説明

非接触通信端末及び非接触通信端末制御方法

【課題】 例えば複数の非接触通信サービスの中から所望のサービスをスピーディー且つスムースに選択可能とする。
【解決手段】
非接触通信/翳し方向検出アンテナ31は、非接触通信用と翳し方向検出用のアンテナを有し、非接触通信制御部30は、非接触通信リーダライタへ翳された時、その翳された筐体面方向を、アンテナ31の受信レベルから検出する。そして、非接触通信制御部30は、複数の非接触通信サービス若しくは複数アプリケーションの中から、翳し面方向に応じた、何れか一つの非接触通信サービス若しくは一つのアプリケーションを決定してそれを利用可能に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁誘導を利用した非接触状態によりデータ通信を行う非接触通信端末及び非接触通信端末制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、電磁誘導を利用した非接触状態によりデータ通信を行う非接触通信システムが広く普及しており、当該非接触通信システムにより、例えば通貨を用いない決済処理や交通機関の自動改札処理、部屋等へ入室する際の利用者識別処理などが実用化されている。
【0003】
上記非接触通信システムは、非接触通信ICカードやそれを内蔵した携帯端末(以下、これらを纏めて非接触通信端末と表記する。)と、その非接触通信端末に対するデータの読み取り/書き込みを行う非接触通信リーダライタとにより構成されている。上記非接触通信端末は、例えばユーザにより所有されるものであり、一方、上記非接触通信リーダライタは店舗や自動改札機,入室管理装置などに設けられている。そして、ユーザが上記非接触通信端末を非接触通信リーダライタへ翳した時、それら非接触通信端末と非接触通信リーダライタとの間でデータ通信が行われることにより、上記決済処理や自動改札処理,利用者識別処理などが行われる。
【0004】
なお、非接触通信に関連した従来の技術として、特開2005−354300号の公開特許公報(特許文献1)には、非接触ICカード機能を内蔵した携帯端末において、リーダライタと良好に通信できるようにするための技術が開示されている。すなわちこの公報記載の携帯端末は、非接触通信用の主アンテナとは別に複数の測定用アンテナを備え、それら測定用アンテナでリーダライタからの電波の受信状況を測定する。そして、携帯端末は、当該受信状況を基に、リーダライタが存在する方向を判断し、その方向を表示部に表示するようになされている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−354300公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記非接触通信端末と非接触通信リーダライタは、決済や自動改札通過、利用者識別などの複数の処理、すなわち決済サービスや自動改札サービス、利用者識別サービスなどの複数の非接触通信サービスに対応可能となされている。
【0007】
このように複数の非接触通信サービスが利用可能となされている場合、それら複数のサービスの中の所望のサービスを利用する際、非接触通信端末のユーザは、複数のサービスの中から所望のサービスを選択するための操作入力を行わなければならない。これは、非接触通信リーダライタ側でも同様であり、当該リーダライタの操作者は、複数のサービスの中から所望のサービスを選択するための操作入力を行わなければならない。なお、それら入力操作は、例えば非接触通信端末やリーダライタに設けられているキー等を操作することにより行われている。
【0008】
このように、所望の非接触通信サービスを選択する際に、ユーザ等に対して様々な入力操作を要求するということは、非接触通信技術の特徴であるスピーディー且つスムースな処理が可能であるという点を損なっている。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、例えば複数の非接触通信サービスの中から所望のサービスをスピーディー且つスムースに選択可能とした、非接触通信端末及び非接触通信端末制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所望の筐体面が非接触通信読み取り装置へ翳された時に、その翳し面方向を検出し、その翳し面方向に応じた非接触通信サービス若しくはアプリケーションを利用可能に設定することにより、上述した課題を解決する。
【0011】
すなわち本発明の非接触通信端末によれば、端末の筐体面と非接触通信サービス若しくはアプリケーションとが予め対応付けられており、また、非接触通信読み取り装置へ翳された筐体面を検出可能となされている。そして、本発明の非接触通信端末は、非接触通信読み取り装置へ翳された時、その翳し面方向に対応付けられている非接触通信サービス若しくはアプリケーションを利用可能とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、非接触通信読み取り装置への翳し面方向に応じた非接触通信サービス等を利用可能に設定することにより、ユーザによる操作入力等を要せずに、複数のサービスの中から所望のサービスをスピーディー且つスムースに選択可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
なお、以下の実施形態では、本発明の非接触通信端末の一例として、非接触通信機能を備えた携帯電話端末を挙げている。したがって本実施形態の非接触通信システムは、当該携帯電話端末と、その携帯電話端末との間でデータ通信を行う非接触通信リーダライタとからなる。勿論、ここで説明する内容はあくまで一例であり、本発明はこの例に限定されないことは言うまでもない。なお、非接触通信リーダライタは、少なくともデータ読み取りのみ行う非接触通信読み取り装置であれば良い。
【0015】
[携帯電話端末の基本構成]
図1には、上記非接触通信機能を備えた携帯電話端末の基本的な内部構成を示す。
【0016】
図1において、通信アンテナ21は、携帯電話網を介した通話や電子メール等のデータ通信のための信号電波を送受信する。通信回路20は、その送受信信号の周波数変換、変調・復調等の各種信号処理を行う。
【0017】
スピーカ28は、携帯電話端末に設けられている受話用のスピーカと、リンガ(着信音),アラーム音,生音楽等の音声出力用スピーカとからなる。マイクロホン29は、送話用及び外部音声集音用のマイクロホンである。音声処理部27は、通話音声データや再生音楽等の音声に関連する各種の処理を行う。
【0018】
ディスプレイ部26は、液晶ディスプレイや有機EL(ElectroLuminescent)ディスプレイ等の表示デバイスと、そのディスプレイの表示駆動回路からなる。画像処理部25は、文字や記号、各種メニュー、静止画像、動画像等の画像表示に関連する各種の処理を行う。
【0019】
操作部24は、携帯電話端末の筐体上に設けられているテンキーや発話キー、終話/電源キー等の各キーや十字キー等のキーデバイスと、それらキーデバイスが押下操作等された時の操作信号を発生する操作信号発生器とからなる。
【0020】
メモリ部23は、例えばOS(Operating System)プログラムや、端末制御部22が各部を制御するための制御プログラム、種々のアプリケーションプログラム、各種データ等を記憶し、また、端末制御部22の作業領域として随時データを格納する。
【0021】
非接触通信/翳し面方向検出アンテナ31は、非接触通信によるデータ送受信のための非接触通信用アンテナの機能と、当該端末が備える複数の筐体外面のうち何れの面側が非接触通信リーダライタに翳されたかを検出するための翳し面方向検出用アンテナの機能とを有する。なお本発明実施形態において、端末の筐体外面のうち何れかの面側を非接触通信リーダライタに翳すとは、その筐体外面を非接触通信リーダライタの非接触通信用アンテナ面に略々並行に対向させて近接させることを言う。当該非接触通信/翳し面方向検出アンテナ31の詳細については後述する。
【0022】
非接触通信制御部30は、非接触通信時のデータ送受信に関する各種制御及び信号処理と、非接触通信による決済や自動改札機通過、利用者識別など、種々の非接触通信サービスに関する各種制御及び信号処理、当該非接触通信されるデータの格納等を行う。
【0023】
また、本実施形態において、非接触通信制御部30は、上記翳し面方向検出用アンテナからの受信信号を用い、当該携帯電話端末の筐体外面の何れの面側が非接触通信リーダライタに翳されたのかを判定、つまり翳し面方向を判定する。さらに、非接触通信制御部30は、例えば予め登録されている翳し面方向と非接触通信サービス/アプリケーションの対応登録テーブルを参照等することにより、上記翳し面方向の判定結果に応じた非接触通信サービス/アプリケーションを決める。
【0024】
そして、非接触通信制御部30は、上記翳し面方向の判定により非接触通信サービスが決まった場合には、その決定された非接触通信サービスを利用するための設定を行う。また、非接触通信制御部30は、上記翳し面方向の判定によりアプリケーションが決まった場合には、端末制御部22が当該アプリケーションを利用するための設定を行う。なお、本実施形態において、上記非接触通信サービスを利用するための設定とは、複数の非接触通信サービスのうち、上記決定された非接触通信サービスに関連したデータのみを、非接触通信リーダライタとの間で非接触通信により送受信可能とするための設定のことである。また、上記アプリケーションを利用するための設定とは、当該アプリケーションを端末制御部22が起動する際のトリガとして、そのアプリケーションを示す情報(一例としてアプリケーションID)を端末制御部22へ通知することである。なお、上記翳し面方向の判定と、その判定結果に応じたサービス/アプリケーションの決定等の詳細な流れについては後述する。
【0025】
端末制御部22は、CPU(中央処理ユニット)からなり、本実施形態の携帯電話端末の各部の制御と、各種信号処理及びその制御、非接触通信制御部30との間のデータ授受等を行う。また、端末制御部22は、上記非接触通信制御部30から上記アプリケーションIDの通知を受けた場合には、そのアプリケーションIDに応じたアプリケーションを自動的に起動させることも行う。さらに、端末制御部22は、必要に応じて、上記翳し面方向とサービス/アプリケーションとの対応関係を表す表示情報を生成して上記画像処理部25へ送り、ディスプレイ部26へ当該対応関係を表示させる。これにより、ディスプレイ部26の画面上には、上記翳し面方向とサービス/アプリケーションの対応関係を示す表示がなされることになる。
【0026】
その他、図1には図示を省略しているが、本実施形態の携帯電話端末は、一般的な携帯電話端末に設けられる各構成要素についても備えている。
【0027】
[非接触通信/翳し面方向検出アンテナの第一の具体例]
図2には、上記非接触通信/翳し面方向検出アンテナ31の具体例な構成及び配置例を示し、特に、非接触通信用アンテナと翳し面方向検出用アンテナとが、別々に設けられた場合の第一の具体例の携帯電話端末1を示している。
【0028】
図2に示す第一の具体例において、非接触通信用アンテナ3は、略々直方体形状の筐体が有する六つの筐体外面のうち、ディスプレイ部2(図1のディスプレイ部26)が配された面(以下適宜A面と表記する。)に対して相対応する背面(以下適宜B面と表記する。)側に設置されている。一方、翳し面方向検出用アンテナは、例えば、上記略々直方体形状の筐体が有する八つの各頂点近傍に配置されている。なお、図2の例では、ディスプレイ部2のA面側の四つの頂点近傍にそれぞれ一つずつ翳し面方向検出用アンテナ(10a〜10d)が配置され、B面側の四つの頂点近傍にそれぞれ一つずつ翳し面方向検出用アンテナ(11a〜11d)が配置されている。
【0029】
ここで、例えばディスプレイ部2のA面側が非接触通信リーダライタに翳されたとすると、当該A面側の四つの頂点近傍に配置された各翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dの受信レベルが高くなる。一方、この場合、B面側の四つの頂点近傍に配置された各翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dの受信レベルは、上記A面側の翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dの受信レベルよりも相対的に低くなる。したがって、この時の各翳し面方向検出用アンテナからの受信レベルの関係を判定することにより、非接触通信制御部30は、ディスプレイ部2のA面側が非接触通信リーダライタに翳されたことを検知可能となる。なおこの例において、翳し面方向の判定の際には、各翳し面方向検出用アンテナ10a〜10d,11a〜11dの個々の受信レベルを比較しても良いし、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dの受信レベルの平均値と翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dの受信レベルの平均値を比較しても良い。その他にも、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dの受信レベルの合計値と翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dの受信レベルの合計値を比較して、翳し面方向の判定を行うことも可能である。
【0030】
また例えば、B面側が非接触通信リーダライタに翳されたとすると、当該B面側の四つの頂点近傍に配置された各翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dの受信レベルが高くなる。一方、A面側の四つの頂点近傍に配置された各翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dの受信レベルは、上記B面側の翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dの受信レベルよりも相対的に低くなる。したがって、この時の各翳し面方向検出用アンテナからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、上記B面側が非接触通信リーダライタに翳されたことを検知可能となる。なおこの例においても上述同様に、翳し面方向判定に用いる各翳し面方向検出用アンテナの受信レベルは、それぞれ個々の受信レベルが用いられても良いし、平均或いは合計値を用いても良い。このことは、以下の例においても同様である。
【0031】
また例えば、翳し面方向検出用アンテナ10a,10cと11a,11cが配された各頂点を有する面(以下適宜C面と表記する。)側が非接触通信リーダライタに翳されたとすると、それら四つの各翳し面方向検出用アンテナ10a,10c,11a,11cの受信レベルが高くなる。一方、当該C面に相対応した面(以下適宜D面と表記する。)側の各翳し面方向検出用アンテナ10b,10d,11b,11dの受信レベルは、上記C面側の各翳し面方向検出用アンテナ10a,10c,11a,11cの受信レベルよりも相対的に低くなる。したがって、この時の各翳し面方向検出用アンテナからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、上記翳し面方向検出用アンテナ10a,10c,11a,11cが配された各頂点を有するC面側が、非接触通信リーダライタに翳されたことを検知可能となる。
【0032】
さらに例えば、翳し面方向検出用アンテナ10a,10b,11a,11bが配された各頂点を有する面(以下適宜E面と表記する。)側が非接触通信リーダライタに翳されたとすると、それら各翳し面方向検出用アンテナ10a,10b,11a,11bの受信レベルが高くなる。一方、当該E面に相対応した面(以下適宜F面と表記する。)の各翳し面方向検出用アンテナ10c,10d,11c,11dの受信レベルは、E面側の各翳し面方向検出用アンテナ10a,10b,11a,11bの受信レベルよりも相対的に低くなる。したがって、この時の各翳し面方向検出用アンテナからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、上記翳し面方向検出用アンテナ10a,10b,11a,11bが配された各頂点を有するE面側が非接触通信リーダライタに翳されたことを検知可能となる。
【0033】
以下同様であり、例えばF面側が非接触通信リーダライタに翳されたとすると、各翳し面方向検出用アンテナ10c,10d,11c,11dの受信レベルが高くなる。一方、この場合のE面側の各翳し面方向検出用アンテナ10a,10b,11a,11bの受信レベルは、F面側の各翳し面方向検出用アンテナ10c,10d,11c,11dの受信レベルよりも相対的に低くなる。したがって、この時の各翳し面方向検出用アンテナからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、上記翳し面方向検出用アンテナ10c,10d,11c,11dが配された各頂点を有するF面側が非接触通信リーダライタに翳されたことを検知可能となる。
【0034】
上述のように、第一の具体例によれば、携帯電話端末1は、各翳し面方向検出用アンテナ10a〜10d,11a〜11dからの受信レベルの関係を見ることにより、六つの筐体外面の何れの面側が非接触通信リーダライタに翳されたのかを検知可能となる。
【0035】
そして、携帯電話端末1は、非接触通信リーダライタに翳された面が上記六つの筐体外面の何れの面であるかに応じて、何れの非接触通信サービスを利用するか、或いは何れのアプリケーションを起動させるかを決めることができるようになる。
【0036】
なお、例えばA面とB面のように、両面の間隔が狭く、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dと翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dとの間で受信レベルに大きな差が得られない可能性がある場合には、それら両面間の筐体内部に電磁遮蔽板等を設けることが望ましい。これにより、何れか一方の面側が非接触通信リーダライタに翳された時、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dと翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dとの間の受信レベルに大きな差が得られるようになる。
【0037】
[第二の具体例]
図3には、非接触通信用アンテナと翳し面方向検出用アンテナとが別々に設けられた場合の第二の具体例の携帯電話端末1を示している。
【0038】
第二の具体例の携帯電話端末1は、略々直方体形状の筐体が有する六つの筐体外面の各面(A面〜F面)にそれぞれ一つずつ非接触通信用アンテナ(3a〜3f)が配置されている。また、第二の具体例の携帯電話端末1では、図2の例と同様に、略々直方体形状の筐体が有する八つの各頂点近傍にそれぞれ一つずつ、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10d,11a〜11dが配置されている。
【0039】
すなわちこの第二の具体例の場合、非接触通信用アンテナ3aは、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dが配された各頂点を有するA面側(ディスプレイ部2の面側)に設けられている。また、非接触通信用アンテナ3bは、翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dが配された各頂点を有するB面側(ディスプレイ部2の背面側)に設けられている。また、非接触通信用アンテナ3cは、翳し面方向検出用アンテナ10a,10c,11a,11cが配された各頂点を有するC面側に設けられている。さらに、非接触通信用アンテナ3dは翳し面方向検出用アンテナ10b,10d,11b,11dが配された各頂点を有するD面側に設けられている。また、非接触通信用アンテナ3eは翳し面方向検出用アンテナ10a,10b,11a,11bが配された各頂点を有するE面側に、非接触通信用アンテナ3fは翳し面方向検出用アンテナ10c,10d,11c,11dが配された各頂点を有するF面側に設けられている。
【0040】
この第二の具体例の場合も前述した第一の具体例と同様に、各翳し面方向検出用アンテナからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、六つの筐体外面の何れの面側が非接触通信リーダライタに翳されたのかを検知可能となる。
【0041】
さらに、当該第二の具体例の場合、非接触通信制御部30は、上記非接触通信リーダライタへ翳された面の検知結果に応じて、各非接触通信用アンテナ3a〜3fの何れを使用可能にするかを決定することが可能となる。すなわち一例として、ディスプレイ部2のA面側が非接触通信リーダライタに翳された時には、非接触通信用アンテナ3aを使用可能に設定し、他の各非接触通信用アンテナ3b〜3fを使用不能にするようなことが可能となる。これにより、例えば各非接触通信用アンテナ毎に異なるサービスが割り当てられているような場合に、所望のサービス用の非接触通信用アンテナのみを活性化させ、他の不要なサービス(その時点で使用したくないサービス)用の非接触通信用アンテナが誤って活性化するのを防ぐことが可能となる。
【0042】
なお、この第二の具体例の場合も第一の具体例と同様、翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dの受信レベルと翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dの受信レベルに大きな差が得られないような場合には、それら両面間の筐体内部に電磁遮蔽板等を設けることが望ましい。
【0043】
[第三の具体例]
図4には、非接触通信用アンテナが翳し面方向検出用アンテナの機能を兼用している場合の第三の具体例の携帯電話端末1を示している。
【0044】
すなわち当該第三の具体例では、六つの筐体外面の各面にそれぞれ一つずつ配置された非接触通信用アンテナ3a〜3fが、第一、第二の具体例における各翳し面方向検出用アンテナ10a〜10d,11a〜11dの機能を兼用している。
【0045】
この第三の具体例において、例えばディスプレイ部2のA面側が非接触通信リーダライタに翳されたとすると、当該A面側に配置されている非接触通信用アンテナ3aの受信レベルが最も高くなる。一方、他の五つのB面〜F面に配置された各非接触通信用アンテナ3b〜3fの受信レベルは、上記非接触通信用アンテナ3aの受信レベルよりも相対的に低くなる。したがって、この時の各非接触通信用アンテナ3a〜3fからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、上記ディスプレイ部2のA面側が非接触通信リーダライタに翳されたことを検知可能となる。
【0046】
以下同様であるため、他の各面側の翳し方向検知の説明は省略する。
【0047】
この第三の具体例の場合も前述した第一,第二の具体例と同様に、翳し面方向検出用アンテナとして機能している非接触通信用アンテナからの受信レベルの関係を見ることにより、非接触通信制御部30は、六つの筐体外面の何れの面側が非接触通信リーダライタに翳されたのかを検知可能となる。
【0048】
さらに、当該第三の具体例の場合、非接触通信制御部30は、上記非接触通信リーダライタへ翳された面の検知が行われた後に、それら各非接触通信用アンテナ3a〜3fの何れを使用可能にするかを決定することが可能となる。すなわち例えば、ディスプレイ部2のA面側が非接触通信リーダライタに翳されたことを検知した後、非接触通信用アンテナ3aを使用可能に設定し、他の各非接触通信用アンテナ3b〜3fを使用不能にするようなことが可能となる。これにより、第二の具体例の場合と同様に、各非接触通信用アンテナ毎に例えば異なるサービスが割り当てられているような場合、所望のサービスの非接触通信用アンテナのみを活性化させ、他の不要なサービスの非接触通信用アンテナが誤って活性化するのを防ぐことが可能となる。
【0049】
なお、この第三の具体例の場合も第一,第二の具体例と同様、或る面側のアンテナの受信レベルと別の面側のアンテナの受信レベルに大きな差が得られないような場合には、それら両面間の筐体内部に電磁遮蔽板等を設けることが望ましい。
【0050】
[第四の具体例]
図5には、非接触通信用アンテナと翳し面方向検出用アンテナとが別々に設けられた場合の第四の具体例の携帯電話端末1を示している。なお、非接触通信用アンテナについては、第一,第二の具体例で示した何れのものをも適用可能であり、図5ではその図示を省略している。
【0051】
ここで、第四の具体例の場合、翳し面方向検出用アンテナは特に平面状のアンテナパターンを有している。そしてこの例では、それら各翳し面方向検出用アンテナの配置及びアンテナパターンの平面部の向きを最適化することにより、当該携帯電話端末1が非接触通信リーダライタに翳された時の翳し面方向を、より正確に検知可能としている。
【0052】
すなわち第四の具体例では、翳し面方向検出用アンテナは、各アンテナパターンの平面部が上記筐体の外壁面に対して略々並行となるように配置されている。具体的には、例えばA面側の四つの頂点近傍にそれぞれ一つずつ配置された翳し面方向検出用アンテナ10a〜10dは、それらの各アンテナパターンの平面部が、当該A面に対して略々並行となるように配されている。また例えば、B面側の四つの頂点近傍にそれぞれ一つずつ配置された翳し面方向検出用アンテナ11a〜11dは、それらの各アンテナパターンの平面部が、当該B面に対して略々並行となるように配されている。また、C面側には、当該C面に略々並行なアンテナパターン平面部を有する翳し面方向検出用アンテナ13a,13cが配されている。以下同様に、D面側には、当該D面に略々並行なアンテナパターン平面部を有する翳し面方向検出用アンテナ13b,13dが配されている。また、E面側には、当該E面に略々並行なアンテナパターン平面部を有する翳し面方向検出用アンテナ12a,12bが配されている。また、F面側には、当該F面に略々並行なアンテナパターン平面部を有する翳し面方向検出用アンテナ12c,12dが配されている。
【0053】
この第四の具体例のように、各翳し面方向検出用アンテナを配置した場合、当該端末1を非接触通信リーダライタに翳した時の翳し面方向側の筐体外壁面に対して略々並行となっているアンテナパターンを有する翳し面方向検出用アンテナの受信レベルが最も高くなる。一方で、非接触通信リーダライタへの翳し面方向の筐体外壁面に対して、上記アンテナパターンが略々垂直方向となっている翳し面方向検出用アンテナの受信レベルは、非常に低くなる。したがって、当該第四の具体例の場合、非接触通信制御部30は、当該端末1が非接触通信リーダライタに翳された時の翳し面方向を、より正確且つ確実に検知することができることになる。
【0054】
なお、この第四の具体例の場合、アンテナパターンの平面部が略々同じ方向となっている翳し面方向検出用アンテナのうち、互いに異なる筐体外壁面側に配された翳し面方向検出用アンテナの間には、電磁遮蔽板等を設けることが望ましい。
【0055】
[第五の具体例]
図6には、上述の第四の具体例のように、翳し面方向検出用アンテナが特に平面状のアンテナパターンを有している場合の他の例として、第五の具体例の携帯電話端末1を示している。
【0056】
上述のように翳し面方向検出用アンテナのアンテナパターンを平面状にし、端末1が非接触通信リーダライタに翳された時の翳し面方向を正確且つ確実に検知可能とした場合には、翳し面方向検出用アンテナの個数を図6のように減らすことも可能となる。
【0057】
この図6に示す第五の具体例では、携帯電話端末1が有する六つの筐体外壁面に対してそれぞれ一つの翳し面方向検出用アンテナを配置した例を挙げている。
【0058】
すなわち第五の具体例において、ディスプレイ部2のA面側には、その筐体外壁面に対して略々並行なアンテナパターン面を有する一つの翳し面方向検出用アンテナ10aのみを設ける。また、B面側には、その筐体外壁面に対して略々並行なアンテナパターンを有する一つの翳し面方向検出用アンテナ11dのみを設ける。以下同様に、残りの四つの面C,面D,面E,面Fの各筐体外壁面には、それぞれの面に対して略々並行なアンテナパターン面を有する翳し面方向検出用アンテナ12a,13a,12d,13dを設けるようにする。
【0059】
なお、この第五の具体例の場合も第四の具体例と同様に、アンテナパターンの平面部が略々同じ方向に向いている翳し面方向検出用アンテナのうち、互いに異なる筐体外壁面側に配された翳し面方向検出用アンテナの間には、電磁遮蔽板等を設けることが望ましい。 当該第五の具体例の場合、第四の具体例と比較して翳し面方向検出用アンテナの個数を減らすことができるため、端末コストの削減が可能となる。勿論、第五の具体例の場合も第四の具体例と同様に、当該携帯電話端末1が非接触通信リーダライタに翳された時の翳し面方向をより正確且つ確実に検知することが可能である。
【0060】
また、第五の具体例の場合、翳し面方向検出用アンテナ10a,12a,13aのアンテナ群が当該携帯電話端末1の一つの頂点部近傍に纏められて配置されているため、内部回路構成とそれらアンテナ群を結ぶ配線パターンを集約することができる。同様に、翳し面方向検出用アンテナ11d,12d,13dのアンテナ群についても、当該端末の一つの頂点部近傍に纏められて配置されているため、内部回路構成とそれらアンテナ群を結ぶ配線パターンを集約することができる。このように、第五の具体例では、複数のアンテナ用の配線パターンを集約可能となされているため、各アンテナ用の配線パターンを別々に設ける場合に比べて設計コストを削減でき、また部品コストも少なくすることができる。さらに、当該第五の具体例では、筐体内部において配線パターンが占有することになる面積(体積)を少なくすることもできる。
【0061】
[翳し面方向の判定結果に応じたサービス/アプリケーションの設定・起動]
図7には、携帯電話端末の筐体外面の何れの面側が非接触通信リーダライタに翳されたのかを非接触通信制御部30が判定し、その判定結果に応じたサービス/アプリケーションを決定する際の処理の流れを示す。
【0062】
非接触通信制御部30は、非接触通信機能が有効になされている状態の時には、ステップS1の処理として、翳し面方向検出用アンテナの受信レベルを計測している。なお、非接触通信機能が有効になされている状態の時、端末制御部22は、必要に応じて、上記翳し面方向とサービス/アプリケーションの対応関係をディスプレイ部26の画面上に表示する。
【0063】
そして、非接触通信制御部30は、ステップS2の処理として、翳し面方向検出用アンテナからの各受信レベル計測値を比較することにより、当該携帯電話端末1が非接触通信リーダライタへ翳された面方向を検出する。
【0064】
次に、非接触通信制御部30は、ステップS3の処理として、例えば予め登録されている翳し面方向とサービス/アプリケーションとの対応登録テーブルを参照等することにより、ステップS2で検出した翳し面方向に応じたサービス/アプリケーションを決める。なお、あくまで一例であるが、対応登録テーブルには、A面と自動改札サービスとが対応付けられ、B面と決済サービスとが、C面と利用者識別サービスとが、D面とブラウザアプリケーションとが、E面とスケジュールアプリケーションとが、F面とカメラアプリケーションとが対応付けられるようなテーブルとなされているとする。したがってこの例の場合、非接触通信制御部30は、非接触通信リーダライタに翳された面が例えばA面である時には自動改札サービスに決定し、以下同様にB面が翳された時には決済サービスに、D面が翳された時にはブラウザアプリケーションに決定する。なお、対応登録テーブルにおける上記サービス/アプリケーションと翳し面方向との対応付けは、ユーザが任意に設定登録することも可能であるし、また、初期設定として予め登録されていても良い。
【0065】
次に、非接触通信制御部30は、ステップS4の処理として、翳し面方向に応じて決められたのが、非接触通信サービスであるか或いはアプリケーションであるか判定する。そして、非接触通信制御部30は、非接触通信サービスであると判定した場合にはステップS5へ処理を進め、一方アプリケーションであると判定した場合にはステップS7へ処理を進める。
【0066】
上記ステップS4にて非接触通信サービスであると判定してステップS5の処理に進むと、非接触通信制御部30は、自らが設定可能な複数の非接触通信サービスのうち、ステップS3にて決定されたサービスを利用可能とする設定を自動的に行う。すなわち、非接触通信制御部30は、ステップS3で決定されたサービスが例えば自動改札サービスである場合には、自動改札機への通過処理等に関連するサービスを利用可能に設定し、また例えば決済サービスである場合には、決済処理等に関連するサービスを利用可能に設定する。
【0067】
一方、ステップS4にてアプリケーションであると判定してステップS6の処理に進むと、非接触通信制御部30は、ステップS3にて決定されたアプリケーションを示す情報(ID等)を端末制御部22へ通知する。この時の端末制御部22は、当該アプリケーションIDに応じたアプリケーションを自動的に起動させる。すなわちこの場合の端末制御部22は、ステップS3で決定されたアプリケーションが例えばブラウザアプリケーションである場合には、ブラウザアプリケーションを起動し、また例えば、スケジュールアプリケーションである場合には、スケジュール帳のアプリケーションを起動する。
【0068】
[まとめ]
本発明実施形態によれば、非接触通信のサービス設定やアプリケーション起動と、携帯電話端末を非接触通信リーダライタへ翳す時の翳し面方向とが対応付けられているため、ユーザは、サービス選択やアプリケーション起動を行う際に、当該端末のキー操作等を行う必要がない。
【0069】
また本発明実施形態の場合、上記サービス/アプリケーションと翳し面方向との対応付けが、必要に応じてディスプレイ画面上に表示されるため、ユーザは、その画面表示を見ることにより、何れの面にどのサービス/アプリケーションが登録されているのかを容易に知ることができる。
【0070】
このように、本発明実施形態においては、複数のサービスやアプリケーションの中から、所望のサービスやアプリケーションをスピーディー且つスムースに選択可能となっており、ユーザの利便性が非常に高い携帯電話端末を実現可能となっている。
【0071】
なお、上述した本発明の各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0072】
端末を翳す方向に対応付けられたサービスやアプリケーションについても、上述の実施形態で挙げたものは一例である。したがって、本実施形態に挙げたものとは異なる他のサービスやアプリケーションであっても、本発明は適用可能である。
【0073】
その他、例えば或るアプリケーションが既に起動している状態の時に、そのアプリケーション内における複数の設定や動作等を選択するような場合にも本発明は適用可能である。すなわちこの場合、或るアプリケーション内における各設定/動作と各翳し面方向とを対応付けておくことにより、当該アプリケーション内における設定/動作を当該端末を翳した方向に応じて自動選択するようなことも可能となる。
【0074】
また、本発明は、携帯電話端末に限定されず、非接触通信機能を有する他の各種の機器にも適用可能である。それら機器としては、例えばいわゆるPDA端末や携帯型テレビゲーム機、携帯型ディジタルテレビジョン受信機、カーナビゲーション装置など様々なものを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】非接触通信機能を備えた携帯電話端末の基本的な内部構成を示すブロック図である。
【図2】非接触通信用アンテナと翳し面方向検出用アンテナとが別々に設けられた場合の第一の具体例の携帯電話端末の説明に用いる図である。
【図3】非接触通信用アンテナと翳し面方向検出用アンテナとが別々に設けられた場合の第二の具体例の携帯電話端末の説明に用いる図である。
【図4】非接触通信用アンテナが翳し面方向検出用アンテナの機能を兼用している場合の第三の具体例の携帯電話端末の説明に用いる図である。
【図5】非接触通信用アンテナと翳し面方向検出用アンテナとが別々に設けられた場合の第四の具体例の携帯電話端末の説明に用いる図である。
【図6】翳し面方向検出用アンテナが特に平面状のアンテナパターンを有している場合の第五の具体例の携帯電話端末の説明に用いる図である。
【図7】非接触通信制御部が翳し面方向の判定とその判定結果に応じたサービス/アプリケーションの決定を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 携帯電話端末、2、26 ディスプレイ部、3 非接触通信用アンテナ、10a〜10d,11a〜11d,12a〜12d,13a〜13d 翳し面方向検出用アンテナ、20 通信回路、21 通信アンテナ、22 端末制御部、23 メモリ部、24 操作部、25 画像処理部、 27 音声処理部、28 スピーカ、29 マイクロホン、30 非接触通信制御部、31 非接触通信/翳し方向検出アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を構成する複数の筐体面のうち所望の一つの筐体面側が非接触通信読み取り装置へ翳された時に、その翳し面方向を検出する翳し面方向検出部と、
上記翳し面方向検出部にて検出された翳し面方向に応じて、複数の非接触通信サービス若しくは複数アプリケーションの中から、何れか一つの非接触通信サービス若しくは一つのアプリケーションを決定するサービス/アプリケーション決定部と、
上記サービス/アプリケーション決定部により決定された非接触通信サービス若しくはアプリケーションを利用可能に設定する制御部と、
を有する非接触通信端末。
【請求項2】
上記翳し面方向検出部は、上記非接触通信読み取り装置からの非接触通信用の電波の受信レベルを計測し、その計測値により上記翳し面方向を検出する請求項1記載の非接触通信端末。
【請求項3】
上記制御部は、翳し面方向と当該翳し面方向により決定される非接触通信サービス若しくはアプリケーションとの対応関係を画面表示するための表示情報を生成する請求項1記載の非接触通信端末。
【請求項4】
筐体を構成する複数の筐体面のうち所望の一つの筐体面側が非接触通信読み取り装置へ翳された時に、翳し面方向検出部が、その翳し面方向を検出するステップと、
上記翳し面方向検出部にて検出された翳し面方向に応じて、サービス/アプリケーション決定部が、複数の非接触通信サービス若しくは複数アプリケーションの中から、何れか一つの非接触通信サービス若しくは一つのアプリケーションを決定するステップと、
上記サービス/アプリケーション決定部により決定された非接触通信サービス若しくはアプリケーションを、制御部が利用可能に設定するステップと、
を有する非接触通信端末制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−10957(P2010−10957A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166399(P2008−166399)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】