説明

非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法および非極性−極性オレフィン共重合体

【課題】優れた性質を示す非極性−極性オレフィン共重合体および該共重合体を温和な重合条件でかつ高い効率で得ることのできる製造方法を提供すること。
【解決手段】非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法は、一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)と、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とからなるオレフィン重合用触媒の存在下に、非極性オレフィンと極性オレフィンを共重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非極性オレフィンと極性オレフィンとの共重合体の製造方法に関し、さらに詳しくはα−オレフィンと特定の極性オレフィンとの共重合体および該共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にオレフィン重合体は、機械的特性などに優れているため、各種成形体用途など種々の分野に用いられている。しかし近年オレフィン重合体に対する物性の要求が多様化し、様々な性状のオレフィン重合体が望まれている。このような要求を満たすオレフィン重合体としては、例えば非極性オレフィンと極性オレフィンとを共重合させた非極性−極性オレフィン共重合体が知られている。非極性のポリオレフィンに極性基を導入することにより、強度・靭性などの機械物性の向上、他の極性ポリマーとの相溶性の向上、接着性・透過性・加工性・親水性の向上などが期待できる。
【0003】
非極性オレフィンと極性オレフィンとを共重合させた非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法としては、従来からラジカル重合法がよく知られており、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エルテル共重合体などがこの方法で製造されている。ラジカル重合法で非極性−極性オレフィン共重合体を製造する際には、高温高圧の反応条件を必要とする場合が多く、より温和な条件で非極性−極性オレフィン共重合体を得る方法が望まれている。特開2004−51934号公報(特許文献1)には、ルテニウム錯体を用いることにより室温に近い温度で1−ヘキセンとメチルアクリレートを重合する方法が開示されているものの、これらの方法によるポリマーは非極性モノマーの含量が低く、ポリオレフィン本来の性質を示す重合体が得られていない。
【0004】
一方、温和な条件で非極性−極性オレフィン共重合体を得る方法として、ラジカル重合の他、遷移金属錯体触媒を用いた配位重合により非極性オレフィンと極性オレフィンとを共重合させる方法が報告されている。例えば、Brookhartらはパラジウムのジイミン錯体を用いて温和な条件でエチレンなどの非極性オレフィンとアクリル酸メチルとの共重合体を得る方法を報告している(非特許文献1および2)。またGrubbsらはニッケル錯体を用い、極性基を持つノルボルネン類とエチレンの共重合を報告している(非特許文献3および4)。一般にこれら後周期金属を用いたオレフィン重合では、ポリマー鎖に分岐が生じ、直鎖ポリオレフィンに特有の機械的特性、たとえば高強度・高結晶性などを持つものは合成できない。また、Pughらは系中で発生させたパラジウム触媒を用い、エチレンとアクリル酸メチルとを共重合させ、直鎖状のエチレン−アクリル酸メチル共重合体を得ることに成功しているが、その重合活性は極端に低い(非特許文献5)。前周期金属を用いた例として、特開2003−231710号公報(特許文献2)には層状化合物とジルコニウム化合物によるプロピレンとケイ素保護基を持つアリルアミンとの共重合法が、また特開2002−201225号公報(特許文献3)ではジルコニウム化合物によるプロピレンとアルミニウム化合物で保護した5−ヘキセン−1−オールの共重合法が開示されているが、両者とも極性モノマーに保護基を必要とし、かつ前者の場合、得られたポリマーの極性基含有率が0.68重量%程度と非常に低く、十分とはいえない。また、本出願人は、特開2002−155109号公報(特許文献4)において、メタロセン触媒を用いた環状オレフィンと極性オレフィンとから得られる極性基含有オレフィン共重合体の製造方法を提案しているが、重合には添加した極性オレフィン当量以上のアルキルアルミニウム化合物を必要とするため、コスト的に不利な上に、重合の後工程でアルキルアルミニウム化合物を除く工程が必要となる。さらに、本出願人は、特開2002−
80515号公報(特許文献5)、特開2006−265541号公報(特許文献6)のなかで、特定の構造を有するサリチルアルドイミン配位子を持つ遷移金属化合物を用いた非極性オレフィンと極性オレフィンの重合方法を提案しているが、重合活性、極性オレフィンの取り込み量は十分とはいえない。
【0005】
このような状況において、優れた性状を有しつつ従来のポリオレフィン共重合体にはない性質を示す非極性−極性オレフィン共重合体、およびこれらを高効率で製造しうるような製造方法の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−051934号公報
【特許文献2】特開2003−231710号公報
【特許文献3】特開2002−201225号公報
【特許文献4】特開2002−155109号公報
【特許文献5】特開2002−080515号公報
【特許文献6】特開2006−265541号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1998,120巻,888頁
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.1996,118巻,267頁
【非特許文献3】Organometallics2004,23巻,5121頁
【非特許文献4】Science 2000,287巻,460頁
【非特許文献5】Chem. Commun.2002,744頁.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、優れた性状を有しつつ従来のポリオレフィン共重合体にはない性質を示す非極性−極性オレフィン共重合体を提供することを目的としている。またこれら非極性−極性オレフィン共重合体を温和な重合条件でかつ高い効率で製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する遷移金属化合物を含む触媒を用いることによって、優れた非極性−極性オレフィン共重合体を生成させることが可能であることを見出し、さらにはその効率的製造法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明による非極性−極性オレフィン共重合体およびその製造方法とは、
下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)と、
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Mは周期表第4族または5族の遷移金属原子を示し、mは、1〜4の整数を示し、R1〜R4は、互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、R5は、水素原子、1級または2級
炭素のみからなる炭素数1〜4の炭化水素基、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基、アリール基置換アルキル基、単環性または二環性の脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基から選ばれ、R6〜R10は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、
炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R6
〜R10のうち1つ以上がケイ素含有基であり、これらR6〜R10のうちの2個以上が互い
に連結して環を形成していてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
(B)(B−1)有機金属化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、非極性オレフィンと極性オレフィンを共重合させることを特徴とする非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法である。
【0013】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、mが2であり、Mがチタン原子であることが好ましい。さらに、R5がフェニル基であることが好ましい。
【0014】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、R6〜R10に含まれるケ
イ素含有基中の炭素原子数が4以上であることが好ましい。
【0015】
本発明による非極性−極性オレフィン共重合体は、前記した非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法により得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明における、特定の構造を有する遷移金属化合物を含む触媒を用いた非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法によれば、極性モノマーを共重合体中に効率的に取り込むことができるという利点がある。また、当該製造方法によれば、非極性−極性オレフィン共重合体を高い効率で製造することができるという利点がある。当該発明の効果は、上記
一般式(I)で表わされる遷移金属化合物(A)における、(i)ケイ素含有基の三次元的かさ高さによる重合活性向上、(ii)ケイ素部の特異な電子的性質(高いHOMOエネルギー準位、σ−π共役及びσ*−π共役)による耐被毒性、高極性コモノマー取り込
み性、に起因すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例および比較例における触媒活性と極性オレフィン共重合量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法に用いるオレフィン重合用触媒の各構成成分および当該触媒を用いた非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法について具体的に説明する。
【0019】
本発明に係る非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法に用いるオレフィン重合用触媒は、
(A)前記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、(B)(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、とを包含する。
〔(A)遷移金属化合物〕
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒を構成する(A)遷移金属化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0020】
【化2】

【0021】
(ここでN……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。)
一般式(I)中、Mは周期表第4族または5族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、好ましくは4族の金属原子であり、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、より好ましくはチタンである。
【0022】
mは、1〜4の整数を示し、好ましくは2である。
【0023】
一般式(I)中、R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0024】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0025】
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル、アリル、イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;ベンジルなどのアリール置換アルキル基;トリル、イソプロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ−tert−ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0026】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、モノトリフルオロメチル、ジトリフルオロメチル、モノフルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0027】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0028】
これらのうち、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、ノルボニル、テトラシククロドデシル等の炭素原子数3〜30、好ましくは3〜20の環状炭化水素;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0029】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0030】
酸素含有基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキシ基;フェノキシ、2,6−ジメチルフェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシなどのアリーロキシ基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基などのアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、p−クロロフェノキシカルボニルなどのエステル基;が好ましく例示される。
【0031】
窒素含有基としては、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルベンズアミドなどのアミド基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノなどのアミノ基;アセトイミド、ベンズイミドなどのイミド基;メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどのイミノ基;ニトロ基が好ましく例示される。
【0032】
イオウ含有基としては、メチルチオ、エチルチオなどのアルキルチオ基;フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナルチルチオなどのアリールチオ基;アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルなどのチオエステル基;スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルなどのスルホンエステル基;フェニルスルホンアミド、N−メチルスルホンアミド、N−メチル−p−トルエンスルホンアミドなどのスルホンアミド基;が好ましく挙げられる。
【0033】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジ
メチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0034】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
【0035】
一般式(I)中、R1〜R4は、これらの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0036】
また、mが2以上の場合には、R1〜R4で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上の場合にはR1同士、R2同士、R3同士、R4同士が互いに同一でも異なっていてもよい。
【0037】
一般式(I)中、R5は、水素原子、1級または2級炭素のみからなる炭素数1〜4の
炭化水素基、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基、アリール基置換アルキル基、単環性または二環性の脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基から選ばれる置換基を示す。
【0038】
1級または2級炭素のみからなる炭素数1〜4の炭化水素基とは、R5の炭素原子の中
でフェノキシ環に直結する炭素原子が1級または2級炭素である炭素原子数4以下炭化水
素基のことであり具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルなどの炭素原子数が1〜4、好ましくは1〜3の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0039】
炭素数5以上の脂肪族炭化水素基とは、R5の炭素原子の中でフェノキシ環に直結する
炭素原子が環構造に含まれていない炭化水素基のことであり、例えば炭素数5〜30のものであり、具体的には、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルなどの炭素原子数が5〜30、好ましくは5〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0040】
アリール基置換アルキル基として具体的には、ベンジル、クミル、1−ジフェニルエチル、トリフェニルメチルなどが挙げられる。
【0041】
単環性または二環性の脂環族炭化水素基としては、例えば炭素数3〜30のものが挙げられる。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3または3〜20の単環性の脂環骨格を有する炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ノルボルニル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、スピロ[2.2]ペンチル、スピロ[2.3]ヘキシルなどの炭素原子数が5〜30、好ましくは5〜20の二環性の脂環骨格を有する炭化水素基;などが挙げられる。
【0042】
芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜30のものが挙げられる。具体的には、フェニル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。
【0043】
上記1級または2級炭素のみからなる炭素数4以下の炭化水素基、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基、アリール基置換アルキル基、単環性または二環性の脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル、ジトリフルオロメチル、モノフルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビストリフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0044】
5としては特に、フェニル、ナフチル、アントラニルなどの炭素原子数6〜30、好
ましくは6〜20の芳香族炭化水素基、ベンジルなどのアリール置換アルキル基であることが好ましく、またメチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状(2級)のアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、3,5−ジメチルシクロヘキシル、4−tert−ブチルシクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることも好ましい。
【0045】
さらにR5として特に好ましくはフェニル、ナフチルなどの芳香族炭化水素基、ベンジ
ルなどのアリール置換アルキル基、およびこれらの水素原子が置換された3,5−ジフルオロフェニル、3,5−ビストリフルオロメチルフェニルなどが、配位空間を広く取ることが出来るため共重合性能を向上させるという理由で好ましい。また、フッ素を置換基に導入することにより、フッ素原子の電子求引性の性質から、活性中心のカチオン性を向上させ、重合活性を向上させるという理由で好ましい。
【0046】
一般式(I)中、R6〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロ
ゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、R6〜R10
うち1つ以上がケイ素含有基である。
【0047】
6〜R10のうち、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、
窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基の各置換基は、上記R1〜R4で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
本発明における一般式(I)で表される遷移金属化合物のR6〜R10のうち1つ以上が
、ケイ素含有基である。この場合、(i)ケイ素含有基の三次元的かさ高さによる重合活性向上、(ii)ケイ素部の特異な電子的性質(高いHOMOエネルギー準位、σ−π共役及びσ*−π共役)による耐被毒性、高極性コモノマー取り込み性の効果を奏する。
【0049】
当該ケイ素含有基として具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、イソプロピルジメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリストリメチルシリルシリルなどのシリル置換シリル基;トリメチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert−ブチルジフェニルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメトキシシリルなどのアルコキシ基置換シリル基;ビストリメチルシリルアミノ基、ビストリイソプロピルシリルアミノ基、ビスtert−ブチルジフェニルシリルアミノ基などのケイ素置換アミノ基;トリメチルシリルメチル、トリイソプロピルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル、トリイソプロピルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基;などが好ましく挙げられる。
【0050】
次に上記で説明したR6〜R10に1つ以上が結合しているケイ素含有基について、より
具体的に説明する。
【0051】
当該ケイ素含有基は、R6〜R10に結合するケイ素含有基に含まれる炭素原子数の総和
が4以上であることが、重合活性および極性モノマー共重合量を向上させる効果の面から好ましい。このようなケイ素含有基のうち、1つのケイ素含有基のみで炭素原子数が4以上となる具体例としては、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などの炭化水素置換シリル基などが特に好ましい例として挙げられる。また、2つ以上のケイ素含有基に含まれる炭素原子数の総和が4以上となる具体例としては、3,5−ビストリメチルシリル(R7,R9にトリメチルシリル基が置換)、3,5−ビストリイソプロピルシリル(R7,R9にトリイソプロピルシリル基が置換)などが特に好ましい例として挙げられる。
【0052】
SHAPE \* MERGEFORMAT またケイ素含有基の置換位置としてはR7〜R9に導入するの
がケイ素含有基の三次元的かさ高さをより発揮し、重合活性向上の点から特に好ましい。これらのうち特に好ましい置換基配置の例としては、R8にシリル基が置換、R7、R9
シリル基が二つ置換、R7、R8,R9にシリル基が3つ置換などが挙げられる。
【0053】
6〜R10は、これらの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環
、芳香環または、窒素原子、ケイ素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していても
よく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0054】
また、mが2以上の場合には、R6〜R10で示される基のうち2個の基が連結されてい
てもよい。さらに、mが2以上の場合にはR6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士が互いに同一でも異なっていてもよい。
【0055】
一般式(I)中、nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には1〜4、好ましくは2である。
【0056】
一般式(I)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示す。
【0057】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0058】
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられる。またこれらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜30の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲン置換した基も含まれる。これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
【0059】
酸素含有基として具体的には、オキシ基;ペルオキシ基;ヒドロキシ基;ヒドロペルオキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基;フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基;アセチルアセトナト基(acac);オキソ基などが挙げられる。
【0060】
イオウ含有基として具体的には、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基;硫酸基;スルフィド基;ポリスルフィド基;チオラート基などが挙げられる。
【0061】
窒素含有基として具体的には、アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(tmeda)、N,N,N’,N’−テトラフェニルプロピレンジアミン(tppda)などのアルキルまたはアリールアミン基が挙げられる。
【0062】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよ
いアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
【0063】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有
してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト、エチルホスファイト、フェニルホスファイトなどのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられる。
【0064】
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、Sb
Cl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられる。
【0065】
ヘテロ環式化合物残基として具体的には、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0066】
ケイ素含有基として具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0067】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0068】
スズ含有基としては具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0069】
nが2以上の場合は、Xで示される複数の原子または基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0070】
Xと遷移金属原子Mとの結合様式は特に制限されず、Xと遷移金属原子Mとの結合様式としては例えば共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合等がある。
【0071】
以下に、上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記例示中、Phはフェニル基を、tBuはtert−
ブチル基を、iPrはイソプロピル基、Meはメチル基を示す。
【0072】
【化3】

【0073】
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
【化8】

【0078】
【化9】

【0079】
【化10】

【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

【0083】
なお上記例示化合物においてTi金属を他の4族金属に置き換えた化合物も例示でき、例えばTiをZrまたはHfに置き換えた化合物も例示できる。
【0084】
このような遷移金属化合物(A)の製造方法は、特に限定されることなく、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0085】
まず、遷移金属化合物(A)を構成する配位子は、サリチルアルデヒド化合物を、下記化合物(II)で表される第1級アミン類化合物(R6〜R10は前記と同義である)と反
応させることにより得られる。具体的には、両方の出発化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、またはトルエン溶媒等の炭化水素溶媒が好ましい。次いで、得られた溶液を室温から還流条件で、約1〜48時間攪拌すると、対応する配位子が良好な収率で得られる。配位子化合物を合成する際、触媒として、蟻酸、酢酸、トルエンスルホン酸などの酸触媒を用いてもよい。また、脱水剤としてモレキュラーシーブス、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムを用いたり、ディーンスタークにより脱水を行なったりすると反応進行に効果的である。
【0086】
【化14】

【0087】
次に、こうして得られた配位子を遷移金属含有化合物と反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基を反応させてフェノキシド塩を調製した後、遷移金属ハロゲン化合物、遷移金属アルキル化合物などの金属化合物と低温下で混合し、−78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを用いることができるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒、トルエンなどの炭化水素溶媒が好ましく使用される。また、フェノキシド塩を調製する際に使用する塩基としては、n−ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基が好ましいが、この限りではない。
【0088】
また、化合物の性質によっては、フェノキシド塩調製を経由せず、配位子と遷移金属化合物を直接反応させることで、一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)を合成することもできる。さらに、例えばR1〜R10の何れかがHである場合には、合成の任意の段
階において、H以外の置換基を導入することができる。
【0089】
また、一般式(I)で表される遷移金属化合物を単離せず、配位子と遷移金属化合物との反応溶液をそのまま重合に用いることもできる。
【0090】
以上のような遷移金属化合物(A)は、1種単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0091】
〔(B−1)有機金属化合物〕
本発明で用いられる(B−1)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
(B−1a) 一般式 RahAl(ORbijk
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、hは0<h≦3、iは
0≦i<3、jは0≦j<3、kは0≦k<3の数であり、かつh+i+j+k=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
(B−1b) 一般式 M2AlRa4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
(B−1c) 一般式 Rab3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表され
る周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0092】
前記(B−1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物などを例示できる。
【0093】
一般式 RahAl(ORb3-h
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、hは好ましくは1.5≦h≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 RahAlX3-h
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロ
ゲン原子を示し、hは好ましくは0<h<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 RahAlH3-h
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、hは好ま
しくは2≦h<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 RahAl(ORbik
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、hは0<h≦3、iは0≦i<3、kは0≦k<3の数であり、かつh+i+k=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
(B−1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−sec−ブチルアルミニウム、トリ−tert−ブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;R
a2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0094】
また(B−1a)に類似する化合物も使用することができ、たとえば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0095】
前記(B−1b)に属する化合物としては、
LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
【0096】
前記(B−1c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムなどを挙げることができる。
【0097】
またその他にも、(B−1)有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0098】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。(B−1)有機金属化合物のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。上記のような(B−1)有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
〔(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物〕
本発明で用いられる(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。具体的には特開2004−331965号公報に(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物の具体例として挙げられている化合物を本発明でも同様に挙げることができる。
【0099】
上記の(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合
せて用いられる。
【0100】
〔(B−3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物〕
本発明で用いられる、(B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。具体的には特開2004−331965号公報に(B−3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物として挙げられている化合物を本発明でも同様に挙げることができる。
【0101】
上記の(B−3)イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0102】
これらのうち、下記一般式(III)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0103】
【化15】

【0104】
一般式(III)中、R11としては、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチ
オン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0105】
12〜R15は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0106】
本発明に係る遷移金属化合物は触媒、助触媒成分としてメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)を用いると、オレフィン化合物に対してより良好な活性でより高い共重合性を示す。また助触媒成分としてトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(B−3)を用いると良好な活性で分子量の高いオレフィン重合体が得られる。
【0107】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、(B)(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、とともに、必要に応じて後述する担体(E)を用いることもできる。
〔(E)担体〕
本発明で必要に応じて用いられる(E)担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
【0108】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0109】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B2
3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−T
iO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、SiO2−TiO2−MgOなどを使用す
ることができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが
好ましい。
【0110】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、N
2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差
し支えない。
【0111】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、
必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0112】
無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。特開2003−206310号公報に示されているように、無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0113】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、複数の層がイオン結合などによって互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0114】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0115】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO42・H2O、α−Zr(HPO42、α−Zr(KPO42・3H2O、α−Ti(HPO42、α−Ti(HAsO42・H2O、α−Sn(HPO42・H2O、γ−Zr(HPO42、γ−Ti(HPO42、γ−Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0116】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104Åの範囲について測定される。
【0117】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0118】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0119】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、Zr
Cl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンな
どが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解して得た重
合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラ
ーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0120】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、または加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0122】
有機化合物担体としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0123】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、(B)(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、必要に応じて担体(E)と共に、必要に応じて後述する特定の有機化合物成分(F)を含むこともできる。
〔(F)有機化合物成分〕
本発明において(F)有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられる。
【0124】
アルコール類およびフェノール性化合物としては、通常、R16−OHで表されるものが使用され、ここで、R16は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示す。アルコール類としては、R16がハロゲン化炭化水素のもの
が好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’−位が炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0125】
カルボン酸としては、通常、R17−COOHで表されるものが使用される。R17は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0126】
燐化合物としては、P−O−H結合を有する燐酸類、P−OR、P=O結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
【0127】
スルホン酸塩としては、下記一般式(IV)で表されるものが使用される。
【0128】
【化16】

【0129】
一般式(V)中、Mは周期表1〜14族から選ばれる原子である。
【0130】
18は水素、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0131】
Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0132】
rは1〜7の整数であり、sは1≦s≦7である。
【0133】
〔非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法〕
本発明に係る非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法では、上記のオレフィン重合用触媒の存在下に、非極性オレフィンと極性オレフィンを共重合することにより共重合体を得ることができる。
【0134】
本発明に係る非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法で共重合される非極性オレフィンと極性オレフィンを下記に例示する。
【0135】
〔極性オレフィン〕
本発明における極性オレフィンとは、極性基を有する鎖状あるいは環状の不飽和炭化水素である。
【0136】
極性基を有する鎖状の不飽和炭化水素として具体的には、例えばアクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、11−ドデセン酸、12−トリデセン酸、13−テトラデセン酸、14−ペンタデセン酸、15−ヘキサデセン酸、16−ヘプタデセン酸、17−オクタデセン酸、18−ノナデセン酸、19−エイコセン酸、20−ヘニコセン酸、21−ドコセン酸、22−トリコセン酸、メタクリル酸、2−メチルペンテン酸、2,2−ジメチル−3−ブテン酸、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、2,6−ヘプタジエン酸、2−(4−イソプロピルベンジリデン)−4−ペンテン酸、アリルマロン酸、2−(10−ウンデセニル)マロン酸、フマル酸、イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボン酸、ビシクロ
[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩類、およびこれら不飽和カルボン酸類のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、(5−ノルボルネン−2−イル)エステルなどの不飽和カルボン酸エステル類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノエステルであってもジエステルであってもよい)、およびこれら不飽和カルボン酸類のアミド、N,N−ジメチルアミド等の不飽和カルボン酸アミド類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノアミドであってもジアミドであってもよい);例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、アリルコハク酸無水物、イソブテニルコハク酸無水物、(2,7−オクタジエン−1−イル)コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物類;例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類; 例えば塩化ビニル、
フッ化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、臭化アリル、塩化アリル、フッ化アリル、臭化アリルなどのハロゲン化オレフィン類; 例えばアリルトリメチルシラン、ジアリルジ
メチルシラン、3−ブテニルトリメチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン、アリルトリフェニルシラン等のシリル化オレフィン類;例えばアクリロニトリル、2−シアノビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン、2,3−ジシアノビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン等の不飽和ニトリル類;例えばアリルアルコール、3−ブテノール、4−ペンテノール、5−ヘキセノール、6−へブテノール、7−オクテノール、8−ノネノール、9−デセノール、10−ウンデセノール、11−ドデセノール、12−トリデセノール等の不飽和アルコール化合物、およびこれらの酢酸エステル、安息香酸エステル、プロピオン酸エステル、カプロン酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル等の不飽和エステル類; 例えばビニルフェノール、アリルフェノール等の
置換フェノール類;例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルメチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルメタリルエーテル、メトキシスチレン、エトキシスチレン等の不飽和エーテル類;例えばブタジエンモノオキシド、1、2−エポキシ−7−オクテン、3−ビニル7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等の不飽和エポキシド類;例えばアクロレイン、ウンデセナール等の不飽和アルデヒド類、およびこれらのジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの不飽和アセタール類;例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、アリルメチルケトン、アリルエチルケトン、アリルプロピルケトン、アリルブチルケトン、アリルベンジルケトン等の不飽和ケトン類、およびこれらのジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの不飽和アセタール類;例えばアリルメチルスルフィド、アリルフェニルスルフィド、アリルイソプロピルスルフィド、アリルn−プロピルスルフィド、4−ペンテニルフェニルスルフィド等の不飽和チオエーテル類;例えばアリルフェニルスルホキシド等の不飽和スルホキシド類; 例えばアリルフェニルスルホン等の不飽和スルホン類;例えばアリルジフェニル
ホスフィン等の不飽和ホスフィン類;例えばアリルジフェニルホスフィンオキシドのような不飽和ホスフィンオキシド類などが挙げられる。さらに、以上に挙げた極性基を併せて有する不飽和炭化水素、例えばビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、4−(3−ブテニロキシ)安息香酸メチル、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、2−アリルメトキシベンゼン、3−アリルメトキシベンゼン、4−アリルメトキシベンゼン、2−エトキシスチレン、3−エトキシスチレン、4−エトキシスチレン、トリフルオロ酢酸アリル、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、(2H−ペルフルオロプロピル)−2−プロペニルエーテル、リナロールオキシド、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、2−(アリロキシ)エタノール、N−アリルモルホリン、アリルグリシン、N−ビニルピロリドン、アリルトリクロロシラン、アクリルトリメチルシラン、アリルジメチル(ジイソプロピルアミノ)シラン
、7−オクテニルトリメトキシシラン、アリロキシトリメチルシラン、アリロキシトリフェニルシランなどが挙げられる。
【0137】
極性基を有する環状の不飽和炭化水素としては、下記一般式(V)
【0138】
【化17】

【0139】
(式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R19〜R36ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭化水素基であり、R33〜R36は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ該単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR33とR34とで、またはR35とR36とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
で表される環状オレフィン、下記一般式(VI)
【0140】
【化18】

【0141】
(式(VI)中、u1およびtは0または1以上の整数であり、v1およびw1は0、1または2であり、R37〜R55は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、R45およびR46が結合している炭素原子と、R49が結合している炭素原子またはR47が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またv1=w1=0のとき、R51とR48またはR51とR55とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
で表される環状オレフィン、および下記一般式(VII)
【0142】
【化19】

【0143】
(式(VII)中、R56、R57は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、t1は1≦t1≦18である。)
で表される環状オレフィンの水素原子のうち一つまたは複数が極性基;たとえはカルボキシル基、ニトリル基、水酸基、エーテル基、エポキシド、ホルミル基、ケトン基、チオエーテル基、スルホ基、ホスフィン、置換シリル基などで置換された環状極性オレフィンである。カルボキシル基をもつ極性環状オレフィンの場合はこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩類、およびこれら不飽和カルボン酸類のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、(5−ノルボルネン−2−イル)エステルなどの不飽和カルボン酸エステル類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノエステルであってもジエステルであってもよい)、およびこれら不飽和カルボン酸類のアミド、N,N−ジメチルアミド等の不飽和カルボン酸アミド類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノアミドであってもジアミドであってもよい);例えばビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物類が挙げられる。水酸基をもつ極性環状オレフィンの場合はこれら環状不飽和アルコールの酢酸エステル、安息香酸エステル、プロピオン酸エステル、カプロン酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル等の不飽和エステル類も挙げることができる。アルデヒド基をもつ極性環状オレフィンの場合はこれらのジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの不飽和アセタール類、ケトン基をもつ極性環状オレフィンの場合はこれらのジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの不飽和アセタール類を挙げることができる。
【0144】
より具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体;トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンなどのトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン誘導体;トリシクロ[
4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、7−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンなどのトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン誘導体;テト
ラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4
.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−プロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、8−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、8−イソブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8
−ヘキシルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−シクロヘ
キシルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−ステアリルテ
トラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラ
シクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、2,10−ジメチルテトラシク
ロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4
.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4
.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、11,12−ジメチルテトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、2,7,9−トリメチルテトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、2,7−ジメチル−9−エチルテトラシクロ
[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、9−イソブチル−2,7−ジメチルテ
トラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,11,12−トリメチ
ルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチル−11,1
2−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソブ
チル−11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、2,7,8,9−テトラメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、8−エチリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、8−エチリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピリデンテトラシクロシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピリデン−9−エチルテトラシクロ
[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピリデン−9−イソプロ
ピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピリデ
ン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソ
プロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプ
ロピリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロピリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、8−イソプロピリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロピリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−ブロモテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、などの
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン誘導体;ペンタシクロ[6
.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、1,3−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、1,6−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、14,15−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、などのペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン誘導体;ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、メチル置換ペンタシクロ
[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、などのペンタシクロ[7
.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン誘導体;ペンタシクロ[6.5
.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンなどのペンタシクロペンタデカジエン化合物;ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサ
デセン、10−メチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘ
キサデセン、10−エチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3
−ヘキサデセン、10,11−ジメチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12
8,13]−3−ヘキサデセン、などのペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン誘導体;ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−
4−ヘキサデセン、1,3−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、1,6−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、15,16−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6
2,7.09,14]−4−ヘキサデセン、などのペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7
.09,14]−4−ヘキサデセン誘導体;ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、11−メチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、11−エチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、11−イソブチルヘキサシクロ
[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、1,6,10−
トリメチル−12−イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、などのヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7
.09,14]−4−ヘプタデセン誘導体;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンなどのヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体;
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコ
セン、ジメチル置換ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセンなどのヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン誘導体;ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、14−メチル−ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、ト
リメチル置換ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17
−5−ヘンエイコセンなどのヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体;オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、14−メチルオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、14−エチルオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18
13,16.03,8.012,17]−5−ドコセンなどのオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン誘導体;ノナシクロ[10.
9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセン、トリメチル置換ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10
3,8
.012,21.014,19]−5−ペンタコセン、などのノナシクロ[10.9.1.14,7
13,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセン誘導体;ノ
ナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−6−ヘキサコセンなどのノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19
.02,11.04,9.013,22.015,20]−6−ヘキサコセン誘導体;5−フェニル−ビシ
クロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−フェニル[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ベンジル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(エチルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(イソプロピルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(β−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(α−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(アントラセニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、8−メチル−8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8−ベンジル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリ
ル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(エチルフェニ
ル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(イソプロピ
ルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−
ジフェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(ビフ
ェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(β−ナ
フチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(α−ナ
フチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(アント
ラセニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、(シクロペ
ンタジエン−アセナフチレン付加物)にシクロペンタジエンをさらに付加した化合物、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、11−フェニル−ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7
9,14]−4−ヘプタデセン、14,15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9
.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、シクロエイコセンなどの非極性環状オレフィンの水素原子のうち一つまたは複数が極性基;たとえはカルボキシル基、ニトリル基、水酸基、エーテル基、エポキシド、ホルミル基、ケトン基、チオエーテル基、スルホ基、ホスフィン、置換シリル基などで置換された環状極性オレフィンを挙げることができる。
【0145】
以上のうち極性オレフィンとしては、不飽和エーテル類、不飽和カルボン酸誘導体(特に酸無水物、エステル、アミド)、ハロゲン化オレフィンおよび、不飽和アルコール化合物、およびそのエステル類のいずれかであることが好ましい。また、アルケニル基とアルコキシ基を併せて有する芳香族化合物も好ましい。これらの極性オレフィンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0146】
〔非極性オレフィン〕
本発明に係る非極性−極性オレフィン共重合体の構成要素である非極性オレフィンとは、炭素原子と水素原子のみからなる不飽和炭化水素のことであり、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3
,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン;ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンなどの炭素原子数4〜30、好ましくは4〜20で二個以上の二重結合を有する環状または鎖状のジエンまたはポリエン;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;芳香族ビニル化合物;ビニルシクロヘキサン;3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0147】
これらの非極性オレフィンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。非極性オレフィンとしては、炭素原子数2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンあるいは炭素原子数3〜20の環状オレフィンが好ましく、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状のα−オレフィンあるいは炭素原子数3〜12の環状オレフィンがより好ましく、エチレン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[4.4.
0.12,5.17,10]−3−ドデセンが特に好ましい。
【0148】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。
【0149】
以下、本発明における非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法の条件等について詳細に記載する。
【0150】
(重合溶媒)
液相重合法において用いられる溶媒は、重合反応中に反応に供されない不活性溶媒が用いられ、特に不活性炭化水素溶媒が用いられる。不活性炭化水素として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができる。また、反応に用いるオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0151】
(触媒の濃度)
上記のオレフィン重合用触媒を用いて、非極性オレフィンと極性オレフィンの共重合を行うに際して、成分(A)は、重合容積1リットル当たり通常10-12〜10-2モル、好
ましくは10-10〜10-3モルになるような量で用いられる。
【0152】
成分(B−1)は、成分(B−1)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−1)/M〕が、通常0.01〜100,000、好ましくは0.05〜50,000となるような量で用いられる。成分(B−2)は、成分(B−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−2)/M〕が、通常10〜500,000、好ましくは20〜100,000となるような量で用いられる。成分(B−3)は、成分(B−3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−3)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0153】
成分(F)は、成分(B)が成分(B−1)の場合には、モル比〔(F)/(B−1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B)が成分(B−2)の場合には、モル比〔(F)/(B−2)〕が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(B)が成分(B−3)の場合には、モル比〔(F)/(B−3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で必要に応じて用いられる。
【0154】
(各成分の添加方法)
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(1)成分(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)成分(A)および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(A)を担体(C)に担持した触媒成分、成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)成分(B)を担体(C)に担持した触媒成分、成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)成分(A)と成分(B)とを担体(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
上記(2)〜(5)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触さ
れていてもよい。
成分(B)が担持されている上記(4)(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(B)を、任意の順序で添加してもよい。この場合成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
また、上記の担体(C)に成分(A)が担持された固体触媒成分、担体(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0155】
(重合温度・重合圧力)
また、本発明における非極性オレフィンと極性オレフィンの共重合の重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜9.8MPa(100kg/cm2)(ゲージ圧)、好ましくは常圧〜4.9MPa(50
kg/cm2)(ゲージ圧)の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式の
いずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0156】
(分子量の調節)
得られる非極性−極性オレフィン共重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【実施例】
【0157】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0158】
なお、合成例で得られた化合物の構造は、270MHz 1H NMR(日本電子 G
SH−270)、FD−質量分析(日本電子 SX−102A)等を用いて決定した。
【0159】
また、非極性−極性オレフィン共重合体中の極性オレフィン含量は日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置による1H−NMR測定(測定溶媒:1,1,2,2−テトラク
ロロエタン−d2、測定温度:120℃)により求めた。重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布はWaters社製AllianceGPC2000によるGPC分析(140℃、o−ジクロロベンゼン、ポリスチレン換算)により求めた。
【0160】
比較において用いた錯体化合物は、特開2004−331965号公報、特開2004−331966号公報等において開示された方法により合成した。
【0161】
<1.配位子の合成>
〔合成例1〕
充分に乾燥、窒素置換した100mLの反応器に、化合物2−フェニルサリチルアルデヒド1.82g(9.2mmol)、トルエン30mLを仕込んだ。そこにJ.Am.Chem.Soc.1998、120巻、213頁に記載の方法で合成された4−トリメチルシリルアニリン1.52g(9.2mmol)を含むトルエン溶液10mL、p−トルエンスルホン酸0.0875gを加え加熱還流下、1時間攪拌した。溶媒を留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、下式(a)で示した目的物が0.886g(収率21%)得られた。
【0162】
得られた化合物について1H NMRによる分析を行った。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,270MHz):d 0.29(s,9H,SiCH3),7.02(dd,1H,J=7.1Hz,J=7.1Hz,Ar),7.27(d,2H,J
=8.2Hz,Ar),7.33−7.48(m,5H,Ar),7.56−7.59(m,2H,Ar),7.64−7.67(m,2H,Ar),8.71(s,1H,HC=N),13.97(s,1H,OH)
【0163】
【化20】

【0164】
〔合成例2〕
充分に乾燥、窒素置換した100mLの反応器に、化合物2−フェニルサリチルアルデヒド0.186g(0.938mmol)、トルエン20mLを仕込んだ。そこに合成例1と同様の方法で合成された3−トリメチルシリルアニリン0.155g(0.938mmol)を含むトルエン溶液5mLを加え加熱還流下、5時間攪拌した。溶媒を留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、下式(b)で示した目的物が0.257g(収率79%)得られた。
1H NMRによる分析を行った。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,270MHz):d 0.30(s,9H,SiCH3),7.00−7.06(m,1H,Ar),7.26−7.49(m,9H,Ar),7.64−7.68(m,2H,Ar),8.71(s,1H,HC=N),14.08(s,1H,OH)
【0165】
【化21】

【0166】
〔合成例3〕
充分に乾燥、窒素置換した100mLの反応器に、化合物2−フェニルサリチルアルデヒド0.350g(1.77mmol)、トルエン20mLを仕込んだ。そこに合成例1と同様の方法で合成された4−トリイソプロピルシリルアニリン0.441g(1.77mmol)を含むトルエン溶液5mL、p−トルエンスルホン酸0.0337gを加えを加え加熱還流下、5時間攪拌した。溶媒を留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、下式(c)で示した目的物が0.257g(収率79%)得られた。
1H NMRによる分析を行った。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,270MHz):d 1.09(d,18H,CH3),1.3
4−1.47(m,3H,CH),7.01(dd,1H,J=7.7Hz,J=7.7Hz,Ar),7.26−7.29(m,2H,Ar),7.34−7.48(m,5H,Ar),7.53−7.56(m,2H,Ar),7.64−7.68(m,2H,Ar),8.72(s,1H,HC=N),14.00(s,1H,OH)
【0167】
【化22】

【0168】
<2.遷移金属化合物の合成>
〔合成例4〕
充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、合成例1で得られた化合物(a)0.173g(0.5mmol)を挿入し、ジクロロエタン5mLに溶解させた。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン0.25mLトルエン溶液(1.00M、0.25mmol)を含むジクロロエタン溶液10mLに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで戻しながら3時間攪拌を続けた。
【0169】
反応液の溶媒を留去した後、得られた固体を塩化メチレン5mLに溶解し、ジエチルエーテル20mLで再沈し、得られた固体をグラスフィルターにより濾過した。減圧乾燥することにより下記式(A)で示される褐色粉末の化合物(以下錯体化合物(d)という)を0.143g(収率71%)得た。
1H NMR、13C NMR、FD−質量分析による分析を行った。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,270MHz):d 0.186(s,18H,SiCH3),6.83−6.89(m,6H,Ar),6.97−7.00(m,4H,Ar),7.07−7.10(m,2H,Ar),7.38−7.56(m,8H,Ar),7.80−7.84(m,4H,Ar),7.98(s,2H,HC=N)
13C NMR(CDCl3,67.5MHz):d −1.51,121.37,122.52,124.65,127.64,128.09,129.48,129.86,133.20,133.64,136.17,136.54,138.60,152.26,158.56,165.21
FD−質量分析(M+):m/z=806
【0170】
【化23】

【0171】
〔合成例5〕
充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、合成例2で得られた化合物(b)0.250g(0.724mmol)を挿入し、ジクロロエタン15mLに溶解させた。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン0.362mLトルエン溶液(1.00M、0.362mmol)を含むジクロロエタン溶液10mLに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで戻しながら3時間攪拌を続けた。
【0172】
反応液の溶媒を留去した後、得られた固体を塩化メチレン5mLに溶解し、ジエチルエーテル20mL、ヘキサン15mLで再沈し、得られた固体をグラスフィルターにより濾過した。減圧乾燥することにより下記式(e)で示される褐色粉末の化合物(以下錯体化合物(e)という)を0.0945g(収率32%)得た。
1H NMR、13C NMR、FD−質量分析による分析を行った。結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,270MHz):d 0.13(s,18H,SiCH3),6.72−6.77(m,4H,Ar),6.85−6.91(m,2H,Ar),7.03−7.14(m,6H,Ar),7.35−7.41(m,2H,Ar),7.46−7.53(m,6H,Ar),7.75−7.78(m,4H,Ar),8.02(s,2H,HC=N)
13C NMR(CDCl3,67.5MHz):d −1.15,121.43,124.54,125.20,125.23,127.55,128.05,128.19,129.58,129.91,131.35,133.60,136.15,136.74,140.72,151.68,158.66,165.04
FD−質量分析(M+):m/z=806
【0173】
【化24】

【0174】
〔合成例6〕
充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、合成例3で得られた化合物(c)0.111g(0.258mmol)を挿入し、ジクロロエタン5mLに溶解させた。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン0.129mLトルエン溶液(1.00M、0.129mmol)を含むジクロロエタン溶液5mLに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで戻しながら15時間攪拌を続けた。
【0175】
反応液の溶媒を留去した後、得られた固体を塩化メチレン5mLに溶解し、ヘキサン10mLで再沈し、得られた固体をグラスフィルターにより濾過した。減圧乾燥することにより下記式(f)で示される褐色粉末の化合物(以下錯体化合物(f)という)を0.0836g(収率66%)得た。
1H NMR、13C NMR、FD−質量分析による分析を行った。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,270MHz):d 0.96(d,18H,J=8.1Hz
,CH3),0.98(d,18H,J=8.1Hz,CH3),1.21−1.35(m,6H,CH),6.80−6.86(dd,2H,J=8.1Hz,J=8.1Hz,Ar),6.99−7.12(m,10H,Ar),7.40−7.56(m,8H,A
r),7.88−7.91(m,4H,Ar),8.00(s,2H,HC=N)
13C NMR(CDCl3,67.5MHz):d 10.79,18.53,18.63,121.49,122.51,124.51,127.63,128.19,129.50,129.67,133.69,133.94,135.09,136.27,136.90,152.20,158.70,165.85
FD−質量分析(M+):m/z=974
【0176】
【化25】

【0177】
〔実施例1〕
[錯体化合物(d)によるエチレン・4−アリルアニソール共重合]
充分に窒素置換した内容積500mlのパドル翼攪拌機付きガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、4−アリルアニソールを31.5mmol加え、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、上記錯体化合物(d)を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、50℃で5分間反応させた後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合停止後、反応物を大量のメタノール・塩酸混合液に投入してポリマーを全量析出させた後、グラスフィルターで濾過した。ポリマーをメタノールで十分洗浄後、130℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリマーを0.813g得た。このポリマーを1H−NMRで分析したとこ
ろ、得られたポリマーは4−アリルアニソールがポリマー主鎖中に1.1モル%含まれているエチレン/4−アリルアニソール共重合であった。重合活性、および得られたエチレン/アリルアニソール共重合体の分析結果を表1および図1にまとめた。
【0178】
〔実施例2〕
[錯体化合物(e)によるエチレン・4−アリルアニソール共重合]
充分に窒素置換した内容積500mlのパドル翼攪拌機付きガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、4−アリルアニソールを31.5mmol加え、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、上記錯体化合物(e)を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、50℃で5分間反応させた後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合停止後、反応物を大量のメタノール・塩酸混合液に投入してポリマーを全量析出させた後、グラスフィルターで濾過した。ポリマーをメタノールで十分洗浄後、130℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリマーを0.511g得た。このポリマーを1H−NMRで分析したとこ
ろ、得られたポリマーは4−アリルアニソールがポリマー主鎖中に1.1モル%含まれているエチレン/4−アリルアニソール共重合であった。重合活性、および得られたエチレン/アリルアニソール共重合体の分析結果を表1および図1にまとめた。
【0179】
〔実施例3〕
[錯体化合物(f)によるエチレン・4−アリルアニソール共重合]
充分に窒素置換した内容積500mlのパドル翼攪拌機付きガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、4−アリルアニソールを31.5mmol加え、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、上記錯体化合物(f)を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、50℃で5分間反応させた後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合停止後、反応物を大量のメタノール・塩酸混合液に投入してポリマーを全量析出させた後、グラスフィルターで濾過した。ポリマーをメタノールで十分洗浄後、130℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリマーを1.69g得た。このポリマーを1H−NMRで分析したところ
、得られたポリマーは4−アリルアニソールがポリマー主鎖中に1.3モル%含まれているエチレン/4−アリルアニソール共重合であった。重合活性、および得られたエチレン/アリルアニソール共重合体の分析結果を表1および図1にまとめた。
【0180】
〔実施例4〕
[塩化マグネシウム溶液(調製液1)の調製]
デカン442ml中に触媒成分(A)として無水塩化マグネシウム95.2g(1.0モル)を懸濁させた後、触媒成分(B)として2−エチルヘキシルアルコール390.6g(3.0モル)を加え、130℃で2時間反応をすることで均一溶液を得た。さらにこの溶液を脱水トルエンにて希釈し、マグネシウム濃度0.4Mの調製液1を得た。
【0181】
[エチレン/4−アリルアニソール共重合]
充分に窒素置換した内容積500mLのパドル翼攪拌機付きガラス製オートクレーブに精製トルエン250mLを入れ、50℃に加温し、エチレン100L/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、先に調製した塩化マグネシウム溶液(調整液1)4.0mL(マグネシウム含量1.6mmol)、次いで、1.0Mトリイソブチルアルミニウム(TIBA)トルエン溶液5.0mL(TIBA=5.0mmol)を加え、固体成分の析出を確認した。3分後、極性オレフィンとして、4−アリルアニソール5.0mL(31.5mmol)を加えた後、触媒成分(A)として上記錯体化合物(f)の0.0025M脱水トルエン溶液0.8mL(0.002mmol)を加えて重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、5分間重合させた後、少量のイソブチルアルコールを添加して重合を止めた。反応生成物を大量のメタノール・塩酸混合液に投入してポリマーを全量析出させた後、グラスフィルターで濾過した。得られたポリマーを10時間、真空乾燥させて、白色のポリマー固体を1.415g得た。このポリマーを1H−NMRで分
析したところ、得られたポリマーは4−アリルアニソールがポリマー主鎖中に1.68モル%含まれているエチレン/4−アリルアニソール共重合であった。重合活性、および得られたエチレン/アリルアニソール共重合体の分析結果を表1および図1にまとめた。
【0182】
〔比較例1〕
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器にトルエン250mlを装入し、4−アリルアニソールを31.5mmol加え、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、下記錯体化合物(g)を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、50℃で5分間反応させた後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。
【0183】
重合停止後、反応物を大量のメタノール・塩酸混合液に投入してポリマーを全量析出させた後、グラスフィルターで濾過した。ポリマーをメタノールで十分洗浄後、130℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリマーを0.982g得た。このポリマーを1H−NMR
で測定したところ、得られたポリマーは4−アリルアニソールがポリマー主鎖中に0.95モル%含まれているエチレン・4−アリルアニソール共重合であった。重合活性、およ
び得られたエチレン/アリルアニソール共重合体の分析結果を表1および図1にまとめた。
【0184】
【化26】

【0185】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明における非極性−極性オレフィン共重合体は、重合体中に極性基を含有するため、親水性が向上している。このため他の極性ポリマーとの相溶性・接着性などの物性に優れることから、自動車、電気機器部品、食品包装、飲料・化粧品・医療用容器、土木、農業資材など幅広い製品分野において多様化したポリオレフィンに対する要求を満たした製品を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)と、
【化1】

(式中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜4の整数を示し、
1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
5は、水素原子、1級または2級炭素のみからなる炭素数1〜4の炭化水素基、炭素
数5以上の脂肪族炭化水素基、アリール基置換アルキル基、単環性または二環性の脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基から選ばれ、
6〜R10は互いに同一でも異なっていてもよく水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基
、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R6〜R10のう
ち1つ以上がケイ素含有基であり、これらR6〜R10のうちの2個以上が互いに連結して
環を形成していてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
(B)(B−1)有機金属化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、非極性オレフィンと極性オレフィンを共重合させることを特徴とする非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、mが2であり、Mがチタン原子である請求項1に記載の非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、R5がフェニル基である
請求項2に記載の非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、R6〜R10に含まれるケ
イ素含有基が炭素原子数4以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非極性−極性オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の極性オレフィン共重合体の製造方法により得られる非極性−極性オレフィン共重合体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−231292(P2011−231292A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105448(P2010−105448)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】