静電容量センサの電極構造及びそれを用いた車両用近接センサ
【課題】人体が近接又は接触する電極部から周囲へ放射される高周波ノイズを低減させることができる静電容量センサの電極構造、及びそれを用いた車両用近接センサを提供する。
【解決手段】本静電容量センサの電極構造は、人体が近接又は接触する導電体であり、未知の静電容量Cxを充電する充電信号が繰返し供給される検出電極3と、検出電極3に近接して配設される導電体である反転電極4と、充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を反転電極4に供給する位相反転回路6と、を備え、検出電極から放射される高周波ノイズ(イ)を反転電極によって低減する。長尺板状又は棒状の検出電極3と、検出電極と略同一の長さの反転電極4を平行に配設することができ、位相反転回路6はインバータ回路によって構成することができる。
【解決手段】本静電容量センサの電極構造は、人体が近接又は接触する導電体であり、未知の静電容量Cxを充電する充電信号が繰返し供給される検出電極3と、検出電極3に近接して配設される導電体である反転電極4と、充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を反転電極4に供給する位相反転回路6と、を備え、検出電極から放射される高周波ノイズ(イ)を反転電極によって低減する。長尺板状又は棒状の検出電極3と、検出電極と略同一の長さの反転電極4を平行に配設することができ、位相反転回路6はインバータ回路によって構成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の近接又は接触を検出する静電容量センサの電極構造、及びそれを用いた車両用近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体が近接又は接触する検出電極を備え、人体による浮遊容量又は接地(大地)との間の静電容量の変化を計測することにより人体の近接又は接触を検知する静電容量センサが用いられている。このような静電容量センサにおいては、検出電極に生じる静電容量を充放電させて電圧や電荷量を計測したり、検出回路のインピーダンスの変化等を利用することによって静電容量の変化が検出されている。しかし、人体の近接又は接触によって生じる静電容量の変化は微小な値であり、一度の充電又は放電によって精度よく静電容量を計測することは困難であるため、充放電を繰返すことによって計測精度を向上させるのが一般的である。
例えば、スイッチドキャパシタ方式により検出電極に所定周波数の所定電圧を所定の周期で印加して、微小な静電容量によって生じる電圧値を積分して測定する微小静電容量の測定方法が開示されている(特許文献1を参照)。また、既知のコンデンサとスイッチ手段を備え、人体等によって生じる未知のコンデンサを繰返し充放電させ、電荷を既知のコンデンサに集積させることによって精度よく計測する電荷移動式キャパシタンス測定回路が知られている(特許文献2を参照)。
【0003】
前記電荷移動式キャパシタンス測定回路は、図12に示すように構成される。この回路部82は既知の静電容量C81、スイッチ手段SW81、SW82等を備え、検出電極83に生じる未知の静電容量C8xが計測される。通常、静電容量C8xは静電容量C81に較べて大幅に容量が小さい。
最初に、静電容量C8x及び静電容量C81が放電(図示省略)される。そしてSW81を閉(オン)、SW82を開(オフ)にすると、静電容量が充電され、静電容量C8x及びC81には各容量値に反比例して充電電圧V8x及びV81が生じる(ステップ1)。次に、SW81をオフ、SW82をオンにすると、静電容量C81の電荷は保持される(ステップ2)。その後、再び前記ステップ1の状態とすると、静電容量が充電されるとともに静電容量C8xと静電容量C81との間で電荷が移動し、静電容量C81の充電電圧V81が増加する。次いで前記ステップ2の状態にすると、静電容量C81の電荷は保持される。さらにステップ1とステップ2を繰返して実行すれば、静電容量C81に電荷が蓄積されることにより、繰返しとともに充電電圧V81は漸増する。図13(a)及び(b)は、図12における検出電極83及び8A点の電位の変化を示すものである。前記ステップ2の状態の8A点の電位が一定の値に達するまでに要する繰返し回数は静電容量C8xの大きさによるため、その繰返し回数により未知の静電容量C8xを求めることができる。
【0004】
また、静電容量の検出精度を向上させるため、センサの電極の構成を工夫したものが知られている。例えば、1対の差動電極に位相の反転した充放電を繰返し行い、差動電極の見かけの浮遊容量の和を求めることによってノイズの影響を除去する近接検出装置が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−194025号公報
【特許文献2】特表2002−530680号公報
【特許文献3】特開2008−292446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のスイッチドキャパシタ方式等の静電容量センサでは、人体等が近接又は接触する検出電極に繰返し充放電を行い、その充放電特性を累積して静電容量を計測するため、検出電極から周囲環境に充放電による高周波ノイズが放射される。例えば、検出電極の充放電の繰返し時間が約7μsであれば、ほぼ140kHzを中心とする周波数領域だけでなく広い周波数範囲で高周波ノイズが放射される。このため、静電容量センサが周囲の電子機器の動作に影響を及ぼす電磁妨害(EMI、Electro Magnetic Interference)が問題であった。一般には、装置から外部に放出される高周波ノイズを低減するために、当該装置を金属等のケースによって密閉するような方法がある。しかし、静電容量センサの場合、人体が近接又は接近する検出電極は外部に開放される必要があるため、電極部を電磁的にシールドする対策は不可能である。
【0007】
また、静電容量センサにおいては、外部からのノイズの影響によって検出精度が低下する問題があるため、電極の構造や構成法が種々工夫されている。例えば、前記の差動電極を備えた近接検出装置では、差動電極に位相の反転した充放電を繰返し行い、差動電極の浮遊容量の合成値を求めることにより、ノイズの影響を除去して高精度の検出が可能とされている。しかしながら、従来例では、静電容量センサの電極部から放射される高周波ノイズにより周囲の電子装置の動作が阻害されるEMIについては考慮されてこなかった。
とくに、自動車で用いられる静電容量センサの場合、EMIの対策は重要な課題となっている。静電容量センサの電極部から広い周波数範囲でノイズが放射されると、例えばスマートエントリーシステム等車載装置の動作やラジオ放送の受信を阻害する等の問題がある。
【0008】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、人体が近接又は接触する電極部から周囲へ放射される高周波ノイズを低減させることができる静電容量センサの電極構造、及びそれを用いた車両用近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.人体の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサの電極構造であって、人体が近接又は接触する導電体であり、前記静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極と、前記検出電極に近接して配設される導電体である反転電極と、前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を前記反転電極に供給する位相反転回路と、を備え、前記検出電極から放射される高周波ノイズを前記反転電極によって低減することを特徴とする静電容量センサの電極構造。
2.前記充電信号はパルス信号であり、前記位相反転回路は、前記パルス信号の立上り時に立下り且つ前記パルス信号の立下り時に立上がる前記反転信号を生成する前記1.記載の静電容量センサの電極構造。
3.前記位相反転回路は前記充電信号が入力されるインバータ回路である前記2.記載の静電容量センサの電極構造。
4.前記検出電極は長尺状の板状又は棒状の導電体であり、前記検出電極と略同一の長さの前記反転電極が該検出電極と略同一平面に平行に配設される前記1.乃至3.のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
5.前記検出電極は略長方形の平板の導電体であり、前記反転電極は、前記検出電極と略同一平面に該検出電極の外周を所定の間隙を空けて囲んで配設される前記1.乃至3.のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
6.車両に搭載される近接センサであって、前記1.乃至5.のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造を備えることを特徴とする車両用近接センサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の静電容量センサの電極構造によれば、人体が近接又は接触する導電体であり、静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極と、前記検出電極に近接して配設される導電体である反転電極と、前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を前記反転電極に供給する位相反転回路と、を備えるため、検出電極と反転電極とで構成される電極部から放射される高周波ノイズを低減することができ、周辺の電子装置に与える電磁妨害(EMI)を防止することができる。また、電極の構造及び構成が簡単であり、検出電極に繰返し充放電を行うことにより静電容量を計測する静電容量センサに広く適用することができる。
また、前記充電信号はパルス信号であり、前記位相反転回路は、前記パルス信号の立上り時に立下り且つ前記パルス信号の立下り時に立上がる前記反転信号を生成する場合は、充電信号の立上り時及び立下り時に放射される高周波ノイズを効果的に低減することができる。
さらに、前記位相反転回路は前記充電信号が入力されるインバータ回路である場合は、少ない部品と簡単な回路により、一定のレベルを超える充電信号の立上り時及び立下り時に放射される高周波ノイズを効果的に低減することができる。
【0011】
前記検出電極は長尺状の板状又は棒状の導電体であり、前記検出電極と略同一の長さの前記反転電極が該検出電極と略同一平面に平行に配設される場合には、検出電極の長さに対応した領域で人体の近接又は接触を検出することができるとともに、長尺状の電極がアンテナとなって放射される高周波ノイズを低減することができる。
また、前記検出電極は略長方形の平板の導電体であり、前記反転電極は、前記検出電極と略同一平面に該検出電極の外周を所定の間隙を空けて囲んで配設される場合は、広い検出電極の面積に対応した領域で人体の近接又は接触を検出することができるとともに、その検出電極がアンテナとなって放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0012】
前記のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造を備える車両用近接センサによれば、その電極部から放射される高周波ノイズのレベルが低い近接センサを各種車載装置のスイッチ等として用いることができ、周囲の車載電子装置に対する電磁妨害を大幅に低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本発明の静電容量センサの電極構造の構成を示すブロック図である。
【図2】本静電容量センサの検出電極及び反転電極の接続例を説明する図である。
【図3】長尺状の検出電極及び反転電極の形状及び配置を説明する模式図である。
【図4】長方形の平板状の検出電極と、その外周を囲む反転電極の形状及び配置を説明する模式図である。
【図5】本静電容量センサの電極構造に適用する充放電手段及び位相反転回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本静電容量センサの電極構造に適用する充放電手段及び位相反転回路の別の構成例を示す回路図である。
【図7】図5に示す回路によって検出電極及び反転電極に供給される信号例を説明するためのタイムチャートである。
【図8】図5に示す回路によって検出電極及び反転電極に供給される別の信号例を説明するためのタイムチャートである。
【図9】図6に示す回路によって検出電極及び反転電極に供給される信号例を説明するためのタイムチャートである。
【図10】本発明の静電容量センサの電極構造から放射される高周波ノイズのレベルを、従来例と比較して実測した結果を示すグラフである。
【図11】本発明の静電容量センサの電極構造を用いた車両用近接センサの構成例を示す図である。
【図12】従来例の静電容量センサの構成を説明するための回路図である。
【図13】図12の静電容量センサにおいて検出電極に供給される充電信号の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
1.静電容量センサの電極構造
静電容量センサは、一般に、人体等によって生じる静電容量の変化を検出するための検出電極と、その静電容量の変化を計測する近接検出部から構成される。近接検出部は、充放電手段、容量検出手段及び近接判定手段等を備える。
本発明は、図1に示すように、人体の近接又は接触を静電容量Cxの変化により検出する静電容量センサの電極構造であって、前記静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極3と、その検出電極3に近接して配設される導電体である反転電極4と、前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を反転電極に供給する位相反転回路6と、を備えることを特徴とする。近接検出部2を構成する充放電手段5、容量検出手段22及び近接判定手段24は、公知の技術を用いて構成することができる。
【0016】
前記検出電極3は、その表面に人体が近接又は接触するように配設される導電体であり、その形状、大きさ、構造等は特に問わない。また、導電体の材質もとくに限定されず、金属の他、導電布等が使用されてもよい。検出電極3への人体の「近接」とは、掌や手指を検出電極の表面に近付ける形態の他、検出電極の表面を覆う絶縁物を介して人体が接触する形態も含むものとする。また「接触」は、検出電極の表面に直接人体が接触する形態をいうものとする。
【0017】
前記反転電極4は、検出電極3によって生じる高周波電界を打ち消すように作用し、検出電極3及び反転電極4を備えた電極部32から周囲へ放射される高周波ノイズを低減させる目的で設けられる。反転電極4は、前記検出電極3の近傍に配設される導電体であり、その形状、大きさ、構造及び材質は、検出電極3の形状、大きさ、構造及び材質に対応し又は近似していることが好ましい。
また、検出電極3が複数備えられる場合には、反転電極4はそれぞれの検出電極3に対応して複数設けられてもよい。
【0018】
前記充放電手段5は、検出電極3と電気的に接続され、静電容量Cxを繰返し充放電させるための充電電圧(充電信号)を検出電極3に印加するように構成される。充放電手段5の構成は特に限定されず、公知の技術を用いることができる。また、充電信号の振幅、周波数も特に限定されない。例えば、基準電位(0V)と電源電圧(Vcc)との範囲内で変化し、周波数が数kHz〜数百kHzのパルス状の信号が挙げられる。
【0019】
位相反転回路6は、反転電極4と電気的に接続され、充放電手段5によって検出電極3に印加される前記充電信号とは逆位相の反転信号を反転電極4に印加するように構成される。ここで、逆位相とは、充電信号の電圧の変化とは逆向きに電圧が変化することをいうものとする。すなわち、反転信号は、充電信号の電圧値が上昇(+ΔV)するときに電圧値が下降(−ΔV’)する信号とすることができる。例えば、充電信号が0Vから+ΔVに変化するとき、反転信号は+ΔV’から0Vに変化する信号であってもよいし、5Vから5V−ΔV’に変化する信号であってもよく、また、0Vから−ΔV’に変化する信号であってもよい。このときの反転信号の電圧の変化幅ΔV’は、充電信号の電圧の変化幅ΔVと同一である必要はなく、電極部32から放射される高周波ノイズ(イ)の低減効果により適宜に設計することができる。
前記充電信号がパルス信号である場合には、位相反転回路6は、そのパルス信号の立上り時に立下り、且つそのパルス信号の立下り時に立上がる反転信号を生成するように構成することができる。
【0020】
近接検出部2は、この他、容量検出手段22及び近接判定手段24を備えて構成することができる。容量検出手段22の構成はとくに限定されず、例えば、静電容量の端子間電圧の計測回路や、静電容量の変化を周波数変化に変換する回路等を用いて、検出電極3の静電容量の変化を検出することができる。また、近接判定手段24の構成もとくに限定されず、容量検出手段22によって得られた計測値を基に演算、比較等の処理を行って、人体の近接又は接触を判定するように構成することができる。
【0021】
近接検出部2を構成する各部及び全体の制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適には、図示しないCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、周辺回路を備えることにより構成することができる。デジタル信号プロセッサ、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路が用いられて構成されてもよい。
また、近接検出部2は、各種機器・装置(例えば、発光器、表示パネル、空調等)と接続し、人体の近接又は接触状態と判定した場合には、その判定又は判定による動作をさせるための近接検出信号を出力するように構成することができる。
【0022】
図2に、検出電極3、反転電極4、位相反転回路6、及び充放電手段を構成する充放電回路51の接続例を示す。位相反転回路6は、充放電回路51内の信号又は検出電極3に印加される充電信号を基に逆位相の反転信号を生成し、反転電極4に供給する。なお、図示するように、検出電極3及び反転電極4の他に、ノイズ等による影響を低減するために接地電位とされた接地電極31が配設されてもよい。
【0023】
本静電容量センサの電極構造1は、検出電極3が長尺状の導電体である場合に好適に用いることができる。例えば、図3に示すように、長尺平板状の検出電極3aと、ほぼ同寸法で同材質の反転電極4aを備える電極構造とすることができる。反転電極4aの長さL4a及び幅W4aは、検出電極3aの長さL3a及び幅W3aと略同一であり、両電極は略同一平面に間隙gaを空けて平行に配置される。各電極の大きさは用途によって定められればよいが、例えば、各電極の長さ(L4a、L3a)は20〜500mm、幅(W4a、W3a)は2〜50mm程度とすることができ、両電極の間隙(ga)は10〜100mm程度とすることが好ましい。
この反転電極4aを配することにより、図示するZ方向を中心として、電極部から放射される高周波ノイズを低減することが可能となる。
【0024】
また、検出電極3の面積が広い場合には、検出電極3と略同一平面であって検出電極3の外周を所定の間隙を空けて囲むように反転電極4を配設することができる。例えば、図4に示すように、長方形で平板状の検出電極3bの外周を、検出電極3bと同材質の反転電極4bによって囲むように配置した電極構造とすることができる。反転電極4bは、検出電極3bの外周に間隙gbを空けて配置される。各電極の大きさは用途及び効果によって定められればよいが、例えば、検出電極3bの長さと幅(L3b、W3b)はそれぞれ20〜500mm程度、反転電極4bの幅(W4b)は5〜50mm程度とすることができ、両電極の間隙(gb)は5〜20mm程度とすることが好ましい。
【0025】
次に、本静電容量センサの電極構造1の具体的な回路構成例を参照しつつ、その動作について説明する。
図5は、充放電手段5及び位相反転回路6の構成例を示す。本発明は、検出電極3と反転電極4及び位相反転回路6を備える点を特徴とするものであるため、充放電手段や容量検出手段等の構成は任意である。本図の充放電手段5aは、一般的なスイッチドキャパシタ方式の構成を例示するにすぎない。
充放電手段5aに検出電極3が接続され、位相反転回路6aの出力に反転電極4が接続される。図5において、充放電手段5aと検出電極3の接続点の信号が位相反転回路6aに入力されているが、位相反転回路6aへ入力する信号は、前記反転信号を生成することが可能な限り、充放電手段5a内の適宜の信号とすることができる(例えば、充放電手段に備えられるスイッチ手段の制御信号など)。
【0026】
充放電手段5aは、既知の静電容量C1a、スイッチ手段SW1a及びSW2aを備え、検出電極3を介して未知の静電容量Cxを繰返し充放電させる。スイッチSW1a及びSW2aは、同時にオンとされることはない。最初に、静電容量Cx及び静電容量C1aが放電される(図示省略)。そしてSW1aをオン(閉)、SW2aをオフ(開)にすると、電源Vccによって静電容量Cxが充電される(ステップ1a)。次に、SW1aをオフ、SW2aをオンにすると、静電容量の値に応じて静電容量Cxの電荷の一部が静電容量C1aに移動する(ステップ2a)。再びステップ1aの状態とすると、静電容量Cxが電源Vccによって充電されるとともに、静電容量C1aの電荷は保持される。すなわち、ステップ1aとステップ2aを繰返して実行すれば、静電容量Cxの充放電が繰り返され、静電容量C1aに電荷が蓄積されることとなる。このステップ1aとステップ2aの繰返しによって、検出電極3に印加される充電信号は、図7(a)、図8(a)に示すように変化する。
【0027】
図5の位相反転回路6aは、オペアンプ62を用いた一般的な反転増幅回路であって、オペアンプ62の反転入力端子に前記充電信号が抵抗を介して接続され、非反転入力端子には基準電圧Vrefが接続されている。オペアンプ62の出力は、反転電極4に接続されている。
ここで、基準電圧Vrefを前記Vccと同一電圧となるように与えた場合には、オペアンプ62の出力は、Vcc−(充電信号の電圧値)となり、図7(b)に示すような、充電信号とは逆位相の信号となる。すなわち、例えば充電信号が0Vのとき反転信号はVcc、充電信号がVccのとき反転信号は0Vとなる。そして、検出電極3に加わる充電信号の変化時に、逆向きに変化する反転信号が反転電極4に供給される。これによって検出電極3及び反転電極4により発生する高周波電界が打ち消しあい、電極部から放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0028】
また、位相反転回路6aにおいて、オペアンプ62に与える基準電圧Vrefを0Vとした場合には、オペアンプ62の出力は、0V−(充電信号の電圧値)となり、図8(b)に示すような、充電信号とは逆位相の反転信号が印加される。すなわち、例えば充電信号が0Vのとき反転信号は0V、充電信号がVccのとき反転信号は−Vccとなる。そして、検出電極3に加わる充電信号の変化時に、逆向きに変化する反転信号が反転電極4に供給される。これによって検出電極3及び反転電極4により発生する高周波電界が打ち消しあい、電極部から放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0029】
検出電極3に印加される充電信号がパルス信号である場合、位相反転回路6はインバータ回路を用いて構成されてもよい。例えば、図6に示すように、インバータ素子64を用いて位相反転回路6bを構成することができる。なお、図6では、前記充放電手段5aとは異なる回路構成の充放電手段5bを例示しているが、前記のとおり、充放電手段の構成はこれに限定されるものではない。
【0030】
図6の充放電手段5bは、既知の静電容量C1b、スイッチ手段SW1b及びSW2bを備え、検出電極3を介して未知の静電容量Cxを繰返し充放電させる。スイッチSW1b及びSW2bは、同時にオンとされることはない。最初に、静電容量Cx及び静電容量C1bが放電(図示省略)される。そしてSW1bをオン(閉)、SW2bをオフ(開)にすると、電源Vccによって静電容量が充電され、静電容量Cx及び静電容量C1bのそれぞれの端子間には容量に反比例した電圧Vxb及びV1bが生じる(ステップ1b)。次に、SW1bをオフ、SW2bをオンにすると、静電容量C1bの端子間電圧V1bは保持される(ステップ2b)。再びステップ1bの状態とすると、静電容量が電源Vccによって充電されるとともに、静電容量Cxと静電容量C1bとの間で電荷が移動し、静電容量C1bの端子間電圧V1bが増加する。すなわち、ステップ1bとステップ2bを繰返して実行すれば、静電容量Cxの充放電が繰り返され、静電容量C1bの電圧V1bが漸増することとなる。このステップ1bとステップ2bの繰返しによって、検出電極3に印加される充電信号は、図9(a)のように変化する。
【0031】
使用される充放電手段の構成に関わらず、充電信号がパルス状の信号である場合、充電信号をインバータ素子によって反転させた信号を反転電極4に与えることができる。図6において、充放電手段5bと検出電極3の接続点(B点)の信号が論理インバータ素子64に入力されているが、インバータ素子64へ入力する信号は、前記反転信号を生成することが可能な限り適宜の信号とすることができる(例えば、充放電手段に備えられるスイッチ手段の制御信号など)。
インバータ素子64としてCMOSインバータ素子を使用した場合、図9(a)に示されるように検出電極3に加わる充電信号が最大電圧Vccのパルス信号であれば、同図(b)に示すような反転信号を反転電極4に与えることができる。CMOSインバータ素子の場合には、充電信号が(1/2)Vccより小さいときは電圧Vccとなり、充電信号が(1/2)Vccを超えるときは0Vとなる反転信号が生成される。そして、検出電極3に加わる充電信号が大きく急峻に変化する時に、逆向きに変化する反転信号が反転電極4に供給される。これによって検出電極3及び反転電極4により発生する高周波電界が打ち消しあい、電極部から放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0032】
次に、本発明の静電容量センサの電極構造の効果を確認するため、同一の充放電手段を備える静電容量センサを使用して、位相反転回路及び反転電極を備える場合(本構成)と、位相反転回路及び反転電極を備えない場合(従来構成)との輻射ノイズについての比較試験を行った結果について述べる。
測定に用いた検出電極3及び反転電極4は、図3に示した形状の金属であり、長さ(L3a、L4a)は約300mm、幅(W3a、W4a)は約7mm、両電極間の間隙(ga)は約10mmである。また、充放電手段及び位相反転回路は図6に示した構成であり、検出電極3の充電パルス信号の周期は約7μs(周波数:約140kHz)である。
上記構成により、電極面から垂直方向(同3のZ方向)に1m離れた点における高周波信号のレベル、すなわち電極部から放射される輻射ノイズの受信レベルを測定した。
【0033】
測定された輻射ノイズの受信レベル(ピーク値)を図10に示す。横軸は周波数、縦軸は信号レベルを示している。測定は、周波数100〜160kHz及び500kHz〜1.7MHzの範囲で行った。100〜160kHzの帯域は、自動車の場合、スマートエントリーシステム等に使用されている。また、500kHz〜1.7MHzの帯域は、中波放送の周波数に対応する。
図10において、本構成による測定値は実線で、従来構成による測定値は破線で示されている。同図から、従来構成と比べて本構成による輻射ノイズは、周波数100〜160kHzにおいて約10dB低く抑えられ、500kHz〜1.7MHzにおいて15dB程度低く抑えられていることが分かる。これによって、本発明の静電容量センサの電極構造によって、電極部からの高周波ノイズの放射の低減に効果があることは明らかである。
【0034】
なお、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、前記実施例では、矩形波状の充電信号を例示したが、波形はこれに限定されるものではない。また、前記実施例では、0Vから所定の電圧値の範囲で変化するパルス信号を例示したが、これに限らず、充電信号は交流信号等であってもよい。
【0035】
2.車両用近接センサ
本車両用近接センサは、車両に搭載され、人体の近接又は接触を検知する近接センサであって、前記静電容量センサの電極構造を備えることにより、電極部から周囲に放射される高周波ノイズを低減することができる近接センサである。
図11に示すように、本車両用近接センサ7は、検出電極3及び反転電極4を備える電極部32、並びに近接検出部2を備える。各電極の構造や材質等はとくに限定されない。また、電極部32の形状、寸法等も用途によって適宜とされればよく、長尺状の電極に限らず、例えば、前記のように検出電極3を略長方形の形状とし、その検出電極3の外周を取り巻くように反転電極4を配設する(図4参照)等、様々な変形が可能である。
近接検出部2は、充放電手段5、位相反転回路6、容量検出手段22及び近接判定手段24を備える。それぞれの構成及び作用については前述のとおりである。
【0036】
本車両用近接センサ7は、外部機器・装置71と接続し、それらに人体の近接又は接触を示す近接検出信号を出力するように構成することができる。これにより人体の近接又は接触の状態と判定した場合には、その判定又はその判定による動作を使用者に知らせたり、対応する機器・装置71を制御することができる。
機器・装置71としては、自動車内の照明、加飾パネル、表示パネル、空調装置、着座判定装置など、各種車載電子機器・装置が挙げられる。例えば、長尺の検出電極3をコンソールボックスやグローブボックス内に配設することにより、乗員の掌や手指が検出電極3に近接したときにボックス内を照らすことができる。また、例えば、広い面積の検出電極3を天井部に配設することにより、検出電極3に掌や手指が近接したときにルームランプを点けることができる。
本車両用近接センサ7によれば、長尺又は大面積の検出電極3を用いた場合にも、反転電極4及び位相反転回路6を備える電極構造により放射される高周波ノイズ(イ)が低減され、自動車内の電子回路の動作に影響を及ぼす電磁妨害を防止することが可能となる。
【0037】
なお、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
例えば、前記実施例では、一つの検出用電極3を備える車両用近接センサ7を示したが、これに限定されず、複数の検出用電極及び反転電極を備える車両用近接センサを構成してもよい。
また、本車両用近接センサは、車両に搭載される近接センサであるが、用途はこれに限定されず、例えば、産業用機械や家庭用電気製品等に用いられる近接センサに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1;静電容量センサの電極構造、2;近接検出部、22容量検出手段、24;近接判定手段、3、3a、3b、83;検出電極、32;電極部、4、4a、4b;反転電極、5、5a、5b;充放電手段、6、6a、6b;位相反転回路、7;車両用近接センサ、C1a、C1b、C81;既知の静電容量、Cx;未知の静電容量、イ;高周波ノイズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の近接又は接触を検出する静電容量センサの電極構造、及びそれを用いた車両用近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体が近接又は接触する検出電極を備え、人体による浮遊容量又は接地(大地)との間の静電容量の変化を計測することにより人体の近接又は接触を検知する静電容量センサが用いられている。このような静電容量センサにおいては、検出電極に生じる静電容量を充放電させて電圧や電荷量を計測したり、検出回路のインピーダンスの変化等を利用することによって静電容量の変化が検出されている。しかし、人体の近接又は接触によって生じる静電容量の変化は微小な値であり、一度の充電又は放電によって精度よく静電容量を計測することは困難であるため、充放電を繰返すことによって計測精度を向上させるのが一般的である。
例えば、スイッチドキャパシタ方式により検出電極に所定周波数の所定電圧を所定の周期で印加して、微小な静電容量によって生じる電圧値を積分して測定する微小静電容量の測定方法が開示されている(特許文献1を参照)。また、既知のコンデンサとスイッチ手段を備え、人体等によって生じる未知のコンデンサを繰返し充放電させ、電荷を既知のコンデンサに集積させることによって精度よく計測する電荷移動式キャパシタンス測定回路が知られている(特許文献2を参照)。
【0003】
前記電荷移動式キャパシタンス測定回路は、図12に示すように構成される。この回路部82は既知の静電容量C81、スイッチ手段SW81、SW82等を備え、検出電極83に生じる未知の静電容量C8xが計測される。通常、静電容量C8xは静電容量C81に較べて大幅に容量が小さい。
最初に、静電容量C8x及び静電容量C81が放電(図示省略)される。そしてSW81を閉(オン)、SW82を開(オフ)にすると、静電容量が充電され、静電容量C8x及びC81には各容量値に反比例して充電電圧V8x及びV81が生じる(ステップ1)。次に、SW81をオフ、SW82をオンにすると、静電容量C81の電荷は保持される(ステップ2)。その後、再び前記ステップ1の状態とすると、静電容量が充電されるとともに静電容量C8xと静電容量C81との間で電荷が移動し、静電容量C81の充電電圧V81が増加する。次いで前記ステップ2の状態にすると、静電容量C81の電荷は保持される。さらにステップ1とステップ2を繰返して実行すれば、静電容量C81に電荷が蓄積されることにより、繰返しとともに充電電圧V81は漸増する。図13(a)及び(b)は、図12における検出電極83及び8A点の電位の変化を示すものである。前記ステップ2の状態の8A点の電位が一定の値に達するまでに要する繰返し回数は静電容量C8xの大きさによるため、その繰返し回数により未知の静電容量C8xを求めることができる。
【0004】
また、静電容量の検出精度を向上させるため、センサの電極の構成を工夫したものが知られている。例えば、1対の差動電極に位相の反転した充放電を繰返し行い、差動電極の見かけの浮遊容量の和を求めることによってノイズの影響を除去する近接検出装置が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−194025号公報
【特許文献2】特表2002−530680号公報
【特許文献3】特開2008−292446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のスイッチドキャパシタ方式等の静電容量センサでは、人体等が近接又は接触する検出電極に繰返し充放電を行い、その充放電特性を累積して静電容量を計測するため、検出電極から周囲環境に充放電による高周波ノイズが放射される。例えば、検出電極の充放電の繰返し時間が約7μsであれば、ほぼ140kHzを中心とする周波数領域だけでなく広い周波数範囲で高周波ノイズが放射される。このため、静電容量センサが周囲の電子機器の動作に影響を及ぼす電磁妨害(EMI、Electro Magnetic Interference)が問題であった。一般には、装置から外部に放出される高周波ノイズを低減するために、当該装置を金属等のケースによって密閉するような方法がある。しかし、静電容量センサの場合、人体が近接又は接近する検出電極は外部に開放される必要があるため、電極部を電磁的にシールドする対策は不可能である。
【0007】
また、静電容量センサにおいては、外部からのノイズの影響によって検出精度が低下する問題があるため、電極の構造や構成法が種々工夫されている。例えば、前記の差動電極を備えた近接検出装置では、差動電極に位相の反転した充放電を繰返し行い、差動電極の浮遊容量の合成値を求めることにより、ノイズの影響を除去して高精度の検出が可能とされている。しかしながら、従来例では、静電容量センサの電極部から放射される高周波ノイズにより周囲の電子装置の動作が阻害されるEMIについては考慮されてこなかった。
とくに、自動車で用いられる静電容量センサの場合、EMIの対策は重要な課題となっている。静電容量センサの電極部から広い周波数範囲でノイズが放射されると、例えばスマートエントリーシステム等車載装置の動作やラジオ放送の受信を阻害する等の問題がある。
【0008】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、人体が近接又は接触する電極部から周囲へ放射される高周波ノイズを低減させることができる静電容量センサの電極構造、及びそれを用いた車両用近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.人体の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサの電極構造であって、人体が近接又は接触する導電体であり、前記静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極と、前記検出電極に近接して配設される導電体である反転電極と、前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を前記反転電極に供給する位相反転回路と、を備え、前記検出電極から放射される高周波ノイズを前記反転電極によって低減することを特徴とする静電容量センサの電極構造。
2.前記充電信号はパルス信号であり、前記位相反転回路は、前記パルス信号の立上り時に立下り且つ前記パルス信号の立下り時に立上がる前記反転信号を生成する前記1.記載の静電容量センサの電極構造。
3.前記位相反転回路は前記充電信号が入力されるインバータ回路である前記2.記載の静電容量センサの電極構造。
4.前記検出電極は長尺状の板状又は棒状の導電体であり、前記検出電極と略同一の長さの前記反転電極が該検出電極と略同一平面に平行に配設される前記1.乃至3.のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
5.前記検出電極は略長方形の平板の導電体であり、前記反転電極は、前記検出電極と略同一平面に該検出電極の外周を所定の間隙を空けて囲んで配設される前記1.乃至3.のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
6.車両に搭載される近接センサであって、前記1.乃至5.のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造を備えることを特徴とする車両用近接センサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の静電容量センサの電極構造によれば、人体が近接又は接触する導電体であり、静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極と、前記検出電極に近接して配設される導電体である反転電極と、前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を前記反転電極に供給する位相反転回路と、を備えるため、検出電極と反転電極とで構成される電極部から放射される高周波ノイズを低減することができ、周辺の電子装置に与える電磁妨害(EMI)を防止することができる。また、電極の構造及び構成が簡単であり、検出電極に繰返し充放電を行うことにより静電容量を計測する静電容量センサに広く適用することができる。
また、前記充電信号はパルス信号であり、前記位相反転回路は、前記パルス信号の立上り時に立下り且つ前記パルス信号の立下り時に立上がる前記反転信号を生成する場合は、充電信号の立上り時及び立下り時に放射される高周波ノイズを効果的に低減することができる。
さらに、前記位相反転回路は前記充電信号が入力されるインバータ回路である場合は、少ない部品と簡単な回路により、一定のレベルを超える充電信号の立上り時及び立下り時に放射される高周波ノイズを効果的に低減することができる。
【0011】
前記検出電極は長尺状の板状又は棒状の導電体であり、前記検出電極と略同一の長さの前記反転電極が該検出電極と略同一平面に平行に配設される場合には、検出電極の長さに対応した領域で人体の近接又は接触を検出することができるとともに、長尺状の電極がアンテナとなって放射される高周波ノイズを低減することができる。
また、前記検出電極は略長方形の平板の導電体であり、前記反転電極は、前記検出電極と略同一平面に該検出電極の外周を所定の間隙を空けて囲んで配設される場合は、広い検出電極の面積に対応した領域で人体の近接又は接触を検出することができるとともに、その検出電極がアンテナとなって放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0012】
前記のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造を備える車両用近接センサによれば、その電極部から放射される高周波ノイズのレベルが低い近接センサを各種車載装置のスイッチ等として用いることができ、周囲の車載電子装置に対する電磁妨害を大幅に低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本発明の静電容量センサの電極構造の構成を示すブロック図である。
【図2】本静電容量センサの検出電極及び反転電極の接続例を説明する図である。
【図3】長尺状の検出電極及び反転電極の形状及び配置を説明する模式図である。
【図4】長方形の平板状の検出電極と、その外周を囲む反転電極の形状及び配置を説明する模式図である。
【図5】本静電容量センサの電極構造に適用する充放電手段及び位相反転回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本静電容量センサの電極構造に適用する充放電手段及び位相反転回路の別の構成例を示す回路図である。
【図7】図5に示す回路によって検出電極及び反転電極に供給される信号例を説明するためのタイムチャートである。
【図8】図5に示す回路によって検出電極及び反転電極に供給される別の信号例を説明するためのタイムチャートである。
【図9】図6に示す回路によって検出電極及び反転電極に供給される信号例を説明するためのタイムチャートである。
【図10】本発明の静電容量センサの電極構造から放射される高周波ノイズのレベルを、従来例と比較して実測した結果を示すグラフである。
【図11】本発明の静電容量センサの電極構造を用いた車両用近接センサの構成例を示す図である。
【図12】従来例の静電容量センサの構成を説明するための回路図である。
【図13】図12の静電容量センサにおいて検出電極に供給される充電信号の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
1.静電容量センサの電極構造
静電容量センサは、一般に、人体等によって生じる静電容量の変化を検出するための検出電極と、その静電容量の変化を計測する近接検出部から構成される。近接検出部は、充放電手段、容量検出手段及び近接判定手段等を備える。
本発明は、図1に示すように、人体の近接又は接触を静電容量Cxの変化により検出する静電容量センサの電極構造であって、前記静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極3と、その検出電極3に近接して配設される導電体である反転電極4と、前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を反転電極に供給する位相反転回路6と、を備えることを特徴とする。近接検出部2を構成する充放電手段5、容量検出手段22及び近接判定手段24は、公知の技術を用いて構成することができる。
【0016】
前記検出電極3は、その表面に人体が近接又は接触するように配設される導電体であり、その形状、大きさ、構造等は特に問わない。また、導電体の材質もとくに限定されず、金属の他、導電布等が使用されてもよい。検出電極3への人体の「近接」とは、掌や手指を検出電極の表面に近付ける形態の他、検出電極の表面を覆う絶縁物を介して人体が接触する形態も含むものとする。また「接触」は、検出電極の表面に直接人体が接触する形態をいうものとする。
【0017】
前記反転電極4は、検出電極3によって生じる高周波電界を打ち消すように作用し、検出電極3及び反転電極4を備えた電極部32から周囲へ放射される高周波ノイズを低減させる目的で設けられる。反転電極4は、前記検出電極3の近傍に配設される導電体であり、その形状、大きさ、構造及び材質は、検出電極3の形状、大きさ、構造及び材質に対応し又は近似していることが好ましい。
また、検出電極3が複数備えられる場合には、反転電極4はそれぞれの検出電極3に対応して複数設けられてもよい。
【0018】
前記充放電手段5は、検出電極3と電気的に接続され、静電容量Cxを繰返し充放電させるための充電電圧(充電信号)を検出電極3に印加するように構成される。充放電手段5の構成は特に限定されず、公知の技術を用いることができる。また、充電信号の振幅、周波数も特に限定されない。例えば、基準電位(0V)と電源電圧(Vcc)との範囲内で変化し、周波数が数kHz〜数百kHzのパルス状の信号が挙げられる。
【0019】
位相反転回路6は、反転電極4と電気的に接続され、充放電手段5によって検出電極3に印加される前記充電信号とは逆位相の反転信号を反転電極4に印加するように構成される。ここで、逆位相とは、充電信号の電圧の変化とは逆向きに電圧が変化することをいうものとする。すなわち、反転信号は、充電信号の電圧値が上昇(+ΔV)するときに電圧値が下降(−ΔV’)する信号とすることができる。例えば、充電信号が0Vから+ΔVに変化するとき、反転信号は+ΔV’から0Vに変化する信号であってもよいし、5Vから5V−ΔV’に変化する信号であってもよく、また、0Vから−ΔV’に変化する信号であってもよい。このときの反転信号の電圧の変化幅ΔV’は、充電信号の電圧の変化幅ΔVと同一である必要はなく、電極部32から放射される高周波ノイズ(イ)の低減効果により適宜に設計することができる。
前記充電信号がパルス信号である場合には、位相反転回路6は、そのパルス信号の立上り時に立下り、且つそのパルス信号の立下り時に立上がる反転信号を生成するように構成することができる。
【0020】
近接検出部2は、この他、容量検出手段22及び近接判定手段24を備えて構成することができる。容量検出手段22の構成はとくに限定されず、例えば、静電容量の端子間電圧の計測回路や、静電容量の変化を周波数変化に変換する回路等を用いて、検出電極3の静電容量の変化を検出することができる。また、近接判定手段24の構成もとくに限定されず、容量検出手段22によって得られた計測値を基に演算、比較等の処理を行って、人体の近接又は接触を判定するように構成することができる。
【0021】
近接検出部2を構成する各部及び全体の制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適には、図示しないCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、周辺回路を備えることにより構成することができる。デジタル信号プロセッサ、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路が用いられて構成されてもよい。
また、近接検出部2は、各種機器・装置(例えば、発光器、表示パネル、空調等)と接続し、人体の近接又は接触状態と判定した場合には、その判定又は判定による動作をさせるための近接検出信号を出力するように構成することができる。
【0022】
図2に、検出電極3、反転電極4、位相反転回路6、及び充放電手段を構成する充放電回路51の接続例を示す。位相反転回路6は、充放電回路51内の信号又は検出電極3に印加される充電信号を基に逆位相の反転信号を生成し、反転電極4に供給する。なお、図示するように、検出電極3及び反転電極4の他に、ノイズ等による影響を低減するために接地電位とされた接地電極31が配設されてもよい。
【0023】
本静電容量センサの電極構造1は、検出電極3が長尺状の導電体である場合に好適に用いることができる。例えば、図3に示すように、長尺平板状の検出電極3aと、ほぼ同寸法で同材質の反転電極4aを備える電極構造とすることができる。反転電極4aの長さL4a及び幅W4aは、検出電極3aの長さL3a及び幅W3aと略同一であり、両電極は略同一平面に間隙gaを空けて平行に配置される。各電極の大きさは用途によって定められればよいが、例えば、各電極の長さ(L4a、L3a)は20〜500mm、幅(W4a、W3a)は2〜50mm程度とすることができ、両電極の間隙(ga)は10〜100mm程度とすることが好ましい。
この反転電極4aを配することにより、図示するZ方向を中心として、電極部から放射される高周波ノイズを低減することが可能となる。
【0024】
また、検出電極3の面積が広い場合には、検出電極3と略同一平面であって検出電極3の外周を所定の間隙を空けて囲むように反転電極4を配設することができる。例えば、図4に示すように、長方形で平板状の検出電極3bの外周を、検出電極3bと同材質の反転電極4bによって囲むように配置した電極構造とすることができる。反転電極4bは、検出電極3bの外周に間隙gbを空けて配置される。各電極の大きさは用途及び効果によって定められればよいが、例えば、検出電極3bの長さと幅(L3b、W3b)はそれぞれ20〜500mm程度、反転電極4bの幅(W4b)は5〜50mm程度とすることができ、両電極の間隙(gb)は5〜20mm程度とすることが好ましい。
【0025】
次に、本静電容量センサの電極構造1の具体的な回路構成例を参照しつつ、その動作について説明する。
図5は、充放電手段5及び位相反転回路6の構成例を示す。本発明は、検出電極3と反転電極4及び位相反転回路6を備える点を特徴とするものであるため、充放電手段や容量検出手段等の構成は任意である。本図の充放電手段5aは、一般的なスイッチドキャパシタ方式の構成を例示するにすぎない。
充放電手段5aに検出電極3が接続され、位相反転回路6aの出力に反転電極4が接続される。図5において、充放電手段5aと検出電極3の接続点の信号が位相反転回路6aに入力されているが、位相反転回路6aへ入力する信号は、前記反転信号を生成することが可能な限り、充放電手段5a内の適宜の信号とすることができる(例えば、充放電手段に備えられるスイッチ手段の制御信号など)。
【0026】
充放電手段5aは、既知の静電容量C1a、スイッチ手段SW1a及びSW2aを備え、検出電極3を介して未知の静電容量Cxを繰返し充放電させる。スイッチSW1a及びSW2aは、同時にオンとされることはない。最初に、静電容量Cx及び静電容量C1aが放電される(図示省略)。そしてSW1aをオン(閉)、SW2aをオフ(開)にすると、電源Vccによって静電容量Cxが充電される(ステップ1a)。次に、SW1aをオフ、SW2aをオンにすると、静電容量の値に応じて静電容量Cxの電荷の一部が静電容量C1aに移動する(ステップ2a)。再びステップ1aの状態とすると、静電容量Cxが電源Vccによって充電されるとともに、静電容量C1aの電荷は保持される。すなわち、ステップ1aとステップ2aを繰返して実行すれば、静電容量Cxの充放電が繰り返され、静電容量C1aに電荷が蓄積されることとなる。このステップ1aとステップ2aの繰返しによって、検出電極3に印加される充電信号は、図7(a)、図8(a)に示すように変化する。
【0027】
図5の位相反転回路6aは、オペアンプ62を用いた一般的な反転増幅回路であって、オペアンプ62の反転入力端子に前記充電信号が抵抗を介して接続され、非反転入力端子には基準電圧Vrefが接続されている。オペアンプ62の出力は、反転電極4に接続されている。
ここで、基準電圧Vrefを前記Vccと同一電圧となるように与えた場合には、オペアンプ62の出力は、Vcc−(充電信号の電圧値)となり、図7(b)に示すような、充電信号とは逆位相の信号となる。すなわち、例えば充電信号が0Vのとき反転信号はVcc、充電信号がVccのとき反転信号は0Vとなる。そして、検出電極3に加わる充電信号の変化時に、逆向きに変化する反転信号が反転電極4に供給される。これによって検出電極3及び反転電極4により発生する高周波電界が打ち消しあい、電極部から放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0028】
また、位相反転回路6aにおいて、オペアンプ62に与える基準電圧Vrefを0Vとした場合には、オペアンプ62の出力は、0V−(充電信号の電圧値)となり、図8(b)に示すような、充電信号とは逆位相の反転信号が印加される。すなわち、例えば充電信号が0Vのとき反転信号は0V、充電信号がVccのとき反転信号は−Vccとなる。そして、検出電極3に加わる充電信号の変化時に、逆向きに変化する反転信号が反転電極4に供給される。これによって検出電極3及び反転電極4により発生する高周波電界が打ち消しあい、電極部から放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0029】
検出電極3に印加される充電信号がパルス信号である場合、位相反転回路6はインバータ回路を用いて構成されてもよい。例えば、図6に示すように、インバータ素子64を用いて位相反転回路6bを構成することができる。なお、図6では、前記充放電手段5aとは異なる回路構成の充放電手段5bを例示しているが、前記のとおり、充放電手段の構成はこれに限定されるものではない。
【0030】
図6の充放電手段5bは、既知の静電容量C1b、スイッチ手段SW1b及びSW2bを備え、検出電極3を介して未知の静電容量Cxを繰返し充放電させる。スイッチSW1b及びSW2bは、同時にオンとされることはない。最初に、静電容量Cx及び静電容量C1bが放電(図示省略)される。そしてSW1bをオン(閉)、SW2bをオフ(開)にすると、電源Vccによって静電容量が充電され、静電容量Cx及び静電容量C1bのそれぞれの端子間には容量に反比例した電圧Vxb及びV1bが生じる(ステップ1b)。次に、SW1bをオフ、SW2bをオンにすると、静電容量C1bの端子間電圧V1bは保持される(ステップ2b)。再びステップ1bの状態とすると、静電容量が電源Vccによって充電されるとともに、静電容量Cxと静電容量C1bとの間で電荷が移動し、静電容量C1bの端子間電圧V1bが増加する。すなわち、ステップ1bとステップ2bを繰返して実行すれば、静電容量Cxの充放電が繰り返され、静電容量C1bの電圧V1bが漸増することとなる。このステップ1bとステップ2bの繰返しによって、検出電極3に印加される充電信号は、図9(a)のように変化する。
【0031】
使用される充放電手段の構成に関わらず、充電信号がパルス状の信号である場合、充電信号をインバータ素子によって反転させた信号を反転電極4に与えることができる。図6において、充放電手段5bと検出電極3の接続点(B点)の信号が論理インバータ素子64に入力されているが、インバータ素子64へ入力する信号は、前記反転信号を生成することが可能な限り適宜の信号とすることができる(例えば、充放電手段に備えられるスイッチ手段の制御信号など)。
インバータ素子64としてCMOSインバータ素子を使用した場合、図9(a)に示されるように検出電極3に加わる充電信号が最大電圧Vccのパルス信号であれば、同図(b)に示すような反転信号を反転電極4に与えることができる。CMOSインバータ素子の場合には、充電信号が(1/2)Vccより小さいときは電圧Vccとなり、充電信号が(1/2)Vccを超えるときは0Vとなる反転信号が生成される。そして、検出電極3に加わる充電信号が大きく急峻に変化する時に、逆向きに変化する反転信号が反転電極4に供給される。これによって検出電極3及び反転電極4により発生する高周波電界が打ち消しあい、電極部から放射される高周波ノイズを低減することができる。
【0032】
次に、本発明の静電容量センサの電極構造の効果を確認するため、同一の充放電手段を備える静電容量センサを使用して、位相反転回路及び反転電極を備える場合(本構成)と、位相反転回路及び反転電極を備えない場合(従来構成)との輻射ノイズについての比較試験を行った結果について述べる。
測定に用いた検出電極3及び反転電極4は、図3に示した形状の金属であり、長さ(L3a、L4a)は約300mm、幅(W3a、W4a)は約7mm、両電極間の間隙(ga)は約10mmである。また、充放電手段及び位相反転回路は図6に示した構成であり、検出電極3の充電パルス信号の周期は約7μs(周波数:約140kHz)である。
上記構成により、電極面から垂直方向(同3のZ方向)に1m離れた点における高周波信号のレベル、すなわち電極部から放射される輻射ノイズの受信レベルを測定した。
【0033】
測定された輻射ノイズの受信レベル(ピーク値)を図10に示す。横軸は周波数、縦軸は信号レベルを示している。測定は、周波数100〜160kHz及び500kHz〜1.7MHzの範囲で行った。100〜160kHzの帯域は、自動車の場合、スマートエントリーシステム等に使用されている。また、500kHz〜1.7MHzの帯域は、中波放送の周波数に対応する。
図10において、本構成による測定値は実線で、従来構成による測定値は破線で示されている。同図から、従来構成と比べて本構成による輻射ノイズは、周波数100〜160kHzにおいて約10dB低く抑えられ、500kHz〜1.7MHzにおいて15dB程度低く抑えられていることが分かる。これによって、本発明の静電容量センサの電極構造によって、電極部からの高周波ノイズの放射の低減に効果があることは明らかである。
【0034】
なお、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、前記実施例では、矩形波状の充電信号を例示したが、波形はこれに限定されるものではない。また、前記実施例では、0Vから所定の電圧値の範囲で変化するパルス信号を例示したが、これに限らず、充電信号は交流信号等であってもよい。
【0035】
2.車両用近接センサ
本車両用近接センサは、車両に搭載され、人体の近接又は接触を検知する近接センサであって、前記静電容量センサの電極構造を備えることにより、電極部から周囲に放射される高周波ノイズを低減することができる近接センサである。
図11に示すように、本車両用近接センサ7は、検出電極3及び反転電極4を備える電極部32、並びに近接検出部2を備える。各電極の構造や材質等はとくに限定されない。また、電極部32の形状、寸法等も用途によって適宜とされればよく、長尺状の電極に限らず、例えば、前記のように検出電極3を略長方形の形状とし、その検出電極3の外周を取り巻くように反転電極4を配設する(図4参照)等、様々な変形が可能である。
近接検出部2は、充放電手段5、位相反転回路6、容量検出手段22及び近接判定手段24を備える。それぞれの構成及び作用については前述のとおりである。
【0036】
本車両用近接センサ7は、外部機器・装置71と接続し、それらに人体の近接又は接触を示す近接検出信号を出力するように構成することができる。これにより人体の近接又は接触の状態と判定した場合には、その判定又はその判定による動作を使用者に知らせたり、対応する機器・装置71を制御することができる。
機器・装置71としては、自動車内の照明、加飾パネル、表示パネル、空調装置、着座判定装置など、各種車載電子機器・装置が挙げられる。例えば、長尺の検出電極3をコンソールボックスやグローブボックス内に配設することにより、乗員の掌や手指が検出電極3に近接したときにボックス内を照らすことができる。また、例えば、広い面積の検出電極3を天井部に配設することにより、検出電極3に掌や手指が近接したときにルームランプを点けることができる。
本車両用近接センサ7によれば、長尺又は大面積の検出電極3を用いた場合にも、反転電極4及び位相反転回路6を備える電極構造により放射される高周波ノイズ(イ)が低減され、自動車内の電子回路の動作に影響を及ぼす電磁妨害を防止することが可能となる。
【0037】
なお、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
例えば、前記実施例では、一つの検出用電極3を備える車両用近接センサ7を示したが、これに限定されず、複数の検出用電極及び反転電極を備える車両用近接センサを構成してもよい。
また、本車両用近接センサは、車両に搭載される近接センサであるが、用途はこれに限定されず、例えば、産業用機械や家庭用電気製品等に用いられる近接センサに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1;静電容量センサの電極構造、2;近接検出部、22容量検出手段、24;近接判定手段、3、3a、3b、83;検出電極、32;電極部、4、4a、4b;反転電極、5、5a、5b;充放電手段、6、6a、6b;位相反転回路、7;車両用近接センサ、C1a、C1b、C81;既知の静電容量、Cx;未知の静電容量、イ;高周波ノイズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサの電極構造であって、
人体が近接又は接触する導電体であり、前記静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極と、
前記検出電極に近接して配設される導電体である反転電極と、
前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を前記反転電極に供給する位相反転回路と、
を備え、
前記検出電極から放射される高周波ノイズを前記反転電極によって低減することを特徴とする静電容量センサの電極構造。
【請求項2】
前記充電信号はパルス信号であり、
前記位相反転回路は、前記パルス信号の立上り時に立下り且つ前記パルス信号の立下り時に立上がる前記反転信号を生成する請求項1記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項3】
前記位相反転回路は前記充電信号が入力されるインバータ回路である請求項2記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項4】
前記検出電極は長尺状の板状又は棒状の導電体であり、
前記検出電極と略同一の長さの前記反転電極が該検出電極と略同一平面に平行に配設される請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項5】
前記検出電極は略長方形の平板の導電体であり、
前記反転電極は、前記検出電極と略同一平面に該検出電極の外周を所定の間隙を空けて囲んで配設される請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項6】
車両に搭載される近接センサであって、請求項1乃至5のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造を備えることを特徴とする車両用近接センサ。
【請求項1】
人体の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサの電極構造であって、
人体が近接又は接触する導電体であり、前記静電容量を充電する充電信号が繰返し供給される検出電極と、
前記検出電極に近接して配設される導電体である反転電極と、
前記充電信号の電圧の変化と逆向きに電圧が変化する反転信号を前記反転電極に供給する位相反転回路と、
を備え、
前記検出電極から放射される高周波ノイズを前記反転電極によって低減することを特徴とする静電容量センサの電極構造。
【請求項2】
前記充電信号はパルス信号であり、
前記位相反転回路は、前記パルス信号の立上り時に立下り且つ前記パルス信号の立下り時に立上がる前記反転信号を生成する請求項1記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項3】
前記位相反転回路は前記充電信号が入力されるインバータ回路である請求項2記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項4】
前記検出電極は長尺状の板状又は棒状の導電体であり、
前記検出電極と略同一の長さの前記反転電極が該検出電極と略同一平面に平行に配設される請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項5】
前記検出電極は略長方形の平板の導電体であり、
前記反転電極は、前記検出電極と略同一平面に該検出電極の外周を所定の間隙を空けて囲んで配設される請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造。
【請求項6】
車両に搭載される近接センサであって、請求項1乃至5のいずれかに記載の静電容量センサの電極構造を備えることを特徴とする車両用近接センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−272991(P2010−272991A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121378(P2009−121378)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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