説明

非導電性針

【課題】被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサーとが一体となって構成される針一体型バイオセンサーの軽量化を可能にするとともに、そのバイオセンサー内での穿刺針の配置に特に制約のないものを提供する。
【解決手段】被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサーとが一体となって構成される針一体型バイオセンサーにおいて、穿刺針として非導電性針、好ましくは樹脂製の穿刺針を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針一体型バイオセンサーに関する。さらに詳しくは、皮膚を突き刺して血液を得るための穿刺針と、皮膚の表面に取り出された体液を採取し、分析するためのバイオセンサーとを一体化した構成を有する針一体型バイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、糖尿病患者自らが採血して血中のグルコース値である血糖値を測定する場合がある。この場合、患者は採血針を着脱するランセットと称される採血器具を用い、自分の指先や腕などに採血針を刺して採血し、採血した血液を血糖値分析計に移して血糖値を測定している。このような測定方式では、患者は血糖値分析器、ランセット、採血針および分析素子といった数点からなる測定器具の一式を携帯所持し、必要時にそれらを組み合わせて測定しなければならず、操作法も長い訓練を要し、確実な測定を患者自身で行うことができるようになるまでかなりの時間を要する。実際に、指先、前腕以外の部位(腹壁、耳たぶ等)での測定は、熟練者ですら困難である。また、近年においては、より痛みの少ない低侵襲検体供給のニーズから、検体量が1μl以下で測定可能なバイオセンサーが開発されており、このような極微量な場合、またバイオセンサーへの検体を正確に供給する作業は非常に困難になる。その結果、測定の失敗を招き、被測定者である患者は再度穿刺して、またバイオセンサーも交換し、測定をやり直さなければならないという不都合がある。
【特許文献1】特許第3,621,502号公報
【特許文献2】特公平8−20412号公報
【0003】
そこで、いくつかの針一体型バイオセンサーが考え出された。まず、特許文献3に示された針一体型バイオセンサーでは、穿刺針の駆動部を備えたペン型(2色ボールペン様)の測定装置の内部に、穿刺針とバイオセンサーがそれぞれ別の位置にセットされており、ペン様の測定装置の先端部を被検体の皮膚に当て、穿刺した後、バイオセンサーを先端部に露出させ、採血を行なうことで血糖測定が行なわれる。しかし、この方法では、針およびバイオセンサーを測定装置にそれぞれセットするという煩わしさは解消されていない。
【特許文献3】特開2000−217804号公報
【0004】
また、特許文献4で示された針一体型バイオセンサーでは、穿刺針を外部の駆動に委ねるものであり、穿刺針が細長い小片状のバイオセンサーの長手方向に沿って平行に移動する一体構造をとっている。しかし、このタイプでは、試料搬送路と穿刺針の通路を共有する空間全体に採血が送り込まれるために、必要以上の採血を要する。また、針一体型バイオセンサー全体の形状が左右対称であるため、穿刺駆動を備えた測定装置への挿入を使用者が誤る恐れもある。
【特許文献4】再公表2002−056769号公報
【0005】
このように、従来の針一体型バイオセンサーでは、平面基板上へ電極系の形成がなされるために、構造が平面的であり、この平面を試料液で満たす必要から、結果として試料体積が多くなるといった問題点があった。
【0006】
かかる問題点に対して、発明者らは2枚の電気絶縁性基板に挟まれた空間に、電極およびスペーサーが設けられたバイオセンサーと、該バイオセンサー内に配置された被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針とが穿刺針支持体を介して一体となって構成されたバイオセンサーにおいて、穿刺針が、一方の基板に形成された電極の長軸方向に直交する態様で配置された針一体型バイオセンサーを提案している(特願2005-185989)。
【0007】
このバイオセンサーによれば、穿刺後の採血量を抑えるといったすぐれた効果を有してはいるものの、穿刺針として金属製のものが用いられているため、電極と直交している穿刺針が電極表面と接触することは絶対に避けなければならないといった制約があった。
【0008】
また、さらなる小型化・軽量化が求められている針一体型バイオセンサーに用いられる穿刺針として、より直径の小さい、すなわち細い穿刺針を用いることが考えられるが、かかる穿刺針は強度の点で問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサーとが一体となって構成される針一体型バイオセンサーの軽量化を可能にするとともに、そのバイオセンサー内での穿刺針の配置に特に制約のないものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる本発明の目的は、被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサーとが一体となって構成される針一体型バイオセンサーにおいて、穿刺針として非導電性針、好ましくは樹脂製の穿刺針を用いることによって達成される。
【発明の効果】
【0011】
穿刺針として樹脂製などの非導電性のものが用いられた針一体型バイオセンサーは、例えば金属製の穿刺針が用いられていた従来のものと比べて、軽量化のみを目的として針の直径を小さくする必要がないため、針の強度を維持したまま針一体型バイオセンサー本体の軽量化を達成せしめるといったすぐれた効果を奏する。また、各電極に直交する態様で穿刺針を配置したような針一体型バイオセンサーにおいても、穿刺針のバイオセンサー内での配置に特段の制約を必要としない、すなわち電極表面に穿刺針が接触するような態様での配置をも可能とし、穿刺後に必要以上の採血を行うことなく、効率的な測定を可能とするといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針としては、非導電性、例えば樹脂製のものが用いられる。穿刺針として非導電性のものが用いられた針一体型バイオセンサーは、例えば金属製の穿刺針が用いられていた従来のものと比べて、軽量化のみを目的として針の直径を小さくする必要がないため、針の強度を維持したまま針一体型バイオセンサー本体の軽量化することが可能となる。また、穿刺針としては針中心部に空洞を有する中空のものあるいは針中心部に空洞を有さない棒状のもののいずれも用いられるが、測定試料液の低減といった観点からは、棒状のものが用いられる。
【0013】
樹脂製の穿刺針としては、環状オレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルラクトン、液晶ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂の熱硬化性樹脂、ポリカーボネート、環状オレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸などの生分解性樹脂などからなる穿刺針が用いられる。
【0014】
かかる穿刺針は、バイオセンサーと一体となって針一体型バイオセンサーを構成する。穿刺針は、バイオセンサー内外を問わず任意の位置に配置することができ、電極表面に接触するような態様で配置することもできる。また、穿刺針の配置態様も採血時にバイオセンサー内を移動する可動状態あるいはバイオセンサー内に接着剤等を用いて接着した固定状態など任意の態様で配置することができる。電極表面に接触するような態様で固定配置した場合には、測定試料をセンサー内へ導入する試料搬送路に沿って、穿刺針を配置した場合であっても、穿刺針と電極表面との接触を避けるための空間を必要としないため、測定に最低限必要な測定試料の採取により、測定が可能となるといった効果を奏する。この場合、穿刺針と各電極とが直交する状態で配置されることで、穿刺針を電極の長軸方向と平行に配置した場合と比べて採血量をさらに抑えることが可能となる。
【0015】
バイオセンサーとしては、測定試料液中の測定物質を検出、定量可能なものであれば特に限定されないが、例えば2枚の電気絶縁性基板に挟まれた空間に、電極およびスペーサーが設けられたバイオセンサーなどが挙げられる。
【0016】
基板としては、電気絶縁性のものであれば足り、例えばプラスチック、生分解性材料、紙などが用いられ、好ましくはポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0017】
電極は、基板上にスクリーン印刷法、蒸着法、スパッタリング法、箔貼り付け法、メッキ法などにより形成され、その材料としては、カーボン、銀、銀/塩化銀、白金、金、ニッケル、銅、パラジウム、チタン、イリジウム、鉛、酸化錫、白金黒などが挙げられる。ここで、カーボンとしては、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、フラーレン、デンドリマーもしくはそれらの誘導体を用いることができる。
【0018】
電極は、作用極と対極で形成される2極法または作用極と対極、参照極で形成される3極法、あるいはそれ以上の極数の電極法であってもよい。ここで、3極法を採用すると、測定対象物質の電気化学測定の他に、搬送路内に導入される採血の移動速度の計測ができ、これによりヘマトクリット値が測定できる。また、2組以上の電極系で構成されていても良い。これらの電極の配置は、それぞれの電極が接触しない態様であれば特に制限されず、例えば1枚の基板上にまとめて、あるいは2枚の基板に個々に形成される。
【0019】
電極が形成された基板上には、試薬層(電極反応部)を形成することができる。試薬層はスクリーン印刷法またはデスペンサー法により形成され、この試薬層の電極表面または基板表面への固定化は、乾燥を伴う吸着法または共有結合法により行うことができる。バイオセンサーの電極反応部に配置する試薬としては、例えば血糖値測定用に構成する場合、酸化酵素であるグルコースオキシターゼおよびメディエータとしてのフェリシアン化カリウムを含むものが挙げられる。試薬が血液によって溶解されると、酵素反応が開始される結果、反応層に共存させているフェリシアン化カリウムが還元され、還元型の電子伝達体であるフェロシアン化カリウムが蓄積される。その量は、基質濃度、すなわち血液中のグルコース濃度に比例する。一定時間蓄積された還元型の電子伝達体は、電気化学反応により酸化される。後述する測定装置本体内の電子回路は、このとき測定される陽極電流から、グルコース濃度(血糖値)を演算・決定し、本体表面に配置された表示部に表示する。
【0020】
また、採血口の周辺および電極あるいは試薬層(電極反応部)表面に界面活性剤、脂質を塗布することができる。界面活性剤や脂質の塗布により、試料の移動を円滑にさせることが可能となる。
【0021】
ここで、試料搬送路内への試薬層、界面活性剤あるいは脂質の塗布により、そのバイオセンサー内部に穿刺針先端部が収まる場合にあっては、該穿刺針先端部が汚染される可能性がある。このような汚染を防ぐためには、穿刺針先端の周囲にこれらの試薬を塗布しないようにすることが好ましい。
【0022】
以上の採血が満たされる電極上に試薬層が設けられたバイオセンサーは、採血口から送り込まれる採血が電極上の試薬層と接触することにより、採血と試薬とが反応する。この反応は、電極における電気的な変化としてモニタリングされる。
【0023】
さらに、バイオセンサーは電極がレジスト層により規定されていてもよく、このレジスト層もスクリーン印刷などで容易に形成できる。レジストは、基板と反応あるいは溶解しないものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線硬化型のビニル・アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂などが挙げられる。レジストの使用の目的は主に電極パターンを明確にし、上記の電極面積の規定をはっきりさせる以外にも、試薬層が存在しない試料搬送路を絶縁するなどの目的がある。そのため、レジスト層は後述する接着剤層と同様のパターンを形成しても、形成しなくてもどちらでもよい。後者の場合、レジスト層は絶縁のために電極基板上に形成させるのが好ましい。さらに、このレジスト層は本発明の針一体型バイオセンサーの穿刺針が収まっている試料搬送路内における電極よりも厚く設けることで、バイオセンサー内を可動する穿刺針と試薬層が形成された電極との接触を抑えることができる。かかるレジスト層も、スクリーン印刷法により形成することが可能であり、例えば上記のいずれかの材料により約5〜500μm、好ましくは約10〜100μmの厚さで形成されるレジスト層はスペーサーとしても作用する。
【0024】
2枚の基板は、アクリル樹脂系接着剤などの接着剤を介して接着されてバイオセンサーを構成する。かかる接着剤層も、スクリーン印刷法により形成することが可能であり、約5〜500μm、好ましくは約10〜100μmの厚さで形成され、かかる接着剤層はレジスト層同様スペーサーとしても作用する。なお、接着剤層中に上記試薬を含有させることもできる。
【0025】
本発明の針一体型バイオセンサーは穿刺駆動を備えた測定装置により穿刺・採血・測定の一連の操作が成されることが望ましい。その場合、例えば穿刺駆動については針が被検体の皮膚を突き破る機構と、穿刺直後、速やかに元の位置に戻る機構を備えていることが望ましい。
【0026】
針一体型バイオセンサー用測定装置としては、針一体型バイオセンサーを使用した測定が繰り返し確実に行なえるための操作性および耐久性が確保され、かつ持ち運びが容易であるものが用いられ、測定装置は、下部にある導入部に針一体型バイオセンサーを穿刺針が下を向くように挿入させ、バイオセンサーの端子が測定装置のコネクターと接続することで測定が可能な状態となり、次に、穿刺駆動を針一体型バイオセンサー内部に与えるために引き金を引くことで測定の準備が完了し、あとは穿刺開始ボタンのスイッチを押すことで穿刺・採血・測定の順序で自動的に作動し、最終的に測定結果が導かれる仕組みのものが用いられる。
【0027】
測定装置の構造上の特徴の一例を、さらに詳しく述べる。本測定装置は穿刺針駆動部と測定装置部が一体化しており、穿刺針駆動部は引き金部、穿刺開始ボタン部、バネなどの弾性体による駆動部から構成される。一方、測定装置部については、センサー導入部、コネクター、電気化学測定用回路、メモリ部、操作パネル、バイオセンサーの電極における電気的な値を計測する計測部および計測部における計測値を表示する表示部を基本構成としており、さらに、無線手段として電波、例えばブルートゥース(登録商標)を搭載することもできる。かかるスライド構造により、針一体型バイオセンサーを確実にホールドした状態を保ったまま穿刺駆動を受けるので、測定装置全体としての強度を高めることができる。測定装置には、さらに針一体型バイオセンサーの穿刺針を中心線とした左右非対称構造を測定用端子の突出部で認識できる機構を備えることができる。
【0028】
測定装置の穿刺駆動は、針一体型バイオセンサー上部を鉛直方向にたたいた後、速やかに戻る機構がよく、さらに被検体の皮膚を穿刺する深度が調整可能な機構を有することが好ましい。
【0029】
測定装置には糖尿病疾患による視覚障害に対応した音声ガイド機能及び音声認識機能、電波時計の内臓による測定データ管理機能、測定データなどの医療機関などへの通信機能、充電機能などを併せ持たせることができる。
【0030】
測定装置の計測部における計測方法としては、特に限定はしないがポテンシャルステップクロノアンペロメトリー法、クーロメトリー法またはサイクリックボルタンメトリー法などを用いることができる。
【0031】
以上より、本発明の針一体型バイオセンサーは、使用者を限定することのない、すなわち、ユニバーサルな企画に対応し得るものとなっている。
【実施例】
【0032】
本発明による実施態様の針一体型バイオセンサーについて、それぞれ図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に制限されるものではない。
【0033】
図1は、本発明の針一体型バイオセンサーの一組立例を示している。図1a)〜c)は針一体型バイオセンサーの製作例であり、i)は針一体型バイオセンサーの製作に要する構成材料、ii) 及びiii)では、その成形体を示している。図1a)にはバイオセンサーの基板1、1の一方の表面に導電体7、7が形成されているものとレジスト層6が示されている。該レジスト層6はスペーサー2の役割も果たすほか、電極面積を規定し、また、電極表面に試薬層が設けられている場合には、これと可動式の穿刺針との接触を防ぐためにも設けられる。従って該レジスト6層には貫通穴4が設けられている。ここで、基板1は角を丸めることで安全に使用できるものとなっている。図1b)はレジスト層の上に接着剤層5が形成される様子を示している。ここで、接着剤層5も基板1、1の板部材間に設けられるので、レジスト層6と同様、スペーサー2の役割を果たす。また、図1b)ii)ではレジスト層6と接着剤層5とで面積が規定された電極10およびその電極反応部13が示されている。図1c)i)には穿刺針部14の構成が示されており、穿刺針部14は穿刺針20とそれを支える支持体19および外部駆動の接続部17から構成され、外部駆動接続部17が穿刺駆動を備えた測定装置に接続されることで測定装置からの穿刺駆動を得られる仕組みとなっている。また、図1c)には穿刺針部14が試料搬送路8に沿って、電極と直交して配置されている様子がわかる。この図にも示されるように、可動式の穿刺針部14は電極表面10との接触をレジスト層6の形成により避けられる構造を採っている。したがって、試薬層13が電極10の表面に形成されていても、該試薬層13と穿刺針部14との接触を防ぐことができるため、結果として可動式の穿刺針20の試薬による汚染を防ぐことができる。図1c)iii)にはこのようにして形成された針一体型バイオセンサー3が示されている。
【0034】
図2は図1で示した針一体型バイオセンサー3の断面図を示している。図2b)は図2a)で示したA-A' 断面図を示している。この図が示すように、バイオセンサーの基板1上に設けられたパターン表面に穿刺針14が配置されている。図2c)は図2a)で示したB-B'断面図を示している。2枚の基板1、1の中心部に穿刺針14が配置されている。これらの図が示すように、本発明の針一体型バイオセンサー3は1枚の基板1の内側に形成された電極10、10の長軸方向に対して、穿刺針14が直交して配置されることで端子11を穿刺針14の軌道から外すことができる。また、端子11が穿刺針14の軌道から外れた位置に配置されるため、針一体型バイオセンサー3の形状が穿刺針を中心線とした左右非対称となり、使用者にとってはそれが目印となって測定装置への挿入を左右誤らずにすみ、測定装置も本発明の針一体型バイオセンサー3の端子11の位置を特定するための機構を備えることができる。また、電極の幅及び電極間距離を小さくすることで、その部分の基板の幅も小さくなるので、試料液量の少量化を図ることができる。
【0035】
図3は図1および図2で示した針一体型バイオセンサー3の使用例を示している。図3ではa)〜d)で各工程を示し、i)とii)ではそのときの針一体型バイオセンサー3の状態をi)では構成図、ii)では図2a)で示したA-A'断面図で示している。図3a)は穿刺駆動つきの測定装置に接続された針一体型バイオセンサー3の使用前の状態をしめす。このとき、被検体としての皮膚が、針一体型バイオセンサー3の穿刺採血口12に密着している。図3b)は穿刺の状態が示されており、図示されてはいないが、穿刺針20はセンサーから突出して皮膚を突き刺している。図3c)は穿刺後に穿刺針部14が元の位置に戻った状態を示している。図3d)はその後で、穿刺した皮膚からの採血24を毛細管現象によって吸引している状態を示している。
【0036】
図4は、本発明の針一体型バイオセンサーの他の組立例を示している。図1と異なり、電極上にはレジスト層が設けられず、またバイオセンサー内に接着剤層5により穿刺針20が固定されている。従って、接着剤層が、電極面積を規定し、またスペーサー2としての役割を担っている。このように、バイオセンサー内部に穿刺針が先端部分の除いて固定されているバイオセンサーでは、電極上に試薬層を形成しても、該試薬層により穿刺針先端が汚染されることがないため、その配置に特段の配慮を行うことがなく、また穿刺針が非導電性であるため、試薬層が形成された電極上に接触するような態様でバイオセンサー内部に固定することができる。なおこの図では、穿刺針20が穿刺針支持体14を装着したうえで、固定されているが、穿刺針20は穿刺針支持体14を装着せずにそのまま固定することもできる。そして、図5b)およびc)の断面図に示される如く、穿刺針が電極表面上に接触した状態で配置されることにより、電極反応部の体積を、測定に必要な最低限の容積に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る針一体型バイオセンサーの一組立例を示す図である。
【図2】本発明に係る針一体型バイオセンサーの一構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る針一体型バイオセンサーの一使用例を示す図である。
【図4】本発明に係る針一体型バイオセンサーの他の組立例を示す図である。
【図5】本発明に係る針一体型バイオセンサーの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 基板
2 スペーサー
3 針一体型バイオセンサー
4 貫通穴
5 接着剤層
6 レジスト層
7 導電体
8 試料搬送路・穿刺針通路
10 電極
11 端子
12 穿刺採血口
13 電極反応部(試薬層)
14 穿刺針部
17 外部駆動接続部
19 穿刺針支持体
20 穿刺針
24 採血

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサーとが一体となって構成される針一体型バイオセンサーにおいて、穿刺針として用いられる非導電性針。
【請求項2】
非導電性針が、樹脂製である請求項1記載の非導電性針。
【請求項3】
非導電性針が、棒状である請求項1記載の非導電性針。
【請求項4】
穿刺針の少なくとも一部が、バイオセンサー内部に形成された電極と接触して配置される針一体型バイオセンサーの穿刺針として用いられる請求項1記載の非導電性針。
【請求項5】
穿刺針の穿刺用先端部以外が、針一体型バイオセンサー内に固定されている針一体型バイオセンサーの穿刺針として用いられる請求項1記載の非導電性針。
【請求項6】
穿刺針がバイオセンサー内部に形成された各電極と直交して固定されている針一体型バイオセンサーの穿刺針として用いられる請求項5記載の非導電性針。
【請求項7】
穿刺針の固定が、接着剤およびレジストの少なくとも一種により行われる針一体型バイオセンサーの穿刺針として用いられる請求項5記載の非導電性針。
【請求項8】
電極上および/またはその周辺に試薬層が設けられる針一体型バイオセンサーの穿刺針として用いられる請求項5記載の非導電性針。
【請求項9】
穿刺針先端部を保護するためのキャップが設けられた針一体型バイオセンサーの穿刺針として用いられる請求項5記載の非導電性針。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の非導電性針を穿刺針として用いた針一体型バイオセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−209373(P2007−209373A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29172(P2006−29172)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】