説明

非常停止システム

【課題】 地上装置を設置することなく列車運行の安全性を低コストで向上させること。
【解決手段】 制限速度変化パターンと照らし合わせることによって自車両の制限速度超過を監視し、自車両の走行速度が制限速度を超過した場合に警告警報を出力する。そして、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合に、自動的に非常ブレーキを作動する。さらに、危険速度変化パターンと照らし合わせることによって自車両の危険速度超過を監視し、自車両の走行速度が危険速度を超過した場合には、警告期間の経過有無に関わらず即時に非常ブレーキを作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道を走行する車両に搭載されて異常走行時に当該車両を非常停止させる非常停止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の衝突事故を防止するための保安装置が種々開発・実用化されている。例えば、信号機の停止現示を警告し、非常ブレーキを作動して停止信号の冒進を防止する自動列車停止装置(ATS装置(ATS:Automatic Train Stop))や、レールを介して地上から伝送されるATC信号に従って制限速度を判定し、走行速度が制限速度を超過した場合にブレーキを作動して車両の速度を制御する自動列車制御装置(ATC装置(ATC:Automatic Train Control))等がある。
【0003】
また、ATS−P型と呼ばれるATS装置のように、軌道回路や軌道に沿って敷設される地上子等から伝送されるATS信号に基づいて速度照査パターンを生成する機能を有し、当該速度照査パターンが示す速度を走行速度が超過した場合に、自動的にブレーキを作動して車両を減速又は停止させるものもある。
【0004】
さらには、前述のATC装置等の保安装置によって制限速度以下の走行速度を維持しながら、制限速度以下の許容速度領域を最大限活用することによって遅延発生時のダイヤ回復等を支援するといった装置もある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−238309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したATC装置やATS−P型のATS装置等の保安装置は、自車両の制限速度超過を監視するため、停止信号の冒進を防止する従来のATS装置と比較して安全性が高い。しかしながらこの種の保安装置では、ATC信号やATS信号を車上側に伝送する装置を地上側に設置する必要があるため、閑散線区等においては、導入に係る費用の負担が問題となっている。
そこで本発明は、地上装置を設置することなく列車運行の安全性を低コストで向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための第1の発明の非常停止システムは、
軌道を走行する車両に搭載されて異常走行時に当該車両を非常停止させる非常停止システムであって、
前記車両が走行する軌道に沿った制限速度変化パターンを記憶する制限速度パターン記憶手段(例えば、図3に示す制限速度変化パターン661)と、
前記車両の走行位置及び走行速度を計測する走行状況計測手段(例えば、図3に示す走行状況計測部30)と、
前記制限速度パターン記憶手段に記憶された制限速度変化パターンに従って、前記計測された車両の走行速度が前記計測された走行位置における制限速度を超過したか否かを判定し、制限速度を超過した場合であって、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合に、前記車両の非常制動制御を行って前記車両を停止させる非常制動制御手段(例えば、図3に示すCPU40;図9に示すステップc10(YES)〜c90)と、
を備えるものである。
【0007】
この第1の発明によれば、車両の走行位置及び走行速度を計測し、制限速度変化パターンと照らし合わせることによって走行速度の制限速度超過を監視することができる。そして、制限速度を超過した場合であって、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合に、非常制動制御を行って車両を停止させることができる。これによれば、地上設備を導入することなく車上側で走行速度の制限速度超過を監視し、非常制動制御を適切に行うことができるので、列車運行の安全性を低コストで向上させることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の非常停止システムにおいて、
予め定められた速度制限地点に非常制動で停止するための臨界速度と臨界位置との関係から定められ、前記制限速度変化パターンの速度を超える速度を危険速度とする危険速度変化パターンを記憶する危険速度パターン記憶手段(例えば、図3に示す危険速度変化パターン663)を更に備え、
前記非常制動制御手段は、前記危険速度パターン記憶手段に記憶された危険速度変化パターンに従って、前記計測された車両の走行速度が前記計測された走行位置における危険速度を超過したか否かを判定し、危険速度を超過したと判定した場合は、前記所定の警告期間の経過有無に関わらず即時に非常制動制御を行うものである。
【0009】
この第2の発明によれば、速度制限地点で停止するための危険速度パターンと照らし合わせることによって、走行速度の危険速度超過を監視することができる。そして、危険速度を超過したと判定した場合は、警告期間の経過有無に関わらず即時に非常制動制御を行うことができるので、列車運行の安全性をより一層向上させることができる。停止位置の手前に設定される速度制限地点で確実に停止することができるので、停車駅通過等の運転ミスを防止することができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明の非常停止システムにおいて、
前記計測された走行位置が所定の制動制御区間内か否かを判定する判定手段と、
前記制限速度パターン記憶手段に記憶された制限速度変化パターンに従って、前記計測された車両の走行速度が前記計測された走行位置における制限速度を超過したか否かを判定し、制限速度を超過した場合であって、前記判定手段により制動制御区間内と判定された場合に、前記車両の制動制御を行って前記車両の走行速度を前記計測された走行位置における制限速度以下に減速させる制動制御手段と、
を更に備えるものである。
【0011】
ここで、制動制御区間とは、例えば、カーブや勾配、ポイントといった速度制限区間や、速度制限区間の入口付近、軌道に沿って設置される踏切や橋梁等の設置位置の手前側等、適宜設定される。
この第3の発明によれば、制動制御区間内を走行中に制限速度を超過した場合には、制動制御を行って車両の走行速度を制限速度以下に減速させることができる。これによれば、地上設備を導入することなく車上側で走行速度の制限速度超過を監視し、所定の制動制御区間内の場合に自動的に制動制御を行うことができるので、列車運行の安全性を低コストで向上させることができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明の非常停止システムにおいて、
前記制限速度変化パターンは、予め設定された軌道上の基準位置を起点としたキロ程変化に応じた制限速度の変化パターンであり、
前記走行状況計測手段は、前記計測された前記車両の走行位置をキロ程に変換するキロ程変換手段(例えば、図3に示すCPU40;図8に示すキロ程変換処理)を有するものである。
【0013】
鉄道施設は、予め設定された軌道上の基準位置を起点としたキロ程で管理・運営されているため、走行位置のキロ程が重要である。この第4の発明によれば、計測された車両の走行位置をキロ程に変換することができ、キロ程変化に応じた制限速度パターンと照らし合わせることによって制限速度超過を監視することができる。
【0014】
第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明の非常停止システムにおいて、
GPS信号(GPS:Global Positioning System)を利用して前記車両の走行位置を測位する測位手段(例えば、図3に示すGPS測位部20)を更に備え、
前記走行状況計測手段は、前記計測された前記車両の走行位置を、前記測位手段により測位された走行位置に基づいて補正する補正手段(例えば、図3に示すCPU40;図7に示すステップa20(YES)〜a50)を有するものである。
【0015】
この第5の発明によれば、GPS信号を利用して測位された走行位置に基づいて車両の走行位置を補正することができ、より正確な車両の走行位置を求めることができる。
【0016】
第6の発明は、第1〜第5の何れかの発明の非常停止システムにおいて、
前記非常制動制御手段により前記車両の走行速度が制限速度を超過したと判定された場合に、当該制限速度超過を報知する報知手段(例えば、図3に示すCPU40,走行状況報知部50;図9に示すステップc20)を更に備えるものである。
【0017】
この第6の発明によれば、例えば音出力や画像表示、ランプの点灯等によって走行速度の制限速度超過を報知し、運転士の注意を喚起することができる。
【0018】
第7の発明は、第1〜第6の何れかの発明の非常停止システムにおいて、
前記制限速度パターン記憶手段に記憶されている制限速度変化パターンとともに、前記走行状況計測手段により計測された前記車両の走行位置及び走行速度の変化を随時更新表示する制御を行う表示制御手段(例えば、図3に示すCPU40,表示部51;図10に示すステップd10)を更に備えるものである。
【0019】
この第7の発明によれば、制限速度変化パターンとともに、計測される車両の走行位置及び走行速度の変化を随時更新表示する制御を行うことができる。したがって、車両の走行状況をナビゲーションし、運転士に報知することができる。
【0020】
第8の発明は、第7の発明の非常停止システムにおいて、
軌道上の速度制限区間の情報を記憶する速度制限区間記憶手段(例えば、図5に示す線路データ651)を更に備え、
前記表示制御手段は、前記速度制限区間記憶手段に記憶された速度制限区間を照査して、前記車両の走行前方所定距離内の速度制限区間に基づき、当該速度制限区間を走行する際の制限速度を表示する制御を行う区間制限速度表示制御手段(例えば、図3に示すCPU40,表示部51;図10に示すステップd20〜d60)を有するものである。
【0021】
この第8の発明によれば、走行中の車両の走行前方所定距離内の速度制限区間における速度制限を表示する制御を行い、運転士の注意を喚起することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両の走行位置及び走行速度を計測し、制限速度変化パターンと照らし合わせることによって走行速度の制限速度超過を監視することができる。そして、制限速度を超過した場合であって、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合に、非常制動制御を行って車両を停止させることができる。これによれば、地上設備を導入することなく車上側で走行速度の制限速度超過を監視し、非常制動制御を適切に行うことができるので、列車運行の安全性を低コストで向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明を適用した非常停止システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の非常停止システムは、例えば停止信号の冒進を防止する従来のATS装置と併用されて運転士のブレーキ操作をサポートするものであり、車両に搭載される。詳細には、非常停止システムは、車両の走行速度を監視し、直線区間等で制限速度を超過したまま減速されない場合や危険速度を超過した場合に非常ブレーキを作動するものである。以下、所定の線区内の始発から終着までを対象駅間とし、車両が当該対象駅間を走行する場合を例に挙げて説明する。
【0025】
[概要]
先ず、制限速度変化パターン及び危険速度変化パターンについて説明する。
【0026】
制限速度変化パターンは、始発から終着までの対象駅間における制限速度を、所定の起点(例えば始発位置とする)を基準とした当該起点からの軌道に沿った距離を表す「キロ程」と対応付けて連続的に定義したものであり、直線区間における制限速度(最高速度)、カーブや勾配、ポイント、駅の近傍といった速度制限区間における制限速度に従って予め作成される。
【0027】
一方危険速度変化パターンは、制限速度を超える速度であって、速度制限区間の始点位置に非常制動で停止するための臨界速度と臨界位置との関係から定められた危険速度をキロ程と対応付けて連続的に定義したものであり、制限速度変化パターンをもとに予め作成される。
【0028】
尚、この制限速度変化パターン、及び当該制限速度変化パターンをもとに作成される危険速度変化パターンは、性能(車種)とダイヤ(停車駅)によって異なる曲線を描く。以下では、制限速度と危険速度との間の速度域を「警告出力エリア」と呼び、危険速度以上の速度域を「非常制動制御エリア」と呼ぶ。
【0029】
図1は、横軸をキロ程、縦軸を速度とし、制限速度変化パターンを実線、危険速度変化パターンを一点鎖線でグラフ化した図である。また同図において、二点鎖線で車両の正常な運転曲線例を併せて示している。
【0030】
本実施形態では、非常停止システムは、制限速度変化パターンと照らし合わせることによって自車両の制限速度超過を監視し、自車両の走行速度が制限速度を超過した場合(すなわち、警告出力エリア内の場合)に警告警報の出力を開始する。そして、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間(例えば、5秒間)の間継続した場合に、自動的に非常ブレーキを作動する。さらに、危険速度変化パターンと照らし合わせることによって自車両の危険速度超過を監視し、自車両の走行速度が危険速度を超過した場合(すなわち、非常制動制御エリア内の場合)には、前述の警告期間の経過有無に関わらず即時に非常ブレーキを作動する。
【0031】
図2を参照して具体的に説明する。図2(a)〜(c)は、それぞれ実線で示す制限速度変化パターン及び一点鎖線で示す危険速度変化パターンとともに、二点鎖線により車両の実運転を表した運転曲線例を示している。
【0032】
例えば、図2(a)に示すように、走行速度が制限速度を超過すると(地点P11)、警告モードに移行して当該時点からの経過時間の計時が開始される。そして、所定の警告期間が経過するまでの間に走行速度が制限速度以下に減速されたならば(地点P13)、警告モードが解除される。警告モード中は、音出力、画像表示、及びランプの点灯が制御されて制限速度超過が報知される。
【0033】
また、走行速度が制限速度を超過し(地点P15)、当該制限速度を超過した状態が警告期間の間継続したならば(地点P17)、非常ブレーキが作動されて車両が非常停止される。
【0034】
一方、図2(b)に示すように、走行速度が制限速度を超過すると(地点P21)、前述のように警告モードに移行して当該時点からの経過時間の計時が開始されるが、走行速度が危険速度を超過したならば(地点P23)、警告期間の経過有無に関わらず即時に非常ブレーキが作動されて車両が非常停止される。
【0035】
同様に、図2(c)に示すように、速度制限区間の入り口である速度制限地点P31に接近し、走行速度が正常に減速されずに危険速度を超過した場合においても(地点P33)、警告期間の経過有無に関わらず即時に非常ブレーキが作動されて車両が非常停止される。
【0036】
このように、制限速度を超過したまま減速されない場合や危険速度を超過した場合等の運転士の運転をサポートすることができる。そして、当該速度制限地点で自車両を確実に停止させることができるので、制限速度超過による車両の衝突事故や脱線事故等を防止し、列車運行の安全性を高めることが可能となる。
【0037】
[機能構成]
図3は、非常停止システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、非常停止システム1は、入力部10、GPS測位部20、走行状況計測部30、CPU40、走行状況報知部50、記憶部60の各機能部を備えて構成されており、例えばコンピュータシステムを利用してシステムが構築される。
【0038】
入力部10は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ダイヤル及び各種スイッチ等によって実現され、操作入力に応じた操作信号をCPU40に出力する。
【0039】
GPS測位部20は、GPS衛星からの電波を受信するGPSアンテナ等を備えて構成され、GPSアンテナで受信した電波から自車両の絶対位置(緯度・経度によって定まる座標)を測位する。具体的には、例えばGPS衛星からの電波を受信し易い位置等、適宜設定されるGPS測位ポイントにおいて、自車両の絶対位置を測位する。
【0040】
走行状況計測部30は、自車両の相対的な位置変化を計測するためのものであり、車輪の回転に応じてパルスを発生させる速度発電機31と、角速度を検出するジャイロ33とを備えて構成される。走行状況計測部30は、パルス信号に基づいて自車両の移動速度及び移動量を算出するとともに、角速度信号に基づいて自車両の移動方位を算出して、これらをCPU40に出力する。
【0041】
本実施形態では、GPS測位部20により測位される車両の絶対位置と、走行状況計測部30により計測される自車両の位置変化とを組み合わせて、車両の走行位置の算出精度を向上させている。
【0042】
CPU40は、記憶部60に格納されているプログラム及びデータに従って各種の演算処理を実行し、各機能部への指示やデータの転送等を行って非常停止システム1を統括的に制御する。
【0043】
走行状況報知部50は、自車両の走行状況を報知するためのものであり、表示部51と、表示灯53と、音出力部55とを備えて構成される。
【0044】
表示部51は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やELD(Electronic Luminescent Display)等により構成され、画面表示によって制限速度超過や危険速度超過の報知、走行状況のナビゲーション表示等を行う。
表示灯53は、LED等で構成され、点灯表示によって制限速度超過や危険速度超過の報知を行う。
音出力部55は、スピーカ等で構成され、警報音の音出力によって制限速度超過や危険速度超過の報知を行う。
【0045】
記憶部60は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、或いは非常停止システム1に内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスクや、CD−ROM等の情報記憶媒体及びその読取装置等で構成され、非常停止システム1の動作に係るプログラムや当該プログラムによる処理結果等のデータを記憶する。
【0046】
特に、本実施形態を実現するため、自車両の走行位置を算出する機能を実現させるための走行位置算出プログラム610と、走行速度の制限速度超過を監視して非常制動制御を行う機能を実現させるための走行速度監視プログラム620と、走行状況ナビゲーションを表示制御する機能を実現させるための走行状況ナビゲーションプログラム630とが格納され、走行位置算出プログラム610は、算出した走行位置をキロ程に変換する機能を実現させるためのキロ程変換プログラム611を含む。
【0047】
また記憶部60には、データとして、キロ程管理DB640と、軌道情報650と、制限速度情報660とが格納される。
【0048】
キロ程管理DB640は、走行線区内のキロ程とその絶対位置(緯度・経度)との対応関係を定義したデータベースである。図4は、キロ程管理DB640のデータ構成例を示す図である。本実施形態では、キロ程管理DB640は、インデックスと対応付けて、キロ程とその絶対位置(緯度・経度)とを格納する。尚、インデックスは、始発位置から順に終着位置まで走行線区の軌道に沿って単位距離間隔(例えば1m間隔)で割り振られる通し番号である。キロ程は、一部区間で値が不連続であったり重複していたりするため、始発位置から所望のキロ程までの実際の距離(以下、「起算距離」という。)は、このインデックスと単位距離間隔とから算出される。
【0049】
軌道情報650は、線路データ651と、地上設備データ653とを含む。
【0050】
線路データ651は、走行線区内のカーブや勾配、ポイント、停車駅の近傍といった速度制限区間の情報を記憶する。図5は、線路データ651のデータ構成例を示す図である。図5に示すように、線路データ651には、各種速度制限区間の始点及び終点に相当するキロ程と、その絶対位置(緯度・経度)とが定義される。尚図示しないが、カーブ区間における曲率、勾配区間における勾配の角度等の情報を適宜設定することとしてもよい。
【0051】
地上設備データ653は、軌道に沿って設置される駅、踏切、橋梁等の他、信号機、地上子、曲線標や勾配標、距離標、速度制限標識等の標識といった運行管理用の設備等、鉄道施設内の地上設備の設置位置を記憶する。図6は、地上設備データ653のデータ構成例を示す図である。図6に示すように、地上設備データ653には、鉄道施設内の地上設備の設置位置に相当するキロ程と、その絶対位置(緯度・経度)とが定義される。
【0052】
制限速度情報660は、制限速度変化パターン661と、危険速度変化パターン663とを含み、上述したようにそれぞれキロ程変化に応じた速度の変化パターンが定義される。
【0053】
さらに記憶部60には、自車両が始発から終着まで走行する間に適宜更新されるデータとして、走行状況670と、自車両の車輪径680とが格納される。
【0054】
走行状況670は、走行中の自車両の走行距離671、走行速度673、走行位置675、及びキロ程677を含む。
走行距離671は、走行状況計測部30によって算出される移動量を積算して記憶する。
走行速度673は、走行状況計測部30によって算出される移動速度を更新記憶する。
走行位置675は、走行状況計測部30から入力される自車両の移動量及び移動方位と、車輪径680とをもとに予測される自車両の絶対位置(緯度・経度)を更新記憶する。また、走行位置675は、当該走行位置675がGPS測位ポイントの場合や、車輪の空転・滑走が検出された場合において、GPS信号を利用して測位された自車両の絶対位置(緯度・経度)によって補正される。
キロ程677は、現在の走行位置675におけるキロ程を更新記憶する。
また車輪径680は、前述のように、GPS信号を利用して測位された車両の絶対位置によって走行位置675を補正した際の補正量に基づいて補正される。これにより、磨耗による車輪径の誤差を補正し、走行位置675の算出精度を向上させる。
【0055】
[処理の流れ]
次に、図7〜図10を参照して、本実施形態における処理の流れを説明する。本実施形態では、非常停止システム1は、自車両が始発から終着まで走行する間、走行位置算出処理、走行速度監視処理、及び走行状況ナビゲーション処理の各処理を所定の時間間隔毎に繰り返し実行する。以下、これら各処理の具体的な流れについて順に説明する。
【0056】
(走行位置算出処理)
先ず、図7を参照して、走行位置算出処理の流れについて説明する。尚ここで説明する処理は、CPU40がキロ程変換プログラム611を含む走行位置算出プログラム610を読み出して実行することにより実現される。
【0057】
走行位置算出処理では、CPU40は、先ず走行状況計測部30から入力される自車両の移動量及び移動方位と、車輪径680とをもとに自車両の絶対位置(緯度・経度)を予測し、走行位置675を更新する(ステップa10)。またこのとき、CPU40は、走行状況計測部30から入力される移動量を積算して走行距離をカウントし、走行距離671を更新するとともに、走行状況計測部30から入力される移動速度を走行速度673として記憶部60に格納する。
【0058】
続いて、CPU40は、走行位置675が所定のGPS測位ポイントか否かを判定する。そして、GPS測位ポイントでないならば(ステップa20:NO)、CPU40は、続いて車輪の空転・滑走を検出する。尚、車輪の空転・滑走の検出方法については公知の技術を用いて実現することとし、ここでの詳細な説明は省略する。そして、車輪の空転・滑走が検出されなければ(ステップa30:NO)、CPU40は、後述するステップa70のキロ程変換処理に移行する。
【0059】
一方、走行位置675がGPS測位ポイントの場合(ステップa20:YES)、或いは車輪の空転・滑走が検出された場合には(ステップa30:YES)、CPU40は、ステップa40に移行してGPS衛星からの電波を受信し、車両の絶対位置(緯度・経度)を測位する。そして、CPU40は、測位した絶対位置に従って走行位置675を補正して更新するとともに(ステップa50)、その補正量をもとに車輪径680を補正し(ステップa60)、ステップa70に移行する。
【0060】
ステップa70では、CPU40は、キロ程変換処理を実行する。図8は、キロ程変換処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0061】
キロ程変換処理では、先ずCPU40は、キロ程管理DB640の中から、走行位置675を基準とした所定範囲内に含まれる絶対位置が設定されたレコードを抽出する(ステップb10)。ここで所定範囲とは、例えば走行位置675を中心とした10m四方の矩形領域等、適宜決定される。
【0062】
続いてCPU40は、走行位置675と抽出したレコードに設定されている絶対位置との間の距離をそれぞれ算出する(ステップb20)。そして、CPU40は、走行位置675との距離が最も近接する絶対位置が設定されたレコードを選出し(ステップb30)、当該レコードに設定されているキロ程をキロ程677として記憶部60に格納する(ステップb40)。
【0063】
(走行速度監視処理)
次に、図9を参照して、走行速度監視処理の流れについて説明する。尚ここで説明する処理は、CPU40が走行速度監視プログラム620を読み出して実行することにより実現される。
【0064】
この走行速度監視処理では、CPU40は、先ず、走行速度673及びキロ程677を制限速度変化パターン661と照らし合わせ、現在の走行速度673が現在のキロ程677に対応する制限速度を超過するか否かを判定する。そして、走行速度673が制限速度を超過していない場合には(ステップc10:NO)、本処理は終了される。
【0065】
一方、走行速度673が制限速度を超過したならば(ステップc10:YES)、警告モードに移行し、CPU40は、走行状況報知部50を制御して警告警報の出力を開始する(ステップc20)。具体的には、CPU40は、警告警報音の音出力制御、警告警報メッセージの表示出力制御、表示灯の点灯制御を行う。そして、CPU40は、タイマーを起動して警告期間の計時を開始する(ステップc30)。
【0066】
タイマーを起動したならば、CPU40は、制限速度変化パターン661を参照し、現在の走行位置675における走行速度673の制限速度超過を再度判定する。
【0067】
そして、CPU40は、走行速度673が制限速度以下に減速されたならば(ステップc40:NO)、警告モードを解除し、走行状況報知部50を制御して警告警報の出力を停止する(ステップc50)。警告警報の出力を停止した場合には、CPU40は、ステップc100に移行する。
【0068】
一方CPU40は、走行速度673が制限速度を超過したままならば(ステップc40:YES)、続いて走行速度673のエリア判定を行う(ステップc60)。すなわち、走行速度673が警告出力エリア内なのか、非常制動制御エリアなのかを判定する。
【0069】
走行速度673が非常制動制御エリア内(すなわち、危険速度を超過した)ならば、CPU40は、ステップc80に移行する。
一方、走行速度673が警告出力エリア内ならば、CPU40は、タイマーが計時する経過時間が警告期間を経過するまでの間はステップc40に戻る。そして、警告期間が経過した場合には(ステップc70:NO)、CPU40は、ステップc80に移行する。
【0070】
ステップc80では、CPU40は、走行状況報知部50を制御して非常制動警報を出力する。具体的には、CPU40は、非常制動警報音の音出力制御、非常制動警報メッセージの表示出力制御、表示灯の点灯制御を行う。
【0071】
そして、CPU40は、非常制動制御を行う(ステップc90)。例えば、ブレーキ装置に制御信号を出力して自車両を停止させることとしてもよいし、自車両に非常ブレーキ装置(EB装置(EB:Emergency Brake device))が搭載されている場合には、このEB装置を介して自車両を停止させることとしてもよい。非常制動制御を行ったならば、CPU40は、ステップc100に移行する。
【0072】
ステップc100では、タイマーを停止してリセットする。
【0073】
(走行状況ナビゲーション処理)
図10は、走行状況ナビゲーション処理の流れを説明するためのフローチャートである。尚ここで説明する処理は、CPU40が走行状況ナビゲーションプログラム630を読み出して実行することによって実現される。
【0074】
走行状況ナビゲーション処理では、先ずCPU40は、横軸にキロ程、縦軸に列車速度をとって制限速度変化パターン661をグラフ化し、自車両の走行位置675、走行速度673、キロ程677等とともに表示した走行状況ナビゲーション画面を表示する制御を行う(ステップd10)。
【0075】
そして、CPU40は、キロ程管理DB640を参照し、走行位置675に対応するインデックスと、インデックスの単位距離間隔とから現在位置の起算距離(現在地起算距離)を算出する(ステップd20)。尚このとき、CPU40は、算出した現在地起算距離によって走行距離671の計測誤差を補正することとしてもよい。
【0076】
次に、CPU40は、線路データ651を参照し、進行方向側の接近しつつある速度制限区間を検索する(ステップd30)。例えばCPU40は、自車両の走行位置を含む進行方向側にある速度制限区間であって、走行位置675から所定範囲内にある速度制限区間(例えば、前方1km以内にある速度制限区間)を検索する。
【0077】
次いで、CPU40は、制限速度変化パターン661を参照して、検索された各速度制限区間それぞれの制限速度を読み出す(ステップd40)。そして、CPU40は、走行位置675から検索された各速度制限区間それぞれへの実際の距離を算出する(ステップd50)。すなわち、CPU40は、キロ程管理DB640を参照して検索された各速度制限区間それぞれの始発位置からの起算距離を算出し、ステップd20で算出した自車両の現在地起算距離との差によって求める。
【0078】
そして、CPU40は、ステップd10で表示した走行状況ナビゲーション画面に、ステップd30で検索された接近しつつある各速度制限区間それぞれを、ステップd40で読み出した制限速度及びステップd50で算出した走行位置675からの距離とともに表示する制御を行う(ステップd60)。
【0079】
次に、CPU40は、地上設備データ653を参照し、進行方向側の接近しつつある地上設備を検索する(ステップd70)。例えばCPU40は、自車両の走行位置を含む進行方向側に設置される地上設備であって、走行位置675から所定範囲内に設置される地上設備(例えば、前方1km以内に設置される地上設備)を検索する。
【0080】
次いで、CPU40は、走行位置675から検索された各地上設備それぞれへの実際の距離を算出する(ステップd80)。すなわち、CPU40は、キロ程管理DB640を参照して検索された各地上設備それぞれの始発位置からの起算距離を算出し、ステップd20で算出した自車両の現在地起算距離との差によって求める。
【0081】
そして、CPU40は、ステップd30で表示した走行状況ナビゲーション画面に、ステップd70で検索された接近しつつある各地上設備それぞれを、ステップd80で算出した走行位置675からの距離とともに表示する制御を行う(ステップd90)。
【0082】
[画面例]
次に、図11及び図12を参照して、表示画面例を説明する。
【0083】
図11は、自車両が制限速度以下の走行速度で走行中の場合に表示部51に表示される走行状況ナビゲーション画面の一例を示す図である。図11に示すように、走行状況ナビゲーション画面には、横軸にキロ程、縦軸に列車速度をとってグラフ化された制限速度変化パターンが自車両の走行位置に応じて左右方向にスクロール表示されるとともに、現在の走行速度に応じて走行速度指示マーカMKが表示される。したがって運転手は、走行状況ナビゲーション画面によって、現在の走行位置における制限速度と実際の走行速度とを常に確認することができる。
【0084】
また、走行状況ナビゲーション画面には、進行方向前方の速度制限区間及び地上設備の情報が表示される。図11では、カーブ区間が接近している旨の表示M11がなされ、当該カーブ区間までの距離及び制限速度が報知されている。また、駅が接近している旨の表示M13、橋梁が接近している旨の表示M15、及び踏切が接近している旨の表示M17がなされ、各地上設備までの距離が報知されている。したがって運転手は、走行状況ナビゲーション画面によって、走行前方にあって、接近しつつある速度制限区間及び地上設備を最近接のものから順に常時確認することができる。
【0085】
一方図12は、非常制動制御が行われた場合に表示部51に表示される表示画面例を示す図である。図12に示すように、走行状況ナビゲーションの表示上に非常制動警報メッセージの表示M21の表示がなされている。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、走行状況計測部30及びGPS測位部20の出力をもとに自車両の走行位置675及び走行速度673を算出し、制限速度変化パターン661と照らし合わせることによって走行速度673の制限速度超過を監視することができる。そして、制限速度を超過した場合であって、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合には、非常制動制御を行って車両を停止させることができる。さらに、速度制限地点で停止するための危険速度パターン663と照らし合わせることによって、走行速度673の危険速度超過を監視することができる。そして、危険速度を超過したと判定した場合は、警告期間の経過有無に関わらず即時に非常制動制御を行うことができる。また、走行速度673が制限速度や危険速度を超過した場合を報知し、運転士の注意を喚起することができる。
【0087】
これによれば、地上側への地上装置の設置を必要とせずに車上側で走行速度の制限速度超過を監視し、非常制動制御を適切に行うことができるので、列車運行の安全性を低コストで向上させることができる。
【0088】
また、制限速度変化パターンとともに、車両の走行位置675及び走行速度673の変化を随時更新表示して走行状況をナビゲーションすることができる。さらに、自車両が接近しつつある或いは走行中の速度制限区間の速度制限や当該速度制限区間までの距離や、同様に自車両が接近しつつある地上設備までの距離を表示する制御を行い、運転士の注意を喚起することができる。
【0089】
なお、上記した実施形態では、制限速度変化パターン661から速度制限区間の制限速度を読み出すこととしたが、線路データ651において、各速度制限区間の制限速度を設定しておくこととしてもよい。またこの場合には、制限速度を車種別に設定しておき、自車両の車種に応じた制限速度を読み出して利用することとしてもよい。
【0090】
また上記した実施形態では、自車両の走行速度が制限速度を超過した場合であって、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合に非常制動制御を行うこととしたが、以下のようにしてもよい。すなわち、例えば、カーブや勾配、ポイントといった速度制限区間や、速度制限区間の入口付近、軌道に沿って設置される踏切や橋梁等の設置位置の手前側等を制動制御区間として予め設定しておき、自車両の走行速度が制限速度を超過した場合に、自車両の走行位置が制動制御区間内か否かを判定する。そして、所定の速度制限区間内ならば制動制御を行い、走行速度を制限速度以下に減速させることとしてもよい。
【0091】
また上記した実施形態では、走行状況計測部30から入力される自車両の移動量及び移動方位と、車輪径680とをもとに自車両の絶対位置(緯度・経度)を予測するとともに、その予測した絶対位置を所定のタイミングでGPS信号を利用して測位された自車両の絶対位置(緯度・経度)によって補正することにより自車両の走行位置を算出することとしたが、以下のようにしてもよい。
【0092】
すなわち、軌道に敷設された地上子位置を基準位置とし、当該基準位置からの移動量を積算して自車両の走行位置を検出することとしてもよい。具体的には、地上子間の距離と、当該地上子間の走行中に速度発電機31から出力されたパルス数と、車輪径680とに基づいてパルス単位距離を算出し、算出したパルス単位距離をもとに基準位置からの移動量を積算して自車両の走行位置を検出する。自車両が地上子位置を通過した場合には、基準位置に当該通過した地上子位置を設定する。またこのとき、走行した地上子間の距離と、当該地上子間の走行中に積算された移動量とに基づいて車輪径680を補正する。尚この場合、説明の便宜上車輪径を用いるとしているが、実際には、パルス単位距離が車輪径と等価的な値となるため車輪径は不用である。補正においても、直接パルス単位距離を補正すればよい。
【0093】
或いは、停車駅を基準位置とし、当該基準位置からの移動量を積算して自車両の走行位置を検出することとしてもよい。具体的には、停車駅においてGPS衛星からの電波を受信し、車両の絶対位置(緯度・経度)を測位する。そして、GPS信号を利用して算出した停車駅間の距離と、当該停車駅間の走行中に速度発電機31から出力されたパルス数と、車輪径680とに基づいてパルス単位距離を算出し、算出したパルス単位距離をもとに基準位置からの移動量を積算して自車両の走行位置を検出する。自車両が停車駅で停止した場合には、基準位置に当該停止した停車駅で測位した車両の絶対位置を設定する。またこのとき、走行した停車駅間の距離と、当該地上子間の走行中に積算された移動量とに基づいて車輪径680を補正する。尚この場合においても、説明の便宜上車輪径を用いるとしているが、実際には、パルス単位距離が車輪径と等価的な値となるため車輪径は不用である。補正においても、直接パルス単位距離を補正すればよい。
【0094】
また本発明の現在地キロ程割出装置は、在来型の鉄道システムの鉄道車両の他、モノレールやゴムタイヤ式システム、軽快電車(LRV)等の新交通システムの車両や、路面電車、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両等のデュアルモード交通システムの車両、軌陸車等にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】制限速度変化パターン及び危険速度変化パターンをグラフ化した図。
【図2】車両の運転曲線例を示す図。
【図3】非常停止システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【図4】キロ程管理DBのデータ構成例を示す図。
【図5】線路データのデータ構成例を示す図。
【図6】地上設備データのデータ構成例を示す図。
【図7】走行位置算出処理の流れを説明するためのフローチャート。
【図8】キロ程変換処理の流れを説明するためのフローチャート。
【図9】走行速度監視処理の流れを説明するためのフローチャート
【図10】走行状況ナビゲーション処理の流れを説明するためのフローチャート。
【図11】自車両が制限速度以下の走行速度で走行中の場合の表示画面の一例を示す図。
【図12】非常制動制御が行われた場合の表示画面例を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1 非常停止システム
10 入力部
20 GPS測位部
30 走行状況計測部
31 速度発電機
33 ジャイロ
40 CPU
50 走行状況報知部
51 表示部
53 表示灯
55 音出力部
60 記憶部
610 走行位置算出プログラム
611 キロ程変換プログラム
620 走行速度監視プログラム
630 走行状況ナビゲーションプログラム
640 キロ程管理DB
650 軌道情報
651 線路データ
653 地上設備データ
660 制限速度情報
661 制限速度変化パターン
663 危険速度変化パターン
670 走行状況
671 走行距離
673 走行速度
675 走行位置
677 キロ程
680 車輪径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する車両に搭載されて異常走行時に当該車両を非常停止させる非常停止システムであって、
前記車両が走行する軌道に沿った制限速度変化パターンを記憶する制限速度パターン記憶手段と、
前記車両の走行位置及び走行速度を計測する走行状況計測手段と、
前記制限速度パターン記憶手段に記憶された制限速度変化パターンに従って、前記計測された車両の走行速度が前記計測された走行位置における制限速度を超過したか否かを判定し、制限速度を超過した場合であって、当該制限速度を超過した状態が所定の警告期間の間継続した場合に、前記車両の非常制動制御を行って前記車両を停止させる非常制動制御手段と、
を備えることを特徴とする非常停止システム。
【請求項2】
予め定められた速度制限地点に非常制動で停止するための臨界速度と臨界位置との関係から定められ、前記制限速度変化パターンの速度を超える速度を危険速度とする危険速度変化パターンを記憶する危険速度パターン記憶手段を更に備え、
前記非常制動制御手段は、前記危険速度パターン記憶手段に記憶された危険速度変化パターンに従って、前記計測された車両の走行速度が前記計測された走行位置における危険速度を超過したか否かを判定し、危険速度を超過したと判定した場合は、前記所定の警告期間の経過有無に関わらず即時に非常制動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の非常停止システム。
【請求項3】
前記計測された走行位置が所定の制動制御区間内か否かを判定する判定手段と、
前記制限速度パターン記憶手段に記憶された制限速度変化パターンに従って、前記計測された車両の走行速度が前記計測された走行位置における制限速度を超過したか否かを判定し、制限速度を超過した場合であって、前記判定手段により制動制御区間内と判定された場合に、前記車両の制動制御を行って前記車両の走行速度を前記計測された走行位置における制限速度以下に減速させる制動制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の非常停止システム。
【請求項4】
前記制限速度変化パターンは、予め設定された軌道上の基準位置を起点としたキロ程変化に応じた制限速度の変化パターンであり、
前記走行状況計測手段は、前記計測された前記車両の走行位置をキロ程に変換するキロ程変換手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の非常停止システム。
【請求項5】
GPS信号(GPS:Global Positioning System)を利用して前記車両の走行位置を測位する測位手段を更に備え、
前記走行状況計測手段は、前記計測された前記車両の走行位置を、前記測位手段により測位された走行位置に基づいて補正する補正手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の非常停止システム。
【請求項6】
前記非常制動制御手段により前記車両の走行速度が制限速度を超過したと判定された場合に、当該制限速度超過を報知する報知手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の非常停止システム。
【請求項7】
前記制限速度パターン記憶手段に記憶されている制限速度変化パターンとともに、前記走行状況計測手段により計測された前記車両の走行位置及び走行速度の変化を随時更新表示する制御を行う表示制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の非常停止システム。
【請求項8】
軌道上の速度制限区間の情報を記憶する速度制限区間記憶手段を更に備え、
前記表示制御手段は、前記速度制限区間記憶手段に記憶された速度制限区間を照査して、前記車両の走行前方所定距離内の速度制限区間に基づき、当該速度制限区間を走行する際の制限速度を表示する制御を行う区間制限速度表示制御手段を有することを特徴とする請求項7に記載の非常停止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−37294(P2007−37294A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217241(P2005−217241)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(599142590)北海道ジェイ・アール・サイバネット株式会社 (14)
【Fターム(参考)】