説明

非接触画像測定機の測定方法

【課題】非接触測定機の測定範囲よりも広い範囲を、非接触測定機を移動しながら簡単且つ高精度に測定できるようにする。
【解決手段】複数のマーカー42、46をワーク設置用プレート40上に分散配置して、値付けし、該プレート40上に配置したワーク30、30’、30a、30b、30cを、前記マーカー42、46の一部も測定範囲14に含めて、非接触測定機10により測定し、前記マーカー42、46の位置とワーク30の関係により、各測定点の測定値を合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触画像測定機の測定方法に係り、特に、非接触3次元デジタイザに使用される、レーザビームによる光切断方式等の非接触プローブ(センサ)の広範囲測定に用いるのに好適な、非接触画像測定機の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている如く、3次元入力装置として、図1に示すような非接触3次元画像測定機(以下、単に非接触測定機と称する)が知られている。この非接触測定機10は、投光窓11aと走査光学系11bを有する投光部11と、受光窓12aと受光光学系12bを有する受光部12とを備えている。
【0003】
前記走査光学系11bは、レーザ光線源からのレーザ光を光束断面がスリット状(直線状)となるレーザ光(以下レーザスリット光と称する)L1に変換し、ガルバノミラー等の走査手段を用いてレーザスリット光L1を所定の走査方向SCに走査させるように構成されている。
【0004】
又、前記受光光学系12bには、受光素子としてCCD撮像素子が配置され、投光部11における走査光学系11bと同期して受光光学系12bが制御されることにより、レーザスリット光L1の走査位置に対応した測定データが得られる。
【0005】
前記投光部11と受光部12とは、互いに所定の基線長を隔てて配置され、基線長方向はレーザスリット光L1の走査方向SCに一致するように構成されているので、レーザスリット光L1の走査位置(照射位置)とCCD撮像素子で受光される反射光の位置とから、三角測量の原理によって測定対象物(図示省略)の表面形状に関する測定データが得られる。
【0006】
又、非接触測定機10の測定範囲よりも広い範囲を測定する方法として、特許文献2には、図2に示す如く、測定対象30上に多数のターゲットマーク32を配置し、コンピュータ34によりターゲットマーク32の2次元画像における位置を特定し、3次元データにおけるターゲットマーク32の位置と、非接触測定機10とは異なる視点である非接触測定機10’から取得された3次元データにおけるターゲットマークの位置とを合わせることによって、複数の視点から取得された複数の3次元データを合成することが記載されている。
【0007】
又、特許文献3には、回転枠上にマーカーを配置し、回転枠内に固定配置した測定対象と共に回転枠を回転させながら複数の3次元データを得て、これらの複数の3次元データをマーカーの位置を目安に合わせ込んで統合することにより、測定対象の裏側も含む全周の立体的な形状を得ることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−304514号公報
【特許文献2】特開2004−220510号公報(図1〜図7)
【特許文献3】特開2003−83739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2のように、測定対象30上にターゲットマーク32を配置する方法では、測定対象30を配置する前に、予め値付けをすることができず、測定対象配置毎に一々ターゲットマーク32を値付けする必要があるだけでなく、ターゲットマーク32の位置が3次元となるため、処理が煩雑である。又、持ち運びが可能な測定機が必要で、高精度な値付けが困難であり、ターゲットマーク32の面の傾きによる検出ミスや、位置検出誤差を生じ、つないでいくと、端では実物(実際の測定対象)との形状の差が数mmにもなる場合があるという問題点がある。
【0010】
又、特許文献3に記載の方法は、測定対象を回転枠内に配置する必要があるため、その大きさに制限があるだけでなく、回転枠上にマーカーを配置するものであるため、マーカーの配設位置にも制限がある等の問題点を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、非接触画像測定機の測定範囲よりも広い範囲を、非接触画像測定機を移動しながら、簡単且つ高精度に測定可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、非接触画像測定機の測定範囲よりも広い範囲を測定するに際して、複数のマーカーを、平面板又はシート上に分散配置して、値付けし、該平面板又はシート上に配置した測定対象を、前記マーカーの一部も測定範囲に含めて、非接触画像測定機により測定し、前記マーカーの位置と測定対象の関係により、各測定点の測定値を合成するようにして、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、測定対象配置前に、予め平面板又はシート上で配設位置を決めることによって値付けされた複数のマーカーを用いているので、測定対象毎のマーカーの値付けの手間が不要であり、測定時間を短縮することができる。又、マーカーが平面上に配置され、その値付けに高精度の測定機が使用できるので、値付けの高精度化が図れる。更に、平面板又はシートを測定機に持ち込むこともできる。又、マーカーが平面的な配置のため、非接触測定にも有利であり、2次元画像測定機等も使用可能である。更に、CNC測定機で値付けの自動化や高精度化も可能である。又、マーカー配置面の傾きによる検出ミスや位置検出誤差を低減することができ、マーカー検出を安定的に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1実施形態は、図3(A)に示すような複数の平面マーカー(以下、単にマーカーとも称する)42を、測定対象であるワークを設置するためのプレート40上に分散配置して値付けし、図3(B)に示す如く、該ワーク設置用プレート40上に配置した測定対象(ワークとも称する)30を、値付け後のマーカー(値付けマーカーと称する)42’の一部も測定範囲に含めて、非接触測定機10により測定し、前記値付けマーカー42’の位置とワーク30の関係により、各測定点の測定値を合成して、ワーク30の形状を測定するようにしたものである。
【0016】
前記平面マーカー42としては、例えばシールを用いることができる。
【0017】
又、前記プレート40の代わりにシートを用いることもできる。
【0018】
具体的な測定手順を図4に示す。
【0019】
まずステップ100でワーク設置用プレート40を作成し、その上にマーカー42を配置する。次いでステップ110で、図5に示す如く、マーカー42の位置を高精度の測定機を用いて正確に測定し、プレート40を基準として値付けを行なう。
【0020】
次いでステップ120に進み、プレート40上へワーク30を配置する。次いでステップ130で、図6に示す如く、測定ワーク30と値付けマーカー42’の一部(3点以上)が1回の測定範囲14に入るよう非接触測定機10を配置する。ここで、値付けマーカー42’の3点以上を1回の測定範囲14に入れるのは、測定範囲を正確に規定するためである。
【0021】
次いでステップ140で、非接触測定機10によりワーク30の形状を測定する。次いでステップ150で、プレート40上の値付けマーカー42’を基準として、自動で位置合わせする。次いでステップ160で、必要な位置・方向での測定が終了したか判定し、測定が残っている場合には、ステップ130に戻り、ステップ140と150を繰り返す。
【0022】
一方、ステップ160の判定結果が正となり、必要な位置・方向での測定が全て終了したと判断されるときには、ステップ170に進み、値付けマーカー42’を用いて測定データを合成する。
【0023】
次いでステップ180に進み、別のワークの測定を行なうか否か判定し、判定結果が正であればステップ130に戻る。一方、ステップ180の判定結果が否である場合には、測定を終了する。
【0024】
本実施形態においては、各測定範囲が3点以上の値付けマーカー42’を含むようにして、全画像を値付けマーカー42’を用いて合成するようにしているので、高精度の合成が可能である。
【0025】
なお、測定範囲の設定及びデータの合成方法はこれに限定されず、図7に示す第2実施形態のように、一部の測定範囲は3点未満の値付けマーカー42’を含むように設定し、不足分はワーク30の重複部分の立体形状特性を用いて位置合わせを行なって、データを合成することも可能である。
【0026】
あるいは、図8に示す第3実施形態の如く、特許文献2と同様にワーク30上に値付けをしていないマーカー44を配置し、値付けマーカー42’と値付け無しマーカー44の組合せにより位置合わせを行なって、データを合成することも可能である。
【0027】
あるいは、図9に示す第4実施形態の如く、ワーク30上に追加配置したマーカー44を、値付けマーカー42’基準で値付けして値付けマーカー44’とした後に、位置合わせを行なって、測定データを合成することも可能である。
【0028】
又、より立体的なワーク30’に対しては、図10に示す第5実施形態の如く、立体的に配置され、値付けされたマーカー(立体マーカーとも称する)46を用いることも可能である。
【0029】
なお、前記実施形態においては、いずれも非接触測定機10の測定範囲14よりも大きな1つのワーク30、30’を測定するようにされていたが、本発明は、図11に例示する如く、複数(図では3つ)の測定対象30a、30b、30cが分散して非接触測定機10の1回の測定範囲14に入り切らない場合にも、同様に適用できる。又、単一の非接触測定機10を移動するのでは無く、複数の固定された非接触測定機で得られた測定データを合成する際にも、同様に適用できる。更に、3次元画像測定機に限定されず、2次元画像測定機にも、同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】特許文献1に記載された従来の非接触測定機の測定原理を示す斜視図
【図2】特許文献2に記載された3次元形状測定方法の原理を示す斜視図
【図3】本発明の第1実施形態の測定原理を説明するための斜視図
【図4】同じく測定手順を示す流れ図
【図5】同じくマーカーの配置例を示す平面図
【図6】同じく測定状態を示す平面図
【図7】本発明の第2実施形態の測定原理を示す平面図
【図8】同じく第3実施形態の測定原理を示す平面図
【図9】同じく第4実施形態の測定原理を示す平面図
【図10】同じく第5実施形態の測定原理を示す斜視図
【図11】本発明の他の測定対象の例を示す平面図
【符号の説明】
【0031】
10…非接触(3次元画像)測定機
30、30’、30a、30b、30c…測定対象(ワーク)
40…ワーク設置用プレート
42、44…(平面)マーカー
42’、44’…値付けマーカー
46…立体マーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触画像測定機の測定範囲よりも広い範囲を測定するに際して、
複数のマーカーを、平面板又はシート上に分散配置して、値付けし、
該平面板又はシート上に配置した測定対象を、前記マーカーの一部も測定範囲に含めて、非接触画像測定機により測定し、
前記マーカーの位置と測定対象の関係により、各測定点の測定値を合成することを特徴とする非接触画像測定機の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−177816(P2006−177816A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372229(P2004−372229)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】