する作用を持つものであり、KBH4, NaBH4, NaH2PO2, (CH3)2NH・BH3, CH2O, NH2NH2, ヒドロキシルアミン塩, N,N-エチルグリシンなどであり、0.001〜1mol/Lの濃度範囲で使用される。
【0044】
以上のような主成分に対して、無電解めっき浴の寿命を延長させたり、還元効率を高める目的で補助成分を加えるが、塩基性化合物、無機塩、有機酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、水酸化アンモニア、EDTA, ジアミノエチレン、酒石酸ナトリウム、エチレングリコール、チオ尿素、トリアジンチオール、トリエタノールアミンなどを0.001〜0.1mol/Lの濃度範囲で使用される。
【0045】
無電解めっきは浴の種類及びめっきの目的などによりめっき条件は異なり明確に範囲指定し難いが、大よそ0〜98℃の温度範囲及び、1分〜300分の浸漬時間で使用される。
触媒が担持された配線模様樹脂基盤を無電解めっき浴に浸漬すると、触媒が担持された部分に金属が析出して導電性金属配線模様が出来上がる。この時、触媒は樹脂と化学結合したSH基とイオン結合で結合しているので、金属膜と樹脂は化学結合で連結され、接着強度を発生する。
【0046】
同時に析出した金属の界面(樹脂と接触した部分)は樹脂表面の粗さが転写されるので、Ra:1μmを越えない。また金属膜の表面(空気との接触面)はレベリング剤などの作用により、Ra:1μm付近を維持する。
無電解電鋳皮膜を厚化する場合は前記の様に母型表面を導電化した後、電気鍍金を行うと短時間で目的が達成される。
【0047】
このようにして得られた電鋳金属化母型は、図3に示すように、電鋳金属薄膜と母型が導電化剤を介在して化学結合で接着しているため、高温状態にてストレスをかけない限り両者が分離することはなく、母型表面が分子レベルで模写できる。
【0048】
(2)バックアップ材着接工程
この工程では、電鋳中間型に電着された金属の表面にバックアップ材を接着する。その際、バックアップ材を接着する前に、電鋳中間型に電着された金属の表面を反応性トリアジンチオール溶液に浸漬して界面結合付与処理する。界面結合付与処理は、バックアップ材の形成時に電鋳中間型とバックアップ材を結合するために前もって行う。両者間の接着処理は金型の耐久性を左右する重要な処理となる。
反応性トリアジンチオールとしては、下記の一般式(2)で示される少なくとも一種類以上の反応性トリアジンチオールを用いる。
【0049】
【化8】

【0050】
(式中、R2は、-NHC3H6-, -NHC4H8-, -NHC6H12-, -N(C2H5)C3H6-, -N(CH3)C3H6-, -N(CH2CH=CH2)C3H6-, -N(C6H5)C3H6-, -NHCH2CH2NHC3H6-, -NHCH2CH2SC3H6-, -NHCH2CH2CH2SC3H6-, -NHCH2C6H4CH2-, -SCONHC3H6-, -SCONHC6H5-, -SCONHC6H4CH2-, -NHC6H4OCONHC3H6-, -N(CH3)C6H4OCONHC3H6-である。 X及びYはCH3-, C2H5-, C3H7-,(CH3)2CH-である。mは1、2または3である)
【0051】
また、バックアップ材着接工程で用いるバックアップ材を、金属粉及び樹脂配合物で構成し、金属粉及び樹脂配合物に反応性トリアジンチオールを直接混合して複合体ペースト状に調製する。
あるいはまた、バックアップ材着接工程で用いるバックアップ材を、金属粉及び樹脂配合物で構成し、この金属粉を予め反応性トリアジンチオールの溶液に浸漬して界面結合付与処理後、樹脂配合物に混合して複合体ペースト状に調製する。
このバックアップ材着接工程では、複合体ペースト状のバックアップ材を電鋳中間型に注入後加熱硬化させる。
【0052】
この反応性トリアジンチオールとして、上記と同様に一般式(2)で示される少なくとも一種類以上の反応性トリアジンチオールを用いる。
界面結合付与処理にはトリアジンジチオール類の場合、電解重合処理[有機メッキ処理金属とアクリルゴムとの直接加硫接着(有機メッキ処理金属とアクリルゴムとの直接加硫接着に関する研究: ゴンペン、森邦夫、平原英俊、大石好行, 日本ゴム協会誌 74, 289‐95 (2001).]などが考えられるが、金型には大小複雑形状のものがあり、設備費の制約を受けない浸漬法が設備のコストや対応能力の点で最も有効である。
【0053】
浸漬法により接着性を賦与するためには一般的なトリアジントリチオールでは有効でなく、前記のように表面にOH基が含有する金属表面と容易に反応する反応性トリアジンジチオールが必要である。
【0054】
電鋳中間型表面及び金属粉に反応性表面を作成するための上記の反応性トリアジンジチオールの化合物を、溶剤に0.001〜10重量%(以下wt%と言う)の範囲内で溶剤に溶解して調整する。好ましくは0.01〜2 wt%である。0.01 wt%以下ではめっきの被覆率が十分であるが、十分な剥離強度が得られない場合が発生しやすくなる。2 wt%以上では1分子膜層のほかに多分子膜の層も生成し、表面粗化や凹凸の原因となり接着力も低下するので好ましくない。
【0055】
ここで云う、溶剤とは水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソパノール、プロピレングリコール、カルビトール、セルソルブなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、安息香酸メチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソールなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など溶剤、またはこれらの混合溶媒などが可能である。
【0056】
反応性トリアジンジチオールに電鋳中間型表面及び金属粉を浸漬する場合は0℃〜100℃の温度範囲内で、1秒〜60分間の浸漬で目的が達成される。浸漬条件は溶液の温度、時間及び濃度によって支配されるので、一義的に決められないが、一定濃度では、温度が低い場合は時間が長く、また温度が高い場合は時間が短くなる傾向は明示できる。
【0057】
浸漬後、電鋳中間型表面や金属粉は40〜200℃で1〜30分間の加熱乾燥や前記の溶剤による洗浄を行い、図4に示すような皮膜が生成して反応性の賦与が完了する。
【0058】
本願の金型においては複合体ペーストから調製されるバックアップ材の特性が金型の耐久性に強く影響する。金型の耐久性を高めるためには電鋳中間型とバックアップ材の接着強度、及びバックアップ材を構成する金属粉と樹脂の接着強度を高める必要がある。
反応性トリアジンジチオールは、図5に示すように、金属粉と樹脂の間に介在して両者の接着性を高めるのに有効である。
【0059】
金属粉、樹脂の間の接着性を高めるためには金属粉、樹脂配合物および反応性トリアジンジチオールの三者をよく混合して複合体ペーストとした後、加熱してバックアップ材を調製することにより可能となる。
三者の混合過程において、金属粉の表面と反応性トリアジンジチオールのチオール基またはアルコキシシリル基が反応し、加熱硬化過程において反応性トリアジンジチオールの残りのチオール基またはアルコキシシリル基が樹脂と反応して、バックアップ材においては金属粉と樹脂の間に介在して両者の接着性を高める結果となる。
【0060】
ここで、金属粉とはマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、鉄などであり、樹脂とはエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂を意味する。エポキシ樹脂にはフェノール系硬化剤やアミン系硬化剤を、また不飽和樹脂にはスチレンと過酸化物を加える。
【0061】
エポキシ樹脂とはエピコート828、843、1004、630などとして知られるビスフェノール、アミノフェノール、トリヒドロキシベンゼンのグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂など2官能性、3官能性、4官能性及び多官能性のものが使用される。
不飽和ポリエステル樹脂とはイソフタル酸、マレン酸、マロン酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、デカンジオールなどのジオールからなる不飽和アルキッド樹脂にスチレンを混合または溶解して使用する。
【0062】
金属粉は1〜100μmの球状、繊維状及び板状の粉体であり、樹脂100重量部(以下部で示す)に対して300〜800部を加える。300部以下では伝熱機能が著しく失われるので好ましくない。また800部以上ではバックアップ材の強度が低下するので好ましくない。
【0063】
エポキシ硬化剤とは、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノフェニルメタンなどのアミン類やこれらのアダクトなどは有効である。
エポキシ硬化剤は通常樹脂100部に対して1〜100部、好ましくは10〜50部である。10部以下では硬化に時間がかかり、かつ硬化物の強度も弱い。50部以上では硬くなりすぎて割れたりする場合が生じるので好ましくない。
【0064】
エポキシ樹脂系複合体ペーストは流動性や硬さを調製するために1官能性のエポキシ化合物や金属酸化物の充填剤を添加することも可能である。
【0065】
エポキシ樹脂系複合体ペーストを電鋳中間型に20〜30℃で注入後、50〜200℃、10〜300分間、好ましくは100〜160℃、60〜120分間加熱して硬化する。100℃以下では時間がかかりすぎる。また、160℃以上では急激に反応が起こり割れが発生することがある。加熱温度と時間の関係は加熱温度が低いと時間がかかり、加熱温度が高いと時間が短くなる関係がある。
【0066】
不飽和ポリエステル100部に対して20〜300部のスチレンを添加して粘度を調整後過酸化物を0.1〜20部、好ましくは2〜10部を添加して不飽和ポリエステル配合物を調製する。2部以下では硬化時間が長く、10部以上では硬化が早すぎて割れが発生しやすい。
【0067】
金属粉は不飽和ポリエステル配合物100部に対して300〜800部を加える。300部以下では伝熱機能が著しく失われるので好ましくない。また800部以上ではバックアップ材の強度が低下するので好ましくない。
【0068】
不飽和ポリエステル配合物系複合体ペーストは強度を調製するために金属酸化物、カーボンブラック、高分子繊維、ガラス繊維などの充填剤を添加することも可能である。
不飽和ポリエステル配合物系複合体ペーストを電鋳中間型に20〜30℃で注入後、40〜150℃、10〜300分間、好ましくは80〜140℃、30〜90分間加熱して硬化する。80℃以下では時間がかかりすぎる。また、140℃以上では急激に反応が起こり割れが発生することがある。加熱温度と時間の関係は加熱温度が低いと時間がかかり、加熱温度が高いと時間が短くなる関係がある。
【0069】
金属粉は予め前記の反応性トリアジンジチオールの溶液に浸漬し、加熱して表面処理してから、樹脂と混合して複合体ペーストとすることも可能である。この時の混合では反応性トリアジンジチオールを添加しない。生産性の観点から予め処理しておくと有利な場合がある。
【0070】
(3)母型分離工程
この工程では、図1及び図6に示すように、電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から母型を分離して、バックアップ材に金属を着接させた電鋳金型を取出す。
この母型分離工程においては、電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から母型を高温中で分離する。
【0071】
詳しくは、前記のようにして母型、電鋳中間型及びバックアップ材が一組として調整されるが、金型として使用するためにはこれから母型を離す必要があるが、一般には80℃以上の温度状態で母型にストレスをかけると、母型と電鋳中間型間で接着の役割をしていた導電化付与剤であるコピーペイントが分解反応を起こし、図7に示すように、トリアジントリチオールまたはトリアジンジチオール部分が電鋳中間型表面に、またシリル部分は母型表面に残して離れる。
【0072】
(4)仕上げ工程
この工程では、母型分離工程で取出された電鋳金型の表面を機能性トリアジンジチオールを用いて表面処理をする。即ち、最後に、トリアジントリチオールまたはトリアジンジチオール部分が表面に存在する電鋳複合体型の前記分離面を、下記の一般式(3)で示される機能性トリアジンジチオールで電解重合処理をする。
【0073】
【化9】

【0074】
(式中、R3はCF3(CF2)nCH2N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC2H4N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC3H6N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC6H12N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC6H4(CnH2n+1)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC2H4N(CH2CH=CH2)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(CH2CH=CH2)-, CF3(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OC2H5)3)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OC2H5)3)-, CF3(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OCH3)3)-であり、nは0から10までの整数である)
【0075】
これにより、図8に示すような皮膜が生成して離型性が金型表面に賦与される。
トリアジンジチオールの電解重合に使用される電解液は主として、トリアジンチオール誘導体、電解質及び溶剤からなる。トリアジンチオール誘導体は一種または二種以上を混合して目的の機能を発揮させることができるが、その濃度はそれぞれ0.01mmol/L〜100mmol/L,望ましくは0.1mmol/L〜50 mmol/Lである。0.01mmol/L以下では有機メッキ速度が遅く、被膜の特性を制御することが困難である。また、100mmol/L以上では溶解しがたい場合が多々あり、有機メッキ液の調製が困難となる。
【0076】
電解質は水に溶解して、通電性を発揮しかつ安定であれば何でも良いが、一般にNaOH,LiOH, KOH, CeOH, KF, Na2CO3,K2CO3,Na2S04,K2SO3,Na2SO3,K2C03,NaNO2,KNO2,NaNO3,NaClO4,CH3COONa,NaB03,NaAlO3,Na2B207,NaH2PO2,(NaPO3)6,Na2Mo04,Na3SiO3等を挙げることができる。これらを一種または二種以上を混合して使用することができるが、その濃度は一般に、0〜5モル濃度(M),望ましくは0.01M〜2Mの範囲である。トリアジンチオール誘導体のみで電解質の役割をするものもあるが、一般には0.01M程度の電解質濃度が有効である。2M濃度以上になると、トリアジンチオール誘導体が溶解し難くなるので、有機メッキ液の調製が困難となる。電解質についてはトリアジンチオール誘導体が電解質の役割も兼ねるので、使用しないこともある。
【0077】
電解重合温度は1℃〜99℃、好ましくは10℃〜60℃である。また、電解重合時間は1〜100分間、好ましくは5〜30分間である。いずれにおいても、要求する皮膜厚さとの関係があるので、一義的に決定できない。
【0078】
対極(陰極)材料は電解溶液と反応したり、導電性の著しく低いものでない限り、何でも良いが一般にステンレス、白金、カーボン等の不活性導電体が使用される。
【0079】
定電位法は-2〜10Vvs.SCE、好ましくは自然電位から酸化電位の範囲であるが、酸化電位が明確に測定できない場合もあるので一義的に限定できない。自然電位以下では全く重合しないし、酸化電位以上では溶剤の分解が起こる危険性がある。
【0080】
定電流法において電流密度は0.005〜50mA/cm2、好ましくは0.01〜5mA/cm2が適当である。0.01mA/cm2より少ないと、皮膜成長に時間がかかりすぎる。また5mA/cm2より大きいと皮膜に亀裂が生成したり、金属の溶出が見られ好ましくない。
【0081】
以上のようにして10〜500 nm厚さの有機半導体薄膜が金型表面に生成するが、皮膜の欠陥をなくするため、定電流法、定電位法、パルス法及空電解重合を組合わせて行うことが重要である。
【0082】
空電解重合とは中性の電解質溶液にポリマー及びモノマーが付着した重合途中の電極を浸漬して電解重合することである。この方法では、低分子のポリマーは重合度を増大し、未反応モノマーは完全に重合させることができ、洗浄等により有機薄膜が損傷しがたくなる。
【0083】
また、図7に示されるように、電鋳中間型表面にトリアジントリチオールまたはトリアジンジチオール部分が残っているため、この上への電解重合はポリマー分子間の三次元化が進行しやすく、かつ離型膜と電鋳中間型表面との接着強度が高く、離型皮膜の耐久性に優れると言う特徴がある。
【0084】
さらに、母型表面にはイソシアナート基が残っているので、トリアジントリチオールのテトラヒドロフラン溶液(1wt%)に60℃で10分間浸漬すると、導電化賦与が可能となる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例と比較例を示しながら、図1の金型製造フローシートに添って説明する。
<実施例1〜4>と<比較例1〜4>
SUS304板(株式会社ニラコジャパン、SUS‐304 753323、0.1x40x50mm)、エポキシ樹脂基板(味の素ファインテック株式会社 ABF‐GX、40x80x1mm)、ポリエチレン板(アズワン株式会社、Al‐1069、0.1x40x50mm)およびガラス板(株式会社成瀬理工、スライドガラス、863‐14)などの材料板はそれぞれ市販から調達した。エポキシ樹脂基板(40x80x1mm、味の素ファインテック株式会社 ABF‐GX)は鏡面仕上げのSUS304(ニコレ性、Ra:10nm)と重ねて、1kgf/cm2の圧力下で150℃で2分間プレスした後、石鹸水で洗浄、水洗、アルコール洗浄して表面の汚れを除去して使用した。SUS304板とポリエチレン板は石鹸水で洗浄、水洗、アルコール洗浄して表面の汚れを除去した。ガラス板は高圧水銀ランプ(出力:1.5kW,照射エネルギー:2800mJ/cm2, アイグラフィック株式会社製アイミニグランテイジ)を用いて40℃で20分間紫外線を照射後、アルコール洗浄して表面の汚れを除去した。
材料基板は図9に示される機能性トリアジンジチオール(FTD)のアルコール溶液5wt%に40℃で5分間浸漬する。実施例1,2及び4の材料板を150℃で10分間加熱乾燥後、アルコールでよく洗浄してチオール基含有材料基板を作製した。実施例3の材料板はそのままである。これらの結果を図9に示す。表面の元素組成はXPS分析によった。XPS分析はPHI製ESCA‐5600(Al 出力:350W,取込角: 45°、30nm厚さ)で測定した。
【0086】
比較例1のSUS304板の表面にはC1sとO1sが観察され、若干汚染物が残っていることが分かる。同時に表面層はOH基(O1s:530.6eV)などの酸素化合物が精製している。
従って、実施例1のようにSUS304板がトリエトコキシシリルプロピルチオウレイルトリアジンジチオール[(C2H5O)3SiC3H6NHCOSC3N3(SH)2、ESTTD]で処理されると、SUS304板表面にはS2p, N1s, C1s, Si2などが観察され、ジチオールトリアジニルチオウレイルプロピルシリル基が導入されていることが理解できる。O1sが減少しているのはESTTDの皮膜がSUS304板表面が一層程度積層していることを示唆する。従って、図2に示される導電化付与構造が母型表面に形成されていることがわかる。
【0087】
比較例2のエポキシ樹脂基板の表面にはN1s, C1s及びO1sが観察され、エポキシ樹脂配合物がビスフェノール型のエポキシ化合物とアミン系の硬化剤からなっていること分かる。特に、O1sのピークを波形分離すると、OH基(530.1eV;6.7%)と−O−基(531.1eV;6.7%)が1:1で存在することが分かった。これを、ESTTDで処理すると、S2p, N1s, C1s, O1s及びSi2pが観察された。また、O1sはOH基(530.1eV;3.4%)、−O−基(531.1eV;6.7%)及びSi‐O基(532.3eV, 3.3%)からなることが波形分離から分かった。以上の結果から,最表面層のOH 基がエトキシシリル基と反応したものと考えられる。従って、図2に示される導電化付与構造が母型表面に形成されていることがわかる。
【0088】
比較例3のポリエチレン板表面にはCH2基に帰属されるC1sのみが観察される。これを実施例3のようにジデシルアミノトリアジンジチオール[(C10H21)2N-C3H3(SH)2]で処理すると、ポリエチレン板表面に、S2p, N1s 及びC1sが観察される。これは、ポリエチレンとデシル基が近接した表面張力(24〜25mJ/m2)を持つためである。従って、図2に示される導電化付与構造が母型表面に形成されていることがわかる。
【0089】
比較例4のガラス板表面にはC1s、O1s及びSi2pみが観察される。C1sの存在は作業中での空気暴露による汚染のためである。O1sはOH基(530.1eV)及びSi‐O基(532.3eV,)からなる。これを実施例4のようにESTTDで処理すると、ガラス板表面に、S2p, N1s、 C1s、O1s及びSi2pが観察される。さらに、OH基は減少した。これらは、ガラス板表面とエトキシシリル基が反応したためである。従って、図2に示される導電化付与構造が母型表面に形成されていることがわかる。
【0090】
<実施例5〜8>と<比較例5〜8>
次に、Pd‐Sn触媒処理液NP‐8 150ml/lとHCl 150ml/l(上村工業株式会社製)に25℃で1分間浸漬して、Pd‐Sn触媒を担持し、その後5%硫酸水溶液、次いで純水でよく洗浄し、乾燥した後XPSで表面分析した。さらに、触媒担持材料基板は板はカニゼン株式会社のシュマー無電解ニッケル‐リン浴(硫酸ニッケル20g/dm3, ジ亜燐酸ソーダー24g/dm3, 乳酸27g/dm3, プロピオン酸2g/dm3,)に65℃で10分間浸漬すると、ニッケルめっきしたエポキシ樹脂基板が得られた。乾燥後のニッケルめっき析出量は210〜260 mg/cm2(膜厚:0.25〜35μm)であり、100%被覆率が得られた。無電解めっき量は重量測定から計算した。結果を図10に示す。
【0091】
未処理の材料板表面にはPd及びSnの痕跡も認められないが、機能性トリアジンジチオール処理した材料板表面にはPd及びSnの存在が確認できた。さらに、無電解めっき液に未処理の材料板を入れても、ニッケルめっきは全く析出しないが、Pd‐Sn触媒を担持材料板をニッケル無電解めっき液に入れるとニッケルめっきが析出した。従って、図2に示される触媒担持した導電化付与構造が母型表面に形成されていることがわかる。
【0092】
さらに、スルファミン酸ニッケル浴(スルファミン酸ニッケル;400g/dm3, ホウ酸;40g/dm3, pH;4.5)で、2A/dm2の電流密度で40℃、2時間電気鍍金を行い厚さおよそ50μmのニッケル電鋳中間型を作製した。ニッケル電鋳中間型表面をXPSにより分析した結果、最表面層からNi(OH)2(857.6eV, 1.5 nm), Ni2O3(855.8eV, 3.6 nm)およびNiO(353.3eV, 1.2 nm)であることが分かった。
【0093】
<実施例9>と<比較例9、10>
エポキシ樹脂(エピコート828、130ポイズ/25℃、)380g、ニッケル粉(二コラ株式会社社製、Ni‐314013,平均粒子径:7.2μm、フレイク状)380g及びTASTD(実施例9)またはトリアジントリチオール(TT)(比較例10)などの界面結合剤それぞれ0.7gまたは0g(比較例9)を50℃で20分間よく混合した物を調製する。これらにキシレンジアミン68gを30以下で20分間よく混合後、脱気すると複合体ペーストがそれぞれ得られる。次に上記の条件で別途作製した電鋳中間型箔(0.02x50x60 mm)はTASTDまたはトリアジントリチオールのアルコール溶液(1wt%)に40℃で20分間浸漬処理または処理しないものを調製する。これらの電鋳中間型箔にテフロン(商標登録)製の型枠(5x30x50 mm)をのせて、再度減圧下で脱気した複合体ペーストを注入する。これを50℃で2時間、80℃で2時間及び120℃で2時間の温風乾燥機に入れて加熱するとニッケル箔と硬化複合体ペーストが接着した電鋳中間型接合バックアップ材が得られる。電鋳中間型接合バックアップ材のニッケル箔に1cm間隔の切身を入れた後、島津オートグラフにより20℃で、5 mm/minの剥離速度で剥離試験を行い、剥離強度(PS)を求めた。また、バックアップ材を旋盤で切削し、ダンペル(1x10x100mm)を作製し、島津オートグラフにより3点曲げ試験を行った。ロックウエル硬さ試験機(スケールM)により硬度を測定した。結果を図11に示す。
【0094】
<実施例10>と<比較例11>
ニッケル粉(二コラ株式会社社製、Ni‐314013,平均粒子径:7.2μm、フレイク状)380gはアセトン脱脂後、ASTD(実施例10)またはTT(比較例10)の1Wt%アルコール溶液1000mlで30℃で20分間攪拌処理する。これをアルコール洗浄後乾燥すると、表面処理ニッケル粉が得られる。表面処理ニッケル粉380gはエポキシ樹脂(エピコート828、130ポイズ/25℃、)380gと60℃で20分間加熱後、30以下に冷却してから硬化剤アミキュアPN‐40(味の素ファインテクノ株式会社)70gを混合し、脱気すると複合体ペーストが得られる。次にASTDまたはTTの1Wt%アルコール溶液中で30℃、10分間浸漬処理した電鋳中間型箔(0.02x50x60 mm)にテフロン(登録商標)製の型枠(5x30x50 mm)をのせて、再度減圧下で脱気した複合体ペーストを注入する。これを50℃で2時間、80℃で2時間及び120℃で2時間の温風乾燥機に入れて加熱するとニッケル箔と硬化複合体ペーストが接着した電鋳中間型接合バックアップ材が得られる。電鋳中間型接合バックアップ材のニッケル箔に1cm間隔の切身を入れた後、島津オートグラフにより20℃で、5 mm/minの剥離速度で剥離試験を行い、剥離強度(PS)を求めた。また、バックアップ材を旋盤で切削し、ダンペル(1x10x100mm)を作製し、島津オートグラフにより3点曲げ試験を行った。ロックウエル硬さ試験機(スケールM)により硬度を測定した。結果を図11に示す。
【0095】
<実施例11>と<比較例12及び13>
実施例10と比較例11で得た表面処理ニッケル粉または未処理ニッケル粉100gは不飽和ポリエステル溶液(日本ユピカ株式会社製ユピカ4516P、イソフタル酸系不飽和樹脂‐スチレン混合液)100gに80℃20分間加熱混合し、さらに過酸化物硬化剤パーメック(日本油脂製)添加した後脱気すると複合体ペーストが得られる。ASTDまたはTTの1Wt%アルコール溶液中で30℃、10分間浸漬処理した電鋳中間型箔(0.02x50x60 mm)にテフロン(登録商標)製の型枠(5x30x50 mm)をのせて、再度減圧下で脱気した複合体ペーストを注入する。これを50℃で2時間、80℃で2時間及び120℃で2時間の温風乾燥機に入れて加熱するとニッケル箔と硬化複合体ペーストが接着した電鋳中間型接合バックアップ材が得られる。電鋳中間型接合バックアップ材のニッケル箔に1cm間隔の切身を入れた後、島津オートグラフにより20℃で、5 mm/minの剥離速度で剥離試験を行い、剥離強度(PS)を求めた。また、バックアップ材を旋盤で切削し、ダンペル(1x10x100mm)を作製し、島津オートグラフにより3点曲げ試験を行った。ロックウエル硬さ試験機(スケールM)により硬度を測定した。結果を図11に示す。
【0096】
比較例9と12のように界面結合剤をNi粉及びNi箔の表面処理のために使用しない場合、Ni箔と複合体の接着強度は低い値である。また、曲げ強度、曲げ弾性率、硬度、及び熱伝導率も低い値となっている。しかしながら、比較例10、11及び13の様にTTを界面結合剤として使用する場合は接着強度、曲げ強度、曲げ弾性率、硬度、及び熱伝導率などが向上する。EASTDのような界面結合剤はTTのような一般的な界面結合剤より数段優れた物性改良効果を示す。これはNi粉及びNi箔と樹脂との界面結合を形成するのに、非常に有効な物質であることが分かる。
【0097】
<実施例12〜15>と<比較例13〜16>
実施例1〜4及び比較例1〜4の母型から実施例5〜8及び比較例5〜8の無電解ニッケルめっき、電解ニッケルめっきをおこない、それぞれの母型上に厚さおよそ50μmの電鋳中間型を作製する。TASTDのアルコール溶液(1wt%)で30℃、10分間浸漬処理した電鋳中間型に対して、複合体ペースト(エポキシ樹脂(エピコート828、130ポイズ/25℃、)380g、ニッケル粉(二コラ株式会社社製、Ni‐314013,平均粒子径:7.2μm、フレイク状)380g及びTASTD0.7gを50℃で20分間よく混合した物を調製する。これらにキシレンジアミン68gを30以下で20分間よく混合後、脱気すると複合体ペーストがそれぞれ得られる)を注入する。これを50℃で2時間、80℃で2時間及び120℃で2時間の温風乾燥機に入れて加熱するとニッケル箔と硬化複合体ペーストが接着した母型‐電鋳中間型接合バックアップ材が得られる。これを1cm2角に切取り、図6のように瞬間接着剤を使用してSUS304の補助材を母型と電鋳中間型接合バックアップ材に取り付け、20℃と80℃で引張り試験を行った。結果を図12に示す。
【0098】
上記の比較例13〜16は導電化と触媒担持が行われないため、比較試料が作製できなかった。しかしながら、実施例12〜15は図1の金型製造フローシートの工程1から工程4まで行うことができ、図6のような測定試料が調製できた。
【0099】
測定試料を用いて、20℃と80℃でせん断接着強度を測定した結果、20℃の場合には1.2〜2.9MPaまでの接着強度が測定されたが、80℃では0.1〜0.3MPaと非常に低い接着強度を示した。これは、導電化付与層すなわちコピーペースト層が図7のように分解したためである。
【0100】
すなわち、導電化付与層は母型表面の形状を正確にコピーするため、20℃では接着性を保持し、80℃以上になって母型と電鋳Ni型を分離するため接着性を失う機能を持つ必要がある。コピーペースト層のこのような機能は本願の特徴である。
【0101】
<実施例16〜19>
実施例12〜15に従って調整した電鋳中間型表面をアルカリ洗浄し、これを機能性トリアジンジチオール[(HS)2C3N3N(CH2CH=CH2)C2H4CF2CF2CF2CF2CF(CF3)2;F14]の0.2%水溶液(NaNO2; 0.1mol/dm3)中で、0.02mA/cm2の電流密度で40℃、40秒間電解重合して、離型処理を行った。また、比較例17として、ニッケル箔に電鋳Niめっきした電鋳箔を使用して同様の条件で電解重合して離型処理をした。離型性の目安として表面張力[Kunio MORI: Rubber Chem.& Techno. 67, 799(1994)]の測定を行った。また、皮膜の耐久性の目安として、スガ摩擦試験機を用いローラーにキムワイプを巻き、200gの荷重をかけて20回回転してこれを摩擦回数1回として摩擦し、膜厚をエリプソメーターにより測定して膜厚変化から評価した。結果を図13に示す。
【0102】
実施例及び比較例とも表面張力が16〜17mJ/m2の範囲にあり、テフロン(登録商標)並みの離型性を示すことがわかった。実施例16,17及び19は同じ条件にもかかわらず、比較例より摩擦による膜厚変化が著しく少ない。これは実施例の電鋳中間型表面には予め、トリアジンジチオールが強固に結合しており、残りのチオール基が電解重合の過程でF14のチオール基と結合した結果である。比較例においては予め反応したチオール基がなく、電解重合の過程で電鋳中間型と反応するのみであり、反応量の差が耐久性となって現れたためである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法における製造工程を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法において母型の導電化のための過程を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法において電鋳中間型の界面構造を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法において電鋳中間型の反応層構造を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法において電鋳中間型とバックアップ材の界面構造を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法において母型と電鋳金型との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の製造方法において母型と電鋳金型とを分離したときの界面構造を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電鋳金型の表面構造を示す図である。
【図9】実施例1乃至4及び比較例1乃至4の処理条件を示す表図である。
【図10】実施例5乃至8及び比較例5乃至8の処理条件を示す表図である。
【図11】実施例9乃至11及び比較例9乃至13の剥離試験に係る結果を示す表図である。
【図12】実施例12乃至15のせん断強度試験に係る結果を示す表図である。
【図13】実施例16乃至19及び比較例17の表面張力試験に係る結果を示す表図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、樹脂またはセラミックスからなる母型の表面に金属を電着して電鋳中間型を形成する電鋳中間型形成工程と、該電鋳中間型に電着された金属の表面にバックアップ材を接着するバックアップ材着接工程と、該電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から上記母型を分離してバックアップ材に金属を着接させた電鋳金型を取出す母型分離工程とを備えた電鋳金型の製造方法において、
上記電鋳中間型形成工程を、上記母型の表面を該表面にトリアジンジチオール系導電化付与剤を付与するとともに金属を無電解メッキして導電化処理し、その後、該導電化処理した母型に金属を電着する構成にしたことを特徴とする電鋳金型の製造方法。
【請求項2】
上記導電化処理において、上記母型表面を、
下記の一般式(1):
【化1】

(式中、R1は-NHCnH2n+1 または-N(CnH2n+1)2 なる一般式で示され、nは8〜20の整数であるアルキルアミノ基類、または、R1は-NHC20H12, -NHCH2C20H12, -NHCH2CH2CH2CH2C20H12, -N(CH3)C20H12, -N(CH3)CH2C20H12, -N(CH3)CH2CH2CH2CH2C20H12, -NHC22H14, -NHCH2C22H14, -N(CH3)C22H14, -N(CH3)CH2C22H14, -NHC22H14, -NHCH2C22H14なる電子供与基を有するアミノ基類、または、-N(CH2CH2)2CHOCOC6H3(NO2)2, -NHC10H20OCOC6H3(NO2)2, -NHCH2C6H3(NO2)-, -NHC6H3(NO2)-, -NHC6H3(CN), -NHC6H2(NO2)2, -NHC6H3(COOCH3), -NHC10H5(NO2), -NHC10H4(NO2)2 なる電子吸引基からなるアミノ基類である。さらに、R1は-SCONHC3H6Si(OCH3)3, -SCONHC3H6SiCH3(OCH3)2, -SCONHC3H6Si(OC2H5)3, -OCONHC3H6Si(OCH3)3, -OCONHC3H6SiCH3(OCH3)2, -OCONHC3H6Si(OC2H5)3, -NHC6H4OCOONHC3H6Si(OC2H5)3, -N(CH3)C6H4OCOONHC3H6Si(OC2H5)3, -SHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH(C2H5)C3H6Si(OC2H5)3, -SHNH2C3H6Si(OCH3)3, -SHNH2C6H12Si(OC2H5)3, -OHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH(C2H5)C3H6Si(OC2H5)3, -OHNH2C3H6Si(OCH3)3, -OHNH2C6H12Si(OC2H5)3, -NHC6H4OHNH2C3H6Si(OC2H5)3, -NHC6H4OHNH2C3H6Si(OCH3)3, -N(CH3)C6H4OHNH(CH3)C3H6Si(OC2H5)3 なるアルコキシシリルアミノ基類を意味し、Mは-Hまたはアルカリ金属である)で示されるアルコキシシリルトリアジンジチオール(FASTD)の少なくとも一種類以上の導電性付与剤で処理したことを特徴とする請求項1記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項3】
上記導電性付与剤で処理した母型表面を、パラジウム塩、白金塩、銀塩、塩化スズ、アミン錯体の少なくともいずれかで構成される活性化剤水溶液で処理することを特徴とする請求項2記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項4】
上記バックアップ材着接工程で用いるバックアップ材を、金属粉及び樹脂配合物で構成し、該金属粉及び樹脂配合物に反応性トリアジンチオールを直接混合して複合体ペースト状に調製したことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項5】
上記バックアップ材着接工程で用いるバックアップ材を、金属粉及び樹脂配合物で構成し、該金属粉を予め反応性トリアジンチオールの溶液に浸漬して界面結合付与処理後、該樹脂配合物に混合して複合体ペースト状に調製したことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項6】
上記バックアップ材着接工程で、上記複合体ペースト状のバックアップ材を上記電鋳中間型に注入後加熱硬化させることを特徴とする請求項4または5記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項7】
上記反応性トリアジンチオールとして、
下記の一般式(2)
【化2】

(式中、R2は、-NHC3H6-, -NHC4H8-, -NHC6H12-, -N(C2H5)C3H6-, -N(CH3)C3H6-, -N(CH2CH=CH2)C3H6-, -N(C6H5)C3H6-, -NHCH2CH2NHC3H6-, -NHCH2CH2SC3H6-, -NHCH2CH2CH2SC3H6-, -NHCH2C6H4CH2-, -SCONHC3H6-, -SCONHC6H5-, -SCONHC6H4CH2-, -NHC6H4OCONHC3H6-, -N(CH3)C6H4OCONHC3H6-である。 X及びYはCH3-, C2H5-, C3H7-,(CH3)2CH-である。mは1、2または3である)で示される少なくとも一種類以上の反応性トリアジンチオールを用いることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項8】
上記バックアップ材着接工程において、上記バックアップ材を接着する前に電鋳中間型に電着された金属の表面を反応性トリアジンチオールにより界面結合付与処理することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項9】
上記反応性トリアジンチオールとして、上記一般式(2)で示される少なくとも一種類以上の反応性トリアジンチオールを用いることを特徴とする請求項8記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項10】
上記母型分離工程において、上記電鋳中間型にバックアップ材が接着した接着物から上記母型を高温中で分離することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項11】
上記母型分離工程で取出された電鋳金型の表面を機能性トリアジンジチオールを用いて表面処理をすることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の電鋳金型の製造方法。
【請求項12】
上記機能性トリアジンジチオールとして、
下記の一般式(3):
【化3】

(式中、R3はCF3(CF2)nCH2N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC2H4N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC3H6N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC6H12N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC6H4(CnH2n+1)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(CnH2n+1)-, CF3(CF2)nC2H4N(CH2CH=CH2)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(CH2CH=CH2)-, CF3(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OC2H5)3)-, (CF3)2CF(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OC2H5)3)-, CF3(CF2)nC2H4N(C3H6Si(OCH3)3)-であり、nは0から10までの整数である)で示される機能性トリアジンジチオールを用いることを特徴とする請求項11記載の電鋳金型の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−131919(P2007−131919A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326765(P2005−326765)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年11月11日 国立大学法人岩手大学、独立行政法人科学技術振興機構主催の「岩手大学との連携による新技術説明会」において文書をもって発表
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】