説明

露光装置の調整方法及び調整用プログラム、並びに露光装置

【課題】複数の露光装置間の露光特性をより高精度に合わせる。
【解決手段】露光装置の露光条件の調整方法は、互いに異なる複数の露光条件のもとで複数のパターンの像の線幅の実測値と計算値との第1の比率を複数回求めるステップ106,114と、複数の第1の比率に基づいて第2の比率を求めるステップ120と、複数のパターンの像の線幅の計算値を第2の比率で補正した値を用いて露光装置の比較対象の露光特性を予測するステップ122と、比較対象の露光特性と目標となる露光特性との比較により調整用の条件を求めるステップ124と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光光でウエハ等の基板を露光する露光装置の調整技術及び調整用のプログラム、その調整技術を用いる露光技術、並びにこの露光技術を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で使用されるスキャニングステッパー又はステッパー等の露光装置(投影露光装置)においては、光学的近接効果(OPE:Optical Proximity Effect)によって、露光後にウエハ等の基板上に形成されるパターンの線幅がピッチによって変化する。このようなOPEの特性は、照明光学系のコヒーレンスファクタ(いわゆる照明σ)、投影光学系の開口数、使用される光学素子の透過率分布、投影光学系の収差特性、及び露光光として使用されるレーザ光の波長特性等に依存している。そのため、一般に複数の露光装置間でOPE特性は互いに異なっている。
【0003】
また、OPE特性による線幅の変化を補正するため、レチクルを作製する際に各パターンの線幅を事前に補正して、OPE特性による変化を相殺するOPC(Optical Proximity Correction)が行われている。この際に、複数の露光装置で共通のレチクルを使用するためには、複数の露光装置間のOPE特性を所定の許容範囲内でマッチングさせる必要がある。そこで、レチクルのパターンの空間像の線幅を、照明σ及び開口数NA等の条件の異なる多数の組み合わせ毎にシミュレーションによって予測し、それらの組み合わせ中からOPE特性が目標となる露光装置の特性に最も合致するように選択された条件で照明σ等を設定することによって、露光装置のOPE特性を目標とする特性に合わせる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
最近では、予め実際にテストパターンを露光して得られるパターンの線幅の実測値と、シミュレーションで計算されていた線幅との比率を求めておき、OPE特性のマッチング時に、その比率を用いて目標となるOPE特性を補正することによって、2つの露光装置間のOPE特性をより高精度に合わせるようにした技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/055295号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0125823号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法で露光装置のOPE特性を目標とする特性に合わせようとしても、採用された条件では調整後のOPE特性が許容範囲外となっている場合がある。この場合、単にそれまでと同じ方法でシミュレーションによって空間像の線幅を計算し、この結果に基づいてOPE特性を調整しても、調整後のOPE特性が許容範囲外になることが繰り返される恐れがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、複数の露光装置間の露光特性をより高精度に合わせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、第1の露光装置の露光特性を第2の露光装置の露光特性に対応させるために、その第1の露光装置の露光条件を調整する方法が提供される。この調整方法は、その第1の露光装置において少なくとも1つの露光条件のもとで複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率を複数回求めることと、複数のその第1の比率に基づいて、第2の比率を求めることと、その第1の露光装置において、その少なくとも1つの露光条件のもとでそれぞれその複数種類のパターンの像の形状の計算値をその第2の比率で補正した値を用いてその第1の露光装置の比較対象の露光特性を予測することと、複数のその比較対象の露光特性とその第2の露光装置の露光特性との比較によりその第1の露光装置を調整するための条件を求めることと、を含むものである。
【0009】
また、第2の態様によれば、第1の露光装置の露光特性を第2の露光装置の露光特性に対応させるように、その第1の露光装置の露光条件を調整するためにコンピュータを機能するための調整用プログラムが提供される。この調整用プログラムは、コンピュータを、その第2の露光装置の露光特性の情報、及びその第1の露光装置において少なくとも1つの露光条件のもとで複数回求められた複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率を記憶する記憶装置、複数のその第1の比率に基づいて、第2の比率を求める第1の算出装置、その第1の露光装置において、その少なくとも1つの露光条件のもとでそれぞれその複数種類のパターンの像の形状の計算値をその第2の比率で補正した値を用いてその第1の露光装置の比較対象の露光特性を予測する第2の算出装置、及び複数のその比較対象の露光特性とその第2の露光装置の露光特性との比較を行うことにより、その第1の露光装置を調整するための条件を求める第3の算出装置、として機能させるものである。
【0010】
また、第3の態様によれば、照明光学系からの露光光でパターンを照明し、その露光光でそのパターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、目標となる露光装置の露光特性と、その露光装置において少なくとも1つの露光条件のもとで複数回求められた複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率とを記憶する記憶装置と、その露光装置を調整するための条件を求める演算装置と、その演算装置によって求められた条件に応じてその露光装置の露光条件を調整する調整装置と、を備え、その演算装置は、複数のその第1の比率に基づいて、第2の比率を求め、その露光装置において、その少なくとも1つの露光条件のもとでそれぞれその複数種類のパターンの像の形状の計算値をその第2の比率で補正した値を用いてその露光装置の比較対象の露光特性を予測し、複数のその比較対象の露光特性とその目標となる露光装置の露光特性との比較によりその露光装置を調整するための条件を求めるものである。
【0011】
また、第4の態様によれば、本発明の露光装置を用いて物体にパターンを形成することと、そのパターンが形成されたその物体を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも1つの露光条件のもとで複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率を複数回求め、複数の第1の比率より第2の比率を求め、第1の露光装置において、複数種類のパターンの像の形状の計算値をその第2の比率で補正した値を用いてその第1の露光装置の比較対象の露光特性を予測している。このため、比較対象の露光特性の予測精度を高めることができる。従って、第1及び第2の露光装置間の露光特性をより高精度に合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の一例で使用される露光装置を示す図である。
【図2】図1の照明系瞳面上の光量分布の一例を示す図である。
【図3】テストレチクルのパターンの一部を示す拡大図である。
【図4】レジストパターンの一部を示す拡大図である。
【図5】(A)は1回目の調整時のOPE特性を示す図、(B)は2回目の調整時のOPE特性を示す図である。
【図6】3回目の調整時のOPE特性を示す図である。
【図7】露光装置の露光条件を調整する方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の一例につき図1〜図7を参照して説明する。図1は、本実施形態の露光装置EXを示す。露光装置EXは、一例としてスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の投影露光装置である。図1において、露光装置EXは、露光光(露光用の照明光)ILを発生する露光光源6と、その露光光ILでレチクルR(マスク)のパターン面(レチクル面)を照明する照明光学系ILSと、レチクルRを保持して移動するレチクルステージRSTとを有する。さらに、露光装置EXは、レチクル面のパターンの像をウエハWの表面に形成する投影光学系PLと、ウエハWを保持して移動するウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータを含む主制御系30と、その他の駆動機構等(不図示)とを有する。主制御系30は、演算装置30Aと、入出力装置30Bと、磁気ディスク装置等の記憶装置30Cとを有する。演算装置30A内には、ソフトウェア上の機能である主制御部34(オペレーティングシステム(OS))、照明条件制御部36、及び露光制御部38等が含まれている。以下、図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に平行な方向にX軸、その紙面に垂直な方向にY軸を取って説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の回りの回転方向をθx、θy、θz方向と呼ぶ。
【0015】
本実施形態では、露光光源6として波長193nmのレーザ光をパルス発光するArFエキシマレーザ光源が使用されている。露光光源6にはパルス発光を制御する電源部32が接続されている。露光制御部38が、パルス発光のタイミング及び光量を指示する発光トリガパルスTPを電源部32に供給する。電源部32は、露光制御部38からの指示により、露光光ILの波長(露光波長)と波長の半値幅とを所定範囲で制御可能である。なお、露光光源としては、KrFエキシマレーザ光源(波長248nm)、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波発生装置、又は水銀ランプなども使用することができる。
【0016】
露光光源6から射出された直線偏光のレーザ光よりなる露光光ILは、ビームエキスパンダ8、入射光の偏光状態を制御する偏光制御系(不図示)、及びミラー10を介して光軸AXIに沿って、光軸AXIに垂直な入射面12d及び射出面12eを有するプリズム12の入射面12dに入射する。プリズム12は、一例として、入射面12dに対してY軸に平行な軸を中心として時計回りにほぼ60°で交差する第1反射面12aと、第1反射面12aとYZ平面に平行な面に対してほぼ対称な第2反射面12bと、XY平面に平行で入射面12d(射出面12e)に対して直交する透過面12cとを有している。
【0017】
また、プリズム12の近傍に、X方向及びY方向に二次元のアレイ状に配列されたそれぞれ傾斜角が可変の微小ミラーよりなる多数のミラー要素3と、これらのミラー要素3を駆動する駆動部4とを有する空間光変調器13が設置されている。空間光変調器13の多数のミラー要素3は、全体として透過面12cにほぼ平行に、かつ近接して配置されている。また、各ミラー要素3の反射面は、それぞれθx方向及びθy方向の傾斜角が所定の可変範囲内でほぼ連続的に制御可能である。記憶装置30Cには、レチクルRに応じた照明条件(二次光源の形状、σ値、輪帯照明の二次光源48(図2参照)の外径Rout と内径Rinとの比率(輪帯比Rout/Rin)、露光波長、露光波長の半値幅、及び偏光状態等)及び投影光学系PLの開口数NAの条件等が記録された露光データファイル33Dが記憶されている。照明条件制御部36は、露光データファイル33Dからその照明条件及び開口数NA等の情報を読み出し、必要に応じて所定量補正した後、照明条件を照明制御系31に供給し、開口数NAに応じて投影光学系PLの開口絞りASを制御する。
【0018】
照明制御系31は、多数のミラー要素3の2軸の回りの傾斜角がその照明条件に応じた値に維持されるように駆動部4を制御する。この場合、プリズム12に入射する露光光ILは第1反射面12aで全反射された後、透過面12cを透過して空間光変調器13の多数のミラー要素3に入射する。そして、多数のミラー要素3で反射された露光光ILは、再び透過面12cに入射した後、第2反射面12bで全反射されて射出面12eから射出される。この際に、各ミラー要素3の2軸の回りの傾斜角を制御することによって、各ミラー要素3で反射されてプリズム12から射出される露光光ILの光軸AXIに対する直交する2方向(θy方向及びθz方向)の角度を制御でき、後述の照明瞳面22Pの二次光源の光量分布を制御できる。なお、プリズム12の反射面12a,12bは全反射を用いているが、その反射面12a,12bに反射膜を形成し、この反射膜で露光光ILを反射してもよい。また、プリズム12の代わりにミラーを使用してもよい。
【0019】
そして、プリズム12から射出された露光光ILは、リレー光学系14(集光光学系)を介してフライアイレンズ15(オプティカルインテグレータ)の入射面に入射する。その入射面は、レチクル面と光学的にほぼ共役である。なお、フライアイレンズ15の代わりにマイクロレンズアレイを使用してもよい。
空間光変調器13の多数のミラー要素3は例えば10μm角〜数10μm角程度の平面ミラーであるが、照明条件の細かな変更を可能とするために、ミラー要素3は可能な限り小さいことが好ましい。このような空間光変調器13としては、例えば特開2004−78136号公報及びこれに対応する米国特許第6,900,915号明細書、又は特表2006−524349号公報及びこれに対応する米国特許第7,095,546号明細書等に開示される空間光変調器を用いることができる。
【0020】
この場合、フライアイレンズ15の後側焦点面が照明光学系ILSの瞳面(射出瞳と共役な面)である照明瞳面IPである。照明瞳面IPには、フライアイレンズ15への入射光束によって形成される照明領域とほぼ同じ光量分布(光強度分布)を有する二次光源が形成される。照明条件としては、円形の二次光源を使用する通常照明若しくは小σ照明、輪帯照明、2極照明、4極照明、又は他の任意の形状の二次光源を使用する照明条件が使用可能である。
【0021】
照明瞳面IPに形成された二次光源からの露光光ILは、第1リレーレンズ16、レチクルブラインド(視野絞り)17、第2リレーレンズ18、光路折り曲げ用のミラー19、及びコンデンサ光学系20を介して、レチクル面の照明領域22Rを均一な照度分布で照明する。ビームエキスパンダ8から空間光変調器13までの光学部材、及びリレー光学系14からコンデンサ光学系20までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。照明光学系ILSの各光学部材は、不図示のフレームに支持されている。
【0022】
レチクルRの照明領域22R内のパターンは、両側(又はウエハ側に片側)テレセントリックの投影光学系PLを介して、ウエハWの一つのショット領域の露光領域22W(照明領域22Rと光学的に共役な領域)に所定の投影倍率(例えば1/4,1/5等)で投影される。ウエハWは、シリコン又はSOI(silicon on insulator)等の円形の平板状の基材の表面にフォトレジスト(感光材料)が所定の厚さで塗布されたものを含む。
【0023】
さらに、露光装置EXが液浸露光型である場合には、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間に露光光ILを透過する液体を供給し回収するための局所液浸装置(不図示)が設けられる。局所液浸装置としては、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書、又は欧州特許出願公開第1420298号明細書等に開示されている装置を使用可能である。
【0024】
レチクルRはレチクルステージRSTの上面に吸着保持され、レチクルステージRSTは、不図示のレチクルベースの上面に、Y方向に一定速度で移動可能に、かつ少なくともX方向、Y方向、及びθz方向に移動可能に載置されている。レチクルステージRSTの2次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて露光制御部38がリニアモータ等の駆動系(不図示)を介してレチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0025】
一方、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のウエハベースの上面でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動可能である。ウエハステージWSTの2次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて露光制御部38がリニアモータ等の駆動系(不図示)を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。また、レチクルR及びウエハWのアライメントを行うために、ウエハステージWSTには、レチクルRのアライメントマークの像の位置を計測する空間像計測系24が設置され、投影光学系PLの側面にウエハWのアライメントマークの位置を検出するウエハアライメント系(不図示)が備えられている。露光制御部38は、空間像計測系24等からの検出信号を処理して被検マークの位置及び線幅等を検出可能である。
【0026】
露光装置EXによるウエハWの露光時に、照明系制御部36は、記憶装置30Cの露光データファイル33Dに記録されている照明条件及び開口数NAの情報を読み出し、照明条件を照明制御系31に設定し、開口数NAを開口絞りASで設定する。続いて、ウエハステージWSTの移動によってウエハWが走査開始位置に移動する(ステップ移動)。その後、露光光源6のパルス発光を開始して、レチクルRの照明領域内のパターンの投影光学系PLによる像でウエハWの一つのショット領域を露光しつつ、レチクルステージRSTを介してレチクルRを照明領域に対してY方向に移動する動作と、ウエハステージWSTを介してウエハWを露光領域に対して対応する方向に移動する動作とを同期して行うことで、当該ショット領域が走査露光される。このようにウエハWのステップ移動と走査露光とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作によって、ウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターンの像が露光される。
【0027】
次に、本実施形態の露光装置EXの光学的近接効果(OPE:Optical Proximity Effect)の特性を他の基準となる露光装置(不図示。以下、ターゲット露光装置という。)のOPE特性にマッチングさせるために、露光装置EXの照明条件及び投影光学系PLの開口数NAを含む露光条件を調整する方法の一例につき図7のフローチャートを参照して説明する。主制御系30の演算装置30A内には、その露光条件の調整時に使用される第1算出部40、第2算出部42、第3算出部44及び第4算出部46が含まれている。これらの第1〜第4算出部40〜46は、記憶装置30C内に記憶されたファイル33Cに記録されている調整用プログラムに従って動作するソフトウェア上の機能(第1〜第4算出手段)である。ただし、第1〜第4算出部40〜46を、個別にハードウェアで構成してもよい。また、その調整方法は、主制御部34の制御のもとで実行される。
【0028】
まず、図7のステップ102において、オペレータは図1の露光装置EXの入出力装置30Bから、演算装置30Aの主制御部34を介して記憶装置30Cの第1ファイル33Aに、ターゲット露光装置のOPE特性の情報、及びターゲット露光装置と調整対象の露光装置とのOPE特性の相違の許容範囲である評価関数(詳細後述)の許容値VMを記録する。そのOPE特性は、図5(A)に示すように、ウエハ上の設計上の線幅がp1/2でピッチが互いに異なるp1,p2,…,pn(nは3以上の整数)である複数のテストパターンの像を露光し、その像を現像して得られるレジストパターンの線幅よりなる1組のCD(critical dimension)である。その線幅は例えば走査型電子顕微鏡(SEM)で計測したデータである。
【0029】
この場合、ピッチp1におけるCDが基準となる値CDt(=CDt1)であり、各ピッチpi(i=1〜n)におけるCDの値CDtiを示す点A1〜Anを連結して得られる折れ線(以下、特性曲線Aという。)Aが、ターゲット露光装置のOPE特性を表している。さらに、第1ファイル33Aには、そのOPE特性を計測したときのターゲット露光装置の露光条件等も記録される。一例として、照明条件として輪帯照明が使用されており、照明光学系のσ値はσt、輪帯比はrt、投影光学系の開口数NAはNAtとする。なお、露光条件としてはこれらに加えて、又はこれらの代わりに露光波長及び露光波長の半値幅等の任意の条件を用いてもよい。
【0030】
次のステップ104において、レチクルステージRSTにレチクルRの代わりにテストパターンが形成されたテストレチクルTRがロードされる。テストレチクルTRには、図3に示すように、X方向の線幅DでピッチがP1,P2,P3,P4のライン・アンド・スペースパターンよりなるテストパターン48A,48B,48C,48Dが形成されている。線幅DはP1/2であり、ピッチPi(i=2,3,…)はピッチP1のi倍である。投影光学系PLの投影倍率βを用いて、以下のように、ピッチP1は図5(A)のレジストパターンのピッチp1の1/βである。なお、テストレチクルTRには、実際には線幅DでピッチPiがPnまでのn個のテストパターンが形成されている。また、そのテストパターン48A等の像の線幅を計測する際には、一例としてそのテストパターン48A等の複数のラインパターンのうちの中央のラインパターンの像の線幅が計測される。
【0031】
P1=p1/β …(1)
さらに、調整対象の露光装置EXのOPE特性がターゲット露光装置のOPE特性に近づくように第1の露光条件を求める。このために、演算装置30Aの第2算出部42は、露光装置EXの照明条件中のσ値σe、輪帯比re、及び投影光学系の開口数NAeを、ターゲット露光装置のσ値σt、輪帯比rt、及び開口数NAtを中心とする所定幅の範囲内で、所定間隔で配列される値σek,rek,NAek(k=1,2,…,K)(Kは2以上の整数)に設定する。さらに、第2算出部42は、各値σek,rek,NAekの組み合わせ毎にそれぞれシミュレーションによってn個のテストパターンの像(レジストパターン)の線幅(CD)の計算値CDski(i=1〜n)を求める。この際に、1番目の計算値CDsk1がターゲット露光装置の基準値CDtとなるように計算上のフォトレジストの閾値を設定する。
【0032】
さらに、演算装置30Aの第3算出部44は、各値σek,rek,NAekの組み合わせ毎に、次のようにターゲット露光装置と露光装置EXとの間のn個のCDの値CDti,CDskiの差分の自乗和よりなる第1の評価関数MFkを計算する。式(2)及び後述の式(4)の積算は添字iについて実行される。
MFk=Σ(CDti−CDski)2 …(2)
そして、第3算出部44は、評価関数MFkの値が最小になるときの値σek,rek,NAekの組み合わせ(k=k1、以下、第1の露光条件という)を求め、この第1の露光条件のときのCDの計算値(CDsiとする)(i=1〜n)を特定する。この第1の露光条件は主制御部34に供給され、その第1の露光条件及び計算値CDsiは露光データファイル33Dに記録される。その計算値CDsiが図5(A)の各ピッチp1に対応する点B1i(i=1〜n)のCDである。
【0033】
なお、露光装置EXの照明条件中のσ値σe、輪帯比re、及び投影光学系の開口数NAeを、ターゲット露光装置の値σt、輪帯比rt、及び投影光学系の開口数NAtを中心とする所定幅の範囲内で、特定の1つの値(1組の値)に設定してもよい。この1つの値を用いて上記の式(2)の評価関数MFkを計算してもよい。
次のステップ106において、主制御部34は照明系制御部36を介して露光装置EXの露光条件をその第1の露光条件に設定する。次に、露光装置EXによってテストレチクルTRのテストパターンの像を未露光のウエハWに露光する。その後、図4に一部を示すように、現像によって形成されるn個のテストパターンの像48AR〜48DR(レジストパターン)等の線幅(CD)をSEMで計測し、計測値CDei(i=1〜n)を入出力装置30Bから露光データファイル33Dに記録する。この際に、1番目のテストパターンの像48ARの計測値CDeがターゲット露光装置の基準値CDtに合致するように、フォトレジストの閾値が設定されている。図5(A)の露光装置EXの点線で示される特性曲線C1の各ピッチpiに対応する点C1iのCDが計測値CDeiである。
【0034】
この後、演算装置30Aの第4算出部46は、その計測値CDeiを、ステップ104でシミュレーションにより求められた計算値CDsiで除算することによって、次のようにn個の第1の比率r1iを求める。なお、r11=1である。求められた第1の比率r1iは記憶装置30Cの第2ファイル33Bに記録される。
r1i=CDei/CDsi (i=1〜n)…(3)
次のステップ108において、第4算出部46は、n個のテストパターンの像のターゲット露光装置で得られたCDの値CDtiと、ステップ106で得られた計測値CDeiとの差分の自乗和よりなる次の第2の評価関数MFEの値を計算する。
【0035】
MFE=Σ(CDti−CDei)2 …(4)
評価関数MFEは、図5(A)の特性曲線Aと特性曲線C1との差分の自乗和でもある。そして、第4算出部46は、評価関数MFEの値と上記の許容値VMとを比較し、評価関数MFEの値が許容値VM以下のときは、露光装置EXのOPE特性はターゲット露光装置のOPE特性と許容範囲内で合致するものとして、ステップ110に移行する。ステップ110では、上記の第1の露光条件が最終的にレチクルRに対して使用される露光条件として主制御部34に供給され、その後、レチクルRに対してはその第1の露光条件が使用される。
【0036】
一方、ステップ108で、評価関数MFEの値が許容値VMを超えるときは、露光装置EXのOPE特性はターゲット露光装置のOPE特性に対して許容範囲内で合致していないものとして、ステップ112に移行する。ステップ112において、ステップ106で記憶した第1の比率r1iを用いて、露光装置EXのOPE特性がターゲット露光装置のOPE特性に近づくように第2の露光条件を求める。
【0037】
このために、第2算出部42は、ステップ104と同様に、露光装置EXの露光条件であるσ値σe、輪帯比re、及び開口数NAeの各値σek,rek,NAek(k=1,2,…,K)の組み合わせ毎にそれぞれシミュレーションによってn個のテストパターンの像のCDの計算値CDski(i=1〜n)を求める。さらに、第2算出部42は、これらのCDの計算値に式(3)で求めた第1の比率r1iを乗算して補正後の計算値CDskaiを求める。
【0038】
CDskai=r1i×CDski …(5)
さらに、第3算出部44は、式(2)中の計算値CDskiの代わりに計算値CDskaiを代入して第1の評価関数MFkを計算し、評価関数MFkの値が最小になるときの値σek,rek,NAekの組み合わせ(k=k2、以下、第2の露光条件という。)を求め、この第2の露光条件のときのCDの計算値(CDsiとする)(i=1〜n)を求める。この第2の露光条件は主制御部34に供給され、その第2の露光条件及び計算値CDsiは露光データファイル33Dに記録される。その計算値CDsiが図5(B)の各ピッチp1に対応する点B2i(i=1〜n)のCDである。
【0039】
次のステップ114において、ステップ106と同様に、その第2の露光条件のもとで、露光装置EXによってテストレチクルTRのテストパターンの像を露光し、現像によって形成されるn個のテストパターンの像(レジストパターン)の線幅(CD)の値CDei(i=1〜n)をSEMで計測する。図5(B)の露光装置EXのOPE特性曲線C2の各ピッチpiに対応する点C2iのCDがCDeiである。この後、第4算出部46は、その計測値CDeiを、ステップ112で得られた計算値CDsiで除算することによって、次のようにn個の新たな第1の比率r2iを求め、これらの比率を第2ファイル33Bに記録する。
【0040】
r2i=CDei/CDsi (i=1〜n)…(6)
次のステップ116において、ステップ108と同様に、第4算出部46は、ターゲット露光装置で得られたCDの値CDtiと、ステップ114で得られた計測値CDeiとの差分の自乗和よりなる式(4)の第2の評価関数MFEの値を計算し、評価関数MFEの値と上記の許容値VMとを比較する。そして、評価関数MFEの値が許容値VM以下のときは、露光装置EXのOPE特性はターゲット露光装置のOPE特性と許容範囲内で合致するものとして、ステップ110に移行する。一方、ステップ116で、評価関数MFEの値が許容値VMを超えるときは、露光装置EXのOPE特性はターゲット露光装置のOPE特性に対して許容範囲内で合致していないものとして、ステップ120に移行する。
【0041】
ステップ120において、演算装置30Aの第1算出部40は、ステップ106で求めた第1の比率r1i(重みw1)とステップ114で求めた第1の比率r2i(重みw2)とを第2ファイル33Bから読み出し、これらの比率を用いて次のように加重平均で第2の比率r3iを求め、求めた比率を第2ファイル33Bに記録する。式(7)及び式(8)の積算は添字jについて実行される。なお、重みwjの和は次のように1に規格化してある。
【0042】
r3i=Σwj・rji (i=1〜n) …(7)
Σwj=1 …(8)
この場合、重みwjは、一例として、新しく求められた比率ほど大きく設定される。ここでは、例えば2回目に求めた比率r2iの重みw2は0.75、1回目に求めた比率r1iの重みw1は0.25である。なお、別の例として、重みwjは、式(4)の評価関数MFEの値がより小さかったときの比率r1i,r2i(すなわち、露光装置EXのOPE特性がターゲット露光装置のOPE特性により近かったときの比率)の重みを大きくしてもよい。さらに、重みwjは、n個のテストパターンの像毎に異なる値を用いることも可能である。
【0043】
次のステップ122において、第2算出部42は、ステップ112と同様に、露光装置EXの露光条件の各値σek,rek,NAek(k=1,2,…,K)の組み合わせ毎にそれぞれシミュレーションによってn個のテストパターンの像のCDの計算値CDski(i=1〜n)を求める。さらに、第2算出部42は、これらのCDの計算値に式(7)で求めた第2の比率r3iを乗算して補正後の計算値CDskaiを求める。
【0044】
CDskai=r3i×CDski …(9)
次のステップ124において、第3算出部44は、式(2)中の計算値CDskiの代わりに計算値CDskaiを代入して第1の評価関数MFkを計算し、評価関数MFkの値が最小になるときの値σek,rek,NAekの組み合わせ(k=k3、以下、第3の露光条件という。)を求め、この第3の露光条件のときのCDの計算値CDsi(i=1〜n)を求める。この第3の露光条件は主制御部34に供給され、その第3の露光条件及び計算値CDsiは露光データファイル33Dに記録される。その計算値CDsiが図6(A)の各ピッチp1に対応する点B3i(i=1〜n)のCDである。
【0045】
次のステップ126において、ステップ114と同様に、その第3の露光条件のもとで、露光装置EXによってテストレチクルTRのテストパターンの像を露光し、現像によって形成されるn個のテストパターンの像(レジストパターン)の線幅(CD)の値CDei(i=1〜n)をSEMで計測する。図6(A)の露光装置EXの特性曲線C3の各ピッチpiに対応する点C3iのCDがCDeiである。この後、第4算出部46は、その計測値CDeiを、ステップ124で得られた計算値CDsiで除算することによって、次のようにn個の新たな第2の比率r4iを求め、これらの比率を第2ファイル33Bに記録する。
【0046】
r4i=CDei/CDsi (i=1〜n)…(10)
次のステップ116において、ステップ108と同様に、第4算出部46は、ターゲット露光装置で得られたCDの値CDtiと、ステップ126で得られた計測値CDeiとの差分の自乗和よりなる式(4)の第2の評価関数MFEの値を計算し、評価関数MFEの値と上記の許容値VMとを比較する。この段階では、2つの露光装置の図6(A)の特性曲線A,C3は近接しているため、評価関数MFEの値は極めて小さくなっている。そして、評価関数MFEの値が許容値VM以下のときは、ステップ110に移行する。一方、ステップ116で、評価関数MFEの値が許容値VMを超えるときは、露光装置EXのOPE特性はターゲット露光装置のOPE特性に対して許容範囲内で合致していないものとして、ステップ120に移行する。なお、評価関数MFEの値は次第に減少するため、ステップ116では、通常は、ステップ116は、数回実行される程度である。しかしながら、ステップ116で予め設定した回数を超えて、評価関数MFEの値が許容値VMを超えるときは、例えばオペレータコールを行ってもよい。
【0047】
そして、ステップ116で再び評価関数MFEの値が許容値VMを超えるときは、ステップ120に移行して、第1算出部40は、これまでに求められた2つの第1の比率r1i(重みw1)、及び比率r2i(重みw2)と、1つの第2の比率r4i(重みw3)とから、式(7)より加重平均で新たな第2の比率r3iを求め、求めた比率を第2ファイル33Bに記録する。なお、加重平均に使用されるその第2の比率r4iは、第1の比率とみなすことができる。この場合には、3個の第1の比率の加重平均によって第2の比率r3iが求められていることになる。
【0048】
その後、ステップ122〜126が繰り返された後、ステップ116が実行される。その後、さらにステップ120を実行する場合には、2つの第1の比率r1i(重みw1)及び比率r2i(重みw2)と、複数の第2の比率r4i(重みw3,w4,…)(これらも新たな第1の比率とみなすことができる)とから、式(7)より加重平均で新たな第2の比率r3iが求められ、この第2の比率r3iを用いてシミュレーションによるCDの計算値が補正される。
【0049】
この調整方法では、前回の露光条件の調整後に、テストパターンの像の線幅(CD)の計測値CDeiとシミュレーションによる計算値CDsiとの比率r1i〜r4iを求め、次の露光条件の選択時に、それらの比率を用いてシミュレーションによる計算値CDskiを補正して、評価関数MFkが最小になるような露光条件を求めている。従って、シミュレーションによる計算値をより実測値に近づけた状態で評価関数MFkを使用できるため、露光条件の調整回数を少なくして最適な露光条件を効率的に求めることができるとともに、選択された露光条件の評価関数MFkの値(差分の自乗和)を小さくできる。さらに、式(4)の評価関数MFEに関する許容値VMをより小さくすることも可能となる。従って、露光装置EXのOPE特性を効率的にかつ高精度にターゲット露光装置のOPE特性にマッチングさせることができる。
【0050】
上述のように、本実施形態の露光装置EXの露光条件の調整方法は、露光装置EXのOPE特性(露光特性)をターゲット露光装置のOPE特性に合わせるための調整方法であり、露光装置EXにおいて互いに異なる複数の露光条件のもとで複数のテストパターン48A,48B等の像の線幅(形状)の実測値と計算値との第1の比率r1i,r2iを複数回求めるステップ104〜114と、その複数の第1の比率の加重平均により第2の比率r3iを求めるステップ120と、を有する。さらに、その調整方法は、露光装置EXにおいて、互いに異なる複数の露光条件のもとでそれぞれテストパターン48A,48B等の像の線幅の計算値CDskiを第2の比率r3iで補正した値を用いて露光装置EXの複数の比較対象のテストパターンの像のCDの計算値CDskai(OPE特性)を予測するステップ122と、その複数の比較対象のCDの計算値CDskaiとターゲット露光装置のCDの値CDti(OPE特性)との比較により露光装置EXを調整するための条件であるσ値σek、輪帯比rek、開口数NAek等の組み合わせ(k=k3)(第3の露光条件)を求めるステップ124と、を有する。
【0051】
また、本実施形態の露光装置EXは、照明光学系ILSからの露光光ILでレチクルRのパターンを照明し、露光光ILでレチクルR及び投影光学系PLを介してウエハWを露光する露光装置において、ターゲット露光装置のOPE特性と、露光装置EXにおいて互いに異なる複数の露光条件のもとで複数回求められた複数のテストパターン48A等の像の線幅の実測値と計算値との第1の比率r1i,r2iとを記憶する記憶装置30Cと、露光装置EXを調整するための条件を求める演算装置30Aと、演算装置30Aによって求められた条件に応じて露光装置EXの露光条件を調整する空間光変調器13(調整装置)と、を備えている。また、演算装置30Aは、複数の第1の比率の加重平均により第2の比率r3iを求め、露光装置EXにおいて、互いに異なる複数の露光条件のもとでそれぞれテストパターン48A等の像の線幅(CD)の計算値CDskiを第2の比率r3iで補正した値を用いて露光装置EXの比較対象のOPE特性を計算し(予測し)、複数の比較対象のOPE特性とターゲット露光装置のOPE特性との比較により露光装置EXを調整するための条件であるσ値、輪帯比r、開口数NA等の組み合わせ(露光条件)を求めている。
【0052】
本実施形態によれば、互いに異なる複数の露光条件のもとで複数のテストパターン48A等の像の線幅の実測値と計算値との第1の比率を複数回求め、複数の第1の比率の加重平均により第2の比率r3iを求め、露光装置EXにおいて、テストパターン48A等の像の線幅の計算値をその第2の比率r3iで補正した値を用いてその露光装置EXの比較対象のOPE特性を予測している。これにより、その比較対象のOPE特性の予測精度を高めることができる。この結果、露光装置EX及びターゲット露光装置間のOPE特性をより高精度に、かつ効率的に合わせることができる。
【0053】
また、本実施形態では、複数の第1の比率r1i,r2i(又は複数の実質的な第1の比率r1i,r2i,r4i)の加重平均から第2の比率r3iを求めているため、計算が容易である。さらに、必要に応じてOPE特性に大きく影響を与える比率の重みを重くするのみで、第2の比率r3iの計算精度を向上でき、露光装置EXのOPE特性の予測精度を向上できる。
【0054】
なお、その第2の比率r3iを求めるための計算方法は任意である。例えば、2番目の第1の比率r2iを求めたときに、2つの第1の比率の比率α(=r2i/r1i)を求めておき、次に第1の比率r2iから次のように比率αを乗算することによって第2の比率r3iを求めてもよい。
r3i=α×r2i …(11)
また、本実施形態では、テストパターンとして基本となるパターンに対してピッチが整数倍の複数のパターンを使用している。その他に、テストパターンとしては、ピッチが互いに整数倍の関係にはない複数のパターンを使用してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、テストパターンの像(レジストパターン)の形状として線幅を計測している。しかしながら、その形状としては、例えば複数のラインパターン間のスペース部の像の幅等を計測してもよい。
また、本実施形態では、OPE特性としての1組のCDの計測値を求めるためにSEMを使用している。その他の例として、CDの計測値として、露光装置EXに備えられている空間像計測系24で計測されたテストパターンの像の線幅を使用してもよい。
【0056】
また、露光装置EXは、空間光変調器13を用いて照明瞳面IPにおける光量分布を制御している。その他の例として、例えばターレット板に固定された複数の回折光学素子、その回折光学素子から射出される光束をフライアイレンズの入射面に導くズームレンズ系等からなる光量分布制御系を用いてもよい。
また、本実施形態では露光特性としてOPE特性を調整しているが、露光特性として例えば投影光学系PLの波面収差等を調整してもよい。
【0057】
また、上記の実施形態の露光装置EXを用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図8に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0058】
従って、このデバイス製造方法は、上記の実施形態の露光装置(露光方法)を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成された基板を処理すること(ステップ224)とを含んでいる。その露光装置によれば、ターゲット露光装置とのOPE特性のマッチング精度を高めることができるため、例えば共通の仕様のマスクを用いて、電子デバイスを効率的に高精度に製造できる。
【0059】
また、本発明は、走査露光型の投影露光装置のみならず、一括露光型(ステッパー型)の投影露光装置を用いて露光する場合にも適用することが可能である。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の製造プロセスや、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスの製造プロセスにも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、製造工程にも適用することができる。
【0060】
このように、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0061】
EX……露光装置、ILS…照明光学系、R…レチクル、TR…テストレチクル、W…ウエハ、PL…投影光学系、13…空間光変調器、30…主制御系、30A…演算装置、30C…記憶装置、34…主制御部、40…第1算出部、42…第2算出部、44…第3算出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の露光装置の露光特性を第2の露光装置の露光特性に対応させるために、前記第1の露光装置の露光条件を調整する方法であって、
前記第1の露光装置において、少なくとも1つの露光条件のもとで複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率を複数回求めることと、
複数の前記第1の比率に基づいて、第2の比率を求めることと、
前記第1の露光装置において、前記少なくとも1つの露光条件のもとでそれぞれ前記複数種類のパターンの像の形状の計算値を前記第2の比率で補正した値を用いて前記第1の露光装置の複数の比較対象の露光特性を予測することと、
複数の前記比較対象の露光特性と前記第2の露光装置の露光特性との比較により前記第1の露光装置を調整するための条件を求めることと、
を含むことを特徴とする露光装置の調整方法。
【請求項2】
前記複数種類のパターンは互いにピッチが異なる複数のパターンであり、
前記第1の比率は複数のピッチに関して求められることを特徴とする請求項1に記載の露光装置の調整方法。
【請求項3】
前記第1の比率は前記複数のパターンの像の線幅の実測値と計算値との比率であり、
前記比較対象の露光特性は、前記複数のパターンの像の線幅の計算値に前記第2の比率を乗算して得られることを特徴とする請求項2に記載の露光装置の調整方法。
【請求項4】
前記第1の露光装置の前記比較対象の露光特性と前記第2の露光装置の露光特性との比較は、
前記第1の露光装置に関して予測される前記複数のパターンの像の線幅と前記第2の露光装置に関して実測された前記複数のパターンの像の線幅との差分の二乗和の比較を含むことを特徴とする請求項3に記載の露光装置の調整方法。
【請求項5】
前記第2の比率は、複数の前記第1の比率の加重平均により算出され、
複数の前記第1の比率の加重平均を計算するときの重みは、前記第1の露光装置の露光特性が前記第2の露光装置の露光特性に近いほど大きいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の露光装置の調整方法。
【請求項6】
前記第1の露光装置は、パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系及び前記パターンの像を基板に投影する投影光学系を備え、
前記第1の露光装置の前記露光条件は、前記第1の露光装置の前記投影光学系の開口数及び前記照明光学系のσ値を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の露光装置の調整方法。
【請求項7】
第1の露光装置の露光特性を第2の露光装置の露光特性に対応させるように、前記第1の露光装置の露光条件を調整するために、コンピュータを、
前記第2の露光装置の露光特性の情報、及び前記第1の露光装置において互いに少なくとも1つの露光条件のもとで複数回求められた複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率を記憶する記憶装置、
複数の前記第1の比率に基づいて第2の比率を求める第1の算出装置、
前記第1の露光装置において、前記少なくとも1つの露光条件のもとでそれぞれ前記複数種類のパターンの像の形状の計算値を前記第2の比率で補正した値を用いて前記第1の露光装置の比較対象の露光特性を予測する第2の算出装置、及び
複数の前記比較対象の露光特性と前記第2の露光装置の露光特性との比較を行うことにより、前記第1の露光装置を調整するための条件を求める第3の算出装置、
として機能させるための露光装置の調整用プログラム。
【請求項8】
前記複数種類のパターンは互いにピッチが異なる複数のパターンであり、
前記第1の比率は複数のピッチに関して求められることを特徴とする請求項7に記載の露光装置の調整用プログラム。
【請求項9】
前記第1の比率は前記複数のパターンの像の線幅の実測値と計算値との比率であり、
前記第2の算出装置は、前記複数のパターンの像の線幅の計算値に前記第2の比率を乗算して前記比較対象の露光特性を求めることを特徴とする請求項8に記載の露光装置の調整用プログラム。
【請求項10】
前記第3の算出装置は、
前記第1の露光装置の前記比較対象の露光特性と前記第2の露光装置の露光特性との比較を行うために、前記第1の露光装置に関して予測される前記複数のパターンの像の線幅と前記第2の露光装置に関して実測された前記複数のパターンの像の線幅との差分の二乗和を計算し、この計算結果を比較することを特徴とする請求項9に記載の露光装置の調整用プログラム。
【請求項11】
前記第2の比率は、複数の前記第1の比率の加重平均により算出され、
複数の前記第1の比率の加重平均を計算するときの重みは、前記第1の露光装置の露光特性が前記第2の露光装置の露光特性に近いほど大きいことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の露光装置の調整用プログラム。
【請求項12】
照明光学系からの露光光でパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
目標となる露光装置の露光特性と、前記露光装置において少なくとも1つの露光条件のもとで複数回求められた複数種類のパターンの像の形状の実測値と計算値との第1の比率とを記憶する記憶装置と、
前記露光装置を調整するための条件を求める演算装置と、
前記演算装置によって求められた条件に応じて前記露光装置の露光条件を調整する調整装置と、を備え、
前記演算装置は、
複数の前記第1の比率に基づいて、第2の比率を求め、
前記露光装置において、前記少なくとも1つの露光条件のもとでそれぞれ前記複数種類のパターンの像の形状の計算値を前記第2の比率で補正した値を用いて前記露光装置の比較対象の露光特性を予測し、
複数の前記比較対象の露光特性と前記目標となる露光装置の露光特性との比較により前記露光装置を調整するための条件を求める
ことを特徴とする露光装置。
【請求項13】
前記複数種類のパターンは互いにピッチが異なる複数のパターンであり、
前記第1の比率は複数のピッチに関して求められることを特徴とする請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記第1の比率は前記複数のパターンの像の線幅の実測値と計算値との比率であり、
前記露光装置に関して予測される前記比較対象の露光特性は、前記複数のパターンの像の線幅の計算値に前記第2の比率を乗算して得られることを特徴とする請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
前記演算装置は、
前記露光装置の前記比較対象の露光特性と前記目標となる露光装置の露光特性との比較を行うために、前記露光装置に関して予測される前記複数のパターンの像の線幅と前記目標となる露光装置に関して実測された前記複数のパターンの像の線幅との差分の二乗和を計算し、この計算結果を比較することを特徴とする請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記第2の比率は、複数の前記第1の比率の加重平均により算出され、
複数の前記第1の比率の加重平均を計算するときの重みは、前記露光装置の露光特性が前記目標となる露光装置の露光特性に近いほど大きいことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項17】
前記露光装置の前記露光条件は、前記露光装置の投影光学系の開口数及び照明光学系のσ値を含むことを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項18】
請求項12から請求項17のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体にパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記物体を処理することと、
を含むデバイス製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−212815(P2012−212815A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78385(P2011−78385)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】