説明

静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用現像剤、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置。

【課題】直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れた均一な画像を長期にわたり得ることができるキャリア及び二成分系現像剤を提供し、さらに、この静電潜像現像用キャリアを用いた、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、キャリア粒子表面の芯材露出率E(%)が、0<E≦0.10であり、露出面積が0.10μm以上2.0μm以下である露出箇所が全露出箇所の95%以上であり、かつ、芯材露出箇所が100箇所以上であることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方法、静電記録法等に用いられる静電荷像現像用キャリア並びにこれを用いた静電荷像現像用現像剤、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させて可視像を形成した後、該トナー像を紙等の記録媒体に転写し、定着して画像を形成する。近年、電子写真方式を用いた複写機やプリンタの技術は、モノクロからフルカラーへの展開が急速になりつつあり、フルカラーの市場は拡大する傾向にある。
【0003】
フルカラー電子写真法によるカラー画像形成は、一般に3原色であるイエロー、マゼンタ、及び、シアンの3色のカラートナー、または、それに黒色を加えた4色のカラートナーを用い、各色トナー像の濃淡を調節し該トナー像を積層して、全ての色の再現を行なうものであるが、前画像履歴を次画像が引き継ぐ現象(ゴースト現象)が報告されており、トナー像の濃度が変動すると画像の色調が変化してしまう。
【0004】
従来、画像形成装置で使用される現像方式としては、一成分現像方式、二成分現像方式、ハイブリッド現像方式などが用いられているが、ゴースト現象の発生メカニズムはそれぞれ異なると考えられる。
【0005】
すなわち、一成分現像方式では、現像工程で消費されなかった残トナーが現像装置に戻ったとき、供給ローラにより完全には剥ぎ取られず現像ローラ表面に残留し、次工程の現像に使われる。トナー供給部で行われる残トナーの剥ぎ取りはメカニカルな力によるものであるため、相対的に大粒径のトナー粒子の方が剥離され易いため、現像部でトナーの小粒径化が生じ、それにより比電荷変動をもたらしてゴーストが発生する。
【0006】
ハイブリット現像方式は、磁気ローラの外周に非磁性トナーおよび磁性キャリアで構成される磁気ブラシを形成し、前記磁気ローラから非磁性トナーだけをトナー坦持体に供給して均一なトナー層を形成し、該トナー層のトナーを像坦持体静電潜像に塗布するものであり、常に一定量のトナーがトナー担持体へ供給されるため、トナー担持体上のトナー量が前画像によって変動しゴーストが発生する。
すなわち、前画像がトナー消費の少ない画像を印刷時には、トナー担持体上の残トナー量は多く、トナー供給後にはトナー担持体上のトナー量が更に多くなってしまい画像濃度は濃くなる。一方、トナー消費の多い画像を印刷後には、トナー担持体上の残トナー量が少なくなり、トナー供給後も相対的にトナー担持体上のトナー量が少なくなり画像濃度が薄くなる。
以上のように、ハイブリッド現像におけるゴースト現像は、磁気ブラシからトナー担持体上にトナーを転移させるときに、トナーが現像されトナー担持体上からトナーが少なくなった部分と、トナーが現像されずトナー担持体上のトナーがそのまま残る部分のトナー量を均一になるように再塗布することが困難で、直前画像の履歴に応じて次画像印刷時のトナー担持体上のトナー量が変動してしまうことに起因している。
【0007】
これらを解決するために、例えば、特許文献1の特許第3356948号公報、特許文献2の特開2005−157002号公報、特許文献3の特開平11−231652号公報には、トナー担持体上の残トナーを現像後かつトナー再供給前にスクレーパーやトナー回収ロールにより掻きとることが提案されている。
また、特許文献4の特開平7−72733号公報には、コピーとコピーの間や紙間を利用して、トナー担持体上の残トナーを電位差により磁気ロールに回収し、トナー担持体上のトナー量を安定させる方法が提案されている。さらに磁気ブラシを用いた履歴現象の対応策として、特許文献5の特開平7−128983号公報には、磁気ロールの磁束密度の半値幅領域を広く設定することにより、トナー坦持体上のトナーの回収と供給を図る提案がなされている。また、特許文献6の特開平6−92813号公報には、非球形状のキャリアを使用しキャリアの表面積を増加させることで、キャリア粒子同士が接触する割合を高くして、磁気ブラシ先端のキャリアまで電荷注入し、現像剤担持体とトナー担持体との実質的な間隔を狭めることで、一回でトナー担持体へ供給できるトナー量を増やし、トナー担持体上のトナー飽和量までトナーを供給することで、トナー担持体上のトナー量を一定に保ち、直前画像の履歴の影響を防止する方法が提案されている。
【0008】
また、二成分現像方式においてもゴースト現象は報告されており、二成分現像方式でゴースト現象が発生する理由としては、現像剤離れ不良が原因であると考えられる。
二成分現像方式では、現像剤坦持体内のマグネットを奇数個とし現像スリーブの回転軸よりも下側の位置に同極のマグネット対を設けて磁力が殆どゼロとなる剥離領域を作り、その領域で重力を用いて現像後の現像剤を自然落下させることにより、現像剤坦持体から現像剤を剥離させている。
【0009】
しかし、直前画像でのトナー消費量時にキャリアにカウンターチャージが発生することで、キャリア−現像剤担持体間に鏡像力が発生し、現像剤離れ極(同極のマグネット対)において現像剤が正常に離れず、トナーが消費され、トナー濃度が低下した現像剤が再度現像領域に搬送されることで、現像能力が低下し画像濃度が薄くなる。すなわちスリーブ一周分は正常濃度であるのに対し、二周目以降は濃度が薄くなりゴーストが発生すると考えられる。
これらを解決するために、例えば、特許文献7の特開11−65247号公報には、内部にマグネットを有した汲上ロールを現像剤坦持体上の剥離領域付近に配置し、その磁力をもって現像後の現像剤の剥離を行う構成が記載されている。剥離された現像剤は、さらにもう1本の汲上ロールによって汲み上げられた後、スクリューを有した現像剤攪拌室に搬送され、トナー濃度の再調整とトナーの帯電とが行われる構成となっている。
【0010】
一方、キャリアとしては、特許文献8の特開2002−162788号公報には、エチレン性不飽和ニトリル共重合体、アミノ変性シリコーンオイル、及び磁性粒子を含むバインダー型キャリアとすることにより、キャリア付着を抑制し、帯電立ち上がり性、帯電安定性を向上できる旨が開示され、また、特許文献9の特許4106347号公報には、芯材粒子の表面を被覆する被覆層を、金属アルコキシドと、金属アルコキシドと反応する水酸基を有する樹脂と、無機微粒子とを含むもので形成することにより、キャリア表面被覆層の帯電系列を変化させ、トナーの帯電量を調節すると共に、無機微粒子による表面凹凸でトナースペント成分を除去することが開示されているが、前記ゴースト画像の発生防止が充分でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術の現状に鑑み、本発明は、直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れた均一な画像を長期にわたり得ることができるキャリア及び二成分系現像剤を提供し、さらに、この静電潜像現像用キャリアを用いた、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は本発明の、下記(1)〜(10)によって解決される。
(1)「磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、キャリア粒子表面の芯材露出率E(%)が、0<E≦0.10であり、露出面積が0.10μm以上2.0μm以下である露出箇所が全露出箇所の95%以上であり、かつ、芯材露出箇所が100箇所以上であることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリア」、
(2)「前記芯材粒子は、表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm未満である平滑部が20%未満であることを特徴とする前記第(1)項に記載の静電潜像現像剤用キャリア」、
(3)「前記芯材粒子は、表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm未満である平滑部が10%未満であることを特徴とする前記第(2)項に記載の静電潜像現像剤用キャリア」、
(4)「前記被覆層は、導電性微粒子を含有するものであり、該導電性微粒子を芯材に対して3重量%以上8重量%以下含むものであることを特徴とする前記第(1)項乃至前記第(3)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア」、
(4)「該被覆層は、少なくとも下記一般式(1)で表されるモノマーA成分由来のA部位と下記一般式(2)で表されるモノマーB成分由来のB部位とを含む共重合体を、加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする前記第(1)項乃至前記第(1)項前記第(4)項のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア;
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のアルキル基
は、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%」、
(6)「前記共重合体は、下記一般式(3)で表される共重合体を含むことを特徴とする前記第(1)項乃至前記第(5)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア;
【0015】
【化3】


(式中において、R1、m、R2、R3、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
R1:水素原子、またはメチル基
m :炭素原子数1〜8のアルキレン基
R2:炭素原子数1〜4のアルキル基
R3: 炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X:10〜40モル%
Y:10〜40モル%
Z:30〜80モル%
60モル%<Y+Z<90モル%」、
(7)「前記第(1)項乃至前記第(6)項のいずれかに記載のキャリアとトナーからなることを特徴とする静電潜像現像剤」、
(8)「前記トナーが、カラートナーであることを特徴とする前記第(7)項に記載の静電潜像現像剤」、
(9)「静電潜像担持体、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記第(7)項または前記第(8)項に記載の静電潜像現像剤を用いて現像する手段が少なくとも一体に支持されていることを特徴とするプロセスカートリッジ」、
(10)「静電潜像を形成する静電潜像担持体と、形成された静電潜像を前記第(7)項または前記第(8)項に記載の静電潜像現像剤を用いてトナー像に現像する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有することを特徴とする画像形成装置」によって解決される。
【0016】
また、本発明は以下の発明を包含する。
(11)「前記第(7)項または前記第(8)項に記載の現像剤を有することを特徴とする現像剤入り容器」、
(12)「静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記第(7)項または前記第(8)項に記載の静電潜像現像剤を用いてトナー像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする画像形成方法」、
(13)「キャリアとトナーからなる補給用静電潜像現像剤であって、前記キャリアとトナーの配合割合が、キャリア1質量部に対してトナーが2〜50重量部であり、前記キャリアが前記第(1)項乃至前記第(6)項のいずれかに記載のキャリアであることを特徴とする補給用静電潜像現像剤」。
【発明の効果】
【0017】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れた均一な画像を長期にわたり得ることができるキャリア及び二成分系現像剤を提供でき、さらに、この静電潜像現像用キャリアを用いた、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の画像形成装置の要部の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の他の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図5】キャリアの体積固有抵抗を測定する際に用いるセルの一例を示す図である。
【図6】帯電量の測定方法を示す図である。
【図7】ゴースト画像評価の縦帯チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の静電潜像現像剤用キャリアについて詳細に説明する。
本発明のキャリアは、磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであり、キャリア粒子表面に芯材が露出した箇所を有するものである。
芯材が露出する箇所を有することにより、キャリアの抵抗を低下させ現像性が向上するが、キャリア付着及びスペントの発生を助長し、著しく画質を低下させることがある。
【0020】
本発明においては、キャリア粒子表面の芯材露出率E(%)を、0<E≦0.10とし、露出面積が0.10μm以上2.0μm以下である露出箇所が全露出箇所の95%以上であり、かつ、芯材露出箇所が100箇所以上であることにより、キャリアの低抵抗化による現像性の向上と、キャリア付着及びスペントの発生防止とを両立させることができる。
すなわち、局所的に低抵抗な部分が存在するため、キャリアの除電が効率的に行え、直前画像でのトナー消費量時にキャリアにカウンターチャージが発生しにくくなることで、キャリア粒子/現像剤担持体間に鏡像力の発生が抑制でき、現像剤担持体の現像剤離れ極において現像剤が正常に現像剤担持体から離れ、トナー消費によりトナー濃度の低下した現像剤が再度現像領域に搬送されることを防止でき、ゴースト現象の発生を防止できる。
【0021】
キャリア粒子表面の芯材露出率E(%)が0.10を超えるとキャリア芯材の露出が多すぎ、トナー成分のスペントが発生する。また、芯材が露出する部分がないとキャリア低抵抗化できない。
また、露出箇所の面積が2.0μmを超えると、一箇所の露出面積が大きく、電荷リーク回路ができ易くなり、露出箇所が偏在し易くなり好ましくない。また、0.10μm未満であると被覆層の連続性が低くなり、被覆層の耐久性が低下して剥離が生じやすくなる。芯材露出箇所が100箇所未満であると露出箇所が偏在し易く、一箇所の露出面積が大きくなって電荷リーク回路ができ易くなる。
【0022】
以下、芯材露出率の測定方法、キャリア表面の平均露出面積、及び露出部分数の測定方法について説明する。
(芯材露出率)
測定装置は、島津X線光電子分析装置(ESCA−1000 島津製作所製)を用いて、X線出力を10kV,40mAとし、珪素=Si 2p,炭素=C 1s,酸素=O 1s,鉄=Fe 2p3/2,銅=Cu 2p3/2,亜鉛=Zn 2p3/2の元素ピーク面積強度からキャリア粒子表面の元素比率を算出した。
一方、芯材(コア)についても同様な測定を行い、
芯材露出量(%)=(コートキャリア表面のFe比率)/(芯材表面のFe比率)×100
として芯材露出率を規定した。
【0023】
(キャリア表面の露出面積、及び露出箇所数)
走査電子顕微鏡(日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8000シリーズ)を用いて、印加電圧1.0kV、エミッション電流8〜13mA、にてキャリア粒子表面を2000倍で撮影した。
画像処理解析装置であるルーゼックスAP(ニレコ製)にて、画像を二値化処理し、キャリア表面の露出面積が0.1〜2.0μmである箇所数をカウントした。また、芯材の露出箇所数については、二値化処理した画像にて、露出箇所数をカウントした。
無作為に選んだキャリア100個について測定を繰り返し平均した。
【0024】
(キャリア芯材)
本発明のキャリアの芯材としては、電子写真用二成分キャリアとして公知のもの、例えば、フェライト、Cu−Znフェライト、Mnフェライト、Mn−Mgフェライト、Mn−Mg−Srフェライト、マグネタイト、鉄、ニッケル等キャリアの用途、使用目的に合わせ適宜選択して用いればよく、これらに限るものではない。
【0025】
前記芯材粒子は、中心線平均粗さRaが0.5μm未満である平滑部が20%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。
Raが0.5μm未満である平滑部が20%以上であると芯材が露出し難く、被覆層が薄くなり耐久性が低下する。なお、芯材の形状は、焼成時間、焼成温度等により調節が可能である。
【0026】
本発明の芯材粒子の中心線平均粗さRa(粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたもの)は以下の方法で測定できる。
リアルカラーコンフォーカル(共焦点)顕微鏡(OPTELICS C130;Lasertec社製)にて500倍、分解能0.20μmにてキャリア、及び、キャリア芯材を50サンプル撮影する。1キャリア粒子または1芯材粒子について、観察エリア10μm×10μmで、キャリア粒子または芯材粒子の凸から凹に変化している箇所のRaを10箇所計測し、50サンプルの平均値を芯材粒子のRaとした。
【0027】
(被覆層)
前記芯材粒子が表面に露出する被覆層は、芯材が露出する箇所の周辺部の膜厚が薄くなり、かつ他の部分よりもストレスを受け易いため、高い膜強度及びキャリア芯材との高い接着性が要求される。
【0028】
前記被覆層の結着樹脂は、少なくともシリコン樹脂を含有することが好ましい。シリコン樹脂を含有することで、改善効果が顕著である。
シリコン樹脂は表面エネルギーが低いためにトナー成分のスペントがし難く、スペント成分の蓄積が進み難い効果が得られるためである。
【0029】
本発明の樹脂層組成物は、シラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基を有するシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
シラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基(例えば、アルコキシ基やSi原子に結合するハロゲノ基等の陰性基)を有するシリコーン樹脂は、前記共重合体の架橋成分Bと直接的に、あるいはシラノール基に変化した状態の架橋成分Bと縮重合することができる。そして、前記共重合体に、シリコーン樹脂成分を含有させることにより、トナースペント性を更に改善される。
【0030】
本発明において、樹脂層を形成する際に用いられるシラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基を有するシリコーン樹脂は、下記一般式(A)で示される繰り返し単位の少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0031】
【化4】

【0032】
ここで、上記式(A)中、Aは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、炭素数1〜4の低級アルキル基、またはアリール基(フェニル基、トリル基など)であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基、またはアリーレン基(フェニレン基など)である。
【0033】
上記式のアリール基において、その炭素数は6〜20、好ましくは6〜14である。このアリール基には、ベンゼン由来のアリール基(フェニル基)の他、ナフタレンやフェナントレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリール基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリール基等が包含される。なお、アリール基は、各種の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
アリーレン基の炭素数は、6〜20、好ましくは6〜14である。このアリーレン基としては、ベンゼン由来のアリーレン基(フェニレン基)の他、ナフタレンやフェナントレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基等が包含される。なお、アリーレン基は、各種の置換基で置換されていてもよい。
【0035】
本発明に使用できるシリコーン樹脂の市販品としては、特に限定されないが、KR251、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152、KR155、KR211、KR216、KR213(以上、信越シリコーン社製)、AY42−170、SR2510、SR2400、SR2406、SR2410、SR2405、SR2411(東レ・ダウコーニング株式会社製)(東レ・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の被覆層は、少なくとも下記一般式(1)で表されるモノマーA成分由来のA部位と下記一般式(2)で表されるモノマーB成分由来のB部位とを含む共重合体を、加熱処理して得られた樹脂を含有するものであることが好ましい。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のアルキル基
は、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【0039】
前記樹脂は、トリス(トリメチルシロキシ)シランを有するモノマーA成分とラジカル重合性の2官能、又は3官能性のシラン化合物を有するモノマーB成分とを有するため、表面エネルギーが小さくトナーの樹脂成分、ワックス成分などの付着が少なくなり、かつ、膜の強靭性を向上できる。
【0040】
さらに下記一般式(4)で表わされるC部分(及びモノマーC成分)を含むものであるとことが好ましい。C部分により可撓性を有しキャリア芯材との接着性を向上できる。
【0041】
【化7】


前記一般式(4)中、
R1: 水素原子、またはメチル基
R2:炭素原子数1〜4のアルキル基である。
Z:30〜80モル%
C成分を含むものとしては下記一般式(3)に示すものを挙げることができる。
【0042】
【化8】

式中において、R1、m、R2、R3、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
R1:水素原子、またはメチル基
m :炭素原子数1〜8のアルキレン基
R2:炭素原子数1〜4のアルキル基
R3: 炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X:10〜40モル%
Y:10〜40モル%
Z:30〜80モル%
60モル%<Y+Z<90モル%
【0043】
前記A成分の割合が10モル%未満だと表面エネルギー低下効果が充分得られず、トナー成分の付着が急増する。また、90モル%より多くなると、成分B、および成分Cが減り、架橋が進まず、強靭性が不足すると共に、芯材と樹脂層の接着性が低下し、キャリア被膜の耐久性が悪くなる。
【0044】
前記一般式(1)中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、このようなモノマー成分としては、次式で示されるトリス(トリアルキルシロキシ)シラン化合物が例示される。
下式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基である。
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CH−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CH−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
CH=CH−COO−C−Si(OSiPr
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
A成分の製造方法は特に限定されないが、トリス(トリアルキルシロキシ)シランを白金触媒の存在下にアリルアクリレートまたはアリルメタクリレートと反応させる方法や、特開平11−217389に記載されている、カルボン酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法などにより得られる。
【0045】
前記B成分の割合は、10〜90モル%であるが、30〜70モル%であることがより好ましい。
B成分が10モル%未満であると、架橋点が少なく、強靭さが十分得られない。一方、90モル%より多いと、被膜は固くて脆くなり、膜削れが発生し易くなる。また、環境特性が悪化する。加水分解した架橋成分がシラノール基として多数残り、環境特性(湿度依存性)を悪化させていることも考えられる。
【0046】
このようなB成分としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリトキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シランが例示される。
【0047】
前記C成分を含む場合の前記A成分及び前記B成分の含有量としては、X=10〜40モル%、Y=10〜40モル%であり、C成分の含有量は、Z=30〜80モル%、好ましくは、35〜75モル%であり、かつ、60モル%<Y+Z<90モル%であり、更に好ましくは、70モル%<Y+Z<85モル%である。
C部分(モノマーC成分)が80モル%より大きくなると、X、およびYのいずれかが10以下となるため、キャリア被膜の撥水性、硬さと可とう性(膜削れ)を両立させることが難しくなり、C成分が30モル%未満だと十分な接着性が得られなくなることがある。
【0048】
C成分のアクリル系化合物(モノマー)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく、具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートが例示される。これらの内ではアルキルメタクリレートが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。また、これらの化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0049】
前記樹脂を有する被覆層は、モノマーA成分とモノマーB成分をラジカル共重合して得られる共重合体、またはモノマーA成分とモノマーB成分に加えてモノマーC成分をラジカル共重合して得られる共重合体加水分解し、シラノール基を生成し、触媒を用いて縮合することにより架橋、被覆した後、加熱処理することにより得ることができる。
樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆しながら、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、熱、光等を付与しながら、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆する方法等が挙げられる。また、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に加熱する方法等が挙げられる。
【0050】
また、前記架橋成分Bの縮合反応を促進するために、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒を使用できる。
これら各種触媒のうち、優れた結果をもたらすチタン系触媒の中でも、特にチタンアルコキシドとチタンキレートが好ましい。
これは、架橋成分Bに由来するシラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。チタンアルコキシド系触媒の例としては、下記構造式1で表されるチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が挙げられ、また、チタンキレート系触媒の例としては、下記構造式2で表されるチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が挙げられる。
【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
また、被膜の架橋による高耐久化技術としては、特許第3691115号がある。特許第3691115号は、磁性粒子表面を、少なくとも末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびイミド基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するラジカル共重合性単量体との共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂で被覆したことを特徴とする静電荷像現像用キャリアであるが、被膜の剥がれ・削れにおいて十分な耐久性が得られていないのが現状である。
【0054】
その理由は十分明らかになっているとは言えないが、前述の共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂の場合、構造式からも分かるように、共重合体樹脂中のイソシアネート化合物と反応(架橋)する単位重量当りの官能基が少なく、架橋点において、ニ次元、あるいは三次元的な緻密な架橋構造を形成することが出来ない。そのために長時間使用すると、被膜剥がれ・削れなどが生じ(被膜の耐磨耗性が小さく)易く、十分な耐久性が得られていないと推察される。
【0055】
被膜の剥がれ・削れが生じると、キャリア抵抗低下による画像品質の変化、キャリア付着が起こる。また、被膜の剥がれ・削れは、現像剤の流動性を低下させ、汲み上げ量低下を引き起こし、画像濃度低下、TCアップに伴う時汚れ、トナー飛散の原因となっている。
【0056】
本発明の樹脂は、樹脂単位重量当たりでみても、二官能、あるいは三官能の架橋可能な官能基(点)を多数(単位重量当り、2倍〜3倍多い)有した共重合樹脂であり、これを更に、縮重合により架橋させたものであるため、被膜が極めて強靭で削れ難く、高耐久化がはかれていると考えられる。
また、イソシアネート化合物による架橋より、本発明のシロキサン結合による架橋の方が結合エネルギーが大きく熱ストレスに対しても安定しているため、被膜の経時安定性が保たれていると推察される。
【0057】
本発明において、被覆膜には、キャリアの経時での安定性が良好となり、耐久性を向上させることができることから、シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。 シランカップリング剤としては、特に限定されず、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等が挙げられるが、アミノシランが好ましい。
【0058】
アミノシランとしては、特に限定されないが、化学式
N(CHSi(OCH
N(CHSi(OC
N(CHSi(CH(OC)、
N(CHSi(CH)(OC
N(CH(NH)(CH)Si(OCH)3、
N(CH(NH)(CHSi(CH)(OCH3)
N(CH(NH)(CHSi(OCH
(CHN(CH2)Si(CH3)(OC
(C4HN(CHSi(OCH3)
で表される化合物が挙げられる。
【0059】
被覆層中のアミノシランの含有量は、0.001〜30質量%であることが好ましく、0.001〜15質量%がさらに好ましい。この含有量が0.001質量%未満であると、キャリアの耐久性を向上させる効果が不十分となることがあり、30質量%を超えると、導電性粒子や無機粒子を被覆層中に保持することが困難となることがある。
【0060】
また、通常は分子量の大きな樹脂は粘度が非常に高く、粒径の小さな基体に塗布する場合、粒子の凝集、樹脂層の不均一化などが生じ易く、コートキャリアを製造することが極めて難しい。
したがって、本発明の共重合樹脂は、重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜70,000であることがより好ましく、30,000〜40,000であることがさらに好ましい。5,000より小さいと、樹脂層の強度が不足し、100,000であると、液粘度が高くなり、キャリア製造性が悪くなる。
【0061】
本発明の被覆層は導電性粒子を含有してもよい。導電性微粒子を被覆樹脂層に含有させることにより、キャリア粒子の抵抗調節と耐久性を向上させることができる。
導電性粒子の添加量は、芯材重量に対して、3〜8質量%であることが好ましい。導電性微粒子の種類としては、特に限定されないが、ITO、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられ、二種以上併用してもよいが、カーボンブラック等の比較的硬度の低いものを単独、または二種以上併用した場合は、キャリアの抵抗を下げるのには有効だが、被覆樹脂層の削れを抑制させる効果が少なくなる。
【0062】
導電性粒子の添加量が3質量%未満であると、キャリアの体積固有抵抗を調整する効果が不十分となることがあり、かつ被覆樹脂層の劣化のため、高寿命化が難しい。8質量%を超えると、導電性微粒子を保持することが難しくなり、キャリアの表面層が破壊され易くなるだけでなく、被覆層の抵抗が下がりすぎるため、キャリアとしての帯電保持能力が阻害され、キャリア付着などの画像問題が発生することがある。
前記被覆層の膜厚は、0.1μm以上0.4μm以下であることが好ましい。
【0063】
また、本発明におけるキャリアの重量平均粒径は、20μm以上65μm以下であることが好ましく、40μm未満であることがより好ましい。
重量平均粒径が20μm以上65μm以下であることにより、キャリア付着や画質等に対する改善効果が顕著である。
重量平均粒径が20μm未満の場合は、粒子の均一性が低下することと、マシン側で充分使いこなす技術が確立できていないことにより、キャリア付着などの問題が生じ好ましくない。一方、65μmを越える場合には、画像細部の再現性が悪く精細な画像が得られないので好ましくない。
【0064】
上記キャリアの重量平均粒子径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装社製)のSRAタイプを用いて測定することができる。0.7μm以上、125μm以下のレンジ設定で測定することができる。このとき分散液の溶媒にはメタノールを使用しキャリアおよび芯材の屈折率を2.42に設定する。
【0065】
本発明におけるキャリアの体積固有抵抗は、体積固有抵抗が1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であることが好ましく、1×10Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下であることがさらに好ましい。これは、体積固有抵抗が1×10Ω・cm未満の場合、非画像時に現像担持体上へ現像されるトナー量が増えてしまい、画像の均一性が得られない。一方、体積固有抵抗が1×1015Ω・cmを超える場合、印刷時に現像剤担持体上に現像されたトナーが消費されてしまい、画像の均一性が得られない。
【0066】
次に、図面により本発明の電子写真現像方法ならびに電子写真現像装置の例を詳しく説明するが、これら例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
図1は、本発明の電子写真現像方法および現像装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、潜像担持体である感光体ドラム(20)に対向して配設された現像装置(40)は、現像剤担持体としての現像スリーブ(41)、現像剤収容部材(42)、規制部材としてのドクターブレード(43)、支持ケース(44)等から主に構成されている。
感光体ドラム(20)側に開口を有する支持ケース(44)には、内部にトナー(21)を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー(45)が接合されている。トナーホッパー(45)に隣接した、トナー(21)とキャリア粒子(23)とからなる現像剤を収容する現像剤収容部(46)には、トナー粒子(21)とキャリア粒子(23)を撹拌し、トナー粒子に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤撹拌機構(47)が設けられている。
【0067】
トナーホッパー(45)の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)が配設されている。トナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)は、トナーホッパー(45)内のトナー(21)を現像剤収容部(46)に向けて撹拌しながら送り出す。
感光体ドラム(20)とトナーホッパー(45)との間の空間には、現像スリーブ(41)が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ(41)は、キャリア粒子(23)による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置(40)に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有する。
現像剤収容部材(42)の、支持ケース(44)に取り付けられた側と対向する側には、規制部材(ドクターブレード)(43)が一体的に取り付けられている。規制部材(ドクターブレード)(43)は、この例では、その先端と現像スリーブ(41)の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
【0068】
このような装置を非限定的に用い、本発明の現像方法は、次のように遂行される。即ち、上記構成により、トナーホッパー(45)の内部からトナーアジテータ(48)、トナー補給機構(49)によって送り出されたトナー(21)は、現像剤収容部(46)へ運ばれ、現像剤撹拌機構(47)で撹拌されることによって、所望の摩擦/剥離電荷が付与され、キャリア粒子(23)と共に現像剤として、現像スリーブ(41)に担持されて感光体ドラム(20)の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー(21)のみが感光体ドラム(20)上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体ドラム(20)上にトナー像が形成される。
【0069】
図2はこのような現像装置を有する画像形成装置の一例を示す断面図である。ドラム状の像担持体すなわち感光体ドラム(20)の周囲に、像担持体帯電部材(32)、像露光系(33)、現像(装置)機構(40)、転写機構(50)、クリーニング機構(60)、除電ランプ(70)が配置されていて、この例の場合、像担持体帯電部材(32)の表面は感光体(20)の表面とは約0.2mmの間隙を置いて非接触状態にあり、帯電用部材(32)により感光体(20)に帯電を施す際、帯電部材(32)に図示してない電圧印加手段によって直流成分に交流成分を重畳した電界により感光体に帯電を与えることにより、帯電ムラを低減することが可能であり、効果的である。現像方法を含む画像形成方法は、以下の動作で行なわれる。
【0070】
画像形成の一連のプロセスは、ネガ−ポジプロセスで説明を行なうことができる。有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される像担持体(20)は除電ランプ(70)で除電され、帯電チャージャや帯電ローラといった帯電部材(32)で均一にマイナスに帯電され、レーザー光学系(33)より照射されるレーザー光で潜像形成(この例では露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
【0071】
レーザー光は半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により像担持体すなわち感光体(20)の表面を、像担持体(20)の回転軸方向に走査する。このようにして形成された潜像が、現像装置、現像手段又は現像装置(40)にある現像剤担持体である現像スリーブ(41)上に供給されたトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ(41)に、像担持体(20)の露光部と非露光部の間に、ある適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0072】
一方、転写媒体(例えば紙)(80)が、給紙機構(図示せず)から給送され、上下一対のレジストローラ(図示せず)で画像先端と同期をとって像担持体(20)と転写部材(50)との間に給送され、トナー像が転写される。このとき、転写部材(50)には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、転写媒体または中間転写媒体(80)は像担持体(20)より分離され、転写像が得られる。
また、像担持体上に残存するトナー粒子は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード(61)にて、クリーニング機構(60)内のトナー回収室(62)へ回収される。
回収されたトナー粒子は、トナーリサイクル手段(図示せず)により現像部および/またはトナー補給部に搬送され、再使用されても良い。
画像形成装置は、上述の現像装置を複数配置し、転写媒体上へトナー像を順次転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であっても良く、一端中間転写媒体上へ複数のトナー像を転写し、これを一括して転写媒体に転写後同様の定着を行なう装置であっても良い。
【0073】
図3には、本発明による電子写真現像方法を用いた別のプロセス例を示す。感光体(20)は導電性支持体上に少なくとも感光層が設けてなり、駆動ローラ(24a)、(24b)により駆動され、帯電ローラ(32)による帯電、光源(33)による像露光、現像装置(40)による現像、帯電器(50)を用いる転写、光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段(64)及びクリーニングブレード(61)によるクリーニング、除電光源(70)による除電が繰返し行なわれる。図3においては、感光体(20)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0074】
図4には、本発明のプロセスカートリッジの1例が示される。このプロセスカートリッジは、本発明のキャリアを使用し、感光体(20)と、近接型のブラシ状接触帯電手段(32)、本発明の現像剤を収納せる現像手段(40)、クリーニング手段としてのクリーニングブレード(61)を少なくとも有するクリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、「部」は、重量部を表わす。
【0076】
[キャリア製造例]
(キャリア製造実施例1)
樹脂合成例2で得られた重量平均分子量35,000のメタクリル系共重合体と、樹脂合成例3で得られた重量平均分子量が15,000のメタクリル系共重合体とを全体で100部になるように1:9の割合で混合し、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子72.1部、触媒としてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(TC−750:マツモトファインケミカル社製)4部を、トルエンで希釈して、固形分10wt%の樹脂溶液を得た。

芯材は芯材製造方法2で作製した重量平均粒子径35μmの芯材を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.15μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥した。
得られたキャリアを電気炉中にて、180℃/2時間焼成し、キャリアAを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.04%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は108個であった。
【0077】
(キャリア製造実施例2)
芯材表面において平均膜厚が0.17μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例2にあたるキャリアBを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.04%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は96%、芯材の露出数は112個であった。
【0078】
(キャリア製造実施例3)
芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例3にあたるキャリアCを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の平均露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は127個であった。
【0079】
(キャリア製造実施例4)
芯材製造方法1で作製した重量平均粒子径35μmの芯材を使用し、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例4にあたるキャリアDを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は125個であった。
【0080】
(キャリア製造実施例5)
芯材製造方法3で作製した芯材に重量平均粒子径35μmの芯材を使用し、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例5にあたるキャリアEを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は120個であった。
【0081】
(キャリア製造実施例6)
芯材製造方法4で作製した芯材に重量平均粒子径35μmの芯材を使用し、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例6にあたるキャリアFを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は126個であった。
【0082】
(キャリア製造実施例7)
芯材製造方法5で作製した芯材に重量平均粒子径35μmの芯材を使用し、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例7にあたるキャリアGを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は124個であった。
【0083】
(キャリア製造実施例8)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子37.3部、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例8にあたるキャリアHを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は127個であった。
【0084】
(キャリア製造実施例9)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子62.1部、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例9にあたるキャリアIを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は96%、芯材の露出数は130個であった。
【0085】
(キャリア製造実施例10)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を99.4部加える他は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造実施例10にあたるキャリアJを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は127個であった。
【0086】
(キャリア製造実施例11)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を、導電性微粒子製造例2の導電性微粒子に代える他はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造実施例11にあたるキャリアKを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は95%、芯材の露出数は120個であった。
【0087】
(キャリア製造実施例12)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を、導電性微粒子製造例3の導電性微粒子に代える他はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造実施例12にあたるキャリアLを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は96%、芯材の露出数は125個であった。
【0088】
(キャリア製造実施例13)
樹脂溶液の樹脂を、樹脂合成例1で得られた重量平均分子量35,000のメタクリル系共重合体と、樹脂合成例3で得られた重量平均分子量が15,000のメタクリル系共重合体とを全体で100部になるように1:9の割合で混合したものに代える他はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造実施例13にあたるキャリアMを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は130個であった。
【0089】
(キャリア製造実施例14)
樹脂溶液の樹脂を、樹脂合成例1で得られた重量平均分子量35,000のメタクリル系共重合体、樹脂合成例3で得られた重量平均分子量が15,000のメタクリル系共重合体(部)を全体で100部になるように5:5の割合で混合したものに代える他はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造実施例14にあたるキャリアNを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は130個であった。
【0090】
(キャリア製造実施例15)
キャリア製造実施例1で用いた樹脂溶液と芯材製造方法2で作製した重量平均粒子径35μmの芯材とを、加熱ヒーターを備えた1L小型ニーダー中で、90℃で30分間混合した後、熱媒温度を250℃に上昇させて40分間攪拌混練し、次いでヒーターを切り、攪拌しながら50分間冷却した。その後、105μmの篩で篩分してキャリア製造実施例15にあたるキャリアOを得た。
このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は130個であった。
【0091】
(キャリア製造比較例1)
膜厚を0.10μmにする以外はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造比較例1にあたるキャリアPを得た。このとき、キャリアの芯材露出率6.40%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は78%、芯材の露出数は60個であった。
【0092】
(キャリア製造比較例2)
膜厚を0.4μmにする以外はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造比較例2にあたるキャリアQを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.00
%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は98個であった。
【0093】
(キャリア製造比較例3)
重量平均粒子径35μmの芯材製造方法6の芯材を使用し、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させる以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造比較例3にあたるキャリアRを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.00%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は60個であった。
【0094】
(キャリア製造比較例4)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を12.4部加える他は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造比較例4にあたるキャリアSを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は127個であった。
【0095】
(キャリア製造比較例5)
導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を123.3部加える他は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造比較例5にあたるキャリアTを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は98%、芯材の露出数は127個であった。
【0096】
(キャリア製造比較例6)
樹脂溶液の樹脂を、樹脂合成例3で得られた重量平均分子量が15,000のメタクリル系共重合体のみで100部にしたものに代える他は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造比較6にあたるキャリアUを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は130個であった。
【0097】
(キャリア製造比較例7)
樹脂溶液の樹脂を、樹脂合成例4で得られた樹脂のみで100部にしたものに代える他は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、芯材表面において平均膜厚が0.30μmになるように流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥させ、キャリア製造比較7にあたるキャリアVを得た。このとき、キャリアの芯材露出率0.02%、樹脂被覆層の芯材表面の露出面積が0.10〜2.0μmのものが芯材露出面積に占める割合は97%、芯材の露出数は125個であった。
【0098】
上記キャリアA〜Vの1kOeの磁場における磁化、体積固有抵抗、平均膜厚を以下の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0099】
[1kOeの磁場における磁化]
キャリア約0.15gを、内径が2.4mm、高さが8.5mmのセルに充填した後、VSM−P7−15(東英工業社製)を用いて、1kOeの磁場において、磁化を測定した。
【0100】
[体積固有抵抗]
体積固有抵抗は、図5に示すセルを用いて測定した。具体的には、まず、表面積2.5cm×4cmの電極(12a)及び電極(12b)を、0.2cmの距離を隔てて収容したフッ素樹脂製容器(11)からなるセルに、キャリア(13)を充填し、落下高さ1cm、タッピングスピード30回/分で、10回のタッピングを行った。
次に、電極(12a)及び(12b)の間に1000Vの直流電圧を印加して30秒後の抵抗r[Ω]を、ハイレジスタンスメーター4329A(横川ヒューレットパッカード社製)を用いて測定し、下記式から、体積固有抵抗[Ωcm]を算出した。
【0101】
【数1】

【0102】
[樹脂層の平均膜厚]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリアの断面を観察して、樹脂層の平均膜厚を測定した。
【0103】
【表1】

【0104】
<トナー製造例>
ポリエステル樹脂 100部 [重量平均分子量(Mw)18,000、数平均分子量(Mn)4000、
ガラス転移点(Tg)59℃、軟化点;120℃]
離型剤:カルナウバワックス 5部
カーボンブラック(#44 三菱化学社製) 10部
含フッ素4級アンモニウム塩 4部

以上の各成分をヘンシェルミキサーにより十分混合し、2軸式押出し機にて溶融混練し、混練物を圧延冷却した。放冷後カッターミルで粗粉砕し、ついでジェット気流式微粉砕機で微粉砕し、さらに風力分級機を用いて分級して、重量平均粒径7.4μmのトナー母体粒子を得た。
更に、このトナー母体粒子100部に対して、疎水性シリカ微粒子(R972:日本ア
エロジル社製)1.0部を加え、ヘンシェルミキサーで混合して、トナー1を得た。
【0105】
<現像剤の作成>
キャリアA〜V(93部)に対して、トナー製造例で得られたトナー1(7.4μm)を7.0部加えて、ボールミルで20分攪拌して、現像剤A〜Vを作成した。
また、現像剤Gにおいて、トナー90部に対し10部のキャリアGを添加したプレミックストナーを使用して同様に10万枚のランニングを行ったものを現像剤Wとした。これを実施例16とする。
【0106】
作成した現像剤AからWを用いて初期の画像出しをした後、この現像剤をImagioColor4000に装着し、単色モードで10分間攪拌した。その後、画像面積7%のチャートを使用して10万枚のランニングを行い、試験終了後、画像濃度、ハイライト部の画像濃度、画像の粒状性、地汚れ時汚れ、キャリア付着、環境での画像濃度変動、およびトナー飛散を評価した。
評価結果を下記表2乃至4に示す。
【0107】
【表2】


【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
(実機品質評価)
なお、画像品質確認および信頼性試験等の特性試験は、リコー社製 イマジオカラー4000(リコー製デジタルカラー複写機・プリンタ複合機)を使用し、次の現像条件で作成した。
・現像ギャップ(感光体−現像スリーブ):0.3mm
・ドクターギャップ(現像スリーブ−ドクター):0.65mm
・感光体線速度:200mm/sec
・(現像スリーブ線速度)/(感光体線速度):1.80
・書込み密度:600dpi
・帯電電位(Vd):−600V
・画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:−100V
・現像バイアス:DC −500V /交流バイアス成分:2KHz、−100V〜―900V、50%duty
品質評価は転写紙上で実施、但しキャリア付着は現像後転写前の状態を感光体上から粘着テープに転写して観察した。
【0111】
(実機品質評価項目)
(現像剤の物性変動)
(1)現像剤汲み上げ量の変動率(%)
={(初期における現像剤汲み上げ量―10万枚ランニング後の現像剤汲み上げ量)/初期における現像剤汲み上げ量}×100

但し、現像スリーブ上の現像剤汲み上げ量=mg/cm
±5%未満 : ◎大変良好
±5以上〜±10%未満 : ○良好
±10以上〜±20%未満 : △使用可能
±20%以上 : ×不良

【0112】
(2)スペントトナー量:10万枚ランニングしたキャリアと初期キャリアについて、トナー成分をメチルエチルケトンで抽出し、その差をスペントトナー量(キャリア重量に対するwt%で表示)する。
0以上〜0.03Wt%未満 : ◎大変良好
0.03Wt%以上 〜0.07t%未満 : ○良好
0.07Wt%以上 〜0.15Wt%未満 : △使用可能
0.15Wt%以上 : ×不良

【0113】
(3)トナー帯電量(Q/M)環境変動率(%)=2×{(10℃15%におけるトナー帯電量−30℃90%におけるトナー帯電量)/(10℃15%におけるトナー帯電量+30℃90%におけるトナー帯電量)}×100
0以上〜10%未満 : ◎大変良好
10以上〜30%未満 : ○良好
30以上〜70%未満 : △使用可能
70%以上 : ×不良
【0114】
(現像剤の帯電量の測定)
一定量の現像剤を、図6に示す両端に金属メッシュを備えた導体容器(ケージ)に入れる。メッシュ(ステンレス製)の目開きはトナーとキャリアの粒径の中間のもの(目開き20μm)選び、トナーがメッシュの間を通過するように設定する。ノズルから圧縮窒素ガス(1kgf/cm)を60秒間吹き付けて、トナーをゲージの外へ飛び出させると、ケージ内にトナーの電荷と逆極性を持ったキャリアが残される。
その電荷量Qと、飛び出したトナーの質量Mを測定し、単位質量当たりの電荷量を帯電量Q/Mとして算出する。トナー帯電量はμc/gで表示される。
【0115】
(画像品質評価)
上記の画像形成において画像の評価に採用した試験方法および評価基準は以下のとおりである。
画像品質評価は転写紙上で実施、但しキャリア付着は現像後、転写前の状態を感光体上から粘着テープに転写して観察した。
【0116】
(4)ベタ部画像濃度:上記現像条件における、30mm×30mmのベタ部(注1)の中心をX−Rite938分光測色濃度計で、5個所測定し平均値を出した。
注1;現像ポテンシャル400V相当箇所=(露光部電位−現像バイアスDC) =−100V−(−500V)
【0117】
(5)ハイライト部画像濃度:上記現像条件における、30mm×30mmのハイライト部(注2)の中心をX−Rite938分光測色濃度計で、5個所測定し平均値を出した。
注2;現像ポテンシャル150V相当箇所=(ハイライト部電位−現像バイアスDC)=−350V−(−500V)
【0118】
(6)粒状度:下記の式で定義された粒状度(明度範囲:50〜80)を測定し、その数値を下記のようにランクに置き換えて評価した。
粒状度=exp(aL+b)∫(WS(f))1/2・VTF(f)df
L:平均明度
f:空間周波数(cycle/mm)
WS(f):明度変動のパワースペクトラム
VTF(f):視覚の空間周波数特性
a,b:係数
0以上〜0.2未満 : ◎(大変良好)
0.2以上〜0.3未満 : ○(良好)
0.3以上〜0.4未満 : △(使用可能)
0.4以上 : ×(不良)

【0119】
(7)地汚れは画像上の地肌部の汚れを目視で評価した。
表中記載の記号は、◎:大変良好、○:良好、△:使用可能 ×:不良 とした。
【0120】
(8)キャリア付着(ベタ部)
キャリア付着が発生すると、感光体ドラムや定着ローラーの傷の原因となり、画像品質の低下を招く。感光体上にキャリア付着が発生しても、一部のキャリアしか紙に転写しないため、以下の方法で評価した。
前述の現像条件(帯電電位(Vd):−600V、画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:−100V、現像バイアス:DC −500V)における、イマジオカラー4000のベタ画像(30mm×30mm)に付着したキャリアの個数を、感光体上でカウントしてベタキャリア付着の評価を行った。
表中記載の記号は、◎:大変良好、○:良好、△:使用可能、×:不良とした。
【0121】
(9)キャリア付着(エッジ)
キャリア付着が発生すると、感光体ドラムや定着ローラーの傷の原因となり、画像品質の低下を招く。感光体上にキャリア付着が発生しても、一部のキャリアしか紙に転写しないため、以下の方法で評価した。
帯電電位(Vd)を−600V、露光部電位-100V、現像バイアス(Vb)DC−400Vの現像条件で、即ち、地肌ポテンシャル200Vの条件で、感光体上の副走査方向に2ドットライン(100lpi/inch)の画像を形成した。
次に、感光体上に現像された2ドットラインを粘着テープ(面積100cm2)で転写し、その個数をカウントしてキャリア付着の評価を行った。
表中記載の記号は、◎:大変良好、○:良好、△:使用可能、×:不良(×は許容不可のレベル)とした。
【0122】
(10)環境ID変動
ΔID= 30℃90%と10℃15%のベタ部の画像濃度の差
0以上〜0.05未満 : ◎(大変良好)
0.05以上〜0.15未満 : ○(良好)
0.15以上〜0.25未満 : △(使用可能)
0.25以上 : ×(不良)
【0123】
(11)トナー飛散
10万枚ランニング後の現像装置周辺のトナの飛散状態を以下の基準で評価した。
表中記載の記号は、◎:大変良好、○:良好、△:使用可能、×:不良(×は許容不可のレベル)とした。
【0124】
(12)ゴースト画像
10万枚ランニング後画像サンプルを以下の基準で評価した。
表中記載の記号は、◎:大変良好、○:良好、△:使用可能、×:不良(×は許容不可のレベル)とした。
【符号の説明】
【0125】
11 セル
12a 電極
12b 電極
13 キャリア
20 感光体ドラム
21 トナー
23 キャリア
24a 駆動ローラ
24b 駆動ローラ
26 クリーニング前露光光源
32 像担持体帯電部材
33 像露光系
40 現像装置
41 現像スリーブ
42 現像剤収容部材
43 現像剤供給規制部材(ドクターブレード)
44 支持ケース
45 トナーホッパー
46 現像剤収容部
47 現像剤撹拌機構
48 トナーアジテータ
49 トナー補給機構
50 転写機構
60 クリーニング機構
61 クリーニングブレード
62 トナー回収室
64 ブラシ状クリーニング手段
70 除電ランプ
80 転写媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【特許文献1】特許3356948号公報
【特許文献2】特開2005−157002号公報
【特許文献3】特開平11−231652号公報
【特許文献4】特開平7−72733号公報
【特許文献5】特開平7−128983号公報
【特許文献6】特開平7−92813号公報
【特許文献7】特開平11−65247号公報
【特許文献8】特開2002−162788号公報
【特許文献9】特許4106347号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、キャリア粒子表面の芯材露出率E(%)が、0<E≦0.10であり、露出面積が0.10μm以上2.0μm以下である露出箇所が全露出箇所の95%以上であり、かつ、芯材露出箇所が100箇所以上であることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項2】
前記芯材粒子は、表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm未満である平滑部が20%未満であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項3】
前記芯材粒子は、表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm未満である平滑部が10%未満であることを特徴とする請求項2に記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項4】
前記被覆層は、導電性微粒子を含有するものであり、該導電性微粒子を芯材に対して3重量%以上8重量%以下含むものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項5】
該被覆層は、少なくとも下記一般式(1)で表されるモノマーA成分由来のA部位と下記一般式(2)で表されるモノマーB成分由来のB部位とを含む共重合体を、加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【化1】

【化2】

(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のアルキル基
は、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【請求項6】
前記共重合体は、下記一般式(3)で表される共重合体を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【化3】


(式中において、R1、m、R2、R3、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
R1:水素原子、またはメチル基
m :炭素原子数1〜8のアルキレン基
R2:炭素原子数1〜4のアルキル基
R3: 炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X:10〜40モル%
Y:10〜40モル%
Z:30〜80モル%
60モル%<Y+Z<90モル%
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のキャリアとトナーからなることを特徴とする静電潜像現像剤。
【請求項8】
前記トナーが、カラートナーであることを特徴とする請求項7に記載の静電潜像現像剤。
【請求項9】
静電潜像担持体、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項7又は8に記載の静電潜像現像剤を用いて現像する手段が少なくとも一体に支持されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
静電潜像を形成する静電潜像担持体と、形成された静電潜像を請求項7又は8に記載の静電潜像現像剤を用いてトナー像に現像する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−64820(P2013−64820A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202753(P2011−202753)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】