説明

静電チャック及び半導体・液晶製造装置

【課題】複数のチャック領域を備え、その外側領域に設けられた凹面部にウェハを搬送するためのトレイが配置される静電チャックにおいて、信頼性を向上させること。
【解決手段】ウェハ2が載置される複数のチャック領域Rと、チャック領域Rの外側領域に設けられた凹面部Cとを備えたチャック機能部10と、チャック領域Rに対応するチャック機能部10の内部と、凹面部Cに対応するチャック機能部10の内部とにそれぞれ配置された電極40,40aとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ウェハなどの被吸着物を吸着する機構に使用される静電チャック及びそれを備えた半導体・液晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハプロセスなどで使用されるドライエッチング装置やCVD装置などの半導体製造装置には、各種のプロセスでウェハ温度を制御するためにウェハを静電吸着して載置する静電チャックが備えらえている。
【0003】
例えば、ドライエッチング装置は、プラズマ処理によってウェハ温度が規定以上に上昇しないように、冷却された静電チャックを備えており、ウェハの温度がある温度で均一になるようにウェハが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−64460号公報
【特許文献2】特開2011−114178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後述する予備的事項の欄で説明するように、複数のチャック領域を備え、その外側領域に設けられた凹面部にウェハを搬送するためのトレイが配置される静電チャックがある。そのような静電チャックをエッチング装置に適用する場合は、トレイは静電チャックに吸着されていないため、ウェハよりもトレイの温度がかなり高くなってしまう。
【0006】
このため、ウェハ内で周縁部の温度が高くなり、ウェハ内でエッチング特性がばらついて歩留り低下の要因になる。また、トレイが高温になると搬送トラブルが発生しやすくなる。このため、トレイが冷却するまで待つ必要があるので、スループットが低下し、生産効率が悪くなる問題がある。
【0007】
複数のチャック領域を備え、その外側領域に設けられた凹面部に被吸着物を搬送するためのトレイが配置される静電チャックにおいて、信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点によれば、被吸着物が載置される複数のチャック領域と、前記チャック領域の外側領域に設けられた凹面部とを備えたチャック機能部と、前記チャック領域に対応する前記チャック機能部の内部と、凹面部に対応する前記チャック機能部の内部とにそれぞれ配置された電極とを有する静電チャックが提供される。
【0009】
また、その開示の他の観点によれば、チャンバと、前記チャンバに取り付けられた静電チャックと、被吸着物を搬送するためのトレイとを有し、前記静電チャックは、被吸着物が載置される複数のチャック領域と、前記チャック領域の外側領域に設けられた凹面部とを備えたチャック機能部と、前記チャック領域に対応する前記チャック機能部の内部と、凹面部に対応する前記チャック機能部の内部とにそれぞれ配置された電極とを有し、前記被吸着物を搬送するためのトレイは、前記チャック領域に対応する部分に開口部を備え、前記静電チャックの凹面部に配置されている半導体・液晶製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以下の開示によれば、静電チャックは、搬送用のトレイを吸着するための電極を備えるため、トレイは静電チャックに十分に吸着した状態となる。これにより、静電チャックがドライエッチング装置に適用される場合は、ウェハ(被吸着物)と同様に、プラズマからトレイにかかる熱は静電チャックから外部に放熱されて十分に冷却される。
【0011】
このため、ウェハがトレイからの熱の影響を受けなくなるので、ウェハ内において温度の均一性が確保され、ウェハ内でのエッチング処理の歩留りを向上させることができる。
【0012】
また、トレイが静電チャックで十分に冷却されるため、エッチング処理が完了した後に直ちにアームでトレイを信頼性よく搬送することができる。これにより、エッチング処理のスループットを向上させることができ、生産効率の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は予備的事項を説明する断面図(その1)である。
【図2】図2は予備的事項を説明する断面図(その2)である。
【図3】図3は第1実施形態の静電チャックを示す断面図である。
【図4】図4は第1実施形態の静電チャックを示す平面図である。
【図5】図5は第1実施形態の静電チャックにおいてトレイによってウェハが上側に持ち上げられた様子を示す断面図である。
【図6】図6は第2実施形態の静電チャックを示す断面図である。
【図7】図7は第3実施形態の静電チャックを示す断面図である。
【図8】図8は第4実施形態の静電チャックを示す断面図である。
【図9】図9は実施形態の静電チャックを備えたドライエッチング装置(半導体・液晶製造装置)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0015】
実施形態の説明の前に、基礎となる予備的事項について説明する。
【0016】
図1に示すように、静電チャック100は複数のチャック領域Rを備えており、各チャック領域Rにウェハ200が載置される。静電チャック100の各チャック領域Rの内部には電極300がそれぞれ設けられている。
【0017】
また、静電チャック100の各チャック領域Rの外側領域は凹面部Cとなっている。そして、静電チャック100の各チャック領域Rに対応する部分に開口部400aがそれぞれ設けられた一体型のトレイ400が静電チャック100の凹面部Cに配置されている。
【0018】
トレイ400の開口部400aの側壁において厚み方向の下部には内側に突き出るリング状の突出部420が設けられている。静電チャック100の周縁部には、トレイ400を上下に移動させるための複数のリフトピン500がリング状に配置されている。
【0019】
さらに、静電チャック100は、下側に、冷却水路が設けられたベースプレート(不図示)を備えており、冷却水路に冷却水を流すことにより、各チャック領域Rが冷却される。
そして、静電チャック100の電極300に電圧を印加すると静電引力によってウェハ200が静電チャック100に吸着する。
【0020】
例えば、静電チャック100がドライエッチング装置に装着される場合は、チャンバ内にプラズマが生成されて静電チャック100に載置された複数のウェハ200が冷却された状態で同時にエッチングされる。
【0021】
図2に示すように、エッチングが終了すると、リフトピン500が上側に移動することでトレイ400が上側に移動し、各ウェハ200の周縁部がトレイ400の突出部420上に乗って上側に持ち上げられる。さらに、アーム(不図示)によって、ウェハ200が搭載されたトレイ400がチャンバから外部に搬送される。
【0022】
図1の状態でウェハ200がエッチングされる際に、トレイ400もプラズマに晒されることになる。このとき、トレイ400の下には静電チャック100の電極300が存在しないため、トレイ400は静電チャック100の上に単に置かれた状態となっている。
【0023】
従って、トレイ400の冷却が十分に行われないため、トレイ400がプラズマから熱を吸収して高温になってしまう。高温になったトレイ400の影響により、ウェハ200の周縁側の温度が高くなり、各ウェハ200内の温度の均一性が悪くなる。
【0024】
これにより、ウェハ200内でエッチングレートやレジスト又は下地との選択比のばらつきが生じやすくなり、ウェハ200内のエッチング処理の歩留りが低下する要因になってしまう。
【0025】
また、トレイ400が100℃以上の高温になると、トレイ400を搬送するアームにトレイ400から熱伝導し、アームが熱膨張することに起因して搬送トラブルを引き起こすことがある。
【0026】
このため、エッチング処理が完了した後に、トレイ400が冷却するまで待つ必要があるため、エッチング処理のスループット(単位時間あたりのウェハ処理能力)の低下につながり、生産効率が悪化する。
【0027】
以下に説明する実施形態の静電チャックは前述した不具合を解消することができる。
【0028】
(第1の実施の形態)
図3は第1実施形態の静電チャックを示す断面図、図4は第1実施形態の静電チャックを示す平面図である。
【0029】
図3に示すように、第1実施形態の静電チャック1は、ベースプレート20と、ベースプレート20の上にシリコーン樹脂などの接着剤26で接着されたチャック機能部10とを備えている。
【0030】
ベースプレート20は、例えばアルミニウムなどの金属から形成され、内部に冷却機構として冷却水路22が設けられている。チャック機能部10は、例えばアルミナなどのセラミックスから形成され、表面にウェハ(被吸着物)が載置される複数のチャック領域Rを備えている。
【0031】
各チャック領域Rにおいて、表面に、伝熱用ガスを供給するためのガス孔30とそれに連通して水平方向に延在する凹部32とが設けられ、凹部32の中に多数の凸部34が島状に配置されている。静電チャック1の各チャック領域Rの表面の多数の凸部34上にウェハ2が接触して載置される。
【0032】
このように、静電チャック1の各チャック領域Rの表面は、ガス孔30に連通する凹部32と多数の凸部34とが設けられてエンボス形状(凹凸形状)になっている。これにより、伝熱用ガスがガス孔30及び凹部32を通ってウェハ2の裏面全体に均一に供給されるようになっている。
【0033】
静電チャック1の各チャック領域Rの内部には、電圧を印加してウェハ2を吸着するための電極40がそれぞれ設けられている。電極40は、好適には、タングステン(W)などの高融点金属から形成される。
【0034】
また、静電チャック1のチャック機能部10は、各チャック領域Rの外側領域に設けられた凹面部Cを備えている。凹面部Cは、チャック領域Rを除いてそれらの間の領域から周縁領域までつながって形成されている。凹面部Cの底面は、チャック機能部10の上面より低い位置に配置されている。
【0035】
そして、静電チャック1の各チャック領域Rに対応する部分に開口部50aがそれぞれ設けられた一体型のトレイ50が静電チャック1の凹面部Cに配置されている。トレイ50の開口部50aの各側壁において、厚み方向の下部には内側に突き出るリング状の突出部52がそれぞれ設けられている。
【0036】
トレイ50は、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコン窒化物(SiN)、シリコン炭化物(SiC)、又はアルミニウム(Al)などの金属などから形成される。
【0037】
静電チャック1の周縁部にはトレイ50を上下に移動させるための複数のリフトピン54がリング状に配置されている。
【0038】
また、静電チャック1の外周部には、プラズマを静電チャック1内に封じ込めるための石英からなるフォーカスリング56が設けられている。
【0039】
そして、静電チャック1のベースプレート20の冷却水路22に冷却水などの冷媒を流すことにより、各チャック領域Rが冷却される。
【0040】
さらに、本実施形態の静電チャック1では、ウェハ2ばかりではなくトレイ50を十分に冷却できるように、トレイ50が配置された凹面部Cの下のチャック機能部10の内部に、電圧を印加してトレイ50を吸着するための電極40aが設けられている。
【0041】
電極40,40aは、1つの電極からなる単極方式であってもよいし、渦巻型やくし歯型などの双電極方式を採用し、双電極にプラス(+)及びマイナス(−)の電圧をそれぞれ印加するようにしてもよい。
【0042】
図3の例では、各チャック領域Rのウェハ2用の一方の電極40にプラス(+)の電圧が印加され、ウェハ2用の他方の電極40にマイナス(−)の電圧が印加される。また、トレイ50用の電極40aには、プラス(+)の電圧が印加される。
【0043】
このようにして、静電チャック1の電極40,40aに所定の電圧を印加すると静電引力によってウェハ2が静電チャック1に吸着する。また同時に、トレイ50が静電チャック1に吸着する。
【0044】
図4には、本実施形態の静電チャックを平面からみた様子が示されている。図4の例では、静電チャック1にはチャック領域Rが7つ設けられており、各チャック領域Rの上にウェハ2が載置されている。そして、複数のチャック領域Rを除く斜線ハッチング部にトレイ50が配置されている。
【0045】
トレイ50が配置された領域がチャック機能部10の凹面部Cとなっている。斜線ハッチング部の下の領域にトレイ50用の電極40a(図3)が設けられている。また、静電チャック1の周縁部に4つのリフトピン54が配置されており、静電チャック1の外周部にフォーカスリング56が備えられている。
【0046】
静電チャック1がドライエッチング装置に装着される場合は、チャンバ内にプラズマが生成されて静電チャック1に載置された複数のウェハ2が冷却された状態で同時にエッチングされる。
【0047】
図5に示すように、エッチングが終了すると、リフトピン54が上側に移動することでトレイ50が上側に移動し、各ウェハ2の周縁部がトレイ50の突出部52上に乗って上側に持ち上げられる。さらに、アーム(不図示)によって、ウェハ2が搭載されたトレイ50がチャンバから外部に搬送される。
【0048】
前述した図3の状態でウェハ2がエッチングされる際に、トレイ50もプラズマに晒されるが、トレイ50の下の静電チャック1には、トレイ50用の電極40aが存在するため、トレイ50は静電チャック1に十分に吸着した状態となる。
【0049】
従って、ウェハ2と同様に、プラズマからトレイ50にかかる熱は静電チャック1から外部に放熱されて十分に冷却される。これにより、エッチング処理中にウェハ2の周縁部の温度が高くなることが回避され、各ウェハ2内において温度の均一性が確保される。
【0050】
その結果、各ウェハ2内でエッチングレートやレジスト又は下地との選択比のばらつきが抑えられ、ウェハ2内のエッチング処理の歩留りを向上させることができる。
【0051】
また、トレイ50が静電チャック1で十分に冷却されるため、トレイ50の温度はエッチング処理の直後においても100℃以下に抑えられる。このため、トレイ50が冷却するまで待つ必要がなく、エッチング処理が完了した後に直ちにアームでトレイ50を搬送することができる。
【0052】
これにより、エッチング処理のスループット(単位時間あたりのウェハ処理能力)を向上させることができ、生産効率の向上に寄与することができる。
【0053】
しかも、アームが熱膨張するおそれもなくなるので、信頼性よくアームでトレイ50を搬送することができる。
【0054】
なお、前述した静電チャック1は、ベースプレート20内に冷却水路22が設けられて、静電チャック1自体が冷却機構を備えているが、静電チャックは必ずしも冷却機構を備えていなくてもよい。
【0055】
静電チャックが冷却機構を備えていない場合は、静電チャックが取り付けられる各種製造装置の支持台に冷却機構が設けられおり、その支持台の上に静電チャックが取り付けられて冷却される。以下に説明する第2、第3実施形態においても同様である。
【0056】
(第2の実施の形態)
図6は第2実施形態の静電チャックを示す断面図である。
【0057】
前述した第1実施形態の図3の静電チャック1では、トレイ50と静電チャック1との間に伝熱用ガスを供給しない構造になっている。第2実施形態の特徴は、トレイと静電チャックとの間にも伝熱用ガスを供給して冷却効率を向上させることにある。図6では、第1実施形態と同一要素については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、第2実施形態の静電チャック1aでは、トレイ50が配置される凹面部Cの表面にも、伝熱用ガスを供給するためのガス孔30aとそれに連通する凹部32aとが設けられている。凹面部Cのガス孔30aはチャック領域Rのガス孔30につながる分岐ラインとして設けられる。
【0059】
ガス孔30,30aを含むガス経路Lからガス孔30,30aに連通する凹部32,32aにヘリウムガスなどの伝熱用ガスを供給することにより、ウェハ2及びトレイ50の各背面に伝熱用ガスをそれぞれ同時に流すことができる。
【0060】
これにより、ウェハ2と同様に、プラズマから吸収するトレイ50の熱を静電チャック1a側に伝熱用ガスを介して効率よく逃がして冷却することができる。従って、微細加工を達成するために高密度プラズマを使用する場合であっても、トレイ50を十分に冷却することができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
図7は第3実施形態の静電チャックを示す断面図である。図7では、第1実施形態と同一要素については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0062】
図7に示す静電チャック1bのように、ウェハ2に伝熱用ガスを供給するガス孔30を含むガス経路L1と、トレイ50に伝熱用ガスを供給するガス孔30aを含むガス経路L2とを分離し、別の独立したラインとしてもよい。
【0063】
このようにすることにより、ウェハ2とトレイ50との間で伝熱用ガスの流量やガス圧力を独立して調整することができるので、ウェハ40とトレイ50との間で冷却効率を変えることができる。例えば、エッチング特性や搬送の安定化などの都合で、ウェハ2よりトレイ50を積極的に冷却する必要がある場合などに容易に対応することができる。
【0064】
(第4の実施の形態)
前述した第1〜第3実施形態では、ウェハを冷却するタイプの静電チャックについて説明しており、その場合は伝熱用ガスが冷却用ガスとして機能する。図8に示すように、ベースプレート20の内部に、冷却水路22の代わりに加熱機構としてヒータ電極24を設けることにより、ウェハを加熱するタイプの静電チャック1cとしてもよい。
【0065】
この場合は、伝熱用ガスが加熱用ガスとして機能する。電源(不図示)から電圧をヒータ電極24に印加することにより、ヒータ電極24から熱が発生し、ウェハ2やトレイ50が所定の温度に加熱される。ウェハを加熱するタイプの静電チャック1cは、スパッタ装置やプラズマCVD装置などの半導体・液晶製造装置に適用される。
【0066】
図8において、ベースプレート20の内部に冷却水路22の代わりにヒータ電極24を設けること以外は、第1実施形態の図3の静電チャック1と同一である。
【0067】
ウェハを加熱するタイプの静電チャック1cとする場合は、ウェハ2と同様にトレイ50も静電チャック1cに吸着するため、ウェハ2とその周辺のトレイ50とが同一の温度に加熱される。従って、ウェハ2を加熱する場合であってもウェハ2内の温度の均一性を向上させることができ、各種のプロセス処理の信頼性を向上させることができる。
【0068】
なお、静電チャック1cにヒータ電極24が設けられておらず、静電チャック1cが取り付けられる各種製造装置の支持台に加熱機構が設けられて静電チャックが加熱されるようにしてもよい。
【0069】
また、ウェハを100℃以上に加熱する高温型の静電チャックとする場合は、搬送トラブルを回避するために、トレイ50を搬送するアームとして加熱温度に対して十分な耐熱性を有する特別なアームを使用することが好ましい。
【0070】
(半導体・液晶製造装置)
次に、実施形態の静電チャックを備えた半導体・液晶製造装置について説明する。本実施形態の静電チャック1,1a,1b,1cは、半導体装置や液晶表示装置の製造プロセスで使用される各種の半導体・液晶製造装置に適用することができる。
【0071】
以下の説明では、第1実施形態の冷却される静電チャック1を備えたドライエッチング装置を例に挙げて説明する。
【0072】
図9は実施形態のドライエッチング装置を示す断面図である。図9に示すように、ドライエッチング装置5として平行平板型RIE装置が例示されている。ドライエッチング装置5はチャンバ60を備え、チャンバ60の下側に下部電極70が配置されている。
【0073】
下部電極70の表面側には前述した第1実施形態の静電チャック1が取り付けられており、静電チャック1には複数のウェハ2(被吸着物)が載置される。
【0074】
下部電極70及び静電チャック1にはRF電力を印加するための高周波電源74が接続されている。高周波電源74にはRF電力の出力のマッチングをとるためのRFマッチャ(不図示)が接続されている。
【0075】
チャンバ60の上側には下部電極70の対向電極となる上部電極80が配置されており、上部電極80は接地されている。上部電極80にはガス導入管82が連結されており、所定のエッチングガスがチャンバ60内に導入される。
【0076】
チャンバ60の下部には排気管76が接続され、排気管76の末端には真空ポンプが取り付けられている。これにより、エッチングにより生成した反応生成物などが排気管76を通して外部(排ガス処理装置)に排気されるようになっている。
【0077】
チャンバ60の近傍の排気管76にはAPCバルブ78(自動圧力コントロールバルブ)が設けられており、チャンバ60内が設定圧力になるようにAPCバルブ78の開度が自動調整される。
【0078】
本実施形態のドライエッチング装置5では、ガス導入管82から所定のエッチングガスがチャンバ60に導入され、チャンバ60内がAPCバルブ78の機能によって所定の圧力に設定される。そして、高周波電源74から静電チャック1(下部電極70)にRF電力が印加されることにより、チャンバ60内にプラズマが生成される。
【0079】
静電チャック1にRF電力を印加することにより静電チャック1側に負のセルフバイアスが形成され、その結果プラズマ中の正イオンが静電チャック1側に加速される。これに基づいて、ウェハ2に形成された被エッチング層が異方性エッチングされる。
【0080】
ウェハ2としては、LEDを製造する場合は、サファイヤ基板、シリコン炭化物(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板などが使用される。そして、ウェハ2上に形成された各種の薄膜がレジストをマスクにしてエッチングされる。プロセスガスとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスが使用される。
【0081】
前述したように、本実施形態の静電チャック1(図3など)では、トレイ50の下の静電チャック1に電極40aが設けられており、トレイ50を静電チャック1に吸着させることができる。これにより、ウェハ2と同様にトレイ50も十分に冷却される。
【0082】
従って、トレイ50の温度上昇によってウェハ2内で温度がばらついたり、トレイ50を搬送するアームが熱膨張して搬送トラブルが発生することが回避される。
【0083】
このため、ウェハ2内で被エッチング層のエッチングレート、レジスト及び下地層との選択比などの変動が抑制される。これにより、ウェハ2内においてエッチング後のパターンの幅などのばらつきが抑えられ、ウェハ2内のエッチング処理の歩留りを向上させることができる。
【0084】
また、微細加工を達成するために高密度プラズマを使用する場合であっても、トレイ50の温度上昇を抑止できるので、安定したエッチング特性を得ることができる。
【0085】
図9では、本実施形態の静電チャック1を平行平板型のドライエッチング装置に適用する形態を例示したが、誘導結合型(ICP)などのドライエッチング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,1a,1b,1c…静電チャック、2…ウェハ、5…ドライエッチング装置、10…チャック機能部、20…ベースプレート、22…冷却水路、24…ヒータ電極、26…接着剤、30,30a…ガス孔、32,32a…凹部、34…凸部、40,40a…電極、50…トレイ、50a…開口部、52…突出部、54…リフトピン、56…フォーカスリング、60…チャンバ、70…下部電極、74…高周波電源、76…排気管、78…APCバルブ、80…上部電極、82…ガス導入管、C…凹面部、L,L1,L2…ガス経路、R…チャック領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される複数のチャック領域と、前記チャック領域の外側領域に設けられた凹面部とを備えたチャック機能部と、
前記チャック領域に対応する前記チャック機能部の内部と、凹面部に対応する前記チャック機能部の内部とにそれぞれ配置された電極とを有することを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記チャック機能部の下に配置されて、冷却機構を備えたベースプレートをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記チャック領域及び前記凹面部の各表面に、伝熱用ガスが供給されるガス孔とそれに連通する凹部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記チャック領域の表面に設けられたガス孔を含むガス経路と、前記凹面部の表面に設けられたガス孔を含むガス経路とは、独立した別の経路になっていることを特徴とする請求項3に記載の静電チャック。
【請求項5】
チャンバと、
前記チャンバに取り付けられた静電チャックと、
被吸着物を搬送するためのトレイとを有し、
前記静電チャックは、
前記被吸着物が載置される複数のチャック領域と、前記チャック領域の外側領域に設けられた凹面部とを備えたチャック機能部と、
前記チャック領域に対応する前記チャック機能部の内部と、凹面部に対応する前記チャック機能部の内部とにそれぞれ配置された電極とを有し、
前記トレイは、
前記チャック領域に対応する部分に開口部を備え、前記静電チャックの凹面部に配置されていることを特徴とする半導体・液晶製造装置。
【請求項6】
前記静電チャックは、前記チャック機能部の下に配置されて、冷却機構を備えたベースプレートをさらに有し、
前記半導体・液晶製造装置は、ドライエッチング装置であることを特徴とする請求項5に記載の半導体・液晶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45989(P2013−45989A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184285(P2011−184285)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】