非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体
【課題】ICチップ上に曲げなどによる破壊から保護するための補強部材が載置されている非接触ICインレット及び非接触ICカード等において、曲げや押圧などに対する機械的強度が向上し、かつ載置時の傾きや位置(角度等)のコントロールが容易な補強部材が載置されている非接触ICインレット及び非接触ICカードの提供。
【解決手段】カード基体32内に、ICチップ20と、アンテナとが内蔵している非接触ICカード2において、前記ICチップ20上に封止樹脂を介して該ICチップ20を保護する補強部材10が載置され、この補強部材10は、開口部周縁につば部14を備え、深さが一定の凹部12を有するトレー状でなり、この凹部12に前記ICチップ20全体が嵌め込まれている非接触ICカード2とするものである。
【解決手段】カード基体32内に、ICチップ20と、アンテナとが内蔵している非接触ICカード2において、前記ICチップ20上に封止樹脂を介して該ICチップ20を保護する補強部材10が載置され、この補強部材10は、開口部周縁につば部14を備え、深さが一定の凹部12を有するトレー状でなり、この凹部12に前記ICチップ20全体が嵌め込まれている非接触ICカード2とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有の識別情報を格納したICチップと、そのICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えている非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に関するものであり、特に、そのICチップを外部応力(曲げや押圧等)による破壊から保護するための補強部材を設けた非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接点付(接触型)ICカードでは、接点への静電気の影響や汚れなどにより、ICチップの破壊や通信不良などが発生したが、近年の個有の識別情報を格納したICチップとそのICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えている非接触ICカードの場合は、静電気や汚れに対して強く、ICチップの破壊や通信不良などの事故のないものとして、鉄道の定期券を始め様々な分野へ応用されている。
【0003】
上記非接触ICカードは、ISO/JISで規格されるサイズにより、厚み約0.76mm程度のものが一般的に流通している。そのため内蔵されるICチップやアンテナ等の電子部品は極薄く加工する必要がある。一方、非接触ICカードは普段から定期券入れやカードケース、あるいは財布等に入れて持ち歩かれ、曲げや強い押圧などの力が加わることが多く、そのため、内蔵されているICチップ等の電子部品の破損を防ぐ必要があり、とりわけ、破壊し易いICチップの破壊を防ぐため、従来はこのICチップ上に補強板を設けているものがある。
【0004】
上記補強板を設けたものを具体的に説明すると、例えば、図11の側断面図に示すように、ICチップ(103)は基板上に実装され、その上に封止樹脂(102)を介して平坦な補強板(101)を設ける。
【0005】
上記封止樹脂(102)は、エポキシ系の樹脂にフィラーが入ったものが用いられことが多い。この封止樹脂(102)をポッティング法等にてICチップ(103)上に滴下したのち補強板(101)を載せ、その状態で接着剤を恒温槽で硬化させて、補強板付非接触ICインレット(106)としていた。
【0006】
しかし、上記補強板付非接触ICインレット(106)をカード基体(105)内に実装した非接触ICカードでは、例えば、図12の側断面図に示すように、カードの両端が曲がるように変形すると、その力が補強板付非接触ICインレット(106)に加わり、平坦な補強板(101)が載置されているにもかかわらず、その内部のICチップ(103)が破壊される危惧があるので、より強度が高い補強板付非接触ICインレット(106)が望まれていた。
【0007】
また、上記非接触ICインレットの補強に、キャップ状の補強板を設けて強度を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)や、補強板にさらにそれを保護する部材を取付けることによって強度を向上させようとする方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平11−11060号公報
【特許文献2】特開平11−11061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらICチップ上の補強板は、樹脂やセラミック、金属など薄いもので形成されているが、単なる薄い平坦な平板では、補強板そのものが変形してしまい、充分な補強効果が得られなかった。また、補強板をキャップ状にすることによって、ICチップ上部からの力に対してキャップ周辺に力が分散されることも考えられるが、ICチップ上部に充分な厚みがないと、やはり、補強板そのものが変形し、平板のときと同様な状態となってしまう。
【0010】
さらにまた、単なる薄い平板(平坦な補強板)では、ICチップ上にその平坦な補強板を載置(実装装置で実装)するに際し、補強板の傾きや位置のコントロールが困難で、カード化時に補強板が載置されている部分の券面が平滑性に欠け、その上への印刷等に歪み(印刷不良)が発生し見栄えに欠けるという問題点があった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、少なくとも一つのICチップとアンテナとでなり、そのICチップ上に曲げなどによる破壊から保護するための補強部材が載置されている非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体において、曲げや押圧などに対する機械的強度が向上し、かつ載置時の傾きや位置のコントロールが容易な前記補強部材が載置されている非接触IC付シート(非接触ICインレット)、および非接触IC付情報記録媒体(非接触ICカード、デュアルインターフェースカード等)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、支持体となるシート上に、少なくとも一つのICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付シートにおいて、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていることを特徴とする非接触IC付シートとしたものである。
【0013】
また、請求項2の発明では、前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項1記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0014】
また、請求項3の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0015】
また、請求項4の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0016】
また、請求項5の発明では、前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0017】
また、請求項6の発明では、内部に、少なくとも一つの、ICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付情報記録媒体において、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていること
を特徴とする非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0018】
また、請求項7の発明では、前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項6記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0019】
また、請求項8の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0020】
また、請求項9の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0021】
さらにまた、請求項10の発明では、前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0023】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、支持体となるシート上に、少なくとも一つのICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付シートにおいて、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなるので、従来の平坦な補強板に比べ、曲げや上からの押圧に対する機械的強度が向上し、かつ補強部材の凹部外縁によって、シート基材に対し平行に載置することができるので、カード化したときの表面が平滑になり、その上への印刷に欠けなどの印刷不良のない見栄えのする非接触IC付シートとすることができる。
【0024】
また、上記請求項2に係る発明によれば、補強部材の凹部の深さが、ICチップの厚みに準じていることによって、ICチップ全体を補強部材の凹部で被せるように載置する際に、ICチップ全体が凹部に嵌め込まれ、ICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付シートとすることができる。
【0025】
また、上記請求項3に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、四角形状のICチップに対する補強部材の向きを考慮する必要性がなくなるので、四角形状のICチップ上への補強部材の載置(実装装置による実装)がより簡易な非接触IC付シートとすることができる。
【0026】
また、上記請求項4に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチッップが収まる大きさでほぼ同形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、その凹部にICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付シートとすることができる。
【0027】
さらにまた、上記請求項5に係る発明によれば、補強部材を、金属が成形されたものとすることによって、外部からの曲げや上からの押圧に対する機械的強度をより向上せしめ、また、補強部材が導電性の金属でなるので、この凹部周縁の一部にアンテナ配線等の電
気部品をなす導電体に接触しないように切欠きを設けて、補強部材がアンテナと接触しないようにして、アンテナのショートを防止するとともに、封止時における補強部材の凹部内の封止樹脂に溜まる気泡をも防止することが可能な非接触IC付シートとすることができる。
【0028】
また、上記請求項6に係る発明によれば、カード基体内のICチップ上に封止樹脂を介して載置する補強部材が凹部を有するトレー状でなるので、従来の平坦な補強板に比べ、曲がりや上からの押圧に対する機械的強度が向上し、かつカード基体に対し平行に載置することができるので、カード化したときの表面が平滑になり、その上への印刷に欠けなどの印刷不良のない見栄えのする非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0029】
また、上記請求項7に係る発明によれば、補強部材の凹部の深さが、ICチップの厚みに準じていることによって、ICチップ全体を補強部材の凹部で被せるように載置する際に、ICチップ全体が凹部に嵌め込まれ、ICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0030】
また、上記請求項8に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、四角形状のICチップに対する補強部材の向きを考慮する必要性がなくなるので、四角形状のICチップ上への補強部材の載置(実装装置による実装)がより簡易な非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0031】
また、上記請求項9に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチッップが収まる大きさでほぼ同形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、その凹部にICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0032】
さらにまた、上記請求項10に係る発明によれば、補強部材を、金属が成形されたものとすることによって、外部からの曲げや上からの押圧に対する機械的強度をより向上せしめ、また、補強部材が導電性の金属でなるので、この凹部周縁の一部にアンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接触しないように切欠きを設けて、補強部材がアンテナと接触しないようにして、アンテナのショートを防止するとともに、封止時における補強部材の凹部内の封止樹脂に溜まる気泡をも防止することが可能な非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0033】
従って本発明は、固有の識別情報を格納したICチップと、そのICチップが非接触方式の通信を行うアンテナとを備えた非接触ICカード等として、鉄道の定期券の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
本発明の非接触IC付シートは、例えば、図1の側断面図に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等比較的強靱なシート基材(30)上に、アンテナ(図示せず)とICチップ(20)が載置され、そのICチップ(20)上に、エポキシ系の封止樹脂(図示せず)を滴下した後、中央に凹部(12)を有し、その凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー形状の補強部材(10)を、その凹部(12)で被せるように載置した非接触ICインレット(1)である。
【0036】
また、本発明の非接触IC付情報記録媒体は、例えば、図2の側断面図に示すように、非晶質のポリエステル樹脂等でなるカード基体(32)内に、アンテナ(図示せず)とICチップ(20)を内蔵していて、そのICチップ(20)に、中央に凹部(12)を有し、その凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー形状の補強部材(10)を、エポキシ系の封止樹脂(図示せず)を介して、その凹部(12)で被せるように載置(実装)した非接触ICカード(2)である。
【0037】
また、本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例として、例えば、図3の側断面図に示すように、上記図1に示す非接触ICインレット(1)をカード基体(32)内に実装した形態の非接触ICカード(2)とすることもできる。
【0038】
さらにまた、本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例として、例えば、図4(a)の斜視図およびそのB−B面を表す図4(b)の断面図に示すように、非晶質のポリエステル樹脂等でなるカード基体(32)上にアンテナ(26)とICチップ(20)が載置され、そのICチップ(20)に、中央に凹部(12)を有し、その凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー形状の補強部材(10)を、エポキシ系の封止樹脂(図示せず)を介して、その凹部(12)で被せるように載置(実装)したもの上に、紫外線硬化樹脂などを用いてカードの厚みを均一にする保護層(24)を施し、その上にスクリーン用白色インキでなる隠蔽層(25)を施した非接触ICカード(2)とすることもできる。
【0039】
このように、ICチップ(20)上に載置する補強部材(10)が中央に凹部(12)を有し、この凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー状でなるので、例えば、図11に示す従来の平坦な補強板(101)に比べ、曲げや上からの押圧に対する機械的強度が向上し、かつ凹部(12)の周縁につば部(14)を備えていることによって、シート基材(30)またはカード基体(32)に対し平行に載置(実装)することができるので、補強部材(10)の位置精度がよく、傾きなどがないので、カード基体(32)内に実装するカード化時の表面が平滑となり、その上への印刷や印字に不良が発生しない非接触ICカード(2)よび非接触IC付情報記録媒体とすることができるとともに、封止樹脂によってそのつば部(14)をシート基材(30)またはカード基体(32)に強固に接着させることもできる。
【0040】
上記トレー形状の補強部材(10)の一事例を、さらに詳しく説明すると、例えば、図5(a)の斜視図およびそのB−B面を表す図5(b)に示すように、深さ(B)が一定で、厚み(D)の薄い板の中央に円形状の凹部(12)が設けられ、この凹部(12)の周縁につば部(14)を有しているトレー状の補強部材(10)である。
【0041】
上記トレー状の補強部材(10)の他の事例を、さらに詳しく説明すると、例えば、図6(a)の斜視図およびそのB−B面を表す図6(b)に示すように、深さ(B)が一定で、厚み(D)の薄い板の中央に四角形状の凹部(12)が設けられ、この凹部(12)の周縁につば部(14)を有しているトレー形状の補強部材(10)である。
【0042】
上記トレー状の補強部材(10)の材料として、薄くても強度が高く、かつ加工もし易い金属が好ましく、例えば、SUS(ステンレス)や、鉄、銅、アルミニウムなどが挙げられ、その厚み(D)は、その材料によって異なるが、例えば、SUS(ステンレス)の場合では、50μm程度が中央に凹部(12)を形成した時の曲げや押圧に対する強度や凹部(12)の形成などの加工性の面から好適であり、この加工法としては、プレス加工法あるいは打ち抜き加工法等で得ることができる。
【0043】
上記非接触ICインレット(1)を構成するシート基材(30)としては、例えば、厚み25μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンなフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等強靱なフィルムが挙げられ、その用途などによって適宜選定することができる。
【0044】
また、上記非接触ICカード(2)を構成するカード基体(32)としては、ポリ塩化ビニルであってもよいが、近年では環境に配慮された非晶質のポリエステル樹脂(PET−G:イーストマンケミカル社製)が主流となっている。また、図4(a)、図4(b)に示すような場合は、250μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)なども使用することができる。
【0045】
また、ICチップ(20)の周囲を封止する封止樹脂としては、前述のようにエポキシ樹脂が主に使用するが、その他にシリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはポリフェニレンサルファイトなどを用いてもよく、トランスファ成形法やポッティング法などで封止することができる。
【0046】
また、アンテナ(26)の形成は、一般的には、支持体となるシート基材(30)に貼られた銅箔やアルミニウム箔をエッチング法によって所望のパターンのアンテナを得ることができる。さらにまた、例えば銀ペースト等導電性インキを用い、スクリーン印刷法で所望のパターンのアンテナを得ることもできる。
【0047】
また、上記請求項2および請求項7に係る発明では、図1に示す補強部材(10)の中央に設ける凹部(12)の深さ(B)は、その中に載置されるICチップ(20)の厚みに準ずるもので、50〜200μm程度が好適であり、この程度の深さ(B)とすることによって、例えば、図1に示すように、ICチップ(20)全体を補強部材(10)の凹部(12)で覆うようにする実装するに際し、ICチップ(20)全体がこの凹部(12)に嵌め込まれ、かつ凹部周縁のつば部(14)がシート基材(30)に密着され、そのつば部(14)とシート基材(30)が強固に接着するようになる。また、この程度の深さ(B)とすることによって、曲げや押圧に対し、充分な機械的強度の非接触ICインレット(1)および非接触ICカード(2)とすることができる。
【0048】
また、上記請求項3および請求項8に係る発明では、例えば、図7の上面図に示すように、凹部周縁に円形状のつば部(14)を有するトレー形状の補強部材(10)の凹部開口部の形状は、四角形状のICチップ(20)が収まる大きさでその4角(22)が接するような円形状を成しているものである。
【0049】
このように、補強部材(10)の凹部周縁の輪郭の形状を、四角形状のICチップ(20)が収まる大きさでその4角(22)が接するような円形状とすることによって、四角形状のICチップ(20)上への補強部材(10)の載置(実装装置による実装)に際し、四角形状のICチップ(20)に対する補強部材(10)の向きを考慮する必要がなくなるので、四角形状のICチップ(20)上への補強部材(10)の載置(実装装置による実装)をより簡易にすることができる。
【0050】
また、上記請求項4および請求項9に係る発明では、例えば、図8の上面図に示すように、凹部周縁に略円形状のつば部(14)を有するトレー形状の補強部材(10)の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップ(20)の形状と略同一で、四角形状のICチップ(20)全体が嵌め込まれる形状、すなわち四角形状を成しているものである。
【0051】
このように、補強部材(10)の凹部開口部の形状を、四角形状のICチップ(20)の形状と略同一で、四角形状のICチップ(20)全体が嵌め込まれる形状とすることに
よって、四角形状のICチップ(20)上への補強部材(10)の載置(実装装置による実装)に際し、その四角形状の凹部(12)に四角形状のICチップ(20)全体をしっかりと嵌め込み固定することができ、その結果、補強部材(10)の傾きやその位置のコントロールを容易なものとすることができる。
【0052】
また、上記請求項5および請求項10に係る発明では、例えば、図9の斜視図に示すように、補強部材(10)は、厚みの薄い金属板でなり、つば部(14)を含めた円形状の補強部材(10)の凹部(12)周縁の一部に2本のアンテナ(26)の端子を引き出す切欠き(16)が設けられているものであり、この切欠き(16)の刻設によって、金属でなる導電性の補強部材(10)が2本のアンテナ(26)と接触しないようにして、アンテナ(26)のショートを防止するとともに、封止時における補強部材(10)の凹部(12)内の封止樹脂に混入する気泡溜まりをも防止する図1に示す非接触ICインレット(1)および図2に示す非接触ICカード(2)とすることができる。
【0053】
また、例えば、図10の斜視図に示すように、補強部材(10)は、厚みの薄い金属板でなり、つば部(14)を含めた四角形状の補強部材(10)の凹部周縁の一部に2本のアンテナ(26)の端子を引き出す2本の切欠き(16)が設けられているものであり、この切欠き(16)の刻設によって、金属でなる導電性の補強部材(10)が2本のアンテナ(26)と接触しないようにした図1に示す非接触ICインレット(1)および図2に示す非接触ICカード(2)とすることもできる。
【0054】
以上のような、一定の深さの凹部を有するトレー状の補強部材が実装された本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体は、非接触ICインレットおよび非接触カードの他、例えば、インターフェース手段の違いによる接触型(外部端子付)ICカードと非接触型(外部端子なしの)ICカードの方式を組み合わせたICカード(ハイブリッドカード或いはデュアルインターフェースカードと称される)等にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の非接触IC付シートの一事例を側断面で表した説明図である。
【図2】本発明の非接触IC付情報記録媒体の一事例を側断面で表した説明図である。
【図3】本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例を側断面で表した説明図である。
【図4】本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例を説明するもので、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)のB−B面を表す側断面図である。
【図5】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の一事例を説明するもので、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)のB−B面を表す側断面図である。
【図6】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の他の事例を説明するもので、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)のB−B面を表す側断面図である。
【図7】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される一事例の補強部材にICチップを載置した時の上面図である。
【図8】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される他の事例の補強部材にICチップを載置した時の上面図である。
【図9】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の一形態を説明する斜視図である。
【図10】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の他の形態を説明する斜視図である。
【図11】従来の補強板付非接触ICインレットを説明する側断面図である。
【図12】従来の補強板付非接触ICカードを説明する側断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1‥‥非接触ICインレット
2‥‥非接触ICカード
10‥‥補強部材
12‥‥補強部材の凹部
14‥‥補強部材のつば部
16‥‥切欠き
20‥‥ICチップ
22‥‥ICチップの4角
24‥‥保護層
25‥‥隠蔽層
26‥‥アンテナ
30‥‥シート基材
32‥‥カード基体
101‥‥従来の非接触ICインレットの補強板
102‥‥従来の非接触ICインレットの封止樹脂
103‥‥従来の非接触ICインレットのICチップ
104‥‥従来の非接触ICインレットの基板
105‥‥従来の非接触ICインレットのカード基体
105‥‥従来の非接触ICインレット
B‥‥補強部材の凹部の深さ
D‥‥補強部材の厚み
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有の識別情報を格納したICチップと、そのICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えている非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に関するものであり、特に、そのICチップを外部応力(曲げや押圧等)による破壊から保護するための補強部材を設けた非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接点付(接触型)ICカードでは、接点への静電気の影響や汚れなどにより、ICチップの破壊や通信不良などが発生したが、近年の個有の識別情報を格納したICチップとそのICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えている非接触ICカードの場合は、静電気や汚れに対して強く、ICチップの破壊や通信不良などの事故のないものとして、鉄道の定期券を始め様々な分野へ応用されている。
【0003】
上記非接触ICカードは、ISO/JISで規格されるサイズにより、厚み約0.76mm程度のものが一般的に流通している。そのため内蔵されるICチップやアンテナ等の電子部品は極薄く加工する必要がある。一方、非接触ICカードは普段から定期券入れやカードケース、あるいは財布等に入れて持ち歩かれ、曲げや強い押圧などの力が加わることが多く、そのため、内蔵されているICチップ等の電子部品の破損を防ぐ必要があり、とりわけ、破壊し易いICチップの破壊を防ぐため、従来はこのICチップ上に補強板を設けているものがある。
【0004】
上記補強板を設けたものを具体的に説明すると、例えば、図11の側断面図に示すように、ICチップ(103)は基板上に実装され、その上に封止樹脂(102)を介して平坦な補強板(101)を設ける。
【0005】
上記封止樹脂(102)は、エポキシ系の樹脂にフィラーが入ったものが用いられことが多い。この封止樹脂(102)をポッティング法等にてICチップ(103)上に滴下したのち補強板(101)を載せ、その状態で接着剤を恒温槽で硬化させて、補強板付非接触ICインレット(106)としていた。
【0006】
しかし、上記補強板付非接触ICインレット(106)をカード基体(105)内に実装した非接触ICカードでは、例えば、図12の側断面図に示すように、カードの両端が曲がるように変形すると、その力が補強板付非接触ICインレット(106)に加わり、平坦な補強板(101)が載置されているにもかかわらず、その内部のICチップ(103)が破壊される危惧があるので、より強度が高い補強板付非接触ICインレット(106)が望まれていた。
【0007】
また、上記非接触ICインレットの補強に、キャップ状の補強板を設けて強度を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)や、補強板にさらにそれを保護する部材を取付けることによって強度を向上させようとする方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平11−11060号公報
【特許文献2】特開平11−11061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらICチップ上の補強板は、樹脂やセラミック、金属など薄いもので形成されているが、単なる薄い平坦な平板では、補強板そのものが変形してしまい、充分な補強効果が得られなかった。また、補強板をキャップ状にすることによって、ICチップ上部からの力に対してキャップ周辺に力が分散されることも考えられるが、ICチップ上部に充分な厚みがないと、やはり、補強板そのものが変形し、平板のときと同様な状態となってしまう。
【0010】
さらにまた、単なる薄い平板(平坦な補強板)では、ICチップ上にその平坦な補強板を載置(実装装置で実装)するに際し、補強板の傾きや位置のコントロールが困難で、カード化時に補強板が載置されている部分の券面が平滑性に欠け、その上への印刷等に歪み(印刷不良)が発生し見栄えに欠けるという問題点があった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、少なくとも一つのICチップとアンテナとでなり、そのICチップ上に曲げなどによる破壊から保護するための補強部材が載置されている非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体において、曲げや押圧などに対する機械的強度が向上し、かつ載置時の傾きや位置のコントロールが容易な前記補強部材が載置されている非接触IC付シート(非接触ICインレット)、および非接触IC付情報記録媒体(非接触ICカード、デュアルインターフェースカード等)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、支持体となるシート上に、少なくとも一つのICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付シートにおいて、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていることを特徴とする非接触IC付シートとしたものである。
【0013】
また、請求項2の発明では、前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項1記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0014】
また、請求項3の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0015】
また、請求項4の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0016】
また、請求項5の発明では、前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触IC付シートとしたものである。
【0017】
また、請求項6の発明では、内部に、少なくとも一つの、ICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付情報記録媒体において、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていること
を特徴とする非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0018】
また、請求項7の発明では、前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項6記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0019】
また、請求項8の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0020】
また、請求項9の発明では、前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【0021】
さらにまた、請求項10の発明では、前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体としたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0023】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、支持体となるシート上に、少なくとも一つのICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付シートにおいて、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなるので、従来の平坦な補強板に比べ、曲げや上からの押圧に対する機械的強度が向上し、かつ補強部材の凹部外縁によって、シート基材に対し平行に載置することができるので、カード化したときの表面が平滑になり、その上への印刷に欠けなどの印刷不良のない見栄えのする非接触IC付シートとすることができる。
【0024】
また、上記請求項2に係る発明によれば、補強部材の凹部の深さが、ICチップの厚みに準じていることによって、ICチップ全体を補強部材の凹部で被せるように載置する際に、ICチップ全体が凹部に嵌め込まれ、ICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付シートとすることができる。
【0025】
また、上記請求項3に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、四角形状のICチップに対する補強部材の向きを考慮する必要性がなくなるので、四角形状のICチップ上への補強部材の載置(実装装置による実装)がより簡易な非接触IC付シートとすることができる。
【0026】
また、上記請求項4に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチッップが収まる大きさでほぼ同形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、その凹部にICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付シートとすることができる。
【0027】
さらにまた、上記請求項5に係る発明によれば、補強部材を、金属が成形されたものとすることによって、外部からの曲げや上からの押圧に対する機械的強度をより向上せしめ、また、補強部材が導電性の金属でなるので、この凹部周縁の一部にアンテナ配線等の電
気部品をなす導電体に接触しないように切欠きを設けて、補強部材がアンテナと接触しないようにして、アンテナのショートを防止するとともに、封止時における補強部材の凹部内の封止樹脂に溜まる気泡をも防止することが可能な非接触IC付シートとすることができる。
【0028】
また、上記請求項6に係る発明によれば、カード基体内のICチップ上に封止樹脂を介して載置する補強部材が凹部を有するトレー状でなるので、従来の平坦な補強板に比べ、曲がりや上からの押圧に対する機械的強度が向上し、かつカード基体に対し平行に載置することができるので、カード化したときの表面が平滑になり、その上への印刷に欠けなどの印刷不良のない見栄えのする非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0029】
また、上記請求項7に係る発明によれば、補強部材の凹部の深さが、ICチップの厚みに準じていることによって、ICチップ全体を補強部材の凹部で被せるように載置する際に、ICチップ全体が凹部に嵌め込まれ、ICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0030】
また、上記請求項8に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、四角形状のICチップに対する補強部材の向きを考慮する必要性がなくなるので、四角形状のICチップ上への補強部材の載置(実装装置による実装)がより簡易な非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0031】
また、上記請求項9に係る発明によれば、補強部材の凹部外縁の輪郭の形状が、四角形状のICチッップが収まる大きさでほぼ同形状であることによって、補強部材の載置(実装装置による実装)に際し、その凹部にICチップ全体がしっかりと固定されるので、補強部材の傾きや位置のコントロールが容易となる非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0032】
さらにまた、上記請求項10に係る発明によれば、補強部材を、金属が成形されたものとすることによって、外部からの曲げや上からの押圧に対する機械的強度をより向上せしめ、また、補強部材が導電性の金属でなるので、この凹部周縁の一部にアンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接触しないように切欠きを設けて、補強部材がアンテナと接触しないようにして、アンテナのショートを防止するとともに、封止時における補強部材の凹部内の封止樹脂に溜まる気泡をも防止することが可能な非接触IC付情報記録媒体とすることができる。
【0033】
従って本発明は、固有の識別情報を格納したICチップと、そのICチップが非接触方式の通信を行うアンテナとを備えた非接触ICカード等として、鉄道の定期券の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
本発明の非接触IC付シートは、例えば、図1の側断面図に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等比較的強靱なシート基材(30)上に、アンテナ(図示せず)とICチップ(20)が載置され、そのICチップ(20)上に、エポキシ系の封止樹脂(図示せず)を滴下した後、中央に凹部(12)を有し、その凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー形状の補強部材(10)を、その凹部(12)で被せるように載置した非接触ICインレット(1)である。
【0036】
また、本発明の非接触IC付情報記録媒体は、例えば、図2の側断面図に示すように、非晶質のポリエステル樹脂等でなるカード基体(32)内に、アンテナ(図示せず)とICチップ(20)を内蔵していて、そのICチップ(20)に、中央に凹部(12)を有し、その凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー形状の補強部材(10)を、エポキシ系の封止樹脂(図示せず)を介して、その凹部(12)で被せるように載置(実装)した非接触ICカード(2)である。
【0037】
また、本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例として、例えば、図3の側断面図に示すように、上記図1に示す非接触ICインレット(1)をカード基体(32)内に実装した形態の非接触ICカード(2)とすることもできる。
【0038】
さらにまた、本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例として、例えば、図4(a)の斜視図およびそのB−B面を表す図4(b)の断面図に示すように、非晶質のポリエステル樹脂等でなるカード基体(32)上にアンテナ(26)とICチップ(20)が載置され、そのICチップ(20)に、中央に凹部(12)を有し、その凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー形状の補強部材(10)を、エポキシ系の封止樹脂(図示せず)を介して、その凹部(12)で被せるように載置(実装)したもの上に、紫外線硬化樹脂などを用いてカードの厚みを均一にする保護層(24)を施し、その上にスクリーン用白色インキでなる隠蔽層(25)を施した非接触ICカード(2)とすることもできる。
【0039】
このように、ICチップ(20)上に載置する補強部材(10)が中央に凹部(12)を有し、この凹部(12)の周縁につば部(14)を備えたトレー状でなるので、例えば、図11に示す従来の平坦な補強板(101)に比べ、曲げや上からの押圧に対する機械的強度が向上し、かつ凹部(12)の周縁につば部(14)を備えていることによって、シート基材(30)またはカード基体(32)に対し平行に載置(実装)することができるので、補強部材(10)の位置精度がよく、傾きなどがないので、カード基体(32)内に実装するカード化時の表面が平滑となり、その上への印刷や印字に不良が発生しない非接触ICカード(2)よび非接触IC付情報記録媒体とすることができるとともに、封止樹脂によってそのつば部(14)をシート基材(30)またはカード基体(32)に強固に接着させることもできる。
【0040】
上記トレー形状の補強部材(10)の一事例を、さらに詳しく説明すると、例えば、図5(a)の斜視図およびそのB−B面を表す図5(b)に示すように、深さ(B)が一定で、厚み(D)の薄い板の中央に円形状の凹部(12)が設けられ、この凹部(12)の周縁につば部(14)を有しているトレー状の補強部材(10)である。
【0041】
上記トレー状の補強部材(10)の他の事例を、さらに詳しく説明すると、例えば、図6(a)の斜視図およびそのB−B面を表す図6(b)に示すように、深さ(B)が一定で、厚み(D)の薄い板の中央に四角形状の凹部(12)が設けられ、この凹部(12)の周縁につば部(14)を有しているトレー形状の補強部材(10)である。
【0042】
上記トレー状の補強部材(10)の材料として、薄くても強度が高く、かつ加工もし易い金属が好ましく、例えば、SUS(ステンレス)や、鉄、銅、アルミニウムなどが挙げられ、その厚み(D)は、その材料によって異なるが、例えば、SUS(ステンレス)の場合では、50μm程度が中央に凹部(12)を形成した時の曲げや押圧に対する強度や凹部(12)の形成などの加工性の面から好適であり、この加工法としては、プレス加工法あるいは打ち抜き加工法等で得ることができる。
【0043】
上記非接触ICインレット(1)を構成するシート基材(30)としては、例えば、厚み25μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンなフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等強靱なフィルムが挙げられ、その用途などによって適宜選定することができる。
【0044】
また、上記非接触ICカード(2)を構成するカード基体(32)としては、ポリ塩化ビニルであってもよいが、近年では環境に配慮された非晶質のポリエステル樹脂(PET−G:イーストマンケミカル社製)が主流となっている。また、図4(a)、図4(b)に示すような場合は、250μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)なども使用することができる。
【0045】
また、ICチップ(20)の周囲を封止する封止樹脂としては、前述のようにエポキシ樹脂が主に使用するが、その他にシリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはポリフェニレンサルファイトなどを用いてもよく、トランスファ成形法やポッティング法などで封止することができる。
【0046】
また、アンテナ(26)の形成は、一般的には、支持体となるシート基材(30)に貼られた銅箔やアルミニウム箔をエッチング法によって所望のパターンのアンテナを得ることができる。さらにまた、例えば銀ペースト等導電性インキを用い、スクリーン印刷法で所望のパターンのアンテナを得ることもできる。
【0047】
また、上記請求項2および請求項7に係る発明では、図1に示す補強部材(10)の中央に設ける凹部(12)の深さ(B)は、その中に載置されるICチップ(20)の厚みに準ずるもので、50〜200μm程度が好適であり、この程度の深さ(B)とすることによって、例えば、図1に示すように、ICチップ(20)全体を補強部材(10)の凹部(12)で覆うようにする実装するに際し、ICチップ(20)全体がこの凹部(12)に嵌め込まれ、かつ凹部周縁のつば部(14)がシート基材(30)に密着され、そのつば部(14)とシート基材(30)が強固に接着するようになる。また、この程度の深さ(B)とすることによって、曲げや押圧に対し、充分な機械的強度の非接触ICインレット(1)および非接触ICカード(2)とすることができる。
【0048】
また、上記請求項3および請求項8に係る発明では、例えば、図7の上面図に示すように、凹部周縁に円形状のつば部(14)を有するトレー形状の補強部材(10)の凹部開口部の形状は、四角形状のICチップ(20)が収まる大きさでその4角(22)が接するような円形状を成しているものである。
【0049】
このように、補強部材(10)の凹部周縁の輪郭の形状を、四角形状のICチップ(20)が収まる大きさでその4角(22)が接するような円形状とすることによって、四角形状のICチップ(20)上への補強部材(10)の載置(実装装置による実装)に際し、四角形状のICチップ(20)に対する補強部材(10)の向きを考慮する必要がなくなるので、四角形状のICチップ(20)上への補強部材(10)の載置(実装装置による実装)をより簡易にすることができる。
【0050】
また、上記請求項4および請求項9に係る発明では、例えば、図8の上面図に示すように、凹部周縁に略円形状のつば部(14)を有するトレー形状の補強部材(10)の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップ(20)の形状と略同一で、四角形状のICチップ(20)全体が嵌め込まれる形状、すなわち四角形状を成しているものである。
【0051】
このように、補強部材(10)の凹部開口部の形状を、四角形状のICチップ(20)の形状と略同一で、四角形状のICチップ(20)全体が嵌め込まれる形状とすることに
よって、四角形状のICチップ(20)上への補強部材(10)の載置(実装装置による実装)に際し、その四角形状の凹部(12)に四角形状のICチップ(20)全体をしっかりと嵌め込み固定することができ、その結果、補強部材(10)の傾きやその位置のコントロールを容易なものとすることができる。
【0052】
また、上記請求項5および請求項10に係る発明では、例えば、図9の斜視図に示すように、補強部材(10)は、厚みの薄い金属板でなり、つば部(14)を含めた円形状の補強部材(10)の凹部(12)周縁の一部に2本のアンテナ(26)の端子を引き出す切欠き(16)が設けられているものであり、この切欠き(16)の刻設によって、金属でなる導電性の補強部材(10)が2本のアンテナ(26)と接触しないようにして、アンテナ(26)のショートを防止するとともに、封止時における補強部材(10)の凹部(12)内の封止樹脂に混入する気泡溜まりをも防止する図1に示す非接触ICインレット(1)および図2に示す非接触ICカード(2)とすることができる。
【0053】
また、例えば、図10の斜視図に示すように、補強部材(10)は、厚みの薄い金属板でなり、つば部(14)を含めた四角形状の補強部材(10)の凹部周縁の一部に2本のアンテナ(26)の端子を引き出す2本の切欠き(16)が設けられているものであり、この切欠き(16)の刻設によって、金属でなる導電性の補強部材(10)が2本のアンテナ(26)と接触しないようにした図1に示す非接触ICインレット(1)および図2に示す非接触ICカード(2)とすることもできる。
【0054】
以上のような、一定の深さの凹部を有するトレー状の補強部材が実装された本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体は、非接触ICインレットおよび非接触カードの他、例えば、インターフェース手段の違いによる接触型(外部端子付)ICカードと非接触型(外部端子なしの)ICカードの方式を組み合わせたICカード(ハイブリッドカード或いはデュアルインターフェースカードと称される)等にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の非接触IC付シートの一事例を側断面で表した説明図である。
【図2】本発明の非接触IC付情報記録媒体の一事例を側断面で表した説明図である。
【図3】本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例を側断面で表した説明図である。
【図4】本発明の非接触IC付情報記録媒体の他の事例を説明するもので、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)のB−B面を表す側断面図である。
【図5】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の一事例を説明するもので、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)のB−B面を表す側断面図である。
【図6】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の他の事例を説明するもので、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)のB−B面を表す側断面図である。
【図7】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される一事例の補強部材にICチップを載置した時の上面図である。
【図8】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される他の事例の補強部材にICチップを載置した時の上面図である。
【図9】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の一形態を説明する斜視図である。
【図10】本発明の非接触IC付シート、および非接触IC付情報記録媒体に実装される補強部材の他の形態を説明する斜視図である。
【図11】従来の補強板付非接触ICインレットを説明する側断面図である。
【図12】従来の補強板付非接触ICカードを説明する側断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1‥‥非接触ICインレット
2‥‥非接触ICカード
10‥‥補強部材
12‥‥補強部材の凹部
14‥‥補強部材のつば部
16‥‥切欠き
20‥‥ICチップ
22‥‥ICチップの4角
24‥‥保護層
25‥‥隠蔽層
26‥‥アンテナ
30‥‥シート基材
32‥‥カード基体
101‥‥従来の非接触ICインレットの補強板
102‥‥従来の非接触ICインレットの封止樹脂
103‥‥従来の非接触ICインレットのICチップ
104‥‥従来の非接触ICインレットの基板
105‥‥従来の非接触ICインレットのカード基体
105‥‥従来の非接触ICインレット
B‥‥補強部材の凹部の深さ
D‥‥補強部材の厚み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体となるシート上に、少なくとも一つのICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付シートにおいて、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていることを特徴とする非接触IC付シート。
【請求項2】
前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項1記載の非接触IC付シート。
【請求項3】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シート。
【請求項4】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シート。
【請求項5】
前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触IC付シート。
【請求項6】
内部に、少なくとも一つの、ICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付情報記録媒体において、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていることを特徴とする非接触IC付情報記録媒体。
【請求項7】
前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項6記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項8】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項9】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項10】
前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項1】
支持体となるシート上に、少なくとも一つのICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付シートにおいて、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていることを特徴とする非接触IC付シート。
【請求項2】
前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項1記載の非接触IC付シート。
【請求項3】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シート。
【請求項4】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触IC付シート。
【請求項5】
前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触IC付シート。
【請求項6】
内部に、少なくとも一つの、ICチップと、該ICチップが非接触方式の通信を行うアンテナを備えた非接触IC付情報記録媒体において、前記ICチップ上に封止樹脂を介して該ICチップを保護する補強部材が載置され、該補強部材は、凹部を有するトレー状でなり、該凹部に前記ICチップ全体が嵌め込まれていることを特徴とする非接触IC付情報記録媒体。
【請求項7】
前記補強部材の凹部の深さは、ICチップの厚みに準じていることを特徴とする請求項6記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項8】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさの円形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項9】
前記補強部材の凹部外縁の輪郭の形状は、四角形状のICチップが収まる大きさでほぼ同形状であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体。
【請求項10】
前記補強部材は、金属でなり、アンテナ配線等の電気部品をなす導電体に接しないように切欠きが設けられていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の非接触IC付情報記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−179142(P2007−179142A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374239(P2005−374239)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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