露光装置及び画像形成装置
【課題】露光装置における光源の発光応答性の変化に起因して感光体の表面に生じる電位誤差を低減する技術を提供する。
【解決手段】本発明の露光装置2は、画像情報に応じた駆動電流に応じた光ビームを出力する第1の光源(LD1,LD2)ととともに、第2の光源(LD3,LD4)を使用して、複数の光ビームを感光ドラム4の表面に照射する。第2の光源は、感光ドラム4の表面の感度のむらによる帯電電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によってレーザビームを感光ドラム4に照射する。第1の光源及び第2の光源から感光ドラム4に照射される光ビームは、感光ドラム4の表面において、同一の領域に重ねて照射される。
【解決手段】本発明の露光装置2は、画像情報に応じた駆動電流に応じた光ビームを出力する第1の光源(LD1,LD2)ととともに、第2の光源(LD3,LD4)を使用して、複数の光ビームを感光ドラム4の表面に照射する。第2の光源は、感光ドラム4の表面の感度のむらによる帯電電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によってレーザビームを感光ドラム4に照射する。第1の光源及び第2の光源から感光ドラム4に照射される光ビームは、感光ドラム4の表面において、同一の領域に重ねて照射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、及び当該露光装置を使用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一般に、露光装置が備える光源(レーザ光源)から出力される光ビーム(レーザビーム)で感光体の表面を走査して露光することにより、当該感光体の表面に静電潜像を形成する。静電潜像が形成される感光体には、その表面に、位置(領域)ごとに感度が異なる感度むらが存在し得る。この感度むらは、感光体の製造工程において感光体の感光層の膜厚を一定にすることが難しいことに起因して発生し得る。感光体に感度むらが存在する場合、感光体の表面を、同一の条件で帯電させ、かつ、同一の条件で光学走査装置によって露光したとしても、感光体の表面電位が領域ごとに異なる電位になることで、当該表面電位に電位むら(誤差)が発生するおそれがある。このように、感光体の表面の電位特性に不均一性が生じた場合には、静電潜像をトナー等の現像剤で現像した際に、形成された画像に濃度のむらが発生する。
【0003】
このような感光体の感度むらに起因して生じる表面電位の誤差を補償する技術として、例えば、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1によれば、単一のレーザ光源を備える画像形成装置において、感光体に形成される静電潜像の表面電位(暗部電位及び明部電位の各々)を均一にするために、感光体の感度むらに応じた補正値を用いて、レーザ光源の光量を制御している。具体的には、感光体の各領域における感度を表す感度データから当該感度の補正値を決定し、決定した補正値に応じてレーザ光源に通電される駆動電流を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−223716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光量制御では、レーザ光源に通電させる駆動電流を、感光体の感度むらに応じて補正することにより、感光体の表面電位の誤差を補正している。画像形成の際には、レーザ光源は、このような光量制御によって制御された駆動電流によって定まる発光特性で、画像情報に応じた光量のレーザビームを感光体に照射する。ところが、光量制御によりレーザ光源に通電させる駆動電流を変化させると、レーザ光源の発光応答性が変化する。この場合、この発光応答性の変化に起因して、レーザ光源の発光特性が、駆動電流に応じて定まる理想的な発光特性から変動してしまう問題がある。特に、画像情報に応じて駆動電流を(パルス幅変調等により)変調することで、画像情報に応じた光量でレーザ光源を発光させた場合、駆動電流に応じて定まる理想的な光量と実際の光量との間に誤差が生じる問題がある。その結果、画像情報に応じたレーザビームを感光体に照射した際に、感光体の表面電位に、感度むらに起因した上述の誤差が残留するために、画質が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、露光装置における光源の発光応答性の変化に起因して感光体の表面に生じる電位誤差を低減する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、露光装置として実現できる。露光装置は、感光体の表面に静電潜像を形成するための光ビームを感光体に照射する光源を備える露光装置であって、画像情報に応じた駆動電流に応じた光ビームを感光体に照射する第1の露光と、感光体の表面の領域毎の電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によって光ビームを感光体に照射する第2の露光と、によって静電潜像が形成されるように、光源を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、露光装置におけるレーザ光源の発光応答性の変化に起因して感光体の表面に生じる電位誤差を低減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光学走査装置(露光装置)2の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置1における画像形成動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザ駆動装置12の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザ駆動装置12の動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る、各露光方式において各主走査ラインに対して主ビーム及び副ビームを照射する順番を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る、バックグラウンド露光による露光時の、半導体レーザ11の発光特性と、感光ドラム4の潜像特性とを示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る、イメージ露光による露光時の、半導体レーザ11の発光特性と、感光ドラム4の潜像特性とを示す図である。
【図9】感光ドラム4の主走査方向における感光ドラム4の感度特性の一例を示す図である。
【図10】半導体レーザ11(LD1〜LD4)の発光特性の一例を示す図である。
【図11】半導体レーザ11に供給する駆動電流を変化させることによって感光ドラム4の表面電位を補正する光量制御の一例を示す図である。
【図12】半導体レーザ11の応答特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
[第1の実施形態]
<画像形成装置1の構成>
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置1の構成について説明する。画像形成装置1は、入力された画像情報に基づいて転写材(記録材)Pの表面に画像を形成する画像形成プロセスを実行する。当該画像情報は、画像読取装置300から入力されてもよいし、他の情報処理装置(コンピュータ)等の外部装置からネットワークを介して入力されてもよい。画像形成プロセスは、以下で説明する帯電プロセス、露光プロセス、現像プロセス、転写プロセス、及び定着プロセスを含む。画像形成装置1は、これらのプロセスを順に実行することによって、転写材Pの表面に画像を形成する。
【0012】
画像形成装置1は、感光体の一例として、図1において矢印方向に回転するドラム状の感光ドラム4を備える。感光ドラム4の周囲には、その回転方向に沿って、当該感光ドラム4の表面を帯電させる帯電ローラ5と、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を現像する現像ユニット6とが配置される。感光ドラム4の周囲には、さらに、感光ドラム4からトナー像が転写される中間転写ベルト7Aと、中間転写ベルト7Aへの転写後に感光ドラム4の表面に残留するトナーを回収して当該表面を清掃するクリーナ9Aとが配置される。中間転写ベルト7Aは、駆動ローラ7C、2次転写対向ローラ7D、及びテンションローラ7Eの3つのローラによって掛け渡されている。中間転写ベルト7Aには、テンションローラ7Eによって一定の張力が維持されている。駆動ローラ7Cは、中間転写ベルト7Aを駆動して、当該中間転写ベルト7Aを矢印方向に搬送する。
【0013】
中間転写ベルト7Aの周囲には、中間転写ベルト7A上のカラーのトナー像を転写材Pの表面に転写させるための転写ローラ8が配置される。給紙カセット(図示せず)から給紙された転写材Pが搬送される(矢印で示す向きの)搬送路に沿って、中間転写ベルト7Aと転写ローラ8とが接した状態で配置され、当該搬送路のさらに下流には、定着装置10が配置される。
【0014】
現像ユニット6は、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を、トナー等の現像剤で現像することによって、感光ドラム4の表面に現像剤像(トナー像)を形成する。この現像ユニット6は、複数の現像器6Y,6M,6C,6Bkを備える。現像器6Y,6M,6C,6Bkは、トナー及びキャリアが所定比率で混合された、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、及びブラック(Bk)色の現像剤をそれぞれ収容している。各現像器は、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を、それぞれ異なる色の現像剤で現像する。
【0015】
画像形成装置1は、画像形成装置1の動作を制御する制御機構として、本体制御装置200と画像制御装置3とを備える。また、画像形成装置1は、感光ドラム4の表面を光ビーム(レーザビーム)で走査して露光する光学走査装置(露光装置)2を備える。光学走査装置2は、入力された画像情報に応じたレーザビームを感光ドラム4の表面に照射することで、当該感光ドラム4の表面を露光する。本体制御装置200は、画像形成装置1全体の動作を制御する。画像制御装置3は、本体制御装置200からの指示に応じて、各色の画像情報を、レーザ出力用の画像データに変換して光学走査装置2へ出力する。
【0016】
次に、画像形成装置1における画像形成プロセスで実行される各プロセスについて説明する。画像形成装置1は、画像形成プロセスを開始すると、まず、帯電プロセスを開始する。帯電プロセスでは、画像形成装置1は、電源(図示せず)から帯電バイアスを帯電ローラ5に印加して、当該帯電ローラ5によって感光ドラム4の表面を所定の電位に一様に帯電させる。
【0017】
露光プロセスでは、光学走査装置2は、所定電位(暗部電位)に帯電した感光ドラム4の表面を露光する。まず、画像制御装置3が、画像読取装置300から入力されたY色、M色、C色及びBk色の各色の画像情報を、順に、各色の画像データに変換して光学走査装置2に出力する。光学走査装置2は、色ごとの画像データに基づくレーザビームL1を、感光ドラム4の表面に照射することによって当該表面を露光する。感光ドラム4の表面においてレーザビームL1が照射された部分は、表面電位が上述の所定電位から異なる電位(明部電位)に変化する。このようにして、感光ドラム4の表面に各色の静電潜像が順に形成される。当該静電潜像は、感光ドラム4の(矢印方向への)回転に伴って、光学走査装置2によってレーザビームを照射された位置から、現像ユニット6と感光ドラム4とが当接する現像位置に移動する。
【0018】
現像プロセスでは、まず、現像ユニット6が矢印の方向に回転することによって、現像すべき静電潜像の色に対応する現像器(現像器6Y,6M,6C,6Bkの何れか)が、現像位置に移動する。現像器6Y,6M,6C,6Bkは、それぞれ、現像位置において、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を、それぞれ異なる色のトナーで現像する。具体的には、現像器6Y,6M,6C,6Bkにそれぞれ収容された異なる色のトナーが、感光ドラム4の表面の潜像部分に付着することによって、当該感光ドラム4の表面に各色のトナー像が順に形成される。形成されたトナー像は、感光ドラム4の回転に伴って、現像位置から、感光ドラム4と1次転写ローラ7Bとが中間転写ベルト7Aを挟んで当接する1次転写位置に向かって移動する。
【0019】
転写プロセスでは、現像ユニット6によって順に感光ドラム4の表面に形成された、4色のトナー像が、1次転写位置において、中間転写ベルト7Aに順に重ねて1次転写される。即ち、中間転写ベルト7Aの表面におけるY色のトナー像の形成位置と同一の位置に、M色、C色、及びBk色のトナー像が重ねて転写される。その結果、中間転写ベルト7Aの表面に、4色のトナー像からなるカラーのトナー像が形成される。なお、画像形成装置1は、電源(図示せず)から1次転写ローラ7Bに対して所定の転写バイアスを印加することによって、トナー像を感光ドラム4から中間転写ベルト7Aに転写させる。
【0020】
転写プロセスでは、その後、中間転写ベルト7Aの回転に伴って、その表面に形成されたカラーのトナー像が、2次転写ローラ8と2次転写対向ローラ7Dとが中間転写ベルト7Aを挟んで当接する2次転写位置に向かって移動する。当該2次転写位置においては、2次転写ローラ8によって、中間転写ベルト7A上の当該トナー像が転写材Pに2次転写される。未定着のトナー像が表面に転写された転写材Pは、その後、定着装置10に向かって搬送路上を搬送される。定着プロセスでは、定着装置10が、転写材Pに対して熱及び圧力を与えることによって、未定着のトナー像を転写材Pに定着させる。
【0021】
なお、1次転写後に、感光ドラム4の表面に残留したトナー等がクリーナ9Aによって回収されることによって、感光ドラム4の表面が清掃される。また、2次転写後に、中間転写ベルト7Aの表面に残留したトナー等がクリーナ9Bによって回収されることによって、中間転写ベルト7Aの表面が清掃される。このようにして、感光ドラム4及び中間転写ベルト7Aの表面に残留したトナーが除去された後に、画像形成装置1では、次の画像形成プロセスが実行される。
【0022】
<光学走査装置(露光装置)2の構成>
次に、図2を参照して、光学走査装置(露光装置)2の構成について説明する。光学走査装置2は、図2に示す構成要素のうちで、感光ドラム4以外の構成要素を備える。即ち、光学走査装置2は、半導体レーザ11、レーザ駆動装置(レーザ制御部)12、コリメートレンズ13、光量検出(PD)ユニット14、シリンドリカルレンズ16、スキャナモータユニット17、ポリゴンミラー17a、f−θレンズ18、反射ミラー19、及びビーム検出(BD)センサ21を備える。
【0023】
半導体レーザ11は、複数のレーザダイオード(LD)を備え、当該複数のレーザダイオードから複数の光ビーム(レーザビーム)を同時に出力可能である。レーザ駆動装置12は、半導体レーザ11(のLD)に供給する駆動電流によって、半導体レーザ11(のLD)の駆動を制御する。半導体レーザ11から出力されたレーザビームは、コリメートレンズ13を透過して平行なビームになった後、PDユニット14に入射する。
【0024】
PDユニット14は、その内部に反射ミラー14aを備え、また、ビーム出力面に光量検出器14bを備える。反射ミラー14aは、半導体レーザ11からのレーザビームを部分的に反射する特性を有する。反射ミラー14aで反射したレーザビームは、光量検出器14bによって受光される。光量検出器14bは、受光したレーザビームの光量を測定する測定素子である。光量検出器14bは、レーザビームを受光すると、受光したレーザビームの光量(強度)に応じたPD電流15(光量検出信号)を、レーザ駆動装置12へ出力する。このように、PDユニット14は、半導体レーザ11が発光したレーザビームの光量を光量検出器14bにより測定し、測定した光量に応じたPD電流15をレーザ駆動装置12へ出力する。レーザ駆動装置12は、半導体レーザ11が所定光量で発光するように、PDユニット14から出力されたPD電流15に基づいて、後述する自動光量制御(APC)により、半導体レーザ11に供給する駆動電流を調整する。
【0025】
半導体レーザ11から出力され、PDユニット14を通過したレーザビームは、さらに、シリンドリカルレンズ16を通過して、ポリゴンミラー17aに到達する。ポリゴンミラー17aは、スキャナモータを含むスキャナモータユニット17によって駆動されことで、等角速度で回転する。なお、スキャナモータユニット17は、図3を用いて後述するように、画像制御装置3によるモータ制御信号26を用いた制御に基づいて、ポリゴンミラー17aを回転させる。ポリゴンミラー17aは、レーザビームが感光ドラム4の表面を走査するように、等角速度で回転しながらレーザビームを偏向する回転多面鏡である。ポリゴンミラー17aによって偏向されたレーザビームは、f−θレンズ18に入射する。
【0026】
f−θレンズ18に入射するレーザビームのうち、レーザビームL1は、レーザビームの一走査周期において、感光ドラム4の表面を走査及び露光するレーザビームであり、画像形成に利用される。一方で、レーザビームL2は、レーザビームの走査範囲の端部におけるレーザビームであり、画像形成に利用されない。
【0027】
画像形成に利用されるレーザビームL1は、f−θレンズ18を通過した後、反射ミラー19によって反射して、感光ドラム4に到達する。f−θレンズ18は、感光ドラム4の表面(走査面)上で、感光ドラム4の回転方向(レーザビームL1の副走査方向)に対して直角となる方向(レーザビームL1の主走査方向、即ち、感光ドラム4の回転軸と平行な方向)において、レーザビームL1の軌跡が等速運動をするよう、速度変換を行う機能を有するレンズである。このように、半導体レーザ11から出力されたレーザビームL1が感光ドラム4に照射されることによって、感光ドラム4の表面に静電潜像が形成される。
【0028】
一方で、図2中に示されるレーザビームL1の少なくとも一方のレーザビームであるレーザビームL2は、f−θレンズ18を通過した後、反射ミラー19によって反射して、BDセンサ20に到達する。即ち、レーザ駆動装置12は、レーザビームがL2の光路を取るような(BDセンサ20に入射するような)タイミングで半導体レーザ11に駆動電流を供給する。BDセンサ20は、レーザビームL2を受光すると、感光ドラム4をレーザビームL1で走査する際の基準となるビーム検出(BD)信号21を出力する。BDセンサ20から出力されたBD信号21は、画像制御装置3に供給される。
【0029】
<画像形成装置1における画像形成動作の手順>
次に、図3に示すフローチャートを参照して、画像形成装置1において、画像制御装置3による制御に基づいて実行される画像形成(印字)動作の手順について説明する。
S101で、画像制御装置3は、本体制御装置200から画像制御信号210により印字命令が入力される。すると、S102で、画像制御装置3は、光学走査装置2内のスキャナモータユニット17に対して、ポリゴンミラー17aを回転動作させることを示す回転動作信号を、モータ制御信号26により出力する。スキャナモータユニット17は、画像制御装置3からの回転動作信号に応じて、ポリゴンミラー17aの回転制御を開始する。
【0030】
次に、S103で、画像制御装置3は、スキャナモータユニット17から出力されるモータ制御信号26により、ポリゴンミラー17aを回転させるスキャナモータが安定した回転状態となったことを示すモータロック信号を検知したか否かを判定する。ここで、画像制御装置3は、モータロック信号を検知したと判定すると、S104へ処理を進める。S104で、画像制御装置3は、レーザ制御信号22によりレーザ駆動装置12を制御して、半導体レーザ11の発光制御をレーザ駆動装置12に開始させる。その後、画像制御装置3は、光学走査装置2内のBDセンサ20から出力されるBD信号21を検知する動作モードに移行する。
【0031】
S105で、画像制御装置3は、光学走査装置2内のBDセンサ20からBD信号21が所定回数入力されたことを検知したか否かを判定する。ここで、画像制御装置3は、BD信号21が所定回数入力されたことを検知すると、S106へ処理を進める。S106で、画像制御装置3は、BD信号21の検出タイミングを基準としたタイミングにおいて、画像データ22を光学走査装置2内のレーザ駆動装置12に出力する。
【0032】
光学走査装置2(レーザ駆動装置12及び半導体レーザ11)は、上述したように、画像制御装置3から受信した画像データ22に基づいて、レーザビームL1を感光ドラム4に照射することによって、感光ドラム4の表面を露光する。さらに、上述の画像形成プロセスに従った処理が実行されることによって、当該露光により形成された静電潜像を現像して得られるトナー像が、最終的に転写材P上に形成される。画像制御装置3は、S107で、画像形成(印字)動作中に、印字動作が完了したか否かを判定する。ここで、画像制御装置3は、印字動作が完了していないと判定する限り、S107の判定処理を繰り返す一方で、印字動作が完了したと判定した場合には、処理をS109へ進める。
【0033】
印字動作の終了後、S109で、画像制御装置3は、モータ制御信号26により、光学走査装置2内のスキャナモータユニット17を制御して、ポリゴンミラー17aの回転動作を停止させる。また、画像制御装置3は、レーザ制御信号群23により、光学走査装置2内のレーザ駆動装置12を制御して、半導体レーザ11を消灯させる。このようにして、画像制御装置3は、光学走査装置2の動作を停止させる停止制御を行う。
【0034】
なお、画像制御装置3は、S103においてモータロック信号が検知されない場合、又はS105においてBD信号21が検知されない場合には、光学走査装置2において動作エラーが生じたと判断する。この場合、S108で、画像制御装置3は、本体制御装置200に対して、光学走査装置2において動作エラーが生じたことを示すエラー信号を、画像制御信号210により出力する。その後、S109で、画像制御装置3は、上述のように光学走査装置2の停止制御を行う。
【0035】
<感光ドラム4の電位むらの発生メカニズム>
図1に示すような感光ドラム4には、一般に、感度むらが存在し得る。これは、感光ドラム4の製造工程において感光層の膜厚にばらつきが生じることに起因して、感光ドラム表面のすべての領域で感度特性が一定にならないためである。このように感度むらを有する感光ドラム4の表面全体を同一条件で帯電させ、かつ、当該表面全体に半導体レーザ11が同一の光量でレーザビームを照射したとしても、表面電位は一定とならず、電位むら(電位特性の不均一性)が生じる。この場合、均一に帯電した感光ドラム4の表面を画像情報に応じたレーザビームで露光したとしても、露光後の表面電位に電位誤差(帯電電位誤差)が生じる。その結果、現像後のトナー像に濃度むらが生じ、転写材に形成される画像の画質も劣化することになる。
【0036】
このような感光ドラム4の感度むらに起因した電位誤差は、上述のように、半導体レーザ11から感光ドラム4に照射するレーザビームの光量を適切に調整することによって低減できることが知られている。図11は、感光ドラム4の主走査方向における感度に応じて半導体レーザ11に供給する駆動電流の大きさ(振幅)を変化させることによって、感光ドラム4の表面電位を補正する光量制御の一例を示す図である。同図では、感度むらの補正前及び補正後における、半導体レーザ11の発光特性(光量)と、感光ドラム4の潜像特性とを示している。
【0037】
また、図11では、全面発光時及び画像(VDO)発光時の特性を示している。ここで、全面発光は、感光ドラム4の表面における画像領域において、半導体レーザ11に供給する駆動電流を変調せずに、当該駆動電流によって半導体レーザ11が発光する場合に相当する。このため、全面発光の場合、半導体レーザ11の光量は、駆動電流の大きさ(振幅)に依存する。一方で、画像発光は、感光ドラム4の表面における画像領域において、画像情報に応じてパルス幅変調(PWM)により変調した駆動電流によって、半導体レーザ11が発光する場合に相当する。このため、画像発光の場合、半導体レーザ11の光量は、駆動電流の大きさ(振幅)と、後述するように、画像情報に応じたPWMによって定まる駆動電流のパルス幅とに依存する。
【0038】
図11において、感度むらの補正前では、駆動電流の大きさを一定にすることにより、半導体レーザ11の光量が一定となるように制御している。全面発光の場合、感光ドラム4の潜像特性において、感光ドラム4におけるコントラスト電圧(=現像バイアスVDC−明部電圧VL)がレーザビームの主走査方向において変動している。これは、感光ドラム4の感度むらに起因したものである。このコントラスト電圧の変動は、現像後のトナー像に濃度むらが生じる原因となる。また、図11において、感度むらの補正後では、感光ドラム4の感度むら(感度データ)に応じて、感度むらに依存する電位誤差を補正するように、半導体レーザ11への駆動電流の大きさを変化させている。その結果、図11に示すように、全面発光時には、補正後のコントラスト電圧が一定に保たれていることがわかる。
【0039】
次に、上述のように感光ドラム4の感度データに応じて感度むらの補正を行うとともに、画像発光を行う場合を想定する。即ち、感度むらの補正のために、上述のように半導体レーザ11へ供給する駆動電流の大きさを感度データに応じて変化させるとともに、さらに、PWMにより、画像情報に応じて当該駆動電流のパルス幅を変化させる。この場合、図11の1101に示すように、感光ドラム4上で、半導体レーザ11からレーザビームが照射された部分の表面電位が、主走査方向において変動することがわかる。即ち、補正後の感光ドラム4のコントラスト電圧が、主走査方向において均一にならず、誤差が生じていることがわかる。(当該誤差は「補正残渣」とも称される。)これは、後述するように、光量制御により半導体レーザ11に通電させる駆動電流の大きさを変化させた場合に、半導体レーザ11の発光応答性が変化することに起因する。
【0040】
図12は、半導体レーザ11の応答特性の一例を示す図である。同図では、半導体レーザ11の光量の定格値を10mWとしている。また、同図において、横軸は、半導体レーザ11に通電させる駆動電流に対応するPWM設定値(PWM値)、縦軸は、各PWM設定値を用いてPWMを行った駆動電流によって半導体レーザ11を発光させた場合の平均光量をそれぞれ示している。
【0041】
図12では、PWM値として、5ビットで量子化した32レベル(0〜31)の量子化値を用いた場合について示している。このPWM値は、駆動電流の変調に使用される。駆動電流は、所定周波数の矩形波であり、PWM値に応じたデューティ比となるように波形が整形されることによって、PWMを施される。PWM値が大きいほどパルスの持続時間が大きくなり、当該パルスによって半導体レーザ11に供給される駆動電流の総量が多くなる。その結果、PWM値が大きいほど、図12に示すように、半導体レーザ11の光量が大きくなる。
【0042】
また、同図では、異なる大きさ(振幅)の駆動電流を半導体レーザ11に通電させた場合に対応する3つの応答特性を、それらの理論値とともに示している。これら3つの応答特性は、それぞれ、PWM値の最大値(PWM値=31、即ち、平均光量=100%に相当)に対応する平均光量(最大光量)Poで、各PWM値に対応する平均光量を正規化した平均光量を示す特性である。ここでは、最大光量Poを9.3mW、5mW、2mWとした場合の応答特性を示しており、最大光量Poは駆動電流の大きさ(振幅)に依存して定まる。なお、同図では、さらに、駆動電流の大きさに応じて定まる理想的な光量(各PWM値に対する理想的な応答特性)を理論値として示している。
【0043】
図12からわかるように、半導体レーザ11を画像発光させた場合(即ち、駆動電流のパルス幅を画像情報に対応するPWM値に従って変化させた場合)、最大光量Poの変化に依存して、各PWM値に対応する光量とその理論値との間に誤差が生じることがわかる。また、最大光量Poが異なると、異なる大きさの誤差が生じることがわかる。このことは、半導体レーザ11が画像発光を行う場合には、PWM値によって定まる、最大光量に対する相対的な光量が、駆動電流の大きさに依存して変化してしまうことを意味する。即ち、半導体レーザ11に供給する駆動電流の大きさを変化させると、半導体レーザ11の発光応答性が変化する。
【0044】
従って、半導体レーザ11の駆動電流の大きさを、感度データに基づく光量制御により変化させると、当該レーザの発光応答性が変化することになる。特に、駆動電流をPWM値により変調して画像発光を行う場合、PWM値によって定まる、最大光量に対する相対的な光量が、駆動電流の大きさに依存して変化し、本来設定されるべき光量から誤差が生じることになる。このため、感光ドラム4の感度むらに起因した表面電位の誤差を、駆動電流の大きさの制御により低減しようとしても、感光ドラム4に照射されるレーザビームの光量に誤差が生じることになる。その結果、感度むらに起因した感光ドラム4の表面電位の誤差(電位むら)を十分に低減できず、誤差が残留するために、画質の低下を招くおそれがある。
【0045】
<感光ドラム4の電位むらの補正方法>
上述のように、感光ドラム4の表面電位の誤差を補正するために、感度補正値に応じて大きさを調整した駆動電流を用いて、半導体レーザ11が1回の露光により画像発光を行うと、上述の発光応答性の変化に起因してその誤差が残留する。その結果、感光ドラム4の電位むらを十分に補正できない問題がある。本実施形態では、半導体レーザ11の発光応答性の変化に起因して残留する、上述の感光ドラム4の表面の電位誤差を十分に低減するために、感光ドラム4の表面の各領域を、第1の露光と第2の露光との2回にわけて露光する。第1の露光では、画像情報に応じた駆動電流によってレーザ光源から感光ドラム4にレーザビーム(主ビーム)を照射することによって、画像情報に応じた潜像を感光ドラム4の表面に形成する。また、第2の露光では、感光ドラム4の感度補正値に応じた駆動電流によってレーザ光源から感光ドラム4にレーザビームを照射することによって、感光ドラム4の表面の電位誤差を低減する。
【0046】
本実施形態では、具体的には、主ビームを出力する第1のレーザ光源(第1の光源)と、副ビームを出力する第2のレーザ光源(第2の光源)とを用いる。具体的には、第1のレーザ光源に対する駆動電流については、その大きさを、感光ドラム4における感度むらによる電位誤差を低減する感度補正値に応じて変化させることなく、一定値とする。即ち、各主走査ラインについて、APCによる調整後の駆動電流(パルス信号)の振幅を、感度補正値に応じて変化させず一定とした状態で、当該駆動電流に対して画像情報に基づくPWMを行う。これにより、画像情報に応じたレーザビームを出力するレーザ光源については、駆動電流パルスの大きさの変化によってレーザ光源の発光応答性が変化することを防ぐ。
【0047】
一方で、第2のレーザ光源に供給する駆動電流については、各領域について、感光ドラム4の感度むらを低減する感度補正値に応じて、レーザビームが照射される主走査位置ごとに大きさ(振幅)を変化させる。これにより、第2の光源は、感光ドラム4の感度むらによる電位誤差を低減する光量のレーザビームを、感光ドラム4に照射する。
【0048】
ここで、第2のレーザ光源に供給される駆動電流は、画像形成の際に、画像情報に応じてPWMが行われることがないため、図11に示すように、画像発光時の潜像特性ではなく、全面発光時の潜像特性が得られることになる。(なお、PWMを行わないということは、図12においてはPWM値=31、平均光量=100%の場合に相当する。)また、感光ドラム4の感度補正値に応じて、駆動電流の大きさを変化させた、即ち、レーザ光源の光量を調整したとしても、当該調整後の光量をPWM値に応じてさらに相対的に変化させない限り、上述のようなレーザ光源の発光応答性の問題が生じることはない。
【0049】
このように、本実施形態では、第1のレーザ光源による第1の露光と第2のレーザ光源による第2の露光とを組み合わせて、感光ドラム4にレーザビームを照射することで感光ドラム4を露光する。これらのレーザ光源は、感光ドラム4の表面における同一の主走査ライン(同一の領域)に対して、重ねてレーザビームを照射する。本実施形態によれば、第1の露光においては、各主走査ライン(各領域)について、PWMによる駆動電流パルスの大きさを変化させることがないため、レーザ光源の発光応答性は変化しない。このため、レーザ光源の発光応答性の変化によって、レーザ光源の光量に誤差が生じることがない。一方で、第2の露光においては、感光ドラム4の感度むらの低減のために感度補正値に応じて駆動電流の大きさを変化させるものの、PWMを行わないため、そもそもレーザ光源の発光応答性の影響はない。従って、上述のように1回の露光により画像発光を行う場合と比較して、本実施形態では第1の露光及び第2の露光を組み合わせることによって、レーザ光源の発光応答性の変化に起因して残留してしまう、感光ドラム4の感度むらに起因した表面電位の誤差を、十分に低減することが可能になる。以下では、本実施形態に係る光学走査装置2の動作について、より具体的に説明する。
【0050】
<レーザ駆動装置12の構成及び動作>
次に、図4及び図5を参照して、レーザ駆動装置12の構成及び動作について説明する。本実施形態では、図4に示すように、半導体レーザ11が、レーザ光源に相当する4つのレーザダイオード(LD1〜LD4)を備え、4ビーム構成のマルチビームレーザである場合について説明する。半導体レーザ11は、主ビームを形成するLD1及びLD2と、副ビームを形成するLD3及びLD4とを備える。これらのうち、LD1及びLD3と、LD2及びLD4とは、それぞれ異なるレーザ光源群を構成する。これらの異なるレーザ光源群に含まれるレーザ光源は、感光ドラム4の表面において、異なるレーザ光源群間で互いに異なる主走査ライン(異なる領域)にレーザビームを重ねて照射する。このように、LD1及びLD3からのレーザビームは同一の主走査ラインを走査し、LD2及びLD4からのレーザビームは同一の主走査ラインを走査するように、LD1からLD4は半導体レーザ11に配列されている。また、LD1及びLD3が走査する主走査ラインとLD2及びLD4が走査する主走査ラインは副走査方向において異なるラインとなる。ただし、後述するように、半導体レーザ11は、必ずしも複数のレーザ光源群を備えている必要はなく、単一のレーザ光源群のみを備えていてもよく、その場合も本実施形態と同等の効果が得られよう。
【0051】
レーザ駆動装置12は、画像制御装置3(図1)、及び光学走査装置2内のPDユニット14(図2)と接続されており、それらから入力される信号に基づいて、半導体レーザ11にレーザ光源として設けられたLD1〜LD4を駆動する。レーザ駆動装置12は、後述するように、LD1〜LD4にそれぞれ供給する(通電させる)駆動電流40a,40b,41a,41bを制御することによって、LD1〜LD4の発光状態を制御可能である。このように、本実施形態において、レーザ駆動装置12は、レーザ光源を制御する制御手段の一例として機能する。
【0052】
レーザ駆動装置12は、同一の主走査ラインを走査する主ビーム及び副ビームをそれぞれ形成するLD1及びLD3に対して駆動電流を供給する、主電流制御部38a(主電流制御部a)及び副電流制御部39a(副電流制御部b)を備える。ここで、主電流制御部38aは、LD1に駆動電流を供給し、副電流制御部39aは、LD3に駆動電流を供給する。レーザ駆動装置12は、さらに、LD2及びLD4に対応する電流制御部として、主電流制御部38b及び副電流制御部39bを備える。ここで、主電流制御部38a,38bは、第1の電流供給手段の一例であり、副電流制御部39a,39bは、第2の電流供給手段の一例である。なお、主電流制御部38b及び副電流制御部39bの構成及び動作は、主電流制御部38a及び副電流制御部39aとそれぞれ同様であるため、以下ではそれらの説明を可能な限り省略する。
【0053】
図4に示すように、レーザ駆動装置12は、さらに、モード制御回路31と、PD切替回路36とを備える。レーザ駆動装置12には、画像制御装置3から、画像(VDO)信号22a,22bと、レーザ制御信号群23と、クロック信号(CLK)24と、電流制御データ(DATA)25とが入力されとともに、PDユニット14から、PD電流15が入力される。また、レーザ制御信号群23は、図5に示すように、光量制御信号23aと、2つのチャンネル選択信号23b,23cとを含み、レーザ駆動装置12内においてモード制御回路31に入力される。画像制御装置3は、レーザ制御信号群23に含まれる信号の信号値の組み合わせに基づいて、レーザ駆動装置12の動作状態(動作モード)を制御する。即ち、モード制御回路31は、レーザ制御信号群23に含まれるこれらの信号23a〜23cにおける信号値の組み合わせに応じて、レーザ駆動装置12で使用すべき動作モードを決定する。
【0054】
本実施形態で、モード制御回路31が選択可能な動作モード(図5の501)には、例えば、LD1〜LD4のそれぞれについての光量制御(APC)モード(LDAm_APC,LDBm_APC,LDAs_APC,LDBs_APC)、強制消灯モード(OFF)、及び画像発光モード(VDO)がある。図5では、半導体レーザ11からのレーザビームによる感光ドラム4の表面に対する主走査の約1周期における、レーザ駆動装置12の動作について示している。なお、1主走査周期は、BD信号21が検出される周期に対応する。図5に示すように、LD1〜LD4についてのAPCモード、及び強制消灯モードは、感光ドラム4に対するレーザビームの1走査周期のうち、画像を形成しない非画像形成区間で使用される。画像発光モードは、感光ドラム4に対するレーザビームの1走査周期のうち、画像を形成する画像形成区間で使用される。
【0055】
モード制御回路31は、決定した動作モードでレーザ駆動装置12が動作するよう、主サンプル信号(MSH)33、副サンプル信号(SSH)34、及び強制消灯信号(FOFF)35により主電流制御部38a,38b及び副電流制御部39a,39bを制御する。
【0056】
PDユニット14は、半導体レーザ11内のLD1〜LD4が発光したレーザビームの強度(発光強度)に応じたPD電流15を、レーザ駆動装置12に出力する。レーザ駆動装置12に入力されたPD電流15は、PD切替回路36に対して供給される。PD切替回路36は、モード制御回路31の制御に応じて決定した出力モードに従って、PDユニット14から入力されたPD電流15の供給先を、主電流制御部38a,38b及び副電流制御部39a,39bの間で切り替える回路である。
【0057】
PD切替回路36は、モード制御回路31から入力されるPD切替信号32に応じて、出力モードを決定する。モード制御回路31は、上述のように決定した動作モードに応じて、図5に示すように、PD切替回路36に出力するPD切替信号32(32a,32b)を変化させる。図5では、モード制御回路31からPD切替回路36へのPD切替信号32a,32bの変化に従って、PD切替回路36からのPD電流15の供給先に相当する出力モード(図5の502)が切り替わっていることがわかる。本実施形態では、PD切替回路36は、PD切替回路36からのPD電流15の供給先を、4つの電流制御部の何れかに設定する。このように、PD切替回路36は、モード制御回路31からのPD切替信号32a,32bにおける信号値の組み合わせに応じて、出力モードを決定する。
【0058】
以下では、図5に示すタイミングチャートに沿って、各動作モード(図5の501)におけるレーザ駆動装置12の動作について説明しながら、主電流制御部38a,38b及び副電流制御部39a,39bの動作について説明する。
【0059】
(1)主ビームについてのAPCモード(LDAm_APC,LDBm_APC)
主ビームを形成するLD1についてのAPCモード(LDAm_APC)では、LD1の光量が予め定められた光量に制御されるように、主電流制御部38aからLD1に供給する駆動電流が制御される。なお、LD2についてのAPCモード(LDBm_APC)においても同様の制御が行われるため、LD2に対する主電流制御部38bについての説明は省略する。
【0060】
モード制御回路31は、LD1についてのAPCモードを選択すると、以下のように動作する。モード制御回路31は、主サンプル信号33aにより、主電流制御部38a内のサンプル・ホールド(S&H)回路49をサンプル(導通)状態にする。また、モード制御回路31は、強制消灯信号35aによりVDO制御回路54を制御して、主電流制御部38aから駆動電流が供給されるLD1を、強制的に点灯(発光)状態にする。VDO制御回路54は、図4のトランジスタ55を強制的にオン状態にすることによって、LD1を発光させる。さらに、モード制御回路31は、PD切替信号32によりPD切替回路36を制御して、PD切替回路36からのPD電流15の供給先(図5の502)を主電流制御部38aに切り替えさせる。これにより、PDユニット14から入力されたPD電流15は、PD電流PDamとして主電流制御部38aに供給され始める。
【0061】
本動作モードにおいては、半導体レーザ11のLD1〜LD4のうち、LD1のみに駆動電流が供給されるため、LD1のみが発光する。従って、PDユニット14は、LD1が発光したレーザビーム(主ビーム)の強度(発光強度)に応じたPD電流15を出力する。本動作モードにおいて、PD切替回路36を介して主電流制御部38aに入力されたPD電流15(PDam)は、可変抵抗器48によって電圧に変換される。変換後の電圧は、比較器46に印加される。比較器46は、印加された当該電圧と、基準電圧発生器47から印加された、予め定められた光量(光量制御値Pmtgt)に対応する基準電圧とを比較する。比較器46は、当該比較結果として、それらの差分に応じた信号をサンプル(導通)状態にあるサンプル・ホールド回路49に出力することによって、ホールドコンデンサ50の電圧を増減させる。ホールドコンデンサ50は、当該コンデンサに固有の時定数で充電される。
【0062】
ホールドコンデンサ50の電圧は、電流ドライバ51の入力端子に入力される。電流ドライバ51は、ホールドコンデンサ50の電圧と駆動抵抗52とに応じた電流を、ミラー回路53からLD1に出力させるように動作する。ここで、ミラー回路における一方(入力側)のトランジスタは電流ドライバ51に接続されており、他方(出力側)のトランジスタはトランジスタ55に接続されている。電流ドライバ51からミラー回路53に与えられた電流は、その電流値が所定のミラー比が乗じられた値となった後、トランジスタ55に供給される。トランジスタ55は、VDO制御回路54によって強制的にオン状態となっているため、ミラー回路53からの電流は、駆動電流40a(LDma)としてLD1に供給される。
【0063】
LD1は、駆動電流40aが供給されることによって、当該駆動電流に応じた光量で発光し、レーザビームを出力する。LD1から出力されたレーザビームは、PDユニット14によって検出され、当該レーザビームの強度に応じたPD電流15が、PD電流PDamとして主電流制御部38aに入力される。さらに、上述のように、比較器46において、PD電流15から変換された電圧と基準電圧とが比較される。主電流制御部38aでは、当該比較結果に応じて、PD電流15から変換された電圧が基準電圧に近づくように、LD1に対する駆動電流が制御される。このようにして、レーザ駆動装置12は、LD1の光量を、予め定められた光量(Pmtgt)に制御する。
【0064】
(2)強制消灯モード(OFF)
図5に示すように、レーザ駆動装置12では、LD1についてのAPCモード(LDAm_APC)の後、モード制御回路31は、強制消灯モード(OFF)を選択する。モード制御回路31は、本動作モードを選択すると、以下のように動作する。モード制御回路31は、強制消灯信号35aによりVDO制御回路54を制御して、LD1を強制的に消灯状態にする。具体的には、モード制御回路31は、強制消灯信号35aをオフにすることにより、トランジスタ55をオフ状態に切り替えさせるよう、VDO制御回路54を制御する。これにより、ミラー回路53からLD1への駆動電流40aの供給が遮断されて、LD1が消灯状態となる。
【0065】
また、主電流制御部38aにおいて、モード制御回路31は、LD1についてのAPCモードから強制消灯モードに切り替えると、主サンプル信号33aにより、サンプル・ホールド回路49をホールド(解放)状態にする。これにより、充電されたホールドコンデンサ50の電圧が、固定的に電流ドライバ51に入力されることになる。その結果、後述する画像発光モード(VDO)において、(1)のAPCにより調整された光量でLD1が発光することになる。
【0066】
(3)副ビームについてのAPCモード(LDAs_APC,LDBs_APC)
副ビームを形成するLD3についてのAPCモード(LDAs_APC)では、LD3の光量が予め定められた光量に制御されるように、主電流制御部38aからLD3に供給する駆動電流が制御される。なお、LD4についてのAPCモード(LDBs_APC)においても同様の制御が行われるため、LD4に対する主電流制御部38bについての説明は省略する。
【0067】
モード制御回路31は、LD3についてのAPCモードを選択すると、以下のように動作する。モード制御回路31は、副サンプル信号34aにより、副電流制御部39a内のサンプル・ホールド(S&H)回路59をサンプル(導通)状態にするとともに、スイッチ回路61を、サンプル・ホールド回路59と電流ドライバ51とが接続されるように切り替える。また、この副サンプル信号34aにより、トランジスタ55は強制的にオン状態となる。ここで、図4からもわかるように、副電流制御部39aにおいてAPCが行われる場合、副電流制御部39aにおける回路の状態は、主電流制御部38aにおいてAPCが行われる際の回路の状態と同等となる。このため、副電流制御部39aにおいても、上述の主電流制御部38aのAPCと同等の動作が実行される。その結果、図5に示すように、LD3の光量が予め定められた光量(Pmtgt)となるように、レーザ駆動装置12からLD3に通電される駆動電流が決定される。
【0068】
(4)画像発光モード(VDO)
モード制御回路31が画像発光モードを選択すると、主電流制御部38aのサンプル・ホールド回路49と副電流制御部39aのサンプル・ホールド回路59とが、主サンプル信号33a及び副サンプル信号34aにより、ホールド(解放)状態となる。主電流制御部38aにおいては、VDO制御回路54が、画像制御装置3から供給される画像情報に相当するVDO信号22aを、トランジスタ55に出力する。また、副電流制御部39aにおいては、副サンプル信号34aにより、スイッチ回路61が、サンプル・ホールド回路59とデジタル・アナログ変換回路(DAC)66とを接続する状態に切り替わる。
【0069】
画像発光モードにおいて、主電流制御部38aの電流ドライバ51は、APCで決定された、ホールドコンデンサ50の電圧と駆動抵抗52とに応じた電流を、ミラー回路53に供給する。ミラー回路53は、電流ドライバ62から入力された電流を、所定のミラー比で変化させた後、駆動電流(LDma)としてLD1へ供給する。当該駆動電流は、ミラー回路53からトランジスタ55を介してLD1に供給される。その際、トランジスタ55は、VDO制御回路54を介して与えられるVDO信号22aに応じて、ミラー回路53からLD1への駆動電流をスイッチングする。これにより、VDO信号22aに応じたPWMが実現される。なお、駆動電流の大きさについては、APCによって定められた電流で一定である。PWM変調された駆動電流がLD1に供給されることによって、LD1は、画像情報に応じたレーザビーム(主ビーム)を、感光ドラム4に照射する。
【0070】
また、副電流制御部39aにおいては、APCで決定された、ホールドコンデンサ60の電圧が、スイッチ回路61を介してDAC66に基準電圧として印加される。なお、基準電圧は、図12における光量100%に対応する電圧である。DAC66には、画像制御装置3から、クロック信号(CLK)24と、電流制御データ(DATA)25とが入力される。DAC66は、入力されたクロック信号24のタイミングに合わせて、電流制御データ25を、デジタル信号からアナログ信号に変換して出力する。ここで、電流制御データ25は、感光ドラム4の表面の領域毎の電位特性の不均一性を低減するための補正値に相当する。
【0071】
DAC66から出力された、補正値に応じたアナログ信号は、低域通過フィルタ(LPF)67を介して電流ドライバ62に入力される。電流ドライバ62は、LPF67からの入力と駆動抵抗63とに応じた電流を、ミラー回路64に供給する。ミラー回路64は、電流ドライバ62から入力された電流を、所定のミラー比で変化させた後、駆動電流(LDsa)としてLD3に供給する。当該駆動電流は、副サンプル信号34aによりオン状態となっているトランジスタ65を介して、LD3に供給される。LD3に供給される駆動電流が、電流制御データ25(感度補正値)に応じて変化することによって、LD3は、図5に示すように、感度補正値に応じた光量のレーザビーム(副ビーム)を、感光ドラム4に照射する。
【0072】
画像発光モードにおいて、LD1(第1のレーザ光源)及びLD3(第2のレーザ光源)から感光ドラム4に照射されるレーザビーム(主ビーム及び副ビーム)は、感光ドラム4の表面において、後述するように、同一の主走査ラインを走査する。これにより、画像情報に応じたレーザビームを出力するLD1への駆動電流を変化させることなく、感光ドラム4を露光することが可能になる。また、感光ドラム4の感度むらに起因する表面電位の誤差を、LD3から照射するレーザビームにより十分に低減することが可能にある。なお、LD2及びLD4と、これらに対応する主電流制御部38b及び副電流制御部39bとの、画像発光モードにおける動作については、LD1及びLD3と、主電流制御部38a及び副電流制御部39aと同様である。従って、これらの説明については省略する。
【0073】
<露光方式に応じたレーザビームの走査方法>
次に、図6〜図8を参照して、半導体レーザ11のLD1〜LD4から出力される主ビーム及び副ビームによる、露光方式に応じた走査方法について説明する。
画像形成装置1では、露光方式の違いに依存して、感光ドラム4の表面において異なる電位間にコントラスト電圧が形成される。具体的には、バックグラウンド露光とイメージ露光とで、異なる電位間にコントラスト電圧Vcontが形成される。形成された静電潜像が現像される際には、コントラスト電圧Vcontに応じた量のトナーが付着する。現像後の画像に濃度むらが生じることを防ぐためには、コントラスト電圧Vcontを一定にする必要がある。
【0074】
ここで、バックグラウンド露光の場合、感光ドラム4の表面において、画像情報に応じて、LD1及びLD3からレーザビームが照射されていない部分にトナーを付着させることによって画像を形成する。この場合、コントラスト電圧Vcontは、感光ドラム4の表面における、レーザビームが照射されていない部分の表面電位に相当する暗部電位VDと現像バイアスVDCとの電位差に相当する。
【0075】
一方で、イメージ露光の場合、感光ドラム4の表面において、画像情報に応じて、LD1及びLD3からレーザビームが照射された部分にトナーを付着させることによって画像を形成する。この場合、コントラスト電圧Vcontは、感光ドラム4の表面における、レーザビームが照射された明部電位VLと現像バイアスVDCとの電位差に相当する。
【0076】
本実施形態では、画像形成装置1がバックグラウンド露光及びイメージ露光の何れを行うかに依存して、各主走査ラインについて、主ビームと副ビームの何れを先に感光ドラム4に照射すべきかが異なる。即ち、主ビームによる第1の露光と副ビームによる第2の露光との何れを先に行うべきかが、露光方式に依存して異なる。これは、上述のコントラスト電圧Vcontの違いに起因する。図6は、(a)バックグラウンド露光及び(b)イメージ露光の各露光方式おいて、各主走査ラインに対して主ビーム及び副ビームを照射する順番を示す図である。同図では、LD1〜LD4からの主ビーム及び副ビームによるn、n+1、n+2回目の走査において、各ビームで何れの主走査ラインを走査するかを示している。また、図7及び図8は、同一の主走査ラインについて、それぞれ異なるレーザ光源による1回目及び2回目の露光時における半導体レーザ11の発光特性と、感光ドラム4の潜像特性とを示す図である。なお、図7はバックグラウンド露光の場合、図8はイメージ露光の場合を示している。
【0077】
図6(a)及び(b)に示すように、同一のレーザ光源群に含まれるLD1及びLD3は、同一の主走査ラインに、異なるタイミングに主ビーム及び副ビームを照射する。また、同一のレーザ光源群に含まれるLD2及びLD4は、異なるレーザ光源群に含まれるLD1及びLD3とは異なる主走査ラインに、主ビーム及び副ビームを照射する。ただし、本実施形態では、露光方式に依存して、図6(a)及び(b)に示すように、各主走査ラインについて、主ビームと副ビームとで走査する順番が異なる。
【0078】
(バックグラウンド露光の場合)
図6(a)に示すように、各主走査ラインについて、LD1(LD2)が主ビームを照射した後に、当該照射された主走査ラインに、LD3(LD4)が副ビームを重ねて照射する。図7に示すように、各主走査ラインについて、LD1(LD2)による1回目の露光が行われると、感光ドラム4の感度むらに応じて表面電位(VD及びVL)に主走査位置に応じた変動(誤差)が生じている。上述のように、バックグラウンド露光の場合、コントラスト電圧Vcontは暗部電位VDと現像バイアスVDCとの間に形成される。このため、バックグランド露光の場合、1回目の主ビームによる露光後の暗部電位VDに生じた電位誤差を、2回目の副ビームによる露光で低減すればよい。
【0079】
このように、バックグラウンド露光では、1回目の露光として主ビームによる第1の露光、2回目の露光として副ビームによる第2の露光を行う。ここで、1回の露光により画像発光を行う場合には、上述のように、使用するレーザ光源の発光応答性が変化するために、感光ドラム4の表面電位の誤差を補正しきれず、誤差が残留してしまう。これに対して、本実施形態では、上述のように、第1の露光はレーザ光源の発光応答性を変化させることがなく、第2の露光はレーザ光源の発光応答性の影響を受けることがない。従って、各主走査ラインの露光を、本実施形態のように第1及び第2の露光に分けることによって、感光ドラム4の感度むら(電位特性)に起因した表面電位の誤差を、レーザ光源の発光応答性の変化に起因して残留させることなく、低減することが可能になる。また、以下のイメージ露光では、第1及び第2の露光の実行順序がバックグラウンド露光とは逆になっているものの、得られる効果はバックグラウンド露光と同様である。
【0080】
(イメージ露光の場合)
図6(b)に示すように、各主走査ラインについて、LD3(LD4)が副ビームを照射した後に、当該照射された主走査ラインに、LD1(LD2)が主ビームを重ねて照射する。上述のように、イメージ露光の場合、コントラスト電圧Vcontは明部電位VLと現像バイアスVDCとの間に形成される。このため、イメージ露光の場合には、主ビームを用いた露光によって最終的に決定される明部電位VLに生じる、感光ドラム4の感度むらに起因した電位誤差を、予め副ビームを用いた露光によって低減すればよい。図8に示すように、各主走査ラインについて、LD3(LD4)の副ビームによる1回目の露光が行われると、感光ドラム4の表面においては、暗部電位VDに対して、副ビームに依存した変動が生じる。これは、感光ドラム4の感度むらを低減する補正値に応じた変動に対応する。その後、LD1(LD2)の主ビームによる2回目の露光が行われると、一定の明部電位VLが形成される。
【0081】
このように、バックグラウンド露光の場合とイメージ露光の場合とに応じて、感光ドラム4の表面における各主走査ラインを、主ビーム及び副ビームで走査する順番を設定する。これにより、露光後のコントラスト電圧Vcontが一定となる。即ち、露光方式によらず、感光ドラム4の感度むらに起因した、感光ドラム4の電位誤差を低減可能となり、画質が低下することを低減できよう。
【0082】
<感度補正値の生成方法>
副電流制御部39a,39bに入力する感度補正値、即ち、電流制御データ(DATA)25は、画像制御装置3によって生成される。画像制御装置3は、画像形成装置1が備える感光ドラム4を用いて予め測定された感度データに基づいて、以下で説明する演算により、感度補正値を算出できる。この感度データは、レーザ駆動装置12又は感光ドラム4に設けられた、EEPROM等の不揮発性の記憶装置に格納されていればよい。例えば、感光ドラム4に当該記憶装置が設けられている場合、画像制御装置3は、感光ドラム4が交換されたことを検知するごとに、当該記憶装置から感度データを読み出すとともに、読み出した感度データに基づいて感度補正値を新たに算出すればよい。
【0083】
なお、画像制御装置3は、算出した感度補正値を内部の記憶装置で保持するとともに、上述の画像発光モードによる動作時に、記憶装置に保持している感度補正値をレーザ駆動装置12に、電流制御データ(DATA)25として出力する。レーザ駆動装置12に入力された感度補正値は、副電流制御部39a,39bに入力される。
【0084】
図9(a)は、感光ドラム4の主走査方向における感光ドラム4の感度特性の一例を示す図である。同図では、横軸に主走査位置dを、縦軸に感光ドラム4の感度ε(d)を示し、主走査方向における13個の位置についての感度ε(d)を示している。また、感光ドラム4における主走査方向の補正範囲(静電潜像が形成される主走査方向の幅)を300mm(dが−150mm〜+150mmの範囲)として、当該範囲における13個の位置の感度ε(d)を示している。
【0085】
図9(a)に示すように、感光ドラム4には、主走査位置dに応じて感度ε(d)が異なる感度むら(感度差)が存在することがわかる。この感度むらは、感光ドラム4の製造時に生じる、感光層の膜厚のむらに起因する。感度ε(d)は、感光ドラム4の製造時等に、感光ドラム4を用いて測定された測定値であり、上述のように、レーザ駆動装置12又は感光ドラム4の記憶装置に感度データとして格納されている。
【0086】
画像制御装置3は、図9(a)に示すような感度データを用いて、感度補正値を算出する。以下では、図9(a)に示す感度データを一例として用いて、図9(b)及び図10を参照しながら感度補正値を算出する手順について説明する。図9(b)は、感光ドラム4の主走査方向における、図9(a)に示す各主走査位置dに対応する補正値を示している。なお、以下では、感度補正値の分解能は8ビット(255レベル)、半導体レーザ11の最大光量Pmax=10[mW]、半導体レーザ11の発光開始電流(閾値電流)Ith=2[mA]としている。
【0087】
画像制御装置3は、感度ε(d)の比率を算出し、算出した比率に基づいて補正値Δを算出する。感度ε(d)の比率Rは、感度ε(d)の主走査方向における最大値で正規化することによって求められる。図9(a)において、ε(d)の最大値は、主走査位置d=±150[mm]における0.392である。このため、例えば、主走査位置d=0[mm]における比率Rは、R=0.351/0.392=0.895と求められる。この比率Rを用いて、補正値Δは、Δ=1−Rとして算出される。例えば、主走査位置d=0[mm]における補正値Δは、図9(b)にも示すように、Δ=1−0.895=0.105として算出される。画像制御装置3は、主走査方向における主走査位置dのそれぞれについて、補正値Δを同様に算出する。
【0088】
図10は、半導体レーザ11(LD1〜LD4)の発光特性の一例を示す図であり、駆動電流I対光量P特性を示している。同図では、半導体レーザ11の発光効率η=0.5[mW/mA]としている。画像制御装置3は、例えば主走査位置d=0[mm]については、以下のようにして感度補正値を算出する。半導体レーザ11の設定光量Pstrt=5[mW]とすると、d=0[mm]の補正値Δ=0.105に対応する半導体レーザ11の光量ΔPは、ΔP=Pstrt×Δ=5×0.105=0.523[mW]と算出される。次に、ΔPに対応する電流ΔIは、図10に示す発光特性から、ΔI=1.046[mW]と求められる。さらに、閾値電流Ith=2[mA]を考慮すると、ΔPに対応する電流Iは、図10に示すように、I=3.046[mA]と求められる。最終的に、当該データを、設定光量Pstrtに対応する電流Istrt=12[mA]で正規化して、さらに8ビットで量子化すると、64という値が感度補正値として算出される。
【0089】
以上の演算を、予め定められたすべての主走査位置dについて行うことによって、すべての主走査位置dに対する感度補正値が算出される。画像制御装置3は、算出した感度補正値を記憶装置に保持するとともに、画像発光モードにおいて、電流制御データ(DATA)25としてレーザ駆動装置12に出力する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る光学走査装置2(露光装置)は、画像情報に応じた駆動電流に応じたレーザビーム(光ビーム)を出力する第1のレーザ光源(第1の光源)ととともに、第2のレーザ光源(第2の光源)を使用して、複数のレーザビームを感光ドラム4(感光体)の表面に照射する。この第2のレーザ光源は、感光ドラム4の表面の感度のむらによる電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によってレーザビームを感光ドラム4に照射する。第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源から感光ドラム4に照射されるレーザビームは、感光ドラム4の表面において、同一の主走査ライン(同一の領域)に照射される。即ち、感光ドラム4の表面においては、第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源のうち、一方のレーザ光源がレーザビームを照射した主走査ライン(領域)に、他方のレーザ光源がレーザビームを重ねて照射する。第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源の何れが先に、各主走査ラインにレーザビームを照射するかについては、光学走査装置2が設けられた画像形成装置1の露光方式に応じて定めればよい。
【0091】
その結果、画像情報に応じた駆動電流を、感度補正値に応じて変化させることなく、一定の大きさで第1のレーザ光源に供給できる。その一方で、感光ドラム4の感度むらに起因した帯電電位誤差(電位特性の不均一性)を低減するためのレーザビームを、第2のレーザ光源から感光ドラム4に照射できる。これにより、レーザ光源における駆動電流の変化に応じた発光応答性の変化に起因して、感度補正値に応じたレーザビームで帯電電位誤差を十分に低減できなくなることを回避できるとともに、当該電位誤差を低減することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、複数のレーザ光源群で異なる主走査ラインを同時に走査することで、露光速度を向上させているが、単一のレーザ光源群を用いる場合にも本発明は適用できる。その場合にも、本実施形態と同等の効果を得ることができよう。その場合には、LD2及びLD4と、それらに対応する主電流制御部38b及び副電流制御部39bは必要ない。
【0093】
さらに、本発明は、感光ドラム4の表面における各領域について、上述のように複数のレーザ光源によってそれぞれ第1及び第2の露光を行う実施形態だけでなく、1つのレーザ光源によって第1及び第2の露光を行う実施形態にも適用できる。この場合、例えば、上述のように第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源でそれぞれ行っていた第1及び第2の露光を、各主走査ライン(各領域)について、1つのレーザ光源で時分割に2回に分けて行えばよい。この第1及び第2の露光は、上述の実施形態と同様、各主走査ラインについて重ねて行えばよい。このような場合にも、上述の実施形態と同様、レーザ光源の発光応答性に起因して残留してしまう感光ドラム4の表面電位の誤差を低減することが可能になる。また、副走査方向において異なる主走査ラインを走査する複数のレーザ光源のそれぞれが、第1及び第2の露光を行ってもよい。この場合、露光速度を向上させつつ、感光ドラム4の表面電位の誤差を低減することが可能になる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、及び当該露光装置を使用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一般に、露光装置が備える光源(レーザ光源)から出力される光ビーム(レーザビーム)で感光体の表面を走査して露光することにより、当該感光体の表面に静電潜像を形成する。静電潜像が形成される感光体には、その表面に、位置(領域)ごとに感度が異なる感度むらが存在し得る。この感度むらは、感光体の製造工程において感光体の感光層の膜厚を一定にすることが難しいことに起因して発生し得る。感光体に感度むらが存在する場合、感光体の表面を、同一の条件で帯電させ、かつ、同一の条件で光学走査装置によって露光したとしても、感光体の表面電位が領域ごとに異なる電位になることで、当該表面電位に電位むら(誤差)が発生するおそれがある。このように、感光体の表面の電位特性に不均一性が生じた場合には、静電潜像をトナー等の現像剤で現像した際に、形成された画像に濃度のむらが発生する。
【0003】
このような感光体の感度むらに起因して生じる表面電位の誤差を補償する技術として、例えば、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1によれば、単一のレーザ光源を備える画像形成装置において、感光体に形成される静電潜像の表面電位(暗部電位及び明部電位の各々)を均一にするために、感光体の感度むらに応じた補正値を用いて、レーザ光源の光量を制御している。具体的には、感光体の各領域における感度を表す感度データから当該感度の補正値を決定し、決定した補正値に応じてレーザ光源に通電される駆動電流を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−223716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光量制御では、レーザ光源に通電させる駆動電流を、感光体の感度むらに応じて補正することにより、感光体の表面電位の誤差を補正している。画像形成の際には、レーザ光源は、このような光量制御によって制御された駆動電流によって定まる発光特性で、画像情報に応じた光量のレーザビームを感光体に照射する。ところが、光量制御によりレーザ光源に通電させる駆動電流を変化させると、レーザ光源の発光応答性が変化する。この場合、この発光応答性の変化に起因して、レーザ光源の発光特性が、駆動電流に応じて定まる理想的な発光特性から変動してしまう問題がある。特に、画像情報に応じて駆動電流を(パルス幅変調等により)変調することで、画像情報に応じた光量でレーザ光源を発光させた場合、駆動電流に応じて定まる理想的な光量と実際の光量との間に誤差が生じる問題がある。その結果、画像情報に応じたレーザビームを感光体に照射した際に、感光体の表面電位に、感度むらに起因した上述の誤差が残留するために、画質が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、露光装置における光源の発光応答性の変化に起因して感光体の表面に生じる電位誤差を低減する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、露光装置として実現できる。露光装置は、感光体の表面に静電潜像を形成するための光ビームを感光体に照射する光源を備える露光装置であって、画像情報に応じた駆動電流に応じた光ビームを感光体に照射する第1の露光と、感光体の表面の領域毎の電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によって光ビームを感光体に照射する第2の露光と、によって静電潜像が形成されるように、光源を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、露光装置におけるレーザ光源の発光応答性の変化に起因して感光体の表面に生じる電位誤差を低減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光学走査装置(露光装置)2の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置1における画像形成動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザ駆動装置12の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザ駆動装置12の動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る、各露光方式において各主走査ラインに対して主ビーム及び副ビームを照射する順番を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る、バックグラウンド露光による露光時の、半導体レーザ11の発光特性と、感光ドラム4の潜像特性とを示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る、イメージ露光による露光時の、半導体レーザ11の発光特性と、感光ドラム4の潜像特性とを示す図である。
【図9】感光ドラム4の主走査方向における感光ドラム4の感度特性の一例を示す図である。
【図10】半導体レーザ11(LD1〜LD4)の発光特性の一例を示す図である。
【図11】半導体レーザ11に供給する駆動電流を変化させることによって感光ドラム4の表面電位を補正する光量制御の一例を示す図である。
【図12】半導体レーザ11の応答特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
[第1の実施形態]
<画像形成装置1の構成>
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置1の構成について説明する。画像形成装置1は、入力された画像情報に基づいて転写材(記録材)Pの表面に画像を形成する画像形成プロセスを実行する。当該画像情報は、画像読取装置300から入力されてもよいし、他の情報処理装置(コンピュータ)等の外部装置からネットワークを介して入力されてもよい。画像形成プロセスは、以下で説明する帯電プロセス、露光プロセス、現像プロセス、転写プロセス、及び定着プロセスを含む。画像形成装置1は、これらのプロセスを順に実行することによって、転写材Pの表面に画像を形成する。
【0012】
画像形成装置1は、感光体の一例として、図1において矢印方向に回転するドラム状の感光ドラム4を備える。感光ドラム4の周囲には、その回転方向に沿って、当該感光ドラム4の表面を帯電させる帯電ローラ5と、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を現像する現像ユニット6とが配置される。感光ドラム4の周囲には、さらに、感光ドラム4からトナー像が転写される中間転写ベルト7Aと、中間転写ベルト7Aへの転写後に感光ドラム4の表面に残留するトナーを回収して当該表面を清掃するクリーナ9Aとが配置される。中間転写ベルト7Aは、駆動ローラ7C、2次転写対向ローラ7D、及びテンションローラ7Eの3つのローラによって掛け渡されている。中間転写ベルト7Aには、テンションローラ7Eによって一定の張力が維持されている。駆動ローラ7Cは、中間転写ベルト7Aを駆動して、当該中間転写ベルト7Aを矢印方向に搬送する。
【0013】
中間転写ベルト7Aの周囲には、中間転写ベルト7A上のカラーのトナー像を転写材Pの表面に転写させるための転写ローラ8が配置される。給紙カセット(図示せず)から給紙された転写材Pが搬送される(矢印で示す向きの)搬送路に沿って、中間転写ベルト7Aと転写ローラ8とが接した状態で配置され、当該搬送路のさらに下流には、定着装置10が配置される。
【0014】
現像ユニット6は、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を、トナー等の現像剤で現像することによって、感光ドラム4の表面に現像剤像(トナー像)を形成する。この現像ユニット6は、複数の現像器6Y,6M,6C,6Bkを備える。現像器6Y,6M,6C,6Bkは、トナー及びキャリアが所定比率で混合された、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、及びブラック(Bk)色の現像剤をそれぞれ収容している。各現像器は、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を、それぞれ異なる色の現像剤で現像する。
【0015】
画像形成装置1は、画像形成装置1の動作を制御する制御機構として、本体制御装置200と画像制御装置3とを備える。また、画像形成装置1は、感光ドラム4の表面を光ビーム(レーザビーム)で走査して露光する光学走査装置(露光装置)2を備える。光学走査装置2は、入力された画像情報に応じたレーザビームを感光ドラム4の表面に照射することで、当該感光ドラム4の表面を露光する。本体制御装置200は、画像形成装置1全体の動作を制御する。画像制御装置3は、本体制御装置200からの指示に応じて、各色の画像情報を、レーザ出力用の画像データに変換して光学走査装置2へ出力する。
【0016】
次に、画像形成装置1における画像形成プロセスで実行される各プロセスについて説明する。画像形成装置1は、画像形成プロセスを開始すると、まず、帯電プロセスを開始する。帯電プロセスでは、画像形成装置1は、電源(図示せず)から帯電バイアスを帯電ローラ5に印加して、当該帯電ローラ5によって感光ドラム4の表面を所定の電位に一様に帯電させる。
【0017】
露光プロセスでは、光学走査装置2は、所定電位(暗部電位)に帯電した感光ドラム4の表面を露光する。まず、画像制御装置3が、画像読取装置300から入力されたY色、M色、C色及びBk色の各色の画像情報を、順に、各色の画像データに変換して光学走査装置2に出力する。光学走査装置2は、色ごとの画像データに基づくレーザビームL1を、感光ドラム4の表面に照射することによって当該表面を露光する。感光ドラム4の表面においてレーザビームL1が照射された部分は、表面電位が上述の所定電位から異なる電位(明部電位)に変化する。このようにして、感光ドラム4の表面に各色の静電潜像が順に形成される。当該静電潜像は、感光ドラム4の(矢印方向への)回転に伴って、光学走査装置2によってレーザビームを照射された位置から、現像ユニット6と感光ドラム4とが当接する現像位置に移動する。
【0018】
現像プロセスでは、まず、現像ユニット6が矢印の方向に回転することによって、現像すべき静電潜像の色に対応する現像器(現像器6Y,6M,6C,6Bkの何れか)が、現像位置に移動する。現像器6Y,6M,6C,6Bkは、それぞれ、現像位置において、感光ドラム4の表面に形成された静電潜像を、それぞれ異なる色のトナーで現像する。具体的には、現像器6Y,6M,6C,6Bkにそれぞれ収容された異なる色のトナーが、感光ドラム4の表面の潜像部分に付着することによって、当該感光ドラム4の表面に各色のトナー像が順に形成される。形成されたトナー像は、感光ドラム4の回転に伴って、現像位置から、感光ドラム4と1次転写ローラ7Bとが中間転写ベルト7Aを挟んで当接する1次転写位置に向かって移動する。
【0019】
転写プロセスでは、現像ユニット6によって順に感光ドラム4の表面に形成された、4色のトナー像が、1次転写位置において、中間転写ベルト7Aに順に重ねて1次転写される。即ち、中間転写ベルト7Aの表面におけるY色のトナー像の形成位置と同一の位置に、M色、C色、及びBk色のトナー像が重ねて転写される。その結果、中間転写ベルト7Aの表面に、4色のトナー像からなるカラーのトナー像が形成される。なお、画像形成装置1は、電源(図示せず)から1次転写ローラ7Bに対して所定の転写バイアスを印加することによって、トナー像を感光ドラム4から中間転写ベルト7Aに転写させる。
【0020】
転写プロセスでは、その後、中間転写ベルト7Aの回転に伴って、その表面に形成されたカラーのトナー像が、2次転写ローラ8と2次転写対向ローラ7Dとが中間転写ベルト7Aを挟んで当接する2次転写位置に向かって移動する。当該2次転写位置においては、2次転写ローラ8によって、中間転写ベルト7A上の当該トナー像が転写材Pに2次転写される。未定着のトナー像が表面に転写された転写材Pは、その後、定着装置10に向かって搬送路上を搬送される。定着プロセスでは、定着装置10が、転写材Pに対して熱及び圧力を与えることによって、未定着のトナー像を転写材Pに定着させる。
【0021】
なお、1次転写後に、感光ドラム4の表面に残留したトナー等がクリーナ9Aによって回収されることによって、感光ドラム4の表面が清掃される。また、2次転写後に、中間転写ベルト7Aの表面に残留したトナー等がクリーナ9Bによって回収されることによって、中間転写ベルト7Aの表面が清掃される。このようにして、感光ドラム4及び中間転写ベルト7Aの表面に残留したトナーが除去された後に、画像形成装置1では、次の画像形成プロセスが実行される。
【0022】
<光学走査装置(露光装置)2の構成>
次に、図2を参照して、光学走査装置(露光装置)2の構成について説明する。光学走査装置2は、図2に示す構成要素のうちで、感光ドラム4以外の構成要素を備える。即ち、光学走査装置2は、半導体レーザ11、レーザ駆動装置(レーザ制御部)12、コリメートレンズ13、光量検出(PD)ユニット14、シリンドリカルレンズ16、スキャナモータユニット17、ポリゴンミラー17a、f−θレンズ18、反射ミラー19、及びビーム検出(BD)センサ21を備える。
【0023】
半導体レーザ11は、複数のレーザダイオード(LD)を備え、当該複数のレーザダイオードから複数の光ビーム(レーザビーム)を同時に出力可能である。レーザ駆動装置12は、半導体レーザ11(のLD)に供給する駆動電流によって、半導体レーザ11(のLD)の駆動を制御する。半導体レーザ11から出力されたレーザビームは、コリメートレンズ13を透過して平行なビームになった後、PDユニット14に入射する。
【0024】
PDユニット14は、その内部に反射ミラー14aを備え、また、ビーム出力面に光量検出器14bを備える。反射ミラー14aは、半導体レーザ11からのレーザビームを部分的に反射する特性を有する。反射ミラー14aで反射したレーザビームは、光量検出器14bによって受光される。光量検出器14bは、受光したレーザビームの光量を測定する測定素子である。光量検出器14bは、レーザビームを受光すると、受光したレーザビームの光量(強度)に応じたPD電流15(光量検出信号)を、レーザ駆動装置12へ出力する。このように、PDユニット14は、半導体レーザ11が発光したレーザビームの光量を光量検出器14bにより測定し、測定した光量に応じたPD電流15をレーザ駆動装置12へ出力する。レーザ駆動装置12は、半導体レーザ11が所定光量で発光するように、PDユニット14から出力されたPD電流15に基づいて、後述する自動光量制御(APC)により、半導体レーザ11に供給する駆動電流を調整する。
【0025】
半導体レーザ11から出力され、PDユニット14を通過したレーザビームは、さらに、シリンドリカルレンズ16を通過して、ポリゴンミラー17aに到達する。ポリゴンミラー17aは、スキャナモータを含むスキャナモータユニット17によって駆動されことで、等角速度で回転する。なお、スキャナモータユニット17は、図3を用いて後述するように、画像制御装置3によるモータ制御信号26を用いた制御に基づいて、ポリゴンミラー17aを回転させる。ポリゴンミラー17aは、レーザビームが感光ドラム4の表面を走査するように、等角速度で回転しながらレーザビームを偏向する回転多面鏡である。ポリゴンミラー17aによって偏向されたレーザビームは、f−θレンズ18に入射する。
【0026】
f−θレンズ18に入射するレーザビームのうち、レーザビームL1は、レーザビームの一走査周期において、感光ドラム4の表面を走査及び露光するレーザビームであり、画像形成に利用される。一方で、レーザビームL2は、レーザビームの走査範囲の端部におけるレーザビームであり、画像形成に利用されない。
【0027】
画像形成に利用されるレーザビームL1は、f−θレンズ18を通過した後、反射ミラー19によって反射して、感光ドラム4に到達する。f−θレンズ18は、感光ドラム4の表面(走査面)上で、感光ドラム4の回転方向(レーザビームL1の副走査方向)に対して直角となる方向(レーザビームL1の主走査方向、即ち、感光ドラム4の回転軸と平行な方向)において、レーザビームL1の軌跡が等速運動をするよう、速度変換を行う機能を有するレンズである。このように、半導体レーザ11から出力されたレーザビームL1が感光ドラム4に照射されることによって、感光ドラム4の表面に静電潜像が形成される。
【0028】
一方で、図2中に示されるレーザビームL1の少なくとも一方のレーザビームであるレーザビームL2は、f−θレンズ18を通過した後、反射ミラー19によって反射して、BDセンサ20に到達する。即ち、レーザ駆動装置12は、レーザビームがL2の光路を取るような(BDセンサ20に入射するような)タイミングで半導体レーザ11に駆動電流を供給する。BDセンサ20は、レーザビームL2を受光すると、感光ドラム4をレーザビームL1で走査する際の基準となるビーム検出(BD)信号21を出力する。BDセンサ20から出力されたBD信号21は、画像制御装置3に供給される。
【0029】
<画像形成装置1における画像形成動作の手順>
次に、図3に示すフローチャートを参照して、画像形成装置1において、画像制御装置3による制御に基づいて実行される画像形成(印字)動作の手順について説明する。
S101で、画像制御装置3は、本体制御装置200から画像制御信号210により印字命令が入力される。すると、S102で、画像制御装置3は、光学走査装置2内のスキャナモータユニット17に対して、ポリゴンミラー17aを回転動作させることを示す回転動作信号を、モータ制御信号26により出力する。スキャナモータユニット17は、画像制御装置3からの回転動作信号に応じて、ポリゴンミラー17aの回転制御を開始する。
【0030】
次に、S103で、画像制御装置3は、スキャナモータユニット17から出力されるモータ制御信号26により、ポリゴンミラー17aを回転させるスキャナモータが安定した回転状態となったことを示すモータロック信号を検知したか否かを判定する。ここで、画像制御装置3は、モータロック信号を検知したと判定すると、S104へ処理を進める。S104で、画像制御装置3は、レーザ制御信号22によりレーザ駆動装置12を制御して、半導体レーザ11の発光制御をレーザ駆動装置12に開始させる。その後、画像制御装置3は、光学走査装置2内のBDセンサ20から出力されるBD信号21を検知する動作モードに移行する。
【0031】
S105で、画像制御装置3は、光学走査装置2内のBDセンサ20からBD信号21が所定回数入力されたことを検知したか否かを判定する。ここで、画像制御装置3は、BD信号21が所定回数入力されたことを検知すると、S106へ処理を進める。S106で、画像制御装置3は、BD信号21の検出タイミングを基準としたタイミングにおいて、画像データ22を光学走査装置2内のレーザ駆動装置12に出力する。
【0032】
光学走査装置2(レーザ駆動装置12及び半導体レーザ11)は、上述したように、画像制御装置3から受信した画像データ22に基づいて、レーザビームL1を感光ドラム4に照射することによって、感光ドラム4の表面を露光する。さらに、上述の画像形成プロセスに従った処理が実行されることによって、当該露光により形成された静電潜像を現像して得られるトナー像が、最終的に転写材P上に形成される。画像制御装置3は、S107で、画像形成(印字)動作中に、印字動作が完了したか否かを判定する。ここで、画像制御装置3は、印字動作が完了していないと判定する限り、S107の判定処理を繰り返す一方で、印字動作が完了したと判定した場合には、処理をS109へ進める。
【0033】
印字動作の終了後、S109で、画像制御装置3は、モータ制御信号26により、光学走査装置2内のスキャナモータユニット17を制御して、ポリゴンミラー17aの回転動作を停止させる。また、画像制御装置3は、レーザ制御信号群23により、光学走査装置2内のレーザ駆動装置12を制御して、半導体レーザ11を消灯させる。このようにして、画像制御装置3は、光学走査装置2の動作を停止させる停止制御を行う。
【0034】
なお、画像制御装置3は、S103においてモータロック信号が検知されない場合、又はS105においてBD信号21が検知されない場合には、光学走査装置2において動作エラーが生じたと判断する。この場合、S108で、画像制御装置3は、本体制御装置200に対して、光学走査装置2において動作エラーが生じたことを示すエラー信号を、画像制御信号210により出力する。その後、S109で、画像制御装置3は、上述のように光学走査装置2の停止制御を行う。
【0035】
<感光ドラム4の電位むらの発生メカニズム>
図1に示すような感光ドラム4には、一般に、感度むらが存在し得る。これは、感光ドラム4の製造工程において感光層の膜厚にばらつきが生じることに起因して、感光ドラム表面のすべての領域で感度特性が一定にならないためである。このように感度むらを有する感光ドラム4の表面全体を同一条件で帯電させ、かつ、当該表面全体に半導体レーザ11が同一の光量でレーザビームを照射したとしても、表面電位は一定とならず、電位むら(電位特性の不均一性)が生じる。この場合、均一に帯電した感光ドラム4の表面を画像情報に応じたレーザビームで露光したとしても、露光後の表面電位に電位誤差(帯電電位誤差)が生じる。その結果、現像後のトナー像に濃度むらが生じ、転写材に形成される画像の画質も劣化することになる。
【0036】
このような感光ドラム4の感度むらに起因した電位誤差は、上述のように、半導体レーザ11から感光ドラム4に照射するレーザビームの光量を適切に調整することによって低減できることが知られている。図11は、感光ドラム4の主走査方向における感度に応じて半導体レーザ11に供給する駆動電流の大きさ(振幅)を変化させることによって、感光ドラム4の表面電位を補正する光量制御の一例を示す図である。同図では、感度むらの補正前及び補正後における、半導体レーザ11の発光特性(光量)と、感光ドラム4の潜像特性とを示している。
【0037】
また、図11では、全面発光時及び画像(VDO)発光時の特性を示している。ここで、全面発光は、感光ドラム4の表面における画像領域において、半導体レーザ11に供給する駆動電流を変調せずに、当該駆動電流によって半導体レーザ11が発光する場合に相当する。このため、全面発光の場合、半導体レーザ11の光量は、駆動電流の大きさ(振幅)に依存する。一方で、画像発光は、感光ドラム4の表面における画像領域において、画像情報に応じてパルス幅変調(PWM)により変調した駆動電流によって、半導体レーザ11が発光する場合に相当する。このため、画像発光の場合、半導体レーザ11の光量は、駆動電流の大きさ(振幅)と、後述するように、画像情報に応じたPWMによって定まる駆動電流のパルス幅とに依存する。
【0038】
図11において、感度むらの補正前では、駆動電流の大きさを一定にすることにより、半導体レーザ11の光量が一定となるように制御している。全面発光の場合、感光ドラム4の潜像特性において、感光ドラム4におけるコントラスト電圧(=現像バイアスVDC−明部電圧VL)がレーザビームの主走査方向において変動している。これは、感光ドラム4の感度むらに起因したものである。このコントラスト電圧の変動は、現像後のトナー像に濃度むらが生じる原因となる。また、図11において、感度むらの補正後では、感光ドラム4の感度むら(感度データ)に応じて、感度むらに依存する電位誤差を補正するように、半導体レーザ11への駆動電流の大きさを変化させている。その結果、図11に示すように、全面発光時には、補正後のコントラスト電圧が一定に保たれていることがわかる。
【0039】
次に、上述のように感光ドラム4の感度データに応じて感度むらの補正を行うとともに、画像発光を行う場合を想定する。即ち、感度むらの補正のために、上述のように半導体レーザ11へ供給する駆動電流の大きさを感度データに応じて変化させるとともに、さらに、PWMにより、画像情報に応じて当該駆動電流のパルス幅を変化させる。この場合、図11の1101に示すように、感光ドラム4上で、半導体レーザ11からレーザビームが照射された部分の表面電位が、主走査方向において変動することがわかる。即ち、補正後の感光ドラム4のコントラスト電圧が、主走査方向において均一にならず、誤差が生じていることがわかる。(当該誤差は「補正残渣」とも称される。)これは、後述するように、光量制御により半導体レーザ11に通電させる駆動電流の大きさを変化させた場合に、半導体レーザ11の発光応答性が変化することに起因する。
【0040】
図12は、半導体レーザ11の応答特性の一例を示す図である。同図では、半導体レーザ11の光量の定格値を10mWとしている。また、同図において、横軸は、半導体レーザ11に通電させる駆動電流に対応するPWM設定値(PWM値)、縦軸は、各PWM設定値を用いてPWMを行った駆動電流によって半導体レーザ11を発光させた場合の平均光量をそれぞれ示している。
【0041】
図12では、PWM値として、5ビットで量子化した32レベル(0〜31)の量子化値を用いた場合について示している。このPWM値は、駆動電流の変調に使用される。駆動電流は、所定周波数の矩形波であり、PWM値に応じたデューティ比となるように波形が整形されることによって、PWMを施される。PWM値が大きいほどパルスの持続時間が大きくなり、当該パルスによって半導体レーザ11に供給される駆動電流の総量が多くなる。その結果、PWM値が大きいほど、図12に示すように、半導体レーザ11の光量が大きくなる。
【0042】
また、同図では、異なる大きさ(振幅)の駆動電流を半導体レーザ11に通電させた場合に対応する3つの応答特性を、それらの理論値とともに示している。これら3つの応答特性は、それぞれ、PWM値の最大値(PWM値=31、即ち、平均光量=100%に相当)に対応する平均光量(最大光量)Poで、各PWM値に対応する平均光量を正規化した平均光量を示す特性である。ここでは、最大光量Poを9.3mW、5mW、2mWとした場合の応答特性を示しており、最大光量Poは駆動電流の大きさ(振幅)に依存して定まる。なお、同図では、さらに、駆動電流の大きさに応じて定まる理想的な光量(各PWM値に対する理想的な応答特性)を理論値として示している。
【0043】
図12からわかるように、半導体レーザ11を画像発光させた場合(即ち、駆動電流のパルス幅を画像情報に対応するPWM値に従って変化させた場合)、最大光量Poの変化に依存して、各PWM値に対応する光量とその理論値との間に誤差が生じることがわかる。また、最大光量Poが異なると、異なる大きさの誤差が生じることがわかる。このことは、半導体レーザ11が画像発光を行う場合には、PWM値によって定まる、最大光量に対する相対的な光量が、駆動電流の大きさに依存して変化してしまうことを意味する。即ち、半導体レーザ11に供給する駆動電流の大きさを変化させると、半導体レーザ11の発光応答性が変化する。
【0044】
従って、半導体レーザ11の駆動電流の大きさを、感度データに基づく光量制御により変化させると、当該レーザの発光応答性が変化することになる。特に、駆動電流をPWM値により変調して画像発光を行う場合、PWM値によって定まる、最大光量に対する相対的な光量が、駆動電流の大きさに依存して変化し、本来設定されるべき光量から誤差が生じることになる。このため、感光ドラム4の感度むらに起因した表面電位の誤差を、駆動電流の大きさの制御により低減しようとしても、感光ドラム4に照射されるレーザビームの光量に誤差が生じることになる。その結果、感度むらに起因した感光ドラム4の表面電位の誤差(電位むら)を十分に低減できず、誤差が残留するために、画質の低下を招くおそれがある。
【0045】
<感光ドラム4の電位むらの補正方法>
上述のように、感光ドラム4の表面電位の誤差を補正するために、感度補正値に応じて大きさを調整した駆動電流を用いて、半導体レーザ11が1回の露光により画像発光を行うと、上述の発光応答性の変化に起因してその誤差が残留する。その結果、感光ドラム4の電位むらを十分に補正できない問題がある。本実施形態では、半導体レーザ11の発光応答性の変化に起因して残留する、上述の感光ドラム4の表面の電位誤差を十分に低減するために、感光ドラム4の表面の各領域を、第1の露光と第2の露光との2回にわけて露光する。第1の露光では、画像情報に応じた駆動電流によってレーザ光源から感光ドラム4にレーザビーム(主ビーム)を照射することによって、画像情報に応じた潜像を感光ドラム4の表面に形成する。また、第2の露光では、感光ドラム4の感度補正値に応じた駆動電流によってレーザ光源から感光ドラム4にレーザビームを照射することによって、感光ドラム4の表面の電位誤差を低減する。
【0046】
本実施形態では、具体的には、主ビームを出力する第1のレーザ光源(第1の光源)と、副ビームを出力する第2のレーザ光源(第2の光源)とを用いる。具体的には、第1のレーザ光源に対する駆動電流については、その大きさを、感光ドラム4における感度むらによる電位誤差を低減する感度補正値に応じて変化させることなく、一定値とする。即ち、各主走査ラインについて、APCによる調整後の駆動電流(パルス信号)の振幅を、感度補正値に応じて変化させず一定とした状態で、当該駆動電流に対して画像情報に基づくPWMを行う。これにより、画像情報に応じたレーザビームを出力するレーザ光源については、駆動電流パルスの大きさの変化によってレーザ光源の発光応答性が変化することを防ぐ。
【0047】
一方で、第2のレーザ光源に供給する駆動電流については、各領域について、感光ドラム4の感度むらを低減する感度補正値に応じて、レーザビームが照射される主走査位置ごとに大きさ(振幅)を変化させる。これにより、第2の光源は、感光ドラム4の感度むらによる電位誤差を低減する光量のレーザビームを、感光ドラム4に照射する。
【0048】
ここで、第2のレーザ光源に供給される駆動電流は、画像形成の際に、画像情報に応じてPWMが行われることがないため、図11に示すように、画像発光時の潜像特性ではなく、全面発光時の潜像特性が得られることになる。(なお、PWMを行わないということは、図12においてはPWM値=31、平均光量=100%の場合に相当する。)また、感光ドラム4の感度補正値に応じて、駆動電流の大きさを変化させた、即ち、レーザ光源の光量を調整したとしても、当該調整後の光量をPWM値に応じてさらに相対的に変化させない限り、上述のようなレーザ光源の発光応答性の問題が生じることはない。
【0049】
このように、本実施形態では、第1のレーザ光源による第1の露光と第2のレーザ光源による第2の露光とを組み合わせて、感光ドラム4にレーザビームを照射することで感光ドラム4を露光する。これらのレーザ光源は、感光ドラム4の表面における同一の主走査ライン(同一の領域)に対して、重ねてレーザビームを照射する。本実施形態によれば、第1の露光においては、各主走査ライン(各領域)について、PWMによる駆動電流パルスの大きさを変化させることがないため、レーザ光源の発光応答性は変化しない。このため、レーザ光源の発光応答性の変化によって、レーザ光源の光量に誤差が生じることがない。一方で、第2の露光においては、感光ドラム4の感度むらの低減のために感度補正値に応じて駆動電流の大きさを変化させるものの、PWMを行わないため、そもそもレーザ光源の発光応答性の影響はない。従って、上述のように1回の露光により画像発光を行う場合と比較して、本実施形態では第1の露光及び第2の露光を組み合わせることによって、レーザ光源の発光応答性の変化に起因して残留してしまう、感光ドラム4の感度むらに起因した表面電位の誤差を、十分に低減することが可能になる。以下では、本実施形態に係る光学走査装置2の動作について、より具体的に説明する。
【0050】
<レーザ駆動装置12の構成及び動作>
次に、図4及び図5を参照して、レーザ駆動装置12の構成及び動作について説明する。本実施形態では、図4に示すように、半導体レーザ11が、レーザ光源に相当する4つのレーザダイオード(LD1〜LD4)を備え、4ビーム構成のマルチビームレーザである場合について説明する。半導体レーザ11は、主ビームを形成するLD1及びLD2と、副ビームを形成するLD3及びLD4とを備える。これらのうち、LD1及びLD3と、LD2及びLD4とは、それぞれ異なるレーザ光源群を構成する。これらの異なるレーザ光源群に含まれるレーザ光源は、感光ドラム4の表面において、異なるレーザ光源群間で互いに異なる主走査ライン(異なる領域)にレーザビームを重ねて照射する。このように、LD1及びLD3からのレーザビームは同一の主走査ラインを走査し、LD2及びLD4からのレーザビームは同一の主走査ラインを走査するように、LD1からLD4は半導体レーザ11に配列されている。また、LD1及びLD3が走査する主走査ラインとLD2及びLD4が走査する主走査ラインは副走査方向において異なるラインとなる。ただし、後述するように、半導体レーザ11は、必ずしも複数のレーザ光源群を備えている必要はなく、単一のレーザ光源群のみを備えていてもよく、その場合も本実施形態と同等の効果が得られよう。
【0051】
レーザ駆動装置12は、画像制御装置3(図1)、及び光学走査装置2内のPDユニット14(図2)と接続されており、それらから入力される信号に基づいて、半導体レーザ11にレーザ光源として設けられたLD1〜LD4を駆動する。レーザ駆動装置12は、後述するように、LD1〜LD4にそれぞれ供給する(通電させる)駆動電流40a,40b,41a,41bを制御することによって、LD1〜LD4の発光状態を制御可能である。このように、本実施形態において、レーザ駆動装置12は、レーザ光源を制御する制御手段の一例として機能する。
【0052】
レーザ駆動装置12は、同一の主走査ラインを走査する主ビーム及び副ビームをそれぞれ形成するLD1及びLD3に対して駆動電流を供給する、主電流制御部38a(主電流制御部a)及び副電流制御部39a(副電流制御部b)を備える。ここで、主電流制御部38aは、LD1に駆動電流を供給し、副電流制御部39aは、LD3に駆動電流を供給する。レーザ駆動装置12は、さらに、LD2及びLD4に対応する電流制御部として、主電流制御部38b及び副電流制御部39bを備える。ここで、主電流制御部38a,38bは、第1の電流供給手段の一例であり、副電流制御部39a,39bは、第2の電流供給手段の一例である。なお、主電流制御部38b及び副電流制御部39bの構成及び動作は、主電流制御部38a及び副電流制御部39aとそれぞれ同様であるため、以下ではそれらの説明を可能な限り省略する。
【0053】
図4に示すように、レーザ駆動装置12は、さらに、モード制御回路31と、PD切替回路36とを備える。レーザ駆動装置12には、画像制御装置3から、画像(VDO)信号22a,22bと、レーザ制御信号群23と、クロック信号(CLK)24と、電流制御データ(DATA)25とが入力されとともに、PDユニット14から、PD電流15が入力される。また、レーザ制御信号群23は、図5に示すように、光量制御信号23aと、2つのチャンネル選択信号23b,23cとを含み、レーザ駆動装置12内においてモード制御回路31に入力される。画像制御装置3は、レーザ制御信号群23に含まれる信号の信号値の組み合わせに基づいて、レーザ駆動装置12の動作状態(動作モード)を制御する。即ち、モード制御回路31は、レーザ制御信号群23に含まれるこれらの信号23a〜23cにおける信号値の組み合わせに応じて、レーザ駆動装置12で使用すべき動作モードを決定する。
【0054】
本実施形態で、モード制御回路31が選択可能な動作モード(図5の501)には、例えば、LD1〜LD4のそれぞれについての光量制御(APC)モード(LDAm_APC,LDBm_APC,LDAs_APC,LDBs_APC)、強制消灯モード(OFF)、及び画像発光モード(VDO)がある。図5では、半導体レーザ11からのレーザビームによる感光ドラム4の表面に対する主走査の約1周期における、レーザ駆動装置12の動作について示している。なお、1主走査周期は、BD信号21が検出される周期に対応する。図5に示すように、LD1〜LD4についてのAPCモード、及び強制消灯モードは、感光ドラム4に対するレーザビームの1走査周期のうち、画像を形成しない非画像形成区間で使用される。画像発光モードは、感光ドラム4に対するレーザビームの1走査周期のうち、画像を形成する画像形成区間で使用される。
【0055】
モード制御回路31は、決定した動作モードでレーザ駆動装置12が動作するよう、主サンプル信号(MSH)33、副サンプル信号(SSH)34、及び強制消灯信号(FOFF)35により主電流制御部38a,38b及び副電流制御部39a,39bを制御する。
【0056】
PDユニット14は、半導体レーザ11内のLD1〜LD4が発光したレーザビームの強度(発光強度)に応じたPD電流15を、レーザ駆動装置12に出力する。レーザ駆動装置12に入力されたPD電流15は、PD切替回路36に対して供給される。PD切替回路36は、モード制御回路31の制御に応じて決定した出力モードに従って、PDユニット14から入力されたPD電流15の供給先を、主電流制御部38a,38b及び副電流制御部39a,39bの間で切り替える回路である。
【0057】
PD切替回路36は、モード制御回路31から入力されるPD切替信号32に応じて、出力モードを決定する。モード制御回路31は、上述のように決定した動作モードに応じて、図5に示すように、PD切替回路36に出力するPD切替信号32(32a,32b)を変化させる。図5では、モード制御回路31からPD切替回路36へのPD切替信号32a,32bの変化に従って、PD切替回路36からのPD電流15の供給先に相当する出力モード(図5の502)が切り替わっていることがわかる。本実施形態では、PD切替回路36は、PD切替回路36からのPD電流15の供給先を、4つの電流制御部の何れかに設定する。このように、PD切替回路36は、モード制御回路31からのPD切替信号32a,32bにおける信号値の組み合わせに応じて、出力モードを決定する。
【0058】
以下では、図5に示すタイミングチャートに沿って、各動作モード(図5の501)におけるレーザ駆動装置12の動作について説明しながら、主電流制御部38a,38b及び副電流制御部39a,39bの動作について説明する。
【0059】
(1)主ビームについてのAPCモード(LDAm_APC,LDBm_APC)
主ビームを形成するLD1についてのAPCモード(LDAm_APC)では、LD1の光量が予め定められた光量に制御されるように、主電流制御部38aからLD1に供給する駆動電流が制御される。なお、LD2についてのAPCモード(LDBm_APC)においても同様の制御が行われるため、LD2に対する主電流制御部38bについての説明は省略する。
【0060】
モード制御回路31は、LD1についてのAPCモードを選択すると、以下のように動作する。モード制御回路31は、主サンプル信号33aにより、主電流制御部38a内のサンプル・ホールド(S&H)回路49をサンプル(導通)状態にする。また、モード制御回路31は、強制消灯信号35aによりVDO制御回路54を制御して、主電流制御部38aから駆動電流が供給されるLD1を、強制的に点灯(発光)状態にする。VDO制御回路54は、図4のトランジスタ55を強制的にオン状態にすることによって、LD1を発光させる。さらに、モード制御回路31は、PD切替信号32によりPD切替回路36を制御して、PD切替回路36からのPD電流15の供給先(図5の502)を主電流制御部38aに切り替えさせる。これにより、PDユニット14から入力されたPD電流15は、PD電流PDamとして主電流制御部38aに供給され始める。
【0061】
本動作モードにおいては、半導体レーザ11のLD1〜LD4のうち、LD1のみに駆動電流が供給されるため、LD1のみが発光する。従って、PDユニット14は、LD1が発光したレーザビーム(主ビーム)の強度(発光強度)に応じたPD電流15を出力する。本動作モードにおいて、PD切替回路36を介して主電流制御部38aに入力されたPD電流15(PDam)は、可変抵抗器48によって電圧に変換される。変換後の電圧は、比較器46に印加される。比較器46は、印加された当該電圧と、基準電圧発生器47から印加された、予め定められた光量(光量制御値Pmtgt)に対応する基準電圧とを比較する。比較器46は、当該比較結果として、それらの差分に応じた信号をサンプル(導通)状態にあるサンプル・ホールド回路49に出力することによって、ホールドコンデンサ50の電圧を増減させる。ホールドコンデンサ50は、当該コンデンサに固有の時定数で充電される。
【0062】
ホールドコンデンサ50の電圧は、電流ドライバ51の入力端子に入力される。電流ドライバ51は、ホールドコンデンサ50の電圧と駆動抵抗52とに応じた電流を、ミラー回路53からLD1に出力させるように動作する。ここで、ミラー回路における一方(入力側)のトランジスタは電流ドライバ51に接続されており、他方(出力側)のトランジスタはトランジスタ55に接続されている。電流ドライバ51からミラー回路53に与えられた電流は、その電流値が所定のミラー比が乗じられた値となった後、トランジスタ55に供給される。トランジスタ55は、VDO制御回路54によって強制的にオン状態となっているため、ミラー回路53からの電流は、駆動電流40a(LDma)としてLD1に供給される。
【0063】
LD1は、駆動電流40aが供給されることによって、当該駆動電流に応じた光量で発光し、レーザビームを出力する。LD1から出力されたレーザビームは、PDユニット14によって検出され、当該レーザビームの強度に応じたPD電流15が、PD電流PDamとして主電流制御部38aに入力される。さらに、上述のように、比較器46において、PD電流15から変換された電圧と基準電圧とが比較される。主電流制御部38aでは、当該比較結果に応じて、PD電流15から変換された電圧が基準電圧に近づくように、LD1に対する駆動電流が制御される。このようにして、レーザ駆動装置12は、LD1の光量を、予め定められた光量(Pmtgt)に制御する。
【0064】
(2)強制消灯モード(OFF)
図5に示すように、レーザ駆動装置12では、LD1についてのAPCモード(LDAm_APC)の後、モード制御回路31は、強制消灯モード(OFF)を選択する。モード制御回路31は、本動作モードを選択すると、以下のように動作する。モード制御回路31は、強制消灯信号35aによりVDO制御回路54を制御して、LD1を強制的に消灯状態にする。具体的には、モード制御回路31は、強制消灯信号35aをオフにすることにより、トランジスタ55をオフ状態に切り替えさせるよう、VDO制御回路54を制御する。これにより、ミラー回路53からLD1への駆動電流40aの供給が遮断されて、LD1が消灯状態となる。
【0065】
また、主電流制御部38aにおいて、モード制御回路31は、LD1についてのAPCモードから強制消灯モードに切り替えると、主サンプル信号33aにより、サンプル・ホールド回路49をホールド(解放)状態にする。これにより、充電されたホールドコンデンサ50の電圧が、固定的に電流ドライバ51に入力されることになる。その結果、後述する画像発光モード(VDO)において、(1)のAPCにより調整された光量でLD1が発光することになる。
【0066】
(3)副ビームについてのAPCモード(LDAs_APC,LDBs_APC)
副ビームを形成するLD3についてのAPCモード(LDAs_APC)では、LD3の光量が予め定められた光量に制御されるように、主電流制御部38aからLD3に供給する駆動電流が制御される。なお、LD4についてのAPCモード(LDBs_APC)においても同様の制御が行われるため、LD4に対する主電流制御部38bについての説明は省略する。
【0067】
モード制御回路31は、LD3についてのAPCモードを選択すると、以下のように動作する。モード制御回路31は、副サンプル信号34aにより、副電流制御部39a内のサンプル・ホールド(S&H)回路59をサンプル(導通)状態にするとともに、スイッチ回路61を、サンプル・ホールド回路59と電流ドライバ51とが接続されるように切り替える。また、この副サンプル信号34aにより、トランジスタ55は強制的にオン状態となる。ここで、図4からもわかるように、副電流制御部39aにおいてAPCが行われる場合、副電流制御部39aにおける回路の状態は、主電流制御部38aにおいてAPCが行われる際の回路の状態と同等となる。このため、副電流制御部39aにおいても、上述の主電流制御部38aのAPCと同等の動作が実行される。その結果、図5に示すように、LD3の光量が予め定められた光量(Pmtgt)となるように、レーザ駆動装置12からLD3に通電される駆動電流が決定される。
【0068】
(4)画像発光モード(VDO)
モード制御回路31が画像発光モードを選択すると、主電流制御部38aのサンプル・ホールド回路49と副電流制御部39aのサンプル・ホールド回路59とが、主サンプル信号33a及び副サンプル信号34aにより、ホールド(解放)状態となる。主電流制御部38aにおいては、VDO制御回路54が、画像制御装置3から供給される画像情報に相当するVDO信号22aを、トランジスタ55に出力する。また、副電流制御部39aにおいては、副サンプル信号34aにより、スイッチ回路61が、サンプル・ホールド回路59とデジタル・アナログ変換回路(DAC)66とを接続する状態に切り替わる。
【0069】
画像発光モードにおいて、主電流制御部38aの電流ドライバ51は、APCで決定された、ホールドコンデンサ50の電圧と駆動抵抗52とに応じた電流を、ミラー回路53に供給する。ミラー回路53は、電流ドライバ62から入力された電流を、所定のミラー比で変化させた後、駆動電流(LDma)としてLD1へ供給する。当該駆動電流は、ミラー回路53からトランジスタ55を介してLD1に供給される。その際、トランジスタ55は、VDO制御回路54を介して与えられるVDO信号22aに応じて、ミラー回路53からLD1への駆動電流をスイッチングする。これにより、VDO信号22aに応じたPWMが実現される。なお、駆動電流の大きさについては、APCによって定められた電流で一定である。PWM変調された駆動電流がLD1に供給されることによって、LD1は、画像情報に応じたレーザビーム(主ビーム)を、感光ドラム4に照射する。
【0070】
また、副電流制御部39aにおいては、APCで決定された、ホールドコンデンサ60の電圧が、スイッチ回路61を介してDAC66に基準電圧として印加される。なお、基準電圧は、図12における光量100%に対応する電圧である。DAC66には、画像制御装置3から、クロック信号(CLK)24と、電流制御データ(DATA)25とが入力される。DAC66は、入力されたクロック信号24のタイミングに合わせて、電流制御データ25を、デジタル信号からアナログ信号に変換して出力する。ここで、電流制御データ25は、感光ドラム4の表面の領域毎の電位特性の不均一性を低減するための補正値に相当する。
【0071】
DAC66から出力された、補正値に応じたアナログ信号は、低域通過フィルタ(LPF)67を介して電流ドライバ62に入力される。電流ドライバ62は、LPF67からの入力と駆動抵抗63とに応じた電流を、ミラー回路64に供給する。ミラー回路64は、電流ドライバ62から入力された電流を、所定のミラー比で変化させた後、駆動電流(LDsa)としてLD3に供給する。当該駆動電流は、副サンプル信号34aによりオン状態となっているトランジスタ65を介して、LD3に供給される。LD3に供給される駆動電流が、電流制御データ25(感度補正値)に応じて変化することによって、LD3は、図5に示すように、感度補正値に応じた光量のレーザビーム(副ビーム)を、感光ドラム4に照射する。
【0072】
画像発光モードにおいて、LD1(第1のレーザ光源)及びLD3(第2のレーザ光源)から感光ドラム4に照射されるレーザビーム(主ビーム及び副ビーム)は、感光ドラム4の表面において、後述するように、同一の主走査ラインを走査する。これにより、画像情報に応じたレーザビームを出力するLD1への駆動電流を変化させることなく、感光ドラム4を露光することが可能になる。また、感光ドラム4の感度むらに起因する表面電位の誤差を、LD3から照射するレーザビームにより十分に低減することが可能にある。なお、LD2及びLD4と、これらに対応する主電流制御部38b及び副電流制御部39bとの、画像発光モードにおける動作については、LD1及びLD3と、主電流制御部38a及び副電流制御部39aと同様である。従って、これらの説明については省略する。
【0073】
<露光方式に応じたレーザビームの走査方法>
次に、図6〜図8を参照して、半導体レーザ11のLD1〜LD4から出力される主ビーム及び副ビームによる、露光方式に応じた走査方法について説明する。
画像形成装置1では、露光方式の違いに依存して、感光ドラム4の表面において異なる電位間にコントラスト電圧が形成される。具体的には、バックグラウンド露光とイメージ露光とで、異なる電位間にコントラスト電圧Vcontが形成される。形成された静電潜像が現像される際には、コントラスト電圧Vcontに応じた量のトナーが付着する。現像後の画像に濃度むらが生じることを防ぐためには、コントラスト電圧Vcontを一定にする必要がある。
【0074】
ここで、バックグラウンド露光の場合、感光ドラム4の表面において、画像情報に応じて、LD1及びLD3からレーザビームが照射されていない部分にトナーを付着させることによって画像を形成する。この場合、コントラスト電圧Vcontは、感光ドラム4の表面における、レーザビームが照射されていない部分の表面電位に相当する暗部電位VDと現像バイアスVDCとの電位差に相当する。
【0075】
一方で、イメージ露光の場合、感光ドラム4の表面において、画像情報に応じて、LD1及びLD3からレーザビームが照射された部分にトナーを付着させることによって画像を形成する。この場合、コントラスト電圧Vcontは、感光ドラム4の表面における、レーザビームが照射された明部電位VLと現像バイアスVDCとの電位差に相当する。
【0076】
本実施形態では、画像形成装置1がバックグラウンド露光及びイメージ露光の何れを行うかに依存して、各主走査ラインについて、主ビームと副ビームの何れを先に感光ドラム4に照射すべきかが異なる。即ち、主ビームによる第1の露光と副ビームによる第2の露光との何れを先に行うべきかが、露光方式に依存して異なる。これは、上述のコントラスト電圧Vcontの違いに起因する。図6は、(a)バックグラウンド露光及び(b)イメージ露光の各露光方式おいて、各主走査ラインに対して主ビーム及び副ビームを照射する順番を示す図である。同図では、LD1〜LD4からの主ビーム及び副ビームによるn、n+1、n+2回目の走査において、各ビームで何れの主走査ラインを走査するかを示している。また、図7及び図8は、同一の主走査ラインについて、それぞれ異なるレーザ光源による1回目及び2回目の露光時における半導体レーザ11の発光特性と、感光ドラム4の潜像特性とを示す図である。なお、図7はバックグラウンド露光の場合、図8はイメージ露光の場合を示している。
【0077】
図6(a)及び(b)に示すように、同一のレーザ光源群に含まれるLD1及びLD3は、同一の主走査ラインに、異なるタイミングに主ビーム及び副ビームを照射する。また、同一のレーザ光源群に含まれるLD2及びLD4は、異なるレーザ光源群に含まれるLD1及びLD3とは異なる主走査ラインに、主ビーム及び副ビームを照射する。ただし、本実施形態では、露光方式に依存して、図6(a)及び(b)に示すように、各主走査ラインについて、主ビームと副ビームとで走査する順番が異なる。
【0078】
(バックグラウンド露光の場合)
図6(a)に示すように、各主走査ラインについて、LD1(LD2)が主ビームを照射した後に、当該照射された主走査ラインに、LD3(LD4)が副ビームを重ねて照射する。図7に示すように、各主走査ラインについて、LD1(LD2)による1回目の露光が行われると、感光ドラム4の感度むらに応じて表面電位(VD及びVL)に主走査位置に応じた変動(誤差)が生じている。上述のように、バックグラウンド露光の場合、コントラスト電圧Vcontは暗部電位VDと現像バイアスVDCとの間に形成される。このため、バックグランド露光の場合、1回目の主ビームによる露光後の暗部電位VDに生じた電位誤差を、2回目の副ビームによる露光で低減すればよい。
【0079】
このように、バックグラウンド露光では、1回目の露光として主ビームによる第1の露光、2回目の露光として副ビームによる第2の露光を行う。ここで、1回の露光により画像発光を行う場合には、上述のように、使用するレーザ光源の発光応答性が変化するために、感光ドラム4の表面電位の誤差を補正しきれず、誤差が残留してしまう。これに対して、本実施形態では、上述のように、第1の露光はレーザ光源の発光応答性を変化させることがなく、第2の露光はレーザ光源の発光応答性の影響を受けることがない。従って、各主走査ラインの露光を、本実施形態のように第1及び第2の露光に分けることによって、感光ドラム4の感度むら(電位特性)に起因した表面電位の誤差を、レーザ光源の発光応答性の変化に起因して残留させることなく、低減することが可能になる。また、以下のイメージ露光では、第1及び第2の露光の実行順序がバックグラウンド露光とは逆になっているものの、得られる効果はバックグラウンド露光と同様である。
【0080】
(イメージ露光の場合)
図6(b)に示すように、各主走査ラインについて、LD3(LD4)が副ビームを照射した後に、当該照射された主走査ラインに、LD1(LD2)が主ビームを重ねて照射する。上述のように、イメージ露光の場合、コントラスト電圧Vcontは明部電位VLと現像バイアスVDCとの間に形成される。このため、イメージ露光の場合には、主ビームを用いた露光によって最終的に決定される明部電位VLに生じる、感光ドラム4の感度むらに起因した電位誤差を、予め副ビームを用いた露光によって低減すればよい。図8に示すように、各主走査ラインについて、LD3(LD4)の副ビームによる1回目の露光が行われると、感光ドラム4の表面においては、暗部電位VDに対して、副ビームに依存した変動が生じる。これは、感光ドラム4の感度むらを低減する補正値に応じた変動に対応する。その後、LD1(LD2)の主ビームによる2回目の露光が行われると、一定の明部電位VLが形成される。
【0081】
このように、バックグラウンド露光の場合とイメージ露光の場合とに応じて、感光ドラム4の表面における各主走査ラインを、主ビーム及び副ビームで走査する順番を設定する。これにより、露光後のコントラスト電圧Vcontが一定となる。即ち、露光方式によらず、感光ドラム4の感度むらに起因した、感光ドラム4の電位誤差を低減可能となり、画質が低下することを低減できよう。
【0082】
<感度補正値の生成方法>
副電流制御部39a,39bに入力する感度補正値、即ち、電流制御データ(DATA)25は、画像制御装置3によって生成される。画像制御装置3は、画像形成装置1が備える感光ドラム4を用いて予め測定された感度データに基づいて、以下で説明する演算により、感度補正値を算出できる。この感度データは、レーザ駆動装置12又は感光ドラム4に設けられた、EEPROM等の不揮発性の記憶装置に格納されていればよい。例えば、感光ドラム4に当該記憶装置が設けられている場合、画像制御装置3は、感光ドラム4が交換されたことを検知するごとに、当該記憶装置から感度データを読み出すとともに、読み出した感度データに基づいて感度補正値を新たに算出すればよい。
【0083】
なお、画像制御装置3は、算出した感度補正値を内部の記憶装置で保持するとともに、上述の画像発光モードによる動作時に、記憶装置に保持している感度補正値をレーザ駆動装置12に、電流制御データ(DATA)25として出力する。レーザ駆動装置12に入力された感度補正値は、副電流制御部39a,39bに入力される。
【0084】
図9(a)は、感光ドラム4の主走査方向における感光ドラム4の感度特性の一例を示す図である。同図では、横軸に主走査位置dを、縦軸に感光ドラム4の感度ε(d)を示し、主走査方向における13個の位置についての感度ε(d)を示している。また、感光ドラム4における主走査方向の補正範囲(静電潜像が形成される主走査方向の幅)を300mm(dが−150mm〜+150mmの範囲)として、当該範囲における13個の位置の感度ε(d)を示している。
【0085】
図9(a)に示すように、感光ドラム4には、主走査位置dに応じて感度ε(d)が異なる感度むら(感度差)が存在することがわかる。この感度むらは、感光ドラム4の製造時に生じる、感光層の膜厚のむらに起因する。感度ε(d)は、感光ドラム4の製造時等に、感光ドラム4を用いて測定された測定値であり、上述のように、レーザ駆動装置12又は感光ドラム4の記憶装置に感度データとして格納されている。
【0086】
画像制御装置3は、図9(a)に示すような感度データを用いて、感度補正値を算出する。以下では、図9(a)に示す感度データを一例として用いて、図9(b)及び図10を参照しながら感度補正値を算出する手順について説明する。図9(b)は、感光ドラム4の主走査方向における、図9(a)に示す各主走査位置dに対応する補正値を示している。なお、以下では、感度補正値の分解能は8ビット(255レベル)、半導体レーザ11の最大光量Pmax=10[mW]、半導体レーザ11の発光開始電流(閾値電流)Ith=2[mA]としている。
【0087】
画像制御装置3は、感度ε(d)の比率を算出し、算出した比率に基づいて補正値Δを算出する。感度ε(d)の比率Rは、感度ε(d)の主走査方向における最大値で正規化することによって求められる。図9(a)において、ε(d)の最大値は、主走査位置d=±150[mm]における0.392である。このため、例えば、主走査位置d=0[mm]における比率Rは、R=0.351/0.392=0.895と求められる。この比率Rを用いて、補正値Δは、Δ=1−Rとして算出される。例えば、主走査位置d=0[mm]における補正値Δは、図9(b)にも示すように、Δ=1−0.895=0.105として算出される。画像制御装置3は、主走査方向における主走査位置dのそれぞれについて、補正値Δを同様に算出する。
【0088】
図10は、半導体レーザ11(LD1〜LD4)の発光特性の一例を示す図であり、駆動電流I対光量P特性を示している。同図では、半導体レーザ11の発光効率η=0.5[mW/mA]としている。画像制御装置3は、例えば主走査位置d=0[mm]については、以下のようにして感度補正値を算出する。半導体レーザ11の設定光量Pstrt=5[mW]とすると、d=0[mm]の補正値Δ=0.105に対応する半導体レーザ11の光量ΔPは、ΔP=Pstrt×Δ=5×0.105=0.523[mW]と算出される。次に、ΔPに対応する電流ΔIは、図10に示す発光特性から、ΔI=1.046[mW]と求められる。さらに、閾値電流Ith=2[mA]を考慮すると、ΔPに対応する電流Iは、図10に示すように、I=3.046[mA]と求められる。最終的に、当該データを、設定光量Pstrtに対応する電流Istrt=12[mA]で正規化して、さらに8ビットで量子化すると、64という値が感度補正値として算出される。
【0089】
以上の演算を、予め定められたすべての主走査位置dについて行うことによって、すべての主走査位置dに対する感度補正値が算出される。画像制御装置3は、算出した感度補正値を記憶装置に保持するとともに、画像発光モードにおいて、電流制御データ(DATA)25としてレーザ駆動装置12に出力する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る光学走査装置2(露光装置)は、画像情報に応じた駆動電流に応じたレーザビーム(光ビーム)を出力する第1のレーザ光源(第1の光源)ととともに、第2のレーザ光源(第2の光源)を使用して、複数のレーザビームを感光ドラム4(感光体)の表面に照射する。この第2のレーザ光源は、感光ドラム4の表面の感度のむらによる電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によってレーザビームを感光ドラム4に照射する。第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源から感光ドラム4に照射されるレーザビームは、感光ドラム4の表面において、同一の主走査ライン(同一の領域)に照射される。即ち、感光ドラム4の表面においては、第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源のうち、一方のレーザ光源がレーザビームを照射した主走査ライン(領域)に、他方のレーザ光源がレーザビームを重ねて照射する。第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源の何れが先に、各主走査ラインにレーザビームを照射するかについては、光学走査装置2が設けられた画像形成装置1の露光方式に応じて定めればよい。
【0091】
その結果、画像情報に応じた駆動電流を、感度補正値に応じて変化させることなく、一定の大きさで第1のレーザ光源に供給できる。その一方で、感光ドラム4の感度むらに起因した帯電電位誤差(電位特性の不均一性)を低減するためのレーザビームを、第2のレーザ光源から感光ドラム4に照射できる。これにより、レーザ光源における駆動電流の変化に応じた発光応答性の変化に起因して、感度補正値に応じたレーザビームで帯電電位誤差を十分に低減できなくなることを回避できるとともに、当該電位誤差を低減することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、複数のレーザ光源群で異なる主走査ラインを同時に走査することで、露光速度を向上させているが、単一のレーザ光源群を用いる場合にも本発明は適用できる。その場合にも、本実施形態と同等の効果を得ることができよう。その場合には、LD2及びLD4と、それらに対応する主電流制御部38b及び副電流制御部39bは必要ない。
【0093】
さらに、本発明は、感光ドラム4の表面における各領域について、上述のように複数のレーザ光源によってそれぞれ第1及び第2の露光を行う実施形態だけでなく、1つのレーザ光源によって第1及び第2の露光を行う実施形態にも適用できる。この場合、例えば、上述のように第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源でそれぞれ行っていた第1及び第2の露光を、各主走査ライン(各領域)について、1つのレーザ光源で時分割に2回に分けて行えばよい。この第1及び第2の露光は、上述の実施形態と同様、各主走査ラインについて重ねて行えばよい。このような場合にも、上述の実施形態と同様、レーザ光源の発光応答性に起因して残留してしまう感光ドラム4の表面電位の誤差を低減することが可能になる。また、副走査方向において異なる主走査ラインを走査する複数のレーザ光源のそれぞれが、第1及び第2の露光を行ってもよい。この場合、露光速度を向上させつつ、感光ドラム4の表面電位の誤差を低減することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の表面に静電潜像を形成するための光ビームを前記感光体に照射する光源を備える露光装置であって、
画像情報に応じた駆動電流に応じた前記光ビームを前記感光体に照射する第1の露光と、
前記感光体の表面の領域毎の電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によって光ビームを前記感光体に照射する第2の露光と、
によって前記静電潜像が形成されるように、前記光源を制御する制御手段
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記光源は、第1の光源と第2の光源とを備え、
前記第1の光源は、前記第1の露光を行う光源であり、
前記第2の光源は、前記第2の露光を行う光源であること
を特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記感光体の表面において、前記第1の光源から光ビームが照射されていない部分に現像剤が付着することによって画像が形成される場合、
前記感光体の表面における領域毎に、前記第1の光源が光ビームを照射した後に、当該照射された領域に前記第2の光源が光ビームを重ねて照射するように、前記光源を制御すること
を特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記感光体の表面において、前記第1の光源から光ビームが照射された部分に現像剤が付着することによって画像が形成される場合、
前記感光体の表面における領域毎に、前記第2の光源が光ビームを照射した後に、当該照射された領域に前記第1の光源が光ビームを重ねて照射するように、前記光源を制御すること
を特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記光源は、
それぞれが前記第1の光源及び前記第2の光源を備える複数の光源群を備え、
異なる光源群に含まれる光源は、前記感光体の表面において、異なる光源群間で互いに異なる領域に光ビームを重ねて照射すること
を特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1の光源から出力された光ビームの光量を検出する光量検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記光量検出手段によって検出される光量が予め定められた光量となる駆動電流を、前記第1の露光において前記第1の光源に供給すべき駆動電流として設定すること
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記第1の露光において、前記設定した駆動電流を、前記画像情報に応じてパルス幅変調して前記第1の光源に供給する第1の電流供給手段と、
前記第2の露光において、前記感光体の表面における帯電電位の不均一性を低減するように、当該感度の測定値から求まる前記補正値に応じた駆動電流を、前記第2の光源に供給する第2の電流供給手段と、
を備えることを特徴とする請求項6に露光装置。
【請求項8】
画像形成装置であって、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記感光体の表面を光ビームで露光することで、前記感光体の表面に静電潜像を形成する請求項1乃至7の何れか1項に記載の露光装置と、
前記感光体の表面に形成された静電潜像を現像剤で現像することで、記録材に転写すべき画像を前記感光体の表面に形成する現像手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
感光体の表面に静電潜像を形成するための光ビームを前記感光体に照射する光源を備える露光装置であって、
画像情報に応じた駆動電流に応じた前記光ビームを前記感光体に照射する第1の露光と、
前記感光体の表面の領域毎の電位特性の不均一性を低減するための補正値に応じた駆動電流によって光ビームを前記感光体に照射する第2の露光と、
によって前記静電潜像が形成されるように、前記光源を制御する制御手段
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記光源は、第1の光源と第2の光源とを備え、
前記第1の光源は、前記第1の露光を行う光源であり、
前記第2の光源は、前記第2の露光を行う光源であること
を特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記感光体の表面において、前記第1の光源から光ビームが照射されていない部分に現像剤が付着することによって画像が形成される場合、
前記感光体の表面における領域毎に、前記第1の光源が光ビームを照射した後に、当該照射された領域に前記第2の光源が光ビームを重ねて照射するように、前記光源を制御すること
を特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記感光体の表面において、前記第1の光源から光ビームが照射された部分に現像剤が付着することによって画像が形成される場合、
前記感光体の表面における領域毎に、前記第2の光源が光ビームを照射した後に、当該照射された領域に前記第1の光源が光ビームを重ねて照射するように、前記光源を制御すること
を特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記光源は、
それぞれが前記第1の光源及び前記第2の光源を備える複数の光源群を備え、
異なる光源群に含まれる光源は、前記感光体の表面において、異なる光源群間で互いに異なる領域に光ビームを重ねて照射すること
を特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1の光源から出力された光ビームの光量を検出する光量検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記光量検出手段によって検出される光量が予め定められた光量となる駆動電流を、前記第1の露光において前記第1の光源に供給すべき駆動電流として設定すること
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記第1の露光において、前記設定した駆動電流を、前記画像情報に応じてパルス幅変調して前記第1の光源に供給する第1の電流供給手段と、
前記第2の露光において、前記感光体の表面における帯電電位の不均一性を低減するように、当該感度の測定値から求まる前記補正値に応じた駆動電流を、前記第2の光源に供給する第2の電流供給手段と、
を備えることを特徴とする請求項6に露光装置。
【請求項8】
画像形成装置であって、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記感光体の表面を光ビームで露光することで、前記感光体の表面に静電潜像を形成する請求項1乃至7の何れか1項に記載の露光装置と、
前記感光体の表面に形成された静電潜像を現像剤で現像することで、記録材に転写すべき画像を前記感光体の表面に形成する現像手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−224032(P2012−224032A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95275(P2011−95275)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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