非水固体電解質電池
【課題】使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れのない積層型の非水固体電解質電池を提供する。
【解決手段】複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されて容器内に収納されている非水固体電解質電池であって、正極および負極にはそれぞれ正極タブリード、負極タブリードが接続されており、複数の正極タブリードおよび負極タブリードの先端部は、それぞれ一つに束ねられて前記容器に固定されている正極端子、負極端子に接続されており、正極タブリードおよび負極タブリードにはそれぞれ撓みが設けられている非水固体電解質電池。正極タブリードおよび負極タブリードに、撓み率=連結部の長さ/連結部の両端の間の距離で表される撓み率が1.0を超え、1.3以下の撓みが設けられている非水固体電解質電池。
【解決手段】複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されて容器内に収納されている非水固体電解質電池であって、正極および負極にはそれぞれ正極タブリード、負極タブリードが接続されており、複数の正極タブリードおよび負極タブリードの先端部は、それぞれ一つに束ねられて前記容器に固定されている正極端子、負極端子に接続されており、正極タブリードおよび負極タブリードにはそれぞれ撓みが設けられている非水固体電解質電池。正極タブリードおよび負極タブリードに、撓み率=連結部の長さ/連結部の両端の間の距離で表される撓み率が1.0を超え、1.3以下の撓みが設けられている非水固体電解質電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水固体電解質電池に関し、特に複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されている積層型の非水固体電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池等の非水電解質電池の分野においては、漏液の恐れがなく不燃性で安全性の高いセラミック製の固体電解質膜を用いた非水固体電解質電池が注目され開発が進められている。
【0003】
大きな面積の電極を必要とする電池には、例えば長尺の正極、セパレータ、負極を積層した積層体を渦巻き状に捲回した構造が採用される。しかし、セラミック製の固体電解質膜を用いた非水固体電解質電池の場合には、捲回すると固体電解質膜が割れて正負極間で短絡する恐れがあるため、一般的に複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極を積層させた積層型構造が採用される。
【0004】
図10と図11は、従来の一般的な積層型構造の電池の構造であり、図10は、平面図、図11は、側面図である。但し理解の便宜上両図の縮尺関係は違えてある。2は複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極を積層させた6個のサブスタックを積層したスタックであり、各スタックにはそれぞれ正極タブ3および負極タブ4が設けられ、正極タブ3、負極タブ4には、それぞれ正極タブリード5、負極タブリード6が接続され、各正極タブリード5、負極タブリード6の先端部は、圧着端子9によりそれぞれ一つに束ねられて、例えば金属箔と樹脂フィルムを貼合わせたラミネートフィルムからなる容器(パッケージ)13にシール部材10により固定されている正極端子7、負極端子8に接続される。(例えば特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−39358号公報
【特許文献2】特開平8−180904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の積層型の非水固体電解質電池の場合、使用中例えば充電により電池の厚みが増大してタブリードにタブリードの許容応力を上回る大きな張力が加わり、タブリードが破断する恐れがあることが分かった。
【0007】
そこで本発明は、使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れのない積層型の非水固体電解質電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意検討の結果、前記課題を解決する方法を見出し本発明に至った。以下、各請求項の発明を説明する。
【0009】
(1)本発明に係る非水固体電解質電池は、
複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されて容器内に収納されている非水固体電解質電池であって、
前記正極および負極にはそれぞれ正極タブリード、負極タブリードが接続されており、
前記複数の正極タブリードおよび負極タブリードの先端部は、それぞれ一つに束ねられて前記容器に固定されている正極端子、負極端子に接続されており、
前記正極タブリードおよび負極タブリードにはそれぞれ撓みが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、各正極タブリードおよび負極タブリードに撓みを設けることにより、各タブリードに余長を持たせることができる。そして、非水固体電解質電池の厚みが増大することにより、正極タブリードと正極の接続部と、正極タブリードと正極端子の接続部との間の距離が伸びた際に、前記余長により前記接続部の間の距離の伸びが補償され、タブリードに加わる張力を低減することができる。負極タブリードについても、同様にタブリードに加わる張力を低減することができる。このため、使用中に非水固体電解質電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れがない非水固体電解質電池を提供することができる。
【0011】
なお、正極タブリードには、SUS箔等の金属箔が好ましく用いられ、負極タブリードにはSUS箔や銅箔(Cu箔)等の金属箔が好ましく用いられる。また、複数の正極タブリードおよび負極タブリードを一つに束ねる方法としては、タブリードを重ねた後に圧着端子を用いてかしめる方法や抵抗溶接により接合する方法等が好ましく用いられる。
【0012】
また、正極端子および負極端子には、それぞれ例えば正極タブリードおよび負極タブリードと同材質の金属箔や金属板が好ましく用いられ、前記圧着端子や抵抗溶接により一つに束ねられたタブリードの先端部に接続される。
【0013】
また、前記容器(パッケージ)には、アルミニウム箔と樹脂フィルを積層させたアルミラミネートフィルムを用い、開口部を熱融着してシールするシール方法が好ましく用いられる。
【0014】
なお、本発明の非水固体電解質電池は、全ての正極と負極にそれぞれ正極タブリードおよび負極タブリードが接続されている単一の電池であってもよいし、正極、固体電解質膜および負極を積層させた積層体(スタック)が幾つかのサブスタックに分割され、各サブスタック毎に正極タブリード、負極タブリードが接続されている組電池であってもよい。また、正極と固体電解質膜および負極は、正極と負極の作用面が固体電解質膜を介して対向するように積層されていればよい。
【0015】
(2)次に、本発明に係る非水固体電解質電池は、
(1)の発明の非水固体電解質電池であって、
前記正極タブリードおよび負極タブリードは、L字状または逆L字状であることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、タブリードの形状をL字状または逆L字状にしているため、タブリードの前記スタックからの突出長さを増大させることなく、タブリードに充分な撓みを設けることができる。この結果、電池のスペース効率を低下させることなく、タブリードが破断する恐れを無くすことができる。
【0017】
(3)次に、本発明に係る非水固体電解質電池は、
(1)または(2)の発明の非水固体電解質電池であって、
リチウム電池であることを特徴とする。
【0018】
リチウム電池の場合は、充電時に正極から引抜いたリチウムイオンを負極に金属リチウムとして析出させたり、あるいは負極の黒鉛の結晶の層間に挿入(インターカレーション)したりするが、この際の体積増加率が大きく、充電時に厚みが大きく増大する。このため、他の電池よりタブリードが破断する恐れが高い。本発明は、このようにタブリードが破断する恐れが高いリチウム電池において、顕著な効果を発揮する。
【0019】
(4)次に、本発明に係る非水固体電解質電池は、
(3)の発明の非水固体電解質電池であって、
負極に金属リチウムを用いていることを特徴とする。
【0020】
負極に金属リチウムを用いた場合、充電時の体積増加率が特に大きく、タブリードが破断する恐れが特に高い。具体的には正極から引き抜かれたリチウムイオンが金属リチウムとして負極に析出する際の体積増加率は約30%であり、例えば黒鉛の層間に挿入される場合よりも体積増加率が大きい。本発明は、このようにタブリードが破断する恐れが特に高い負極に金属リチウムが用いられているリチウム電池において、より顕著な発揮する。
【0021】
(5)次に本発明に係る非水固体電解質電池は、
(1)ないし(4)のいずれかの発明の非水固体電解質電池であって、
前記正極タブリードおよび負極タブリードの、前記正極または負極と接続されている接続部と前記正極端子または負極端子と接続されている先端部を連結する連結部に、下記の式で表される撓み率が1.0を超え、1.3以下の撓みが設けられていることを特徴とする。
撓み率=連結部の長さ/連結部の両端の間の距離
【0022】
本発明においては、正極タブリードおよび負極タブリードに撓み率を、1.0を超え、1.3以下としているため、正極タブリードおよび負極タブリードを徒に長くすることがない。このため、よりスペース効率を低下させることなく、適切に正極タブリードおよび負極タブリードが破断する恐れを無くすことができる。なお、数値に関する詳細は発明を実施するための形態の項で説明する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れのない積層型の非水固体電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池の構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の負極と負極端子の接続構造を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の負極タブリードの形状を示す図である。
【図5】積層型の非水固体電解質電池の厚みの増大を説明する図である。
【図6】非水固体電解質電池の厚みの増大による負極タブリードに加わる張力を説明する図である。
【図7】タブリードの撓み率を求める方法を説明する図である。
【図8】本発明の第2の形態の非水固体電解質電池の構造を示す平面図である。
【図9】本発明の第2の形態の非水固体電解質電池の構造を示す側面図である。
【図10】従来の一般的な積層型構造の電池の構造を示す平面図である。
【図11】従来の一般的な積層型構造の電池の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0026】
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、正極タブリード、負極のタブリードにそれぞれL字状、逆L字状で撓みを設けたタブリードを用いる実施の形態である。
【0027】
1.非水固体電解質電池の構造
(1)電極と端子の接続構造
はじめに、電極と端子の接続構造について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池の構造を模式的に示す図であり、上側、下左側、下右側の図はそれぞれ正面図、平面図、側面図である。図2は、本発明の第1の実施の形態の負極と負極端子の接続構造を模式的に示す図である。
【0028】
図1において、1は6個のサブスタックを積層させたスタック2を備える組電池からなる非水固体電解質電池である。各サブスタックの正極タブ3および負極タブ4には、それぞれ正極タブリード5と負極タブリード6が接続されている。6本の正極タブリード5と負極タブリード6の先端部はそれぞれ圧着端子9により1本に束ねられ、正極端子7と負極端子8に接続されている。13はスタック2をシールするパッケージであり、アルミニウム箔を芯材として外面および内面に樹脂フィルムを積層させたラミネートフィルムからなる。正極端子7および負極端子8は、融着性樹脂フィルムからなるシール材10によりパッケージ13に融着され、固定されている。なお、図1の平面図において、スタック2を3重の破線にしているのは、正極と負極の絶縁をとるため、正極、固体電解質膜、負極の大きさが負極<固体電解質膜<正極であることを示している。
【0029】
図1の平面図に示すように、正極タブリード5はL字状、負極タブリード6は逆L字状である。このように、タブリードをL字状または逆L字状としているため、タブリードがスタック2の上辺から突出することを抑制しつつ正極タブ3および負極タブ4と圧着端子9との間の距離を長くすることができ、スペースを大きくすることなくタブリードに充分に撓みを設けることができる。なお、図1の正面図においては、図面が煩雑になるのを避けるためタブリードを便宜上直線で示しているが、実際にはタブリードには撓みが設けられている。
【0030】
図2に撓みが設けられたタブリードを示す。図2において、11はサブスタックa、12はサブスタックbである。図2に示すように、6個のサブスタックにはそれぞれ負極タブリード6が接続され、各負極タブリード6には撓みが設けられている。
【0031】
本実施の形態の電池の構造をより理解し易くするため、非水固体電解質電池の構造を示す図を図3に示す。図3は、本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池の電極と端子の接続構造を模式的に示す斜視図である。但し、模式図であり、寸法関係等は図1とは異なる。図3において、1は積層構造の非水固体電解質電池であって、各正極のタブ3と各負極のタブ4にはそれぞれL字状の正極タブリード5、逆L字状の負極タブリード6が接続されており、各タブリードには撓みが設けられている。
【0032】
(2)タブリードの構造
イ.形状
次に、負極タブリードを例に採り、タブリードの構造を説明する。図4は、負極タブリードの構造を示す図である。(a)は平面図である。(a)に示すように負極タブリード6は先端部61、連結部62、接続部62aからなり、前記のように逆L字状であり、先端部61は圧着端子により他の負極タブリードの先端部と1つに束ねられて負極端子(図示せず)に接続される。また、接続部62aは抵抗溶接などにより負極タブ(図示せず)に接続される。
【0033】
(b)は正面図、(c)は連結部62を直線状に延ばした状態を示す正面図である。(b)に示すように連結部62には撓みが設けられており、(c)のa’が連結部62の長さであり、(b)のaが連結部の両端の距離あり、a’とaとの比、a’/aが本発明でいう撓み率である。
【0034】
ロ.撓み率の設定
タブリードの撓み率は、例えば充電による(スタック)の厚みの増大の大きさに基づいて設定する。図5は、積層型の非水固体電解質電池の厚みの増大を説明する図であり、図6は、図5の右半分を図の上方から見た図である。図5において、Tc、Tdはそれぞれ充電後と放電後のスタックの厚みであり、図5は、充電によりスタックの厚みがTdからTcに増大することを示している。図6のdは、負極タブリード6の連結部62(図4参照)の両端の水平方向の距離であり、IcとIdは、それぞれ充電後と放電後の1本の負極タブリード6に注目したときの連結部62の両端の距離を示しており、電池の厚みが増大することにより連結部62の両端の距離がIdからIcに伸びることを示している。
【0035】
図7は、図6を単純化して拡大した図であり、撓み率を求める方法を示す図である。図7において、Ic/Idが電池の厚み増大に伴う連結部62(図4参照)の両端の距離の伸びの程度を示す比であり、Ic/Idは、Td/dおよびTc/Td(膨張比)の値に基づいて算定される。そして、連結部の撓み率がIc/Id以上であれば、撓みを設けたことによる余長により連結部の伸びを補償してタブリードに張力が加わることを抑制することができる。
【0036】
以下、撓み率の設定について具体的に説明する。まず、種々の電池の中でも使用中の厚みの増大が大きいリチウム電池について実際にTc/Tdを測定した結果、Tc/Tdが1.1〜1.3の範囲に入ることが確認された。また、電池の設計においては、一般的にTd/dは0.01〜10に設定される。
【0037】
次に、以上の結果を基にTc/TdおよびTd/dが境界値である次のa〜dの4つのケースについてIc/Idを求めた。以下に結果を示す。
a.Tc/Td=1.1、Td/d=0.01
Ic/Id=(1+1.12×0.012)1/2/(1+0.012)1/2=1.0
b.Tc/Td=1.1、Td/d=10
Ic/Id=(1+1.12×102)1/2/(1+102)1/2=1.1
c.Tc/Td=1.3、Td/d=0.01
Ic/Id=(1+1.32×0.012)1/2/(1+0.012)1/2=1.0
d.Tc/Td=1.3、Td/d=10
Ic/Id=(1+1.32×102)1/2/(1+102)1/2=1.3
【0038】
以上より、撓み率を、1.0を超え、1.3以下とすることにより、種々の電池においてタブリードに適切な撓みを持たせ、使用中の電池の厚みの増大によるタブリードの破断の恐れを無くすことができる。
【0039】
2.実施例および比較例
A.実施例
本実施例は、第1の実施の形態に基づく実施例であり、負極は金属リチウム、リチウム合金、正極はLiCoO2、LiMnO2、MnO2等からなり、固体電解質はLi2SとP2S5のアモルファス(Li2S−P2S5)混合物等からなる非水固体電解質電池であって、アルミラミネートフィルム製のパッケージに収納した積層型の非水固体電解質電池に関する。
【0040】
以下、図面により本実施例を説明する。
(1)非水固体電解質電池の作製
イ.サブスタックの組立て
厚みが5〜50μm、長辺と短辺の長さがそれぞれ10〜100mmの長方形のSUS箔の片面に厚み5〜50μmのLiCoO2等を主体とする10〜100mmの正極活物質層を設け正極とした。また、厚みが5〜50μm、長辺と短辺の長さがそれぞれ10〜100mmの長方形のCu箔の片面に厚さ0.1〜10μmのLi層を設け負極とした。なお、前記SUS箔とCu箔の一方の短片にそれぞれ正極タブ、負極タブを突出させた。
【0041】
ロ.タブリード
a.正極タブリード
図4に示す形状の正極タブリードを用意した。具体的には厚み5〜50μmのSUS箔製であって、図4(a)におけるaが1〜30mm、bが1〜30mm、cが1〜30mm、dが1〜30mm、図4(b)におけるa’が1〜30mm、b’が1〜30mmの正極タブリードを用意した。各サブスタックのそれぞれに1個づつ正極タブリードを取り付けた。具体的には、サブスタックを構成する素電池の全ての正極タブを重ね合わせ、抵抗溶接により正極タブリードの接続部62aに接続した。
【0042】
b.負極タブリード
正極タブリードとは、左右が逆、即ち逆L字状としたこと以外は正極と同じ負極タブリードを用意した。そして、各サブスタックのそれぞれに1個づつ負極タブリードを取り付けた。
【0043】
ハ.非水固体電解質電池の組立て
a.正負極リード端子の取付け
前記重ね合わせた正極タブリード5の先端部を正極端子7と重ねて圧着端子9に挿通させた後、圧着端子9をかしめて正極タブリード5を正極端子7に接続した。また、負極タブリード6についても同様にして負極端子8に接続した。
【0044】
b.パッケージへの挿入とシール
厚み50〜300μmのアルミニウム箔の内面にポリプロピレン樹脂フィルムを、外面にポリエステルフィルムを貼合わせたラミネートフィルムからなり3辺をシールした袋状のパッケージを用意した。正負極リード端子を取付けたサブスタックの積層体を挿入した後、真空雰囲気中でパッケージ13の開口部を融着してシール(真空シール)すると同時にシール部材10とパッケージを融着させて正極端子7と負極端子8をパッケージ13に固定して、非水固体電解質電池を作製した。
【0045】
B.比較例
正極タブリードおよび負極タブリードを撓ませず、余長を持たせなかったこと以外は実施例と同様にして非水固体電解質電池を作製した。
【0046】
C.非水固体電解質電池の充放電試験
(1)試験方法
作製した実施例および比較例の非水固体電解質電池を室温において充放電電流100〜3000mA、カット電圧3.0〜4.2Vで充放電サイクル試験を行い、充電後および放電後における電池の厚みを測定した。また、充電時における電池の厚みを基に充電時にタブリードに加わる張力を計算により求め、タブリードの破断発生の有無を調べた。
【0047】
(2)試験結果
イ.充電後および放電後の電池の厚み
実施例および比較例の電池共、図6に示したパッケージの厚みを除く非水固体電解質電池の充電後の厚みが約11.4%増加していることが確認された。
【0048】
ロ.タブリードに加わる張力
そして、放電後における負極タブとの接続部と圧着端子でかしめられた先端部との間の距離Idが、5.19mmであったのに対して、充電後における距離Icは、5.31mmに伸びる。このため、タブブリードに撓みを設けていない場合には、SUS箔のヤング率が変化しないと仮定するとタブリードに約2.35×104MPaというSUS箔の許容応力の230MPaを遥かに上回る大きな張力が加わることが分かる。
【0049】
ハ、タブリードの破断
比較例の場合、正極タブリード、負極タブリード共に破断が発生した。一方、実施例では、タブリードに破断が発生しなかった。
【0050】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、正極タブリード、負極のタブリード共に平面視で直線状で撓みを設けたタブリードを用いる実施の形態である。
図8は第2の形態の非水固体電解質電池の構造を示す平面図であり、図9は側面図である。図9に示すように負極タブリード6には、撓みが設けられている。また、図9には図示してないが、正極タブリード5(図8参照)にも負極タブリード5と同じ撓み率で撓みが設けられている。このため、使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れがない。なお、撓み率は第1の実施の形態と同じ方法で設定される。但し、第2の実施の形態では、タブリードに充分な大きさの撓み率で撓みを設けるためには、図8に示すようにタブリードのスタック2からの突出長さを長くしなければならず、電池のスペース効率が低下する。
【0051】
1 非水固体電解質電池
2 スタック
3 正極タブ
4 負極タブ
5 正極タブリード
6 負極タブリード
7 正極端子
8 負極端子
9 圧着端子
10 シール部材
11 サブスタックa
12 サブスタックb
13 パッケージ
61 先端部
62 連結部
62a 接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水固体電解質電池に関し、特に複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されている積層型の非水固体電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池等の非水電解質電池の分野においては、漏液の恐れがなく不燃性で安全性の高いセラミック製の固体電解質膜を用いた非水固体電解質電池が注目され開発が進められている。
【0003】
大きな面積の電極を必要とする電池には、例えば長尺の正極、セパレータ、負極を積層した積層体を渦巻き状に捲回した構造が採用される。しかし、セラミック製の固体電解質膜を用いた非水固体電解質電池の場合には、捲回すると固体電解質膜が割れて正負極間で短絡する恐れがあるため、一般的に複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極を積層させた積層型構造が採用される。
【0004】
図10と図11は、従来の一般的な積層型構造の電池の構造であり、図10は、平面図、図11は、側面図である。但し理解の便宜上両図の縮尺関係は違えてある。2は複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極を積層させた6個のサブスタックを積層したスタックであり、各スタックにはそれぞれ正極タブ3および負極タブ4が設けられ、正極タブ3、負極タブ4には、それぞれ正極タブリード5、負極タブリード6が接続され、各正極タブリード5、負極タブリード6の先端部は、圧着端子9によりそれぞれ一つに束ねられて、例えば金属箔と樹脂フィルムを貼合わせたラミネートフィルムからなる容器(パッケージ)13にシール部材10により固定されている正極端子7、負極端子8に接続される。(例えば特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−39358号公報
【特許文献2】特開平8−180904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の積層型の非水固体電解質電池の場合、使用中例えば充電により電池の厚みが増大してタブリードにタブリードの許容応力を上回る大きな張力が加わり、タブリードが破断する恐れがあることが分かった。
【0007】
そこで本発明は、使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れのない積層型の非水固体電解質電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意検討の結果、前記課題を解決する方法を見出し本発明に至った。以下、各請求項の発明を説明する。
【0009】
(1)本発明に係る非水固体電解質電池は、
複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されて容器内に収納されている非水固体電解質電池であって、
前記正極および負極にはそれぞれ正極タブリード、負極タブリードが接続されており、
前記複数の正極タブリードおよび負極タブリードの先端部は、それぞれ一つに束ねられて前記容器に固定されている正極端子、負極端子に接続されており、
前記正極タブリードおよび負極タブリードにはそれぞれ撓みが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、各正極タブリードおよび負極タブリードに撓みを設けることにより、各タブリードに余長を持たせることができる。そして、非水固体電解質電池の厚みが増大することにより、正極タブリードと正極の接続部と、正極タブリードと正極端子の接続部との間の距離が伸びた際に、前記余長により前記接続部の間の距離の伸びが補償され、タブリードに加わる張力を低減することができる。負極タブリードについても、同様にタブリードに加わる張力を低減することができる。このため、使用中に非水固体電解質電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れがない非水固体電解質電池を提供することができる。
【0011】
なお、正極タブリードには、SUS箔等の金属箔が好ましく用いられ、負極タブリードにはSUS箔や銅箔(Cu箔)等の金属箔が好ましく用いられる。また、複数の正極タブリードおよび負極タブリードを一つに束ねる方法としては、タブリードを重ねた後に圧着端子を用いてかしめる方法や抵抗溶接により接合する方法等が好ましく用いられる。
【0012】
また、正極端子および負極端子には、それぞれ例えば正極タブリードおよび負極タブリードと同材質の金属箔や金属板が好ましく用いられ、前記圧着端子や抵抗溶接により一つに束ねられたタブリードの先端部に接続される。
【0013】
また、前記容器(パッケージ)には、アルミニウム箔と樹脂フィルを積層させたアルミラミネートフィルムを用い、開口部を熱融着してシールするシール方法が好ましく用いられる。
【0014】
なお、本発明の非水固体電解質電池は、全ての正極と負極にそれぞれ正極タブリードおよび負極タブリードが接続されている単一の電池であってもよいし、正極、固体電解質膜および負極を積層させた積層体(スタック)が幾つかのサブスタックに分割され、各サブスタック毎に正極タブリード、負極タブリードが接続されている組電池であってもよい。また、正極と固体電解質膜および負極は、正極と負極の作用面が固体電解質膜を介して対向するように積層されていればよい。
【0015】
(2)次に、本発明に係る非水固体電解質電池は、
(1)の発明の非水固体電解質電池であって、
前記正極タブリードおよび負極タブリードは、L字状または逆L字状であることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、タブリードの形状をL字状または逆L字状にしているため、タブリードの前記スタックからの突出長さを増大させることなく、タブリードに充分な撓みを設けることができる。この結果、電池のスペース効率を低下させることなく、タブリードが破断する恐れを無くすことができる。
【0017】
(3)次に、本発明に係る非水固体電解質電池は、
(1)または(2)の発明の非水固体電解質電池であって、
リチウム電池であることを特徴とする。
【0018】
リチウム電池の場合は、充電時に正極から引抜いたリチウムイオンを負極に金属リチウムとして析出させたり、あるいは負極の黒鉛の結晶の層間に挿入(インターカレーション)したりするが、この際の体積増加率が大きく、充電時に厚みが大きく増大する。このため、他の電池よりタブリードが破断する恐れが高い。本発明は、このようにタブリードが破断する恐れが高いリチウム電池において、顕著な効果を発揮する。
【0019】
(4)次に、本発明に係る非水固体電解質電池は、
(3)の発明の非水固体電解質電池であって、
負極に金属リチウムを用いていることを特徴とする。
【0020】
負極に金属リチウムを用いた場合、充電時の体積増加率が特に大きく、タブリードが破断する恐れが特に高い。具体的には正極から引き抜かれたリチウムイオンが金属リチウムとして負極に析出する際の体積増加率は約30%であり、例えば黒鉛の層間に挿入される場合よりも体積増加率が大きい。本発明は、このようにタブリードが破断する恐れが特に高い負極に金属リチウムが用いられているリチウム電池において、より顕著な発揮する。
【0021】
(5)次に本発明に係る非水固体電解質電池は、
(1)ないし(4)のいずれかの発明の非水固体電解質電池であって、
前記正極タブリードおよび負極タブリードの、前記正極または負極と接続されている接続部と前記正極端子または負極端子と接続されている先端部を連結する連結部に、下記の式で表される撓み率が1.0を超え、1.3以下の撓みが設けられていることを特徴とする。
撓み率=連結部の長さ/連結部の両端の間の距離
【0022】
本発明においては、正極タブリードおよび負極タブリードに撓み率を、1.0を超え、1.3以下としているため、正極タブリードおよび負極タブリードを徒に長くすることがない。このため、よりスペース効率を低下させることなく、適切に正極タブリードおよび負極タブリードが破断する恐れを無くすことができる。なお、数値に関する詳細は発明を実施するための形態の項で説明する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れのない積層型の非水固体電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池の構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の負極と負極端子の接続構造を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の負極タブリードの形状を示す図である。
【図5】積層型の非水固体電解質電池の厚みの増大を説明する図である。
【図6】非水固体電解質電池の厚みの増大による負極タブリードに加わる張力を説明する図である。
【図7】タブリードの撓み率を求める方法を説明する図である。
【図8】本発明の第2の形態の非水固体電解質電池の構造を示す平面図である。
【図9】本発明の第2の形態の非水固体電解質電池の構造を示す側面図である。
【図10】従来の一般的な積層型構造の電池の構造を示す平面図である。
【図11】従来の一般的な積層型構造の電池の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0026】
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、正極タブリード、負極のタブリードにそれぞれL字状、逆L字状で撓みを設けたタブリードを用いる実施の形態である。
【0027】
1.非水固体電解質電池の構造
(1)電極と端子の接続構造
はじめに、電極と端子の接続構造について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池の構造を模式的に示す図であり、上側、下左側、下右側の図はそれぞれ正面図、平面図、側面図である。図2は、本発明の第1の実施の形態の負極と負極端子の接続構造を模式的に示す図である。
【0028】
図1において、1は6個のサブスタックを積層させたスタック2を備える組電池からなる非水固体電解質電池である。各サブスタックの正極タブ3および負極タブ4には、それぞれ正極タブリード5と負極タブリード6が接続されている。6本の正極タブリード5と負極タブリード6の先端部はそれぞれ圧着端子9により1本に束ねられ、正極端子7と負極端子8に接続されている。13はスタック2をシールするパッケージであり、アルミニウム箔を芯材として外面および内面に樹脂フィルムを積層させたラミネートフィルムからなる。正極端子7および負極端子8は、融着性樹脂フィルムからなるシール材10によりパッケージ13に融着され、固定されている。なお、図1の平面図において、スタック2を3重の破線にしているのは、正極と負極の絶縁をとるため、正極、固体電解質膜、負極の大きさが負極<固体電解質膜<正極であることを示している。
【0029】
図1の平面図に示すように、正極タブリード5はL字状、負極タブリード6は逆L字状である。このように、タブリードをL字状または逆L字状としているため、タブリードがスタック2の上辺から突出することを抑制しつつ正極タブ3および負極タブ4と圧着端子9との間の距離を長くすることができ、スペースを大きくすることなくタブリードに充分に撓みを設けることができる。なお、図1の正面図においては、図面が煩雑になるのを避けるためタブリードを便宜上直線で示しているが、実際にはタブリードには撓みが設けられている。
【0030】
図2に撓みが設けられたタブリードを示す。図2において、11はサブスタックa、12はサブスタックbである。図2に示すように、6個のサブスタックにはそれぞれ負極タブリード6が接続され、各負極タブリード6には撓みが設けられている。
【0031】
本実施の形態の電池の構造をより理解し易くするため、非水固体電解質電池の構造を示す図を図3に示す。図3は、本発明の第1の実施の形態の非水固体電解質電池の電極と端子の接続構造を模式的に示す斜視図である。但し、模式図であり、寸法関係等は図1とは異なる。図3において、1は積層構造の非水固体電解質電池であって、各正極のタブ3と各負極のタブ4にはそれぞれL字状の正極タブリード5、逆L字状の負極タブリード6が接続されており、各タブリードには撓みが設けられている。
【0032】
(2)タブリードの構造
イ.形状
次に、負極タブリードを例に採り、タブリードの構造を説明する。図4は、負極タブリードの構造を示す図である。(a)は平面図である。(a)に示すように負極タブリード6は先端部61、連結部62、接続部62aからなり、前記のように逆L字状であり、先端部61は圧着端子により他の負極タブリードの先端部と1つに束ねられて負極端子(図示せず)に接続される。また、接続部62aは抵抗溶接などにより負極タブ(図示せず)に接続される。
【0033】
(b)は正面図、(c)は連結部62を直線状に延ばした状態を示す正面図である。(b)に示すように連結部62には撓みが設けられており、(c)のa’が連結部62の長さであり、(b)のaが連結部の両端の距離あり、a’とaとの比、a’/aが本発明でいう撓み率である。
【0034】
ロ.撓み率の設定
タブリードの撓み率は、例えば充電による(スタック)の厚みの増大の大きさに基づいて設定する。図5は、積層型の非水固体電解質電池の厚みの増大を説明する図であり、図6は、図5の右半分を図の上方から見た図である。図5において、Tc、Tdはそれぞれ充電後と放電後のスタックの厚みであり、図5は、充電によりスタックの厚みがTdからTcに増大することを示している。図6のdは、負極タブリード6の連結部62(図4参照)の両端の水平方向の距離であり、IcとIdは、それぞれ充電後と放電後の1本の負極タブリード6に注目したときの連結部62の両端の距離を示しており、電池の厚みが増大することにより連結部62の両端の距離がIdからIcに伸びることを示している。
【0035】
図7は、図6を単純化して拡大した図であり、撓み率を求める方法を示す図である。図7において、Ic/Idが電池の厚み増大に伴う連結部62(図4参照)の両端の距離の伸びの程度を示す比であり、Ic/Idは、Td/dおよびTc/Td(膨張比)の値に基づいて算定される。そして、連結部の撓み率がIc/Id以上であれば、撓みを設けたことによる余長により連結部の伸びを補償してタブリードに張力が加わることを抑制することができる。
【0036】
以下、撓み率の設定について具体的に説明する。まず、種々の電池の中でも使用中の厚みの増大が大きいリチウム電池について実際にTc/Tdを測定した結果、Tc/Tdが1.1〜1.3の範囲に入ることが確認された。また、電池の設計においては、一般的にTd/dは0.01〜10に設定される。
【0037】
次に、以上の結果を基にTc/TdおよびTd/dが境界値である次のa〜dの4つのケースについてIc/Idを求めた。以下に結果を示す。
a.Tc/Td=1.1、Td/d=0.01
Ic/Id=(1+1.12×0.012)1/2/(1+0.012)1/2=1.0
b.Tc/Td=1.1、Td/d=10
Ic/Id=(1+1.12×102)1/2/(1+102)1/2=1.1
c.Tc/Td=1.3、Td/d=0.01
Ic/Id=(1+1.32×0.012)1/2/(1+0.012)1/2=1.0
d.Tc/Td=1.3、Td/d=10
Ic/Id=(1+1.32×102)1/2/(1+102)1/2=1.3
【0038】
以上より、撓み率を、1.0を超え、1.3以下とすることにより、種々の電池においてタブリードに適切な撓みを持たせ、使用中の電池の厚みの増大によるタブリードの破断の恐れを無くすことができる。
【0039】
2.実施例および比較例
A.実施例
本実施例は、第1の実施の形態に基づく実施例であり、負極は金属リチウム、リチウム合金、正極はLiCoO2、LiMnO2、MnO2等からなり、固体電解質はLi2SとP2S5のアモルファス(Li2S−P2S5)混合物等からなる非水固体電解質電池であって、アルミラミネートフィルム製のパッケージに収納した積層型の非水固体電解質電池に関する。
【0040】
以下、図面により本実施例を説明する。
(1)非水固体電解質電池の作製
イ.サブスタックの組立て
厚みが5〜50μm、長辺と短辺の長さがそれぞれ10〜100mmの長方形のSUS箔の片面に厚み5〜50μmのLiCoO2等を主体とする10〜100mmの正極活物質層を設け正極とした。また、厚みが5〜50μm、長辺と短辺の長さがそれぞれ10〜100mmの長方形のCu箔の片面に厚さ0.1〜10μmのLi層を設け負極とした。なお、前記SUS箔とCu箔の一方の短片にそれぞれ正極タブ、負極タブを突出させた。
【0041】
ロ.タブリード
a.正極タブリード
図4に示す形状の正極タブリードを用意した。具体的には厚み5〜50μmのSUS箔製であって、図4(a)におけるaが1〜30mm、bが1〜30mm、cが1〜30mm、dが1〜30mm、図4(b)におけるa’が1〜30mm、b’が1〜30mmの正極タブリードを用意した。各サブスタックのそれぞれに1個づつ正極タブリードを取り付けた。具体的には、サブスタックを構成する素電池の全ての正極タブを重ね合わせ、抵抗溶接により正極タブリードの接続部62aに接続した。
【0042】
b.負極タブリード
正極タブリードとは、左右が逆、即ち逆L字状としたこと以外は正極と同じ負極タブリードを用意した。そして、各サブスタックのそれぞれに1個づつ負極タブリードを取り付けた。
【0043】
ハ.非水固体電解質電池の組立て
a.正負極リード端子の取付け
前記重ね合わせた正極タブリード5の先端部を正極端子7と重ねて圧着端子9に挿通させた後、圧着端子9をかしめて正極タブリード5を正極端子7に接続した。また、負極タブリード6についても同様にして負極端子8に接続した。
【0044】
b.パッケージへの挿入とシール
厚み50〜300μmのアルミニウム箔の内面にポリプロピレン樹脂フィルムを、外面にポリエステルフィルムを貼合わせたラミネートフィルムからなり3辺をシールした袋状のパッケージを用意した。正負極リード端子を取付けたサブスタックの積層体を挿入した後、真空雰囲気中でパッケージ13の開口部を融着してシール(真空シール)すると同時にシール部材10とパッケージを融着させて正極端子7と負極端子8をパッケージ13に固定して、非水固体電解質電池を作製した。
【0045】
B.比較例
正極タブリードおよび負極タブリードを撓ませず、余長を持たせなかったこと以外は実施例と同様にして非水固体電解質電池を作製した。
【0046】
C.非水固体電解質電池の充放電試験
(1)試験方法
作製した実施例および比較例の非水固体電解質電池を室温において充放電電流100〜3000mA、カット電圧3.0〜4.2Vで充放電サイクル試験を行い、充電後および放電後における電池の厚みを測定した。また、充電時における電池の厚みを基に充電時にタブリードに加わる張力を計算により求め、タブリードの破断発生の有無を調べた。
【0047】
(2)試験結果
イ.充電後および放電後の電池の厚み
実施例および比較例の電池共、図6に示したパッケージの厚みを除く非水固体電解質電池の充電後の厚みが約11.4%増加していることが確認された。
【0048】
ロ.タブリードに加わる張力
そして、放電後における負極タブとの接続部と圧着端子でかしめられた先端部との間の距離Idが、5.19mmであったのに対して、充電後における距離Icは、5.31mmに伸びる。このため、タブブリードに撓みを設けていない場合には、SUS箔のヤング率が変化しないと仮定するとタブリードに約2.35×104MPaというSUS箔の許容応力の230MPaを遥かに上回る大きな張力が加わることが分かる。
【0049】
ハ、タブリードの破断
比較例の場合、正極タブリード、負極タブリード共に破断が発生した。一方、実施例では、タブリードに破断が発生しなかった。
【0050】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、正極タブリード、負極のタブリード共に平面視で直線状で撓みを設けたタブリードを用いる実施の形態である。
図8は第2の形態の非水固体電解質電池の構造を示す平面図であり、図9は側面図である。図9に示すように負極タブリード6には、撓みが設けられている。また、図9には図示してないが、正極タブリード5(図8参照)にも負極タブリード5と同じ撓み率で撓みが設けられている。このため、使用中に電池の厚みが増大してもタブリードが破断する恐れがない。なお、撓み率は第1の実施の形態と同じ方法で設定される。但し、第2の実施の形態では、タブリードに充分な大きさの撓み率で撓みを設けるためには、図8に示すようにタブリードのスタック2からの突出長さを長くしなければならず、電池のスペース効率が低下する。
【0051】
1 非水固体電解質電池
2 スタック
3 正極タブ
4 負極タブ
5 正極タブリード
6 負極タブリード
7 正極端子
8 負極端子
9 圧着端子
10 シール部材
11 サブスタックa
12 サブスタックb
13 パッケージ
61 先端部
62 連結部
62a 接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されて容器内に収納されている非水固体電解質電池であって、
前記正極および負極にはそれぞれ正極タブリード、負極タブリードが接続されており、
前記複数の正極タブリードおよび負極タブリードの先端部は、それぞれ一つに束ねられて前記容器に固定されている正極端子、負極端子に接続されており、
前記正極タブリードおよび負極タブリードにはそれぞれ撓みが設けられていることを特徴とする非水固体電解質電池。
【請求項2】
前記正極タブリードおよび負極タブリードは、L字状または逆L字状であることを特徴とする請求項1に記載の非水固体電解質電池。
【請求項3】
リチウム電池であること特徴とする請求項1または請求項2に記載の非水固体電解質電池。
【請求項4】
前記負極に金属リチウムを用いていることを特徴とする請求項3に記載の非水固体電解質電池。
【請求項5】
前記正極タブリードおよび負極タブリードの、前記正極または負極と接続されている接続部と前記正極端子または負極端子と接続されている先端部を連結する連結部に、下記の式で表される撓み率が1.0を超え、1.3以下の撓みが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の非水固体電解質電池。
撓み率=連結部の長さ/連結部の両端の間の距離
【請求項1】
複数枚の平板状の正極、固体電解質膜および負極が積層されて容器内に収納されている非水固体電解質電池であって、
前記正極および負極にはそれぞれ正極タブリード、負極タブリードが接続されており、
前記複数の正極タブリードおよび負極タブリードの先端部は、それぞれ一つに束ねられて前記容器に固定されている正極端子、負極端子に接続されており、
前記正極タブリードおよび負極タブリードにはそれぞれ撓みが設けられていることを特徴とする非水固体電解質電池。
【請求項2】
前記正極タブリードおよび負極タブリードは、L字状または逆L字状であることを特徴とする請求項1に記載の非水固体電解質電池。
【請求項3】
リチウム電池であること特徴とする請求項1または請求項2に記載の非水固体電解質電池。
【請求項4】
前記負極に金属リチウムを用いていることを特徴とする請求項3に記載の非水固体電解質電池。
【請求項5】
前記正極タブリードおよび負極タブリードの、前記正極または負極と接続されている接続部と前記正極端子または負極端子と接続されている先端部を連結する連結部に、下記の式で表される撓み率が1.0を超え、1.3以下の撓みが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の非水固体電解質電池。
撓み率=連結部の長さ/連結部の両端の間の距離
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−81925(P2011−81925A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230928(P2009−230928)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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