説明

露光装置、メンテナンス方法、及びデバイス製造方法

【課題】露光不良の発生を抑制できるメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】光学部材の射出面から射出される露光光で液体を介して基板を露光する露光装置のメンテナンス方法は、脱気処理された第1の液体を介して射出面からの露光光が照射された非晶質フッ素樹脂を含有する膜の表面に、第1の液体よりも所定ガス濃度が高い第2の液体を供給することと、膜の表面に第2の液体を介して紫外光を照射することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、メンテナンス方法、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ工程で用いられる露光装置において、例えば特許文献1に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0258072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液浸露光装置において、所望状態で液体が供給されないと、その液体を用いる処理を良好に実行できなくなる可能性がある。例えば、液体を用いて露光装置の部材をメンテナンスする場合において、所望状態で液体が供給されないと、そのメンテナンスを良好に実行できなくなる可能性がある。その結果、露光装置の性能が低下し、露光不良が発生したり、不良デバイスが発生したりする可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、露光不良の発生を抑制できる露光装置、及びメンテナンス方法を提供することを目的とする。また本発明の態様は、不良デバイスの発生を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、光学部材の射出面から射出される露光光で液体を介して基板を露光する露光装置のメンテナンス方法であって、脱気処理された第1の液体を介して射出面からの露光光が照射された非晶質フッ素樹脂を含有する膜の表面に、第1の液体よりも所定ガス濃度が高い第2の液体を供給することと、膜の表面に第2の液体を介して紫外光を照射することと、を含むメンテナンス方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、本発明の第1の態様のメンテナンス方法でメンテナンスされた露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、光学部材の射出面から射出される露光光で液体を介して基板を露光する露光装置であって、非晶質フッ素樹脂を含有する膜が形成された部材と、脱気処理された第1の液体を介して射出面から射出された露光光が照射された膜の表面に、第1の液体よりも所定ガス濃度が高い第2の液体を供給する供給口と、膜の表面に第2の液体を介して紫外光を照射する照射装置と、を備える露光装置が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、本発明の第3の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、露光不良の発生を抑制できる。また本発明の態様によれば、不良デバイスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る液浸部材及び液体供給装置の一例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る液体処理装置の一例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る基板ステージの一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る露光装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】撥液性を有する膜に紫外光を照射したときの膜の撥液性の変化を説明するためのグラフである。
【図7】本実施形態に係るメンテナンスシーケンスの一例を説明するための図である。
【図8】マイクロデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明では、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0013】
本実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。本実施形態の露光装置EXは、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置である。また、本実施形態の露光装置EXは、例えば米国特許第6897963号明細書、欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されているような、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、基板Pを保持せずに、露光光ELを計測する計測部材C(計測器)を搭載して移動可能な計測ステージ3とを備えた露光装置である。
【0014】
図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板ステージ2と、計測ステージ3と、マスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能な液浸部材4と、露光光ELの光路の少なくとも一部に液体LQを供給可能な液体供給装置5と、液体LQを回収可能な液体回収装置6と、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置7とを備えている。
【0015】
液浸空間は、液体で満たされた空間である。本実施形態においては、液体LQとして、水(純水)を用いる。マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えば半導体ウエハ等の基材と、その基材上に形成された感光膜とを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。
【0016】
照明系ILは、所定の照明領域IRに露光光ELを照射する。照明領域IRは、照明系ILから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を露光光ELで照明する。照明系ILから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びFレーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光を用いる。
【0017】
マスクステージ1は、マスクMを保持した状態で、照明領域IRを含むベース部材8のガイド面8G上を移動可能である。マスクステージ1は、例えば平面モータを含むステージ駆動システムの作動により、ガイド面8G上において、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0018】
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影光学系PLは、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面10を有する。投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子11が射出面10を有する。投影領域PRは、射出面10から射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Pの少なくとも一部に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。本実施形態において、終端光学素子11の光軸は、Z軸と平行である。本実施形態において、射出面10から射出される露光光ELは、−Z方向に進行する。
【0019】
基板ステージ2は、基板Pを保持した状態で、投影領域PRを含むベース部材12のガイド面12G上を移動可能である。計測ステージ3は、計測部材Cを保持した状態で、投影領域PRを含むベース部材12のガイド面12G上を移動可能である。基板ステージ2及び計測ステージ3のそれぞれは、例えば平面モータを含むステージ駆動システムの作動により、ガイド面12G上において、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0020】
本実施形態において、基板ステージ2は、基板Pをリリース可能に保持する保持部13を有する。計測ステージ3は、計測部材Cをリリース可能に保持する保持部14を有する。本実施形態において、基板ステージ2は、米国特許出願公開第2007/0177125号明細書、及び米国特許出願公開第2008/0049209号明細書等に開示されているような、保持部13の周囲の少なくとも一部に配置され、カバー部材Tをリリース可能に保持する保持部15を有する。計測ステージ3は、保持部14の周囲の少なくとも一部に配置され、カバー部材Sをリリース可能に保持する保持部16を有する。
【0021】
なお、カバー部材Tが基板ステージ2に一体的に形成されてもよいし、カバー部材Sが計測ステージ3に一体的に形成されてもよい。
【0022】
本実施形態において、マスクステージ1、基板ステージ2、及び計測ステージ3の位置は、レーザ干渉計ユニット17A、17Bを含む干渉計システム17によって計測される。基板Pの露光処理を実行するとき、あるいは所定の計測処理を実行するとき、制御装置7は、干渉計システム17の計測結果に基づいて、ステージ駆動システムを作動し、マスクステージ1(マスクM)、基板ステージ2(基板P)、及び計測ステージ3(計測部材C)の位置制御を実行する。
【0023】
液浸部材4は、終端光学素子11の近傍に配置される。本実施形態において、液浸部材4は、環状の部材であり、露光光ELの光路の周囲に配置される。本実施形態においては、液浸部材4の少なくとも一部が、終端光学素子11の周囲に配置される。
【0024】
液浸部材4は、射出面10と、その射出面10と対向する位置(投影領域PR)に配置される物体との間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能である。液浸部材4は、射出面10と対向する位置に配置される物体が対向可能な下面18を有する。
【0025】
射出面10は、射出面10と対向する位置に配置される物体の表面(上面)との間で液体LQを保持可能である。下面18は、射出面10と対向する位置に配置される物体の表面(上面)との間で液体LQを保持可能である。一方側の射出面10及び下面18と、他方側の物体の表面(上面)との間に液体LQが保持されることによって、終端光学素子11と物体との間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように液浸空間LSが形成される。
【0026】
本実施形態において、射出面10と対向する位置に配置可能な物体は、その射出面10と対向する位置を含む所定面内において移動可能な物体を含む。本実施形態において、その物体は、基板ステージ2及び計測ステージ3の少なくとも一方を含む。本実施形態において、その物体は、基板ステージ2の保持部15に保持されたカバー部材T、計測ステージ3の保持部16に保持されたカバー部材S、及び計測ステージ3の保持部14に保持された計測部材Cの少なくとも一つを含む。また、本実施形態において、その物体は、保持部13に保持された基板Pを含む。
【0027】
それら物体は、投影光学系PLの像面側(終端光学素子11の射出面10側)において移動可能である。本実施形態において、物体は、射出面10と対向する位置を含むXY平面内において移動可能である。物体は、射出面10及び下面18との間に液体LQを保持した状態で移動可能である。
【0028】
本実施形態においては、基板Pの表面に射出面10からの露光光ELが照射されているときに、投影領域PRを含む基板Pの表面の一部の領域が液体LQで覆われるように液浸空間LSが形成される。液体LQの界面(メニスカス、エッジ)LGの少なくとも一部は、液浸部材4の下面18と基板Pの表面との間に形成される。すなわち、本実施形態の露光装置EXは、局所液浸方式を採用する。
【0029】
例えば基板Pの露光の少なくとも一部において、終端光学素子11及び液浸部材4と、保持部13に保持された基板P及び保持部15に保持されたカバー部材Tの少なくとも一方との間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成される。例えば計測部材C(計測器)を用いる計測の少なくとも一部において、終端光学素子11及び液浸部材4と、保持部14に保持された計測部材C及び保持部16に保持されたカバー部材Sの少なくとも一方との間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成される。
【0030】
図2は、本実施形態に係る液浸部材4及び液体供給装置5の一例を示す図である。なお、図2を用いる説明においては、投影領域PR(終端光学素子11及び液浸部材4と対向する位置)に基板Pが配置される場合を例にして説明するが、上述のように、基板ステージ2(カバー部材T)、及び計測ステージ3(カバー部材S、計測部材C)を配置することもできる。
【0031】
図2に示すように、液浸部材4は、射出面10と対向する位置に配置される開口19と、開口19の周囲に配置される下面20とを有する。射出面10から射出された露光光ELは、開口19を通過して、基板Pに照射可能である。
【0032】
また、液浸部材4は、液体LQを供給可能な供給口21と、液体LQを回収可能な回収口22とを備えている。供給口21は、射出面10から射出される露光光ELの光路Kに液体LQを供給可能である。供給口21から供給された液体LQの少なくとも一部は、開口19を介して、射出面10及び下面18と対向する基板P(物体)上に供給される。供給口21は、射出面10から射出される露光光ELの光路Kの近傍において、その光路Kに面するように配置されている。
【0033】
供給口21は、流路23を介して、液体供給装置5と接続されている。液体供給装置5は、液体LQを送出可能である。流路23は、液浸部材4の内部に形成された供給流路21R、及びその供給流路21Rと液体供給装置5とを接続する供給管24で形成される流路24Rを含む。液体供給装置5から送出された液体LQは、流路23を介して供給口21に供給される。
【0034】
回収口22は、射出面10及び下面18と対向する基板P(物体)上の液体LQの少なくとも一部を回収可能である。回収口22は、基板P(物体)が対向可能な液浸部材4の所定位置に配置されている。本実施形態において、回収口22は、下面20の周囲の少なくとも一部に配置されている。
【0035】
本実施形態において、回収口22には、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の多孔部材25が配置される。本実施形態において、基板P(物体)上の液体LQの少なくとも一部は、多孔部材25の孔を介して回収される。なお、回収口22に、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材であるメッシュフィルタが配置されてもよい。
多孔部材25の下面26に基板P(物体)が対向可能である。下面20の周囲に下面26が配置される。本実施形態において、液浸部材4の下面18の少なくとも一部は、下面20及び多孔部材25の下面26を含む。
【0036】
回収口22は、流路27を介して、液体回収装置6と接続されている。液体回収装置6は、回収口22を介して液体LQを吸引可能である。流路27は、液浸部材4の内部に形成された回収流路22R、及びその回収流路22Rと液体回収装置6とを接続する回収管28で形成される流路28Rを含む。回収口22(多孔部材25の孔)から回収された液体LQは、流路27を介して、液体回収装置6に回収される。
【0037】
液体供給装置5は、流路23を介して、供給口21に液体LQを供給可能である。液体供給装置5は、供給口21を介して、露光光ELの光路Kの少なくとも一部に液体LQを供給可能である。射出面10と対向する位置に基板P(物体)が配置されている状態において、液体供給装置5は、供給口21を介して、射出面10と基板P(物体)の表面との間の露光光ELの光路Kに液体LQを供給可能である。
【0038】
本実施形態においては、露光装置EXが液体供給装置5を有する。なお、液体供給装置5が、露光装置EXとは別の装置でもよい。換言すれば、液体供給装置5は、露光装置EXに対する外部の装置でもよい。液体供給装置5が露光装置EXに対する外部の装置である場合、その液体供給装置5は、流路23を介して供給口21に接続されることによって露光装置EXに使用される。
【0039】
液体供給装置5は、脱気処理された液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行する液体処理装置31を備えている。液体処理装置31は、脱気処理された液体LQsに所定ガスGを溶解して、その液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行可能である。
【0040】
本実施形態において、所定ガスGは、酸素ガスである。なお、所定ガスGが、酸素ガスと、酸素ガスとは異なる種類のガス(例えば窒素ガス)とを含んでいてもよい。なお、所定ガスGが、炭酸ガス、水素ガス、及びオゾンガスの少なくとも一つを含んでもよい。また、所定ガスGが、不活性ガスを含んでもよい。
【0041】
本実施形態において、液体供給装置5は、液体LQpの脱気処理を実行可能な脱気装置32を備えている。脱気処理は、液体LQpに含まれるガスを除去する処理である。脱気処理によって、少なくとも、液体LQpに含まれる所定ガスGが液体LQpから除去される。
【0042】
脱気装置32は、例えば米国特許出願公開第2005/0219490号明細書等に開示されているような、液体に溶存するガス濃度を低減可能な膜脱気装置を含む。本実施形態において、脱気装置32は、液体LQpを供給可能な供給源SPLに接続される。本実施形態において、供給源SPLは、液体LQpとして、水(純水)を供給する。本実施形態において、脱気装置32は、供給源SPLから供給された液体LQpの脱気処理を実行する。本実施形態において、脱気装置32は、管33に形成された流路33Rを介して供給源SPLに接続される。供給源SPLからの液体LQpは、流路33Rを介して脱気装置32に供給される。脱気装置32は、流路33Rを介して供給源SPLから供給された液体LQpの脱気処理を実行する。脱気装置32は、脱気処理された液体LQsを送出可能である。
【0043】
本実施形態において、液体処理装置31は、脱気装置32に接続される。本実施形態において、液体処理装置31は、脱気装置32で脱気処理された液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行可能である。本実施形態において、液体処理装置31は、管34に形成された流路34Rを介して脱気装置32に接続される。脱気装置32からの液体LQsは、流路34Rを介して液体処理装置31に供給される。液体処理装置31は、流路34Rを介して脱気装置32から供給された液体LQsに対して、溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行する。
【0044】
本実施形態において、液体処理装置31は、ガス供給装置35に接続される。ガス供給装置35は、所定ガスGを送出可能である。本実施形態において、液体処理装置31は、管36に形成された流路36Rを介してガス供給装置35に接続される。ガス供給装置35からの所定ガスGは、流路36Rを介して液体処理装置31に供給される。液体処理装置31は、流路36Rを介してガス供給装置35から供給された所定ガスGを液体LQsに溶解して、液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める。
【0045】
液体処理装置31は、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を送出可能である。液体処理装置31は、流路34R(脱気装置32)から供給された脱気処理後の液体LQsに溶存する所定ガス濃度よりも高い所定ガス濃度の液体LQh1を送出可能である。液体処理装置31は、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を流路23に送出し、供給口21を介して露光光ELの光路の少なくとも一部に供給可能である。
【0046】
また、液体処理装置31は、所定ガス濃度が高められていない液体を送出可能である。液体処理装置21は、流路34R(脱気装置32)から供給された脱気処理後の液体LQsに溶存する所定ガス濃度よりとほぼ同じ所定ガス濃度の液体を送出可能である。例えば、液体処理装置31は、脱気装置32から供給された脱気処理後の液体LQsに対する所定ガス濃度を高める処理を実行せずに、その所定ガス濃度が低減されている液体LQsを送出可能である。本実施形態において、所定ガス濃度が低減されている液体LQsが、基板Pの露光において供給される液体(露光液体)LQとして使用される。液体処理装置31は、所定ガス濃度が高められていない(所定ガス濃度が低減されている)液体LQsを流路23に送出し、供給口21を介して露光光ELの光路の少なくとも一部に供給可能である。
【0047】
なお、液体処理装置31が、流路34R(脱気装置32)から供給された脱気処理後の液体LQsに溶存する所定ガス濃度よりも低い所定ガス濃度の液体LQssを送出してもよい。例えば、液体処理装置31が、流路34R(脱気装置32)から供給された液体LQsの脱気処理を実行して液体LQssを生成してもよい。液体処理装置31は、所定ガス濃度が低減された液体LQssを流路23に送出し、供給口21を介して露光光ELの光路の少なくとも一部に供給可能である。なお、そのLQssが、基板Pの露光において供給される液体(露光液体)LQとして使用されてもよい。
【0048】
以下の説明において、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を供給口21(光路K)に供給する動作を適宜、高濃度モード、と称する。また、所定ガス濃度が低減されている液体LQs(LQ)を供給口21(光路K)に供給する動作を適宜、低濃度モード、と称する。
【0049】
本実施形態において、高濃度モードは、液体供給装置5(液体処理装置31)が液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行することを含む。低濃度モードは、液体供給装置5(液体処理装置31)が液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行しないことを含む。換言すれば、低濃度モードは、液体供給装置5(液体処理装置31)が所定ガス濃度を高める処理を停止することを含む。高濃度モードにおいては、所定ガス濃度を高める処理が実行された液体LQh1が供給口21から供給される。低濃度モードにおいては、液体処理装置31による所定ガス濃度を高める処理が停止され、所定ガス濃度を高める処理が実行されない液体LQ(LQs)が供給口21から供給される。
【0050】
図3は、液体処理装置31の一例を示す図である。本実施形態において、液体処理装置31は、気体透過膜43を用いて液体にガスを溶解させる膜溶解装置40を有する。膜溶解装置40は、空間41を形成する容器42と、空間41に配置された気体透過膜43とを有する。気体透過膜43は、気体を透過し、液体を透過しない膜である。気体透過膜43は、空間41を第1空間(液体室)41Aと第2空間(液体室)41Bとに分けるように配置される。
【0051】
流路34R(脱気装置32)からの液体LQsは、液体室41Aに供給される。流路36R(ガス供給装置35)からの所定ガスGは、気体室41Bに供給される。気体室41Bの所定ガスGの少なくとも一部は、気体透過膜43を透過して、液体室41Aに移動可能である。これにより、液体室41Aの液体LQsに所定ガスGが溶解し、溶存する所定ガス濃度が高められた液体LQh1が生成される。液体処理装置31は、気泡を含まず、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を送出可能である。
【0052】
なお、液体に気体を溶解可能な溶解装置の一例が、例えば特開2009−219997号公報に開示されている。
【0053】
本実施形態において、液体処理装置31は、流路34Rと流路24R(23)とを接続可能な流路44Rを有する管44と、流路44Rの一端に配置される流路切替機構45と、流路44Rの他端に配置される流路切替機構46とを有する。流路切替機構45、46は、例えばバルブ機構を含む。流路44Rの一端は、流路切替機構45を介して流路34Rに接続され、流路44Rの他端は、流路切替機構46を介して流路24R(23)に接続される。
【0054】
本実施形態において、制御装置7は、流路切替機構45、46を制御して、高濃度モードと、低濃度モードとの少なくとも一方を実行可能である。
【0055】
制御装置7は、高濃度モードを実行するとき、脱気装置32からの液体LQsが膜溶解装置40に供給され、流路44Rに供給されないように、流路切替機構45を制御する。膜溶解装置40は、供給された液体LQsに所定ガスGを溶解し、溶存する所定ガス濃度が高められた液体LQh1を生成する。膜溶解装置40によって生成された液体LQh1は、流路23に送出される。制御装置7は、膜溶解装置40から送出された液体LQh1が流路23を介して供給口21に供給され、流路44Rに供給されないように、流路切替機構46を制御する。
【0056】
制御装置7は、低濃度モードを実行するとき、脱気装置32からの液体LQsが流路44Rに供給され、膜溶解装置40に供給されないように、流路切替機構45を制御する。流路44Rを流れた液体LQsは、流路切替機構46を介して流路23に流入する。制御装置7は、流路44Rからの液体LQsが流路23を介して供給口21に供給されるように、流路切替機構46を制御する。すなわち、制御装置7は、低濃度モードを実行するとき、膜溶解装置40による所定ガス濃度を高める処理が実行されないように、流路切替機構45、46を制御する。なお、低濃度モードを実行するとき、膜溶解装置40による所定ガス濃度を高める処理が停止されてもよい。
【0057】
図2に示すように、本実施形態において、液体供給装置5は、供給口21に供給する単位時間当たりの液体LQ(LQh1)の量(液体供給量)を調整可能な供給量調整装置37を備えている。供給量調整装置37は、例えばマスフローコントローラを含み、単位時間当たりの液体供給量を調整可能である。制御装置7は、供給量調整装置37を制御して、供給口21を介して光路Kに供給される単位時間当たりの液体LQ(LQh1)の供給量を調整可能である。
【0058】
なお、液体供給装置5が、液体LQ(LQh1、LQs、LQp)中の異物を除去可能なフィルタユニット、及び供給口21に供給する液体LQ(LQh1)の温度を調整可能な温度調整装置を有してもよい。
【0059】
本実施形態において、制御装置7は、液体処理装置31、脱気装置32、及びガス供給装置35の少なくとも一つを制御して、液体処理装置31から送出される液体に溶存する所定ガス濃度を調整可能である。制御装置7は、例えば液体処理装置31の液体室41A及び気体室41Bの少なくとも一方の圧力を調整したり、脱気装置32から液体処理装置31に供給される液体LQsの量を調整したり、脱気装置32の処理能力を調整して脱気装置32から送出される液体LQsに溶存するガス濃度を調整したり、ガス供給装置35から液体処理装置31に供給される所定ガスGの量を調整したりすることによって、液体処理装置31から送出される液体に溶存する所定ガス濃度を調整可能である。
【0060】
高濃度モードにおいては、液体処理装置31によって処理された液体LQh1に溶存する所定ガス濃度は、流路34R(脱気装置32)から液体処理装置31に供給される液体LQsに溶存する所定ガス濃度よりも高い。低濃度モードにおいては、液体処理装置31から送出される液体LQ(LQs)に溶存する所定ガス濃度は、流路34R(脱気装置32)から液体処理装置31に供給される液体LQsに溶存する所定ガス濃度とほぼ等しい。
【0061】
本実施形態において、流路34Rを介して液体処理装置31に供給される液体LQsに溶存するガス濃度は、例えば10ppb以上100ppb以下でもよい。また、高濃度モードにおいて、液体処理装置31から流路24Rに送出される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度が、500ppbよりも高く10ppm以下でもよいし、1ppm以上8ppm以下でもよい。また、高濃度モードにおいて、流路34Rを介して液体処理装置31に供給される液体LQsに溶存するガス濃度に対して、液体処理装置31から流路24Rに送出される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度が、例えば50倍よりも大きく1000倍以下でもよいし、100倍以上800倍以下でもよい。また、高濃度モードにおいて、流路34Rを介して液体処理装置31に供給される液体LQsに溶存するガス濃度に対して、供給口21から光路Kに供給される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度が50倍より大きく1000倍以下になるように調整されてもよいし、100倍以上800倍以下になるように調整されてもよい。また、液体処理装置31から流路24Rに送出される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度に対して、供給口21から光路Kに供給される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度が所定倍になるように調整されてもよい。
【0062】
なお、本実施形態において、液体供給装置5が、供給源SPLを備えていてもよい。なお、供給源SPLが、露光装置EXが設置される工場の設備でもよい。また、液体供給装置5が露光装置EXに対する外部の装置である場合において、露光装置EXが供給源SPLを備えていてもよい。
【0063】
なお、本実施形態において、脱気装置32が、液体供給装置5とは別の装置でもよい。換言すれば、脱気装置32は、液体供給装置5に対する外部の装置でもよい。また、脱気装置32が、露光装置EXとは別の装置でもよい。また、液体供給装置5が露光装置EXに対する外部の装置である場合において、露光装置EXが脱気装置32を備えていてもよい。脱気装置32が液体供給装置5に対する外部の装置であっても、液体供給装置5は、脱気処理された液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行可能である。
【0064】
なお、本実施形態において、液体供給装置5がガス供給装置35を備えてもよい。あるいは、ガス供給装置35が、液体供給装置5とは別の装置でもよい。換言すれば、ガス供給装置35は、液体供給装置5に対する外部の装置でもよい。また、ガス供給装置35が、露光装置EXとは別の装置でもよい。また、液体供給装置5が露光装置EXに対する外部の装置である場合において、露光装置EXがガス供給装置35を備えていてもよい。ガス供給装置35が液体供給装置5に対する外部の装置であっても、液体供給装置5は、脱気処理された液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行可能である。
【0065】
液体回収装置6は、回収口22からの液体LQ(LQh1)を回収可能である。液体回収装置6は、回収口22を真空システムに接続可能である。なお、液体回収装置6が、液体LQ(LQh1)を吸引可能な真空システムを備えていてもよい。液体回収装置6は、回収口22から回収される単位時間当たりの液体回収量を調整可能である。制御装置7は、液体回収装置6を制御して、回収口22を介して基板P上から回収される単位時間当たりの液体LQの回収量を調整可能である。
【0066】
なお、回収口22から多孔部材25を介して実質的に液体LQ(LQh1)のみが回収されてもよい。また、回収口22から多孔部材25を介して液体LQ(LQh1)が液浸空間LSの周囲のガスとともに回収されてもよい。なお、回収口22に多孔部材25が配置されなくてもよい。
【0067】
なお、液浸部材4として、例えば米国特許出願公開第2007/0132976号明細書、欧州特許出願公開第1768170号明細書に開示されているような液浸部材(ノズル部材)を用いることができる。
【0068】
本実施形態において、制御装置7は、供給口21から基板P(物体)上に液体LQ(LQh1)を供給し、その液体LQ(LQh1)の供給と並行して、回収口22から基板P(物体)上の液体LQ(LQh1)を回収することによって、一方側の終端光学素子12及び液浸部材6と、他方側の基板P(物体)との間に液体LQ(LQh1)で液浸空間LSを形成可能である。
【0069】
図4は、終端光学素子11及び液浸部材4と基板Pとの間に液体LQで液浸空間LSが形成されている状態の一例を示す図である。図4に示すように、基板Pは保持部13に保持され、カバー部材Tは保持部15に保持される。カバー部材Tは、保持部13に保持された基板Pの周囲に配置される。基板ステージ2が移動することによって、保持部13に保持された基板P、及び保持部15に保持されたカバー部材Tは、投影領域PRに移動可能である。
【0070】
本実施形態において、保持部13は、基板Pの表面(上面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。保持部15は、カバー部材Tの上面TfとXY平面とがほぼ平行となるように、カバー部材Tを保持する。本実施形態において、保持部13に保持された基板Pの表面と保持部15に保持されたカバー部材Tの上面Tfとは、ほぼ同一平面内に配置される(ほぼ面一である)。なお、Z軸方向に関する基板Pの表面の位置とカバー部材Tの上面Tfとの位置とが異なってもよい。また、カバー部材Tの上面Tfの少なくとも一部が、基板Pの表面(XY平面)に対して傾斜していてもよい。また、カバー部材Tの上面Tfの少なくとも一部が曲面でもよい。
【0071】
本実施形態において、カバー部材Tの上面Tfは、液体LQ(LQh1)に対して撥液性の膜Frの表面を含む。液体LQに対する上面Tfの接触角は、例えば90度以上である。本実施形態において、液体LQに対する上面Tfの接触角は、100度以上である。
【0072】
図1に示すように、保持部14は、計測部材Cの表面(上面)CfとXY平面とがほぼ平行となるように、計測部材Cを保持する。保持部16は、カバー部材Sの上面SfとXY平面とがほぼ平行となるように、カバー部材Sを保持する。本実施形態において、保持部14に保持された計測部材Cの上面Cfと保持部16に保持されたカバー部材Sの上面Sfとは、ほぼ同一平面内に配置される(ほぼ面一である)。なお、Z軸方向に関する計測部材Cの上面Cfの位置とカバー部材Sの上面Sfとの位置とが異なってもよい。また、カバー部材Sの上面Sfの少なくとも一部が、計測部材Cの上面Cf(XY平面)に対して傾斜していてもよい。また、カバー部材Sの上面Sfの少なくとも一部が曲面でもよい。
【0073】
本実施形態において、カバー部材Sの上面Sfは、液体LQに対して撥液性の膜Frの表面を含む。液体LQに対する上面Sfの接触角は、例えば90度以上である。本実施形態において、液体LQに対する上面Sfの接触角は、100度以上である。
【0074】
また、本実施形態において、計測部材Cの上面Cfは、液体LQに対して撥液性の膜Frの表面を含む。液体LQに対する上面Cfの接触角は、例えば90度以上である。本実施形態において、液体LQに対する上面Cfの接触角は、100度以上である。
【0075】
本実施形態において、膜Frを形成する材料は、フッ素を含むフッ素系材料である。本実施形態において、膜Frは、非晶質フッ素樹脂を含有する。膜Frは、非晶質フッ素樹脂と、非晶質フッ素樹脂以外の添加物とを含有してもよい。本実施形態において、膜Frは、PFA(Tetra fluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)の膜である。なお、膜Frが、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)、PEEK(polyetheretherketone)、テフロン(登録商標)等の膜でもよい。また、膜Frが、旭硝子社製「サイトップ」、あるいは3M社製「Novec EGC」でもよい。また、上面Tfを形成する膜Frと上面Sfを形成する膜Frとが、異なる種類の材料で形成されてもよい。また、上面Cfを形成する膜Frと上面Sfを形成する膜Frとが異なる種類の材料で形成されてもよい。
【0076】
本実施形態において、射出面10及び下面18と対向可能な基板ステージ2の上面は、カバー部材Tの上面Tfを含む。射出面10及び下面18と対向可能な計測ステージ3の上面は、カバー部材Sの上面Sf及び計測部材Cの上面Cfの少なくとも一方を含む。以下の説明において、カバー部材Tの上面Tfを適宜、基板ステージ2の上面、と称し、カバー部材Sの上面Sf及び計測部材Cの上面Cfを合わせて適宜、計測ステージ3の上面、と称する。
【0077】
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0078】
図5に示すように、本実施形態においては、終端光学素子11の射出面10から射出される露光光ELで液体LQを介して基板Pを露光する露光処理を含む露光シーケンス(ステップSA1)と、液体LQh1を用いて露光装置EXの部材をメンテナンスするメンテナンスシーケンス(ステップSA2)とが実行される。
【0079】
まず、露光シーケンスについて説明する。露光シーケンスは、基板Pの交換処理、計測ステージ3を用いる計測処理、及び液体LQを介して基板Pを露光する露光処理を含む。露光シーケンスの少なくとも一部において、制御装置7は、脱気処理されて溶存するガス濃度が低減されている液体LQ(LQs)が供給口21から光路Kに対して供給されるように、液体供給装置5を制御する。すなわち、露光シーケンスの少なくとも一部において、制御装置7は、低濃度モードを実行する。
【0080】
制御装置7は、基板搬送装置(不図示)を用いて、基板Pの交換処理を実行する。制御装置7は、露光前の基板Pを保持部13に搬入(ロード)する。なお、保持部13に露光後の基板Pが保持されている場合、その基板Pが保持部13から搬出(アンロード)された後、露光前の基板Pが保持部13に搬入(ロード)される。
【0081】
また、制御装置7は、計測ステージ3(計測部材C、計測器)を用いて、所定の計測処理を実行する。露光前の基板Pが保持部13にロードされ、計測ステージ3を用いる計測処理が終了した後、制御装置7は、基板ステージ2を投影領域PRに移動して、終端光学素子11及び液浸部材4と基板P(基板ステージ2)との間に液体LQで液浸空間LSを形成する。
【0082】
制御装置7は、基板Pの露光を開始する。本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。基板Pの露光において、制御装置7は、マスクステージ1及び基板ステージ2を制御して、マスクM及び基板Pを、XY平面内の所定の走査方向に移動する。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。
【0083】
制御装置7は、基板P(ショット領域)を投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の液浸空間LSの液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射する。これにより、マスクMのパターンの像が基板Pに投影され、その基板Pが射出面10から射出された露光光ELで露光される。基板P上に複数のショット領域が設けられている場合、制御装置7は、それら複数のショット領域を、液体LQを介して順次露光する。
【0084】
本実施形態において、液体供給装置5は、少なくとも基板Pの表面に射出面10からの露光光ELが照射されているときに、所定ガス濃度を高める処理が実行されない液体LQ(LQs)を、射出面10と基板Pの表面との間の光路Kに供給する。例えば、液体供給装置5は、基板Pの表面に射出面10からの露光光ELが照射されているときに、液体処理装置31による所定ガス濃度を高める処理を停止する。
【0085】
基板Pの露光が終了した後、制御装置7は、その露光後の基板Pを保持した基板ステージ2を基板交換位置に移動する。露光後の基板Pは、基板ステージ2からアンロードされ、露光前の基板Pが基板ステージ2にロードされる。以下、制御装置7は、上述の処理を繰り返して、複数の基板Pを順次露光する。
【0086】
次に、メンテナンスシーケンスについて説明する。
上述のように、本実施形態において、計測ステージ3の上面は、液体LQに対して撥液性の膜Frの表面を含む。本発明者の知見によれば、その膜Frとガス濃度が低い液体(LQs)とを接触させた状態で、その膜Frに紫外光を照射すると、その膜Frの撥液性が低下する可能性が高いことが分かった。例えば、液体に溶存する酸素濃度が低いと、膜Frの撥液性が低下する可能性がある。
【0087】
本実施形態においては、局所液浸方式を採用しており、終端光学素子11及び液浸部材4との間で液浸空間LSを形成する物体(基板ステージ2,及び計測ステージ3等)の表面(上面)は、液体LQに対して撥液性であることが望ましい。液体LQに対する物体の表面の撥液性が低下すると、終端光学素子11及び液浸部材4と物体との間に液体LQを良好に保持することが困難となり、液浸空間LSの液体LQが流出したり、物体の表面に液体LQが残留したりする可能性がある。また、本実施形態においては、物体は、終端光学素子11及び液浸部材4に対して移動可能であり、その物体の表面の撥液性が低下すると、その物体の移動に伴って、液浸空間LSの液体LQが流出したり、物体の表面に残留したりする可能性が高くなる。また、流出あるいは残留する液体LQによって気化熱が発生し、物体が熱変形したり、基板Pが熱変形したり、物体の周囲の環境(温度、湿度等)が変動したりしてしまう可能性がある。その結果、計測不良及び露光不良が発生する可能性がある。
【0088】
そこで、本実施形態においては、制御装置7は、非露光シーケンス時に、基板ステージ2の上面、及び計測ステージ3の上面の少なくとも一部のメンテナンス処理を実行する。本実施形態において、メンテナンス処理は、基板ステージ2の上面、及び計測ステージ3の上面の少なくとも一部について、脱気処理された液体LQsを介して露光光が照射されて撥液性が低下した膜の撥液性を高める(回復する)処理を含む。
【0089】
図6は、非晶質フッ素樹脂で形成された膜の表面に光を照射したときに、光の照射量に対する、膜の接触角の変化を調べた実験の結果を説明するための図である。図6のグラフにおいて、横軸は光の照射量(J/cm)を示し、縦軸は所定の液体に対する膜の接触角を示す。本実験では、上記の光として、基板Pの表面に射出面10から照射される露光光ELと波長が同程度の紫外光を用いた。また、本実験では、上記の所定の液体として、酸素ガス濃度が10ppb程度の純水を用いた。
【0090】
実験例1は、酸素ガス濃度が10ppb程度の純水を介して、膜の表面に紫外光を照射した結果である。実験例1における膜の接触角は、照射量が増加するにつれて著しく低下した後に接触角の低下が緩やかになり、照射量の変化に対してほぼ一定値に収束した。
【0091】
実験例2は、実験例1と同じく酸素ガス濃度が10ppb程度の純水を介して紫外光を照射し、膜の接触角の低下が緩やかになる程度の照射量で紫外光の照射を停止し、酸素ガス濃度が6ppm程度の純水を介して紫外光を再度照射した結果である。実験例2において、酸素ガス濃度が10ppbを介して紫外光が照射されて接触角が低下した状態から、接触角が急速に上昇し、照射量の変化に対して接触角がほぼ一定値に収束した。
【0092】
実験例3は、実験例1と同じく酸素ガス濃度が10ppb程度の純水を介して紫外光を照射し、膜の接触角の低下が緩やかになる程度の照射量で紫外光の照射を停止し、窒素雰囲気で(窒素ガスを介して)、膜の表面に紫外光を再度照射した結果である。実験例3において、酸素ガス濃度が10ppbを介して紫外光が照射されて接触角が低下した状態から、接触角が実験例2よりも緩やかに上昇し、照射量の変化に対して接触角がほぼ一定値に収束した。実験例3における接触角の収束値は、実験例2における接触角の収束値よりも高かった。
【0093】
実験例4は、実験例1と同じく酸素ガス濃度が10ppb程度の純水を介して紫外光を照射し、膜の接触角の低下が緩やかになるよりも少ない照射量で紫外光の照射を停止し、酸素ガス濃度が6ppm程度の純水を介して紫外光を再度照射した結果である。実験例4において、酸素ガス濃度が10ppbを介して紫外光が照射されて接触角が低下した状態から、接触角が急速に上昇し、照射量の変化に対して接触角がほぼ一定値に収束した。実験例4における接触角の収束値は、実験例2における接触角の収束値と同程度であった。実験例4において接触角が収束するまでの照射量は、実験例2において接触角が収束するまでの照射量よりも少なかった。
【0094】
以上のように、酸素ガス濃度が低い液体を介して紫外線が照射されて接触角が低下した膜に、酸素ガス濃度が相対的に高い液体を介して紫外線が照射すると、接触角が回復することが確認された。
【0095】
以下、計測ステージ3の上面をメンテナンスする場合を例にして説明する。本実施形態において、メンテナンス処理は、液体LQh1を介して計測ステージ3の上面に射出面10からの露光光ELを照射する処理を含む。計測ステージ3の上面に露光光(紫外光)ELが照射されることによって、その計測ステージ3の上面の撥液性が回復する。
【0096】
本実施形態のメンテナンス方法は、射出面10からの露光光ELが照射された膜Frの、液体LQに対する撥液性を調べることと、その結果に基づいて撥液性を回復する処理を実行するか否か(撥液性を回復する処理を実行するタイミング)を決定することを含む。本実施形態において、制御装置7は、液体LQに対する撥液性を調べる処理を実行し、液体LQが閾値以上の量で残留しているか否かを判定する。本実施形態において、制御装置7は、少なくとも、液体LQが閾値以上の量で残留していると判定されたときに、撥液性を回復する処理を実行する。上述したように、脱気処理された液体LQsを介して露光光ELを膜Frに照射したときに、所定の照射量を超えると液体LQsに対する膜Frの接触角の低下が緩やかになる。本実施形態において、制御装置7は、上記の膜Frの接触角の低下が緩やかになるよりも前の段階で、膜Frの撥液性を回復する処理を実行する。
【0097】
本実施形態のメンテナンス方法は、射出面10と計測ステージ3の上面との間の液体LQ(LQs)を液体回収装置6が回収した後に、射出面10と計測ステージ3の上面との間における液体LQの残留の状態を調べることを含む。例えば、射出面10と計測ステージ3の上面との間に光を照射し、射出面10と計測ステージ3の上面との間を通った光を検出することにより、液体LQの残留の状態を調べることができる。計測ステージ射出面10と計測ステージ3の上面との間を通った光を検出する装置として、投影光学系PLの焦点位置を調整可能なオートフォーカス装置を利用してもよい。本実施形態において、制御装置7は、オートフォーカス装置を利用して、射出面10と計測ステージ3の上面との間に光を照射し、液体LQの残留の状態を調べる処理を実行する。制御装置7は、表面形状を検出可能な検出装置を利用して、液体LQの残留を調べる対象の面の凹凸を検出し、この面において凸となる部分を残留している液体LQとして、その寸法や数に基づいて液体LQの残留の状態を調べてもよい。
【0098】
なお、例えば図6に示したように、膜Frに照射される露光光ELの照射量を示す値と、液体LQに対する膜Frの撥液性との関係は、撥液性を回復する処理を実行するよりも前に、予め調べておくことができる。制御装置7は、上記の関係を示す情報に基づいて、膜Frの撥液性を回復する処理を実行するタイミングを決定してもよい。例えば、制御装置7は、膜Frの撥液性を回復する処理を終了してから膜Frに照射された露光光ELの総照射量(照射量を示す値)が所定の照射量に達した後に、次の露光処理を実行するよりも前に膜Frの撥液性を回復する処理を実行してもよい。上記の所定の照射量は、上記の関係を示す情報に基づき、膜Frの接触角が所定値以下になる照射量以下でもよい。また、制御装置7は、膜Frの撥液性を回復する処理を終了してから膜Frに露光光ELが照射された回数(照射量を示す値)が所定の回数に達した達した後に、次の露光処理を実行するよりも前に膜Frの撥液性を回復する処理を実行してもよい。
【0099】
図7は、計測ステージ3の上面に射出面10からの露光光ELが照射されている状態の一例を示す図である。本実施形態において、液体供給装置5は、露光装置EXが有する計測ステージ3の上面に射出面10からの露光光ELが照射されるときに、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を射出面10と計測ステージ3の上面との間の光路Kに供給する。
すなわち、制御装置7は、メンテナンスシーケンスの少なくとも一部において、高濃度モードを実行する。
【0100】
液体供給装置5は、液体処理装置31を用いて、脱気処理された液体LQsに溶存する所定ガス濃度を高める処理を実行して液体LQh1を生成し、その所定ガス濃度が高められた液体LQh1を、射出面10と計測ステージ3の上面との間の露光光ELの光路Kに供給する。
【0101】
本実施形態のメンテナンス方法は、射出面10と計測ステージ3の上面との間の露光光ELの光路Kに供給された液体LQh1を介して、計測ステージ3の上面の膜Frの表面に露光光ELを照射することを含む。本実施形態では、照明系ILから射出された露光光ELが、投影光学系PLを介して、膜Frの表面に照射される。本実施形態では、露光光ELと同じ波長の紫外光が膜Frの表面に照射される。なお、液体LQh1を介して膜Frに照射される紫外光の波長は、露光光ELの波長よりも長くてもよい。例えば、液体LQを介して膜Frに照射される露光光ELの波長が193nmであって、液体LQh1を介して膜Frに照射される紫外光の波長が248nm以上であってもよい。
【0102】
本実施形態では、照明系ILがパルス光(露光光EL)を射出し、終端光学素子11の射出面10から射出されたパルス光が膜Frの表面に照射される。パルス光の時間間隔を調整することによって、膜Frの表面に対する単位時間当たりの照射量を調整することができる。なお、照明系ILが連続光(露光光EL)を射出し、この連続光が膜Frの表面に照射されてもよい。
【0103】
本実施形態では、膜Frの表面に入射するときの露光光ELのエネルギー密度が、露光において基板Pに入射するときの露光光ELのエネルギー密度よりも小さく設定される。本実施形態では、投影光学系PLの焦点位置と膜Frの表面の位置との相対位置を調整することによって、膜Frの表面に入射するときの露光光ELのエネルギー密度が調整される。本実施形態では、投影光学系PLの光軸に対する計測ステージ3の位置をZ方向に調整することによって、投影光学系PLの焦点位置と膜Frの表面の位置との相対位置が調整される。
【0104】
本実施形態によれば、計測ステージ3の上面に射出面10からの露光光(紫外光)ELが照射されるときに射出面10と計測ステージ3の上面との間の光路Kに供給される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度が、基板Pの表面に射出面10からの露光光ELが照射されるときに射出面10と基板Pの表面との間の光路Kに供給される液体LQに溶存する所定ガス濃度よりも高いので、液体LQに対する計測ステージ3の上面の撥液性が回復する。したがって、液浸空間LSの液体LQが流出したり、計測ステージ3の上面に液体LQが残留したりすることを抑制することができる。
【0105】
なお、図7は、計測部材Cの上面Cfに露光光ELを照射して上面Cfの撥液性を回復させている状態を示しているが、もちろん、液体LQh1とカバー部材Sの上面Sfとを接触させた状態で、カバー部材Sの上面Sfに露光光ELを照射して上面Sfの撥液性を回復させてもよい。
【0106】
また、液体LQh1と基板ステージ2の上面(カバー部材Tの上面Tf)とを接触させた状態で、基板ステージ2の上面に露光光ELを照射して基板ステージ2の上面の撥液性を回復してもよい。
【0107】
なお、本実施形態において、液体LQの残留の状態を調べた結果に基づいて上面Cfの撥液性を回復させているが、液体LQの残留の状態を示す情報とは別の、膜Frの撥液性を示す情報に基づいて、上面Cfの撥液性を回復させてもよい。例えば、液体LQに対する上面Cfの接触角を計測し、その計測結果に基づいて、撥液性を回復する処理を実行するか否かを決定してもよい。また、撥液性を示す情報として、脱気処理された液体LQsを介して膜Frに照射された紫外光の照射量を用いてもよく、この照射量が所定の閾値以上となったときに、撥液性を回復する処理を実行してもよい。なお、撥液性を回復する処理を実行するか否かの決定は、自動で行われてもよいし、自動で行われなくとも構わない。また、膜Frの撥液性を示す情報に基づくことなく、例えば定期的に、撥液性を回復する処理を実行してもよい。
【0108】
なお、本実施形態において、照明系ILから射出された露光光ELが、投影光学系PLを介して、膜Frの表面に照射されているが、露光光ELを発する光源とは別の光源から射出された紫外光が、液体LQh1を介して膜Frの表面に照射されてもよい。別の光源は、照明系ILに含まれていてもよいし、照明系ILとは別の光学系に含まれていても構わない。また、液体LQh1を介して膜Frの表面に、投影光学系PLとは別の光学系を介して、紫外光が照射されてもよいし、光学系を介さないで紫外光が膜Frの表面に照射されても構わない。
【0109】
なお、本実施形態では、膜Frの表面に入射するときの露光光ELのエネルギー密度は、露光において基板Pに入射するときの露光光ELのエネルギー密度よりも小さく設定されているが、液体LQh1を通って膜Frの表面に入射するときの紫外光のエネルギー密度は、露光において基板Pに入射するときの露光光ELのエネルギー密度以上に設定されてもよい。上記の紫外光のエネルギー密度は、紫外光の膜Frの表面での照度を調整することによって、調整してもよい。液体LQh1を通って膜Frの表面に入射する紫外光の照度は、露光において基板Pに入射するときの露光光ELの照度よりも低くてもよいし、高くても構わない。上記の照度は、液体LQh1を通って膜Frの表面に入射する紫外光を発する光源に供給される電力を調整することによって、調整してもよい。また、上記の照度は、液体LQh1を通って膜Frの表面に入射する紫外光を発する光源と膜Frの表面との間の光路に、紫外光の少なくとも一部を吸収するフィルターを配置することによって、調整してもよい。上記の紫外光のエネルギー密度は、この紫外光の波長を調整することによって、調整してもよい。液体LQh1を通って膜Frの表面に入射する紫外光の波長は、露光において基板Pに入射するときの露光光ELの波長よりも長くてもよいし、短くても構わない。
【0110】
なお、基板ステージ2の上面のメンテナンス時において、保持部13にダミー基板を保持した状態で、基板ステージ2の上面に露光光ELを照射してもよい。ダミー基板は、デバイス製造用の基板Pよりも異物を放出し難く、基板Pとほぼ同じ外形を有する基板である。保持部13は、ダミー基板をリリース可能に保持できる。保持部13にダミー基板を保持した状態で、基板ステージ2の上面をメンテナンスすることによって、例えば液体LQh1が保持部13に付着することを抑制でき、液体LQh1の液浸空間LSを良好に形成できる。
【0111】
なお、撥液性を回復する処理は、脱気処理された液体LQsを介して射出面10からの露光光ELが照射された膜Frの表面に、ガス雰囲気で紫外光を照射する処理を含んでいてもよい。制御装置7は、液体LQh1を介して膜Frの表面に露光光ELを照射する処理の後に、液体回収装置6が膜Frの表面の液体LQh1を回収した状態で、膜Frの表面に紫外光を照射する処理を実行してもよい。
【0112】
また、メンテナンスシーケンスは、撥液性を回復する処理とは別の処理を含んでいてもよい。上記の別の処理は、膜Frの表面に液体LQh1よりも所定ガス濃度が低い液体LQhを供給することを含んでいてもよい。この液体LQhに溶存している所定ガス濃度は、液体LQsに溶存している所定ガス濃度よりも高くてもよいし、低くても構わない。この液体LQhを膜Frの表面に供給する装置の少なくとも一部は、液体供給装置5に含まれていてもよいし、液体供給装置5の外部の装置に含まれていても構わない。また、メンテナンスシーケンスが終了した後、そのメンテナンスされた露光装置EXを用いて露光シーケンスが実行されてもよい。
【0113】
以上説明したように、本実施形態によれば、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を介して物体の上面(基板ステージ2の上面、計測ステージ3の上面等)に露光光ELを照射するようにしたので、液体LQに対する物体の上面の撥液性を回復することができる。したがって、例えば露光シーケンスにおいて、終端光学素子11及び液浸部材4と物体と間の空間に液体LQを良好に保持することができ、液体LQの流出、残留等を抑制することができる。そのため、露光不良の発生、不良デバイスの発生を抑制することができる。
【0114】
本実施形態においては、液体LQpの脱気処理を実行し、液体LQpに溶存するガスを除去して液体LQsを生成した後、その液体LQsに所定ガスGを溶解させる。これにより、所定ガスG以外のガスが液体LQh1に溶存することを抑制しつつ、液体LQh1における所定ガスGの濃度を精度良く調整できる。例えば、液体LQに対する物体の表面の撥液性を回復させる場合において、液体LQh1に溶存させる所定ガスGとして酸素ガスが好ましい場合、その酸素ガスのみを液体LQh1に溶存させ、酸素ガス以外のガスが液体LQh1中に存在することを抑制できる。また、本実施形態によれば、溶存するガスが低減された液体LQsに所定ガスGを溶解させるので、液体LQh1に溶存する所定ガス濃度を精度良く調整できる。
【0115】
なお、所定ガスGは、液体LQh1に求められる機能(性能)に応じて適宜選択可能である。例えば、物体の帯電を抑制したい場合、あるいは物体に帯電している電気(静電気)を除去したい場合、所定ガスGとして炭酸ガスを用いてもよい。炭酸ガスが溶存する液体LQh1を物体上に供給することによって、その物体の帯電等を抑制することができる。
【0116】
また、本実施形態においては、基板Pの表面に射出面10からの露光光ELが照射されるときに光路Kに供給される液体LQに溶存する所定ガス濃度は、物体の上面(基板ステージ2の上面、計測ステージ3の上面等)に露光光ELが照射されるときに光路Kに供給される液体LQh1に溶存する所定ガス濃度よりも低い。したがって、例えば基板Pの露光において光路Kを満たす液体LQに気泡が発生することを抑制でき、露光不良の発生を抑制できる。
【0117】
なお、本実施形態においては、基板ステージ2の上面及び計測ステージ3の上面の少なくとも一方のメンテナンスにおいて、所定ガス濃度が高められた液体LQh1を供給することとしたが、露光シーケンスの少なくとも一部において液体LQh1を供給してもよい。例えば計測ステージ3を用いる計測処理において光路Kに液体LQh1を供給してもよい。例えば、図7に示したように、終端光学素子11及び液浸部材4と計測部材Cとの間に、所定ガス濃度が高められた液体LQh1で液浸空間LSを形成し、その液体LQh1の液浸空間LSが形成されている状態で、射出面10からの露光光ELを計測部材Cに照射してもよい。計測部材Cに照射された露光光ELは、その計測部材Cを介して、光センサ50に受光される。これにより、計測部材Cを用いる計測処理と並行して、液体LQに対する計測部材Cの上面Cfの撥液性を回復することができる。
【0118】
なお、終端光学素子11及び液浸部材4と計測ステージ3(物体)との間に供給口21から所定量の液体LQを供給して液浸空間LSを形成した後、供給口21からの液体LQの供給及び回収口22からの液体LQの回収を停止した状態で、計測ステージ3を所定の移動条件で移動してもよい。こうすることによっても、液浸空間LSの液体LQに溶存するガス濃度を円滑に高めることができる。
【0119】
なお、液体LQに溶存するガス濃度を高めるために、終端光学素子11及び液浸部材4と基板ステージ2との間に液体LQで液浸空間LSが形成されている状態で、基板ステージ2を移動させ、その基板ステージ2に液体LQを介して露光光ELを照射してもよい。
【0120】
なお、液体LQに溶存するガス濃度を高めるために物体(基板ステージ2、計測ステージ3)を移動する動作が、露光シーケンスの少なくとも一部において実行されてもよい。
例えば、液体LQに溶存するガス濃度を高めるために計測ステージ3を移動する動作を実行した後、溶存するガス濃度が高められた液体LQを介して計測部材Cに露光光ELを照射して、計測部材C及び光センサ50を用いる計測処理が実行されてもよい。なお、液体LQに溶存するガス濃度を高めるために計測ステージ3を移動する動作を実行しながら、液体LQを介して計測部材Cに露光光ELを照射して、計測部材C及び光センサ50を用いる計測処理が実行されてもよい。
【0121】
なお、上述の各実施形態においては、投影光学系PLの終端光学素子11の射出側(像面側)の光路Kが液体LQで満たされているが、例えば国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、終端光学素子11の入射側(物体面側)の光路も液体LQで満たされる投影光学系PLを採用することができる。
【0122】
なお、上述の各実施形態においては、液体LQとして水を用いているが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、露光光ELに対して透過性であり、露光光ELに対して高い屈折率を有し、投影光学系PLあるいは基板Pの表面を形成する感光材(フォトレジスト)などの膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル等を用いることも可能である。また、液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。
【0123】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0124】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0125】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0126】
また、例えば米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0127】
また、本発明は、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
【0128】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0129】
なお、上述の各実施形態においては、レーザ干渉計を含む干渉計システムを用いて各ステージの位置情報を計測するものとしたが、これに限らず、例えば各ステージに設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。
【0130】
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
【0131】
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。例えば、レンズ等の光学部材と基板との間に液浸空間を形成し、その光学部材を介して、基板に露光光を照射することができる。
【0132】
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0133】
上述の実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。
各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0134】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図8に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンからの露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0135】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0136】
2…基板ステージ、3…計測ステージ、4…液浸部材、5…液体供給装置、7…制御装置、10…射出面、11…終端光学素子、21…供給口、22…回収口、31…液体処理装置、32…脱気装置、35…ガス供給装置、37…供給量調整装置、C…計測部材、Fr…膜、IL…照明系、K…光路、P…基板、PL…投影光学系、S…カバー部材、T…カバー部材、EL…露光光、EX…露光装置、LQ…液体、LS…液浸空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材の射出面から射出される露光光で液体を介して基板を露光する露光装置のメンテナンス方法であって、
脱気処理された第1の液体を介して前記射出面からの露光光が照射された非晶質フッ素樹脂を含有する膜の表面に、前記第1の液体よりも所定ガス濃度が高い第2の液体を供給することと、
前記膜の表面に前記第2の液体を介して紫外光を照射することと、
を含むメンテナンス方法。
【請求項2】
前記第1の液体に溶存する前記所定ガス濃度を高めて前記第2の液体を生成することを含む、請求項1記載のメンテナンス方法。
【請求項3】
前記膜に照射される前記露光光の照射量を示す値と、前記第1の液体に対する該膜の撥液性との関係を示す情報に基づいて、前記膜の表面に前記第2の液体を介して紫外光を照射するタイミングを決定する、請求項1又は2記載のメンテナンス方法。
【請求項4】
前記第1の液体に対する前記膜の撥液性を検出した結果に基づいて、前記膜の表面に前記第2の液体を介して紫外光を照射するタイミングを決定する、請求項1〜3のいずれか一項記載のメンテナンス方法。
【請求項5】
前記紫外光の波長は、前記露光光の波長と同じである請求項1〜4のいずれか一項記載のメンテナンス方法。
【請求項6】
前記紫外光の波長は、前記露光光の波長よりも長い請求項1〜5のいずれか一項記載のメンテナンス方法。
【請求項7】
前記紫外光の照度は、前記露光光の照度よりも低い請求項1〜6のいずれか一項記載のメンテナンス方法。
【請求項8】
前記所定ガスは、酸素ガスを含む請求項1〜7のいずれか一項記載のメンテナンス方法。
【請求項9】
前記第2の液体を介して前記紫外光を照射して、前記膜の表面の前記第1の液体に対する接触角を高める請求項1〜8のいずれか一項記載のメンテナンス方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載のメンテナンス方法でメンテナンスされた露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項11】
光学部材の射出面から射出される露光光で液体を介して基板を露光する露光装置であって、
非晶質フッ素樹脂を含有する膜が形成された部材と、
脱気処理された第1の液体を介して前記射出面から射出された露光光が照射された前記膜の表面に、前記第1の液体よりも所定ガス濃度が高い第2の液体を供給する供給口と、
前記膜の表面に前記第2の液体を介して紫外光を照射する照射装置と、を備える露光装置。
【請求項12】
前記第1の液体に溶存する前記所定ガス濃度を高めて前記第2の液体を生成する液体処理装置を備える請求項11記載の露光装置。
【請求項13】
前記照射装置は、前記光学部材を含む請求項11又は12記載の露光装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−80007(P2012−80007A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225782(P2010−225782)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】